ある遭遇・前編
出会いがいい事か悪い事か。
それがどちらかはわからないけれど、間違いなく言える事が一つある。
出会いは、何かを変える。
時にはかけがえのない友達と出会い、時には自分を陥れる悪と出会う。
それがいいように働くか悪いように働くかはその時次第だけど、何かと出会う事は何かを変えることと同じ。
ある出会いで、私は変わった。それだけじゃなくて、私は私以外も変えてしまった。
これからするのは、その出会いのお話。
私はその日、住んでいる村にほど近い森の中を歩いていた。
特に何かする気があるわけじゃない。ちょっと暇ができたから、暇つぶしにぶらぶらしているだけだ。
辺りには鳥の声と木々のざわめきだけが小さく響いている。
なんという事はないけれど、こういう雰囲気が私は好きだった。
「静かだなぁ……あ、野良イチゴみっけ」
伸びをしながら歩いていて、目に入った小さな実を口に含んでみる。甘酸っぱい味が口に広がり、思わず顔がほころぶ。
「〜♪」
思わず鼻歌交じりになりながら歩く。大したことはないけれど、日常の中のちょっとした幸せだ。道端の花を摘んだり、蝶を追いかけてみたり。子供みたいだなと思いながら、私は森の中の自由な時間を満喫していた。
「……あれ？」
でもその途中、機嫌よく歩いていた私の足が止まる。何か辺りの雰囲気が急に変わった気がしたからだ。
それで辺りを見回して−−私は自分の目を疑った。
「何、ここ……」
いつのまにか辺りの風景は私の知っているものから様変わりしていた。
毒々しい色合いの蔦が絡まって出来たような木や奇妙に節くれ立ちねじ曲がった木が立ち並び、ハート型の赤い実をつけている。
悪夢の中にでも迷い込んだような、悪趣味な光景だ。
「……ひっ！？」
私があまりの事に呆然と立ち尽くしていると、どこからともなく細長い蔓が伸びてきて私の腕に絡みついた。表面はぬめぬめとして冷たく、肌が粟立つ。
「いやぁっ！」
慌てて蔓を振り払う。手から離れたそれはしょげかえるような動きで引っ込んで行ったが、そんな事はもう関係ない。
「に、逃げなくちゃ……！」
その場で踵を返し、来た方へ向かって全速力で駆け出す。頭の中はめちゃめちゃに混乱してしまって、まともに物も考えられない。ただ怖くて怖くて、目の前の不気味な世界から逃げ出したかった。
「はぁ……はぁ……！」
息を荒げ、伸びてくる蔓を避けながらひた走る。自分でも気づかないうちに入り込んでしまっていたせいか、なかなか出口は見えてこない。というか、今向かっている方向が正しいのかすら怪しい。でも、パニックに陥った私にはただ走る事しかできなかった。
……と、その時。
「…………！？」
私の背後に、何か恐ろしい物の気配を感じた。血が上っていた頭が急速に凍りつき、足に強くブレーキがかかる。
がさ……がさ……
背後から茂みをかき分ける音が聞こえる。とにかく逃げなくちゃいけないのはわかってる。でも足が動かない。蛇に睨まれたカエルって、こういう気分なんだろう。
「……ぁ……ぁん……」
その音に混じって、なぜか高くか細い女の子の声が聞こえてくる。あまりにも場違いな感じが逆に不気味だ。
がさ……
音が止んだ。ゆっくり、ゆっくりと顔をうごかして後ろを振り向く。せめて、自分に迫っているものが何かという事は確かめたかった。このまま助からないとしても、わけのわからないまま死んでしまうのはいやだ。
そして、私の背後にいたものの正体が目に入る。
「……なに、これ……」
そこにあったのは、巨大な黒い球。そうとしかいいようのないものに、小さな女の子が1人またがっていた。
「んふ、ぁぅ……はぁぁ……♪」
