闘争の果てに
「・・・・」
独房じみたこの場所で一人瞑想を行なっている男が一人。
彼こそは、今この闘技場で一番の話題となっている男。
名を、エクシア・ウィンダム。
この魔物達も参加する闘技場で唯一と言っても良いほどの真人間である。
彼は、たった一人で教団と戦っている途中に、
雪崩込んできた魔物たちによってなし崩し的に祖国を奪われた。
（と言っても彼は悪くは思ってないようだが）
彼の戦績は２５戦中１０分け１５勝という凄まじいものだ。
時には魔法を、時には剣、またある時には
肉体や頭脳を使い勝利を収めている。
ふと、瞑想を続ける彼のこめかみがぴくりと動く。
次にそばにある扉を見ながら言う。
「・・わかっているぞ。なんの用事だ、管理人殿。」
次の瞬間、扉は開け放たれ代わりに美しいエキドナが入ってくる。
「あら、ムスッとしちゃって・・。挑戦者よ、ミノタウロスちゃんが来たわ」
彼の言葉には顔色一つ変えずにそう告げると用事は終わったとばかりに
彼女は扉をくぐり出て行ってしまった。
エクシアは、そんなことを気にも留めずに戦闘のことを考え始める。
彼と彼女は大概このような会話しか交わさないからだ。
「ミノタウロスか・・得物はおそらく斧であろうな・・」
考えつつ魔界銀の剣と盾を取り階段を上がっていく。
彼が向かう先は、闘技場。
ゆっくりとしかし、しっかりとした足取りで戦闘の場所に出る。
ここにいる以上は彼も戦士として、また一人のオスとして見られてしまう。
目前にいるミノタウロスもおそらく彼のことをそう見ているだろう。
「へへ・・あんたが噂の騎士様かい。こりゃ、人間にしちゃ細い方かな？」
剣を構えて、彼は答えた。
「細い方なのだろうな・・だが、見た目で判断するのは良くないぞ。」
「ま、どうだろうと構わねえけどな！あんたの連勝記録もここでお終いだ！」
吠えると一直線に突っ込んでくる。
なんともミノタウロスらしいと言えばそこまでだが、厄介でもあった。
何せスピードがあり、反応できなければ待っているのは持ち帰りだ。
事実、以前はもっと居た男たちもオーガなどに
同じような攻撃を受け、もれなく全員お持ち帰りされていた。
「その手はもう、飽きるほど見させて頂いている。」
しかし、その程度で倒される人間ならばこの場に居ないのもまた事実。
さらりとかわし、背後をとって背筋に盾を打ち付ける。
「効かないねぇ・・！その程度じゃ・・！？」
振り返る彼女、しかし彼はもうそこには居ない。
「この程度とは思いたくはないが・・これも勝負なのでな。」
言うと彼は剣に魔力を滾らせガラ空きの背筋を叩き切った。
次の瞬間にはミノタウロスは力が抜けその場にへたり込むことになる。
「こ、こんな・・強いなんて・・な・・」
「すまないな、そちらの力を恐れたが故の作戦だ・・立てるか？」
彼が手を差し出すが彼女は受け取ろうとしない。
「いや、いいよ・・その手を取ったらあたしはあんたを襲う・・。
一人で・・立てるよ・・」
そう言うと彼女は立ち上がり、そそくさと出て行った。
その姿を見ながら、エクシアは一人呟く。
「・・なにか、その気にさせるようなことをしただろうか・・？」
次の日は珍しく挑戦者の居ない日だった。
そして彼もまた珍しく家に帰り、体を休めていると昼に来客があった。
「エクシアーっ！私は、帰ってきたーっ！」
そう言うと客人はノックもせずにドアを開ける。
「・・グラリス、叫ばなくてもちゃんと聞こえている。
で、今日は何の用事なのだ？」
「私と、勝負をしろ。今日こそはお前に勝って見せる！」
客人とはエクシアに恋をしているリザードマン、グラリス・シェーカーだ。
エクシアには幾度となく挑み、そして負けている。
本来なら彼女の種族柄、そこでハッピーエンドと相成るところだが、
エクシアの信条がそれを阻害した。
その時の会話がこれだ。
＝
