読切小説
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バジリスクと雨宿り!
 (ついに降ってきたか…)

 青から鉛色に変わった空を見て嫌な予感がしていたが、ついにポツポツと雨が降り始めた。最初は葉の上をなぞる程度の強さだった雨粒は、次第に勢いを増し容赦なく打ち続ける。
 強くなっていく雨に慌てて、ジョン・グルンべルドは歩みを急がせた。
 今日中に街道を抜けたかったが、この雨では仕方がない。しかし、こんな道のど真ん中でテントを張って野宿するわけにもいかない。

 (嫌になっちゃうなぁ…)

 内心、悪態をつきつつジョンは雨をやり過ごせる場所を探していた。





 それから数十分後、ジョンは林の中に入りそこで丁度良い洞窟を見つけた。彼自身、無神論者だったがこの時ばかりは神に感謝をした。
 慌てて洞窟に入り雨除けのコートを脱ぐと、背負っていた荷物が雨で濡れてダメになっていないか確認した。東方から取り寄せた様々な雑貨や調理器具は問題無い。しかし、書物の一部は濡れて字が滲んでしまっている。雨対策に防水用の袋に入れておいたのだが、どこかから水が入ってしまったようだ。

 (あ〜…やっちゃったな)

 字が滲み、すっかり灰色になってしまった書物を広げ、ジョンはガックリと肩を落とす。
 頭頂部を覆う鉄灰色の髪は綺麗に刈りそろえられ、髪と同じ色をした灰色の瞳には売り物にならなくなった書物が映っている。分厚い肩に、丸太のような腕には太い腱と血管が走っている。30年近く嫌になるほど重い荷物を運んだり、背負って山を越えてきた男の証のようなものだ。
 ジョン・グルンべルドは商人だった。
 家を持たず、世界中をその日暮らしで旅をし、その地の特産品を買うと別の場所で商売するのだ。何にも縛られず自由気ままな生活をするジョンを信頼する者、憧れる者は多い。
 しかし、ジョンには友人と呼べるような存在はいなかった。
 皆、確かにジョンを信頼はしているのだがそれと友達とでは話は別だ。あくまで仕事上の関係であり、それ以上でもそれ以下でも無い。単なるビジネスパートナーというだけだ。
 それに対して不満は無かったが、やはり寂しいものだ。

 (こんな時に旅仲間でもいればなぁ…)

 懐から煙草と火打石を取り出しながら、ジョンはそんな事を考えていた。
 雨の中で1人洞窟ほど空しい時間は無い。雨が静寂を奏で、色彩は黒に染まる。そんな中、唯一友と呼べるのは煙を上げる煙草のみだ。
 肺に煙を吸い込み、ジョンはため息交じりに煙を吐き出した。

 「はぁ…全く」

 「おい」

 後ろから呼びかけられ、ジョンは思わず飛び上がった。ジョンはそのまま前に転がり慌てて後ろを見た。
 そこにいたのは一匹の魔物娘だった。
 洞窟の中でも映える新雪のように白い肌、紫がかった青髪のショートボブに女性らしい細く滑らかなラインとアンバランスな巨大な蛇の下半身、その身体のバランスはゾッとするが美しかった。ラミア種特有の蛇体ではあるが、尻尾の先端や腕に羽毛のようなものがある。さらに、手は人間の物ではなく鳥類の足に似ている。
 しかし、それ以上に目立つのは彼女の顔であった。
 彼女には顔が無かった。
 正確には見えないのだ。
 巨大な眼をモチーフにしたようなマスクが顔の上半分を覆い、素顔を見せる事を許さない。スッと通った鼻立ちに、不機嫌そうに一文時に結ばれた口、どちらも整った形をしている。
 彼女がラミア種である事は間違いない。しかし、ジョンの知っているラミア種とは違っていた。ラミアでもなければ、エキドナでもない。アポピスと白蛇はこんな洞窟には生息していないはずだ。
 ジョンの無遠慮な視線にその魔物娘は不機嫌そうに鼻を鳴らすと蛇体の下半身を大きく揺らし、ジョンに近付く。

