ある死霊術師の一日
自分の父は死霊術師だ。
それもゾンビを作る程度ではなく、死人の魂をゴーストへ変化させたり、
形もないただの念を魔物の魔力と合わせて、ドッペルゲンガーを作ったりできるほどの腕前。
そのため父の元へは、無くなった妻や恋人と再び暮らしたいと多くの者が訪れる。
そしてそんな姿を見て育った自分も、父と同じ仕事をしたいと、死霊術を学ぶようになったのだ。
……もっとも自分にはあまり才能がないのか、なかなか腕が上達しないんだけどね。
朝、目が覚める。
今日もいつもと同じ薄暗い空。いい天気だ。
寝間着から普段着へ着替えて部屋を出る。
廊下を歩き食堂へ向かう。
近づくにつれいい香りが鼻へ舞い込んでくる。
「あ、おはよう。朝食はもうすぐできるわよ」
グツグツ煮え立つスープをかき回しているのは母……の姿をしたドッペルゲンガーだ。
本当の母は自分を産んですぐに亡くなった。
何故かはわからないが父は亡くなった母そのものをアンデッドにしようとはしなかった。
最初は一人で面倒を見ていたらしいが、やがて男手一人で子供を育てるのは無理だと思い、
幼い自分の母を求める気持ちと魔物の魔力を混ぜてドッペルゲンガーを作ったのだそうだ。
だから母と言っても本当にこの姿をしていたのか分からない。
自分の中の母のイメージが具現化しただけなのだから。
父はドッペルゲンガーの姿に関して一度もコメントしたことがない。
正しいのか間違っているのか今に至るまで不明のまま。
ドッペルゲンガーが皿にスープをよそり、テーブルの上に置く。
パンを手渡し微笑む。
「はい、熱いから注意してね。それと……母さんにも朝食ちょうだいね」
朝食。
魔物であるドッペルゲンガーの食糧は人間の精。
小さい頃は舌を絡めるキスで栄養補給していたが、自分が精通してからは精液を飲むようになった。
しゃがんでテーブルの下に潜り込む母。
ズボンのボタンが外れ、男性器を引っ張り出される。
いつものことなので、母に求められると朝っぱらでもすぐ勃起してしまう。
「じゃ、いただきます……んむっ」
自分のモノが口に含まれる。
舌で先端を舐めまわし、竿を胸で挟みゆっくり動かす。
唾液がモノを伝って零れ、二人だけの食堂にクチャクチャと音が響く。
その間自分も朝食を進める。
パンを千切ってバターを塗りかぶりつく。いつも通りの味だ。
ドッペルゲンガーの口は快感だが、慣れている自分はそれにかかりきりにはならない。
もちろん生理的反応として、動悸が早くなりはするけど。
少しばかり冷めたスープを吸いながら、テーブルの下の母を見る。
自分の射精を間近に感じているのか、胸に添えた手の動きが早い。
……よし、もう出そう。
はしたなくスープ皿を持ち上げて汁ごと具をかきこむ。
全て胃の中に収めるとカタンと皿をテーブルに置き射精する。
「んっ！ ……んむっ、んっ………」
母も手慣れたもの。どれだけ大量に出されてもこぼすことは無い。
口の中で良く味わい、コクリと飲み下す。
「はぁ……っ。うん、今日も元気ね。美味しいご飯ありがとう」
テーブルの下から出てちゅっとキスをするドッペルゲンガー。
清潔だと解ってはいても、しゃぶった口でキスをされるのはあまりいい気はしない。
朝食の後は部屋へ戻って死霊術の勉強。
開いた棺桶の上で怪しい呪文を唱え続ける。
包帯の巻かれたこのミイラを動かせるようになるのが当面の課題だ。
……全然進展がないけど。
しばらく儀式をした後、休憩として部屋を出る。
