読切小説
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悪魔が来たりて腰を振る。

大陸最北端の教団下にある町。そこでは全て教団の教え通りに生きている。
 魔物は人類の敵。滅ぼさなければならない魔の存在。
 その教えを疑う事無く、そこに生きる人々は生活している。教団を疑う者など1人もいない。落下したリンゴが地面に向かって落ちる事を疑う者はいない。それほどまでに常識として教団の教えは深く、根強く人々に浸透していた。

 (ずいぶん肩苦しく生きているわねぇ…)

 そんな町の上空を飛びながらそれは見下すように笑った。
 星の無い夜空を映したかのような群青色の長髪、凛としつつもどこか全てを包むような整った顔立ちだけならばそれはまるで女神と言える。
 しかし、それは女神などではなかった。その証拠に青く透き通った肌、サキュバス種特有の先端がハートの形をした尻尾に悪魔のように尖った翼を持っている。
 それはデーモンと呼ばれる種属の魔物娘であった。
 そのデーモン、ファートゥームは長髪を揺らし、ゆっくりと町を見回す。ありきたりで平凡な町並み、そんな町の中で教会が嫌でも目立つ。頭上には星が輝く。それらが見下ろすその町はファートゥームから言わせれば箱庭であった。
 自分達の教えを刷り込み、逆らえないように全てを支配されている。彼らはやがて神の聖戦などと尻を叩かれ、戦場へと送られる。もしくは、魂まで染まったその教えに全てを委ね考える事を放棄しながら生きる事となる。
 ここはいわば傀儡の養殖場であった。その証拠にこの町には活気はあるが、どいつもこいつも同じような顔をして、同じような生活をして、同じように染められている。
 ここの住民は生きる事を放棄している。

 「さぁて、いっちょやりますか…ね」

 だから、私が思い出させてあげよう。生きるという事を。
 教えてあげよう。魔の快楽を。
 クスクスとファートゥームは肩を揺らして笑い、楽しくて仕方がないと言わんばかりに町へ、存在を隠そうともしない教会へと急降下した。





 その教会は巨大なゴシック建築だった。
天井は異常に高く、明かりはごくわずかだった。正面入り口の上にあるステンドガラスには花に囲まれ、子供を抱いた女が描かれている。母性に満ちた安らぎを与えてくれるそのステンドガラスは自分に縁が無い。いや、自分にはその安らぎを預かる資格など無いのだ。何故なら、ファートゥームがこれから安らぎを与えるのだから。
 祭壇の上で鈍く金色に輝く巨大な十字架が気に食わなかった。

 「フン……」

 ファートゥームは十字架を見つめ、気に食わないと言わんばかりに鼻を鳴らした。
 空っぽの偶像、あくまで気休め程度にしかならない偶像という名の存在。それはあくまで気休めだ。気休めに祈ったところで何も変わりはしない。それでも人は祈る事を止めない。人間それぞれがそれぞれの不安を抱えているのだ。例え、誰かに理解されなくても、否定されても当人からすれば深刻な問題なのだ。その不安を1人で抱えて生きていけるほど人間は強くない。だから、空っぽだろうと救いを求め偶像に縋るのだ。

 (面倒くさいわねぇ、人間も…)

 そんな救いの無い偶像に祈るよりも、私達のような魔物娘を受け入れる方がよっぽど救いがある。救いどころか、魔物娘と愛を交わし合えば不安を抱くような事は無くなるのだ。
 それを理解していない人間は多い。
 だからこそ、愛しがいがあるというものだが。
 そんな空っぽの十字架に祈りを捧げる一人の男がファートゥームの目に留まった。
 年は恐らく30代前半。浅黒い肌に幅広い肩幅、オールバックにまとめた銀髪とあまり牧師らしくはない。牧師の服もハッキリ言って似合っていなかった。
 そんな男にファートゥームは興味を持った。
 祈りに集中している男はファートゥームに気が付いていない。ファートゥームは十字架に腰かけると男に声をかけた。