 「…教団の者ではないようだが、何者だ?貴様は」

 「わ、分かるのか…?」

 あのマスクは視界を得るような作りでは無いのはジョンでも分かる。しかし、この魔物娘はどういう方法かは分からないが、ジョンの事が見えているらしい。

 「知るか。まぁ、いい。とっととここから去れ。ここは私が先にいたんだ」

 ジョンの言葉に対し、ぶっきらぼうに答える。その言葉には棘があり、苛立ちがあった。
 ジョンは魔物娘を刺激しないようにゆっくりと立ち上がると言葉を選んだ。

 「ま、待ってくれ。外はこんな雨だし、品物も」

 「黙れ」

 ジョンの言葉を遮る有無を言わさぬ言葉による一刀両断。それにジョンは会話の余地が無い事を察すると大人しく荷物を片付け始める。それを魔物娘はただ静かに見つめ、時折威嚇するように爪を鳴らした。
 ふと、ジョンは疑問を覚えた。

 「お、襲わないのか…?」

 「なに?」

 「いや…だから、キミは魔物娘だろう?その…魔物娘って男を見つけると襲いかかってくるって言うが……」

 ジョンの言葉は本当だった。
 魔王の代替わりにより、全ての魔物は人間を殺し滅ぼす存在から人間を愛し交わる魔物娘へと変化した。それでも魔物娘は襲いかかってくるがそれは殺害を目的としたものではなく、性行為のためだ。教団はその事実を伏せ、魔物を滅ぼすべき悪しき存在であると流布しているが、それも一部にしか過ぎず、ジョンのように旅をする者や魔物娘と暮らす者にとってそれがデタラメである事は周知の事実でもある。
 まぁ、現在は魔物娘と人間の夫婦間で人間の子どもが生まれないため、人間を守るという名目の教団を一方的に責める事は出来ないだろう。

 「ふん、戯言を…貴様ら人間など私には必要無い。襲う気も起きん」

 「はぁ……」

 「いいからとっとと失せ…ッ!!」

 洞窟に響く腹の音。グゥ〜っという空腹を訴える音はその魔物娘のお腹から発せられたようだ。魔物娘は慌ててお腹を隠し、黙り込んでしまった。

 「……」

 唇をギュッと結び、頬が羞恥で赤く染まっている。
 何とも言えない気まずい空気が流れる。
 そんな空気に耐えきれず、ジョンは荷物から干し肉を数枚出すと見せつけるように持ち上げた。

 「良かったら…食べる?干し肉しかないけど」

 「え、肉!?食べる!」

 肉と聞いて、魔物娘の口元に笑みが浮かんだ。声音も先ほどまでの不快感は無く、喜びの響きがあった。魔物娘はハッとすると、コホンとわざとらしく咳払いした。

 「ふ、ふん…!き、貴様ら人間など信用できん…その肉にも何かあるんだろ?」

 そう言って興味無さそうにそっぽを向いたが、蛇の尻尾は左右にブンブン揺れている。

 「何も無いよ。ホラ」

 そう言ってジョンは干し肉の一枚を頬張り、よく噛んで嚥下した。

 「毒なんか入ってないさ。どうかな?」

 「うるさい…第一、私は腹など空いていない」

 どの口が言うのか…
 ジョンはハァと大げさにため息をつくと、立ち上がり魔物娘に近づいてその手を掴み無理やり干し肉を握らせた。
 ジョンに触られて魔物娘はビクッとしたが、彼の目的が干し肉を渡す事だと気が付くと特に抵抗もせず大人しくなった。

 「……」

 手の中にある干し肉とジョンへ交互に顔を向け、魔物娘はおずおずと干し肉を一口齧った。

 「!……♪」

 (意外と分かりやすい性格だな…)

