海中生活は愛しい君と一緒に
「・・・う、うぅー・・・ん・・・。・・・ん?朝か?って、あれ?」
俺が目を覚ますと、目の前に平坦で無機質な石の壁が広がっていた。
まだ寝ぼけているのかそれともまだ夢の中なのか、目をこすってもう一度眼前の光景を見直す。
しかし、まったく変わりはない。
起きたばかりでまだ少しふわふわする脳みそを回転させて必死に考えてみた。
えっと・・・、これって・・・。
その質問を脳に問いかけると、コンマ3秒で返答が返ってくる。
あぁ、またか。またやってしまったのか。
脳と同じくふわふわする身体をひねって下を見下ろし、また深いため息をつく。
そう、俺の身体は真下のベッドから浮き上がり天井にぶつかっていたのだ。
え?重力法則を無視してるだろうって?そんな事はない。
いやいや、幽体離脱でもないぞ。
だって、ここ『海の中』だからな。
俺の名前はウォミー・フレッド。
5日前から海中生活を始めた人間(おそらく)だ。
何故海の中で生活してるのかというと・・・。
元々はとある商船で航海士見習いだった。
昔から船乗りに憧れてたこともあって、それなりに大きい帆船に乗せてもらえてたのだが・・・。
マストで帆の修繕作業中に足を滑らせて海へドボン。
我ながらなんともドンくさいものだ。
更に不運なことに海へ落ちた瞬間スキュラに捕獲されるというおまけつきである。
まさに泣きっ面に蜂。
俺はずぅっと昔に習った氷の初頭呪文でスキュラを撃退して、船に戻るつもりだったのだが悪いことというのは続くものだ。
撃退した後に海上へ上がってみると、船は俺が落ちた事に気付かずはるか彼方へ。
とても泳いで追いつける距離ではなくなっていた。
スキュラに連れて行かれれば命はあったのに、と考えても全てが後の祭り。
ああ・・・、これで俺の人生終了か・・・。
信じられないほどあっさりと生への執着を取り払う俺。
自分のことながら、ここまで来ると解脱の域だ。
さも当然であるかのように俺は意識を手放す。
「ん・・・、んぅ・・・?」
「んやぁっ・・・んっ・・・。ひゃ・・・んっ・・・。」
どれくらいの時間が経ったのだろう・・・。
再び目を覚ましてみると、俺の顔はとても柔らかいサムシングに包まれていた。
そして、頭上からは艶っぽい嬌声。
慌てて飛び起きた俺はそのもちっとしたものを持ち上げて、何が起こったか確認する。
目の前には頬を赤くした優しそうな顔の・・・、魔物がいた。
彼女の下半身は人間のような脚部ではなく魚のヒレ。
おそらくマーメイド種であろう。
まあ船に乗っているときに何度となく遭遇しているので、そこにはそれほど驚きもしなかったが・・・。
俺が一番驚いたのは自分とその魔物の格好だった。
全裸・・・、まさにすっぽんぽん。一糸もまとわぬ生まれたままの姿。
彼女の白く張りのある肌が惜しげもなく、俺の前であらわになっている。
更に俺の下半身の一部はしっかりと彼女の身体とつながっていた。
どうやら俺は気を失っている間に童貞を卒業したらしい。
・・・何かとてももったいない事をしたような気がする。
「目が覚めたんですね!」
「ぐ、ぐむっ!!??」
「良かったです!!失敗しちゃったのかなって思ったよぉ!!」
「むむぅ、むぐっ!!むぐぐ・・・、むぅうっ!!」
溺死をまぬがれた次は、彼女の乳で窒息死の危機の陥る。
・・・なるほど、さっき顔に当たっていた柔らかいサムシングはこれだったのか。
この弾力のある感触はとても魅力的だったが、さすがにこの状態で死ぬのはなんとも情けない。
俺は彼女の身体を引き剥がし、彼女にお礼を言った。
「えっと・・・、君が助けてくれたんだね。ありがとう、君は俺の命の恩人だ。」
「はわわわわっ、そ、そんなっ!!頭を上げてください!!」
「そうはいかないよ、君がいなければ今頃俺は海の藻屑だ。本当にありがとう。」
「い、いえっそんなぁっ!!と、ととと当然の事をしただけです!!」
彼女は顔を真っ赤にしてうつむく。
その仕草でさえなんとも可愛らしいものだ。
「で・・・、だ。」
「・・・?はい?」
