読切小説
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教えて!氷の女王!

 それはほんの気まぐれだったのかもしれない
 視界を白く染め、容赦なく叩きつける吹雪の中に佇み、ゆっくりと足を進める。吐いた吐息が雪の結晶となって唇から離れていく。何処を見ても何も変わらない。何もない、無の白。その中で彼女はただただ存在した。
 何故、こんな事をしているのか。それは氷の女王、エルゼルにすら理解できなかった。
 氷の女王は本来、雪山の最奥、人の寄りつかぬ“氷の宮殿”に住んでいる。彼女達はそこから自分が治める雪原地帯の全てを知る事が出来る。雪原地帯に住む魔物娘が人間を捉え夫婦になったり、愛を営んでいる事すら彼女達は知る事が出来る。
エルゼルも知る事は出来る、しかし、詳細に知ろうとは思わない。それは愛の営みは本来夫婦だけのものであり、エルゼルは氷の女王であり治める王ではあるものの土足で入っていい領域で無い事は理解できているからだ。
 
 (…私は何故ここにいる)

 何故今自分がここにいるのか。それはエルゼルにすら分からない。
 肌に当たる吹雪、それは本来なら体温を奪い、死を与える死神の如く存在であるが、エルゼルにとって死神の吹雪ですら何の意味も持たない。
 自問自答しても答えは返ってこない。
 凍った心に響く声も何もない。
 ただ、ザクッザクッという踏まれる雪の音が足から伝わってくる。
 エルゼルは今の気持ちをどう表現していいのか分からない。ただ、宮殿の王座に1人でじっと座っている時の気分とは違う事は理解できた。
 もしかしたら自分は何かが壊れてしまったのかもしれない。
 エルゼルはそんな事を思い始めていた。
 身も心も氷のような冷気で出来ているエルゼルにとってこれは無駄なものである。自身が何を考えどうしたいのかそれすらハッキリとしない。
 そんなもやもやが心を占めつつもその中にほんの一握りだけ、微かに光があるような気がする。
 エルゼルにはその光が何なのか分からない。それどころか、その光は自分の気のせいなのかそうでないのかそれすら理解できない。
 迷いながら歩き続けるエルゼルに言葉をかける者はいない。
 エルゼルの行動を説明できる者もいない。
 それは彼女が彼女であると自覚している時からそうであった。
 エルゼルに家族はいない。気が付いた時から既に独りだった。配下のグラキエスくらいしか彼女が言葉を交わす相手はいない。しかし、言葉を交わすと言っても一言二言交わす程度であり、1ヶ月にあるか無いか程度の事だ。それを寂しく思った事も無ければ、惨めに感じた事も無い。エルゼルは命ある者が所詮1人だという事を知っている。友人や家族に恵まれている者も、エルゼルのように1人ぼっちの者も結局は同じ「孤独」という根なのである。

 「……?」

 そんな事を思いながら歩いていると、奇妙な物が目に入った。
 雪をまとい枝が重みで垂れている木の下、そこに黒い毛皮をまとった男が雪の中に埋もれていた。エルゼルが男だと理解できたのは恐らく本能的な物であろう。
 エルゼルはゆっくりと倒れている男の元まで歩き、男を見下ろした。
 まるでハリネズミのように逆立った金髪、真っ白い雪とは対照的な日に焼けた黒い肌。年齢は若くはない。恐らく30代後半だろう。顔に刻まれた皺がやけに目立つ。口の周りを無精髭が覆い、目は深く閉じられている。服の上からでも分かる盛り上がった筋肉は男が戦士である証だろう。
 男は気を失っていた。

 (何者だ…?)