下の黒い球から触手が生えて、女の子に絡みついている。はじめは女の子が球に襲われているのかと思ったけど、気持ち良さげに声をあげている辺り違うらしい。
「……」
見た目はひ弱そうな子供と変な球。なのに、これと一緒にいるとまるで猛獣を目の前にしているような気分にさえなってくる。
得体の知れない恐怖感に、私は怯えるしかなかった。
「……あは……？」
焦点のあっていなかった女の子の目が、突然こちらに向く。どうやら今こっちに気づいたらしい。
今更ながら、さっき逃げなかった事を後悔した。
そして、女の子が口を開く。
「にんげんさん？」
「……？」
突然の問いかけに、私は何とも答える事が出来なかった。雰囲気に押されて口が動かない。
「にんげんさん？」
「……は、はい」
二度目の問いかけに、私はなんとか肯定で返すことが出来た。誰がどう見ても私は人間なんだから、下手にウソをついて相手の神経を逆撫でしたりしたら−−もっともこっちの常識が通じる相手かどうかもわからないけど−−逆に厄介なことになるかも知れない。
「きもちいいの、すき？」
私の返事を聞いたその子は、今度はまた別の質問をしてきた。きもちいいの、というと、さっきから彼女がされていた事を考えると、まあそういう事だろう。
……でも、なんて答えればいい？そもそも、答えてもいいのか？
「きもちいいの、すき？」
「……」
「きもちいいの、すき？」
「……」
「きもちいいの、すき？」
黙りこくっている私に同じ質問を繰り返し続ける彼女。あまりの異常さに冷や汗が垂れ、激しい緊張感を感じる。
「きもちいいの、すき？」
「……ううん……すき、じゃ、ない……」
あまりの緊迫感に耐えきれず、つい答えてしまう私。それを聞いた彼女は顔を曇らせ俯いた。
(まずい、かも……！)
そう思った次の瞬間。
「……じゃあ、わたしがすきにしてあげる♪」
黒い球から触手が猛スピードで伸び出し、私の体に絡みついた。
「……きゃぁっ！」
私の反応など気にも止めず、それは体中を這い回り、私を裸にしようとする。
なんとか振りほどこうと私は必死で暴れた。でも複雑に絡んだ触手は全く離れず、結局なす術なく私は全裸にされてしまった。
「おとなしくしてて……♪」
「や、やめ……むぐっ！？」
それでも暴れる私の口に、球体は一本の触手を突っ込んだ。そしてそれが口の中に何かを注ぎ込む。
「んむむっ、んぅっ！んむぅっ……んぅ……」
注ぎこまれたものは蜂蜜をさらに煮詰めたように甘く、さらに焼けるように熱かった。それを飲み込んでしまうたび、私の体は火照り、力が抜けていく。
「そろそろいいかな？」
「……ぷはっ！はぁ、はぁ……」
私が抵抗する力を無くしたと悟ったのか、口に突っ込まれていた触手が離れる。
私の体はまるで強いお酒でも飲んだように火照り、けだるくなった。
「それじゃ、きもちよくしたげる……♪」
彼女がそう言うと、絡みついた触手たちが私の体を刺激し始めた。
「……ひっ！？あっ、あぁぁぁ！」
さっき飲まされたもののせいか、私の体は触手の感触に敏感に反応してしまう。勝手に甘い声が漏れ出して辺りに響いた。
「おっきなおっぱい……♪」
「んぁぁっ…ひゃ！？ぁぁぁぁぁぁっ♪」
触手の一本が私の胸に巻きつき、もにゅもにゅと揉むような動きをする。さらにその先端が乳首をちろちろとくすぐった。さっきまでより敏感な場所への刺激に、声が大きくなる。
「こっちはこうしてあげるね……？」
空いている方の乳首に、別の触手が一本押し付けられる。そして、次の瞬間。
……ちゅうううっ！
「んはぁぁぁぁぁぁぁぁ♪」
触手が激しく乳首を吸い上げた。突然の新たな快感に、私は軽く達してしまう。
「やめてぇぇぇっ♪おっぱい、おっぱいすわないでぇぇぇぇっ♪♪」