 「こんばんは♪」

 「…!!」

 ファートゥームに声をかけられた男は顔を上げ、信じられないというように目を見開いた。

 「ずいぶん信仰深いのね…そういうの疲れない?」

 「う、失せろ!魔物め!」

 そう叫ぶと男は自らの周りに結界を張った。
 詠唱無しに結界を張る男の魔力にファートゥームは素直に感心した。結界の力も悪くない。それに魔法を反射して相手に返すカウンター型の結界だ。
 面白い。悪くはない。
 だが、無意味だ。

 「すごい魔法だ・け・ど…ざーんねん♪」

 ファートゥームが指をパチンと鳴らすと、男の結界はまるでガラス細工のように砕け散った。よほどの自信があったのだろう、それが砕かれた事で男は目に見えるほど狼狽している。
 まるで悪さを隠していたら見つかってしまった子どものようだ。
 そんな男の様子にゾクゾクとしたものを感じながら、ファートゥームはゆっくりと男の元へ舞い降りた。

 「もう魔法は終わり?まだあるのかしら?」

 「ぐ…!」

 楽しそうに笑うファートゥームとは対照的に、男は青虫を噛み潰したような苦い顔で一歩下がる。
 それだけで男には打つ手が無い事が分かった。
 第一、デーモンと魔力比べしようとするのが間違いなのだ。木刀でチャリオットに挑むような無謀そのものだ。

 「ふふふ、ちょーっと焦らされちゃったけど、まぁいいわ。我慢すればこそ、燃え上がるもの…ね?」

 「黙れ!それ以上近付くな!近付けば…」

 「神様の天罰が下るっていうわけ?」

 ファートゥームの言葉に男は押し黙る。
 この男も箱庭の犠牲者だ。ふとファートゥームはそう思った。
 教会によって管理された社会、管理された思想、管理されたキャラクターを演じさせられているのだ。この男は本当の意味で生きていない。今まで生きた事が無かったのだろう。
 だから、それを思い出させてあげよう。私が。

 「いもしない神様に無駄に祈るよりも…私と気持ち良い事した方が有意義だと思わない?」

 まぁ、いるんだけどね。

 「その手には乗らんぞ、悪魔め!」

 男の言い方にファートゥームはムッとした。

 「あ、そ。ふーん、そういう事言うのね。ふーん…」

 ファートゥームは意地悪くそう言って笑うと、男の目の前でゆっくりと服を脱ぎ始めた。
 服を脱ぎ終わると、男が何か言う前にその首に手を回し身体を押しつける。

 「な、な!何を…!!」

 「さぁ…?だって、悪魔だもの」

 まるでメロンのように大きく丸く形の良い乳房が男の胸に押し付けられてふにゃりと潰れる。男は耳まで赤くし、ファートゥームから目を反らしている。しかし、チラチラとファートゥームと胸を盗み見ているのをファートゥームは見逃さなかった。
 ファートゥームは男の首に回した手に力を込めて男に更に強く身体を押しつける。服の上からでも分かる、彼の筋肉の厚みにファートゥームは胸が高まったが、それを表に出さなかった。見せたとしても、余裕の無い男にはどうする事も出来ないだろうが。

 「ほら、どう?わたしのおっぱい…柔らかいでしょ?」

 「っ…」

 「ふふふ、触りたい?触ってみたい?」

 ファートゥームの言葉に男は揺らいでいる。それを後押しするようにファートゥームはより強く、近く男に身体を押しつける。
 しかし、男は折れなかった。

 「わ、私は…貴様のような魔物の誘いには乗らないぞ。か、神に背く訳にはいかないんで、ね…」

 「ふーん、どうして?」

 「…私は捨て子、だった。この教会の前に捨てられていたのを…拾って、育てていただいた……神に助けていただいたのだ。もしそうでなければ、私は……」

 「それは違うわね」

 それは今までの誘惑するような甘い声ではない。
 凛とした鋭く、容赦ない言葉に男は驚いた。
 見れば、ファートゥームの表情は先ほどまでのニヤニヤとしたいやらしい笑みではなく、知性を感じさせる理知めいたものであった。

