柳田さん(その1)
仕事が終わり、家に帰ると、酒の匂いが充満していた。靴を下駄箱に片付け、ネクタイを緩める。玄関を入って左手にあるリビングに入ると、アオオニの【柳田】さんが、一人ソファに座り、テレビでバラエティを見ながら、ビールを飲んでいた。
「…遅せぇじゃねぇか、昇太郎。てめぇ、どこほっつき歩いてるんだよ!」
すでにリビングにあるテーブルには、ビールの缶が十本程度並んでいた。僕はソファに鞄を置くと、ネクタイを外した。時刻はまだ午後八時である。柳田さんの顔は上気していた。この人、相当飲んでいるな。何時もの事ではあるが、柳田さんは本当に酒癖が悪い。
「こんばんは、柳田さん。別に普通の時間帯ですよ。…柳田さんこそ、幾ら酒に強いっていったって、飲みすぎじゃないですか?そんなんじゃ、アオオニがアカオニになっちゃいますよ」
「あぁん!?お前、まさか、あたいに説教してんのかぁ!お前みたいなしょんべん小僧が大妖怪のアオオニのあたいにモノを申すなんざぁ、100万年早いわ!」
柳田さんがキレる。そして、空き缶を思いっきり、僕の顔に向かって投げる。僕は、ひらりとかわす。いつもの光景だ。それにしたって、柳田さん、危ないじゃないですか。
昇太郎の住むゲストハウスは、柳田さんのような魔物が住んでいる。もちろん人間も住んでいる。建物は古い社宅を改良したものであり、1階にはシングルタイプの部屋が、リビング脇に2部屋、キッチンの脇に1部屋ある。2階には昇太郎が住んでいるドミトリータイプの部屋の他に、シェアルームが2つ、シングルが5部屋ある。風呂とトイレは共同で、風呂は1階に2つ。トイレはそれぞれの階に一つずつあった。なんと、屋上まである(晴れた日の洗濯物はここで干す)。ゲストハウスは、短期滞在の為の仮の宿だが、家賃も月単位の支払いで安いし、様々な人とコミュニケーションが取れるので、僕は気に入っていた。ちなみに柳田さんは一階のリビングの脇、シングルタイプの部屋に住んでいる。
「おい、昇太郎、いいから、ここに座って、酒を飲め!」
命令口調で柳田さんが言う。僕は明日の仕事を理由に断ろうとするが、柳田さんは「あぁ、あたいの酒が飲めねえっていうのか!」と酔っぱらいの常套句を言う。これは付き合うしかないパターンである。僕は柳田さんの隣に座った。
「おう、それでいいのよ。ほら、飲め、飲め」
彼女が飲みかけのビールを僕に渡す。僕は軽く口をつける。なんとなしにテレビを眺めると、くだらないバラエティをやっていた。ぎゃはははと柳田さんが豪快に笑う。本当にこの人、酒に酔うと性格が180度くらい変わる。普段の柳田さんからは想像できない乱れっぷりである。きっと嫌な事でもあったのだろう。と、柳田さんが僕の背中をバンバンと叩く。
「ところで、昇太郎は最近そっちの方はどうなんだよ?」
「と、いいますと?」
僕はすっとぼけてみた。ビールに再び口をつける。すかさず彼女の追いうちが入る。
「きまってんじゃねぇか。女だよ女。本当にお前は鈍いなぁ。なぁ、昇太郎、よかったら、あたいが抜いてやんぞ」
柳田さんが意味もなく眼鏡の蔓をくいくいと動かして、僕の方にすり寄ってくる。確かに、ナイスバディとしかいいようがない。青く艶やかな肌。胸と腰には虎柄の布を纏っている。それが余りにも際どい。たまに見えてしまうんじゃないかという時がある。おそらく胸もDカップ以上はあるのではないか。僕は柳田さんの胸の谷間をがん見しながら、そんな事を考えた。
「なぁ、しようぜ、昇太郎。たまにはいいじゃねぇか」
柳田さんがさらに近寄る。僕の胸に体を寄せて、押し倒す。僕は持っていたビールの缶を床に落としてしまった。柳田さんはそんなことはお構いなしに、僕に馬乗りになる。
「あたいも最近してなくってさ。溜まってるんだよな」
柳田さんがショートの髪を揺らして、目を閉じて唇をすぼめる。「んー」といいながら顔を近づけてくる。「うぅ、酒臭い。確かに酒臭いが、その顔はルール違反だよ、柳田さん」と僕は思う。「ほら、昇太郎、はやくぅ」柳田さんが甘えた声を出す。そうして、僕は我慢できずに彼女の柔らかい唇に接吻した。