 一口齧って何か吹っ切れたのか、魔物娘は勢い良く干し肉を頬張り始める。ジョンが水の入った水筒を差しだすとそれをひったくるように奪い、喉を鳴らして水を飲み干す。

 「……美味いか?」

 「うん!」

 ジョンの言葉に嬉しそうに答える。さっきまでのブスッとした顔は無く子どものように夢中になって干し肉を食べる魔物娘にジョンは胸がどこか温かくなる気持ちになった。
 干し肉を全て食べ終わっても魔物娘は上機嫌なようで、爪に付いた干し肉の香りと風味を味わうようにチロチロと舌で舐める。

 「……あ」

 ふと、何かに気が付いたように魔物娘は指を舐めるのを止め、咳払いをしてジョンに向き直った。

 「ま、まだ人間の貴様を信用はできないが…まぁ、礼は言おう」

 「……おう」

 どこか引っかかる物言いだが、いいだろう。
 それからジョンとその魔物娘、バジリスクのシオンはどこか打ち解けたようになった。
ジョンは商人として世界中を旅し、どんな魔物娘に会ったか、どんな出来事があったかを話した。シオンは最初、大して興味も無さそうだったが、次第に相槌を打ったり、ジョンに疑問をぶつけたりした。
 雨は止まず激しいままだったが、お互いに気にならなくなっていた。
 ジョンの話は一旦止まり、少しの間沈黙が居座った。
 ジョンは懐から煙草を取り出し、火をつけるとシオンの事を尋ねた。

 「…キミの話を聞かせてもらえないか?」

 「私の…話しか?」

 ジョンの言葉にシオンはジョンの顔から眼を反らし、視線を下げた。その顔には何処か寂しさが滲み出ているのをジョンは見逃さなかった。仮面でその表情をうかがう事は出来ないが、口元には自嘲するかのような風で拭けば消え去りそうなほど弱弱しい笑みが浮かんでいる。
 ジョンはそれを見て後悔した。
 聞いてはいけなかった。踏み入ってはいけない領域に土足で踏み込んでしまった。
 ジョンは誤魔化すように煙を吐くと、頭を掻いた。

 「……言いたくないなら話さなくて良いよ。ごめん」

 「いや、構わんさ。何処から話せばいいか……」

 フッと笑うとシオンはまずバジリスクという種族の事を話してくれた。
 バジリスク。旧魔王時代では一睨みで命を奪い取る魔眼を持った恐るべき毒蛇の王とも言うべき存在。彼女たち自身その能力を制御する事はできず、それは魔物娘へと変わり、魔眼の性質が変化した今も同じであった。その為、彼女達は仮面を付けているのだ。

 「でも、不思議なんだ」

 「不思議?」

 シオンはそう呟くと自分の仮面をそっと撫でた。

 「この魔眼を封じるための仮面は私の心と感情も…封印してしまってな。いつの間にか、この仮面を付けた顔が私の素顔になっていたよ」

 仮面の模様を撫でつつ、シオンはまるで自分を蔑むようにそう言った。
 ジョンは何も言えなかった。彼はシオンの悲しみを和らげる言葉を知らない。安心させるための甘い言葉なんて持っていない。それに、ジョンが何を言ったってシオンは救われないだろう。
 だから、ジョンは何も言わずにシオンの肩を抱くとその身体を抱きよせた。

 「…!」

 シオンは一瞬身を固くしたが、身体の力を抜きジョンに甘えるようにもたれかかり彼の肩に頭を乗せた。ジョンの抱く肩は華奢でとても細く、弱かった。指先から伝わってくる冷えた身体と心の感触。

