鉱山都市ガネット。
フリントウッドの森を出て四日。
ついに俺達はサンバロ山の麓にある鉱山都市、ガネットに到着した。
町は活気に満ちていて、とても発展した様子である。
俺が驚いたのはそれだけじゃない。
魔物が普通に道を歩いてる。
オーク、ゴブリンにワーキャット、それにリザードマンなど様々な魔物が。
その様子を見て、誰一人怯えることもない。
これが彼等の常識なのだ。
「おや、兄ちゃん。旅人か?」
筋肉質の気の良さそうな男が話しかけてくる。
その人もエフィやテテスを見ても、何のリアクションもしない。
もはや驚くこともないのだろう。
「ああ、そうだよ。」
「魔物連れの旅人は珍しいな。これかい?」
そう言って小指をピンと立てる。
つまり恋人なのか、と聞きたい訳だ。
「いや、そういうわけじゃ・・・。」
「わっはっはっは、照れるなって。ウチのカカァも魔物なんだ。ワーウルフなんだがな。」
「へぇ、そうなんですか?」
「この町じゃ結構当たり前のことだぞ。で、兄さんがた。どっから来たんだ?」
「セイオス村からです。最初は一人だったけど、道中でどんどん仲間が増えて今じゃこの通り。」
「セイオス村・・・ってことは、途中ヴェルキスに寄ったのか?」
途端に男の顔が苦々しくなる。
何か嫌な思い出でもあるのだろうか?
「嬢ちゃん方、大変だっただろう?あそこの人間達を俺はどうも好きになれねぇ。人間ってだけでエリート、みたいな考え方。あんなのクソくらえだ。」
俺と同じ意見の人間がいた事に嬉しくなる。
こういう人と酒を飲めばきっと楽しいだろうな。
「でもこの町は安心さ。ウチの市長は教団のことを嫌っていてね。それでこの町では教団の布教を禁止している。この町に魔物と人間の違いなんてありゃしないんだ。お、ちょうどいい所に・・・。お〜い!!」
男は一人のワーウルフに大声で呼びかける。
彼女も男を見つけるとトコトコ近寄ってきた。
どうやら彼女がこの男の妻らしい。
「どうしたんだい、アンタ。ん、この人達は?」
「こいつ等は旅の一行さ。珍しいことに魔物と人間の、な。」
「あら本当だわ。しかもこんな可愛い子を二人も連れて・・・。」
そう言うと奥さんはエフィとテテスに話しかける。
「で、どっちが坊やの恋人なの?」
「こ、こいっ!!?」
「びとっ!?」
いきなり話を振られ、大慌てするエフィとテテス。
奥さんは更に楽しそうな笑みを浮かべた。
絶対に楽しんでいるな、これは。
「その反応・・・、もしかして両方違うの?」
「えと、ワタシは前にカイに結婚を申し込んだんだけど、キッパリ断られてしまって・・・。」
「アタイは助けてくれたカイさんに恩義を感じていて、その・・・。」
「という事は二人とも坊やに好意はあるのね。モテモテじゃない。」
「あは、あははは・・・。」
笑うしかなかった。
今の俺達では絶対にこの奥さんにはかなわない。
違う実戦経験は俺達の何十倍も上だ。
「うりうり、このへスティお姉さんに全部話しなさいよ。」
「お前はもうお姉さんって歳じゃないだろ。」
「あら、まだまだ若いつもりよ。なんなら試してみる?ベッドで。」
「望むところさ。」
そう言って俺達の前なのにも関わらずキスをする。
これが大人か。
俺達は赤面しながら、その光景を見ていた。
夫婦円満とはこの事を言うんだろうな。
「じゃ、私はまだ買い物があるからもう行くわよ。」
「おう、じゃあな。」
「なるべく早く帰ってね。」
「わぁってるよ。」
そう言ってサササッと別の場所へ向かう。
男は「やれやれ」言いながらも、顔はにやけていた。
なんだ、嫁自慢したかっただけか。
それで気分を良くしたのか、男は良いところに案内してやると俺達をどこかへ連れて行く。
そして一件の大きな建物に行き着いた。
中に入るとムワッとした熱気に包まれる。
どうやら鍛冶場のようだ。
カーンカーンと鉄を打つ音が響き渡っている。
「ここ、なんですか?」
「ここは俺の仕事場さ。職人ギルドって言うんだぜ。」
「ハインツ親方!!いつこちらへ!?」
「おお、ジーン。ちょうど今来たとこだ。」
一人の青年が男をハインツと呼ぶ。
この男の名前はハインツと言うのか。
ようやく名前を知った。
ん?ハインツ・・・?
