着せ替え人形2 婦警さんコス
イレットを家の外に連れ出すことが決定した。
当然、外出用の服が要る。あんな時代錯誤なドレスを着せて外に出したら、職質待ったなしだ。
ところがイレットは――。
「服とかよく分かんないからお兄様が選んで」
と投げやりなことを言うので、仕方なくぼくが選ぶことになったんだけど、女性ものの服のことなんてさっぱり分からない。
ついでに言うと、一人で女性服をレジに持っていけない。これもまた職質待ったなしだろう。
仕方ないので、知り合いに頭を下げて、服を買って来て貰うことにした。
大学で知り合った女友達だ。精々遊びや飲み会で一緒になることがときたまある程度で、こんな図々しい頼みごとが出来るほど親しくもないが、そもそも女の知り合いが殆どいなかったという悲しい事実。
今は飲み会中で、だから酒の勢いに任せて約束をとりつけてしまうことにした。
「適当に女の子用の服を見繕って欲しいんだけど。お金はもちろん出すから」
「はあ……? いいけど、え、わたしの服が欲しいってこと? え、変態?」
「違うそうじゃない。そうじゃなくて、……実は、そう、親戚の子を預かってて、その子の服がいるんだけど、良く分からないから」
「じゃあ店にその子連れてって買えばいいじゃない」
「外に出たがらないんだ」
いかにも怪しいという顔をされる。
「……なんかそれ、ヤバい話じゃないよね?」
「何がどうヤバいんだ」
「誘拐とか監禁とか」
「してねえよ。いいから黙って言うこと聞け。現金先払いで釣りは全部やるから」
「……はあ」
呆れた顔。
「まあ、お釣りくれるならいいよ。……っていうか、サイズいくつ?」
あらかじめ測っておいたイレットのサイズを言うと、さらに訝しげな顔をされる。が、現金を五万渡したら引き受けてくれた。金持ちで助かった。
『え、ロリコン?』みたいな目で見られたけど、仕事さえしてくれればなんでもいい。
飲み過ぎた。
身体に酔いが回って、少し頭痛がする。洗面台で顔を洗った。鏡に写ったぼくの顔が、赤らんでいる。
もう、深夜十二時だ。明日が土曜日で助かる。
「疲れた、寝よう……ああ、イレットは?」
リビングに、イレットを探しに行く。
リビングの扉を開くと、イレットがカーペットに寝そべって漫画を読んでいた。ちゃんと良い子にしていたようだ。食卓の方を見ると、用意しておいた昼食も残さず食べていた。言いつけどおり、食器もキッチンの水に漬けてある。
「お兄様、お酒くさいわ……」
「ごめんごめん。でも、半分はイレットの為だから」
「わたしの?」
カーペットに座り、服のことを説明する。
「――ってわけで、その友達にイレットの服を頼んだから」
「あーそれもういらない」
「は?」
「服ね、ちょうどいいのが家にあったのよ。きっとお兄様のお父様が、わたしのために用意しててくれたのね。洋館の洋服ダンスの中にあったわ」
いや先に言えよ父さん。もう五万渡しちゃったよ。
「どんな服?」
「派手じゃなくて、地味で、仕事にもつかえそうな服。外出にピッタリね。きっと気に入るわ」
「へえ。そりゃ楽しみだ」
地味なのは良い。いま着てるドレスみたいな人目を引く派手な服だと、職質されるかもしれないし。
「お披露目してあげよっか?」
「……いや、もう酔ってて眠いし、明日で良いよ」
「うん。じゃあここで待っててね。いま着て来るから」
何がじゃあ、なのか。相変わらずぼくの言うことを聞かない女だ。
イレットがリビングを出て、和室からふすま越しに衣擦れの音がする。着替えているんだろう。
携帯をポケットから取り出した。服をキャンセルするように言っておかないと。でももう寝てるかもしれないから、メッセージだけ送っておこう。『ごめんけど、さっき頼んだ服の話はなしに――
ガラガラ、ふすまが開いた。イレットが自信満々な顔でこっちを見ている。
ぼくは唖然とし、携帯を床に落とした。
「どう、似合う?」
「…………」
改めてイレットを見る。
胸元が開いた、水色の半そでシャツ。
めちゃめちゃ短い、黒のタイトスカート。
両足には、黒いストッキング。
頭にかぶっている、黒い帽子の真ん中には、金色の紋章。
右手には黒い拳銃。
左手には銀色の手錠。
一言にまとめるなら、婦警さんだった。
理解不能。
イレットは、右手の拳銃をぼくに向け、
「ばっきゅーん♥ 逮捕しちゃうゾ♥」
「アホか! そんな服着せて外だしたら、マジで逮捕されるわボケ!」
ぼくがね!