 「……貴様は優しいな」

 「…そっか」

 「あぁ…優しいし、温かい。でも、ダメだ。ダメなんだ」

 否定するように首を振るシオンにジョンは彼女の顔を寂しそうに見つめた。

 「…何がダメなんだ?」

 「私は…誰も……いや、自分を信用していない。怖いんだ」

 そう言いながら、シオンは自らを守るように背中を丸め、自分の身体を抱き締めた。

 「私は覚えているんだ…旧魔王時代の事を」

 「……!」

 「私が見るだけで、私の視界に入るだけで…皆死んだ。鳥も、魚も、獣も、そして人間も…。私を退治しに来た人間も私が見るだけで死んだ」

 「キミのせいじゃない…」

 「そうかもな。でも、夢を見るんだ…わ、私が奪った命の夢を、忘れられないんだ…く、苦しんで死んでいったあの顔を…!」

 静かに語るシオンの口調は次第に強くなり、やがて嗚咽が混じる。

 「毎晩毎晩、夢に出るんだ…!そして、わた、私を責めるッ…!殺された、苦しい、死にたくない…そ、そんな悲鳴が私を……!」

 「……もういい」

 「私は、殺すつもりなんてなかったんだ!あ、あんなにたくさん…!む、昔偉い魔法使いが来て私を助けようとして、でも、それは嘘で!私を殺そうとして…だから…だからッ!」

 「……もういいんだ」

 「それだけじゃないッ!村があった…とても小さくて、貧相で、でも温かい声や優しい匂いがした!そ、それで興味が出て…あぁ、違う!違うんだ!殺すつもりなんて無かった、あの幼い兄妹も、あの老夫婦も、あの家族も…あ、赤ん坊だって……!!」

 シオンの話は滅茶苦茶だった。話しの脈絡が無く、錯乱している。シオンは自分を責めるように頭を掴み、髪をぐしゃぐしゃと締めつけるように力を強めた。

 「シオンッ!!」

 だから、ジョンはシオンを強く思い切り抱き締めた。彼女が落ち着けるように。細く折れてしまいそうなこの身体に彼女は罪悪感を抱え込み、1人で生きてきた。それが贖罪のためかどうかは知らないが、少なくともこうやって抱き締める事でシオンの悲しみ・苦痛・恐怖を少しでも和らげる、分かれば良いとジョンは思った。

 「いや、やだ…違う、やめ、止めろ…わ、私に優しくするな…!私はそんな資格なんて無いんだ。私は、私は…ッ!」

 「もういい、もういいんだよ…」

 「だ、ダメだ…私は誰かに優しくされる資格は……んむ!?」

 それ以上言わせない。
 ジョンはシオンの言葉を遮るために彼女の唇を奪った。シオンは驚き、唇に当たるジョンの唇に凍り、全身の動きを止めた。
 それから長い間、2人は口付けをしていたがジョンから離れた。

 「……」

 シオンは落ち着いたようで、表情は見えないが冷静になれたようだ。ジョンの唇が触れた個所を指でなぞり、感触を確かめているようだった。
 唇は離れたが、ジョンはシオンを抱いたままで、シオンは何もせずただジョンに抱かれているままだ。
 抱きしめられたまま、シオンは顔を上げた。

 「ジョン…どうして…?」

 「…何も言わないでくれ」

 「どうして……」

 そう呟くシオンの頬を一筋の涙がこぼれ落ちた。ジョンがそれを指ですくうと、シオンはその指をギュッと握った。

 「どうして、ジョンはそんなに私に優しいんだ…?」

 そんな事、ジョン自身にも分からない。
 シオンとはさっき出会ったばかりだしお互いに知らない事は山ほどある。ハッキリ言ってしまえば、彼女とは他人だ。
 それでもジョンはシオンを放っておけなかった。
 シオンの隣にいたいと思えるほどになっていた。

 「分からない…でもオレは君の側にいたい」

 「それは……ダメだ。今の私には人を殺す魔眼は無い。でもいつか、いつか…昔の私に戻ってしまったら…私は、ジョンを」

 「そんな事にはならないよ。オレが保証する」

 「……」

 「大丈夫…うん、大丈夫だから」

 そう言いながら、ジョンはシオンの頭を撫でた。絹のように柔らかく、きめ細やかな髪の感触は撫でているだけでも心が落ち着く。シオンも心地良いのかジョンの胸板に顔を寄せ、その背中に手を回すとジョンを抱き返した。