 エルゼルは首を傾げた。領地内の全てを知る事が出来る彼女がこの男を見逃すとは思えない。とすれば、探知をさせない魔術的な何かを使っているのだろう。氷の女王であるエルゼルですら探知できない高度な魔法を用いる者がこんな雪山にいるという事は何か訳ありなのかもしれない。
 エルゼルは面倒事を好まない。変化は迎え入れるべきだが、厄介事はそういうわけではない。この男を追ってこの雪山に踏み入る者達がいるかもしれない。それが教団であるならばややこしい事になる。
 しかし、放っておく事は出来ない。
 それは道徳的な考えからではない。新魔王の命令により、魔物娘達は人間を見殺しにするような事は出来ないからだ。だから、エルゼルもこの男をこのまま凍死させる事は出来なかった。
 ただ命令に従いこの男を助けるだけ。そこにエルゼルの意思は無い。

 (この辺りにはいない…)

 魔力探知でこの付近にいる魔物娘を探したが、いなかった。一番近い魔物娘でも8キロ程離れている地点にウェンディゴがいるだけだ。

 (…仕方ない、か)

 エルゼルは男の身体をグイッと持ち上げると肩の下に手を入れ、男の体を支えた。
 宮殿まではそう遠くない。おそらく間に合うだろう。
 そう考え、エルゼルは歩きやすいように男の身体をグイッと近付け、触れる手に力を入れた。

 (……?)

 その瞬間、ふと胸の中の光が大きくなったような気がした。
 しかし、それはあまりに一瞬であり、すぐに消えたためもしかしたら気のせいだったのかもしれない。
 エルゼルはそう思いながら、宮殿へ向かった。
 宮殿へと向かう足と心を軽く感じたが、それも気のせいだと思った。





 氷の宮殿、その最奥。そこはエルゼルの寝室であり、今までここに入った事があるのはエルゼルだけだった。そこに今、エルゼル以外の者がいる。
 先ほど助けた男は今、エルゼルのベッドで横になっている。どうなるかと思ったが、この氷の宮殿内は魔力が満ちている。男が凍死するような事は無いだろう。
 それ以前にエルゼルは戸惑っていた。
 何故、こんな事をしたのか。
 それはもちろん、人間を見殺しにはできないからだ。
 しかし、それでも考えてみればおかしな事ばかりだ。
 この男を助けるだけならばグラキエスを呼び、看病させれば良い。百歩譲って、氷の宮殿内まで連れてこようとも、魔法を使えば楽に運べたはずだ。それをわざわざエルゼルが運ぶという効率の悪い方法を取った。

 「何を…しているんだ?私は」

 エルゼルは思わず言葉にしてみた。
 何故、今日はこんなにも自分はおかしいのか。考えてみても分からなかった。答えを教えてくれるような存在はいない。
 エルゼルはこの瞬間ほど自分が孤独であると自覚した事は無かった。何とも言えない嫌な気持ちになった。
 しかし、孤独ではあるものの今のエルゼルは1人ではなかった。目の前にいる名前も素性も知れない謎の男、生まれて初めて見る男がいた。

 「……」

 そう思うと心が少し軽くなるような気がした。
 エルゼルは掛け布から出ている男の手にそっと自分の手を当てた。

 「……お前は一体何者だ?」

 エルゼルの言葉に男は答えない。ただ、静かに眠るだけ。
 何故かそれが腹立たしかった。エルゼルは少しムッとすると当てた手で男の手を握った。
 すると、男もエルゼルの手を握り返してきた。

 「……!」

 エルゼルは驚き、大きく目を見開いたが男の様子に変わりはない。どうやら。条件反射的に握り返しただけのようだ。
 ホッとしたような残念なような何とも言えない奇妙な感覚。

 (私は…どうして)

 どうしてこんな気持ちになるのか。
 ただ、握られた手は不思議と悪い気はしない。
 掌から伝わる温もりはエルゼルが今まで経験した事の無いものだった。

 「……」

 エルゼルはもう片方の手でそっと男の頬を撫でた。
 男の肌は冷たかったが、それでもエルゼルよりは温かい。初めて触れる他者の温もりにエルゼルは気が付けば夢中になった。最初は指先でなぞるような動きだったが、軽く押してみたり、掌を使って男の頬を撫でまわす。

 (なるほど…)

 エルゼルは今まで何故、魔物娘が夫を求めるのか理解できなかった。確かに魔物娘は人間に好意的であり夫を求めるが、別に1人でも生きていける。現在の魔物娘のあり方を否定するつもりはないが、肯定するつもりもなかった。だから、他の魔物娘達が夫と交わり、共に生きていく姿をエルゼルは疑問に思っていた。
 しかし、今人間の男に触れると何故求めるのか何となく理解できるような気がする。

