連載小説
[TOP][目次]
秘宝事件
 その日、私はいきなりバフォ様に呼ばれたのだ。

「ふ〜〜、今度はいったい何なのでしょう・・・。」

 そう言いながら、私はこのサバトが管理している屋敷内を、バフォ様のいる部屋へ向かって歩いて行った。



 バフォ様の待つ部屋に到着し、ノックをして返事を待っていると。

「おう、まっておったぞい。さあ、早く入るのじゃ。」

 そう言われ、ドアを開けて入ると・・・。

「おりゃ!」

 ガポ!

「え!」

 と、バフォ様の部屋に入るなり、突如私は暗闇につつまれた。どうやら、バフォ様が私に何かをかぶせたらしい。

「バフォ様!何なのですこれは!」
「あのとき失った道具をの、いくつか回収できての〜。」
「あのとき?」

 その言葉聞いた私は、数日前の出来事を思い出していた。

 以下、回想シーンへ。



・・・



「バフォ様、なんですかそれは?」

 そう私が尋ねると、バフォ様は意気揚々と答えた。

「うむ、よくぞ聞いてくれた。これは、昨日酒場でポーカーの賭けをやっての。」
「昨日の夜に姿を見ないと思ったら、またそんなことを・・・。」

 私は、おもわずため息が出た。が、当のバフォ様は気にする事なく話を続ける。

「での、昨日はワシの大勝での、負けたヤツが金が無いから珍しい道具で勘弁してくれと言うから、色々と巻きあげてやったのよ。ハッハッハッハ。」

 そう言い、ふんぞりかえって笑っている。

「で・・・、巻きあげたのがこのガラクタの山と・・・。」

 そう言いながら、私はその使い道の分からない道具の山を見上げた。

「しかし、見た事の無いアイテムばかりですね〜。」
「巻きあげたヤツが言うには、自分は『ぷれいんずうぉ〜か〜』とか言っておったな。」
「なんですか?その『ぷれいんずうぉ〜か〜』と言うのは?」
「知らん。」
「・・・」
「・・・」
「しかし、役に立つのですか?」
「うむ、これなんぞは、いらないものや邪魔なものを掃除するときに便利だとか言っておったな。」

 そう言うと、バフォ様は手のひら大の円盤状の物を取った。その円盤状の物には、なにか文字が刻まれている。

「何か書いてありますね〜・・・。『ラリー・ニーヴン』・・・でしょうか?」
「いやいや。逆でNEVINYRRALが正しいようじゃ。」
「どうやって使うのでしょうか?」
「円盤だけに、手の上でクルクルと回すような事を言っていたような・・・。」

 そう言いながら、バフォ様が手のひらの上に乗せた円盤を回すと。円盤の片面が突然開いたのだ。

「「ん?」」

 私のバフォ様が、その円盤に開いた部分を覗き込むと・・・。

「あれ?薄い円盤のはずなのに・・・、なんか深い穴が空いているような・・・。」

 そう、円盤の片面に開いた穴は、掌に載せている程の薄い円盤にも関わらず、まるで空間の法則を無視してどこまでも深いものだったのだ。そして、その穴の壁には無数の牙が並んでおり、穴自体が何か得体の知れない生き物の口の中のように、蠢いているのだった。

「む?」

 その穴を覗いていたバフォ様が何かに気がついた。

「どうしました?」
「穴の向こうから、何かが向かってきているような・・・。」
「たしかに・・・。何でしょうか?何かイカの触椀のような物が・・・。」


・・・・・・・・・



・・・・・・



・・・



「っは!」

 気が付いてみると、そこに屋敷は無くただの荒れ地だった。
周囲には、まだ気を失っているバフォ様や、屋敷にいたはずの魔女達が倒れている。

「ここは?」

と、周囲を見渡すと・・・。なにやら、見覚えのある風景だった。

「あ!」

そこで私は気がついた、丁度屋敷があった場所の風景だったのだ。
どうやら、あのアイテムはみごとに屋敷とそこにあった物だけを消し去り、私達だけがその場に取り残されたようだ。

「どうするのよ・・・、これ・・・。」

 私はただ、その場に茫然と立っていたのだった・・・。



・・・



 以上、回想シーン終了。

「ハッハッハ。道具を回収した以上は、やっぱ使ってみたくなるものでの〜。」
「って、ぜんぜんこりてなかったんですか〜!」
「あの程度で、ワシがこりると思ったのかの。」
「はう〜〜〜。」

 そうだった・・・、彼女はあの程度でこりるような御方ではなかった・・・。まったく、あれから別の廃墟を見つけ、掃除をし、やっと新たな屋敷として使えるようになったばかりだと言うのに・・・。
 が・・・。

「これは、いったい何なんですか?」
「うむ、よくぞ聞いてくれた。」

 目を塞がれて見えないが、このかぶり物の向こうでは、きっとまた偉そうに踏ん反りかえっているのだろう。

「なんでも、精神隷属器と言う物らしいの。」
「隷属・・・。」

 その名前を聞き、私は嫌な予感がした・・・。
 と、言うか。嫌な予感しか感じないでしょうが!

