迫るキョンシー!
「何だ…あれ」
霧が深く、薄暗い雨上がりの山道でマサトは首をかしげた。
人の形をした影が飛び跳ねながら、ゆっくりと近づいてくる。最初、マサトはそれが幻だと思った。しかし、近付いてくるうちにそれは幻ではなく、魔物娘だと分かった。
生気を感じられない青白い肌に虚ろな瞳はここではない何処かを見つめているが、マサトを捉えている。半開きの口からはうめき声が漏れ、顔の前に貼ってある巨大な札がひらひらと左右に揺れていた。服の上からでも分かる巨乳は少々垂れ気味ではあるが、形は整っていそうだ。飛び跳ねるたびにブルンと揺れるのが目に毒だった。
(キョンシー…か?初めて見たな)
霧の大陸固有種のアンデット系魔物、キョンシー。
最近確認された新種の魔物娘であり、未だ分からない点も多い。霧の大陸に生息しているはずの魔物が何故、ここにいるのかも分からない。ギルドでもその情報は把握できていないと噂には聞いた事があった。
考えても分からない問題に悩んでも仕方がない。早く逃げる必要がある。
しかし、マサトは全くと言っていいほど焦っていなかった。
何故ならこのキョンシー、はっきり言ってとてつもなく遅いのだ。
「ウー……」
何か言いたいのだろうがそれは言葉にならず、呻き声となって口から洩れる。ピョンピョン飛び跳ねているが、全くと言っていいほど距離が縮まらない。マサトが数歩下がるだけで、簡単に距離が離せてしまうほどだ。これなら亀の方がまだ速い。
(こいつ、何がしたいんだ?)
遅いとはいえ近付いてくるのだから、マサトを襲うつもりなのは間違いない。キョンシーは人間では太刀打ちできないほどの怪力だと聞いた事がある。掴まれれば逃げる事は敵わないだろう。
もっとも、マサトに近付くつもりは無い。見えている罠を踏む馬鹿はいないのだ。
それにこのキョンシーは近付かなければ何もできない。歩いているだけで振り切れそうだ。
「ウー…ウゥーッ……!」
不満そうなうめき声を上げるキョンシー。しかし、何を言いたいのか分からないし、分かりたいとも思わない。動きが少し速くなったが、やっと亀より速くなった程度だ。
キョンシーは徐々に距離を縮めてくる。しかし、マサトが少し下がればその距離は開く。
すでに結果の見えている鬼ごっこだった。
「ウーッ……アァーッ……」
「……」
触らぬ神に祟りなし。昔の人はよく言ったものだ。
「キミに何が出来るのかなぁ…?」
ため息交じりに呟くとマサトは背中を向けて歩き出した。
すると、キョンシーは唸り声を大きくし、少しでもマサトに近づこうとより速く飛び跳ね始めた。それでも遅い。
「ウー…ムー…ン、アァ…フゥ…ン」
「…?」
ふと、唸り声の中におかしな声が混じっている事にマサトは気が付いた。生気は無いがどこか艶のある声。
気になってマサトが振り返ると、キョンシーはその場に立ち尽くしていた。
そこで立ち尽くしているだけなら問題は無かった。
キョンシーは自分の胸を揉み、秘所を弄っていた。
「……な、はぁ?」
「オー…ア、ンンッ…」
(本当に何なんだ、こいつは…)
こんなやる気の無い自慰、見た事も聞いた事も無い。そう言えるほどそれは機械的で、何とも言えない残念なものであった。
それ以前に意味が分からない。何故、ここで自慰をし始める?何の意味があるのか。マサトに追いつく事を諦め、自分で慰める事にしたのか。
いや、それは無い。
キョンシーはその空虚な目でジィッとマサトを見つめているからだ。その瞳には確かな執念のようなものが感じられる。
(???)
だから、マサトは困惑した。
まるで氷の魔法で凍りつけにされ動けなくなったようにその場から動けなかった。
「ン…あフゥ……ん、い…アあァぁ…」
次第にキョンシーの動きが滑らかになっている事にマサトは気が付いた。服の上から胸を揉む手の動きが最初はたどたどしかったが今は乳首をつまんだり、マサトに見せつけるような動きへと変わり、秘所を弄る指も突起をこすったり爪でひっかくような細かな動きになっている。
その表情も次第に熱に犯されたように、頬がやや赤く染まり生気が戻ってきている。空虚な瞳が今は確かな意思を持ち、マサトを見つめている。
(ま、まさか…!)
