魔女は見た
「例のブツは?」
「ここに・・・。」
ここは、何処ともしれぬ街の裏道の暗がり・・・。そこで、2人の人物・・・、いや2人の魔物がなにやら取引をしていた。
一人は、露出度の高い漆黒の修道服に身を包んだダークプリースト。もう一人は、外見はこちらも露出度が(異様に)高い服を着た幼女だが、頭部に生えたヤギの角とその身からあふれ出る魔力からバフォメットであることが分かる。
そのバフォメットが、ダークプリーストに対し様々な薬品の入ったケースを渡す。
「これも、教団機密費ってヤツかしら?」
「まさか、ワシのポケットマネーじゃよ。」
そう言って、二人は越後屋とお代官様よろしく怪しい笑みを浮かべる。
ケースの中身を確認したダークプリーストは、バフォメットに“ある”資料の入った封筒を渡した。そして、その中身を確認したバフォメットは言う。
「うむ。確かにワシが頼んだ資料じゃの。」
「では、これで取引は成立ね。」
そう言って、二人は握手を交わす。
プニプニプ
まだ、交わしている。
プニプニプニプニ
まだまだ、交わしている・・・。
プニプニプニプニプニプニ
「お主・・・、いつまでワシの手を握っているつもりなのじゃ?」
「いいじゃないですか〜、なかなかこういう機会ってないんですから。」
プニプニプニプニ・・・
「・・・」
「はぁ〜〜、この肉球の感触がたまらないわ〜(ウットリ)」
・・・
「最近バフォ様の様子がおかしい?」
そう言ったのは、とあるサバトにおける、魔女達のリーダー格であるイエルである。彼女は、同じサバトの他の魔女達から、とある相談を受けていた。
「そうなんですよ〜。」
「どうしても、気になってしまって〜。」
かといって、うちのバフォ様の奇行は今に始まったことではない。
「私も、どうせすぐに戻るだとうと思ったんですけど。今回は妙に長いっていうか。」
「具体的にはどんな?」
「突然、部屋に引きこもって、オヤツの時間になっても出て来なかったり。」
「夜中に、突然一人で出て行って、しばらく戻ってこなかったり。」
「時々、部屋のなかから不気味な含み笑いも聞こえました〜。」
そういうイエルも、ふと心当たりがあった。ここ最近、妙にバフォメットがお小遣いを前借りする事が多くなっているのだ。
まあ、実際に会ってみるのが一番手っ取り早いであろうと考えたイエルは、さっそく上司のバフォメットの部屋に向かうことにした。
そのバフォメットのいる部屋の前、どうやら当人は在室中であるようだ。
部屋をノックし、入ろうかとしたイエルだが、ふと考えついて部屋の中の様子をのぞき見ることにした。そのまま、鍵穴ごしに部屋の中の様子を伺うと・・・。部屋の中では、バフォメットが机の上で一心不乱にペンを走らせている。
しばらくすると、封筒を取り出し、その中に入っている書類に目を通すと・・・。
「ふむふむ、なるほど。ここはこういう表現のほうがよいのじゃな。」
と、再びペンを走らせる作業に没頭しはじめる。
ここで、部屋の入り口で試案していたイエルは、意を決して勢いよくドアを開ける。
バタン!
「うお、な、なにごとなのじゃ?」
そして、イエルは無言のままズカズカを机に歩みよると、机の上の紙の束をムンズと掴み取る。
「そ、それは〜〜〜。」
紙の束を取り返そうとするバフォメットを巧みに避けながら、イエルは紙に書かれた文章を読んでいき、それが何かを理解した。
「バフォ様・・・。」
「・・・」
「なんでBL小説なんて書いているんですか〜〜〜!」
「しゅ、趣味じゃよ。」
ここで、イエルはふと思った事を口にする。
「バフォ様、『攻め』の反対は何ですか?」
「『受け』じゃろ。」
「はう・・・。ん?」
と、小説の内容を見ていたイエルがある事に気づく。すると、小説を持っている手が震えだす。
「こ、こ、この文章に出ている男性の名前・・・、私のお兄様の名前でないですか!」
「・・・(汗)」
「って、こっちの男性の名前は彼女のお兄様の名前で、こちらはあの子のお兄様だし!」
「・・・(汗汗汗)」
「バ〜〜〜フォ〜〜〜さ〜〜〜ま〜〜〜。」
「っひ!」
魔女の首が、まさしくギッギッギという擬音が聞こえてきそうな雰囲気で、顔をバフォメットに向ける。そして、魔女の怒りがバフォメットに降り注ぐ。
「たとえバフォ様といえども、私達のお兄様達が、私達以外の相手をする小説を書こうなどと言語道断!たとえ、ダークプリーストが許しても、私達は許しません!」
丁度そのころ。
「クチュン!ん〜、や〜ね〜。どこかで私の噂でもしているのかしら?」
バフォにBL小説の資料を渡したダークプリーストが、どこぞでクシャミをしていた。
「さぁ〜〜て、バフォ様。覚悟はよろしくて?」
「お、お主の手に握られている縄はいったい・・・。」
「っんっふっふ・・・。」
「いや〜〜〜〜〜!」
・・・
「ぬお〜〜〜、これが俗にいう焚書というヤツか〜〜。」
バフォメットが書いた小説の山は、今まさに配下の魔女たちの手によって灰・・・、いや魔法の炎によってこの世から根絶させられて行く。バフォメットの血と涙の結晶(?)が炎によって消えゆくなか、当の作者は縄によって簀巻きにされ傍に転がっていた。