「私を倒すか・・よし、決めた！私をお前の嫁としてくれ！」
「・・断る。」「なっ・・・！？」
「私は、自らを屈服せしめた者にのみそれを許す。
堅苦しいかもしれないが、それが私の信条なのだ。
だから・・私を倒してから、その言葉を言ってくれ。
その時には、どんな状況にあろうとも貴女を受け入れよう。
それまでは断固として拒否させてもらう。」
「っ・・！わかった、絶対にお前を倒してやる。
だから、その時まで誰にも倒されるなよ！」＝
正直、プロポーズではないだろうか。
それ以来彼は、何度も来る彼女に勝ち続けている。
なぜならば彼女の剣筋はまっすぐすぎるからだ。
いかに速かろうと、狙いがわかってしまえばいなすのは容易い。
しかし、幾度となく繰り返しているうちにエクシアも
彼女に戦い方を教えるようになっていた。
正直なところ、彼もその真っ直ぐな性格に惹かれ始めていたのだ。
「この頃は、強くなったものだ。
最初など掠りもしなかったというのに・・」
「すべてはお前のお陰だ。だからこそ、お前がほしくなる。」
互いに得物を構え、睨みあいつつ会話を交わす。
先に動いたのはグラリスだった。
両手剣を肩に乗せ腕を振るい攻撃態勢に入った。
そしてそのまま、大剣を振り下ろす・・が、当然ながら避けられる。
「だが、やはりまっすぐすぎる。それでは・・っ！」
言葉半ばで、彼は体をそらす。
背後に回った彼に尻尾と足の連撃が待っていたのだ。
「くそ・・流石はエクシアだ。
正直決まったと思ったのに・・」
「ふ、まぁ危なかったな。だが、今度はこちらの番だ・・！」
エクシアは右手に持った剣で、上段から斬りにかかる。
グラリスも負けじと応じて来た。
剣と大剣だというのに、速度は全くの同じ。
速度が同じならば、かち合った時有利なのは言うまでもない。
そう判断して彼は、体を斜めに下げ振り上げられる大剣を躱した。
・・否、隙を生み出したつもりになっていた。
「これで決まりだな・・！グラリ・・ッ！？」
次の瞬間、彼は驚嘆の声を上げる。
大剣による攻撃は躱した。
だがそれは隙を生み出すことには成らなかった。
むしろ下方向に躱したことにより振り下ろすという
選択肢を与えてしまったのだ。
「それは、こちらのセリフだぁっ！！」
（これは、躱しきれないな・・）
そう判断し、それでも咄嗟に盾を突き出すことが出来たのは
彼が間違いなく熟練のものである故だろう。
しかし、無理やり突き出された盾は
渾身の振り下ろしを受け切ることは出来ず痛みはエクシアの手首を突き刺す。
それらが同時に起きたため、彼は盾を手放してしまった。
手放された盾は、ゴロゴロと地を転がって彼の家の壁にぶつかり止まる。
そして、それを取りに行かせてくれるほどグラリスは甘くなかった。
「せりゃぁっ！！」
続けて繰り出される彼女の連撃を、
盾を失ったエクシアは避けることしかできなかった。
以前ならば見つけることが出来た隙も、今はほとんど見当たらない。
（これは・・いよいよ年貢の納めどき・・か。）
しかし、ただでやられてやるというのも気に食わなかった。
それに・・この方法なら、万に一つは・・！
そう思い、彼は彼女の大剣を待つ。
それが降りおろされた瞬間、彼は逆側から切り上げた。
速さならば、決死の剣筋ならばもしやすればと考えたのだ。
しかし刃がグラリスの体に届こうかという直前で、
彼女の魔界銀製の大剣がエクシアの体を斬り抜けていった。
そこでガックリと力が抜け、立って居られなくなり彼は地面へと・・
「駄目だ倒れるな、まだ言ってほしい言葉があるのだ！」
倒れかけたところでグラリスに抱きとめられる。
「大袈裟だ・・私は、この程度で気を失ったりはしないよ・・」
「・・そうか、そうだな。では言ってもらうぞ・・」
そう言うと彼女は咳払いをして、キリッとした表情になると言葉を紡ぎ始めた。