本物の警察が来て「ちょっと、署までご同行願います」からの実刑コースだよ! しかもやることやってるから言い訳できないのが尚のことたちが悪い。
イレットは、小首をかしげて可愛らしく、
「なんで? 派手じゃないよ? 仕事で着れるよ?」
「お前絶対わざとやってるだろ!」
「まあまあいいじゃん」
よくない。ぼくは床の携帯を拾い上げ、慌ててメッセージを消した。
イレットの言うことを真に受けたぼくが馬鹿だったのだ。
っつーか父さん、何コレクションしてんだよ。自分の父親にそんな特殊な趣味があるとか、知りたくなかった……。
「ねーえ、お兄様?」
いつの間にかイレットが目の前まできていた。
膝に手を置いて前かがみになり、あのよくグラビアアイドルなんかが胸を強調する時にとる、エロいポーズをとって、
「どう、エロい?」
「……」
水色のシャツは胸元が開き、そこには広大な平地が広がっていた。要するに貧乳だった。
ぼくは、片手で携帯を弄びながら、馬鹿にするようにふんと鼻で笑う。
「婦警さんって、確かにエロいってイメージあるけど……童顔のちんちくりんが着てたんじゃ、ぷぷっ、コスチュームの方が可哀相だな、あははっ」
改めて婦警さんコスのイレットをみると、なんだか間抜けで、笑えてくる。笑い過ぎてちょっとお腹が痛くなってくるほどだ。よくそんなちっさいサイズがあったな。
まあ、お遊戯会的な可愛さはあるけど、エロさは、ねえ……?
「あーもう、腹痛い。やめてよ今酔ってるのに、あー、笑い過ぎて頭も痛くなってきた、ひひっ、ふふっ、あははっ」
とにかく笑った。
笑い過ぎて、イレットが何をしているかが見えていなかった。
……身体が熱くなってくる。
最初は、笑い過ぎが原因だと思った。でも明らかに違う。身体が熱い。溶けそうだ。
イレットが魔法を使っていることに気付いた時、すでにぼくの意識はぼやけていた。
「……あ、あれ、イレット?」
「お兄様の馬鹿お兄様の馬鹿お兄様の馬鹿……」
念仏のようにぶつぶつと、怨みの言葉を吐くイレット。
ぼくの身体が熱くなってくる。
……魔法だ。前に、ぼくの射精が止まらなくなったときの、あの魔法。
ぼくはあの時、意識を失うまでイレットに絞られた。
……まさか。
背筋が冷える。ぼくは慌てた。
「ちょっと待てイレット! やめろ、おい!」
「馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿場……」
「なんで怒ってる? ぼく何か悪い事した?」
「……そんなことも分からないの?」
イレットは、それはもう髪が逆立つのではないかというほどのオーラを纏って、目を吊り上げている。
その目から、また魔力を注入されて、ぼくの身体が麻痺した。金縛りだ。床に足を延ばして座ったままの状態で、目と口以外が動かせなくなる。
「わたしが今日、どんな思いで家にいたか、お兄様に分かる? ひとりで、寂しくて……なのにお兄様は、酔っ払って帰ってきて……」
「わ、悪かったよ。でも学校だから、」
「それでもわたし、お兄様が喜ぶと思って、コスプレまでして……なのにお兄様は、お兄様は、お兄様は……」
「いや違うって。可愛いよ、可愛い。凄く似合ってるうん」
「そうね。もう、わたし以外誰も目に入らないように、今夜調教してあげる」
イレットは、座ったままのぼくに、軽くキスした。
ぼくは、魔法の所為で息が荒くなってくる。視界がぼやけ、身体の芯にマグマを通したように全身が熱い。
キスされただけなのに、ゾクゾクが止まらなくなって、身体が震える。
「あっ、はあっ、はあっ……」
「ねーえお兄様、どう、えっちな気分になってきたでしょ?」
えっちな気分になってきた、どころの騒ぎじゃない。もう、頭の中が性的な欲求だけで満たされて、破裂しそうだ。
さっき笑い飛ばしたイレットのコスチュームが、いまはとても魅力的に見える。貧乳のちんちりんのはずなのに、あの短いタイトスカートや、黒いタイツや、胸元が開いたシャツが、とても魅力的で……