「…遅せぇじゃねぇか、昇太郎。てめぇ、どこほっつき歩いてるんだよ!」
すでにリビングにあるテーブルには、ビールの缶が十本程度並んでいた。僕はソファに鞄を置くと、ネクタイを外した。時刻はまだ午後八時である。柳田さんの顔は上気していた。この人、相当飲んでいるな。何時もの事ではあるが、柳田さんは本当に酒癖が悪い。
「こんばんは、柳田さん。別に普通の時間帯ですよ。…柳田さんこそ、幾ら酒に強いっていったって、飲みすぎじゃないですか?そんなんじゃ、アオオニがアカオニになっちゃいますよ」
「あぁん!?お前、まさか、あたいに説教してんのかぁ!お前みたいなしょんべん小僧が大妖怪のアオオニのあたいにモノを申すなんざぁ、100万年早いわ!」
柳田さんがキレる。そして、空き缶を思いっきり、僕の顔に向かって投げる。僕は、ひらりとかわす。いつもの光景だ。それにしたって、柳田さん、危ないじゃないですか。
昇太郎の住むゲストハウスは、柳田さんのような魔物が住んでいる。もちろん人間も住んでいる。建物は古い社宅を改良したものであり、1階にはシングルタイプの部屋が、リビング脇に2部屋、キッチンの脇に1部屋ある。2階には昇太郎が住んでいるドミトリータイプの部屋の他に、シェアルームが2つ、シングルが5部屋ある。風呂とトイレは共同で、風呂は1階に2つ。トイレはそれぞれの階に一つずつあった。なんと、屋上まである(晴れた日の洗濯物はここで干す)。ゲストハウスは、短期滞在の為の仮の宿だが、家賃も月単位の支払いで安いし、様々な人とコミュニケーションが取れるので、僕は気に入っていた。ちなみに柳田さんは一階のリビングの脇、シングルタイプの部屋に住んでいる。
「おい、昇太郎、いいから、ここに座って、酒を飲め!」
命令口調で柳田さんが言う。僕は明日の仕事を理由に断ろうとするが、柳田さんは「あぁ、あたいの酒が飲めねえっていうのか!」と酔っぱらいの常套句を言う。これは付き合うしかないパターンである。僕は柳田さんの隣に座った。
「おう、それでいいのよ。ほら、飲め、飲め」
彼女が飲みかけのビールを僕に渡す。僕は軽く口をつける。なんとなしにテレビを眺めると、くだらないバラエティをやっていた。ぎゃはははと柳田さんが豪快に笑う。本当にこの人、酒に酔うと性格が180度くらい変わる。普段の柳田さんからは想像できない乱れっぷりである。きっと嫌な事でもあったのだろう。と、柳田さんが僕の背中をバンバンと叩く。
「ところで、昇太郎は最近そっちの方はどうなんだよ?」
「と、いいますと?」
僕はすっとぼけてみた。ビールに再び口をつける。すかさず彼女の追いうちが入る。
「きまってんじゃねぇか。女だよ女。本当にお前は鈍いなぁ。なぁ、昇太郎、よかったら、あたいが抜いてやんぞ」
柳田さんが意味もなく眼鏡の蔓をくいくいと動かして、僕の方にすり寄ってくる。確かに、ナイスバディとしかいいようがない。青く艶やかな肌。胸と腰には虎柄の布を纏っている。それが余りにも際どい。たまに見えてしまうんじゃないかという時がある。おそらく胸もDカップ以上はあるのではないか。僕は柳田さんの胸の谷間をがん見しながら、そんな事を考えた。
「なぁ、しようぜ、昇太郎。たまにはいいじゃねぇか」
柳田さんがさらに近寄る。僕の胸に体を寄せて、押し倒す。僕は持っていたビールの缶を床に落としてしまった。柳田さんはそんなことはお構いなしに、僕に馬乗りになる。
「あたいも最近してなくってさ。溜まってるんだよな」
柳田さんがショートの髪を揺らして、目を閉じて唇をすぼめる。「んー」といいながら顔を近づけてくる。「うぅ、酒臭い。確かに酒臭いが、その顔はルール違反だよ、柳田さん」と僕は思う。「ほら、昇太郎、はやくぅ」柳田さんが甘えた声を出す。そうして、僕は我慢できずに彼女の柔らかい唇に接吻した。
12/05/01 09:23更新 / やまなし
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