ハインツってまさか・・・。
フィナもテテスもその名前を知っているようで、しきりにお互いの顔を見合わせていた。
予測が正しいかどうか、意を決して聞いてみる。
「あの、もしかしてハインツ・フローギルトさんですか?」
「ん?ああ、まだ名乗ってなかったか?そうだ俺が天下に名だたる名工、ハインツ・フローギルトだ。」
普通なら自分で言うなとつっこんでいるだろう。
しかし、この人は違う。
このハインツ・フローギルトという人物は世界的に実力を認められた証である『マスターピース』の称号を持ち、鍛治屋として手に入れられる名声を全て手に入れたと言われる名工だ。
あまりに予想外のことに俺達は口をパクパクさせる事しかできない。
「さあ、お前等の武器を貸してくれ。俺が打ち直してやる。」
「い、いいんですか!?」
「ああ。俺が見るところ、その石槌はもう限界が来ている。新しい鉄製の鎚も一本、打ってやるよ。」
「おお!!良かったな、テテス。」
「あ、ありがとうございますっ。」
テテスの石槌がもう限界を迎えている事は知っていた。
ところどころ欠けているし、振るだけでギシギシ音がなる。
これではいつ壊れてしまうかわからない。
この町でいい物があれば買おうと思っていたが、ハインツさんの武器なら期待通り、いや俺達の期待以上だ。
これは願ってもない大チャンス。
「では、お願いします!!お金は受け取るときに支払いましょうか?それとも今にしますか?」
「だっはっはっは、金なんかいらねえよ。」
「で、でも・・・。」
「打つ俺がいらねぇって言ってんだ。お前も男ならドンと受け取れ。」
「・・・わかりました。では、お言葉に甘えさせて頂きます。」
「よし、それでいい。明日の昼にはできているから、ここに取りに来いよ。」
「はい。」
俺達は自分の武器をハインツさんに渡す。
ハインツさんは俺達の武器を一本一本ていねいに見ていたが、何故か俺の剣を見た瞬間手を止めた。
「おい、兄ちゃん。この剣、どこで手に入れた?」
「それは俺の師匠から18の誕生日にもらったんです。」
「師匠?もしかしてそいつはクロッサとかいう男じゃないか?」
「・・・?そうですけど・・・。」
「あの野郎・・・っ、まだこの剣を持っていやがったか。」
途端にハインツさんの表情が厳しくなる。
いったいどうしたというのだろうか。
「この剣はな、恥ずかしながら俺がまだ未熟だった頃に、友であるクロッサへの餞別として渡したものだ。今思うと何でこんな中途半端なのを打ったのか、自分でもわからない。言うなれば、若気の至りというやつだ。」
「これはハインツさんの剣だったんですか。」
衝撃の事実が発覚。
どうやら今まで普通に使っていた剣は名工の手による物だったらしい。
まったく気付かなかった。
師匠もそうなら言ってくれればいいのに。
「でも、ようやくまた出会えた。もう一度この剣に出会えたら、今度こそ俺の持てる全力を尽くして打ち直そうと思っていた。感謝するぞ。」
彼の目が職人の目に変わる。
この人が本当にハインツ・フローギルトなんだなぁと実感した。
テーブルに置いてあった手ぬぐいを頭に巻き、燃え盛る鍛冶の台に近づく。
それから彼は剣を取り、打ち始めた。
「ジーン!!悪いがヘスティに今日は帰れないと伝えてくれ!!」
「了解っす!!」
それからカンカン熱い鉄を打つ音が響き渡る。
「親方があれほど集中して鍛冶をする姿は久しぶりっす。あの状態の時は誰とも話しませんので、出直してきたほうがいいっすよ。親方も明日の昼には完成するって言ってましたし。」
「そうみたいだな。ここに俺達がいてもきっと邪魔になるだけだ。」
俺達は素直に引き下がることにした。
翌日・・・。
昼になって俺は職人ギルドを訪ねてみる。
そこではハインツさんが苦い顔をしながら、俺の剣を見つめていた
「クソ・・・、弱ったな・・・。」
「どうかしたんですか?」
「おお、兄ちゃんか。いやな、剣を完成させるのに材料が足りないんだ。」
「材料?」
「ああ。帝鋼(みかどはがね)っつー特別な鋼が足りないんだ。弱ったな、これじゃ完成させられない。」
「その帝鋼というのは買えないんですか?良ければ俺が買ってきますよ。」
「残念だが帝鋼は市場にゃ滅多に出回らない。他にはそこの鉱山の最深部で採掘するしかないんだが・・・。また悪い時期とぶつかっちまったな。」
悪い時期とはなんだろうか?