 (悪くはない、か…)

 温もりと確かな感触。
 それはエルゼルの心をほんの少し溶かすのに充分だった。
 エルゼルはフッと笑った。

 「ん…」

 「……!」

 男の顔を撫でてやると、呻き声が男の口から洩れた。エルゼルはそっと手を離すと男は目を覚ました。
 最初、男はボーっと天井を見つめていたがゆっくりとエルゼルに目を向けた。銀色に輝く瞳がエルゼルを映す。

 「こ、ここは……?」

 「目が、覚めたか……」

 戸惑う男にエルゼルは無表情のまま声をかけた。
 無理もない。何があったか知らないが、この男は雪山で倒れ死にかけていた。それが目を覚ますとこんな所にいるのだ。混乱して当然だ。
 エルゼルは男に今までの事を話した。自分が見つけ、ここまで連れてきた事を話すと、男は体を起こしエルゼルに深く頭を下げた。

 「ありがとう、キミはオレの命の恩人だ」

 「大げさだ……ただ、私がお前を見つけここまで連れてきた…それだけだ」

 「大げさじゃない。キミが助けてくれたんだろ?じゃあ、命の恩人じゃないか」

 「……そうか」

 畏怖される事はあっても感謝された事は無い。
 エルゼルは初めて感謝された事にどう反応していいのか分からなかった。

 「ありがとう…えっと、キミの名前は?」

 「エルゼル……この雪山を治めている」

 「そうか、氷の女王か。聞いた事はあるけど、見たのは初めてだよ。オレはゲイル。ありがとうな、女王様」

 ゲイルの言葉にエルゼルは少しムッとした。
 女王というのは種族名であり、エルゼルの名前ではない。
 しかし、元来感情を顔に出すのが苦手なエルゼルはそれを出さなかった。

 「それで…お前は何者だ?何故、あんな所で倒れていた?」

 「あー…それは」

 ゲイルは恥ずかしそうに頭をかくと、全て話してくれた。
 ゲイルは衣服を仕立てる仕事をしていた。様々な季節、土地に合わせ機能性と見た目を両立した服を作る事がゲイルの仕事であった。雪山で倒れていたのは新しい防寒具を試すためだったという。エルゼルがゲイルを探知できなかったのは恐らく、その防寒具の素材に何らかの魔力のこもった素材が使われていたからであろう。
 この傭兵のような男が服を仕立てる繊細な仕事をしていた事がエルゼルには意外であった。

 「驚いたな…私は傭兵だと思ったぞ」

 「よく言われる。世界中、旅していればこうなるさ」

 「…人は見た目によらない、な」

 「そ、それにしても…ここはかなり寒いな」

 ゲイルは力なく笑うと、寒さを紛らわすために自分の体をさすった。
 エルゼルは首を傾げた。確かに寒いだろうが、凍え死ぬほどではない。人間の事はよく分からないが、新魔王からの命で死なせないように言われているエルゼルとてそれぐらいは分かる。

 「冷える、か…?」

 「あぁ、かなりね。悪いけど、火を焚いてくれないか?」

 「そんなものは…無い。火など炊いた事もなければ、焚く道具も無い…」

 「そ、そうか…うぅ、寒ッ」

 震えるゲイルにエルゼルはどうすればいいのか分からなかった。
 どうして、ゲイルの事でこんなに心が乱されるのか、それもエルゼルには分からなかった。
 
 「うぅ…エルゼル、すまん!」

 「え…?」

 だから、動きが遅れた。
 ゲイルはエルゼルの手を取ると、ベッドに引き寄せそのまま押し倒した。

 「おい…何の真似だ?」

 「ハァ…ハァ……」

 エルゼルの言葉にゲイルは荒い息で答える。エルゼルはゲイルをこのまま突き飛ばす事も出来た。氷の女王であるエルゼルにとってこの程度は造作も無い事だ。
 しかし、エルゼルはそうしなかった。自分を見つめるゲイルの瞳に悪意が見られなかったからだ。
 むしろ、それ以上にゲイルがこれから何をするのか興味があった。