「なんで俺と君がしちゃってるのかな?」
「?何をですか?」
俺は黙って彼女とつながっている部分を指さす。
その意味に気づいた途端、彼女の顔は再びゆでダコのように赤くなった。
「え、えと!!これは、その・・・えぇと!!儀式の最中だったので!!」
「儀式?」
「は、はいっ!!貴方を助けるためのッ!!私、こう見えてもシー・ビショップなんですッ!!」
そう言ってベッドの横にキレイにたたんであった白い帽子をかぶる。
彼女の帽子には十字架をかたどった様な装飾がついていた。
・・・上下逆だけど。
完全に帽子のかぶる部分が上を向いてる。
それに気付いていない彼女は帽子をかぶって(正確には頭に乗せて)誇らしげにしていた。
「・・・コホン。申し遅れました・・・。私はマリナ・ユーリスです。」
「俺はウォミー・フレッドだ、よろしくな。それとありがとう!」
「は、はい・・・。こちらこそよろしくお願いします!」
「それとね・・・。」
「はい?」
「帽子逆だよ。」
「え?・・・あ、あぁっ!?はわわわっ、そのっ!?」
「あはははははははは」
「わ、笑わないでくださいぃっ!!うぅ・・・、恥ずかしいよぉ・・・。」
これが俺と彼女の出会いだった。
それに今彼女は俺が寝ていたベッドでスヤスヤ寝息を立てている。
なんとも幸せそうな寝顔だ。
さて・・・、用事もあることだしそろそろ起こしてやるか。
「おーい、マリナ。起きろ、朝だぞ。」
「うぅ・・・んぅ・・・、むにゃむにゃ・・・。」
「マリナ、今日は友達とお茶会を開くんだろ?準備しなきゃ。」
「むにゅ・・・、そんなに食べられないよぉ・・・。」
そう言って俺の首に腕を回し、引き寄せるマリナ。
なんとまぁベタな寝言だ・・・、どうやらまだ夢の中だな。
しかし、こんな風に甘えられると男として悪い気はしない。
むしろこのまま寝かせといてあげたくなってしまう。
「いただきまーす・・・。」
「へ?」
ガブッ。
「うギャあああああああああああああああああっ!!お、起きろぉっ!!」
「ひゃうっ!!??」
頬を思いっきり噛まれた俺は、反射的に彼女の頭に手刀を打ち込む。
驚いたマリナはベッドの上で跳ねるように飛び起きた。
あまりの痛さに涙を流す俺。
「な、ななな何をするんですかっ!?人がせっかく気持ちよく寝ていたのに!!」
「何をするんですかじゃねぇ!!おもいっきり頬に噛み付き・・・痛ッ!?」
「あ・・・、血・・・。」
頬を撫でるとうっすら血が指先についた。
血の量からして、おそらく少し皮が向けた程度だろう。
しかし常時海水に浸かっているため、傷口にとても染みる。
海中生活の弊害みたいなものだ。
「ご、ごめんなさい・・・。」
「マリナ、ちょっと絆創膏、いや何かガーゼみたいなものでいいや。とにかく止血だけしないと染みる・・・。」
「あ、それならちょっと待ってください。今治しますよ。」
「治す?」
マリナは俺の頬にそっと手を当て、とても優しい声で呪文を唱え始める。
すると、彼女の手が淡い緑光に包まれた。
彼女が得意とする治癒魔法の一種だろう、じんわりと暖かくなったのと同時に痛みがスゥッと引いていく。
「よし、これで大丈夫です!」
「ありがとう、マリナ。」
「これぐらいの事なら、私にお任せあれです!」
自信満々に胸を張るマリナ。
その瞬間、たゆんと彼女の胸が揺れた。
いやはや・・・、自然と目が行ってしまうのは男の悲しい所だな・・・。
「まあ、原因はお前だけどな。」
「うぅ・・・、ウォミーはまたそうやっていじめるんです・・・。」
「さてと、起きたなら着替えたほうがいいぞ。今日はお茶会を開くんだろ。」
「っとと・・・、そうでした。大変、急いで用意しないと!!」
慌ててベッドから立ち上がり、彼女はパジャマを脱ぎ始める。
・・・が、彼女はパジャマの上を脱ごうとする体勢のままピタッと動きを止めて、頬を赤くしながらこちらを見た。
「どうしたんだマリナ?」
「あの・・・、私これから着替えますので・・・。ちょっと出て行ってくださいね。」
「・・・バレたか。」