犯したい。この手であの服を剥ぎ、その下の身体を性欲のままに貪りたい……。
ぼくの性器は膨らみ、ジーンズを押し上げていた。
イレットが、ニヤニヤ笑っている。
「お兄様、抜いて欲しい?」
「……ああ」生唾を飲んだ。
「どうしよっかなー」
イレットは足をあげ、
ぼくの性器を、踏んだ。
「めんどくさいし、足でやってあげる」
「お、おい……」
「ほーら、ぐりぐり。ぐりぐり」
黒いタイツに包まれた右足が、ジーンズ越しにぼくの性器を苛めている。足裏で、ぼくの性器を撫でるように踏んでいる。
足でされているのに……魔法の所為で性器がとても敏感になっていて、今にも射精してしまいそうだ。勃起していたぼくの性器が、もっともっと固くなっていく。
「お兄様、警官に足で踏まれておっきくして、悪いとは思わないの?」
「……っ……はあ、はあ……はあ」
気持ちいい。もっと強く踏んでほしい。
「言い訳もなし? あ、気持ち良すぎてそれどころじゃないか。ほらほら、もっと気持ち良くなってよ、ぐりぐり、ぐりぐりぐり、あははっ」
「っ!」
「せめてズボンくらいは脱がせてあげる」
イレットは一旦足をどけて、ジーンズを下ろした。トランクスがテントをはっている。
でもイレットは、トランクスは脱がさず、そのまま足で苛め始めた。
「そのままパンツの中にだせば?」
本気で怒ってるみたいだ。
「お兄様のパンツ、もう我慢汁で濡れ濡れね」
イレットの足が、トランクス越しにぼくの性器を踏んでいる。先走り汁がトランクスにシミをつくっている。
ジーンズ越しに踏まれるのと違って、イレットの足の感触が伝わってくる。
踏まれているのに、まったく痛くない。絶妙な力加減が、気持ちいい。
「ほら、こうやって、指で挟んで扱くの、気持ちいい?」
「あっ、ぐっ……はあ、はあ……」
親指と人差し指の間にぼくの性器を挟んで、上下に扱く。強めの刺激。
「ぐりぐりぐり」と掛け声を出しながら、足の指に力を入れて、イレットがぼくの性器を苛めている。馬鹿にされている。なのにぼくは、気持ち良くなっている。
屈辱だ。
イレットがぼくを見下げて、ニヤニヤ笑っている。
屈辱なのに、苛められて、嬉しいと思ってしまう。もっとその足で、気持ち良くして欲しい。頭がおかしくなるくらい、苛めて欲しい。
「どう、気持ちいいでしょ?」
「……五月蠅い」
「あっそ。じゃあやめた」
イレットは指でぼくの性器を挟んだまま、足の動きを止めた。
畜生。
またそれか。焦らすのか。
「あっはっ! なっさけない顔ね、お兄様。……ねえ、ホントはもっと、気持ち良くなりたいんでしょ?」
「……ああ」
「なら頼んで。婦警さん、足でぼくのおちんちんを踏んでくださいって、口に出して頼んで。そしたらまたやってあげる」
難易度が高すぎる。
「ほら、早く頼みなさいよ」
イレットは足の指に力をいれてぼくの性器をキリキリ締め付ける。
指で締め付けられ、射精できない刺激が、もどかしくて、気が狂いそうだ。
「言わないとこうやって、お兄様のおちんちん指で挟んで焦らしたままよ? 耐えられる?」
「……ふ、ふ……ふけ……婦警さん、ぼくの、ぼ、ぼくのおちん――って言えるか馬鹿!」
「じゃあわたしもう寝るから」
「待て待て! 言う! 言うよ!」
「じゃああと十秒。じゅーう、きゅーう、はーち」
このガキ……。
でも、言うしかない。こんな生殺しのままリビングに放置されたら、マジで発狂しかねない。
顔が熱い。赤面しているであろうぼくを、イレットがニヤニヤ笑って見ている。
でも早く気持ちよくなりたい。イレットの足の指に挟まれたままのぼくの性器が、もどかしさにビクビク震えている。
早く扱いて欲しい。
早く、早く、早く……
ぼくは、咳払いして、
「ふ、婦警さん、ぼくのおちんちんを、あ、あ、足で、踏んでください……」
「ん。よく言えました」