すると窓の拭き掃除をしていたメイドと鉢合わせした。
「あーら、こんにちは、坊っちゃま」
メイドらしくなくジロリと睨んでくるのはヴァンパイア。
坊っちゃまなんて言ってるけど、敬意は感じられない。
このヴァンパイアは没落貴族だ。
領地の経営がにっちもさっちも行かなくなって、一家無理心中したものを父が拾ってきた。
女性の死体をヴァンパイアへ変質させる実験だったらしい。
実験は成功し蘇生したけど、屋敷も領地もすでに他人の手に渡り、行く場所などないヴァンパイア。
そんなわけで、メイドとして我が家で働いている。
まあ、元々お嬢様だったからなんで私が雑用なんて……といつも文句を言うのだが。
せっかくなので、元お嬢様が甲斐甲斐しく労働する所を観察してやる。
脚立に登り上の窓をフキフキ。
段を下りて脚立を手にとり、すぐ横の窓へ―――あいたっ！
「あら失礼。お気を付け下さい、坊っちゃま」
脚立をわざとぶつけてきやがったコイツ。
今のはかなり痛かった。アザになってるんじゃないか？
足を撫でて痛みを和らげる自分。
やがて治まると、脚立に足をかけたヴァンパイアを引きずり降ろして、壁に押し付ける。
「っ……！ なによ？」
お前のせいで怪我をした。覚悟はできてるんだろうな？
「私に罰を与えるっていうの？ 平民風情が――ん！」
唇を塞いで黙らせる。ヴァンパイアは身を固くするが抵抗しない。
「……立場を振りかざして私に狼藉働こうっていうの？」
別に嫌ならいいぞ。使えないメイドは追い出すだけだ。
「わかってるわよっ……！」
理解しているならいい。ほら、尻を出せ。
仕方なくといった感じでヴァンパイアは背を向け壁に手を付く。
自分はスカートをめくり、下着を足もとまで引き下ろす。
……一応だが本気で怒っているわけではない。
こいつは変なプライドがあるのか、素直にセックスしたいと言わないのだ。
いつもヤリたいときは自分の前で粗相をして、
メイドを無理矢理犯す乱暴な住人という形に持っていく。
そのせいで自分の手足にはアザや火傷が絶えない。
「さっさとやりなさいよ、この強姦魔」
そうかいそうかい。坊ちゃまを強姦魔呼ばわりかい。
片手でズボンから男性器を取り出し、ヴァンパイアに挿入する。
「くぅっ……！ 入って…くるっ…！」
腰を掴んでズブズブと沈めていく。
ほら、久しぶりの男の味はどうだ？
「最低よっ…！ あんたなんかに犯されるなんて……ひっ！」
深く入ったので腰から手を離し、服の上から胸に触れる。
「や、やめてよっ…！ 胸弄らないで……！」
上半身を触れ合わせたまま腰を動かす。
ヴァンパイアとの結合部分から液体が零れ落ち、床に水たまりができた。
……汚いな。ちゃんと床も掃除しておけよ。
「そんなのっ…わかっ、てるわよ……！」
このヴァンパイアは態度は悪いが仕事はちゃんとする。
そんなやりとりをしているうちに催してきた。
そろそろ出すか。お前の中にたっぷり注いでやるからな。
「ええっ！ ちょっ、中に出さないでよ！ デキたらどうするの！？」
デキたら産めばいいじゃないか。メイドとして住人に奉仕しないと。
「それはもうメイドの仕事じゃないわよっ！ なんで平民の子供を私がっ……！」
平民平民というがお前はもう平民未満の没落貴族の使用人なんだよ。
ほれ、雇い主の息子様が子種を注いでやるぞ。ありがたく受け取れ。
腰を押し付けて一片の遠慮もなくヴァンパイアの膣内に射精する。
「ひっ！ 精液…出てるっ……！ あぁっ、ビチャビチャ……って！