「その名の通り、それを取り付けた者の言う通りに行動してしまう道具なのじゃ。」
「って、取れない〜。」
「一度起動したら、取れないからの〜。」

 と、バフォ様のうれしそうな声が聞こえてくる。
 だが・・・。

「・・・」
「・・・」
「あの〜・・・。」
「ん?」
「で、何んで命令してこないのですか?」
「うむ。実は取り付けたものの、何を命令するか考えていなかったのじゃ。」
「・・・」
「・・・」

 私達の間に、気まずい空気が流れて行く・・・。
 と、そのとき・・・。

「そうじゃ!」
「ん?」
「前々から、素のお主というものを見てみたいと思っての。」
「はあ・・・。」
「うしししし・・・。では命令するぞ。」
「・・・(ゴクリ)」
「命令は、『理性をかなぐり捨てて、お主のやりたい事をする』のじゃ。」

 その命令を聞き、頭で理解したとき・・・・。私の意識は途切れたのだった・・・。



・・・



 そして、私はまた唐突に我に返ったのだ。

「うう・・・。この展開、なんかデジャヴがある気がする・・・。」

 私が被らされていた、精神隷属器なる物は無くなっており、回りを見渡すことができるようになっていた。
 と、私が周りを見渡してみると・・・。

「ええ〜〜!!?」

 以前見たように、そこにはバフォ様や同僚の魔女達が倒れていたのだが・・・。
 なぜか、全員裸。おまけに、全身に汗をかいているうえ、息が荒くなっているのだ。

「うう、ワシ・・・、もうお嫁に行けないのじゃ・・・。」
「はあ・・・、お姉さま・・・凄いです・・・。」
「グスン・・・、なんで・・・なんで・・・こんな事を・・・。」

 よく見ると、私も服を着ておらず、魔女の特徴の1つである帽子以外素っ裸だったのだ。

「な、な、な、何よこれ〜〜〜〜〜〜!」

 そう屋敷内に、私の声がむなしく響き渡ったのだ・・・。



 その日以降、何やらバフォ様の私に対する態度が、妙にオドオドするようになった。
 他にも、同僚の魔女達の私に対する対応がかなり変化している。ある物は、私を見ると顔を伏せて走りさったり・・・。ある物は、私に対して妙に熱っぽい視線を送ったり・・・。

「ほんと、あの日私はいったい何をやらかしたのよ〜〜〜・・・・。」

 今日も屋敷に、私のむなしい叫び声が響いたのだった。
11/06/04 18:37更新 / KのHF
戻る 次へ

■作者メッセージ
「で、他に変なモノは無いですよね!」

 そう私が言うと、バフォ様は妙にひきつった顔で答えた。

「へ・・・変な物はないぞ・・・、お、お、面白い物ならあるがの。(汗汗」
「ほう・・・、たとえば?」
「たとえば・・・、この『呪われた巻物』なんてどうじゃ?」
「思いっきり、そのまんまの名前ですね・・・。」

 なんて私が白けていると・・・。

「道具だけではないぞ。たとえば・・・、これじゃ。」

 そう言って、なにやら紙切れを出してくる。

「これは?」
「うむ。『リシャーダ』とかいう港町の、統治権利証じゃ。」
「で、その『リシャーダ』という港町は、何処にあるんですか。」
「知らん。」
「・・・」
「・・・(汗汗」
「・・・(ジロリ)」
「ほ、他にもあるぞ。」
「ほう・・・。」
「これなんかどうじゃ!」

 そう言って出してきたのは、なにやらでっかいフラスコのような機械。

「この『ファイレクシアの処理装置』は、自分の生命力を消費することで、自分の分身である下僕を作り出すことができるじゃ!」
「はう〜〜〜。」

 私は、思いっきりため息をついた・・・。

「この『黒の万力』や『拷問台』なんかは、お主にぴったりじゃぞ。」
「どこがですか〜〜〜!」
「ワシにさんざん、あんな事やこんな事をしおったのに・・・。」
「うぐ・・・。」

 と、そのとき・・・。

「なんじゃ?」
「今、屋敷が揺れたような・・・?」

 そこへ、一人の魔女がこの部屋に飛び込んできたのだ。

「何じゃと!『ファイレクシアンドレッドノート』が魔女12人を取りこんで暴走しておるじゃと!」
「もう・・・、いいかげんにして〜〜〜!」

 どうやら、私のむなしい叫び声が屋敷に響き渡ることに変化は無いようだ。

「っと、最後に一言言っておくのを忘れていました。」
「何じゃ?」
「第1話から、分かる人にしか分からないネタを連発してすみません。次からは、大丈夫だと思われます。」
「お主は誰に言っておるのじゃ?」
「気にしない、気にしない。では〜〜〜。」

TOP | 感想 | RSS | メール登録

まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33