 「本当に神様が助けてくれるのなら、貴方は捨てられなかった。最初から間違えているわよ、貴方は」

 「そ、それは…神が与えた試練だ!私はそれを受け、乗り切ったのだ!」

 「親に捨てられる事が?愛を受けない事が試練だと?貴方はその試練を望んだの?」
 
 「そ、それは…」

 「いい?望まない試練は試練と呼ばない。そういうのは苛めって言うのよ。神様の試練でも何でもない。貴方は捨てられて、たまたま教会に拾われた。それだけよ」

ファートゥームの言葉に男は何も言えなくなる。その表情は暗く、寂しいものだ。
 男は分かっていたのかもしれない。今の自分は神の試練を乗り越えたのではなく、なるようになった存在なのだと。

 (少し言い過ぎたかしら…)

 ファートゥームはそんな男の顔を見て後悔した。
 彼を悲しい気持ちにさせるつもりは無かった。ただ、彼に現実を見て欲しかっただけだ。
 しかし、ファートゥームの言葉を否定しないという事はこの男も心の何処かで理解していたのかもしれない。
 ファートゥームは男の頭に手を回し、優しく男の顔を自分の胸に招き入れた。男は目を大きく見開き、慌てたようにもがいたが、ファートゥームが優しくも強い力でガッチリと抱き締めているため逃げられず、やがて大人しくなった。

 「…ごめんなさい。キツイ事言ってしまって…」

 男の頭を撫でながらファートゥームは語りかけるような口調で男に謝った。もちろんこれは本心から出た言葉であり、嘘偽りはない。

 「貴方は頑張ったわ…そう、他の誰よりも頑張ったわ。私が保証する」

 「…貴様に何が分かる。出会ったばかりの貴様に」

 「分からなかったらこんな事言わないわ」

 ファートゥームの開き直った言葉に男は睨み上げる。しかし、ファートゥームはそれをあえて受け止めた。男の反抗的な態度もまた愛おしいと感じ始めていたからだ。
 ファートゥームは男の頭を優しく撫でると、男はビクンと身体を震わせる。こうして頭を撫でられるのは初めてなのかもしれない。
 どんな人間だって親に一度は頭を撫でられ褒められる。しかし、親を知らないこの男にはそんな経験は無かった。

 「辛かったでしょ?寂しかったでしょ?もう大丈夫よ。私が貴方の隣にいてあげる。絶対に貴方を見捨てたりはしないわ。約束する」

 「…悪魔の約束など信用できん」

 「失礼ね、悪魔は約束を破らないのよ」

 「……」

 ファートゥームの言葉に男は黙った。
 ファートゥームは母親が子供を甘やかすように優しく撫でる。男の身体から力が抜けて行くのが分かる。それは男が折れかけている証だ。

 「もう貴方に辛い思いはさせない。私が貴方を支えてあげる。ずっと、ずーっと…ね?」

 「……」

 何も言わない男の態度にファートゥームはついにしびれを切らした。

 「だから、私の物になりなさい…えい♪」

 「なッ!!」

 男をその場で押し倒すとファートゥームは馬乗りになった。そして、そのまま服を脱がしていく。男は抵抗したが、成す術も無く裸にされてしまう。
 鍛えられた身体はまるで鋼のように彫りが深く、硬い。手を当てれば確かに生命の鼓動が感じられる。その鼓動にファートゥームはときめき、何処からか薬のビンを取り出した。
 それは淡い紫色をした見るからに怪しげな薬であった。

 「そ、それは…」

 「これはね、魔界産のちょーっと素直になる薬よ」

 つまりは媚薬である。
 ファートゥームはビンを開けると、中の液体を口に含んだ。そのまま飲み込まず、男の口に自分の唇を重ねた。男の眼は大きく開かれジタバタともがいたが、ファートゥームはそれに構わず口内の薬を男の口へと流し込んだ。
 甘ったるくねっとりとしたその薬はファートゥームの口から男の口へと流れて行き、男は呼吸もできずに媚薬を嚥下していく。
 媚薬が食道を通過し、胃に流し込まれた瞬間、男の股間は熱く轟く。