私の体……汚されて…っ！ 高貴な血、なのにっ……！」
没落したくせに血統がそんなに大事か。もっと奥まで押し込んでやる。
「がっ…！ 子宮口…グリグリっ、て……！ やめ…てっ！
そんなに出されたら…混ざっちゃう…！
わたし……と、あなたの血が…っ！ 混ざっちゃう……からっ…！」
イヤイヤ言いながらも窓ガラスにはとろけた顔が映っている。
……本当に孕んだら、少しは素直になってくれるかね？
粗相をしたメイドに罰を与えていたら結構時間が経った。
部屋へ戻って勉強の続きをせねば。
１２時を過ぎ昼食をとった後。
腹を休めるために庭へ出たら、ドラゴン……のゾンビが寄ってきた。
「あ…ごしゅじんさま……ごしゅじんさまぁ……」
以前父が貴重な材料が手に入ったと、ドラゴンの死体を家に持ち帰ってきたことがある。
父はもっと思考能力の高いアンデッドにするつもりだったそうだが、
ドラゴンの魔力が抵抗して術が上手く成功しなかったらしい。
結果として大した知能のないドラゴンゾンビが出来上がってしまったのだ。
ドラゴンといえば男子のロマン。
正直自分も色々と期待していたのだが、
ドラゴンの皮をかぶったゾンビになってしまいガッカリした。
自分をご主人さまと呼んで、尻尾振って近寄る姿は、
ドラゴンというよりクサリメスオオトカゲ（ゾンビ属・爬虫類型）という感じだ。
ご主人さまと連呼しながら自分に抱きつくゾンビ。
よしよしと頭を撫でてやる。
最初からこんな様子なのでもう自分の中ではペット扱いだ。
「ね、ね、もうすぐうまれるの……」
そう言って膨らんだ腹を撫でるゾンビ。
その中にあるのはタマゴ。父親は自分だ。
ドラゴンゾンビというのは繁殖欲求が高く、暇さえあれば男に飛びついてくる。
さっさと孕ませて大人しくさせろという父の言いつけで、自分が部屋に閉じこもって励んだのだ。
「こっち、こっちきて……」
手を引っ張ってどこかへ自分を連れていくゾンビ。
その先は……物置小屋だった。
子供を産むときは安全な場所でということか。
ガラガラと扉を開けてほこり臭い小屋の中へ。
扉を閉めた後ゾンビがしゃがんで息み始める。
「う゛ー……う゛ー……」
息をあげながらうなるゾンビ。ピチャピチャと木の床に液体が広がる。
普段はウロコに隠された女性器が露出し拡がっているのが見える。
「あ…あっ…！ ごしゅじん…さま…！」
土気色の穴の奥から、どこかくすんだ色のタマゴがズリズリと進んでいる。
……当然だけど産まれるのもドラゴンゾンビなんだよな。
「でちゃう……うまれちゃう……っ！ ぐぐっ……ぐぅぅっー！」
ベチャッ、ゴロン。水の弾ける音と硬い物が転がる音。
産まれたタマゴはゴロゴロ転がって、立て懸けたホウキにぶつかって止まった。
床に伏せているゾンビを尻目にタマゴへ近づき拾う。
結構重いな………って。
ドラゴンゾンビが産んだタマゴ。
それはすでに殻の一部が割れて中が見えていた。
……死体とはいえ大丈夫なのかこれ？
夕食をとった後。
自室で何度目になるか分からない蘇生の儀式を行う。
どうだ？ こんどは…！？
ピクリとミイラの指先が動く。
カサカサで骨に張り付いていた肌が、膨らんで柔らかさを取り戻す。
そしてミイラはゆっくりと眼を開けた。
やった……成功した。
ミイラは棺桶の中から身を起こし、自分をじっと見る。
「お腹、空いた……」
はいはい、自分がご飯をあげますよと手を取ってベッドへ誘う。
父から与えられた課題を一つクリア。
これで自分も少しは死霊術師として進歩したのかな？