流れにまぎれればバレないと思っていたのだが・・・、ダメだったか。
マリナに言われて、しぶしぶと俺は寝室から出る。
次こそは絶対、と更に一層決意を硬くする俺であった。
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午後・・・、水温が大分暖かくなり海面からうららかな陽光が差し込む。
その光景は地上では見れない、美しい海の青と色とりどりのサンゴに彩られた美しい景色だった。
海中生活を始めていなければ、巡り会えなかったはずの絶景。
これを見れば、今の生活もそれほど悪くないものだと思う。
そしてこの雄大の景色の中、マリナは友達3人と一緒にお茶会を開いていた。
主催者はマリナ、給仕は俺。
まぁ、お茶会という名ではあるけれどもお茶は出ない。(海の中だから当然か)
海中でも形が崩れない『ヤルマ』というクッキー状の菓子とゼリー状の『メソベル』をつまみながらガールズトークに花を咲かせる女子会のようなものだ。
今日のお客様は3人。
メロウのルビィさんとマーメイドのシャノちゃん、そしてネレイスのネイラちゃんだ。
「でね、でね。とってもいい岩場を見つけてね。あそこで歌えば絶対運命の人に出会えるはずよ!もしも、出会えたらあたしがリードして上げるんだ!」
「シャノ、そういうのは処女を捨ててから言うものよ。何なら、お姉さんが手ほどきしてあげてもいいのよ。」
「あ、あたしの初めては運命の旦那様って決めてるの!ルビィのように色んな人とするなんて不潔だわっ!!」
「あらあら、セックスの相性も重要よ。ネイラもそう思うわよね?」
「ボク・・・、運命の人見つけたら・・・ふふふ。二度と離さないもん・・・ふふふ。」
「怖いよ、ネイラ・・・。あ、ウォミーくーん!!メソベルもう無くなっちゃったー!!」
そう言って空になった皿を高く上げるシャノちゃん。
俺は彼女から皿をもらって、台所へ新しいメソベルを取りに行く。
やれやれ・・・、本当に女の子は甘いものが好きだな・・・。
「こら、シャノ。あんまりウォミーくんを使っちゃダメよ。昨夜も遅くまで頑張ってたんだから・・・、ねぇそうなんでしょ?マリナ?」
「へっ!!??え、え・・・、いや、その・・・。」
「なになにウォミーくんってそんなに激しいの!?」
「・・・ボクも知りたい。・・・教えてマリナ。」
「いや・・・、えぇと、その・・・。」
ああ・・・、すっかりマリナは食い物にされているな・・・。
手に新しいメソベルを持った俺は、シャノさんの前に皿を置くと足早にテーブルから離れる。
巻き添えは食らいたくないからな・・・。
「どうなのマリナぁ?答えなさいよぉ。」
「ひゃっ!!ちょ、ちょっとルビィ!!そんなとこ揉まないでやぁっ!!」
「ゴクッ・・・、本当に柔らかいわねぇ・・・。また大きくなったんじゃない?」
「・・・シャノとは大違い。」
「ちょっと!!そう言うネイラだってあたしとそんなに変わらないでしょ!?」
「・・・ボクはC。Bのシャノとは違う・・・。」
「むっきぃぃぃいいぃぃぃいっ!!なにその勝ち誇ったような顔!?」
「・・・大丈夫、需要はある。」
「何で上から目線なのよ!?あったま来た!!ウォミーくん、ちょっと手伝ってよ!!」
「・・・?何を?」
「決まってるじゃない!あたしの胸を揉んで大きくするのよ!!」
「アホか!?」
「え?なになに?ウォミーくんがお姉さん達の胸を揉んで大きくしてくれるの!?」
「ルビィはもう必要ないでしょ!?」
「あら、『一人はみんなのために、みんなは一人のために』って言うじゃない。お姉さん、もっと大きくなりたいわぁ。」
「・・・ルビィ、それちょっと違う。」
「ダ、ダメですよ!!ウォミーは私のす・・・。」
「「す?」」
「へ、あの、その、ええと・・・。」
何故か途中で言葉を詰まらせるマリナ。
それを見たシャノちゃんとルビィさんは更に顔をニヤニヤさせてマリナをいじめる。
どうやらマリナはあの4人の中でのいじられキャラに位置しているようだ。
ところで『す』って何だろう?
