毒殺未遂事件?
教会に遺されたある記録。
その日、とある魔物を討伐するために教会が騎士2個師団を派遣した。
その魔物とはバフォメット。魔王の世代交代以前よりから、上位の魔族として魔物達の上に君臨してきた一族である。派遣された騎士団は、そのバフォメットを討伐するために編成された者達であった。
当初、2個師団という膨大な数は多すぎるのではないのか?との、懸念の声もあったのだが、相手があのバフォメットという事でその意見も少数派に留まり、結局はその数での進軍となったのだ。
騎士団は、途中で遭遇した魔物達にも屈することなく、目標が居座る屋敷を包囲する所まで行くことができた。
しかし・・・。
伝書鳩による、『これから進軍を開始する』との手紙を最後に、彼らとの連絡は一切途絶してしまったのだ・・・。
状況から察するに、おそらく彼らは全滅したものと思われる。
まさに、恐るるべきは魔界の猛者共である。
・・・
あれから、数十年後(現在)・・・。
「なに?かのサバトと連絡が取れなくなったじゃと?」
そう、配下の魔女であるヴィネルからの報告を受けたバフォメットのレフレンシアは、目をつむりしばし試案したあとこう命令を下した。
「ヴェネルよ。よくない事態が進行しているのやもしれん。ただちに、かのサバトへと向かい、実体を調査してくるじゃ。」
「っは」
「よもやと思うが・・・、教会がからんでおるのかもしれん。一応、用心のために魔女を何人かつれいくのじゃ。」
その命令を受けたヴェネルは、その日の内に魔女による調査隊を編成し、問題のサバトへと出発したのだった。
次の日。
ヴェネルは、問題のサバトのある屋敷へと到着した。
「屋敷自体は無事・・・。戦闘が行われたような形跡はないわね・・・。」
意を決っして、ヴェネル達調査隊は屋敷の中へとはいって行った。
屋敷内は、妙に静まり返っており、妙な匂いが充満している。
「何・・・。この匂いは・・・。」
「どうやら、食堂の方から流れて来ているようです。」
そこで、一路食堂の方へ向かってみると・・・。
そこには、バフォメットをはじめ、何人かの魔女達が倒れ伏していたのだった。
「これは・・・、いったい・・・。」
・・・
さかのぼる事、およそ3日前・・・。
「はあ、料理ですか〜。」
「うむ。いいお兄様を捕まえるためには、力だけではなく良妻としての家事能力も優れていなくてはと考えてのう。」
「まあ、いいんじゃないですか。」
そう答えたものの、うちのバフォ様がまともな事を言って、何事も起こらなかったためしが無いのも事実・・・。決して、油断しては行けないのだ。
「と、まあいう訳で、今晩の食事はワシが作るでの。お主は魔女達を食堂に集め、楽しみにまっておるがよい。」
そう言うと、バフォ様は意気揚々と台所へと向かって行ったのだ。
一方、私はと言うと・・・。
「う〜〜ん。これは胃薬と、食中毒に対する薬草の準備と・・・。万が一に備えて、蘇生処置の心得のある者を探し出しておかなければ・・・。」
そう言いながら、バフォ様とは別の意味で“夜食”の準備に取り掛かったのだ。
「うぐ!」
一口食べたあと、私の口から出たものは、呻き声であった。
まずいなんてモノではない。味覚というものが、口にいれてよい物と、口にいれてはいけない物とを分けるために進化したものならば、これは間違いなく口にいれるべきでない物だ。
周りからも、魔女達の悶絶する声が響いて来る。
これは、何とか食事を止めるための口実をつくらなければ、このサバトは全滅する。いやマジで。
「あの、バフォさ・・・。」
そうバフォ様に言いかけて、残りの言葉を口にすることはできなかった。
なぜなら、突如私の体中から力が抜け落ち、そのまま机の上に突っ伏してしまったからだ。
私の予想が甘かった・・・。まさか一口だけでここまでとは・・・。
「なんじゃ?皆いきなりどうしたのじゃ?」
どうやら、他の魔女達も同じ状況にあるようだ。
「料理に、何か変な物でもまざったかのう?」
そう言って、バフォ様は自分の食器に盛られた料理を一口食べて・・・。
バタン
そのまま、倒れて動かなくなってしまった。
そして、私はバフォ様の母親に関する、ある伝説を思い出していたのだ。
バフォ様の母上様も、嫁に行くには料理ができなければと考えていた。そして、それを実践したのだ。
