俺の弟で剣士の、ベレが結婚した。
相手は旅のサラマンダー、バナルだとか。
その知らせを聞いたとき、俺は複雑な気持ちになった。
祝ってやりたい気持ちはもちろんあったし、
事実きちんとおめでとうも言った。
それでも・・競いあい腕を高めて来た弟がどこか自分の手の届かない所に
行ってしまったような気がしていた。

「・・何を考えているんだ、俺は。
あれはいい奴だし、幸せそうに笑ってたじゃないか。」
自宅・・もう一人になってしまったその庭で
俺、格闘家ディアは一人こぼしていた。
それは、愚痴と言うよりも独り言に近い。
「大体・・あいつも腕磨きは続けると言った。
だから、良いじゃないか。」
そう結論付け、家の中に入ろうとする。
だが視界の端に近づいてくる影が見え、
俺はその動きを止め影の方に向き直った。
影は近づくにつれ、その輪郭をはっきりとさせていく。
来ていたのは、酒樽を持ったオーガだった。
それも知り合い。
いや、知り合い程度ではない・・
目の前のオーガ、ガイラはエキドナを母に持つ、
バナルの姉なのだから。

「お・・良かった良かった、まだ寝てなかったんだね？」
「ガイラ・・どうしたんだこんな遅くに。」
聞くと彼女は重そうな酒樽を片手で持ち上げこう言った。
「今から二人っきりで飲まないかい？
というか付き合ってくれよ、一人じゃ寂しい。」
「・・・・」
彼女の言い方に片手で頭を支える。
彼女とは、自分の妹やら弟やらに先を越され
寂しいという共通点が有り、それなりの関係だ。
彼女の性格は知っている。
どうせ断っても無理矢理にするだろう。
「分かった・・だが、あまり飲みすぎるなよ。
潰れられると片付けが面倒だからな。」
断る理由も、断れる口実も無かった。


家の中にガイラを招き入れ、杯を渡す。
彼女は「へへ、ありがとよ。」と言って酒を注ぎ
ゴクゴクと飲み始めた。
人の家だというのに清々しいほどの飲みっぷりだ。
だが俺には・・それが
何かを流し込もうとしているようにも見えた。
それは、彼女の目に少しだけ寂しさが見えたからだ。
やはり彼女も寂しかったりするのだろうか。
そうしてずっと思案していると、彼女から声がかかる。
「どうした・・飲まないのかい。
あんた、飲めない方じゃなかったろう？」
心底不思議そうな緑の顔。
それを見て思う・・酒の勢いでなら言えることもあるかもな、と。
「すまないな、少し考え事をしていた。」
そう言い、俺も杯に酒を酌み飲む。
いつものように呷り、アァ・・と息をついたところで彼女から声がかかる。

「なぁ・・考え事ってなぁ、バナルとあんたの弟の事かい？」
「・・・・」
その質問には答えなかったし、頷きもしない。
しかし答えなくとも・・いや、答えないことこそが
この場では最大の答えになっていた。
彼女は、やっぱりか、と呟き二杯目を呷る。
そして一つ息を吐き、空になった杯を見つめた。
「あんたの目を見りゃあすぐに分かるよ・・。
何てったって、あいつが結婚した日の夜の、
鏡ん中のあたしの顔とそっくりなんだ。」
オーガという種族らしくないしみじみとした彼女の表情。
それを見て何故か俺は強がってしまった。
「・・そんなんじゃない。
俺の頭は、そんなに・・単純じゃない。」
「あたしの頭は単純だってかい？
まぁ・・そうかも知れないねぇ・・
何てったって、妹がいなくなったってだけで
こんなにさびしいんだ・・。」
そう言いつつ、彼女はいつの間にか注いだ三杯目を呷る。
しかしいつもと違い、その顔は赤くなかった。
寂しそうな目をしたまま続ける。

「あいつな・・小さい時はお姉ちゃんお姉ちゃんって、
そりゃあもう甘えん坊だったのさ。
それがあんなに逞しくなっちまってよ・・。」
「・・ベレだってそうだぞ。
剣が上手くなりたいって、教えてくれって剣を使わない俺に言ってきた。」
「へえ・・やっぱりあんたの所も同じようなもんなのかい？」
「ああ、だろうな。
ま・・似た者夫婦って事になるんじゃないか。」
少しだけ、思い出話をしたことで俺とガイラの顔は明るくなる。
それと同時に、酒を進める手も徐々に早まっていった。
それから俺達は・・初めて頭を撫でたときの事だとか
成長が嬉しかったときだとかを話し続けた。
気分が盛り上がれば、それだけ酒は進むものである。
幸いに、二人とも強い方だったので話に花が咲いた。