それでもまだ両胸への責めが止まることはない。同時に与えられる二種類の快楽に、私はただ悶えるしかなかった。
「もっときもちよくしてあげる……こっち、きて♪」
そう言うと彼女はびくびくと震える私の体を触手で持ち上げ、自分が乗っている球の上へ置いた。
私の両足が、ずぶずぶと球の中へ沈んでいく。
「あ、はぁぁぁぁぁ……」
剥き出しの神経をぬるま湯に浸されたような感覚。その心地よさについ息が漏れてしまう。
でも、それだけじゃ終わらない。
「……ひうぁっ♪」
ちょうど私の股間があるあたりが盛り上がり、大事な所にぴたりと張り付いた。
そしてそこが、ぐちゅぐちゅと動き始める。
「ああぁぁぁっ、そんなぁっ、そんなとこぉっ♪やめえぇっ、はいっれこないれぇぇ♪」
私の股間に張り付いたものが、少しずつ中に入ってくる。内側から押し広げられる感覚と、中を擦られる感覚。そのどちらもが、たまらなく気持ちよかった。
「ひぁぁあっ、そっちもぉ♪そっちもなのぉっ♪おっぱいもいいのぉぉっ♪♪」
さらに胸の触手も再び動き出し、さっきと同じように責めはじめた。もう私の体に、快感を得ていないところはほとんどない。何もかもが、全部、みんな……
きもちいい。ただ、ひたすらきもちいい。
「もっとぉ、もっとぉぉぉぉ♪」
私はただ、与えられる快楽に翻弄され続けた。
「あひ、ひぁぁぁぁぁっ♪♪にゃぁぁぁぁぁっ♪」
私が球に犯されはじめて、もうどれくらいになっただろうか。
相当長いこと犯されているような気もするし、ほんの一瞬のような気もする。
でも、そんなの、私にはもうどうでもよかった。
(きもちいい。きもちいい。きもちいい。きもちいい。きもちいいっ！)
何度も何度も何度も絶頂を繰り返すうちに、私の頭はもう気持ちいいこと一色に染まっていた。もう他のことは何も考えられない。考える余裕もない。
「ねえにんげんさん、きもちいいの、すき？」
女の子が始めと同じ質問をする。答えなんてもう一つしかない。
「うん、しゅきぃっ♪わらひ、きもひいいのしゅきっ！らいしゅきっ♪おっぱいちゅうちゅうされるのしゅきっ！おまんこくちゅくちゅされるのもすきっ！きもちいいの、えっちなのっ、みんなみんな、しゅきぃぃぃぃっ♪」
恥も外聞もなく大声で叫ぶ。とろけきった頭はもう、まともな思考を捨てていた。
それを聞いた女の子は満足そうな笑顔を浮かべて、こう言う。
「もっときもちいいこと、してあげよっか？」
もちろんそれを聞いた瞬間、私は女の子に向かってこう返した。
「おねがいっ、してっ！もっときもちいいこと、してぇっ♪」
「わかったよ。それじゃあ……」
私の答えを聞くと、女の子は私と目を合わせてこういった。
「あなたを、わたしにしてあげる」
「……え……」
そう言った途端、彼女の目が闇色に染まった。
「あなたは、だぁれ？」
女の子が私の目をのぞきこんでいる。私は……だれだっけ。
「わたしは……だれ？」
「あなたは、わたしだよ」
「わたしは、あなた……？」
おんなのこがなにかいっている。よくわからない。
「あなたはわたし。わたしはあなた」
「わたしはあなた……あなたは、わたし……」
めのまえに「わたし」がいる。「わたし」がなにかいっている。
「ひとつに、なろぉ？」
「わたし」がわたしにだきついた。なに、するんだろ……？
「……ひぁっ！？」
おまた！？おまたに、なにかはいってくる！？
「あぁぁぁぁぁっ！」
「わたし」がぁっ！「わたし」がおまたからはいってくりゅううっ！ずるずるって！どんどんはいってく！どんどん……ぁぁ……
「…………ひ、ひぅ……」
「わたし」が、ぜんぶはいっちゃったぁ……
(ひとつになろぉ)
わたしのこえ？あたまのなかで、「わたし」のこえがする……？