 「ぐ、うぅ…」

 「んぷはぁ♪…喜んでくれたようで何よりだわ♪」

 「う、うるさい…」

 「あら?まだ素直にならないの?ここはもうこんななのに…」

 そう言うとファートゥームは右手をのばし、指を男のそそり勃った肉棒に絡ませた。ファートゥームの指が絡みつき、軽く上下に動くだけで男の股間に快感が走り抜ける。魔界産の媚薬を飲んだ上に、女性経験の無い男にはそれだけで果ててしまいそうになるほどであった。

 「ん…ふふふ♪」

 「な…何がおかしい!」

 嬉しそうに笑うファートゥームに男は思わず声を荒げたが、すぐにファートゥームの唇に口を塞がれた。
 今度は薬ではなく、ファートゥームの舌が男の口内を犯していく。歯茎、頬の内側、そして舌とまるで全てを舐めなければ気が済まないとでもいうような動きで、男の口内を蹂躙していく。その間も男の肉棒への奉仕は忘れていない。器用に指を動かし、緩やかなしかし逃げようの無い快楽を与え続ける。
 そんな貪るようなキスと愛撫に男は次第に身体の力が抜け、抵抗する気力が溶けて行くような錯覚に陥った。
 しばらくファートゥームは男を征服するキスを楽しんでいたが、唇を離した。
 男は少し名残惜しいと思ったが慌ててその考えを打ち払った。しかし、ファートゥームには見抜かれているだろう。
 ファートゥームはクスクスと笑い、肉竿への奉仕を止めた。

 「おかしいわよ、だって…貴方、キスだけでこんなにドキドキしてるんだもの♪」

 笑いながらファートゥームは男の胸をいやらしく撫でる。
 ヒンヤリとしながら滑らかな手の感触に男は唸った。
 ファートゥームは楽しくてたまらないといった様子で男の胸を撫で、もう片方の手で肉竿をしごき続ける。
 男に知る由も無いが、既にファートゥームは我慢の限界であった。
 握る男の欲望を思い浮かべる。今、自分の手の中で暴れているこれを挿入したらどれだけ気持ち良いだろうか。激しく抜き差しされたらおかしくなってしまいそうだ。
 男だけでなく、ファートゥームも先ほどの媚薬を口にしていたのだ。男に大半を飲ませたため少量だが、それでも充分高ぶるほどだ。

 「あぁ…もう我慢できないわぁ♪」

 ファートゥームはたまらずそう漏らした。
 もはや我慢はできない。
 この逞しいモノで快楽に溺れたかった。
 ファートゥームは男に跨りなおすと、勃起の先端を自分の秘所の入り口にコツンと当てる。それだけでも甘い快感だが、全くと言っていいほど物足りない。
 
 「う、うぅ…」

 媚薬とファートゥームの手による愛撫で朦朧としつつ、男はファートゥームを見上げた。
 それに構わず、ファートゥームは肉棒の先端をぬめつく粘膜に当てて、ゆっくりと腰を下ろした。

 「あ、ぎ……んぐ〜〜〜〜ッ!」

 「な…え?」

 ミチミチと音を立てそうなほど男の肉棒はファートゥームの膣を進んでいく。しかし、進むたびにファートゥームは苦痛の呻きを漏らしている。目尻にはうっすらと涙が浮かんでいた。
 男には予想外だった。
 先ほどまで淫らに、余裕を持って誘惑していた相手が実は自分と同じで、「初めて」だったのだ。

 「ハァー…ハァー…い、痛いとは知ってたけど、こんなに痛いとは思わなかったわぁ」

 苦痛に眉を歪め、それでも余裕を装ってニコリと笑うファートゥームに男はどこか憐れむような、それでいて胸が温かく満たされるような不思議な気持ちを抱いた。
 だから、男はそっとファートゥームの頬を撫でた。
 ファートゥームは一瞬、身体を震わせたがすぐに撫でてくる男の掌に頬ずりをした。