 「ジョンは……バカだな」

 「んなッ!?」

 「でも、そんなバカが私は嬉しい。嬉しいよ……」

 フフッとシオンは笑い、頬ずりをした。バカと言われてジョンは思わず声を荒げたが、そんな彼女の様子を見て何も言う気が無くなり、大人しくシオンの頭を撫で続けた。

 「なぁ、ジョン」

 「ん、何だ?」

 「お前は…私で良いのか?」

 「え?」

 「私は…許されない存在だ。地獄に堕ちるだろう…でも、私はお前といたい。お前とこれからずっと一緒にいたいんだ」

 「そ、それって…」

 「?」

 「それは……告白、なのかな?」

 ジョンの言葉にシオンは顔を赤くし、ジョンから顔を反らした。

 「そ……そんな事を聞くのは卑怯だぞ?」

 シオンのその言葉にジョンは再び唇を奪った。さっきはただ唇を合わせるだけの優しいキスだったが、ジョンはシオンの唇を割って舌をねじ込んだ。そのままシオンの口内に舌を、唾液を届かせる。シオンはそれに逆らわず、むしろ招き入れるように唇を開け、自らも舌を絡ませ、ジョンの唾液を喉へ流し込む。

 「ん、ちゅ…あむ、ちゅっ……」

 お互いがお互いを貪るような激しいキス。ジョンもシオンも夢中になって口付けを交わした。

 「むぐ…ぷあぁッ」

 口を離すとシオンは大きく酸素を取り入れた。ジョンもキスだけだというのに肩で息をしている。
 シオンの口周りは彼女とジョンの唾液で濡れ、光っている。ジョンはそのままシオンを押し倒し、片手で彼女の腰を抱き、もう片方の手でシオンの胸を掴んだ。シオンの胸は大きく、手のひらに収まりきらないほどボリュームがある。試しにギュッと握ると、指と指の間から軽く乳肉が溢れるほどだ。

 「ん…ッ!」

 ジョンの掌が触れた瞬間、シオンの身体はビクンと跳ねた。大きく、岩のようにゴツゴツした掌が優しく胸を揉み、腰を撫でられるだけでシオンの身体は反応し、喜びに震えた。艶やかで形の整った唇から喘ぎ声が漏れるのを我慢する事は出来なかった。

 「あ…んしゅ…はぅん…」

 ジョンの動きはマッサージのように優しく撫で揉むような動きから、まるで乳搾りをするかのようにゆったりとした、それでいて力強い愛撫へと変わり、交互にその動きを繰り返していく。痺れるような甘い快楽にシオンの身体と心は蕩け、冷えた身体は熱を帯びていく。

 「あ…!」

 ジョンは腰をさすっていた手を離し、シオンの服をそっと掴むとそのまま彼女の服を脱がせた。シオンは慌てて身体を手で隠そうとしたが、それは無意味であり、それよりもジョンに見てほしいという気持ちからゆっくりと手をどけた。
 シオンの身体は美しく、傷一つ無い白い肢体が怪しく淫らに暗闇の中でもよく分かった。
 胸はツンと上を向き、桜色の乳首はすでに硬くなっている。ジョンは口を近づけ、乳首を口に含んだ。

 「ひうんッ!」

 ジョンの唇が胸に触れ、舌が乳首を舐めるとシオンの胸にまるで電撃のような快感が走った。その刺激は胸を犯し、次第にシオンの脳と身体を犯していく。

 「あ、や、やぁ…ひゃぐッ…!!」

 舌で舐め上げるような愛撫、前歯で軽く咥え舌で乳首をほじくるような愛撫、乳肉ごと吸うような激しい吸引にシオンは何も考えられなくなっていた。
 もっと欲しい。
 もっと求めて欲しい。
 もっと気持ち良くして欲しい。
 もっと愛して欲しい。
 すっかり蕩けきっていたシオンだが、ジョンの手が仮面に触れた瞬間、思考が一気にクリアになり思わずジョンの腕を掴んでいた。

 「そ、それはダメだ!この仮面を外すのはダメだ!!」

 魔物娘となっても、性質が変わっても、バジリスクの魔眼が強力である事に変わりはない。
 その視線に晒されるだけで魔物娘が発情した火照りと同じような恍惚が身体を支配し、一気にインキュバス化してもおかしくないほどである。
 命を奪うような能力は無い。
 しかし、シオンはそれでも抵抗があった。
 そんなシオンの抵抗を吹き飛ばすように、ジョンは優しく笑いシオンの頬を軽く撫でた。