マサトがその可能性を考えたのと、キョンシーが動きを止めたのはほぼ同時だった。
自慰を止め、手を握ったり開いたりして体の動きをキョンシーは確認している。
「……よシ」
(こいつ…自家発電しやがった!)
キョンシーは性的興奮で体が滑らかに動くようになるのか、ギルドには無かった情報だったが、風の噂には聞いた事があった。襲われた冒険者によれば、最初はぎこちなかった動きがだんだんと滑らかになっていったという。
マサトは逃げようとしたが、それは許されなかった。瞬間移動としか思えないような速さでキョンシーはマサトの懐に潜り込み、マサトを持ち上げると地面に叩きつけた。
「ガ、ァ…!」
息が止まるかと思うほどの衝撃が背骨を走り、全身に伝わる。視界がチカチカと点滅し、体が痺れたかのような感覚。肺は全ての酸素を吐き出し、脳は信号を送るのを一瞬止めた。
それでも、マサトは逃げようとしたが、体は言う事を聞かず動かなかった。
苦痛に呻くマサトの身体にキョンシーは跨ると勝ち誇った笑みを浮かべ、冷たくマサトを見下ろした。
「貴様ァ…ッ!」
「ずいブん、バかにしテクれタたわねぇ…もウ逃ガサないわぁ」
唸り声ではなく普通に喋るキョンシー、しかし、その言葉使いはたどたどしい。それでも、さきほどまでの死者のような冷たさは感じられない。
残酷な笑みを浮かべ、キョンシーはマサトの頬を撫でた。
人間らしさはあるものの、ヒンヤリとしたその指の感覚にマサトはゾッとした。
「えふ、えフふふ…どウシてくれようカシラねェ…」
楽しくて仕方がないと言わんばかりに奇妙な笑い声を上げ、馬乗りになったまま腰を前後に動かす。キョンシーが自分の秘所を擦りつけるかのように動き、それにマサトはむず痒いものを覚えた。
荒い息を吐き、表情に艶が出てくる。
「あラァ…?」
「ッ…!」
不意にキョンシーは動きを止め、秘所を擦りつけている下腹部へ目をやった。そこは服の上からでも分かるほど大きく張り詰めており、マサトが興奮している証拠だった。
ズボンの上からマサトのモノを撫で、キョンシーはニヤリと笑った。
「もうこォんなに…えフフ、変態サンなノカしらァ…?」
「だ、黙れ…!」
「エふふ、怖イ怖い♪」
マサトの虚勢にキョンシーは余裕のある笑みで返し、器用にマサトのいきり立ったモノ
を引っ張りだした。
「アは♪コれナら楽しメソウだわぁ♪」
硬さを確かめるように握り、パンパンに膨れ上がった亀頭を秘所に当てるとゆっくりと飲み込んだ。入口が先端を咥え込むと大きく、熱くなったマサトのモノが膣肉を押し広げながら奥まで侵入した。
「んふ♪あ、アアぁァぁア♪」
「ぐ、ぁぁ…!」
マサトのモノをやすやすと受け入れ、キョンシーの身体は喜びに震えた。満足感を覚えながら呻き声を上げる。
「エふふ、情ケナい顔ネぇ…?恥ずカシくないノカしらぁ?」
「ぐ…だ、黙れぇ…!」
キョンシーはそれに言葉で返さず、動きで返した。
天を突くほどガチガチに勃起したマサトのモノを貪欲に咥え込み、キョンシーの肉厚な尻が上下に動く。
「あ、ンン!ふゥ…あ!あァ!」
マサトの胸に手をつき、キョンシーの体が上下に動く。繋がった秘所からは愛液が溢れ、腰が打ち付けられるたびに飛び散った。
次第にキョンシーの動きは滑らかなものになっていった。
単純な上下運動から、円を描くような動き、亀頭の部分だけを咥えて腰を動かすといった器用な真似すら見せる。
「はぁ…♪生き返る…気持ちいいぃ…♪」
うっとりとした表情を見せ、だらしなく開いた口からは唾液がこぼれている。その顔や声色にもはや死者の面影は無い。生者の持っているものだった。
ひんやりとしていた膣も気が付けば溶けそうなほどに熱い。