一抹の不安を覚えながら聞いてみる。
「毎年、この時期になるとマグマが上がって来るんだ。他の階層は特に問題ないんだが最下層だけ、マグマの影響を受けちまう。もしかすると採掘している間にマグマが上がってきてそのまま・・・。何てこともあるかもしれない。」
「俺、行ってきます。」
「正気か?下手すると死んじまうんだぞ。」
「この危険は剣の代価だと思ってください。お金の代わりです。それでフィナとテテスはどうする?」
「どうするって、行くに決まってるじゃないか。」
「はい。お供しますよ、どこまでも。」
「ありがとう。二人とも。」
「兄ちゃん方・・・。よし、任せた。ただし、絶対に生きて帰って来い。」
「はい!!」
そうして俺達は支度をした後、鉱山へとやってきた。
テテスとフィナは早速、ハインツさんに強化してもらったものをつかうようである。
それらは明らかに前と輝きが変わっていた。
一方、俺はギルドから剣を一本借りてきている。
ダンジョンに入った俺達を待っていたのは、入り組んだ洞窟。
あらかじめ鉱山の地図をもらっていたのだが、見た感じちょっとしたダンジョンのようになっている。
それでも地図に従い、俺達は鉱山を歩く。
鉱山にはワーバットやレッドスライム、ゴブリンなどがいた。
ここに住む魔物達は人間と共生しているわけでなく、そこで自分達本来の生活を送っている。
男を襲って子を増やし種族を繁栄させる、魔物本来の姿だ。
「せいっ、やあ!!」
「はああああああっ!!」
「えいっ!!えいっ!!」
俺達はそんな魔物達をなぎ倒し、先へ進んでいく。
それにしても・・・、どんどん人を見なくなっているような気がする。
一階には鉱夫が多くいたのだが、二階からはぐんと少なくなり、三階では人に会うことはなくなっていた。
人の減りとは逆に魔物の数は多くなる。
気付けばワーバットの集団に囲まれていたこともあった。
その他にもゴブリンから清液をねだられたり、アントアラクネにさらわれそうになったりもした。
そんなこんなありながら、ようやく俺達は最下層に辿り着く。
が、例えるならそこは地獄。
溶岩が湧き上がり、皮膚を焼くような熱気がこもっていた。
見る限り地図にかかれている採掘場所はマグマの影響を受けていないので、採掘はできるようである。
帝鋼についての説明をよくよく読みながら、慎重に採掘していき・・・。
「あ、あった!!」
フィナが大きな塊を見つけ、大声でそう叫ぶ。
それが皮切りとなって次々掘り出していき、ついにはカゴいっぱいになった。
「よし、これで十分だな。帰るとするか。」
「ふふふ・・・、そうは行かないわよ。」
後ろを振り返ると上半身が人間、下半身が大蛇の魔物が立っていた。
それだけですぐにラミア類だということがわかる。
しかし、伝ってくる魔力は今までの魔物なんかとは比較にならないほど強大で恐ろしいものだった。
こいつ明らかに強い・・・。
「ハーイ。ワタクシはエキドナのティタン=ヨレイドルよ。よ・ろ・し・く・ね。」
ハートマークがつきそうな口調で俺に向けて投げキッスをする。
俺達はすぐに武器を構えて、彼女に立ち向かった。
それを見て金の髪どめをいじりながら不平を言うエキドナ。
「ちょっと〜、まさかこ〜んなか弱いワタクシに三人がかりで相手するの?そこの君と一対一で戦いたいな。」
そう言い、エキドナは俺を指差す。
妖艶に笑うその笑みには絶対的な自信と実力が感じられた。
おそらく三人のうち一人は確実に殺される。
俺だって人の心配をしているような状況ではない。
これはもう奥の手を出すしかないか。
「すまないフィナ、テテス。お前らはこのカゴをハインツさんのもとへ。」
「え?でも、カイさんは?」
「俺はコイツを倒す。」
「待って、カイ。ワタシ達がいれば勝率はもっと・・・。」
「いいから戻るんだ!!」
怒鳴る口調になってしまう。
それだけ切羽詰っている状況だ。
どうか許してほしい。
俺の気迫に負け、二人とも心配そうな顔をして去っていく。
「カイ・・・、絶対に帰ってきなさいよ。」
「カイさん・・・。」
「約束しよう。絶対に町に戻る。だから、さっさと行け。」
二人の姿が見えなくなった後、剣をエキドナに向けて構える。
エキドナは面白そうに笑っていた。
「あなた、頭いいわねえ。あのメンバーの中で唯一の男である自分が一番殺される可能性が低い事を知っている。だから自分だけ犠牲になろうと・・・。」
「何のことだ?さっきあいつらと約束しただろう、生きて町に戻ると。」
「私に勝てるとでも?」
「もちろんだ。」
俺はいつも以上に意識を刃先に集中させる。
おそらくこの剣じゃあの技は一回しか使えない。
なんとしても当てなければ。
「これでもくらいなさい!!!」
そう言ってエキドナが髪どめから手を離し、両手を上げると溶岩から無数の火球が振りそそぐ。
俺はそれをすべて弾き返し、また剣を構えた。
・・・ところが、すでに先程の場所にエキドナの姿はない。
「ここよ!!」
懐からニュッと顔が現れる。
速いっ!!!!!