イレットは満面の笑みを湛えて、ぼくの頭を撫でている。
「恥ずかしがってるお兄様、とっても可愛いわ」
イレットは、ぼくの正面に座って、両足を伸ばし、
「ご褒美に、両足で挟んであげる」
イレットは両足でぼくの性器を挟んで扱き始める。
焦らされた上に、両足で揉みほぐすように全体を刺激されて、とても気持ちいい。ぼくの口からどうしようもなく、ああ、と恍惚の息がもれた。
「指も使って、ぐりぐりぐりぐり……」
両足の指を器用にうねらせ、性器を撫で、擦り、扱いている。屈辱的で背徳的で、期待が高まってくる。
「ねえ、ストッキングで直接やってあげよっか? パンツ越しより絶対気持ちいいわ。そうして欲しかったら、お願いして」
「……しろ」
「聞こえない」
「……頼む」
「敬語」
「……お、お願いします」
なんて情けない姿、切腹ものだ。でももう、気持ちいいことだけしか考えられない。魔法の所為だ。そうだぼくは悪くない。
「仕方ないわねえ、お兄様ったら」
イレットは妖艶に微笑み、トランクスの中に足を滑り込ませる。ぼくの性器に、ストッキングの独特の感触が伝わってくる。
なんだこれ……凄く気持ちいい。病み付きになりそうだ。
トランクスの中で、イレットの両足が蠢いている。
その両足の先に、タイトスカートが見える。イレットは座っているので、白いパンツが見えていて、視線が釘付けになってしまう。
「やだお兄様、どこ見てるの? えっち。……えっちなお兄様には、本官がお仕置きしてあげましょうね。ほら、カリを挟んで、ぐりぐりぐり……」
「んっ、あっ」
カリに足の指をひっかけられて、一気に性器が昇りつめた。
「出そう? いいわよ。パンツの中に出して。スカートの中を覗くわるーいお兄様の、えっちな毒を、本官が抜いてあげます、ふふっ」
イレットは不敵に笑い、足の動きを速くする。
馬鹿にするように、
「出るんでしょ? ばればれよ? ほら、出しなさい? えっちな精液、パンツの中にだしちゃいなさい?」
「はあ、はあ……」
「ぐりぐりぐり。はい出して出して。ぐりぐりぐりぐり」
「――ッ」
射精し、性器がどくどく脈打つ。
「……ふふっ、出てる出てる、びゅびゅって、パンツの中に出てるわよ、お兄様」
射精しているあいだも、イレットは足でぼくの性器をしごき続けた。どろどろの精液が、黒いストッキングを汚す。
イレットはトランクスを脱がし、
「どろどろで、ふふっ、おいしそう……あむ」
精液まみれの性器を、口に含んだ。足での強烈な刺激から一転、優しくて暖かい刺激。
柔らかい舌に、優しく性器を舐められて、頭がぼーっとしてくる。
ぼくは右手を額に当て、汗でへばりついた前髪を掻き揚げた。
「……あれ?」
動く。
右手が動く。
イレットにばれないように、左手にも力を入れてみると、動いた。足も、指先までちゃんと動く。
いつの間にか、金縛りの方の魔法は解けていたらしい。
視線を走らせると、イレットが用意していた手錠が、手の届くところに落ちている。
イレットは一心不乱にぼくの性器を舐めている。
チャンスだ。
フェラに夢中になっているイレットにばれないように、そっと手を伸ばして、手錠を手にした。そして、
イレットの両手を掴んで、後ろ手に手錠を嵌めた。
「……え?」
イレットが性器を吐きだし、唖然とする。ぼくはその隙に、イレットの目を見ないように注意して後ろに回り、逃がさないように背中から抱きしめた。
――勝った。
さっきの屈辱を、思う存分晴らさせてもらう。
この時のぼくは酔っていたので、なんだか少しノリノリだった。
当然、外出用の服が要る。あんな時代錯誤なドレスを着せて外に出したら、職質待ったなしだ。
ところがイレットは――。
「服とかよく分かんないからお兄様が選んで」
と投げやりなことを言うので、仕方なくぼくが選ぶことになったんだけど、女性ものの服のことなんてさっぱり分からない。
ついでに言うと、一人で女性服をレジに持っていけない。これもまた職質待ったなしだろう。