だが、丁度その頃。教会は、バフォメット(むろんうちのバフォ様の母上様)を討伐するべく、騎士2個師団を派遣していたのだ。
その日、バフォ様の母上様(だんだん面倒くさくなってきたので、以下バ母様)は、台所に籠って料理をなさっていた。そこへ、騎士団が到着する。騎士団は、バ母様を倒すために彼女の屋敷を包囲したのだ。
そして・・・、伝説が産まれた・・・。
バ母様は、台所の換気を行う為に部屋の窓を開けたのだ・・・。部屋の窓から、料理の匂いが外部に漏れ出して行く。
そして、その匂いを嗅いだ教会の騎士達が次々と悶絶しながら倒れて行ったのだ。やがて、騎士団の中で立っている者は誰もいなくなった・・・。
そうしてバ母様は、(自分も知らないうちに)戦うことなく教会の騎士2個師団を全滅に追いやったのだ。
ちなみに、我に返った騎士達は、(どうやってかは知らないが)自分達が料理の匂いにやられたことを知ると・・・。料理の匂いで全滅したなどと報告できるはずもなく、教会に戻ることなく自分達の故郷に帰って行ったと言う・・・。
「まさか・・・、あの伝説が真実だったとは・・・。(ガク)」
そうして、私は自らの意識を手放したのだった。
・・・
「つまり・・・、アヤツの料理を食べた者達が、あまりのまずさに悶絶して仮死状態に陥り・・・、そのままサバトが機能しなくなったと・・・。」
その報告を受けたレフレンシアは、頭をかかえて机の上に突っ伏してしまった。
「おのれ〜、母親が母親なら、娘も娘なのじゃ。」
「かなり衰弱しておりましたが、仮死状態になっていたことが幸いし、全員命に別条は無いとのことです。」
「とうぜんなのじゃ!その様な事でサバトが全滅してはたまらんのじゃ。」
「で、これが証拠として持ち帰った、料理なのですが・・・。」
そう言って、ヴェネルが容器の蓋を開けると・・・。
「「あ!」」
・・・
「何?レフレンシアのサバトと連絡が取れなくなったじゃと?」
その報告を受けたバフォメット(今まで登場した2人とは別)は、腕を組みながら考え込んだ・・・。
「これは由々しき事態かもしれぬ。よし、調査隊を送り込むのじゃ!」
以下、エンドレス・・・。
その日、とある魔物を討伐するために教会が騎士2個師団を派遣した。
その魔物とはバフォメット。魔王の世代交代以前よりから、上位の魔族として魔物達の上に君臨してきた一族である。派遣された騎士団は、そのバフォメットを討伐するために編成された者達であった。
当初、2個師団という膨大な数は多すぎるのではないのか?との、懸念の声もあったのだが、相手があのバフォメットという事でその意見も少数派に留まり、結局はその数での進軍となったのだ。
騎士団は、途中で遭遇した魔物達にも屈することなく、目標が居座る屋敷を包囲する所まで行くことができた。
しかし・・・。
伝書鳩による、『これから進軍を開始する』との手紙を最後に、彼らとの連絡は一切途絶してしまったのだ・・・。
状況から察するに、おそらく彼らは全滅したものと思われる。
まさに、恐るるべきは魔界の猛者共である。
・・・
あれから、数十年後(現在)・・・。
「なに?かのサバトと連絡が取れなくなったじゃと?」
そう、配下の魔女であるヴィネルからの報告を受けたバフォメットのレフレンシアは、目をつむりしばし試案したあとこう命令を下した。
「ヴェネルよ。よくない事態が進行しているのやもしれん。ただちに、かのサバトへと向かい、実体を調査してくるじゃ。」
「っは」
「よもやと思うが・・・、教会がからんでおるのかもしれん。一応、用心のために魔女を何人かつれいくのじゃ。」
その命令を受けたヴェネルは、その日の内に魔女による調査隊を編成し、問題のサバトへと出発したのだった。
次の日。
ヴェネルは、問題のサバトのある屋敷へと到着した。
「屋敷自体は無事・・・。戦闘が行われたような形跡はないわね・・・。」
意を決っして、ヴェネル達調査隊は屋敷の中へとはいって行った。
屋敷内は、妙に静まり返っており、妙な匂いが充満している。
「何・・・。この匂いは・・・。」
「どうやら、食堂の方から流れて来ているようです。」
そこで、一路食堂の方へ向かってみると・・・。
そこには、バフォメットをはじめ、何人かの魔女達が倒れ伏していたのだった。
「これは・・・、いったい・・・。」
・・・
さかのぼる事、およそ3日前・・・。
「はあ、料理ですか〜。」