「私を・・嫁へと迎え入れて欲しい。
貴方に負けたあの時から私の心は寸分も動いてはいない！
寝ても覚めても貴方の事ばかり考えていた。
そして、貴方に勝つために修練を積んでは、貴方にまた負ける。
この繰り返しの中でさえ、貴方は私に勝つためのヒントをくれた。
もう貴方のそばにいる未来以外考えられぬほどに、私は貴方を好いている。
なればこそここに、私グラリス・シェーカーはエクシア・ウィンダムに婚礼を申し込むっ！」
顔を真っ赤にして言葉を言い切ったグラリスに対して、エクシアは静かに言った。
「私の返事はあの時言った通りだ。その婚礼、受けさせていただく。」
彼が言い終わると、彼女は嬉しそうに顔を綻ばせた。
こうして彼らは結ばれたのだ。
空は夕陽が赤く染めて、まるで祝福をしているようにも見えた。
そして、その日の夜。
食事をして風呂に入ったまでは良かったものの、
ベッドの前で二人は完全に固まってしまっていた。
「あ・・その・・だな・・こういうのは・・な・・」
「うむ・・私も・・良く・・わからない・・」
互いに視線を投げ合い、同じようなことを言う。
何せ二人とも、戦いに身を捧げた者同士。
色恋沙汰などこうなるまでは全くの無縁で、考えたこともなかったのだ。
「と、とりあえず一緒に寝ないか！？
友人のサラマンダーの話ではそれだけでも盛り上がるものらしいぞ！！」
「う、うむそうだな！
まずは二人で一緒に体を寄せ合って、寝ていればそのうち・・」
そう言って二人して布団に入り抱き合う。
（エクシアの胸って・・意外とあったかいんだな・・）
（グラリス・・胸が、あたってなんだか恥ずかしいぞ・・）
しかし、まるで事態は進展しなかった。
むしろ、顔が近くて互いを意識しすぎてしまう。
（（このままでは、埒があかない。））
二人がそう思った次の瞬間、
「な、キスしないか！？」「キス、してみないか！？」
同時に同じことを口走っていた。
それで緊張の糸が切れたのか、今度は二人して大笑いする。
「・・っはは！なんだ、そこまで意識しなくても良かったかもな！」
「おまえこそ、緊張しすぎだと思うぞ！」
そしてまたもや見つめ合う。
そしてどちらからというでもなく口付けを交わしていた。
「ん・・ちゅ・・ん・・」「はむっ・・んむ・・あむ・・」
始まってしまえば、恥じらいなど消えるもので自然と体をまさぐり合っていく。
「んっ・・はぁ・・エクシア・・手つきがいやらしい・・」
「んはっ・・そういう、グラリスも、脱がそうとしてるだろうに・・」
言い合いつつも互いに裸になっていった。
上になったエクシアがグラリスを見下ろす。
「そんなに、じろじろと見るな・・自信ないぞ・・」
「そんなことはないさ・・とっても綺麗だ・・んっ・・」
短い会話の後、再び口付けを交わした。
今度は先程よりも長く、舌も入れての深いキスだ。
「んっ・・ぬぅ・・ちゅむ・・ん・・エクシア・・」
「んっ・・んっ・・はぁ・・グラリス・・」
名前を言い合って、見つめ合う。
エクシアはそれだけで自らのモノがいやらしく勃起するのを感じていたし
グラリスも、愛しい者に裸体を見られているというだけで
秘所が濡れてくるのを感じていた。
「な・・エクシア・・その・・もう、我慢できそうにないんだ・・」
先に欲望に負けたのはグラリスだった。
自らの股を擦り合わせながら火照った顔で彼に告げる。
「・・ああ、私もだ・・じゃぁ・・挿れるぞ・・」
その言葉に短く返すと、大きく勃起したペニスをゆっくりと
グラリスのヴァギナに差し込んでいった。
差し込んだところから順に、彼らに快楽の波が流れ込んで行く。
「んんっ・・！これは・・っ・・また・・」
「ああ・・！気持ちいいな・・！」
奥に行くにつれてその快感も大きくなっていった。
耐え切れなくなり互いにひしと抱き合う。
その間にもエクシアのペニスは進み、遂にすっぽりと全て入った。