「消去、消失、根絶の絶滅ですわ〜♪」
「ああああ・・・。」
「ふんふんふん〜♪・・・っと、あら?」
ふと、イエルはバフォメットが作った文章の他に、用紙の裏に別の文字が書かれているのに気付いた。
「ん?バフォ様何ですか、この裏に書いてあるのは?」
「んあ?それか、それは以前原因不明で国が一つ魔界に堕ちたじゃろう?」
「はあ、そんな事がありましたね。」
「そこで、ワシなりに(暇だったので)その原因を探ろうと、(暇つぶしに)単独で調査したときに、討ち捨てられた教会の施設を見つけての。探検してみたら、上質の紙が散らばっていたのでの、これは小説を書く紙に丁度いいと思って拝借してきたのじゃよ。」
「教会の紙ね〜。」
「施設には、デュラハンの先客がおったが、その施設の金庫にしまわれていた、何か魔力を帯びたアイテムを持って行ったの〜。」
「って、普通は紙じゃなくてそっちを回収してくださいよ・・・。」
そういって、イエルは紙の裏面を見る。
「ん〜、『AM資料』って文字は読めますけど、残りは暗号化されていて分かりませんね。」
「うむ。ワシも内容はさっぱりじゃった。」
「ま、燃やすことに変わりは無いですけどね。」
「ノ〜〜〜〜。」
そう言って、次々と紙を火に入れていく。
しばらくして、小説は全て灰となった。
「あ〜スッキリしました。」
「・・・」
「バフォ様?って、こちらも真っ白に燃え尽きていますね。」
燃やしたといっても、資料や他の(少なくとも自分達のお兄様が出てこない)小説は残してあるんだし、しばらくすれば立ち直るだろうと考えたイエルは、バフォメットを残してとっととこの場を後にすることにした。
「しかし、バフォ様にもお兄様がいれば、こんな馬鹿なことをしなくなると思うのですがね〜〜。」
イエルは、ため息をつきながら、上司のバフォメットに早くお兄様が見つかることを願わずにはいられなかった。
「ここに・・・。」
ここは、何処ともしれぬ街の裏道の暗がり・・・。そこで、2人の人物・・・、いや2人の魔物がなにやら取引をしていた。
一人は、露出度の高い漆黒の修道服に身を包んだダークプリースト。もう一人は、外見はこちらも露出度が(異様に)高い服を着た幼女だが、頭部に生えたヤギの角とその身からあふれ出る魔力からバフォメットであることが分かる。
そのバフォメットが、ダークプリーストに対し様々な薬品の入ったケースを渡す。
「これも、教団機密費ってヤツかしら?」
「まさか、ワシのポケットマネーじゃよ。」
そう言って、二人は越後屋とお代官様よろしく怪しい笑みを浮かべる。
ケースの中身を確認したダークプリーストは、バフォメットに“ある”資料の入った封筒を渡した。そして、その中身を確認したバフォメットは言う。
「うむ。確かにワシが頼んだ資料じゃの。」
「では、これで取引は成立ね。」
そう言って、二人は握手を交わす。
プニプニプ
まだ、交わしている。
プニプニプニプニ
まだまだ、交わしている・・・。
プニプニプニプニプニプニ
「お主・・・、いつまでワシの手を握っているつもりなのじゃ?」
「いいじゃないですか〜、なかなかこういう機会ってないんですから。」
プニプニプニプニ・・・
「・・・」
「はぁ〜〜、この肉球の感触がたまらないわ〜(ウットリ)」
・・・
「最近バフォ様の様子がおかしい?」
そう言ったのは、とあるサバトにおける、魔女達のリーダー格であるイエルである。彼女は、同じサバトの他の魔女達から、とある相談を受けていた。
「そうなんですよ〜。」
「どうしても、気になってしまって〜。」
かといって、うちのバフォ様の奇行は今に始まったことではない。
「私も、どうせすぐに戻るだとうと思ったんですけど。今回は妙に長いっていうか。」
「具体的にはどんな?」
「突然、部屋に引きこもって、オヤツの時間になっても出て来なかったり。」
「夜中に、突然一人で出て行って、しばらく戻ってこなかったり。」
「時々、部屋のなかから不気味な含み笑いも聞こえました〜。」
そういうイエルも、ふと心当たりがあった。ここ最近、妙にバフォメットがお小遣いを前借りする事が多くなっているのだ。
まあ、実際に会ってみるのが一番手っ取り早いであろうと考えたイエルは、さっそく上司のバフォメットの部屋に向かうことにした。
そのバフォメットのいる部屋の前、どうやら当人は在室中であるようだ。
部屋をノックし、入ろうかとしたイエルだが、ふと考えついて部屋の中の様子をのぞき見ることにした。そのまま、鍵穴ごしに部屋の中の様子を伺うと・・・。部屋の中では、バフォメットが机の上で一心不乱にペンを走らせている。
しばらくすると、封筒を取り出し、その中に入っている書類に目を通すと・・・。
「ふむふむ、なるほど。ここはこういう表現のほうがよいのじゃな。」
と、再びペンを走らせる作業に没頭しはじめる。
ここで、部屋の入り口で試案していたイエルは、意を決して勢いよくドアを開ける。
バタン!