「うむ。いいお兄様を捕まえるためには、力だけではなく良妻としての家事能力も優れていなくてはと考えてのう。」
「まあ、いいんじゃないですか。」
そう答えたものの、うちのバフォ様がまともな事を言って、何事も起こらなかったためしが無いのも事実・・・。決して、油断しては行けないのだ。
「と、まあいう訳で、今晩の食事はワシが作るでの。お主は魔女達を食堂に集め、楽しみにまっておるがよい。」
そう言うと、バフォ様は意気揚々と台所へと向かって行ったのだ。
一方、私はと言うと・・・。
「う〜〜ん。これは胃薬と、食中毒に対する薬草の準備と・・・。万が一に備えて、蘇生処置の心得のある者を探し出しておかなければ・・・。」
そう言いながら、バフォ様とは別の意味で“夜食”の準備に取り掛かったのだ。
「うぐ!」
一口食べたあと、私の口から出たものは、呻き声であった。
まずいなんてモノではない。味覚というものが、口にいれてよい物と、口にいれてはいけない物とを分けるために進化したものならば、これは間違いなく口にいれるべきでない物だ。
周りからも、魔女達の悶絶する声が響いて来る。
これは、何とか食事を止めるための口実をつくらなければ、このサバトは全滅する。いやマジで。
「あの、バフォさ・・・。」
そうバフォ様に言いかけて、残りの言葉を口にすることはできなかった。
なぜなら、突如私の体中から力が抜け落ち、そのまま机の上に突っ伏してしまったからだ。
私の予想が甘かった・・・。まさか一口だけでここまでとは・・・。
「なんじゃ?皆いきなりどうしたのじゃ?」
どうやら、他の魔女達も同じ状況にあるようだ。
「料理に、何か変な物でもまざったかのう?」
そう言って、バフォ様は自分の食器に盛られた料理を一口食べて・・・。
バタン
そのまま、倒れて動かなくなってしまった。
そして、私はバフォ様の母親に関する、ある伝説を思い出していたのだ。
バフォ様の母上様も、嫁に行くには料理ができなければと考えていた。そして、それを実践したのだ。
だが、丁度その頃。教会は、バフォメット(むろんうちのバフォ様の母上様)を討伐するべく、騎士2個師団を派遣していたのだ。
その日、バフォ様の母上様(だんだん面倒くさくなってきたので、以下バ母様)は、台所に籠って料理をなさっていた。そこへ、騎士団が到着する。騎士団は、バ母様を倒すために彼女の屋敷を包囲したのだ。
そして・・・、伝説が産まれた・・・。
バ母様は、台所の換気を行う為に部屋の窓を開けたのだ・・・。部屋の窓から、料理の匂いが外部に漏れ出して行く。
そして、その匂いを嗅いだ教会の騎士達が次々と悶絶しながら倒れて行ったのだ。やがて、騎士団の中で立っている者は誰もいなくなった・・・。
そうしてバ母様は、(自分も知らないうちに)戦うことなく教会の騎士2個師団を全滅に追いやったのだ。
ちなみに、我に返った騎士達は、(どうやってかは知らないが)自分達が料理の匂いにやられたことを知ると・・・。料理の匂いで全滅したなどと報告できるはずもなく、教会に戻ることなく自分達の故郷に帰って行ったと言う・・・。
「まさか・・・、あの伝説が真実だったとは・・・。(ガク)」
そうして、私は自らの意識を手放したのだった。
・・・
「つまり・・・、アヤツの料理を食べた者達が、あまりのまずさに悶絶して仮死状態に陥り・・・、そのままサバトが機能しなくなったと・・・。」
その報告を受けたレフレンシアは、頭をかかえて机の上に突っ伏してしまった。
「おのれ〜、母親が母親なら、娘も娘なのじゃ。」
「かなり衰弱しておりましたが、仮死状態になっていたことが幸いし、全員命に別条は無いとのことです。」
「とうぜんなのじゃ!その様な事でサバトが全滅してはたまらんのじゃ。」
「で、これが証拠として持ち帰った、料理なのですが・・・。」
そう言って、ヴェネルが容器の蓋を開けると・・・。
「「あ!」」
・・・
「何?レフレンシアのサバトと連絡が取れなくなったじゃと?」
その報告を受けたバフォメット(今まで登場した2人とは別)は、腕を組みながら考え込んだ・・・。
「これは由々しき事態かもしれぬ。よし、調査隊を送り込むのじゃ!」
以下、エンドレス・・・。
11/06/05 06:53更新 / KのHF
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