 「ハァ…ハァ…んッ」

 「んむッ…!」

 不意にゲイルはエルゼルに覆いかぶさってエルゼルの唇を奪った。ゲイルはそのままエルゼルの口の中に舌を差し込み、絡ませてきた。ゲイルの熱い息と唾液が口内に流れ込む。
 エルゼルはその瞬間、心臓が大きく高鳴るのを聞いた。目を大きく見開き、口を犯すゲイルの舌に蹂躙される。
 生まれて初めてのキス。それは乱暴で遠慮が無く、それでいて決して暴力的ではない。ただ、相手を貪るように求める激しいキスはエルゼルの脳を痺れさせた。
 絡み合いめちゃくちゃにされるキスにエルゼルはゲイルの好きなようにさせたが、気が付けば自らも舌をまとわりつかせ積極的に唾液を交換していた。

 「んちゅ…あむ…ん、ふ」

 「ん…ぷふぅ」

 唇を先に離したのはゲイルからだった。お互いを唾液の橋が繋ぎ、名残惜しそうに途切れる。エルゼルはもっと欲しいと思ったが、頬を撫でるゲイルの手にすっかり蕩けていた。

 「エルゼル…」

 「ん…や、か、顔を……見るな」

 ゲイルの熱い視線が恥ずかしい。青白い肌に朱が差す。耳まで真っ赤にし、顔を反らすエルゼルのギャップにゲイルは胸が高鳴った。
 ゲイルは再びエルゼルの唇を奪った。エルゼルはゲイルにキスをされるだけで身体がとろけそうになった。先ほどはゲイルに好きなようにされていたが今度はエルゼルもゲイルを求めた。2人の舌は激しく、複雑に動きゲイルの口の中で絡みあったり、エルゼルはゲイルの舌を唇で挟むと男性器に奉仕するかのように吸い立てた。

 「エルゼル…可愛いな」

 唇を離した後、ゲイルが呟いた。その言葉にエルゼルの胸はより強く高鳴った。

 「そ…そうか?」

 「あぁ、可愛いよ」

 「う、むむ…」

 エルゼルは顔が熱くなるのを感じた。ゲイルはそれに構わず、エルゼルの服をめくり上げ、大きく形の良い胸を露出させた。南国の果実ほどのボリュームのある胸はエルゼルの呼吸に合わせ波打っている。先端は既に硬くなって見て分かるほどに勃起していた。

 「や…ま、待て、ん、んんんんんッ」

 ゲイルは手を伸ばし、柔らかなエルゼルの乳房に指を食い込ませた。指先に力を込め、リズミカルに揉まれるとエルゼルの口から甘い吐息が漏れた。胸を揉まれているだけなのに、全身を痺れるような心地良さが広がった。

 「ふ、うううう、は、ん…」

 乳房を掴まれまるで乳搾りのように愛撫されると、エルゼルは身をくねらせた。

 「随分いやらしい胸だな」

 「や、言う…なッあッい、言わないでくれぇ」

 羞恥を煽るゲイルの言葉にエルゼルは首を振りながらも決して否定はしなかった。ゲイルの言う通りなのかもしれない。
 私はゲイルによって変えられているのかもしれない。
 ゲイルはしばらく乳首に触れず、掌を用いて乳房を押しつけ撫で回すように刺激していた。そうしてエルゼルが身悶えしている様子を楽しんでいたが、ついにゲイルはエルゼルの乳首を指で摘まんだ。優しい摘まみ方だが、それだけでも電撃が走ったような刺激がエルセルを襲った。

 「ひぅん…ッくぅぅぅ」

 ゲイルは乳首を摘まんだまま指を動かすと、エルゼルは喘ぎながら身体を悶えさせる。それでも。ゲイルは乳首を離さず親指でこねまわしたり、指で摘まみ直し引っ張った。

 「あ…やぁぁぁ、んく」

 エルゼルの反応を楽しみながら、ゲイルはもう片方の手でエルゼルの腹を撫で、そのまま手を滑らせてそのまま秘所へと辿り着かせた。鼠径部を優しく撫で、秘所を指でゆっくりとなぞる。
 エルゼルはゲイルが弄りやすいように自ら足を開き、ゲイルを受け入れた。

