連載小説
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第一部:運び屋と荷の重い仕事2
所変わって魔王軍所属防衛部隊の前衛
ここには、魔王軍所属赤龍の騎士団団長シルヴィア・D・アージェンタイトと
同じく副団長レオナ・ハイセイコーが物見として立っていた、
前者はデュラハン、後者はケンタウロスである。
赤龍の騎士団が魔王軍所属というのは実のところ肩書きだけであり、
これは団長であるシルヴィアの掲げる騎士道に起因する。

『死なず、殺さず、殺されず、ただ民を守る。』
当然のごとく民には教団信者も含まれていて、結成の際に役場の担当とひどい口論になった。

彼女の掲げる騎士道に賛同した僅か7名からなる騎士団、
魔王軍に現存する中で最も隊員数の少ない騎士団である。

ちなみに結成当初は団長と副団長の2名だけだった事を付け加えておく。

「シルヴィア?」
彼女の異変に気づき、横にいるレオナが声を上げる。
結成当初からの付き合いということもあり、人前でもなければお互いのことを名前で呼び合う。
他のメンバーもそうだが少人数ゆえの横の繋がりがこの騎士団を屈強なものとしていた。

「静かに、強大な気を持ったものがそれを押し殺して、凄まじい速度でこちらに迫ってる。」
帰ってきた答えは敵襲を意味するものだった、とっさにレオナはあたりの草原を見回す。
レオナは弓の名手である、視野の広さ、認識率、射撃の精度に到るまでどれをとっても超一流と言える、
しかし、その彼女をしても何一つとして発見することができない。
「何も見当たらない、一体何?」
「分からない、指示をだすから射って」
レオナは即座に弓を構え、矢を引く。
「いつでもいける」
「12時、距離300、撃て!」
矢が走る、並の弓手では引くことの叶わぬ弓から打ち出されたそれは放物線を描かず、標的との間を直線で結ぶ。
手応えを感じないレオナは即座に次の矢を構える。
「12時、右に1、距離150、撃て!」

再び感じる空虚な手応え、

己のなせる最高の速度で5本の矢を一度に持ち何かがいるであろう地点に向けて放つ。

しかし、手応えを感じない。

その直後。
「そこだ!」
極限まで集中した上でおぼろげに感じる気配を頼りにシルヴィアが一切の手加減をせず剣を振り下ろす、彼女に彼女の掲げる騎士道を踏み越えた一撃を出させる敵とは一体何なのだろうか?

キンッ!

金属音が鳴り響く、

だがそこに在るのは二つに折れた彼女の剣と呆然と立ち尽くすその主だった。

瞬きをするほどの僅かな時間のあと、彼女は我に返る。
「敵襲!」
その一声に全部隊が活動を開始する。
自分の全力を込めた一撃を防ぐばかりか叩き潰したのだ、敵襲で無い筈など無い。

「レオナ!司令官のテントへ向かえ!不審者がいれば容赦せず討て!剣を用意し次第私も向かう!」

もし違ったら私の首を差し出そう、しまった、今の私には『首』がない。

レオナは踵を返し走りだす、
団長を除けば騎士団内では最速を誇るその足で伝令としての役目を果さんが為に。
11/05/22 03:24更新 / おいちゃん
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■作者メッセージ
初回は一挙2話更新!
こういう事をするなら一話にしたほうが良かったかもしれない。

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