「ん!あ、いいッ!気持ちいいぃぃ♪貴方の大きくて長くて最ッ高♪」
重量のある尻がマサトの腰に打ちつけられ、マサトのモノが膣奥を突くたびにキョンシーは喜びに顔を歪めた。
「ぐ、ぁ…あ」
「あ、あはぁ♪出したいの?イキたいのぉ?」
マサトのモノが爆発寸前なのを敏感に感じ取ると、キョンシーは嬉しそうに笑った。その顔にはハッキリとした狂気が浮かんでいる。
「んんん♪あ…でもねぇ……」
そこでキョンシーは動きを止めた。
射精寸前で止められ、不発に終わった不満からマサトは困惑した。キョンシーはその顔を見逃さなかった。ニヤニヤと笑い、腰を浮かせ自分の膣からマサトのモノを引き抜くと、もう1つの穴にあてがった。
「な、…何を!」
「変態の分際でぇ…アソコで出させてもらえると思っているのかしらぁ?えふふ…変態の貴方にはこっちで♪ね?」
そう言うよりも早く、キョンシーはそのまま腰を落とした。
尻穴はミチミチと音を立て、肉棒を飲み込んでいく。
「本当に変態なのねぇ…♪さっきより大きくなってきたわよぉ?お尻が好きなんて救いようがないわ、あ♪んんん♪」
キョンシーはクスクスと微笑み、そのままゆっくりと腰を動かす。膣穴とは違い、まるで握りつぶすような強さで締めつけてくる。それでも痛みは無く、ゴリゴリと射精を促すように蠢いている。
射精寸前だったマサトにはそれ以上耐えられそうになかった。
熱く蕩けきった膣で弄ばれ、膣とはまた違った快感をもたらす尻穴で蹂躙されたマサトのモノは我慢の限界だった。
「えふふ…何?出したいのぉ?仕方ないわねぇ♪ホラぁ、出しちゃいなさい♪」
「き、さ…うぐぅぅ!」
「んぁ!は、はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
射精の前兆を感じ、キョンシーは腰の動きを速めた。
マサトがついに限界を迎え、尻の中で弾けた。キョンシーも全身を震わせ、派手な絶頂を迎えた。ドクンドクンと尻穴に射精し、マサトの体がブルリと震える。
「あぁ…♪そのマヌケ面…最高よ、貴方♪」
満足したように舌舐めずりし、キョンシーはマサトの体に覆いかぶさった。密着したキョンシーの体からはほんのりとした熱を感じる。胸がこすれ、乳首と乳首がぶつかるたびにキョンシーはビクンと震え、にんまりと笑った。
「えふふ♪…気持ちよかったようねぇ?私も気持ちよかったわよ…♪」
「…貴様ァ」
「気持ち良かったようだけど、足りないみたいね…えふふ♪」
キョンシーの言うとおりだった。マサトのモノはキョンシーの尻の中でまだ硬さを失っていなかった。
それを確かめるようにキョンシーは腰を左右に揺らす。揺れるたびに心地良い刺激が肉棒を走る。
「む、ぐぅぅ…」
「お尻が好きで、おちんちんも硬いまま…本当に変態で底なしの性欲なのね…でも」
キョンシーは体を持ち上げ、腰を前後に動かし始めた。尻肉が擦れ、中ではまるでそこだけ別の生き物のように脈動している。かすかに動くだけでも充分な快楽だった。
「そういうの、私は嫌いじゃないわよ♪」
悪戯っぽく笑い、キョンシーは激しく腰を動かし始めた、その動きに遠慮も容赦も無い。ただ、がむしゃらに絶頂へと導く乱暴で優しい矛盾したものだった。
その矛盾にマサトは抗う事が出来ず、再び射精した。
2度目の射精だと言うのに量は変わらず、キョンシーの腸を犯す。
その後も、2人は混じり合い、狂気と快楽に導かれたままマサトは気を失った。
「う…」
「あら、起きたのかしら?」
気が付けば、マサトはキョンシーに膝枕されていた。
「貴様…ッ!」
「はいはい、怖い怖い♪」
起き上がろうとしたマサトをキョンシーは優しくたしなめ、自分の膝に落ち付かせた。体を動かそうにも倦怠感と射精を終えた快感に体が追い付かず、マサトはキョンシーにされるがままに膝枕されるしかなかった。