そうして彼女は尻尾を器用に使い、俺の身体を吹き飛ばした。
壁に俺の身体が叩きつけられる。
「がはっ!?」
「あらら〜、もう終わりかしら?」
「何を馬鹿なっ、うぐっ!!」
長い尻尾で俺の身体を絞めつける。
そして嗜虐的な笑みを浮かべ、エキドナは俺の顔を見つめた。
同時に恐ろしいほど甘い声で俺の耳元でささやく。
「さあ、諦めなさい。貴方はよくやったわ。そのご褒美としてワタクシの夫にしてあげる。毎晩、毎晩可愛がってあげるわ。悪い話じゃないでしょ?」
「誰が・・・、諦めるものか・・・。」
「ふ〜ん、つまんない。じゃ、死んで。」
そのまま彼女は俺の首を締め上げる。
それで手が自由になった。
よし!!いまだ!!
俺は最後の力を振り絞る。
「秘剣壱式 鳴(なる)!!!!!」
そうして剣はエキドナの身体をかすり、砕け散った。
エキドナは大笑いしながら俺の顔を見た。
「フフフフフ、痛いわぁ・・・。ほら、見て。血が出てるわ、ちょびっとだけどね、フフフ。」
よし、俺の勝ちだ・・・。
安堵する俺の表情を見て、エキドナはあざ笑う。
「もう状況を理解する体力も残っていないようね。いいわ、今楽に・・・。」
そこで言葉がきれた。
どんどんエキドナの笑い顔が歪んでいく。
秘剣壱式 鳴は・・・、当たれば一撃必殺の技なのだ。
「うううううううああああああああ!!!」
エキドナの肉がところどころ裂け、血しぶきが飛び散る。
そして彼女はダメージに耐え切れなくなり、地に崩れ落ちた。
締め付ける力が弱くなり、俺はエキドナから解放される。
「うう・・・、どうして・・・?」
「この技は波を起こして相手の身体の内側から破壊していく技でね。クリーンヒットしなくても、かするだけで十分なんだ。」
「そうなの・・・、ワタクシの負けね・・・。」
エキドナはそう言うと、ガクッと意識を失う。
この勝負、俺の勝ちだ。
安心して砕けた剣の破片を見ていると。
ゴゴゴゴ・・・。
地鳴りが聞こえてくる。
同時にハインツさんの言葉が頭をよぎった。
『もしかすると採掘している間にマグマが上がってきてそのまま・・・。』
これはまずい。
一刻も早く逃げないと・・・。
そう思い、駆け出す俺。
ふとエキドナのほうを見てみる。
彼女は気を失ったままだ。
・・・くそっ、どうしようもない奴だな俺は!!
エキドナの所に行き、彼女を背負って出口目がけて走り出す。
後ろからは迫り来る溶岩。
それほど速くはないが、油断していると追いつかれてしまうだろう。
俺は無我夢中で駆け抜けた。
目が覚めたら、見知らぬ天井だった。
あれ、俺どうなったんだっけ?
エキドナを背負って走り出してからの記憶がない。
「おや、お目覚めかい坊や?」
そこにはハインツさんの奥さん、ワーウルフのヘスティさんがいた。
ということはここはハインツさんの家か。
「お〜い、みんな〜!!坊やが目覚めたよ!!」
ヘスティさんがそう呼びかけると、勢い良くエフィとテテスが飛び込んできた。
二人とも目が赤く腫れている。
よっぽど心配かけたらしい。
「兄ちゃん、すげぇな!!エキドナと戦ったんだろ!?で、どうだった!?」
「一応、勝ちました。」
「そうかいそうかい!!剣があんな風になっているんだ、かなりの激戦だったんだろうな。」
興奮気味に話すハインツさん。
そういえばエキドナは?
エキドナはどうなったんだろうか?