 「シオン…オレはシオンの顔が見たい」

 「で、でも…」

 「大丈夫…さっきそう言っただろ?」

 ジョンの言葉にシオンは考え、悩んだが、掴んでいたジョンの腕を離すと抵抗を止めた。
 ジョンはそれを了承のサインだと考え、彼女の仮面に手をかけるとゆっくりと外していく。
 最初に目に入ったのはまるで宝石のよう輝く複雑な色彩の瞳、不安そうにひそめられた眉。切れ長で普段は吊り上がっているのだろう鋭い目つきは今はトロンと目尻が下がり、もの欲しそうにジョンを見つめていた。
 シオンの素顔は想像以上に美しかった。
 しかし、シオンと目があった瞬間、

 「ッグ!!」

 「ジョ、ジョン!!」

 まるで脳を直接ガツンと殴られたかのような激しい衝撃、それを感じるよりも速く、全身から力が抜ける。そして、ジョンの体を今まで覚えた事の無いような高揚感と性欲が一瞬で支配した。
 これがバジリスクの毒、か…!
 ジョンは神経が焼け切れそうな感覚を覚えつつも、ジョンの名前を呼ぶシオンの声に意識を集中した。

 「ジョンッ!お、あんッ!」

 ジョンはシオンの胸を両手で掴み、指を食い込ませた。そのまま無遠慮にこねるような動きにシオンは困惑しつつも次第にそのまま快楽へと流されつつあった。
 ジョンの荒々しい愛撫にも体が慣れてきた証拠だ。
 ジョンは胸を離すと、シオンの上に馬乗りになった。そして、シオンが何をするのかと疑問に思うより早くシオンの胸を両手で寄せ、その谷間に熱く滾った肉竿を挟んだ。

 「んあッ…あ、あぁぁ…」

 2つの乳房に挟まれた肉棒は溶岩のように熱く、その欲望を挟み圧迫している胸も勝るとも劣らないほどに熱くなっていた。肉棒が埋もれるほどに大きい胸の柔らかさと弾力をジョンは楽しんだ。胸を上下に動かし、腰を前後に動かす。ジョンのモノが擦れ、その硬さが伝わってくる。

 「や、ジョン…熱いよぉ♪」

 胸を犯されている事にシオンは快楽を見出していた。乱暴ではあるが、決して暴力的なそれではない。汗ばんだ胸の中で暴れるジョンの獣欲とも言うべきモノをシオンは愛おしく感じた。ジョンの動きは次第に激しくなり、胸の間から飛び出しそうだ。
 激しく揺れ、鼻先に突きつけられる肉棒を前にシオンも我慢できそうになかった。

 「ん、は、はッ…あむ♪」

 前後に揺れるモノの動きを見切ると、シオンはタイミングよく口を開けそのままジョンの亀頭を咥え込んだ。

 「ぐ…シ、シオン……ッ!」

 ジョンが気持ち良さそうに呻き声を漏らす。シオンはそれに気を良くし、自ら胸を持つとそのまま動かし始めた。シオンの胸による愛撫に合わせ、ジョンも腰を動かそうとしたがシオンの唇が亀頭を離さないと言わんばかりにキュッと締め付け、動く事が出来なくなっていた。
 シオンはニンマリと笑うと亀頭を甘噛みし、器用に舌を使って亀頭全体を舐め回し始めた。エラをなぞるような動きに尿道をほじくるかのように責め立てるシオンの舌にジョンは腰をビクンとさせ、ただただシオンのなすがままだった。

 「ん♪ん♪ぢゅるる…ちゅぱ、んんん♪」

 丁寧で執拗な舌による愛撫中も胸を使っての奉仕も忘れていない。口の中に広がる香ばしいオスの香りとカウパー液の味にシオンはすっかり夢中になっていた。夢中になりながら、シオンはジョンの精液が飲みたくなって仕方が無かった。
 バジリスクの毒は強力だ。1回射精してもすぐに回復するはずだ。