仕方ないので、知り合いに頭を下げて、服を買って来て貰うことにした。
大学で知り合った女友達だ。精々遊びや飲み会で一緒になることがときたまある程度で、こんな図々しい頼みごとが出来るほど親しくもないが、そもそも女の知り合いが殆どいなかったという悲しい事実。
今は飲み会中で、だから酒の勢いに任せて約束をとりつけてしまうことにした。
「適当に女の子用の服を見繕って欲しいんだけど。お金はもちろん出すから」
「はあ……? いいけど、え、わたしの服が欲しいってこと? え、変態?」
「違うそうじゃない。そうじゃなくて、……実は、そう、親戚の子を預かってて、その子の服がいるんだけど、良く分からないから」
「じゃあ店にその子連れてって買えばいいじゃない」
「外に出たがらないんだ」
いかにも怪しいという顔をされる。
「……なんかそれ、ヤバい話じゃないよね?」
「何がどうヤバいんだ」
「誘拐とか監禁とか」
「してねえよ。いいから黙って言うこと聞け。現金先払いで釣りは全部やるから」
「……はあ」
呆れた顔。
「まあ、お釣りくれるならいいよ。……っていうか、サイズいくつ?」
あらかじめ測っておいたイレットのサイズを言うと、さらに訝しげな顔をされる。が、現金を五万渡したら引き受けてくれた。金持ちで助かった。
『え、ロリコン?』みたいな目で見られたけど、仕事さえしてくれればなんでもいい。
飲み過ぎた。
身体に酔いが回って、少し頭痛がする。洗面台で顔を洗った。鏡に写ったぼくの顔が、赤らんでいる。
もう、深夜十二時だ。明日が土曜日で助かる。
「疲れた、寝よう……ああ、イレットは?」
リビングに、イレットを探しに行く。
リビングの扉を開くと、イレットがカーペットに寝そべって漫画を読んでいた。ちゃんと良い子にしていたようだ。食卓の方を見ると、用意しておいた昼食も残さず食べていた。言いつけどおり、食器もキッチンの水に漬けてある。
「お兄様、お酒くさいわ……」
「ごめんごめん。でも、半分はイレットの為だから」
「わたしの?」
カーペットに座り、服のことを説明する。
「――ってわけで、その友達にイレットの服を頼んだから」
「あーそれもういらない」
「は?」
「服ね、ちょうどいいのが家にあったのよ。きっとお兄様のお父様が、わたしのために用意しててくれたのね。洋館の洋服ダンスの中にあったわ」
いや先に言えよ父さん。もう五万渡しちゃったよ。
「どんな服?」
「派手じゃなくて、地味で、仕事にもつかえそうな服。外出にピッタリね。きっと気に入るわ」
「へえ。そりゃ楽しみだ」
地味なのは良い。いま着てるドレスみたいな人目を引く派手な服だと、職質されるかもしれないし。
「お披露目してあげよっか?」
「……いや、もう酔ってて眠いし、明日で良いよ」
「うん。じゃあここで待っててね。いま着て来るから」
何がじゃあ、なのか。相変わらずぼくの言うことを聞かない女だ。
イレットがリビングを出て、和室からふすま越しに衣擦れの音がする。着替えているんだろう。
携帯をポケットから取り出した。服をキャンセルするように言っておかないと。でももう寝てるかもしれないから、メッセージだけ送っておこう。『ごめんけど、さっき頼んだ服の話はなしに――
ガラガラ、ふすまが開いた。イレットが自信満々な顔でこっちを見ている。
ぼくは唖然とし、携帯を床に落とした。
「どう、似合う?」
「…………」
改めてイレットを見る。
胸元が開いた、水色の半そでシャツ。
めちゃめちゃ短い、黒のタイトスカート。
両足には、黒いストッキング。
頭にかぶっている、黒い帽子の真ん中には、金色の紋章。
右手には黒い拳銃。
左手には銀色の手錠。
一言にまとめるなら、婦警さんだった。
理解不能。
イレットは、右手の拳銃をぼくに向け、
「ばっきゅーん♥ 逮捕しちゃうゾ♥」
「アホか! そんな服着せて外だしたら、マジで逮捕されるわボケ!」
ぼくがね!