「ん・・っ・・お前の太いのが・・全部私の中にあるぞ・・」
「ああ・・お前と、一つになってるのだな・・」
そして二人はさらなる快感を求め徐々に腰を振り始める。
グラニスのそれはエクシアのそれに掻き回され・・
彼のそれもまた、彼女のそれに締め付けられていた。
「はっ、あっ・・イイぞっ、その、動きっ！ああっっ・・！」
「うぅっ、お前のもっ、負けてはぁっ・・いないなっ・・！」
段々と腰の振り方も激しくなっていき、それに伴い彼らの限界も近づいていた。
「あっ・・！すまんグラニスっ、私が先にっ、イくかも知れないっ！」
「んっ、心配っ・・するなっ・・私もだっ、一緒に・・イこうっ！」
その会話をした直後、限界は訪れた。
「ふぁっ！？ううんっ♥イイっ♥エクシアぁぁーっ♥♥」
「くんあっ、グラニスゥっ、グラニ・・すぁああああああっ！」
そのまま、抱き合いながら絶頂の余韻に浸る。
次の瞬間、彼らは眠っていた。
いかに食事などを挟んだとはいえ、勝負の疲れは完全には取れていない。
そこにこのような行為をしたのだから、当然と言えば当然だった。
後日、夕方の闘技場にて
「ここで、重大発表がある！私はもう独身でなくなった！」
エクシアの発表に魔物たちはざわつく。
「妻の種族は明かせないが、戦士だとだけ言っておこう。
後日、妻も連れてくるつもりだ！」
それだけを言うと彼はさっさと闘技場を出て行った。
向かった先はもちろん、妻グラリスのもとだ。
「どうだった？発表をした結果は。」
「予想通りだな、皆ざわついていた。」
そう言うと、彼は妻の首筋に口づけこう言った。
「なぁ・・今日は勝った方が攻めるというのはどうだ？」
するとグラニスも彼の首に口づけて答える。
「ふふ・・望むところだ、勝たせてもらうぞ。」
そう言うと、彼らは武器を取り欲望のために戦い始めた。
戦いの結果は、彼らだけが知るだろう。
ー終わりー
独房じみたこの場所で一人瞑想を行なっている男が一人。
彼こそは、今この闘技場で一番の話題となっている男。
名を、エクシア・ウィンダム。
この魔物達も参加する闘技場で唯一と言っても良いほどの真人間である。
彼は、たった一人で教団と戦っている途中に、
雪崩込んできた魔物たちによってなし崩し的に祖国を奪われた。
（と言っても彼は悪くは思ってないようだが）
彼の戦績は２５戦中１０分け１５勝という凄まじいものだ。
時には魔法を、時には剣、またある時には
肉体や頭脳を使い勝利を収めている。
ふと、瞑想を続ける彼のこめかみがぴくりと動く。
次にそばにある扉を見ながら言う。
「・・わかっているぞ。なんの用事だ、管理人殿。」
次の瞬間、扉は開け放たれ代わりに美しいエキドナが入ってくる。
「あら、ムスッとしちゃって・・。挑戦者よ、ミノタウロスちゃんが来たわ」
彼の言葉には顔色一つ変えずにそう告げると用事は終わったとばかりに
彼女は扉をくぐり出て行ってしまった。
エクシアは、そんなことを気にも留めずに戦闘のことを考え始める。
彼と彼女は大概このような会話しか交わさないからだ。
「ミノタウロスか・・得物はおそらく斧であろうな・・」
考えつつ魔界銀の剣と盾を取り階段を上がっていく。
彼が向かう先は、闘技場。
ゆっくりとしかし、しっかりとした足取りで戦闘の場所に出る。
ここにいる以上は彼も戦士として、また一人のオスとして見られてしまう。
目前にいるミノタウロスもおそらく彼のことをそう見ているだろう。
「へへ・・あんたが噂の騎士様かい。こりゃ、人間にしちゃ細い方かな？」
剣を構えて、彼は答えた。
「細い方なのだろうな・・だが、見た目で判断するのは良くないぞ。」
「ま、どうだろうと構わねえけどな！あんたの連勝記録もここでお終いだ！」
吠えると一直線に突っ込んでくる。
なんともミノタウロスらしいと言えばそこまでだが、厄介でもあった。