 「ま、シオン!それ以上…ッ!」

 「んむ、らひて♪じぇんぶ、のみゅからぁあ♪」

 上目づかいでおねだりするシオンにジョンは限界を迎えた。

 「う、ぐぐぅぅぅッ!」

 「ん!?ご、んんんんんんん♪」

 先端から放たれる精液の勢いと量にシオンは驚き目を見開いたが、すぐに目を細め口内を満たし、喉に直撃する精液を嬉しそうに飲み干した。

 「んぐ、ぷはぁ♪あ♪まだ、こんなに…♪」

 口を離すとシオンは肉竿にこびりついた精液を丹念に舐めとり、すっかり酔いしれていた。

 「ハァ、ハァ……」

 今までに見た事が無いほど勃起した状態で、経験した事無いほど精を吐き出したジョンはそのままゆっくりと床に崩れ落ちた。
 洞窟の地面にあおむけになり、肩で息をしつつジョンはまだ硬さを失っていない事に気が付いた。

 「ジョン…♪」

 もちろん、シオンもそれに気が付いている。ゆっくりと身体を起こし、四つん這いでジョンに近づく。

 「見てくれ、ジョン…お前におっぱいを犯されてぇ、私…こんなになっちゃった♪」

 思考を蕩け焦るような甘い声に、発情しきった蕩けた顔、そして、シオンはジョンの上に馬乗りになると自らの秘所を広げて見せた。
 愛液が秘所だけでなく、太ももまで濡らしている。秘所自体もジョンを求めてヒクヒクと動き、まるでそこだけ別の生き物のようだ。そこからはすっかり興奮し、発情したメスの匂いが漂っている。
 ジョンの欲望はそれに反応し、更に硬く熱く大きくなっていった。

 「フフフ♪お前のせいなんだぞ?お前のせいで私はすっかりいやらしくなっちゃったんだからな?」

 シオンは怪しくそう笑うとジョンのモノを掴んで支えると、自分の秘所に擦り付けた。

 「ん…ふぅ、あ♪ああぁぁ…」

 くちゅくちゅといやらしい水温が洞窟に響き、擦り付ける甘くも物足りない快楽にシオンはもどかしい声を漏らす。
 シオンはそのまま円を描くような動きで自分の秘所とジョンのモノを擦るとそのままゆっくりと膣へと招き入れた。

 「ウぐッ…!あッ、ぐくぅぅッ!」

 「シ、シオン…むぐッ、ううぅぅ」

 体重をほとんどかける必要も無く、すんなりと受け入れたものの、やはり『初めて』は痛い。ミチミチと肉が広がり、四方八方からまるで万力のように締めつけてくる感触にジョンも思わず呻き声を漏らす。
 シオンはゆっくりとそのまま腰を下ろしていき、ついに

 「ッ!あぎぃ、ん…んんんッ!」

 繋がった結合部から零れる深紅の純潔の証。ジョンに乗ったまま動かず肩をプルプルと震わせているシオンの頬をジョンは優しく撫でた。その顔には苦痛が浮かび、目尻には涙が溜まっている。

 「ん、あ…ふふ♪」

 シオンは優しく撫でてくるジョンの掌の感触を楽しみ、甘えるようにその掌へ頬を擦り付ける。そのままジョンの手を優しく握り、口元に運ぶと指を咥え込んだ。

 「ん…ふちゅ、んむぅ」

 舌を絡ませ、唇で締め付ける。まるで男性器に奉仕するかのように丁寧に舐め回す。ちゅぱっと口を離すと今度は別の指を咥え、同じ奉仕を続けた。
 シオンの指しゃぶりにジョンはさらに欲望が高まっていくのを感じた。見れば、シオンの顔にはすでに痛みは無く、再び蕩けた発情しきった顔だ。
 ジョンは我慢できずに軽くシオンの身体を突き上げた。