本物の警察が来て「ちょっと、署までご同行願います」からの実刑コースだよ! しかもやることやってるから言い訳できないのが尚のことたちが悪い。
イレットは、小首をかしげて可愛らしく、
「なんで? 派手じゃないよ? 仕事で着れるよ?」
「お前絶対わざとやってるだろ!」
「まあまあいいじゃん」
よくない。ぼくは床の携帯を拾い上げ、慌ててメッセージを消した。
イレットの言うことを真に受けたぼくが馬鹿だったのだ。
っつーか父さん、何コレクションしてんだよ。自分の父親にそんな特殊な趣味があるとか、知りたくなかった……。
「ねーえ、お兄様?」
いつの間にかイレットが目の前まできていた。
膝に手を置いて前かがみになり、あのよくグラビアアイドルなんかが胸を強調する時にとる、エロいポーズをとって、
「どう、エロい?」
「……」
水色のシャツは胸元が開き、そこには広大な平地が広がっていた。要するに貧乳だった。
ぼくは、片手で携帯を弄びながら、馬鹿にするようにふんと鼻で笑う。
「婦警さんって、確かにエロいってイメージあるけど……童顔のちんちくりんが着てたんじゃ、ぷぷっ、コスチュームの方が可哀相だな、あははっ」
改めて婦警さんコスのイレットをみると、なんだか間抜けで、笑えてくる。笑い過ぎてちょっとお腹が痛くなってくるほどだ。よくそんなちっさいサイズがあったな。
まあ、お遊戯会的な可愛さはあるけど、エロさは、ねえ……?
「あーもう、腹痛い。やめてよ今酔ってるのに、あー、笑い過ぎて頭も痛くなってきた、ひひっ、ふふっ、あははっ」
とにかく笑った。
笑い過ぎて、イレットが何をしているかが見えていなかった。
……身体が熱くなってくる。
最初は、笑い過ぎが原因だと思った。でも明らかに違う。身体が熱い。溶けそうだ。
イレットが魔法を使っていることに気付いた時、すでにぼくの意識はぼやけていた。
「……あ、あれ、イレット?」
「お兄様の馬鹿お兄様の馬鹿お兄様の馬鹿……」
念仏のようにぶつぶつと、怨みの言葉を吐くイレット。
ぼくの身体が熱くなってくる。
……魔法だ。前に、ぼくの射精が止まらなくなったときの、あの魔法。
ぼくはあの時、意識を失うまでイレットに絞られた。
……まさか。
背筋が冷える。ぼくは慌てた。
「ちょっと待てイレット! やめろ、おい!」
「馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿場……」
「なんで怒ってる? ぼく何か悪い事した?」
「……そんなことも分からないの?」
イレットは、それはもう髪が逆立つのではないかというほどのオーラを纏って、目を吊り上げている。
その目から、また魔力を注入されて、ぼくの身体が麻痺した。金縛りだ。床に足を延ばして座ったままの状態で、目と口以外が動かせなくなる。
「わたしが今日、どんな思いで家にいたか、お兄様に分かる? ひとりで、寂しくて……なのにお兄様は、酔っ払って帰ってきて……」
「わ、悪かったよ。でも学校だから、」
「それでもわたし、お兄様が喜ぶと思って、コスプレまでして……なのにお兄様は、お兄様は、お兄様は……」
「いや違うって。可愛いよ、可愛い。凄く似合ってるうん」
「そうね。もう、わたし以外誰も目に入らないように、今夜調教してあげる」
イレットは、座ったままのぼくに、軽くキスした。
ぼくは、魔法の所為で息が荒くなってくる。視界がぼやけ、身体の芯にマグマを通したように全身が熱い。
キスされただけなのに、ゾクゾクが止まらなくなって、身体が震える。
「あっ、はあっ、はあっ……」
「ねーえお兄様、どう、えっちな気分になってきたでしょ?」
えっちな気分になってきた、どころの騒ぎじゃない。もう、頭の中が性的な欲求だけで満たされて、破裂しそうだ。