「ふん…」
「あら?大人しくなったわね。えふふ。良いコ♪良いコ♪」
キョンシーは何が嬉しいのか、ニッコリと笑いマサトの頭を優しく撫で始めた。
それはまるで妻が夫を愛するように、母親が子どもをあやすように、深く愛情にあふれていた。
「貴方の寝顔…とんだマヌケ面だったわぁ」
「な!?」
「でも、好きよ。貴方のマヌケ面♪」
思わず起き上がりそうになったマサトの鼻先に指を当て、キョンシーはフフッと怪しく微笑んだ。先ほどの狂気じみた笑顔ではない。落ち着いた、それでも嬉しくて仕方がないといった笑みだ。
その笑顔を見ていると、マサトは安らぎのようなものを感じた。先ほどまで犯され、汚されていたにも関わらず、それすら許せるようなものだ。不意に、マサトは彼女に逆らう気が無くなった。
「ねぇ、貴方の名前は?」
「…マサト、マサト・ムラカミだ
「ふぅん、変な名前ね…私はロウ・ウェン。えふふ、マサト、マサトねぇ」
そう言うとロウは何処からか札と筆を取り出し、サラサラと何かを書きだした。マサトは内容を覗こうとしたが、それより速くロウは書き終わり、自分の顔に貼った。
「えふふ、どうかしらぁ?」
ロウは書き終わった札を見せつけるようにマサトに顔を近づける。まるで褒められるのを待っている子どものような無邪気な笑みを浮かべている。先ほどまで凶暴なほどにマサトを犯していたのとは同一人物だとは信じられなかった。
「きさ……お前」
「よく書けているでしょぉ?」
札には相合傘が描かれており、その傘の下にはロウとマサトの名前が書いてあった。
ニコニコとロウは笑い、マサトもそれにつられて吹き出してしまった。
「んな!?ちょっと、何で笑うの?」
「いや…悪い、そういうのじゃなくてな」
「……じゃあ、どういうのかしら?」
ムーっと不満そうに頬を膨らませ、拗ねたように唇を突き出すロウをマサトは愛おしく感じ始めていた。
マサトとロウの名前が書かれた札、それはおそらく彼女なりの婚姻届だろう。
それがどうしようもなく愛おしい。
マサトはフッと微笑み、ロウの頬を撫でた。
「俺の負けだ、ロウ・ウェン…キミに惚れたよ」
終わり
霧が深く、薄暗い雨上がりの山道でマサトは首をかしげた。
人の形をした影が飛び跳ねながら、ゆっくりと近づいてくる。最初、マサトはそれが幻だと思った。しかし、近付いてくるうちにそれは幻ではなく、魔物娘だと分かった。
生気を感じられない青白い肌に虚ろな瞳はここではない何処かを見つめているが、マサトを捉えている。半開きの口からはうめき声が漏れ、顔の前に貼ってある巨大な札がひらひらと左右に揺れていた。服の上からでも分かる巨乳は少々垂れ気味ではあるが、形は整っていそうだ。飛び跳ねるたびにブルンと揺れるのが目に毒だった。
(キョンシー…か?初めて見たな)
霧の大陸固有種のアンデット系魔物、キョンシー。
最近確認された新種の魔物娘であり、未だ分からない点も多い。霧の大陸に生息しているはずの魔物が何故、ここにいるのかも分からない。ギルドでもその情報は把握できていないと噂には聞いた事があった。
考えても分からない問題に悩んでも仕方がない。早く逃げる必要がある。
しかし、マサトは全くと言っていいほど焦っていなかった。
何故ならこのキョンシー、はっきり言ってとてつもなく遅いのだ。
「ウー……」
何か言いたいのだろうがそれは言葉にならず、呻き声となって口から洩れる。ピョンピョン飛び跳ねているが、全くと言っていいほど距離が縮まらない。マサトが数歩下がるだけで、簡単に距離が離せてしまうほどだ。これなら亀の方がまだ速い。
(こいつ、何がしたいんだ?)