 「や、そっれ…は、はずかしッ」

 ゲイルの指が秘穴の周囲を刺激し、入り口を指でつつく。そうしてゲイルはそのまま指を潜り込ませた。冷たい身体の筈がそこは熱く、愛液が溢れだす。かき回される動きや、粘膜をひっかくような動きにエルゼルは身体をはねさせる。

 「あ、んはぁ…はふぅぅ」

 色っぽい喘ぎ声を上げ、エルゼルは押し寄せる快楽に身を任せつつあった。
 ゲイルが求めてくれている。気持ち良くしてくれる。それがたまらなく嬉しかった。
 エルゼルの寝室には秘所を愛撫するいやらしい音が響く。

 「ん、あぁ…いい…ゲイルゥ」

 「あぁ…エルゼル」

 「ん、これ…お前の……スゴいあ、熱い…」

 エルゼルはズボンの上からでも分かるほど張り詰めたゲイルのモノを優しく撫で回し、ズボンから引っ張り出し握った。
 それは大きく、熱く、ドクンドクンと脈打っており、まるで熱した鉄塊の様だった。

 「う…!」

「こ、こうすると…お前は……気持ち良いのか?」

 エルゼルはゲイルのモノを握ると上下にしごき始めた。熱くなった男性器とは対照的に、エルゼルの指は冷たくヒンヤリとしていたがそれが逆に心地良い。
 2人はお互いに性器を触り合いながらベッドで抱き合っていた。

 「エルゼル…そ、そろそろ」

 「はぁ…はぁ……え?」

 ゲイルは秘所から指を引き抜くと愛液まみれになった掌でエルゼルの肉厚な尻に指を走らせる。
 あぁ、なるほど…
 知識はあっても経験は無いエルゼルでも、ゲイルが何を求めているのか分かった。それは魔物娘としての本能だったのだろう。エルゼルの中で魔物娘としてオスを求める熱い感情が湧き上がった証でもあった。
 エルゼルは小さく頷くと、上体を起こしベッドに手と膝をついてゲイルに尻を向けた。
 ゲイルはエルゼルの尻を掴むとゆっくりと揉みしだいた。丁寧にこねくり回すような動きから、左右に広げるようにすると秘所が露わになる。そこからは太ももまで滴るほど愛液が溢れ出ていた。
 ゲイルの視線がそこに突き刺さる。それだけでエルゼルは恥ずかしさを覚え、身をよじらせたが、それが逆にゲイルを誘っているかのような動きになる。

 「ゲ、ゲイル…」

 「あぁ、エルゼル」

 エルゼルの催促するような口調にゲイルはエルゼルの腰を掴むと、痛いほどに勃起した男性器の先端を秘所に擦り付ける。亀頭が擦れる度にエルゼルの口からなめまかしい吐息が漏れる。
 そして、秘穴が亀頭を咥え込みそのまま男性器が押し広げながら奥まで突き進むと、エルゼルの身体はビクンっと跳ねた。

 「く、ふぅぅぅ……!」

 膨張しきったモノを深く受け入れ、エルゼルは悩ましげな呻き声を上げる。どこか満足感にも似た熱を感じながら、エルゼルはシーツを強く握りしめる。

 「んくぅ、あ…ゲイルの…熱い……」

 子宮の入り口と亀頭が触れるとエルゼルの全身をゾクゾクとした快楽が襲った。
 ゲイルはそのまま腰を動かし始めた。ゆっくりと腰を引き、勢いよく突く。膣壁が摩擦され、痺れるような心地良さがエルゼルの下半身に広がる。

 「や、あ、んッ…ああぁッ」

 エルゼルはただ喘ぎ、ゲイルの好きなようにされるしかなかった。しかし、すぐに自らも腰を振り快楽を貪ろうと貪欲になりつつあった。無意識のうちに秘穴が締まり、ゲイルのモノに快楽を与える。

 「う…!ぐ、エルゼル…!」

 「ああぅぅ、いい…は、あぁぁぁ…ゲイルッ、ゲイルゥッ」

 ゲイルも快感を味わっているようだ。エルゼルは生まれて初めて味わった、燃え上がるような快楽に呑まれつつありながらも、それを受け入れていた。変わっていく自分に戸惑いを感じつつもゲイルがいる安心感と彼に求められる嬉しさがエルゼルを支配する。
 後背位での交わりはどこか動物的な野性味溢れるものであったが、エルゼルは別に嫌ではなかった。