何せスピードがあり、反応できなければ待っているのは持ち帰りだ。
事実、以前はもっと居た男たちもオーガなどに
同じような攻撃を受け、もれなく全員お持ち帰りされていた。
「その手はもう、飽きるほど見させて頂いている。」
しかし、その程度で倒される人間ならばこの場に居ないのもまた事実。
さらりとかわし、背後をとって背筋に盾を打ち付ける。
「効かないねぇ・・！その程度じゃ・・！？」
振り返る彼女、しかし彼はもうそこには居ない。
「この程度とは思いたくはないが・・これも勝負なのでな。」
言うと彼は剣に魔力を滾らせガラ空きの背筋を叩き切った。
次の瞬間にはミノタウロスは力が抜けその場にへたり込むことになる。
「こ、こんな・・強いなんて・・な・・」
「すまないな、そちらの力を恐れたが故の作戦だ・・立てるか？」
彼が手を差し出すが彼女は受け取ろうとしない。
「いや、いいよ・・その手を取ったらあたしはあんたを襲う・・。
一人で・・立てるよ・・」
そう言うと彼女は立ち上がり、そそくさと出て行った。
その姿を見ながら、エクシアは一人呟く。
「・・なにか、その気にさせるようなことをしただろうか・・？」
次の日は珍しく挑戦者の居ない日だった。
そして彼もまた珍しく家に帰り、体を休めていると昼に来客があった。
「エクシアーっ！私は、帰ってきたーっ！」
そう言うと客人はノックもせずにドアを開ける。
「・・グラリス、叫ばなくてもちゃんと聞こえている。
で、今日は何の用事なのだ？」
「私と、勝負をしろ。今日こそはお前に勝って見せる！」
客人とはエクシアに恋をしているリザードマン、グラリス・シェーカーだ。
エクシアには幾度となく挑み、そして負けている。
本来なら彼女の種族柄、そこでハッピーエンドと相成るところだが、
エクシアの信条がそれを阻害した。
その時の会話がこれだ。
＝
「私を倒すか・・よし、決めた！私をお前の嫁としてくれ！」
「・・断る。」「なっ・・・！？」
「私は、自らを屈服せしめた者にのみそれを許す。
堅苦しいかもしれないが、それが私の信条なのだ。
だから・・私を倒してから、その言葉を言ってくれ。
その時には、どんな状況にあろうとも貴女を受け入れよう。
それまでは断固として拒否させてもらう。」
「っ・・！わかった、絶対にお前を倒してやる。
だから、その時まで誰にも倒されるなよ！」＝
正直、プロポーズではないだろうか。
それ以来彼は、何度も来る彼女に勝ち続けている。
なぜならば彼女の剣筋はまっすぐすぎるからだ。
いかに速かろうと、狙いがわかってしまえばいなすのは容易い。
しかし、幾度となく繰り返しているうちにエクシアも
彼女に戦い方を教えるようになっていた。
正直なところ、彼もその真っ直ぐな性格に惹かれ始めていたのだ。
「この頃は、強くなったものだ。
最初など掠りもしなかったというのに・・」
「すべてはお前のお陰だ。だからこそ、お前がほしくなる。」
互いに得物を構え、睨みあいつつ会話を交わす。
先に動いたのはグラリスだった。
両手剣を肩に乗せ腕を振るい攻撃態勢に入った。
そしてそのまま、大剣を振り下ろす・・が、当然ながら避けられる。
「だが、やはりまっすぐすぎる。それでは・・っ！」
言葉半ばで、彼は体をそらす。
背後に回った彼に尻尾と足の連撃が待っていたのだ。
「くそ・・流石はエクシアだ。
正直決まったと思ったのに・・」
「ふ、まぁ危なかったな。だが、今度はこちらの番だ・・！」
エクシアは右手に持った剣で、上段から斬りにかかる。
グラリスも負けじと応じて来た。
剣と大剣だというのに、速度は全くの同じ。
速度が同じならば、かち合った時有利なのは言うまでもない。
そう判断して彼は、体を斜めに下げ振り上げられる大剣を躱した。
・・否、隙を生み出したつもりになっていた。
「これで決まりだな・・！グラリ・・ッ！？」