遅いとはいえ近付いてくるのだから、マサトを襲うつもりなのは間違いない。キョンシーは人間では太刀打ちできないほどの怪力だと聞いた事がある。掴まれれば逃げる事は敵わないだろう。
もっとも、マサトに近付くつもりは無い。見えている罠を踏む馬鹿はいないのだ。
それにこのキョンシーは近付かなければ何もできない。歩いているだけで振り切れそうだ。
「ウー…ウゥーッ……!」
不満そうなうめき声を上げるキョンシー。しかし、何を言いたいのか分からないし、分かりたいとも思わない。動きが少し速くなったが、やっと亀より速くなった程度だ。
キョンシーは徐々に距離を縮めてくる。しかし、マサトが少し下がればその距離は開く。
すでに結果の見えている鬼ごっこだった。
「ウーッ……アァーッ……」
「……」
触らぬ神に祟りなし。昔の人はよく言ったものだ。
「キミに何が出来るのかなぁ…?」
ため息交じりに呟くとマサトは背中を向けて歩き出した。
すると、キョンシーは唸り声を大きくし、少しでもマサトに近づこうとより速く飛び跳ね始めた。それでも遅い。
「ウー…ムー…ン、アァ…フゥ…ン」
「…?」
ふと、唸り声の中におかしな声が混じっている事にマサトは気が付いた。生気は無いがどこか艶のある声。
気になってマサトが振り返ると、キョンシーはその場に立ち尽くしていた。
そこで立ち尽くしているだけなら問題は無かった。
キョンシーは自分の胸を揉み、秘所を弄っていた。
「……な、はぁ?」
「オー…ア、ンンッ…」
(本当に何なんだ、こいつは…)
こんなやる気の無い自慰、見た事も聞いた事も無い。そう言えるほどそれは機械的で、何とも言えない残念なものであった。
それ以前に意味が分からない。何故、ここで自慰をし始める?何の意味があるのか。マサトに追いつく事を諦め、自分で慰める事にしたのか。
いや、それは無い。
キョンシーはその空虚な目でジィッとマサトを見つめているからだ。その瞳には確かな執念のようなものが感じられる。
(???)
だから、マサトは困惑した。
まるで氷の魔法で凍りつけにされ動けなくなったようにその場から動けなかった。
「ン…あフゥ……ん、い…アあァぁ…」
次第にキョンシーの動きが滑らかになっている事にマサトは気が付いた。服の上から胸を揉む手の動きが最初はたどたどしかったが今は乳首をつまんだり、マサトに見せつけるような動きへと変わり、秘所を弄る指も突起をこすったり爪でひっかくような細かな動きになっている。
その表情も次第に熱に犯されたように、頬がやや赤く染まり生気が戻ってきている。空虚な瞳が今は確かな意思を持ち、マサトを見つめている。
(ま、まさか…!)
マサトがその可能性を考えたのと、キョンシーが動きを止めたのはほぼ同時だった。
自慰を止め、手を握ったり開いたりして体の動きをキョンシーは確認している。
「……よシ」
(こいつ…自家発電しやがった!)
キョンシーは性的興奮で体が滑らかに動くようになるのか、ギルドには無かった情報だったが、風の噂には聞いた事があった。襲われた冒険者によれば、最初はぎこちなかった動きがだんだんと滑らかになっていったという。
マサトは逃げようとしたが、それは許されなかった。瞬間移動としか思えないような速さでキョンシーはマサトの懐に潜り込み、マサトを持ち上げると地面に叩きつけた。
「ガ、ァ…!」
息が止まるかと思うほどの衝撃が背骨を走り、全身に伝わる。視界がチカチカと点滅し、体が痺れたかのような感覚。肺は全ての酸素を吐き出し、脳は信号を送るのを一瞬止めた。
それでも、マサトは逃げようとしたが、体は言う事を聞かず動かなかった。
苦痛に呻くマサトの身体にキョンシーは跨ると勝ち誇った笑みを浮かべ、冷たくマサトを見下ろした。
「貴様ァ…ッ!」
「ずいブん、バかにしテクれタたわねぇ…もウ逃ガサないわぁ」
唸り声ではなく普通に喋るキョンシー、しかし、その言葉使いはたどたどしい。それでも、さきほどまでの死者のような冷たさは感じられない。
残酷な笑みを浮かべ、キョンシーはマサトの頬を撫でた。
人間らしさはあるものの、ヒンヤリとしたその指の感覚にマサトはゾッとした。