 「ひゃうぅぅ、あ、あ…あはぁ」

 ゲイルが激しく腰を動かすとエルゼルはそれを受け入れた。下半身が蕩け、そのまま心と体も蕩けだす。ゲイルの熱いモノが体内に満ち溢れていく。
 ゲイルは夢中になって腰を振りつつも、エルゼルの胸に手を伸ばし掴み、揉んでやる。

 「エルゼルは本当にいやらしいな…」

 「はぁぁぁぁあッ、や、もっと、もっと私を求めてくれぇ…」

 掌にずっしりと乗る乳房の重みを確かめながら、ゲイルは腰を猛然と動かした。
 ゲイルは乳首をキュッと指で摘まみ、位置を固定する。すると、胸全体がゲイルの腰の動きに合わせて揺れ、乳首が引っ張られる。その度にエルゼルを強い刺激が襲う。

 「ひぐッ、そッれはぁ、だ、ダメっだぁぁ…」

 エルゼルは冷静さを保つ事が出来なくなっていた。ゲイルに求められ、愛される事に夢中になっている。
 そこに身も心も凍りついた氷の女王はいない。あるのはただ、夫に愛され喜びを感じている魔物娘としてのエルゼルであった。
 ゲイルのモノの出し入れが激しくなる。大きく熱く昂ぶった剛直が秘穴に叩きこまれると、結合部からは愛液が滝のように飛び散る。ゲイルの腰とエルゼルの尻が激しくぶつかり、エルゼルの尻は歪むが肉厚的な反発によりゲイルの腰を弾く。

 「う、ぐ…!エルゼルッ、締めすぎ、だ…ッ!」

 「はっ、はっ、ああぁぁ、そ、それはッお前がお、奥ばっかり……ッ」

 エルゼルは自らも腰を動かし、秘穴を締め上げる。
 その中で、ゲイルのモノがビクビクと跳ねているのを感じた。

 「や、あ、あぁあッ、ゲイル、がこれはッ」

 「ッ!だ、出すぞ、エルゼル…!」

 その瞬間、ゲイルのモノから精液が勢いよく溢れだし、エルゼルの子宮に浴びせられた。

 「くひはぁぁぁぁぁッ、あ、あぁぁぁ…」

 白濁液が子宮を染め、満たしていく。その熱にエルゼルは背中をのけ反らせ、絶頂を迎えた。甘美な快楽が心と体を満たしていく。
 ゲイルの射精は長く、量が多かった。溢れかえった精液が逆流し、愛液と混じり合って溢れだす。
 エルゼルは上体をベッドに倒し、肩で息をする。ある程度、呼吸を整え肩越しに振り返りゲイルを見上げる。
 いつの間にか、射精は終わっており身体が初めての絶頂と精を迎えた喜びに震える。

 「ハァー…ハァーま、まだ出てるのか?も、もう入らなくて溢れているというのに…」

 「い、いや、さすがに…すまない、その…勝手に中に出して…」

 「ハァ…ふぅ、お、お前が何を謝っているのか理解できないが……今の熱いのを出されると……頭が真っ白になる」

 「エ、エルゼル…」

 「……なぁ」

 肩越しに振り返るエルゼルは一度目を伏せると、恐る恐るといった感じにゲイルを見上げた。

 「そ、その……頼む、お前の熱いのを…私の中にもっと注いでくれないか?」

 エルゼルのおねだりにゲイルの中で再び火が灯る。火は一瞬で業火となり、その業火に導かれるままにゲイルは再びエルゼルを犯し始めた。





 (あああああああああああッ!オレのバカバカバカバカッッ!!)

 エルゼルとの交わり後、ゲイルは頭を抱え深く後悔していた。

 (あり得ないだろッ!命の恩人だぞッ!それを…ああああああッ!)

