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怨敵に連なる少女(4) 真実と芽生え(後)
「おねがい、します」

凱がうなずくのを見て、麻理依は尻を突き出した。
触りやすいようにとの気遣いだろうが、場違いなくらい愛らしい仕草であり、同時に、異常にそそられる光景だった。

(やばい……)

奇妙かつ背徳的な優越感が湧き上がってくる。
痴漢に尻を触れられて、麻理依は嫌がるばかりだっただろうが、自分に対しては、こうして自らお尻を差し出してくれるのだから。

「触るよ」

一言そう断るも、返事は無い。
だが、凱の言葉に応えるように身じろぎしたのを見て、OKと判断し、彼はいよいよ、掌で麻理依の尻に触れた。
それなりに身長差がある二人だが、凱の方が少し身を屈むようにすれば、手が届く位置に来た。お互い妙な体勢になったせいで、絵面としてはやや滑稽な状態だが、けれどもそのお陰で、凱は何の不自由もなく、麻理依の尻を味わえていた。

「ん、う、んん……っ」

いざ改めて触ってみて再認識したが、豊かな膨らみを持つ胸に比例するかのように、尻も触りごたえのある形をしていた。
流石に成人女性のそれに比べれば、ボリューム自体は慎ましいが、手を当ててみれば、丸みと尻の谷間の形をハッキリと堪能出来た。

何より違うのは、その「硬さ」である。脂肪の塊である胸と違い、筋肉の割合の大きなその場所は、柔らかさよりもつるりとした張りのある弾力は癖になる感触だ。
思わずその場所を撫で擦り、あるいは指に力を入れて、揉みごたえを堪能する。

「う、う……っ、さわりかた、やらしぃ……」
「あ、ご、ごめんっ」
「だ、だめ、やめないで……イヤじゃない、からぁ、はう、んんんっ」

無意識に麻理依の尻に夢中になってしまっていた。
思わず謝るが、しかし麻理依が口にしたのは、あくまで続行の願い。
だが、やはり恥ずかしいらしく、口元に右の拳を添え、声が出るのを我慢するその仕草が、凱の中に燻ぶる後ろ暗い情動に火をつける。

少女の願望に応えるように、一心不乱に彼女の尻を撫で、いじくり回し、その感触を味わって……ふと、凱はある感触が指先に触れていることに気がついた。
尻たぶと太ももの境界辺り、スカートの布地越しでは本当に意識しないとわからないほどの、わずかな段差。
内心、首を傾げた凱だったが……しかしすぐに、その正体に思い至った。

パンティラインである。
麻理依の成長する尻を包むショーツと、何にも覆われていない素肌を晒した太腿部分との境界線だ。

今まで胸に触れたり揉んだりと、散々痴漢めいた行為をしてきたが、凱は今この気づきに、これまでに無い圧倒的な背徳を覚えた。

いつも見ている、麻理依の制服姿。
ロリコン気味とは言っても、彼女のその佇まいそのものに性的な興奮を覚えたことは、それほど多くない。
出来るだけ、そういったことを考えないようにしていたし……また何より、彼女の制服姿が、いかにも清純そうな可愛らしさに満ちていたからだ。

でも、こんな感触を知ってしまえば、そうも言っていられなくなる。
いつも見ているスカートのその内側に、こんないやらしい造形があることをどうしても意識させられてしまう。

果たして明日から、自分は今まで通り、麻理依に対して「優しいお兄さん」として居続けることができるだろうか。
今までずっと大切にしていた宝物を、刹那的な欲望に駆られて壊してしまったような、そんな後悔めいた思いも覚えてしまう。

「おにぃ、さん?」

いつの間にか、手が止まっていたようだ。
そのことを不審に思ったのか、麻理依が振り返って、凱を見上げてくる。
何か返事すべきだったのだろうが、凱は咄嗟に反応出来なかった。
信じ難いことに、麻理依のその表情は、明らかに、さらなる行為をねだってくるものだった。

(……やめてくれよ)

凱は心底、そう思う。
ようやく固めた決心が、そんな顔をされたら、ぐらついてしまうからだ。

あくまで彼女のためにやろうと思っていたのに、自分の欲求がどんどん膨れ上がって、無視することができなくなってしまうからだ。
ロリコン気味であることを自覚させられつつ、凱は人間相手にそれはよくない、と抑え込んでいた。自分の欲望を優先して、幼い女の子の嫌がるようなことは絶対にする訳にはいかない、と。

凱にとって笹川麻理依とは、怨敵の血筋を超えた「守るべき女の子」となりつつあった。
でも……その麻理依自身が、性的な好意を望んでいたとしたら。
性的な行為を、麻理依自身が楽しんで、受け入れているとしたら。
そうしたらもう、そんな言い訳が出来なくなってしまう。