 「んふ♪や、やっと…うぐ…!その、気になってくれたのかしら?」

 「…さぁな。ぐ…!」

 撫でた理由。
 それは男にも分からなかった。しかし、そうせずにはいられない。何故かそう思ったのだ。
 ゆっくりとファートゥームは腰を下ろし続け、ついに肉棒が膜を破った瞬間、胸を反らせて息を吐き出した。

 「かッ…!あ、ハァ…ハァ…」

 口を大きく開き、舌を突き出したまま身体が震える。身体が震えるごとに大きく豊かな乳房が揺れる。そのまま倒れそうになるファートゥームを男は慌てて支えた。
 ファートゥームは何も言わず、男に支えられたまま肩で激しく息をしている。
 しばらく、2人はそのままの姿勢であった。支えてくれる男の手を優しくどけるとファートゥームは男に覆いかぶさるように倒れ、抱きついた。両腕で男を抱き締め、頬や首筋にキスをする。ついばむようなキスに男はくすぐったさを覚えたが、不思議と悪い気はしない。男はファートゥームの好きなようにさせていたが、不意にファートゥームが腰を大きく持ち上げ、そのままの勢いで腰を打ちつけた。

 「お…ぐ!」

 衝撃と痺れるような快楽に男は息を詰まらせる。ファートゥームも無理をしたのだろうか、顔を苦痛に歪ませたがそのまま腰を動かし始めた。

 「ん、く…情けない、所を見せたけど…あ、あぁ…!これからが本番よ…!」

 ファートゥームは肉棒を逃がすまいと、膣で締めつける。
 まだ多少痛みは残っているが、今はそれ以上に自分の中に入っている肉棒がもたらす心地良さに夢中になっていた。熱い肉塊で膣内を擦られるのが心地良く、まるで失禁したかのように愛液が溢れだす。

 「ひあぁぁ!ん、あはぁ♪」

 「う、あぁぁ!くぅ…」

 「ね?気持ちいい?…あぁ!気持ちいでしょぉ?」

 ファートゥームは喘ぎ声を洩らしながら女体をうねらせる。動いているのはファートゥームだけだったが、いきなり男が腰を突き上げたのでファートゥームは不意を突かれ、反応してしまう。

 「あふぅ!もっと!…もっとぉぉぉ♪」

 快感に我を忘れ、ファートゥームは大声で叫ぶ。
 男も快感に我を忘れていた。
 肉竿を包んでくる熱くぬめった膣肉と粘膜の感触、自分に跨ってくねりよがる女体、聴覚を支配する甘く淫らな喘ぎ声、どれも男の味わったことの無いものだった。

 「く、ぅぅううう!」

 「ひはぁぁ♪もっと!ねぇぇ、もっと突いてぇぇぇ!」

 少し腰を動かすだけで痺れるような快感に襲われ、呻かずにはいられない。
 すでに痛みは無いようで、ファートゥームは絡みつくような甘い声でおねだりしてくる。目はトロンと快楽に染まり、口からは赤ん坊のように涎を垂らしている。しかし、その表情は赤ん坊ではなく快楽に溺れきった1人の魔物娘であった。
 男はファートゥームの求めに応え、ファートゥームの最奥を突き上げる。肉棒全体がうねうねと蠢く膣肉に絡め取られている。

 「あくぅぅ!いい!気持ちいい!」

 豊かな乳房を揺らし、ファートゥームは尻を上下に振りたてる。男が手を伸ばし両胸を揉み、愛撫してやるとファートゥームは髪を振り乱しながら悶え喘いだ。

 「いい!あぁッ、それッ気持ちいいぃ!!」

 亀頭が子宮を穿つほどに突くたびにファートゥームの秘所はギュウッと締め上げ、肉棒を絞る。
 お互いの身体は汗まみれになっており、男がファートゥームの胸に指を食い込ませようとするとツルンと滑った。
 滑った刺激すら今のファートゥームには快楽であった。

