プロローグ:魔物少女は無邪気に走りだす
目の前で誘拐事件が起こっていた。
ここは町の近くにある森。
魔物の集落がある、という噂があるため、普通の人間はまず近づかない。
普通じゃない人間とは、ここに迷いこんでくる人間や、その人間を攫う人攫いくらいだろう。
「離してよー!」
男に抱え上げられた12歳くらいの少女は、必死にもがく。
少女は両手両足を動かして暴れるが、その程度では男の腕からは逃れられない。
しかし、暴れられるのが面倒だと思ったのか、男は顔をしかめる。
「チッ……おい嬢ちゃん、あとで飴玉やるから暴れるな」
飴玉っておい。
この状況で釣られるわけがないだろう。
「飴!?やったー!」
あれ。
「大人しくしてろよ」
「はーい!」
あっさり釣られた!?
純粋なんだかバカなんだか……。
「あっめ、あっめ、うっれしいなー」
両方のようだ。
「ここに入ってろ」
男は持参したらしい大樽に、少女を押し込もうとした。
さて、問題だ。
少女はこの後、どうなるだろう。
@男に監禁され、仲良く暮らす。
Aロリコンへと換金され、仲良く暮らす。
B子供のできない不幸な夫婦に歓喜され、仲良く暮らす。
……恐らくAだろう。
……あー。
……胸糞悪い。
しょうがないか。
「おいそこの小悪党をイメージしろと言われたら100人中90人の頭に浮かんできそうな格好の奴、ちょっと待て」
「……んあ?」
とりあえずドロップキックした。
ズガッ
「ウゴッ!?」
成功。
そのまま少女の手を取る。
「走るぞ」
「へ?……あ、うん!」
俺は少女の手を引き、走りだした。
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
「ここまで……くれば……大丈夫……か……」
俺は疲労困憊だった。
「お兄ちゃん大丈夫ー?」
少女は恐ろしいほど足が速かった。
手を引きつつ男から逃げようと思っていたのだが、いつの間にかこちらが引っ張られていた。
「何お前……ケンタウロスの生まれ変わりか……?」
「違うよー。ミレアはミレアだよー」
どうやらこの少女はミレアという名前らしい。
よくよく見てみると、ミレアは貴族のようなドレスを着ており、そのせいもあってかパッと見はいいとこのお嬢様である。
目鼻立ちは整っており、透けるような金髪は、嗅いだことのないような不思議な香りを振りまく……ハッ!
「あぶないあぶない」
少女に陶酔してどうする。
俺は深呼吸をして、心を落ち着かせた。
「……んで、ミレア」
「何〜?」
「お前の家はどこだ?」
「今は無いよー」
無い?
「親は?」
「いないよー」
いない?
「何でこの森に来たんだ?」
「うーん……分かんなーい」
「……………。」
やべぇ……このまま放置して帰りたい……。
しかし、どうやら森の奥まで来てしまったようなので、ここに置いていくわけにはいかない。
どうにかして町に戻らなければ……。
「磁石磁石……確か町は……」
俺が方角を調べようと磁石を取り出そうとしていると、
「町に行きたいの?」
ミレアが問いかけてきた。
「当たり前だろ。さっさと帰らないと夜になるぞ」
「じゃあ行こー」
そう言うとミレアはスタスタと歩き出した。
「おい、どこに行く気だ?」
「町だよ。はやくはやく!」
「……本当にそっちか……?」
「もー、置いてっちゃうよ!」
ミレアは駈け出した……って!
「待て、これ以上迷ったら!」
本格的にまずい。
「ほらほらはやくー」
ミレアは無邪気な返答。
それでいて一向に足を止める気配はない。
「待てってー!」
俺はミレアを追って走った。
ここは町の近くにある森。
魔物の集落がある、という噂があるため、普通の人間はまず近づかない。
普通じゃない人間とは、ここに迷いこんでくる人間や、その人間を攫う人攫いくらいだろう。
「離してよー!」
男に抱え上げられた12歳くらいの少女は、必死にもがく。
少女は両手両足を動かして暴れるが、その程度では男の腕からは逃れられない。
しかし、暴れられるのが面倒だと思ったのか、男は顔をしかめる。
「チッ……おい嬢ちゃん、あとで飴玉やるから暴れるな」
飴玉っておい。
この状況で釣られるわけがないだろう。
「飴!?やったー!」
あれ。
「大人しくしてろよ」
「はーい!」
あっさり釣られた!?
純粋なんだかバカなんだか……。
「あっめ、あっめ、うっれしいなー」
両方のようだ。
「ここに入ってろ」
男は持参したらしい大樽に、少女を押し込もうとした。
さて、問題だ。
少女はこの後、どうなるだろう。
@男に監禁され、仲良く暮らす。
Aロリコンへと換金され、仲良く暮らす。
B子供のできない不幸な夫婦に歓喜され、仲良く暮らす。
……恐らくAだろう。
……あー。
……胸糞悪い。
しょうがないか。
「おいそこの小悪党をイメージしろと言われたら100人中90人の頭に浮かんできそうな格好の奴、ちょっと待て」
「……んあ?」
とりあえずドロップキックした。
ズガッ
「ウゴッ!?」
成功。
そのまま少女の手を取る。
「走るぞ」
「へ?……あ、うん!」
俺は少女の手を引き、走りだした。
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
「ここまで……くれば……大丈夫……か……」
俺は疲労困憊だった。
「お兄ちゃん大丈夫ー?」
少女は恐ろしいほど足が速かった。
手を引きつつ男から逃げようと思っていたのだが、いつの間にかこちらが引っ張られていた。
「何お前……ケンタウロスの生まれ変わりか……?」
「違うよー。ミレアはミレアだよー」
どうやらこの少女はミレアという名前らしい。
よくよく見てみると、ミレアは貴族のようなドレスを着ており、そのせいもあってかパッと見はいいとこのお嬢様である。
目鼻立ちは整っており、透けるような金髪は、嗅いだことのないような不思議な香りを振りまく……ハッ!
「あぶないあぶない」
少女に陶酔してどうする。
俺は深呼吸をして、心を落ち着かせた。
「……んで、ミレア」
「何〜?」
「お前の家はどこだ?」
「今は無いよー」
無い?
「親は?」
「いないよー」
いない?
「何でこの森に来たんだ?」
「うーん……分かんなーい」
「……………。」
やべぇ……このまま放置して帰りたい……。
しかし、どうやら森の奥まで来てしまったようなので、ここに置いていくわけにはいかない。
どうにかして町に戻らなければ……。
「磁石磁石……確か町は……」
俺が方角を調べようと磁石を取り出そうとしていると、
「町に行きたいの?」
ミレアが問いかけてきた。
「当たり前だろ。さっさと帰らないと夜になるぞ」
「じゃあ行こー」
そう言うとミレアはスタスタと歩き出した。
「おい、どこに行く気だ?」
「町だよ。はやくはやく!」
「……本当にそっちか……?」
「もー、置いてっちゃうよ!」
ミレアは駈け出した……って!
「待て、これ以上迷ったら!」
本格的にまずい。
「ほらほらはやくー」
ミレアは無邪気な返答。
それでいて一向に足を止める気配はない。
「待てってー!」
俺はミレアを追って走った。
11/06/20 22:23更新 / パラッド
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