「す?すってなーに?マリナ?」
「えぇと、それはす・・・、す、す、す、す・・・。」
「ほらぁ、はっきりお姉さんに言ってみなさい。す?」
「す、す、・・・あ。ス、スケベなんです!!」
グサッ。
俺の心に2465のダメージ。
「ウォミーってばスケベでちょっと抜けててだらしなくて、それに変なところだけ好奇心が強くて・・・。」
グサグサッ。
俺の心に6728のダメージ。
おいおい・・・、俺が何をしたって言うんだよ・・・。
「でもでもっ、そういう所が可愛いというか、放っておけないというか、それに面倒見もいいし・・・。」
「「へ、へぇ・・・。」」
いつの間にか、マリナの話は俺に対する惚気に変わってしまっている。
さっきまで楽しそうにいじっていたシャナちゃんとルビィさんは若干引き気味だ。
言葉責めの次は羞恥プレイ・・・、やめてー、俺の心のライフは0よー。
穴があったら入りたい・・・、むしろ埋まりたい。
あまりのノロケっぷりに耐え切れなくなった俺はマリナの話を止めさせる。
何も知らないマリナはキョトンとした表情で辺りを見回していた。
さすが天然恐るべし・・・。
「な、なんか・・・、あたし達のほうが惨めじゃない・・・?」
「そうね、シャノ・・・。マリナが遠い存在に見えたわ・・・。」
「へ?へ?何故ですか?」
「うぃなー、マリナ。」
そう言って、マリナの右腕を高く持ち上げるネイラちゃん。
現在の状況をまるで把握していないのはマリナ本人だけである。
「でもね、マリナ。」
「はい?」
「お姉さんからのアドバイス♪女の子は素直になったほうが可愛いわよ!」
「う・・・、うぅ・・・、・・・うん。」
ルビィさんにそういわれ、マリナは恥ずかしそうに頷く。
その表情の彼女はとても美しくて・・・、とても可愛かった。
ドキン・・・。
俺の心臓が一度大きく脈打つ。
「そうしないと、ウォミーくん故郷に帰っちゃうよー。」
「え・・・?」
シャノちゃんのその一言で、表情を曇らせるマリナ。
しかし、彼女の表情は再び笑顔に戻る。
俺の見間違いだったのだろうか・・・。
すごく寂しい表情に見えたのだが・・・、気のせいか?
そんな俺の不安とは正反対で、とても和やかなお茶会の雰囲気。
マリナの顔からさっきのような悲しい表情は出てこない。
それどころか、彼女の笑顔と談笑が耐えない。
こうしてこの和気藹々とした楽しいお茶会は水温が下がる夕方まで続けられたのであった。
俺の胸にひっかかる『何か』を残しながら。
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水温が下がり、海中も暗くなってきた。
夕暮れのある西方向の海はオレンジ色に染まっている。
これもこれで美しいもので、とても幻想的な光景だ。
海面近くはオレンジ、海底はネイビー。
それに先ほどまでは主役のような彩りを持っていたサンゴも、今はひっそりと息を潜めている。
魚の銀色の鱗が夕暮れを反射して、星のように瞬いていた。
その薄暗い中でお茶会の片付けをする俺とマリナ。
「・・・。」
「・・・。」
何分も続く沈黙・・・。
お互い何かを探ってるような、無関心を装ってるようなそんな雰囲気。
理由はわからない。
だけど何かが俺達の口をふさぎ、お互いの顔を見ることを妨げた。
「・・・。」
「・・・。」
「・・・あの。」
「・・・ん?」
「あの・・・、ウォミー・・・。」
「・・・なに?」
「あのね、前から言おうと思ってたんだけど・・・。」
「うん。」
「・・・やっぱりいいです。あははは・・・。」
「お茶会が終わってから、様子が変だよ?どうかしたのか?」
「な、なんでもないです・・・。」
「マリナ。」
「・・・ん、・・・うん。」
「話してくれ、な?」
「うん・・・、わかった・・・。あのね・・・、ウォミー。」