……あぅ！？
「……あ、あぁぁあぁあぁひぁぁぁぁぁっ！」
かわってる！わたしかわってるぅ！「わたし」にかわってりゅうぅぅっ！
でも、すごいっ！きもちぃぃっ！かわるの、かわりゅのすごくすごくしゅごくきもちぃぃぃぃぃぃぃぃっ♪♪
「しゅごぃぃぃっ！しゅご……ひぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ！」
もうなんにもかんがえらりぇなぃ……「わたし」が、わたしに、とけて、まざって、おかしくして……
わたしは、わたしは、わたしは……
「……んぅ……」
次に気がついた時、私はもうわたしになっていた。
自慢だった栗色の髪は墨を流したように真っ黒に染まってしまっているし、耳も長くとがった形になった。
それと、何より一番違うのは、わたしの体の下にあの大きな黒い球があることだった。
球から触手が伸びて、わたしの体をまさぐり始める。
「あはぁ……きもちいいよぉ……」
触手はわたしが気持ちよくしてもらいたいと思ったところを、思いのままに犯してくれる。
もう気持ちいいことしか頭にないわたしには、これ以上ないプレゼントだ。
わたしは幸せだった。わたしになれたことが、何より幸せだった。
でも、まだ何か足りなかった。
「ほしい……」
わたしの頭に浮かんでくる、愛しい顔。
ずっと繋がりたいと思ってた。ずっと愛しいと思っていた。
でも我慢した。道ならないことだったから、しちゃいけないことだったから、我慢した。
でも、もう我慢しなくていい。わたしはわたしの好きなように、あの子と結ばれていいんだ。
だから、きもちよく、ひとつになろう。
「あいたい……ほしい……」
膨れ上がる欲望を抱えながら、わたしは村へ向かって一直線に進んでいった。
それがどちらかはわからないけれど、間違いなく言える事が一つある。
出会いは、何かを変える。
時にはかけがえのない友達と出会い、時には自分を陥れる悪と出会う。
それがいいように働くか悪いように働くかはその時次第だけど、何かと出会う事は何かを変えることと同じ。
ある出会いで、私は変わった。それだけじゃなくて、私は私以外も変えてしまった。
これからするのは、その出会いのお話。
私はその日、住んでいる村にほど近い森の中を歩いていた。
特に何かする気があるわけじゃない。ちょっと暇ができたから、暇つぶしにぶらぶらしているだけだ。
辺りには鳥の声と木々のざわめきだけが小さく響いている。
なんという事はないけれど、こういう雰囲気が私は好きだった。
「静かだなぁ……あ、野良イチゴみっけ」
伸びをしながら歩いていて、目に入った小さな実を口に含んでみる。甘酸っぱい味が口に広がり、思わず顔がほころぶ。
「〜♪」
思わず鼻歌交じりになりながら歩く。大したことはないけれど、日常の中のちょっとした幸せだ。道端の花を摘んだり、蝶を追いかけてみたり。子供みたいだなと思いながら、私は森の中の自由な時間を満喫していた。
「……あれ？」
でもその途中、機嫌よく歩いていた私の足が止まる。何か辺りの雰囲気が急に変わった気がしたからだ。
それで辺りを見回して−−私は自分の目を疑った。
「何、ここ……」
いつのまにか辺りの風景は私の知っているものから様変わりしていた。
毒々しい色合いの蔦が絡まって出来たような木や奇妙に節くれ立ちねじ曲がった木が立ち並び、ハート型の赤い実をつけている。
悪夢の中にでも迷い込んだような、悪趣味な光景だ。
「……ひっ！？」
私があまりの事に呆然と立ち尽くしていると、どこからともなく細長い蔓が伸びてきて私の腕に絡みついた。表面はぬめぬめとして冷たく、肌が粟立つ。
「いやぁっ！」