俺は気になり、聞いてみた。
「俺が倒れてた所にエキドナはいませんでしたか?」
「いんや、お前さん一人だったぞ。」
「そうですか・・・。」
助けられなかったのか・・・。
少し胸が痛くなる。
「あ、でもこんなのがあったぞ。」
ハインツさんはガサゴソと金の髪どめを取り出す。
それはそう、エキドナが身に着けていたものだった。
良かった・・・、生きてた・・・。
安心した途端、全身からフッと力が抜ける。
「ほら、兄ちゃん。頼まれてた剣、できたぞ。」
そう言って俺に剣を渡してくれた。
まるで鏡のように澄んだ美しい刀身が露になる。
これが俺の剣・・・。
俺の目は一瞬にして釘付けとなった。
「そいつぁ、兄ちゃんの期待に全てこたえてくれるぜ。遠慮しないでバンバン使ってくんな。」
「あ、ありがとうございます。」
「さて、これから宴だ。ほら、皆待ってるぞ。」
窓の外を見ると何十人もの人が外で料理の準備をしている。
どうやら今夜は長い夜になりそうだ。
ついに俺達はサンバロ山の麓にある鉱山都市、ガネットに到着した。
町は活気に満ちていて、とても発展した様子である。
俺が驚いたのはそれだけじゃない。
魔物が普通に道を歩いてる。
オーク、ゴブリンにワーキャット、それにリザードマンなど様々な魔物が。
その様子を見て、誰一人怯えることもない。
これが彼等の常識なのだ。
「おや、兄ちゃん。旅人か?」
筋肉質の気の良さそうな男が話しかけてくる。
その人もエフィやテテスを見ても、何のリアクションもしない。
もはや驚くこともないのだろう。
「ああ、そうだよ。」
「魔物連れの旅人は珍しいな。これかい?」
そう言って小指をピンと立てる。
つまり恋人なのか、と聞きたい訳だ。
「いや、そういうわけじゃ・・・。」
「わっはっはっは、照れるなって。ウチのカカァも魔物なんだ。ワーウルフなんだがな。」
「へぇ、そうなんですか?」
「この町じゃ結構当たり前のことだぞ。で、兄さんがた。どっから来たんだ?」
「セイオス村からです。最初は一人だったけど、道中でどんどん仲間が増えて今じゃこの通り。」
「セイオス村・・・ってことは、途中ヴェルキスに寄ったのか?」
途端に男の顔が苦々しくなる。
何か嫌な思い出でもあるのだろうか?
「嬢ちゃん方、大変だっただろう?あそこの人間達を俺はどうも好きになれねぇ。人間ってだけでエリート、みたいな考え方。あんなのクソくらえだ。」
俺と同じ意見の人間がいた事に嬉しくなる。
こういう人と酒を飲めばきっと楽しいだろうな。
「でもこの町は安心さ。ウチの市長は教団のことを嫌っていてね。それでこの町では教団の布教を禁止している。この町に魔物と人間の違いなんてありゃしないんだ。お、ちょうどいい所に・・・。お〜い!!」
男は一人のワーウルフに大声で呼びかける。
彼女も男を見つけるとトコトコ近寄ってきた。
どうやら彼女がこの男の妻らしい。
「どうしたんだい、アンタ。ん、この人達は?」
「こいつ等は旅の一行さ。珍しいことに魔物と人間の、な。」
「あら本当だわ。しかもこんな可愛い子を二人も連れて・・・。」
そう言うと奥さんはエフィとテテスに話しかける。
「で、どっちが坊やの恋人なの?」
「こ、こいっ!!?」
「びとっ!?」
いきなり話を振られ、大慌てするエフィとテテス。
奥さんは更に楽しそうな笑みを浮かべた。
絶対に楽しんでいるな、これは。
「その反応・・・、もしかして両方違うの?」
「えと、ワタシは前にカイに結婚を申し込んだんだけど、キッパリ断られてしまって・・・。」
「アタイは助けてくれたカイさんに恩義を感じていて、その・・・。」
「という事は二人とも坊やに好意はあるのね。モテモテじゃない。」
「あは、あははは・・・。」
笑うしかなかった。
今の俺達では絶対にこの奥さんにはかなわない。
違う実戦経験は俺達の何十倍も上だ。
「うりうり、このへスティお姉さんに全部話しなさいよ。」
「お前はもうお姉さんって歳じゃないだろ。」
「あら、まだまだ若いつもりよ。なんなら試してみる?ベッドで。」
「望むところさ。」
そう言って俺達の前なのにも関わらずキスをする。
これが大人か。
俺達は赤面しながら、その光景を見ていた。
夫婦円満とはこの事を言うんだろうな。
「じゃ、私はまだ買い物があるからもう行くわよ。」
「おう、じゃあな。」
「なるべく早く帰ってね。」
「わぁってるよ。」
そう言ってサササッと別の場所へ向かう。
男は「やれやれ」言いながらも、顔はにやけていた。
なんだ、嫁自慢したかっただけか。
それで気分を良くしたのか、男は良いところに案内してやると俺達をどこかへ連れて行く。
そして一件の大きな建物に行き着いた。
中に入るとムワッとした熱気に包まれる。
どうやら鍛冶場のようだ。
カーンカーンと鉄を打つ音が響き渡っている。
「ここ、なんですか?」
「ここは俺の仕事場さ。職人ギルドって言うんだぜ。」
「ハインツ親方!!いつこちらへ!?」
「おお、ジーン。ちょうど今来たとこだ。」
一人の青年が男をハインツと呼ぶ。
この男の名前はハインツと言うのか。
ようやく名前を知った。
ん?ハインツ・・・?