さっき笑い飛ばしたイレットのコスチュームが、いまはとても魅力的に見える。貧乳のちんちりんのはずなのに、あの短いタイトスカートや、黒いタイツや、胸元が開いたシャツが、とても魅力的で……
犯したい。この手であの服を剥ぎ、その下の身体を性欲のままに貪りたい……。
ぼくの性器は膨らみ、ジーンズを押し上げていた。
イレットが、ニヤニヤ笑っている。
「お兄様、抜いて欲しい?」
「……ああ」生唾を飲んだ。
「どうしよっかなー」
イレットは足をあげ、
ぼくの性器を、踏んだ。
「めんどくさいし、足でやってあげる」
「お、おい……」
「ほーら、ぐりぐり。ぐりぐり」
黒いタイツに包まれた右足が、ジーンズ越しにぼくの性器を苛めている。足裏で、ぼくの性器を撫でるように踏んでいる。
足でされているのに……魔法の所為で性器がとても敏感になっていて、今にも射精してしまいそうだ。勃起していたぼくの性器が、もっともっと固くなっていく。
「お兄様、警官に足で踏まれておっきくして、悪いとは思わないの?」
「……っ……はあ、はあ……はあ」
気持ちいい。もっと強く踏んでほしい。
「言い訳もなし? あ、気持ち良すぎてそれどころじゃないか。ほらほら、もっと気持ち良くなってよ、ぐりぐり、ぐりぐりぐり、あははっ」
「っ!」
「せめてズボンくらいは脱がせてあげる」
イレットは一旦足をどけて、ジーンズを下ろした。トランクスがテントをはっている。
でもイレットは、トランクスは脱がさず、そのまま足で苛め始めた。
「そのままパンツの中にだせば?」
本気で怒ってるみたいだ。
「お兄様のパンツ、もう我慢汁で濡れ濡れね」
イレットの足が、トランクス越しにぼくの性器を踏んでいる。先走り汁がトランクスにシミをつくっている。
ジーンズ越しに踏まれるのと違って、イレットの足の感触が伝わってくる。
踏まれているのに、まったく痛くない。絶妙な力加減が、気持ちいい。
「ほら、こうやって、指で挟んで扱くの、気持ちいい?」
「あっ、ぐっ……はあ、はあ……」
親指と人差し指の間にぼくの性器を挟んで、上下に扱く。強めの刺激。
「ぐりぐりぐり」と掛け声を出しながら、足の指に力を入れて、イレットがぼくの性器を苛めている。馬鹿にされている。なのにぼくは、気持ち良くなっている。
屈辱だ。
イレットがぼくを見下げて、ニヤニヤ笑っている。
屈辱なのに、苛められて、嬉しいと思ってしまう。もっとその足で、気持ち良くして欲しい。頭がおかしくなるくらい、苛めて欲しい。
「どう、気持ちいいでしょ?」
「……五月蠅い」
「あっそ。じゃあやめた」
イレットは指でぼくの性器を挟んだまま、足の動きを止めた。
畜生。
またそれか。焦らすのか。
「あっはっ! なっさけない顔ね、お兄様。……ねえ、ホントはもっと、気持ち良くなりたいんでしょ?」
「……ああ」
「なら頼んで。婦警さん、足でぼくのおちんちんを踏んでくださいって、口に出して頼んで。そしたらまたやってあげる」
難易度が高すぎる。
「ほら、早く頼みなさいよ」
イレットは足の指に力をいれてぼくの性器をキリキリ締め付ける。
指で締め付けられ、射精できない刺激が、もどかしくて、気が狂いそうだ。
「言わないとこうやって、お兄様のおちんちん指で挟んで焦らしたままよ? 耐えられる?」
「……ふ、ふ……ふけ……婦警さん、ぼくの、ぼ、ぼくのおちん――って言えるか馬鹿!」
「じゃあわたしもう寝るから」
「待て待て! 言う! 言うよ!」
「じゃああと十秒。じゅーう、きゅーう、はーち」
このガキ……。
でも、言うしかない。こんな生殺しのままリビングに放置されたら、マジで発狂しかねない。
顔が熱い。赤面しているであろうぼくを、イレットがニヤニヤ笑って見ている。
でも早く気持ちよくなりたい。イレットの足の指に挟まれたままのぼくの性器が、もどかしさにビクビク震えている。
早く扱いて欲しい。
早く、早く、早く……
ぼくは、咳払いして、