 「ひぐぅ!ジョ、ジョンンンッ」

 急に突きあげられた衝撃でシオンは目を白黒させたが、すぐに順応し、自らも軽く腰を浮かせジョンを受け入れた。

 「んあ、はぁぁッ!ああああッ!」

 肉棒を咥え込んだ秘所からは蜜が溢れ、膣壁に擦れる度にシオンは甘い声を上げる。

 「や、ジョンッ!スゴイ、スゴィィイッ!♪」

 シオンは勃起したモノを膣で締めつけながらあられもなく叫んだ。この洞窟にはジョンとシオン以外に誰もいないが、シオンは誰がいようとも構わなかった。それどころか、誰かに見せつけてやりたい、彼と愛し合う姿を自慢してやりたいとまで考えていた。

 「あふぅ、は、あはぁぁぁッ!」

 シオンは髪を振り乱し、喘ぎながら腰を振り続けた。動きに合わせ、胸も大きく揺れて汗が飛び散る。ジョンの身体に打ちつけるように腰を動かし、シオンは貪った。

 「シオン…!シオンッ!」

 「んふあぁぁッ!あ、ん、ちゅんんんん♪」

 ジョンはシオンの腕を取り、そのまま抱き寄せるとシオンの唇を奪った。シオンもジョンの首に手を回し、身体を密着させてジョンとのキスも楽しんだ。舌が無遠慮にお互いの口内を犯し、お互いの味へ染める。キスに夢中になりつつもジョンもシオンも腰を動かし相手を絶頂へと導こうとする。

 「ジョン、好きッ、好きッ!大好きぃぃぃぃッ!」

 「オ、オレも!好きだ!シオン!シオン!」

 シオンの名前を呼びながら、ジョンは下から荒々しいピストン運動を繰り返す。熱く滾った肉棒で秘所を広げられ、子宮口をズンと突き上げられる。シオンの身体はすっかり快楽に染まり、もっとジョンと密着していたいと欲求を高めていく。
 シオンは蛇体をジョンの下半身に絡みつかせ、より強くジョンを抱き締めた。

 「んきゅう!なッにこれ♪来るッ、何か来ちゃうウゥゥゥッ!!」

 激しさを増す動きにシオンもジョンも限界が近い。愛液と汗が飛び散り、お互いの身体を濡らし汚していく。
 ジョンはついに限界を感じ、一際強く子宮を突き上げた。
 それがとどめとなった。

 「んくあぁぁぁぁぁあああッッ!♪」

 シオンが絶頂と歓喜の悲鳴を上げると同時に、ジョンはシオンの子宮目掛けて精を解き放った。それは二度目とは思えないほどに濃厚で、子宮から溢れるほどの量であった。
 ジョンに抱きつきながらシオンは痙攣し、絶頂の余韻に浸った。





 「…なぁ」

 あの後、更に数回交わり、ついに限界を迎えたジョンに抱きつきながらシオンはジョンを見上げた。顔には仮面が付けられている。

 「…どうした?」

 「後悔…していないか?」

 不安そうに尋ねるシオン。
 ジョンはそんなシオンの不安をかき消そうと笑みを浮かべその頭を優しく撫でた。

 「するわけないさ…好きだ、シオン。愛してる」

 「……そっか」

 ジョンの言葉にシオンは満足したように笑い、より強く抱きついた。シオンのふわっとした優しい香りが鼻腔をくすぐり、ジョンもシオンをより強く抱きよせる。

 「ジョン…」

 「んー?」

 「私を惚れさせたんだ…ちゃんと責任は取ってもらうからな?♪」

おわり
16/03/14 03:02更新 / ろーすとびーふ泥棒

■作者メッセージ
どうも皆さん、こんばんは。
ろーすとびーふ泥棒です。

初の公式目隠れ魔物娘なバジリスクですね。
大変、素晴らしい魔物娘だと思います!
もうちょっとオドオドした感じが良かったかなーとおもいつつも急ピッチで仕上げたこのSSがお口に合えば良いのですががが

ではでは

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