次の瞬間、彼は驚嘆の声を上げる。
大剣による攻撃は躱した。
だがそれは隙を生み出すことには成らなかった。
むしろ下方向に躱したことにより振り下ろすという
選択肢を与えてしまったのだ。
「それは、こちらのセリフだぁっ！！」
（これは、躱しきれないな・・）
そう判断し、それでも咄嗟に盾を突き出すことが出来たのは
彼が間違いなく熟練のものである故だろう。
しかし、無理やり突き出された盾は
渾身の振り下ろしを受け切ることは出来ず痛みはエクシアの手首を突き刺す。
それらが同時に起きたため、彼は盾を手放してしまった。
手放された盾は、ゴロゴロと地を転がって彼の家の壁にぶつかり止まる。
そして、それを取りに行かせてくれるほどグラリスは甘くなかった。
「せりゃぁっ！！」
続けて繰り出される彼女の連撃を、
盾を失ったエクシアは避けることしかできなかった。
以前ならば見つけることが出来た隙も、今はほとんど見当たらない。
（これは・・いよいよ年貢の納めどき・・か。）
しかし、ただでやられてやるというのも気に食わなかった。
それに・・この方法なら、万に一つは・・！
そう思い、彼は彼女の大剣を待つ。
それが降りおろされた瞬間、彼は逆側から切り上げた。
速さならば、決死の剣筋ならばもしやすればと考えたのだ。
しかし刃がグラリスの体に届こうかという直前で、
彼女の魔界銀製の大剣がエクシアの体を斬り抜けていった。
そこでガックリと力が抜け、立って居られなくなり彼は地面へと・・
「駄目だ倒れるな、まだ言ってほしい言葉があるのだ！」
倒れかけたところでグラリスに抱きとめられる。
「大袈裟だ・・私は、この程度で気を失ったりはしないよ・・」
「・・そうか、そうだな。では言ってもらうぞ・・」
そう言うと彼女は咳払いをして、キリッとした表情になると言葉を紡ぎ始めた。
「私を・・嫁へと迎え入れて欲しい。
貴方に負けたあの時から私の心は寸分も動いてはいない！
寝ても覚めても貴方の事ばかり考えていた。
そして、貴方に勝つために修練を積んでは、貴方にまた負ける。
この繰り返しの中でさえ、貴方は私に勝つためのヒントをくれた。
もう貴方のそばにいる未来以外考えられぬほどに、私は貴方を好いている。
なればこそここに、私グラリス・シェーカーはエクシア・ウィンダムに婚礼を申し込むっ！」
顔を真っ赤にして言葉を言い切ったグラリスに対して、エクシアは静かに言った。
「私の返事はあの時言った通りだ。その婚礼、受けさせていただく。」
彼が言い終わると、彼女は嬉しそうに顔を綻ばせた。
こうして彼らは結ばれたのだ。
空は夕陽が赤く染めて、まるで祝福をしているようにも見えた。
そして、その日の夜。
食事をして風呂に入ったまでは良かったものの、
ベッドの前で二人は完全に固まってしまっていた。
「あ・・その・・だな・・こういうのは・・な・・」
「うむ・・私も・・良く・・わからない・・」
互いに視線を投げ合い、同じようなことを言う。
何せ二人とも、戦いに身を捧げた者同士。
色恋沙汰などこうなるまでは全くの無縁で、考えたこともなかったのだ。
「と、とりあえず一緒に寝ないか！？
友人のサラマンダーの話ではそれだけでも盛り上がるものらしいぞ！！」
「う、うむそうだな！
まずは二人で一緒に体を寄せ合って、寝ていればそのうち・・」
そう言って二人して布団に入り抱き合う。
（エクシアの胸って・・意外とあったかいんだな・・）
（グラリス・・胸が、あたってなんだか恥ずかしいぞ・・）
しかし、まるで事態は進展しなかった。
むしろ、顔が近くて互いを意識しすぎてしまう。
（（このままでは、埒があかない。））
二人がそう思った次の瞬間、
「な、キスしないか！？」「キス、してみないか！？」
同時に同じことを口走っていた。
それで緊張の糸が切れたのか、今度は二人して大笑いする。