ハインツってまさか・・・。
フィナもテテスもその名前を知っているようで、しきりにお互いの顔を見合わせていた。
予測が正しいかどうか、意を決して聞いてみる。
「あの、もしかしてハインツ・フローギルトさんですか?」
「ん?ああ、まだ名乗ってなかったか?そうだ俺が天下に名だたる名工、ハインツ・フローギルトだ。」
普通なら自分で言うなとつっこんでいるだろう。
しかし、この人は違う。
このハインツ・フローギルトという人物は世界的に実力を認められた証である『マスターピース』の称号を持ち、鍛治屋として手に入れられる名声を全て手に入れたと言われる名工だ。
あまりに予想外のことに俺達は口をパクパクさせる事しかできない。
「さあ、お前等の武器を貸してくれ。俺が打ち直してやる。」
「い、いいんですか!?」
「ああ。俺が見るところ、その石槌はもう限界が来ている。新しい鉄製の鎚も一本、打ってやるよ。」
「おお!!良かったな、テテス。」
「あ、ありがとうございますっ。」
テテスの石槌がもう限界を迎えている事は知っていた。
ところどころ欠けているし、振るだけでギシギシ音がなる。
これではいつ壊れてしまうかわからない。
この町でいい物があれば買おうと思っていたが、ハインツさんの武器なら期待通り、いや俺達の期待以上だ。
これは願ってもない大チャンス。
「では、お願いします!!お金は受け取るときに支払いましょうか?それとも今にしますか?」
「だっはっはっは、金なんかいらねえよ。」
「で、でも・・・。」
「打つ俺がいらねぇって言ってんだ。お前も男ならドンと受け取れ。」
「・・・わかりました。では、お言葉に甘えさせて頂きます。」
「よし、それでいい。明日の昼にはできているから、ここに取りに来いよ。」
「はい。」
俺達は自分の武器をハインツさんに渡す。
ハインツさんは俺達の武器を一本一本ていねいに見ていたが、何故か俺の剣を見た瞬間手を止めた。
「おい、兄ちゃん。この剣、どこで手に入れた?」
「それは俺の師匠から18の誕生日にもらったんです。」
「師匠?もしかしてそいつはクロッサとかいう男じゃないか?」
「・・・?そうですけど・・・。」
「あの野郎・・・っ、まだこの剣を持っていやがったか。」
途端にハインツさんの表情が厳しくなる。
いったいどうしたというのだろうか。
「この剣はな、恥ずかしながら俺がまだ未熟だった頃に、友であるクロッサへの餞別として渡したものだ。今思うと何でこんな中途半端なのを打ったのか、自分でもわからない。言うなれば、若気の至りというやつだ。」
「これはハインツさんの剣だったんですか。」
衝撃の事実が発覚。
どうやら今まで普通に使っていた剣は名工の手による物だったらしい。
まったく気付かなかった。
師匠もそうなら言ってくれればいいのに。
「でも、ようやくまた出会えた。もう一度この剣に出会えたら、今度こそ俺の持てる全力を尽くして打ち直そうと思っていた。感謝するぞ。」
彼の目が職人の目に変わる。
この人が本当にハインツ・フローギルトなんだなぁと実感した。
テーブルに置いてあった手ぬぐいを頭に巻き、燃え盛る鍛冶の台に近づく。
それから彼は剣を取り、打ち始めた。
「ジーン!!悪いがヘスティに今日は帰れないと伝えてくれ!!」
「了解っす!!」
それからカンカン熱い鉄を打つ音が響き渡る。
「親方があれほど集中して鍛冶をする姿は久しぶりっす。あの状態の時は誰とも話しませんので、出直してきたほうがいいっすよ。親方も明日の昼には完成するって言ってましたし。」
「そうみたいだな。ここに俺達がいてもきっと邪魔になるだけだ。」
俺達は素直に引き下がることにした。
翌日・・・。
昼になって俺は職人ギルドを訪ねてみる。
そこではハインツさんが苦い顔をしながら、俺の剣を見つめていた
「クソ・・・、弱ったな・・・。」
「どうかしたんですか?」
「おお、兄ちゃんか。いやな、剣を完成させるのに材料が足りないんだ。」
「材料?」
「ああ。帝鋼(みかどはがね)っつー特別な鋼が足りないんだ。弱ったな、これじゃ完成させられない。」
「その帝鋼というのは買えないんですか?良ければ俺が買ってきますよ。」
「残念だが帝鋼は市場にゃ滅多に出回らない。他にはそこの鉱山の最深部で採掘するしかないんだが・・・。また悪い時期とぶつかっちまったな。」
悪い時期とはなんだろうか?