「うお、な、なにごとなのじゃ?」
そして、イエルは無言のままズカズカを机に歩みよると、机の上の紙の束をムンズと掴み取る。
「そ、それは〜〜〜。」
紙の束を取り返そうとするバフォメットを巧みに避けながら、イエルは紙に書かれた文章を読んでいき、それが何かを理解した。
「バフォ様・・・。」
「・・・」
「なんでBL小説なんて書いているんですか〜〜〜!」
「しゅ、趣味じゃよ。」
ここで、イエルはふと思った事を口にする。
「バフォ様、『攻め』の反対は何ですか?」
「『受け』じゃろ。」
「はう・・・。ん?」
と、小説の内容を見ていたイエルがある事に気づく。すると、小説を持っている手が震えだす。
「こ、こ、この文章に出ている男性の名前・・・、私のお兄様の名前でないですか!」
「・・・(汗)」
「って、こっちの男性の名前は彼女のお兄様の名前で、こちらはあの子のお兄様だし!」
「・・・(汗汗汗)」
「バ〜〜〜フォ〜〜〜さ〜〜〜ま〜〜〜。」
「っひ!」
魔女の首が、まさしくギッギッギという擬音が聞こえてきそうな雰囲気で、顔をバフォメットに向ける。そして、魔女の怒りがバフォメットに降り注ぐ。
「たとえバフォ様といえども、私達のお兄様達が、私達以外の相手をする小説を書こうなどと言語道断!たとえ、ダークプリーストが許しても、私達は許しません!」
丁度そのころ。
「クチュン!ん〜、や〜ね〜。どこかで私の噂でもしているのかしら?」
バフォにBL小説の資料を渡したダークプリーストが、どこぞでクシャミをしていた。
「さぁ〜〜て、バフォ様。覚悟はよろしくて?」
「お、お主の手に握られている縄はいったい・・・。」
「っんっふっふ・・・。」
「いや〜〜〜〜〜!」
・・・
「ぬお〜〜〜、これが俗にいう焚書というヤツか〜〜。」
バフォメットが書いた小説の山は、今まさに配下の魔女たちの手によって灰・・・、いや魔法の炎によってこの世から根絶させられて行く。バフォメットの血と涙の結晶(?)が炎によって消えゆくなか、当の作者は縄によって簀巻きにされ傍に転がっていた。
「消去、消失、根絶の絶滅ですわ〜♪」
「ああああ・・・。」
「ふんふんふん〜♪・・・っと、あら?」
ふと、イエルはバフォメットが作った文章の他に、用紙の裏に別の文字が書かれているのに気付いた。
「ん?バフォ様何ですか、この裏に書いてあるのは?」
「んあ?それか、それは以前原因不明で国が一つ魔界に堕ちたじゃろう?」
「はあ、そんな事がありましたね。」
「そこで、ワシなりに(暇だったので)その原因を探ろうと、(暇つぶしに)単独で調査したときに、討ち捨てられた教会の施設を見つけての。探検してみたら、上質の紙が散らばっていたのでの、これは小説を書く紙に丁度いいと思って拝借してきたのじゃよ。」
「教会の紙ね〜。」
「施設には、デュラハンの先客がおったが、その施設の金庫にしまわれていた、何か魔力を帯びたアイテムを持って行ったの〜。」
「って、普通は紙じゃなくてそっちを回収してくださいよ・・・。」
そういって、イエルは紙の裏面を見る。
「ん〜、『AM資料』って文字は読めますけど、残りは暗号化されていて分かりませんね。」
「うむ。ワシも内容はさっぱりじゃった。」
「ま、燃やすことに変わりは無いですけどね。」
「ノ〜〜〜〜。」
そう言って、次々と紙を火に入れていく。
しばらくして、小説は全て灰となった。
「あ〜スッキリしました。」
「・・・」
「バフォ様?って、こちらも真っ白に燃え尽きていますね。」
燃やしたといっても、資料や他の(少なくとも自分達のお兄様が出てこない)小説は残してあるんだし、しばらくすれば立ち直るだろうと考えたイエルは、バフォメットを残してとっととこの場を後にすることにした。
「しかし、バフォ様にもお兄様がいれば、こんな馬鹿なことをしなくなると思うのですがね〜〜。」
イエルは、ため息をつきながら、上司のバフォメットに早くお兄様が見つかることを願わずにはいられなかった。
11/01/28 23:39更新 / KのHF