そして夜も更け、酒も無くなった頃。
止めるのには、丁度いい辺りだと俺は感じていた。
「・・もう酒がないな。
このあたりで、やめておくか。」
そう言って立ち上がり、ガイラのそばに行く。
すると彼女はニヤリと笑いこう言った。
「何言ってんだい・・お楽しみは、これからだろ？」
「・・？もう何も・・っ！？」
疑問を口にしようとした瞬間、彼女に手を掴まれ押し倒される。
何が起きているのか、何をしようというのか、
それを考えている内に彼女は俺の腕と足を押さえつけてしまった。
「ガイラっ・・！冗談なら、やめっ・・むぐっ、ん！？」
制止の声を上げようとした口さえもが、
彼女の酒臭く良く湿ったそれに塞がれてしまう。
それだけではない。
彼女はさらに俺の唇を舌でこじ開け、
ねっとりとした舌使いでこちらの口の中を舐め回し始めたのだ。
「っむ・・ん・・ぅ、ん・・」
口から、彼女の息が入り鼻から抜けていく。
それだけなのに、それが何回か繰り返されただけで
俺の頭は痺れそうになっていた。
甘い香りが、脳を冒していく。
すっかり暴れる気力さえも失った頃に
彼女はやっと口を放した。

「はぁ・・ガイラ、何の・・つもりだ・・。」
さっきので軽く心にも酔いが回ったのか
力強く怒ろうとしても、それができない。
「何って・・へへ。
あんたさ・・あたしがホントに友達感覚だけで
あんたに会いに来てたと思ってるのかい・・？」
それを聞いて、ハッとなる。
彼女もまた魔物で・・
それもオーガという種族であったのだ。
となれば、間違い無くこれは俺の失態だろう。
「お、おい・・まさか・・。」
動かない体を必死に動かそうとする。
だが・・まるでそれを望んでいるかのように、
俺の体は動こうとはしなかった。
息を荒らげ彼女を見ると、彼女の顔は真っ赤である。
俺の服を少々荒っぽく脱がしながら彼女は言う。
「あんたさ・・オーガと飲むには無防備すぎたよ。
魔物は・・欲情するモンなのさ・・。
タガを外しやすくする、酒の席じゃあ特にねぇ・・。」
上半身を覆っていた服が脱げ、露わになった乳首に彼女は口づける。
その瞬間、思わず顔を歪める程の快感が走った。
くあっ、と声を上げるが、彼女の腕に押さえつけられているので
逃れることなど出来はしない。
それが余計に彼女の気を良くさせたのか、彼女は口の端を吊り上げる。

「いいねえ・・抵抗しようとして、悶えるそれ。
その癖にちょっと嬉しそうなのもまた良い。
あんた、もしかしていじめられるの好きだったりするタチかい？」
にやける彼女に、辛うじて言い返す。
「そういうお前は、いじめるのが好きなタチか？
・・俺を犯すっていうなら、良い。
その代わり、一つだけ答えてくれ。
俺をこうしてるのは、ただ単に犯したくなったからか？」
乳首に近づけていた口を離し彼女は答える。
「あ〜・・興が醒めることを・・。
ま、半分は正解だよ。あとは・・」
そう言い、彼女はもう一度俺の唇を奪う。
先程よりもそれは、優しかった。
ゆっくりと舌を這いずり回らせ、抜き去り続きを言う。
「単純に、あんたの事が気に入ってたからさ。
それと寂しさを埋めたかったってのもあるかもね・・。」
言いつつ、薄い布を脱ぎ去る彼女。
もともと隠れていたとも言えなかったそこは、
余程興奮しているのかぐっしょりと濡れていた。
「どのみちあんたは逃げられないんだ・・。
なら、楽しいことに身を任せた方が良くないかい？」
彼女の言うとおりだろう。
俺は逃げる事なんて不可能だろうし、
そもそも逃げることを半分諦めてもいた。
「そうだな。
どうせ無理なら、酒の酔狂に流されてみるさ。」
言うと彼女は満足そうに笑う。

「分かってるじゃないか。んじゃ・・はむっ・・」
彼女は体を俺の横に倒すと、俺の耳を口に含んで
ベロベロと舐め回し始めた。
粗暴な彼女らしくないゆっくりとした舌の動きにたまらず身を捩ると、
彼女は俺の体を一層しっかり抱きしめる。
「おっと・・気持ちいいからってあんまり動くと
力加減をしくじっちまうよ・・。」
そして、下を脱がすと徐々に大きくなっている俺のそれに
手を添え、俺の耳元に口を寄せ囁く。
「へへ・・随分と可愛らしいじゃないか。
それとも、乗り気になったら凄いタイプかい？」
そのままゆっくりと握り込んでくる。
大きな手に包まれた瞬間、その暖かさに体を震わすと
彼女はまたも囁いてきた。
「ふふ、やっぱりあんたはいじられるのが好きなのかい？」
「さぁ、な・・お前のが気持ちいいだけかも知れないぞ。」
「そうかい、それも嬉しいからいいや・・。
次はこういうのはどうだい？」
そういい、今度は俺の足にその大きな手を這わせるガイラ。
続けて撫で回してくるその動きには、オーガらしい荒々しさは感じられない。
どのみち気持ちいいものは気持ちよいもので、
しかもそうする内にもどんどん膨れ上がる股間のそれは
扱かれ続けていた。
はぁはぁ、と息を荒らげる俺を至近距離から見下ろして、真っ赤な顔で彼女は訊く。