それもゾンビを作る程度ではなく、死人の魂をゴーストへ変化させたり、
形もないただの念を魔物の魔力と合わせて、ドッペルゲンガーを作ったりできるほどの腕前。
そのため父の元へは、無くなった妻や恋人と再び暮らしたいと多くの者が訪れる。
そしてそんな姿を見て育った自分も、父と同じ仕事をしたいと、死霊術を学ぶようになったのだ。
……もっとも自分にはあまり才能がないのか、なかなか腕が上達しないんだけどね。
朝、目が覚める。
今日もいつもと同じ薄暗い空。いい天気だ。
寝間着から普段着へ着替えて部屋を出る。
廊下を歩き食堂へ向かう。
近づくにつれいい香りが鼻へ舞い込んでくる。
「あ、おはよう。朝食はもうすぐできるわよ」
グツグツ煮え立つスープをかき回しているのは母……の姿をしたドッペルゲンガーだ。
本当の母は自分を産んですぐに亡くなった。
何故かはわからないが父は亡くなった母そのものをアンデッドにしようとはしなかった。
最初は一人で面倒を見ていたらしいが、やがて男手一人で子供を育てるのは無理だと思い、
幼い自分の母を求める気持ちと魔物の魔力を混ぜてドッペルゲンガーを作ったのだそうだ。
だから母と言っても本当にこの姿をしていたのか分からない。
自分の中の母のイメージが具現化しただけなのだから。
父はドッペルゲンガーの姿に関して一度もコメントしたことがない。
正しいのか間違っているのか今に至るまで不明のまま。
ドッペルゲンガーが皿にスープをよそり、テーブルの上に置く。
パンを手渡し微笑む。
「はい、熱いから注意してね。それと……母さんにも朝食ちょうだいね」
朝食。
魔物であるドッペルゲンガーの食糧は人間の精。
小さい頃は舌を絡めるキスで栄養補給していたが、自分が精通してからは精液を飲むようになった。
しゃがんでテーブルの下に潜り込む母。
ズボンのボタンが外れ、男性器を引っ張り出される。
いつものことなので、母に求められると朝っぱらでもすぐ勃起してしまう。
「じゃ、いただきます……んむっ」
自分のモノが口に含まれる。
舌で先端を舐めまわし、竿を胸で挟みゆっくり動かす。
唾液がモノを伝って零れ、二人だけの食堂にクチャクチャと音が響く。
その間自分も朝食を進める。
パンを千切ってバターを塗りかぶりつく。いつも通りの味だ。
ドッペルゲンガーの口は快感だが、慣れている自分はそれにかかりきりにはならない。
もちろん生理的反応として、動悸が早くなりはするけど。
少しばかり冷めたスープを吸いながら、テーブルの下の母を見る。
自分の射精を間近に感じているのか、胸に添えた手の動きが早い。
……よし、もう出そう。
はしたなくスープ皿を持ち上げて汁ごと具をかきこむ。
全て胃の中に収めるとカタンと皿をテーブルに置き射精する。
「んっ！ ……んむっ、んっ………」
母も手慣れたもの。どれだけ大量に出されてもこぼすことは無い。
口の中で良く味わい、コクリと飲み下す。
「はぁ……っ。うん、今日も元気ね。美味しいご飯ありがとう」
テーブルの下から出てちゅっとキスをするドッペルゲンガー。
清潔だと解ってはいても、しゃぶった口でキスをされるのはあまりいい気はしない。
朝食の後は部屋へ戻って死霊術の勉強。
開いた棺桶の上で怪しい呪文を唱え続ける。
包帯の巻かれたこのミイラを動かせるようになるのが当面の課題だ。
……全然進展がないけど。
しばらく儀式をした後、休憩として部屋を出る。
すると窓の拭き掃除をしていたメイドと鉢合わせした。