「ん?」
「さっきね・・・、ちょっと思ったんですけど・・・。」
「うん・・・。」
妙に歯切れの悪いマリナ。
気のせいか彼女の声が震えているような気がする。
声だけじゃない・・・、皿を持っている手もだ。
一体、何があったんだろうか・・・。
不意にさっきのお茶会の時のマリナの表情がフラッシュバックする。
「もしかして私・・・、ウォミーを縛り付けてるんじゃないだろうかかって・・・。」
「は・・・?」
「だって、そうよね・・・。私、ウォミーを助けた恩人って顔をして、今日も給仕みたいなことさせて・・・。本当嫌な女だよね・・・。」
「おい・・・。」
「もしもウォミーが望むのなら・・・、地上に戻っても良いんだよ?ウォミーにも親とか友達とかいるし・・・、私のことは」」
「おい!!!」
俺が大声を上げると、マリナの身体がビクッと震えた。
勇気を振り絞り、彼女の身体を引き寄せ顔を見る。
彼女は泣いていた・・・。
お茶会の時の表情より深く悲痛な・・・。
俺は衝動的に彼女を抱きしめていた。
その瞬間、彼女の涙が止まった気がした。
「え・・・?」
「馬鹿野郎!!俺がいたい所は俺が決める!!」
「・・・う、うん。だ、だから・・・。」
「俺がいたいのはお前の隣だ!!」
「へ・・・?」
「ちゃんと言葉にしようか!?俺は・・・、ウォミー・フレッドはお前、マリナ・ユーリスが好きだ!!」
再び涙をポロポロと落として泣き出すマリナ。
彼女の脚の力が抜けて俺に身体を預けるようによしかかる。
「私・・・、結構ドジですよ・・・?」
「大丈夫だ、俺も抜けているからな。」
「寝ぼけてほっぺに噛み付いたりしますよ・・・?」
「お前が治してくれるんだろ?」
「・・・。」
「・・・。」
「・・・ずるいです。本当にずるいです。」
「ああ、そんな俺は嫌いか?」
「やっぱりウォミーはずるい・・・。」
そう言ってマリナは俺を押し倒すようにキスしてくる。
俺は彼女の身体を受け止めながら、彼女の口の中へ舌を滑り込ませた。
まるで唾液を交換するかのようにお互いの舌と舌が絡み合う。
水の中じゃなかったら、おそらくお互いの唾液で口の周りがぐしゃぐしゃになっているな。
彼女の鼓動が俺の胸を通して伝わってくる。
ただ目の前にいる彼女を見てるだけで愛しい。
そうして彼女はキスをやめて、俺の顔をじっと見つめてこう言った。
「・・・好きです。」
「・・・ん?」
「好きです!大好きです!!もう離れたくなんかない!!」
「俺もだ、マリナ!!」
「もう我慢できない・・・、抑えきれない・・・。」
我慢できなくなったのか俺の手を引いてベッドへ向かい、服を脱ぐマリナ。
いつもはキチンと服をたたむ彼女も今日は、まるで子供のように脱ぎ散らす。
暗い海の中で彼女の白い肌はまるで太陽のようにまぶしかった。
俺も服を脱いで、彼女をぎゅっと抱きしめる。
「やぁんっ・・・、はぁあっ・・・う・・・ウォミー・・・。」
「ん・・・?」
「だ、・・・だいしゅきぃ・・・。」
「俺もだよ、マリナ。お前が好きだ・・・。」
俺はベッドで仰向けになる彼女の身体に襲い掛かる獣のように覆いかぶさった。
マリナはそんな俺を受け入れるかのように首に手を回す。
そして、小さく『いいよ』と微笑んだ。
先程と同じように甘くて長いキスをする。
さらに左腕で身体を支え、右腕で彼女の乳房を揉みしだいた。
彼女の唇の端から荒くなった吐息が漏れ出す。
それでも彼女は俺の首に回した手を離そうとはしない、逆に催促するかのように自分の身体へと引き寄せていた。
「ウォミー・・・。」
「うん・・・。」
「挿入れて・・・、もう我慢できないの・・・。いっぱい・・・、いっぱいウォミーを感じさせて・・・。」
彼女は俺のモノを優しく掴んで、自分の膣口へと導く。