 「お、あぁぁぁ!ね、ねぇ?どう気持ちいでしょ?」

 「あ、あぁぁ…」

 「貴方が、私の物になるなら!きゃふぅ♪ん、いつでもこの快楽が貪れるのよ?いつでも、どこでも!貴方が望むままに、あぁ!」

 ファートゥームは男の胸板に手を置くと、指先で乳首を摘まんで弄ぶ。摘ままれ、捩じられると男は快感がせり上がってくるのを覚えた。

 「はぁッ、ん…あ、はぁんッ!ねぇ、どうかしら?私専用の肉バイブになってくれるなら、あはぁッ!私の身体ッ、好きにしていいのよ?貴方が望むこと、全部してあげるわぁ♪」

 ファートゥームはそう言いながら、怪しく目を細めニンマリと笑う。卑猥な水音が響き、揺れる胸から汗が飛び散る。
 男が仕返しとばかりに乳首を摘まみ、引っ張るとファートゥームはより強く喘ぎ、身悶えする。

 「ひゃうう!あ、ダメぇ!それいいのぉぉ♪」

 歓喜の悲鳴と共に零れた唾液が男の身体にかかる。しかし、その間もファートゥームは膣肉で男を締めあげていた。

 「あ、あぁ、待って、くれ…!も、もう出ッ!」

 「きゃふうッ、ん、はぁ!ひゃあぁんッ!い、いいのよ!イって!あなたもッ、イってぇぇ!」

 ファートゥームの動きがどんどん速くなる。男の欲望も既にキャパシティを超えて耐えがたいほどに膨れ上がっていた。
 おまけに先ほどから囁く彼女の危険で甘い悪魔の誘いに男はこれ以上ないほどに興奮していた。

 「ひぅぅッ、出してッ!いいのよッ、さっきから我慢してるでしょッ?」

 「う、あぁぁぁッ!」

 「一緒に、ね?一緒にイキましょッ!私を孕ませるぐらいッ、出してッ!」

 ファートゥームは肉と肉がぶつかり合う音を奏でながら、囁いた。パンパンといやらしい音が教会中に響き渡る。

 「貴方の精液ッ!全部ッ、飲んであげるわ!私のッ、中でぇえッ!」

 亀頭からは絶え間なくカウパー液が溢れだし、結合部からはファートゥームの愛液と混じり合ってほとばしる。

 「イクッ!あぁッ、私ッ!このまま貴方と一緒にイクのぉッ♪一緒にッ、一緒にぃぃッ!」

 2人の喘ぎと呻きが重なり合い、互いの汗と粘液が絡み合う。
 そして、肉棒が大きく膨らんだかと思うと

 「んひッ!ッあぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 「くッ!うぅぅーッ!」

 大量の精液がファートゥームの子宮目掛けて吐き出された。それはまるで噴水のように溢れ、2人は同時に絶頂した。

 「ひゃッ!あッ、んんん…お腹の中ぁ、熱ぅいぃ♪」

 いまだに射精する男の肉棒に満足しながら、ファートゥームは満足そうに微笑んだ。

 「ふふふ…どう?私の物になる?って、答えを聞くまでも無いかしら…ねぇ?」

 「あ、あぁ…」

 ファートゥームは勝ち誇ったようにそう囁くと、今度は甘えるように男に倒れ込み、その唇を貪るようなキスをした。





 数カ月後
 教団の勢力下だったこの町は魔物娘達によって魔界へと化した。
 それも彼女…ファートゥームが多くの魔物娘を引きつれて侵攻したからだ。その結果、魔物娘と人間の男性のつがいが増え、人間の女性も皆魔物娘へと変化しそれぞれの男性と愛し合っていた。
 町には以前では考えられないほどの活気と生気に満ち溢れていた。
 これもファートゥームのおかげだな、そんなことを考えながら男…ブレアは苦笑した。
 ファートゥームに襲われ、誘惑されたあの夜、彼はファートゥームと契約し魔界進行の手伝いを行なった。
 魔界となってしまったこの町で、ブレアは牧師として現在は魔物娘と人間の結婚式を仕切っている。結婚式はこの町の魔物娘と人間だけでなく、近隣に住んでいた魔物娘と人間の夫婦もブレアの教会で取り行っていた。
 愛し合う者を祝福する。それが今のブレアの使命だった。そして、ブレアにとってそれは喜ばしいことだ。
 現に目の前のサキュバスと人間男性の結婚式を行ない、何とも言えない満ち溢れた気持ちで胸がいっぱいになる。