「ふ、婦警さん、ぼくのおちんちんを、あ、あ、足で、踏んでください……」
「ん。よく言えました」
イレットは満面の笑みを湛えて、ぼくの頭を撫でている。
「恥ずかしがってるお兄様、とっても可愛いわ」
イレットは、ぼくの正面に座って、両足を伸ばし、
「ご褒美に、両足で挟んであげる」
イレットは両足でぼくの性器を挟んで扱き始める。
焦らされた上に、両足で揉みほぐすように全体を刺激されて、とても気持ちいい。ぼくの口からどうしようもなく、ああ、と恍惚の息がもれた。
「指も使って、ぐりぐりぐりぐり……」
両足の指を器用にうねらせ、性器を撫で、擦り、扱いている。屈辱的で背徳的で、期待が高まってくる。
「ねえ、ストッキングで直接やってあげよっか? パンツ越しより絶対気持ちいいわ。そうして欲しかったら、お願いして」
「……しろ」
「聞こえない」
「……頼む」
「敬語」
「……お、お願いします」
なんて情けない姿、切腹ものだ。でももう、気持ちいいことだけしか考えられない。魔法の所為だ。そうだぼくは悪くない。
「仕方ないわねえ、お兄様ったら」
イレットは妖艶に微笑み、トランクスの中に足を滑り込ませる。ぼくの性器に、ストッキングの独特の感触が伝わってくる。
なんだこれ……凄く気持ちいい。病み付きになりそうだ。
トランクスの中で、イレットの両足が蠢いている。
その両足の先に、タイトスカートが見える。イレットは座っているので、白いパンツが見えていて、視線が釘付けになってしまう。
「やだお兄様、どこ見てるの? えっち。……えっちなお兄様には、本官がお仕置きしてあげましょうね。ほら、カリを挟んで、ぐりぐりぐり……」
「んっ、あっ」
カリに足の指をひっかけられて、一気に性器が昇りつめた。
「出そう? いいわよ。パンツの中に出して。スカートの中を覗くわるーいお兄様の、えっちな毒を、本官が抜いてあげます、ふふっ」
イレットは不敵に笑い、足の動きを速くする。
馬鹿にするように、
「出るんでしょ? ばればれよ? ほら、出しなさい? えっちな精液、パンツの中にだしちゃいなさい?」
「はあ、はあ……」
「ぐりぐりぐり。はい出して出して。ぐりぐりぐりぐり」
「――ッ」
射精し、性器がどくどく脈打つ。
「……ふふっ、出てる出てる、びゅびゅって、パンツの中に出てるわよ、お兄様」
射精しているあいだも、イレットは足でぼくの性器をしごき続けた。どろどろの精液が、黒いストッキングを汚す。
イレットはトランクスを脱がし、
「どろどろで、ふふっ、おいしそう……あむ」
精液まみれの性器を、口に含んだ。足での強烈な刺激から一転、優しくて暖かい刺激。
柔らかい舌に、優しく性器を舐められて、頭がぼーっとしてくる。
ぼくは右手を額に当て、汗でへばりついた前髪を掻き揚げた。
「……あれ?」
動く。
右手が動く。
イレットにばれないように、左手にも力を入れてみると、動いた。足も、指先までちゃんと動く。
いつの間にか、金縛りの方の魔法は解けていたらしい。
視線を走らせると、イレットが用意していた手錠が、手の届くところに落ちている。
イレットは一心不乱にぼくの性器を舐めている。
チャンスだ。
フェラに夢中になっているイレットにばれないように、そっと手を伸ばして、手錠を手にした。そして、
イレットの両手を掴んで、後ろ手に手錠を嵌めた。
「……え?」
イレットが性器を吐きだし、唖然とする。ぼくはその隙に、イレットの目を見ないように注意して後ろに回り、逃がさないように背中から抱きしめた。
――勝った。
さっきの屈辱を、思う存分晴らさせてもらう。
この時のぼくは酔っていたので、なんだか少しノリノリだった。
14/10/28 19:11更新 / おじゃま姫
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