一抹の不安を覚えながら聞いてみる。
「毎年、この時期になるとマグマが上がって来るんだ。他の階層は特に問題ないんだが最下層だけ、マグマの影響を受けちまう。もしかすると採掘している間にマグマが上がってきてそのまま・・・。何てこともあるかもしれない。」
「俺、行ってきます。」
「正気か?下手すると死んじまうんだぞ。」
「この危険は剣の代価だと思ってください。お金の代わりです。それでフィナとテテスはどうする?」
「どうするって、行くに決まってるじゃないか。」
「はい。お供しますよ、どこまでも。」
「ありがとう。二人とも。」
「兄ちゃん方・・・。よし、任せた。ただし、絶対に生きて帰って来い。」
「はい!!」
そうして俺達は支度をした後、鉱山へとやってきた。
テテスとフィナは早速、ハインツさんに強化してもらったものをつかうようである。
それらは明らかに前と輝きが変わっていた。
一方、俺はギルドから剣を一本借りてきている。
ダンジョンに入った俺達を待っていたのは、入り組んだ洞窟。
あらかじめ鉱山の地図をもらっていたのだが、見た感じちょっとしたダンジョンのようになっている。
それでも地図に従い、俺達は鉱山を歩く。
鉱山にはワーバットやレッドスライム、ゴブリンなどがいた。
ここに住む魔物達は人間と共生しているわけでなく、そこで自分達本来の生活を送っている。
男を襲って子を増やし種族を繁栄させる、魔物本来の姿だ。
「せいっ、やあ!!」
「はああああああっ!!」
「えいっ!!えいっ!!」
俺達はそんな魔物達をなぎ倒し、先へ進んでいく。
それにしても・・・、どんどん人を見なくなっているような気がする。
一階には鉱夫が多くいたのだが、二階からはぐんと少なくなり、三階では人に会うことはなくなっていた。
人の減りとは逆に魔物の数は多くなる。
気付けばワーバットの集団に囲まれていたこともあった。
その他にもゴブリンから清液をねだられたり、アントアラクネにさらわれそうになったりもした。
そんなこんなありながら、ようやく俺達は最下層に辿り着く。
が、例えるならそこは地獄。
溶岩が湧き上がり、皮膚を焼くような熱気がこもっていた。
見る限り地図にかかれている採掘場所はマグマの影響を受けていないので、採掘はできるようである。
帝鋼についての説明をよくよく読みながら、慎重に採掘していき・・・。
「あ、あった!!」
フィナが大きな塊を見つけ、大声でそう叫ぶ。
それが皮切りとなって次々掘り出していき、ついにはカゴいっぱいになった。
「よし、これで十分だな。帰るとするか。」
「ふふふ・・・、そうは行かないわよ。」
後ろを振り返ると上半身が人間、下半身が大蛇の魔物が立っていた。
それだけですぐにラミア類だということがわかる。
しかし、伝ってくる魔力は今までの魔物なんかとは比較にならないほど強大で恐ろしいものだった。
こいつ明らかに強い・・・。
「ハーイ。ワタクシはエキドナのティタン=ヨレイドルよ。よ・ろ・し・く・ね。」
ハートマークがつきそうな口調で俺に向けて投げキッスをする。
俺達はすぐに武器を構えて、彼女に立ち向かった。
それを見て金の髪どめをいじりながら不平を言うエキドナ。
「ちょっと〜、まさかこ〜んなか弱いワタクシに三人がかりで相手するの?そこの君と一対一で戦いたいな。」
そう言い、エキドナは俺を指差す。
妖艶に笑うその笑みには絶対的な自信と実力が感じられた。
おそらく三人のうち一人は確実に殺される。
俺だって人の心配をしているような状況ではない。
これはもう奥の手を出すしかないか。
「すまないフィナ、テテス。お前らはこのカゴをハインツさんのもとへ。」
「え?でも、カイさんは?」
「俺はコイツを倒す。」
「待って、カイ。ワタシ達がいれば勝率はもっと・・・。」
「いいから戻るんだ!!」
怒鳴る口調になってしまう。
それだけ切羽詰っている状況だ。
どうか許してほしい。
俺の気迫に負け、二人とも心配そうな顔をして去っていく。
「カイ・・・、絶対に帰ってきなさいよ。」
「カイさん・・・。」
「約束しよう。絶対に町に戻る。だから、さっさと行け。」
二人の姿が見えなくなった後、剣をエキドナに向けて構える。
エキドナは面白そうに笑っていた。
「あなた、頭いいわねえ。あのメンバーの中で唯一の男である自分が一番殺される可能性が低い事を知っている。だから自分だけ犠牲になろうと・・・。」
「何のことだ?さっきあいつらと約束しただろう、生きて町に戻ると。」
「私に勝てるとでも?」
「もちろんだ。」
俺はいつも以上に意識を刃先に集中させる。
おそらくこの剣じゃあの技は一回しか使えない。
なんとしても当てなければ。
「これでもくらいなさい!!!」
そう言ってエキドナが髪どめから手を離し、両手を上げると溶岩から無数の火球が振りそそぐ。
俺はそれをすべて弾き返し、また剣を構えた。
・・・ところが、すでに先程の場所にエキドナの姿はない。
「ここよ!!」
懐からニュッと顔が現れる。
速いっ!!!!!