「あーら、こんにちは、坊っちゃま」
メイドらしくなくジロリと睨んでくるのはヴァンパイア。
坊っちゃまなんて言ってるけど、敬意は感じられない。
このヴァンパイアは没落貴族だ。
領地の経営がにっちもさっちも行かなくなって、一家無理心中したものを父が拾ってきた。
女性の死体をヴァンパイアへ変質させる実験だったらしい。
実験は成功し蘇生したけど、屋敷も領地もすでに他人の手に渡り、行く場所などないヴァンパイア。
そんなわけで、メイドとして我が家で働いている。
まあ、元々お嬢様だったからなんで私が雑用なんて……といつも文句を言うのだが。
せっかくなので、元お嬢様が甲斐甲斐しく労働する所を観察してやる。
脚立に登り上の窓をフキフキ。
段を下りて脚立を手にとり、すぐ横の窓へ―――あいたっ！
「あら失礼。お気を付け下さい、坊っちゃま」
脚立をわざとぶつけてきやがったコイツ。
今のはかなり痛かった。アザになってるんじゃないか？
足を撫でて痛みを和らげる自分。
やがて治まると、脚立に足をかけたヴァンパイアを引きずり降ろして、壁に押し付ける。
「っ……！ なによ？」
お前のせいで怪我をした。覚悟はできてるんだろうな？
「私に罰を与えるっていうの？ 平民風情が――ん！」
唇を塞いで黙らせる。ヴァンパイアは身を固くするが抵抗しない。
「……立場を振りかざして私に狼藉働こうっていうの？」
別に嫌ならいいぞ。使えないメイドは追い出すだけだ。
「わかってるわよっ……！」
理解しているならいい。ほら、尻を出せ。
仕方なくといった感じでヴァンパイアは背を向け壁に手を付く。
自分はスカートをめくり、下着を足もとまで引き下ろす。
……一応だが本気で怒っているわけではない。
こいつは変なプライドがあるのか、素直にセックスしたいと言わないのだ。
いつもヤリたいときは自分の前で粗相をして、
メイドを無理矢理犯す乱暴な住人という形に持っていく。
そのせいで自分の手足にはアザや火傷が絶えない。
「さっさとやりなさいよ、この強姦魔」
そうかいそうかい。坊ちゃまを強姦魔呼ばわりかい。
片手でズボンから男性器を取り出し、ヴァンパイアに挿入する。
「くぅっ……！ 入って…くるっ…！」
腰を掴んでズブズブと沈めていく。
ほら、久しぶりの男の味はどうだ？
「最低よっ…！ あんたなんかに犯されるなんて……ひっ！」
深く入ったので腰から手を離し、服の上から胸に触れる。
「や、やめてよっ…！ 胸弄らないで……！」
上半身を触れ合わせたまま腰を動かす。
ヴァンパイアとの結合部分から液体が零れ落ち、床に水たまりができた。
……汚いな。ちゃんと床も掃除しておけよ。
「そんなのっ…わかっ、てるわよ……！」
このヴァンパイアは態度は悪いが仕事はちゃんとする。
そんなやりとりをしているうちに催してきた。
そろそろ出すか。お前の中にたっぷり注いでやるからな。
「ええっ！ ちょっ、中に出さないでよ！ デキたらどうするの！？」
デキたら産めばいいじゃないか。メイドとして住人に奉仕しないと。
「それはもうメイドの仕事じゃないわよっ！ なんで平民の子供を私がっ……！」
平民平民というがお前はもう平民未満の没落貴族の使用人なんだよ。
ほれ、雇い主の息子様が子種を注いでやるぞ。ありがたく受け取れ。
腰を押し付けて一片の遠慮もなくヴァンパイアの膣内に射精する。
「ひっ！ 精液…出てるっ……！ あぁっ、ビチャビチャ……って！
私の体……汚されて…っ！ 高貴な血、なのにっ……！」