 命の恩人とも言えるエルゼルを犯した事、途中からエルゼルもゲイルを求めていたがそれでも最初はエルゼルの合意無しだ。ゲイルは知る由もないが、氷の女王と会えば彼女達の冷気に当てられ男性は心が凍りつき虚無となり、躊躇せずに目の前の彼女達と交わろうとするのだ。ゲイルがエルゼルに襲いかかったのもそれが原因である。
 そんなこと知る由もないゲイルは罪悪感に胸がいっぱいになっていた。チラリとエルゼルを見ると、エルゼルはジィッと見つめている。

 「あ、あの…その…す、すまなかった…」

 「?」

 ゲイルの言葉にエルゼルは首を傾げた。

 「い、いや…その…キミにこんな乱暴な事を…謝って済む問題じゃないが」

 「何を謝っているのか…理解できないな。別に悪い気はしなかったのだが…」

 エルゼルはキョトンとしてゲイルを見上げたままだ。どうやら、本当に気にしていないようだ。
 それでも、やはりケジメは付けるべきだろう。
 ゲイルはエルゼルに向き直ると深く頭を下げた。

 「すまない…その代わりと言っては何だが…オレに出来る事なら何でもやる」

 「……何でも?」

 ゲイルの言葉にエルゼルの瞳に怪しい光が宿る。
 ゲイルは一瞬後悔したが、何を言われても仕方がない。受け入れるだけだと腹を決めた。
 しかし、エルゼルの言葉はゲイルの予想していなかったものだった。

 「では命じよう……こっちに来い」

 「…あ、あぁ」

 エルゼルの言葉に戸惑いつつも、ゲイルはエルゼルに寄り添うように横になった。ゲイルが横になるとエルゼルはそっと抱きついてきた。

 「!!」

 「ん……お前は温かいな」

 満足そうに微笑むエルゼルにゲイルは混乱しつつも、ゆっくりと彼女を抱き返した。
 エルゼルの身体は冷たかったが、温かい。そんな矛盾した感覚にゲイルは何故か幸せを感じた。

 「こ、こんな事で良いのか…?オレはキミに…」

 「良い…私は……こうやってお前に触れ、お前に触れられるのが……嬉しい」

 ゲイルの胸に額を当て、満足そうに呟くエルゼル。そんな様子を見て、ゲイルは彼女をより強く抱きしめた。

 「なぁ、ゲイル…」

 「な、何だ…?」

 「このまま眠りに落ちて…朝目覚めたら……お前はいるか?」

 「え?」

 エルゼルの言葉にゲイルは思わずトボケた声を上げた。

 「少し…嫌な気持ちになったんだ……朝起きてお前がいなくて…今、この瞬間が夢だったら、そんな事を思うと私は……私は…」

 「……」

 「嫌なんだ…お前がいない私が……前の孤独な私に戻る事が…怖い」

 「エルゼル…」

 「こんな気持ちになったのは…初めてなんだ……私は、お前が側にいないのは…耐えられそうにない」

 見ればエルゼルの身体は不安に震えていた。ゲイルは彼女が今までどうやって生きてきたのか、どんな生活を送っていたのか全く知らない。知らないが、エルゼルの様子を見ると、恐らく親しい者も家族もいない寂しい暮らしをしていたのだろう。
 ゲイルは彼女の不安を紛らわすためにその頭を優しく撫でた。

 「……!」

 「安心してくれ。オレは何処にも行かないよ。エルゼルの側にいる」

 「そうか……」

 エルゼルはゲイルの言葉にフッと笑うと何も言わなくなった。
 そのまま2人はしばらく抱き合ったままベッドの上で横になっていた。

 「なぁ…」

 沈黙を破ったのはエルゼルだった。

 「どうした?」

 「私は…今の気持ちをどう言葉にすれば良いのか分からない……でも、今私は確かに幸せなんだ」

 「そうか…」

 「だ、だから…その……」

 エルゼルはゲイルを見上げると、その唇にキスをした。

―私の気持ちを私が言葉にできるその日まで少し待っていてくれないか?―

終わり
16/11/27 18:32更新 / ろーすとびーふ泥棒

■作者メッセージ
どうも皆さん、ご無沙汰してます。
ろーすとびーふ泥棒です。

氷の女王さんですが、たまらんと思います。
クールなのに一回溶けちゃえばもうデレデレとかね、たまらんですね。
そんな感じが少しでも出せれば良いなーと思います。

連載中のクノイチSSは本当にしばしお待ちを。

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