「そろそろ・・あんたも我慢ならなくなってくる頃合いだろ・・？
どうだい、あたしのここに・・びしょびしょのここにあんたのこれ、挿れてみたいか・・？」
答えなど決まりきっている。
「ああ、というか・・我慢できないのはお前じゃないのか・・？
俺を・・壊したくってたまらないんじゃないのか？」
わざと挑発するような言い方をしたのは、何だかんだで
彼女の苛烈さに期待する俺がいたからだろう。

「確かにね・・んじゃ、いただくよ・・！」
上に跨り、腰をゆっくりと下ろすガイラ。
膨れ上がったそれが彼女の秘所に飲み込まれた瞬間、
俺の意識は一瞬飛びかけた。
強い締め付けが一気にやってきたからだ。
辛うじて意識をつなぎ止めた俺に彼女は笑って詫びを入れる。
「気持ち、良すぎたかい？
悪いね・・どんなに加減したくても、こればっかりは本能的なもんでさ。
あたしが犯すって決めちまった以上、もっと強くなるから、楽しみにしてな。」
「あ、あ・・楽しみにしておく、よ・・。」
言葉では言ったが正直、かなりやばい。
上体を押しつけられ、抱きしめられているため、
体を捩ることすら難しいのだ。
彼女の膣圧はどんどん強くなっていく。
自分でも、どこまで耐えられるのか全く分からない。
だが・・彼女は嬉しそうだ。
「いいねぇ・・その顔・・もっとだ・・もっと悶えな・・」
瞬間膣圧がかなり強くなり、揉みしだくような動きになった。
ここまでくると、俺はもう言葉を発することさえ難しくなってきている。
「あ・・っ・・が・・ぁ・・あぁ・・はぁ・・あ・・！！」
手足をわなわなと震わせ、声にならない声を上げる俺に彼女は囁く。
「もう限界かい・・？
イきたいならいつだってイって構わないんだよ・・？」
さらに、動きが激しくなる。
柔らかな彼女の膣内に俺のそれは押し付けられ、
グチュグチュと揉みしだかれた。
もう・・限界だった。
「は・・ぁっ・・！！
ガイラぁ・・少しはっ、加減ってもんをっ・・！！」
「だから言ったろ・・加減なんて出来ないんだ・・！！」
膣に噛みつかれる。
その瞬間、俺はついに達した。
「あっ・・？ああぁ・・！！く、お、あぁあぁぁ・・あぁ・・・っ！！」
「はぁ・・出てる・・あんたの、白くて・・熱いのが・・へへ・・満たされてくよ・・。」
満足げに顔を緩める彼女。
それが、俺が気を失う前に見た、最後のものだったと思う。



「・・あ、起きたかい・・？」
次に目が覚めたとき、俺は彼女に抱きつくような形になっていた。
不思議に思い、理由を訊くと彼女はばつが悪そうに答える。
「悪い・・その・・あんたが気絶した後さ。
あんたの精液があんまりおいしかったもんで・・
あの後、何回も犯したんだ・・。」
「・・ってこたぁ・・俺はインキュバスになってるって事か？」
彼女は頷く。
その顔はちょっぴり暗かった。
だが大して俺は気にしていない。
それどころか・・嬉しかった。
「じゃ、もう俺とお前は夫婦も同然って事だな？」
言うと彼女ははっとなって顔を上げる。
その顔には、嬉しさが、それと困惑が浮かんでいた。
大方、無理矢理したのに何でそんなことが言える？
とでも言いたいのだろう。
自分から言い出したくせに、つくづくオーガらしくない奴だ。
「お前が俺を犯したんだぞ？それも無理矢理な。
だったら・・責任ぐらいとってくれよ。」
プロポーズのつもりであったが、何とも滑稽だ。
だが、彼女は嬉しそうに頷いた。
「ああ・・！当然だろ！
あたしが責任もって、あんたをもらってやるよ！」
元気よくそういった後、少しだけ恥ずかしそうに訊いてくる。

「なぁ・・なんであたしがこんなに嬉しそうか分かるかい？」
俺は、思い付かないと答えた。
彼女はゆっくりと話始める。
「・・やっぱり、あたしは寂しくて、
それと・・あんたが好きだからだよ・・。」
言ってこれまでにない程優しく抱きしめてくる彼女。
それを見て、俺はやっと納得がいった。
どうして彼女が、オーガらしくない振る舞いをしてまで俺につきあわせたのかを。
同時に理解する。
俺がどうしてベレが結婚するのが複雑だったのかを。
それがわかった瞬間、俺はガイラが一層愛らしく思えた。
「・・ふふ・・俺と同じで寂しがりなんだなガイラは。」
「おうよ・・だから、ずっと離さないでくれよ・・。」
そういってひしと、抱き合う。
その温かさに俺の寂しさが、彼女の寂しさと解け合っていくようだった。

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シンプルにしようと思ったら、gdgdになった・・。