それでもお互いにキスをやめようとしない。
ゆっくりと俺の息子はマリナの肉壁を押し広げて、奥へ奥へ侵入していった。
充分濡れた彼女の秘部は絡みつくように俺のモノを取り込む。
「ひゃ・・・んっ・・・、ふぅっ・・・れろ・・・。んふぅ・・・、う、ウォミー・・・。うごいてぇ・・・っ。」
「・・・うん。いくぞ、マリナ。」
「うん、きてぇ・・・。」
一度根元まで入ったモノを亀頭のギリギリまで抜き出して、再び奥へと突き入れる。
その瞬間、彼女は唇を離して大きく喘いだ。
「ひゃっ・・・ああんっ・・・、やっ、あっんっ・・・。はぁ・・・んっ・・・。」
「マリナ・・・、マリナっ・・・!!」
「ウォミー・・・んあやぁっ・・・、ウォミー、しゅ・・・きぃ・・・、だいすきぃ・・・っんやあっ。」
「俺もだ・・・、マリナっ・・・。」
いやらしく響き渡る水音。
だけど、それにすら俺もマリナも気にしていない。
それどころか俺と彼女交わりはヒートアップしていった。
他の人から見れば正常位だけの単調なセックスなのかもしれない。
だけど、この時の俺達はお互いの想いが通じて酔っていたのだ。
それだけで充分、それだけで満たされた。
「マリナ・・・!!中に出すよっ・・・!!」
「うんっ・・・!!だ、ひゃぁんっ、出してぇぇっ・・・!!いっぱい、いっぱいぃ・・・、赤ちゃんできるようにぃ・・・!!」
「俺とマリナの子供だっ・・・、大好きなマリナとのっ・・・。」
「うんっ・・・!!ウォミーと、んあっ、私のっ、あかちゃん・・・作るのぉっ・・・・、やぁあぁんっ!!」
「出すぞっ・・・。んっ!!」
「ひゃぁああぁあぁんっ、出てるぅっ!!ビクビクってぇ・・・、ビュクビュクってぇ・・・。」
激しく動いていたお互いの腰がピタッと止まる。
俺の腰はまるで彼女子宮口に注ぎ込もうとするように奥で精液を吐き出す。
マリナもそれに応えるように腕で俺の腰をがっちりとホールドしていた。
彼女の中にすべて吐き出し、俺は彼女の膣内から引き抜こうとする・・・が、マリナは腕のホールドを解いてくれない。
「マリナ・・・?」
「もっと・・・、もっと欲しいぃ・・・。」
「・・・わかった。今日は力尽きるまでしよう。」
「ウォミー・・・。」
「ん?」
「大好き。」
「ああ。」
そして、夜が明けるまで二人は交わり続けた。
何度イッたのか、数えるのも嫌になるぐらいにお互いがお互いを貪った。
想いが通じ合えたことがこれほど嬉しいものだとは思わなかったのだ。
今考えてみればおそらく俺はマリナに一目ぼれしていたのだろう、おそらく向こうも。
海中生活も悪くはない・・・、いや最高だ。
願わくばこれからもずっとこんなに幸せな毎日を・・・。
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「おぎゃーおぎゃー!!!!」
「おお、よしよし。泣くな、泣くな。ママはもう少しで帰ってくるからな。」
「ただいまです!!」
「ほらほら、ママ帰ってきた。ただいまーって!!」
「ねぇねぇ、パパちょっと聞いてください!!」
「ん?」
「私・・・、二人目できちゃいました!!」
「本当か!?・・・ってあぁ、いきなり大きな声出してごめんな。ほら、べろべろばー!!」
「クスクス・・・、パパもすっかり親バカですねぇ・・・。いざとなったら子離れできないんじゃないですか?」
「俺の娘は渡さないぞ、俺が認めた男じゃなきゃ。」
「あらら・・・、ホントに困ったパパだこと・・・。ねぇ、ウォミー。」
「ん?」
「愛してる。」
「俺もだ、マリナ。愛しているよ。」
「これから先もこんなに幸せだといいね。」
「幸せさ、絶対。」
「ふふふ・・・。そうね、貴方と一緒だもの・・・。」
11/08/14 09:47更新 / アカフネ