「・・っはは！なんだ、そこまで意識しなくても良かったかもな！」
「おまえこそ、緊張しすぎだと思うぞ！」
そしてまたもや見つめ合う。
そしてどちらからというでもなく口付けを交わしていた。
「ん・・ちゅ・・ん・・」「はむっ・・んむ・・あむ・・」
始まってしまえば、恥じらいなど消えるもので自然と体をまさぐり合っていく。
「んっ・・はぁ・・エクシア・・手つきがいやらしい・・」
「んはっ・・そういう、グラリスも、脱がそうとしてるだろうに・・」
言い合いつつも互いに裸になっていった。
上になったエクシアがグラリスを見下ろす。
「そんなに、じろじろと見るな・・自信ないぞ・・」
「そんなことはないさ・・とっても綺麗だ・・んっ・・」
短い会話の後、再び口付けを交わした。
今度は先程よりも長く、舌も入れての深いキスだ。
「んっ・・ぬぅ・・ちゅむ・・ん・・エクシア・・」
「んっ・・んっ・・はぁ・・グラリス・・」
名前を言い合って、見つめ合う。
エクシアはそれだけで自らのモノがいやらしく勃起するのを感じていたし
グラリスも、愛しい者に裸体を見られているというだけで
秘所が濡れてくるのを感じていた。
「な・・エクシア・・その・・もう、我慢できそうにないんだ・・」
先に欲望に負けたのはグラリスだった。
自らの股を擦り合わせながら火照った顔で彼に告げる。
「・・ああ、私もだ・・じゃぁ・・挿れるぞ・・」
その言葉に短く返すと、大きく勃起したペニスをゆっくりと
グラリスのヴァギナに差し込んでいった。
差し込んだところから順に、彼らに快楽の波が流れ込んで行く。
「んんっ・・！これは・・っ・・また・・」
「ああ・・！気持ちいいな・・！」
奥に行くにつれてその快感も大きくなっていった。
耐え切れなくなり互いにひしと抱き合う。
その間にもエクシアのペニスは進み、遂にすっぽりと全て入った。
「ん・・っ・・お前の太いのが・・全部私の中にあるぞ・・」
「ああ・・お前と、一つになってるのだな・・」
そして二人はさらなる快感を求め徐々に腰を振り始める。
グラニスのそれはエクシアのそれに掻き回され・・
彼のそれもまた、彼女のそれに締め付けられていた。
「はっ、あっ・・イイぞっ、その、動きっ！ああっっ・・！」
「うぅっ、お前のもっ、負けてはぁっ・・いないなっ・・！」
段々と腰の振り方も激しくなっていき、それに伴い彼らの限界も近づいていた。
「あっ・・！すまんグラニスっ、私が先にっ、イくかも知れないっ！」
「んっ、心配っ・・するなっ・・私もだっ、一緒に・・イこうっ！」
その会話をした直後、限界は訪れた。
「ふぁっ！？ううんっ♥イイっ♥エクシアぁぁーっ♥♥」
「くんあっ、グラニスゥっ、グラニ・・すぁああああああっ！」
そのまま、抱き合いながら絶頂の余韻に浸る。
次の瞬間、彼らは眠っていた。
いかに食事などを挟んだとはいえ、勝負の疲れは完全には取れていない。
そこにこのような行為をしたのだから、当然と言えば当然だった。
後日、夕方の闘技場にて
「ここで、重大発表がある！私はもう独身でなくなった！」
エクシアの発表に魔物たちはざわつく。
「妻の種族は明かせないが、戦士だとだけ言っておこう。
後日、妻も連れてくるつもりだ！」
それだけを言うと彼はさっさと闘技場を出て行った。
向かった先はもちろん、妻グラリスのもとだ。
「どうだった？発表をした結果は。」
「予想通りだな、皆ざわついていた。」
そう言うと、彼は妻の首筋に口づけこう言った。
「なぁ・・今日は勝った方が攻めるというのはどうだ？」
するとグラニスも彼の首に口づけて答える。
「ふふ・・望むところだ、勝たせてもらうぞ。」
そう言うと、彼らは武器を取り欲望のために戦い始めた。
戦いの結果は、彼らだけが知るだろう。
ー終わりー
13/08/17 16:25更新 / GARU