慌てて蔓を振り払う。手から離れたそれはしょげかえるような動きで引っ込んで行ったが、そんな事はもう関係ない。
「に、逃げなくちゃ……！」
その場で踵を返し、来た方へ向かって全速力で駆け出す。頭の中はめちゃめちゃに混乱してしまって、まともに物も考えられない。ただ怖くて怖くて、目の前の不気味な世界から逃げ出したかった。
「はぁ……はぁ……！」
息を荒げ、伸びてくる蔓を避けながらひた走る。自分でも気づかないうちに入り込んでしまっていたせいか、なかなか出口は見えてこない。というか、今向かっている方向が正しいのかすら怪しい。でも、パニックに陥った私にはただ走る事しかできなかった。
……と、その時。
「…………！？」
私の背後に、何か恐ろしい物の気配を感じた。血が上っていた頭が急速に凍りつき、足に強くブレーキがかかる。
がさ……がさ……
背後から茂みをかき分ける音が聞こえる。とにかく逃げなくちゃいけないのはわかってる。でも足が動かない。蛇に睨まれたカエルって、こういう気分なんだろう。
「……ぁ……ぁん……」
その音に混じって、なぜか高くか細い女の子の声が聞こえてくる。あまりにも場違いな感じが逆に不気味だ。
がさ……
音が止んだ。ゆっくり、ゆっくりと顔をうごかして後ろを振り向く。せめて、自分に迫っているものが何かという事は確かめたかった。このまま助からないとしても、わけのわからないまま死んでしまうのはいやだ。
そして、私の背後にいたものの正体が目に入る。
「……なに、これ……」
そこにあったのは、巨大な黒い球。そうとしかいいようのないものに、小さな女の子が1人またがっていた。
「んふ、ぁぅ……はぁぁ……♪」
下の黒い球から触手が生えて、女の子に絡みついている。はじめは女の子が球に襲われているのかと思ったけど、気持ち良さげに声をあげている辺り違うらしい。
「……」
見た目はひ弱そうな子供と変な球。なのに、これと一緒にいるとまるで猛獣を目の前にしているような気分にさえなってくる。
得体の知れない恐怖感に、私は怯えるしかなかった。
「……あは……？」
焦点のあっていなかった女の子の目が、突然こちらに向く。どうやら今こっちに気づいたらしい。
今更ながら、さっき逃げなかった事を後悔した。
そして、女の子が口を開く。
「にんげんさん？」
「……？」
突然の問いかけに、私は何とも答える事が出来なかった。雰囲気に押されて口が動かない。
「にんげんさん？」
「……は、はい」
二度目の問いかけに、私はなんとか肯定で返すことが出来た。誰がどう見ても私は人間なんだから、下手にウソをついて相手の神経を逆撫でしたりしたら−−もっともこっちの常識が通じる相手かどうかもわからないけど−−逆に厄介なことになるかも知れない。
「きもちいいの、すき？」
私の返事を聞いたその子は、今度はまた別の質問をしてきた。きもちいいの、というと、さっきから彼女がされていた事を考えると、まあそういう事だろう。
……でも、なんて答えればいい？そもそも、答えてもいいのか？
「きもちいいの、すき？」
「……」
「きもちいいの、すき？」
「……」
「きもちいいの、すき？」
黙りこくっている私に同じ質問を繰り返し続ける彼女。あまりの異常さに冷や汗が垂れ、激しい緊張感を感じる。
「きもちいいの、すき？」
「……ううん……すき、じゃ、ない……」
あまりの緊迫感に耐えきれず、つい答えてしまう私。それを聞いた彼女は顔を曇らせ俯いた。
(まずい、かも……！)
そう思った次の瞬間。
「……じゃあ、わたしがすきにしてあげる♪」
黒い球から触手が猛スピードで伸び出し、私の体に絡みついた。
「……きゃぁっ！」
私の反応など気にも止めず、それは体中を這い回り、私を裸にしようとする。