そうして彼女は尻尾を器用に使い、俺の身体を吹き飛ばした。
壁に俺の身体が叩きつけられる。
「がはっ!?」
「あらら〜、もう終わりかしら?」
「何を馬鹿なっ、うぐっ!!」
長い尻尾で俺の身体を絞めつける。
そして嗜虐的な笑みを浮かべ、エキドナは俺の顔を見つめた。
同時に恐ろしいほど甘い声で俺の耳元でささやく。
「さあ、諦めなさい。貴方はよくやったわ。そのご褒美としてワタクシの夫にしてあげる。毎晩、毎晩可愛がってあげるわ。悪い話じゃないでしょ?」
「誰が・・・、諦めるものか・・・。」
「ふ〜ん、つまんない。じゃ、死んで。」
そのまま彼女は俺の首を締め上げる。
それで手が自由になった。
よし!!いまだ!!
俺は最後の力を振り絞る。
「秘剣壱式 鳴(なる)!!!!!」
そうして剣はエキドナの身体をかすり、砕け散った。
エキドナは大笑いしながら俺の顔を見た。
「フフフフフ、痛いわぁ・・・。ほら、見て。血が出てるわ、ちょびっとだけどね、フフフ。」
よし、俺の勝ちだ・・・。
安堵する俺の表情を見て、エキドナはあざ笑う。
「もう状況を理解する体力も残っていないようね。いいわ、今楽に・・・。」
そこで言葉がきれた。
どんどんエキドナの笑い顔が歪んでいく。
秘剣壱式 鳴は・・・、当たれば一撃必殺の技なのだ。
「うううううううああああああああ!!!」
エキドナの肉がところどころ裂け、血しぶきが飛び散る。
そして彼女はダメージに耐え切れなくなり、地に崩れ落ちた。
締め付ける力が弱くなり、俺はエキドナから解放される。
「うう・・・、どうして・・・?」
「この技は波を起こして相手の身体の内側から破壊していく技でね。クリーンヒットしなくても、かするだけで十分なんだ。」
「そうなの・・・、ワタクシの負けね・・・。」
エキドナはそう言うと、ガクッと意識を失う。
この勝負、俺の勝ちだ。
安心して砕けた剣の破片を見ていると。
ゴゴゴゴ・・・。
地鳴りが聞こえてくる。
同時にハインツさんの言葉が頭をよぎった。
『もしかすると採掘している間にマグマが上がってきてそのまま・・・。』
これはまずい。
一刻も早く逃げないと・・・。
そう思い、駆け出す俺。
ふとエキドナのほうを見てみる。
彼女は気を失ったままだ。
・・・くそっ、どうしようもない奴だな俺は!!
エキドナの所に行き、彼女を背負って出口目がけて走り出す。
後ろからは迫り来る溶岩。
それほど速くはないが、油断していると追いつかれてしまうだろう。
俺は無我夢中で駆け抜けた。
目が覚めたら、見知らぬ天井だった。
あれ、俺どうなったんだっけ?
エキドナを背負って走り出してからの記憶がない。
「おや、お目覚めかい坊や?」
そこにはハインツさんの奥さん、ワーウルフのヘスティさんがいた。
ということはここはハインツさんの家か。
「お〜い、みんな〜!!坊やが目覚めたよ!!」
ヘスティさんがそう呼びかけると、勢い良くエフィとテテスが飛び込んできた。
二人とも目が赤く腫れている。
よっぽど心配かけたらしい。
「兄ちゃん、すげぇな!!エキドナと戦ったんだろ!?で、どうだった!?」
「一応、勝ちました。」
「そうかいそうかい!!剣があんな風になっているんだ、かなりの激戦だったんだろうな。」
興奮気味に話すハインツさん。
そういえばエキドナは?
エキドナはどうなったんだろうか?
俺は気になり、聞いてみた。
「俺が倒れてた所にエキドナはいませんでしたか?」
「いんや、お前さん一人だったぞ。」
「そうですか・・・。」
助けられなかったのか・・・。
少し胸が痛くなる。
「あ、でもこんなのがあったぞ。」
ハインツさんはガサゴソと金の髪どめを取り出す。
それはそう、エキドナが身に着けていたものだった。
良かった・・・、生きてた・・・。
安心した途端、全身からフッと力が抜ける。
「ほら、兄ちゃん。頼まれてた剣、できたぞ。」
そう言って俺に剣を渡してくれた。
まるで鏡のように澄んだ美しい刀身が露になる。
これが俺の剣・・・。
俺の目は一瞬にして釘付けとなった。
「そいつぁ、兄ちゃんの期待に全てこたえてくれるぜ。遠慮しないでバンバン使ってくんな。」
「あ、ありがとうございます。」
「さて、これから宴だ。ほら、皆待ってるぞ。」
窓の外を見ると何十人もの人が外で料理の準備をしている。
どうやら今夜は長い夜になりそうだ。
10/06/07 08:10更新 / アカフネ
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