「えふ、えフふふ…どウシてくれようカシラねェ…」
楽しくて仕方がないと言わんばかりに奇妙な笑い声を上げ、馬乗りになったまま腰を前後に動かす。キョンシーが自分の秘所を擦りつけるかのように動き、それにマサトはむず痒いものを覚えた。
荒い息を吐き、表情に艶が出てくる。
「あラァ…?」
「ッ…!」
不意にキョンシーは動きを止め、秘所を擦りつけている下腹部へ目をやった。そこは服の上からでも分かるほど大きく張り詰めており、マサトが興奮している証拠だった。
ズボンの上からマサトのモノを撫で、キョンシーはニヤリと笑った。
「もうこォんなに…えフフ、変態サンなノカしらァ…?」
「だ、黙れ…!」
「エふふ、怖イ怖い♪」
マサトの虚勢にキョンシーは余裕のある笑みで返し、器用にマサトのいきり立ったモノ
を引っ張りだした。
「アは♪コれナら楽しメソウだわぁ♪」
硬さを確かめるように握り、パンパンに膨れ上がった亀頭を秘所に当てるとゆっくりと飲み込んだ。入口が先端を咥え込むと大きく、熱くなったマサトのモノが膣肉を押し広げながら奥まで侵入した。
「んふ♪あ、アアぁァぁア♪」
「ぐ、ぁぁ…!」
マサトのモノをやすやすと受け入れ、キョンシーの身体は喜びに震えた。満足感を覚えながら呻き声を上げる。
「エふふ、情ケナい顔ネぇ…?恥ずカシくないノカしらぁ?」
「ぐ…だ、黙れぇ…!」
キョンシーはそれに言葉で返さず、動きで返した。
天を突くほどガチガチに勃起したマサトのモノを貪欲に咥え込み、キョンシーの肉厚な尻が上下に動く。
「あ、ンン!ふゥ…あ!あァ!」
マサトの胸に手をつき、キョンシーの体が上下に動く。繋がった秘所からは愛液が溢れ、腰が打ち付けられるたびに飛び散った。
次第にキョンシーの動きは滑らかなものになっていった。
単純な上下運動から、円を描くような動き、亀頭の部分だけを咥えて腰を動かすといった器用な真似すら見せる。
「はぁ…♪生き返る…気持ちいいぃ…♪」
うっとりとした表情を見せ、だらしなく開いた口からは唾液がこぼれている。その顔や声色にもはや死者の面影は無い。生者の持っているものだった。
ひんやりとしていた膣も気が付けば溶けそうなほどに熱い。
「ん!あ、いいッ!気持ちいいぃぃ♪貴方の大きくて長くて最ッ高♪」
重量のある尻がマサトの腰に打ちつけられ、マサトのモノが膣奥を突くたびにキョンシーは喜びに顔を歪めた。
「ぐ、ぁ…あ」
「あ、あはぁ♪出したいの?イキたいのぉ?」
マサトのモノが爆発寸前なのを敏感に感じ取ると、キョンシーは嬉しそうに笑った。その顔にはハッキリとした狂気が浮かんでいる。
「んんん♪あ…でもねぇ……」
そこでキョンシーは動きを止めた。
射精寸前で止められ、不発に終わった不満からマサトは困惑した。キョンシーはその顔を見逃さなかった。ニヤニヤと笑い、腰を浮かせ自分の膣からマサトのモノを引き抜くと、もう1つの穴にあてがった。
「な、…何を!」
「変態の分際でぇ…アソコで出させてもらえると思っているのかしらぁ?えふふ…変態の貴方にはこっちで♪ね?」
そう言うよりも早く、キョンシーはそのまま腰を落とした。
尻穴はミチミチと音を立て、肉棒を飲み込んでいく。
「本当に変態なのねぇ…♪さっきより大きくなってきたわよぉ?お尻が好きなんて救いようがないわ、あ♪んんん♪」
キョンシーはクスクスと微笑み、そのままゆっくりと腰を動かす。膣穴とは違い、まるで握りつぶすような強さで締めつけてくる。それでも痛みは無く、ゴリゴリと射精を促すように蠢いている。
射精寸前だったマサトにはそれ以上耐えられそうになかった。
熱く蕩けきった膣で弄ばれ、膣とはまた違った快感をもたらす尻穴で蹂躙されたマサトのモノは我慢の限界だった。
「えふふ…何?出したいのぉ?仕方ないわねぇ♪ホラぁ、出しちゃいなさい♪」
「き、さ…うぐぅぅ!」
「んぁ!は、はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
射精の前兆を感じ、キョンシーは腰の動きを速めた。