没落したくせに血統がそんなに大事か。もっと奥まで押し込んでやる。
「がっ…！ 子宮口…グリグリっ、て……！ やめ…てっ！
そんなに出されたら…混ざっちゃう…！
わたし……と、あなたの血が…っ！ 混ざっちゃう……からっ…！」
イヤイヤ言いながらも窓ガラスにはとろけた顔が映っている。
……本当に孕んだら、少しは素直になってくれるかね？
粗相をしたメイドに罰を与えていたら結構時間が経った。
部屋へ戻って勉強の続きをせねば。
１２時を過ぎ昼食をとった後。
腹を休めるために庭へ出たら、ドラゴン……のゾンビが寄ってきた。
「あ…ごしゅじんさま……ごしゅじんさまぁ……」
以前父が貴重な材料が手に入ったと、ドラゴンの死体を家に持ち帰ってきたことがある。
父はもっと思考能力の高いアンデッドにするつもりだったそうだが、
ドラゴンの魔力が抵抗して術が上手く成功しなかったらしい。
結果として大した知能のないドラゴンゾンビが出来上がってしまったのだ。
ドラゴンといえば男子のロマン。
正直自分も色々と期待していたのだが、
ドラゴンの皮をかぶったゾンビになってしまいガッカリした。
自分をご主人さまと呼んで、尻尾振って近寄る姿は、
ドラゴンというよりクサリメスオオトカゲ（ゾンビ属・爬虫類型）という感じだ。
ご主人さまと連呼しながら自分に抱きつくゾンビ。
よしよしと頭を撫でてやる。
最初からこんな様子なのでもう自分の中ではペット扱いだ。
「ね、ね、もうすぐうまれるの……」
そう言って膨らんだ腹を撫でるゾンビ。
その中にあるのはタマゴ。父親は自分だ。
ドラゴンゾンビというのは繁殖欲求が高く、暇さえあれば男に飛びついてくる。
さっさと孕ませて大人しくさせろという父の言いつけで、自分が部屋に閉じこもって励んだのだ。
「こっち、こっちきて……」
手を引っ張ってどこかへ自分を連れていくゾンビ。
その先は……物置小屋だった。
子供を産むときは安全な場所でということか。
ガラガラと扉を開けてほこり臭い小屋の中へ。
扉を閉めた後ゾンビがしゃがんで息み始める。
「う゛ー……う゛ー……」
息をあげながらうなるゾンビ。ピチャピチャと木の床に液体が広がる。
普段はウロコに隠された女性器が露出し拡がっているのが見える。
「あ…あっ…！ ごしゅじん…さま…！」
土気色の穴の奥から、どこかくすんだ色のタマゴがズリズリと進んでいる。
……当然だけど産まれるのもドラゴンゾンビなんだよな。
「でちゃう……うまれちゃう……っ！ ぐぐっ……ぐぅぅっー！」
ベチャッ、ゴロン。水の弾ける音と硬い物が転がる音。
産まれたタマゴはゴロゴロ転がって、立て懸けたホウキにぶつかって止まった。
床に伏せているゾンビを尻目にタマゴへ近づき拾う。
結構重いな………って。
ドラゴンゾンビが産んだタマゴ。
それはすでに殻の一部が割れて中が見えていた。
……死体とはいえ大丈夫なのかこれ？
夕食をとった後。
自室で何度目になるか分からない蘇生の儀式を行う。
どうだ？ こんどは…！？
ピクリとミイラの指先が動く。
カサカサで骨に張り付いていた肌が、膨らんで柔らかさを取り戻す。
そしてミイラはゆっくりと眼を開けた。
やった……成功した。
ミイラは棺桶の中から身を起こし、自分をじっと見る。
「お腹、空いた……」
はいはい、自分がご飯をあげますよと手を取ってベッドへ誘う。
父から与えられた課題を一つクリア。
これで自分も少しは死霊術師として進歩したのかな？
11/11/30 17:18更新 / 古い目覚まし