なんとか振りほどこうと私は必死で暴れた。でも複雑に絡んだ触手は全く離れず、結局なす術なく私は全裸にされてしまった。
「おとなしくしてて……♪」
「や、やめ……むぐっ！？」
それでも暴れる私の口に、球体は一本の触手を突っ込んだ。そしてそれが口の中に何かを注ぎ込む。
「んむむっ、んぅっ！んむぅっ……んぅ……」
注ぎこまれたものは蜂蜜をさらに煮詰めたように甘く、さらに焼けるように熱かった。それを飲み込んでしまうたび、私の体は火照り、力が抜けていく。
「そろそろいいかな？」
「……ぷはっ！はぁ、はぁ……」
私が抵抗する力を無くしたと悟ったのか、口に突っ込まれていた触手が離れる。
私の体はまるで強いお酒でも飲んだように火照り、けだるくなった。
「それじゃ、きもちよくしたげる……♪」
彼女がそう言うと、絡みついた触手たちが私の体を刺激し始めた。
「……ひっ！？あっ、あぁぁぁ！」
さっき飲まされたもののせいか、私の体は触手の感触に敏感に反応してしまう。勝手に甘い声が漏れ出して辺りに響いた。
「おっきなおっぱい……♪」
「んぁぁっ…ひゃ！？ぁぁぁぁぁぁっ♪」
触手の一本が私の胸に巻きつき、もにゅもにゅと揉むような動きをする。さらにその先端が乳首をちろちろとくすぐった。さっきまでより敏感な場所への刺激に、声が大きくなる。
「こっちはこうしてあげるね……？」
空いている方の乳首に、別の触手が一本押し付けられる。そして、次の瞬間。
……ちゅうううっ！
「んはぁぁぁぁぁぁぁぁ♪」
触手が激しく乳首を吸い上げた。突然の新たな快感に、私は軽く達してしまう。
「やめてぇぇぇっ♪おっぱい、おっぱいすわないでぇぇぇぇっ♪♪」
それでもまだ両胸への責めが止まることはない。同時に与えられる二種類の快楽に、私はただ悶えるしかなかった。
「もっときもちよくしてあげる……こっち、きて♪」
そう言うと彼女はびくびくと震える私の体を触手で持ち上げ、自分が乗っている球の上へ置いた。
私の両足が、ずぶずぶと球の中へ沈んでいく。
「あ、はぁぁぁぁぁ……」
剥き出しの神経をぬるま湯に浸されたような感覚。その心地よさについ息が漏れてしまう。
でも、それだけじゃ終わらない。
「……ひうぁっ♪」
ちょうど私の股間があるあたりが盛り上がり、大事な所にぴたりと張り付いた。
そしてそこが、ぐちゅぐちゅと動き始める。
「ああぁぁぁっ、そんなぁっ、そんなとこぉっ♪やめえぇっ、はいっれこないれぇぇ♪」
私の股間に張り付いたものが、少しずつ中に入ってくる。内側から押し広げられる感覚と、中を擦られる感覚。そのどちらもが、たまらなく気持ちよかった。
「ひぁぁあっ、そっちもぉ♪そっちもなのぉっ♪おっぱいもいいのぉぉっ♪♪」
さらに胸の触手も再び動き出し、さっきと同じように責めはじめた。もう私の体に、快感を得ていないところはほとんどない。何もかもが、全部、みんな……
きもちいい。ただ、ひたすらきもちいい。
「もっとぉ、もっとぉぉぉぉ♪」
私はただ、与えられる快楽に翻弄され続けた。
「あひ、ひぁぁぁぁぁっ♪♪にゃぁぁぁぁぁっ♪」
私が球に犯されはじめて、もうどれくらいになっただろうか。
相当長いこと犯されているような気もするし、ほんの一瞬のような気もする。
でも、そんなの、私にはもうどうでもよかった。
(きもちいい。きもちいい。きもちいい。きもちいい。きもちいいっ！)
何度も何度も何度も絶頂を繰り返すうちに、私の頭はもう気持ちいいこと一色に染まっていた。もう他のことは何も考えられない。考える余裕もない。
「ねえにんげんさん、きもちいいの、すき？」
女の子が始めと同じ質問をする。答えなんてもう一つしかない。