マサトがついに限界を迎え、尻の中で弾けた。キョンシーも全身を震わせ、派手な絶頂を迎えた。ドクンドクンと尻穴に射精し、マサトの体がブルリと震える。
「あぁ…♪そのマヌケ面…最高よ、貴方♪」
満足したように舌舐めずりし、キョンシーはマサトの体に覆いかぶさった。密着したキョンシーの体からはほんのりとした熱を感じる。胸がこすれ、乳首と乳首がぶつかるたびにキョンシーはビクンと震え、にんまりと笑った。
「えふふ♪…気持ちよかったようねぇ?私も気持ちよかったわよ…♪」
「…貴様ァ」
「気持ち良かったようだけど、足りないみたいね…えふふ♪」
キョンシーの言うとおりだった。マサトのモノはキョンシーの尻の中でまだ硬さを失っていなかった。
それを確かめるようにキョンシーは腰を左右に揺らす。揺れるたびに心地良い刺激が肉棒を走る。
「む、ぐぅぅ…」
「お尻が好きで、おちんちんも硬いまま…本当に変態で底なしの性欲なのね…でも」
キョンシーは体を持ち上げ、腰を前後に動かし始めた。尻肉が擦れ、中ではまるでそこだけ別の生き物のように脈動している。かすかに動くだけでも充分な快楽だった。
「そういうの、私は嫌いじゃないわよ♪」
悪戯っぽく笑い、キョンシーは激しく腰を動かし始めた、その動きに遠慮も容赦も無い。ただ、がむしゃらに絶頂へと導く乱暴で優しい矛盾したものだった。
その矛盾にマサトは抗う事が出来ず、再び射精した。
2度目の射精だと言うのに量は変わらず、キョンシーの腸を犯す。
その後も、2人は混じり合い、狂気と快楽に導かれたままマサトは気を失った。
「う…」
「あら、起きたのかしら?」
気が付けば、マサトはキョンシーに膝枕されていた。
「貴様…ッ!」
「はいはい、怖い怖い♪」
起き上がろうとしたマサトをキョンシーは優しくたしなめ、自分の膝に落ち付かせた。体を動かそうにも倦怠感と射精を終えた快感に体が追い付かず、マサトはキョンシーにされるがままに膝枕されるしかなかった。
「ふん…」
「あら?大人しくなったわね。えふふ。良いコ♪良いコ♪」
キョンシーは何が嬉しいのか、ニッコリと笑いマサトの頭を優しく撫で始めた。
それはまるで妻が夫を愛するように、母親が子どもをあやすように、深く愛情にあふれていた。
「貴方の寝顔…とんだマヌケ面だったわぁ」
「な!?」
「でも、好きよ。貴方のマヌケ面♪」
思わず起き上がりそうになったマサトの鼻先に指を当て、キョンシーはフフッと怪しく微笑んだ。先ほどの狂気じみた笑顔ではない。落ち着いた、それでも嬉しくて仕方がないといった笑みだ。
その笑顔を見ていると、マサトは安らぎのようなものを感じた。先ほどまで犯され、汚されていたにも関わらず、それすら許せるようなものだ。不意に、マサトは彼女に逆らう気が無くなった。
「ねぇ、貴方の名前は?」
「…マサト、マサト・ムラカミだ
「ふぅん、変な名前ね…私はロウ・ウェン。えふふ、マサト、マサトねぇ」
そう言うとロウは何処からか札と筆を取り出し、サラサラと何かを書きだした。マサトは内容を覗こうとしたが、それより速くロウは書き終わり、自分の顔に貼った。
「えふふ、どうかしらぁ?」
ロウは書き終わった札を見せつけるようにマサトに顔を近づける。まるで褒められるのを待っている子どものような無邪気な笑みを浮かべている。先ほどまで凶暴なほどにマサトを犯していたのとは同一人物だとは信じられなかった。
「きさ……お前」
「よく書けているでしょぉ?」
札には相合傘が描かれており、その傘の下にはロウとマサトの名前が書いてあった。
ニコニコとロウは笑い、マサトもそれにつられて吹き出してしまった。
「んな!?ちょっと、何で笑うの?」
「いや…悪い、そういうのじゃなくてな」
「……じゃあ、どういうのかしら?」
ムーっと不満そうに頬を膨らませ、拗ねたように唇を突き出すロウをマサトは愛おしく感じ始めていた。
マサトとロウの名前が書かれた札、それはおそらく彼女なりの婚姻届だろう。
それがどうしようもなく愛おしい。
マサトはフッと微笑み、ロウの頬を撫でた。
「俺の負けだ、ロウ・ウェン…キミに惚れたよ」
終わり
15/09/27 18:21更新 / ろーすとびーふ泥棒