 「…?」

 しかし、ブレアはふと周囲を見回した。
 彼の嫁…ファートゥームの姿が見当たらないのだ。いつもなら、ブレアの横で新郎新婦を祝福する筈の彼女が見えない。
 何処に行ったのかと、ブレアが教会を見回すと、ファートゥームは簡単に見つかった。
 柱の陰から顔だけを出し、面白くないと言わんばかりに頬を膨らませている。
 そんなファートゥームの様子に違和感を覚え、ブレアは駆け寄った。

 「ファム、どうした?」

 「…別に。何でも無いわ」

 それは嘘だった。
 ムスーッとしたファートゥームを抱き締め、ブレアはその頭を撫でる。

 「何でも無いわけ無いだろ、そんな仏頂面して。ほら、言ってみろって」

 「……だってぇ」

 「だって?」

 「ブレア…あのサキュバスのことずっと見てたでしょ」

 何だ、そんなことか…とブレアは思った。
 確かに、あのサキュバスはかなり美人であり、スタイルも良い。おまけに怪しい色気を持ちながらもどこか気品を感じられるおしとやかさもあった。
 それでも、ブレアにとっての一番はやはり、ファートゥームなのだ。

 「まぁ、否定はしないけどな…」

 「やっぱり…ああいう娘の方が良いんでしょ?どーせ、私は違いますよー」

 拗ねたように唇を尖らせるファートゥームにブレアは困ったように笑った。
 出会った当初は強気で意地悪く高圧的だと思っていたが、実際のファートゥームは子どもっぽくヤキモチやきだった。
 頬を膨らませ、ジトーっと睨むように見上げてくるファートゥームにブレアは苦笑しつつも愛おしさを感じつつ、彼女の頭を撫でる。決め細かく、サラサラとした彼女の髪は撫でるだけでも充分に楽しい。
 しかし、ファートゥームの機嫌はそんなものでは直らなかった。

 「…誤魔化されないんだからね?」

 「心配するな。オレはファム一筋だから」

 「じゃあ、証明してみせて」

 そう言って、ファートゥームはブレアに唇を突き出した。
 肉付きが良く、プルンとした唇にブレアは吸いついた。唾液を交換し、お互いの舌を舐め回す。形の良い唇を舐めるとファートゥームの身体は喜びに震え、更に強くキスを求めるようにブレアに舌を絡ませる。
 ブレアとファートゥームの濃厚なキスに、教会にいた人々が拍手や喝采、祝福の言葉を投げかける。
 ブレアは恥ずかしいと思ったが、それ以上に今はこの甘えてくるデーモンが愛おしくてたまらなかった。
 しばらくそうしてキスをしていたが、不意にファートゥームは離れた。

 「ん、今回は許してあげるわ。続きは夜に…ね♪」

 そう言ってファートゥームは悪戯っぽくウインクして見せた。
 それを見たブレアはファートゥームをより強く抱きしめ、彼女の言っていたことは本当だと思った。

 悪魔は約束を破らない。


おわり
16/01/16 22:10更新 / ろーすとびーふ泥棒

■作者メッセージ
どうも皆さん、こんばんは。
先日スマホが壊れ、代用機に悪戦苦闘しているろーすとびーふ泥棒です。
おかげでLINEもTwiterもできません……

今まであまりデーモンらしくないデーモンばかりだったので、誘惑するデーモンを書いてみました。お口に合いましたでしょうか?
あー、デーモンに甘えたいなぁーなんて思いながらダラダラと妄想のままに書いていました。楽しかったです。
でわでわ

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