「うん、しゅきぃっ♪わらひ、きもひいいのしゅきっ！らいしゅきっ♪おっぱいちゅうちゅうされるのしゅきっ！おまんこくちゅくちゅされるのもすきっ！きもちいいの、えっちなのっ、みんなみんな、しゅきぃぃぃぃっ♪」
恥も外聞もなく大声で叫ぶ。とろけきった頭はもう、まともな思考を捨てていた。
それを聞いた女の子は満足そうな笑顔を浮かべて、こう言う。
「もっときもちいいこと、してあげよっか？」
もちろんそれを聞いた瞬間、私は女の子に向かってこう返した。
「おねがいっ、してっ！もっときもちいいこと、してぇっ♪」
「わかったよ。それじゃあ……」
私の答えを聞くと、女の子は私と目を合わせてこういった。
「あなたを、わたしにしてあげる」
「……え……」
そう言った途端、彼女の目が闇色に染まった。
「あなたは、だぁれ？」
女の子が私の目をのぞきこんでいる。私は……だれだっけ。
「わたしは……だれ？」
「あなたは、わたしだよ」
「わたしは、あなた……？」
おんなのこがなにかいっている。よくわからない。
「あなたはわたし。わたしはあなた」
「わたしはあなた……あなたは、わたし……」
めのまえに「わたし」がいる。「わたし」がなにかいっている。
「ひとつに、なろぉ？」
「わたし」がわたしにだきついた。なに、するんだろ……？
「……ひぁっ！？」
おまた！？おまたに、なにかはいってくる！？
「あぁぁぁぁぁっ！」
「わたし」がぁっ！「わたし」がおまたからはいってくりゅううっ！ずるずるって！どんどんはいってく！どんどん……ぁぁ……
「…………ひ、ひぅ……」
「わたし」が、ぜんぶはいっちゃったぁ……
(ひとつになろぉ)
わたしのこえ？あたまのなかで、「わたし」のこえがする……？
……あぅ！？
「……あ、あぁぁあぁあぁひぁぁぁぁぁっ！」
かわってる！わたしかわってるぅ！「わたし」にかわってりゅうぅぅっ！
でも、すごいっ！きもちぃぃっ！かわるの、かわりゅのすごくすごくしゅごくきもちぃぃぃぃぃぃぃぃっ♪♪
「しゅごぃぃぃっ！しゅご……ひぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ！」
もうなんにもかんがえらりぇなぃ……「わたし」が、わたしに、とけて、まざって、おかしくして……
わたしは、わたしは、わたしは……
「……んぅ……」
次に気がついた時、私はもうわたしになっていた。
自慢だった栗色の髪は墨を流したように真っ黒に染まってしまっているし、耳も長くとがった形になった。
それと、何より一番違うのは、わたしの体の下にあの大きな黒い球があることだった。
球から触手が伸びて、わたしの体をまさぐり始める。
「あはぁ……きもちいいよぉ……」
触手はわたしが気持ちよくしてもらいたいと思ったところを、思いのままに犯してくれる。
もう気持ちいいことしか頭にないわたしには、これ以上ないプレゼントだ。
わたしは幸せだった。わたしになれたことが、何より幸せだった。
でも、まだ何か足りなかった。
「ほしい……」
わたしの頭に浮かんでくる、愛しい顔。
ずっと繋がりたいと思ってた。ずっと愛しいと思っていた。
でも我慢した。道ならないことだったから、しちゃいけないことだったから、我慢した。
でも、もう我慢しなくていい。わたしはわたしの好きなように、あの子と結ばれていいんだ。
だから、きもちよく、ひとつになろう。
「あいたい……ほしい……」
膨れ上がる欲望を抱えながら、わたしは村へ向かって一直線に進んでいった。
11/03/20 21:47更新 / 早井宿借
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