凱の中に渦巻く欲望を「魔物娘以外に出すべきでない」との理性の《枷(かせ)》が、意味をなさなくなってしまう。

「おにいさぁん……」

繰り返されたおねだりの言葉が、ダメ押しだった。
――もうだめだ。もう、我慢できない。
抑え切れない情動に突き動かされて、再び凱は麻理依に手を伸ばす。

「ぁ、ん、んっ」

まず凱が触れたのは、先ほど気づいたばかりのパンティライン。
柔らかい下着の境界線を指先で探り当て、その上をゆっくり撫で、くすぐるような優しさでなぞっていく。

「はっ、うっ、んぁ……っ」

凱の指遣いに合わせ、麻理依の身体がびくんと跳ねる。
予想以上の反応に、凱の心は驚きに満ちる。
クリトリスや秘部ほど有名ではないが、そこもまた、女性の下半身でも特に感じやすい性感帯の一つだ。異常に成長しているとはいえ、身体の成熟していない麻理依がそういった場所への刺激で気持ちよくなってくれるかは賭けだ。
けれど、どうやら思った以上のものだったらしい。
胸への刺激の感じようといい、本当に彼女はエッチな才能があるらしい。

「ん、んんっ、はう、あう、んんうっ」

麻理依はいよいよ、声が抑えられなくなってきたらしい。
いつの間にか右手だけでなく両手で口元を押さえ、きゅっと固く唇を結ぼうとするも、堪え切れない様子で、吐息と共に甘い鳴き声が漏れ出ている。

ちらりとその表情を窺ってみれば、恥ずかしがっているというより、どこか戸惑っているかのようだった。
恐らく彼女は、凱の愛撫がもたらす感覚が何であるか、それすらも理解出来ていないのだろう。

「麻理依ちゃん……!」

だから凱は、そんな彼女に手を差し伸べ、道を示してあげるのだ。

「声、我慢しなくていいんだよ」
「う、うっ……え?」
「麻理依ちゃん、気持ちよくなってるんだよ」

その言葉に、麻理依はぼんやりとした目で凱を見上げてくる。
迷子になったような、途方に暮れた表情をしながら。

「これ……今の、きもちいいってことなんですか?」
「気持ちよくない?」
「わ、わかんないです……ん、あうっ」

戸惑う麻理依の感覚器官にじっくりと感触を馴染ませるように、殊更ねちっこく、尻を愛撫する。
瑞姫らとの経験が、このようなところで活きるとは思いもしなかったが。

「ん、んんっ」
「どんな感じ?」
「え、えっと……なんか、ふわふわして、ボーっとして……なんか恥ずかしぃ……で、す」
「それが気持ちいいってことだよ。エッチなときの『気持ちいい』って、こういう感じなんだよ」

重要なのは、その未知の感覚に、名前を付けて定義づけてやること。
そうすることで、麻理依は本当の意味で、性行為というものを知るのだから。

「……そ、そうなんですか?」
「気持ちいいときに声が出るのは、普通のことなんだよ。だから我慢しなくていい。無関係の人に聞かれるのはよくないことだけど……エッチなことを一緒にしてる人に聞かれるのは、いいことなんだ。我慢する必要はないよ」
「で、でも……」
「でも?」
「なんか……恥ずかしいです」

その恥じらう姿が、妙に可愛らしい。

「それでいいんだよ。エッチなことをするときに、恥ずかしいって思う気持ちは、とても大切なことだよ」
「そ、そうなんですか? よくわかんないです……」
「じきに解るようになるよ」

そう、今は理解出来なくていいのだ。
意味が解らなくても、そのことを覚えておけば、いつか彼女は存分に性行為を楽しめるようになる。

凱の頭の中からは、「痴漢にされた麻理依の心の傷を癒す」という当初の目的は、半ば忘却の彼方に消え去っていた。

彼女の淫らな反応を味わいたいから。
彼女をもっとエッチにしたいから。

今の凱を突き動かしているのは、そんな下衆な欲求。

「…………」

麻理依は……ぼんやりと凱を見上げ、何か考え事をしていたようだ。
眉根を寄せて、俯き、じっとすることしばし。
そうして……やがて何かを決心したか、彼女は小さくうなずき、そして予想外の行動に出た。

「……麻理依ちゃん?」

よほど余裕が無いのか、麻理依は凱の呼びかけに応えない。
けれど、無言のまま、スカートの裾をちょっとつまんで、それを持ち上げ始めた。
麻理依のまさかの行動に目を丸くする凱の前で、丈の長いスカートがまくり上げられ、その中身が露わになっていく。

清潔そうな白いソックスに包まれたふくらはぎ。
どこかでコケたのだろうか、小さくかすり傷の痕がある膝小僧。
薄い肉付きながらも柔らかそうな曲線を描く、あまり日焼けのしていない太腿。
そしてとうとう……無地の白いショーツに覆われたやや大きめの尻が、姿を現した。

魔物娘と錯覚しそうなほど息を呑んでしまう。
染み一つ無い、綺麗な造形の一方、先ほどの愛撫のせいか、下着の裾が若干乱れており、尻の谷間に食い込んでいるのが何とも生々しい。

気のせいだろうか、彼女のその場所が露わになった途端、ふわりとミルクのような香りが漂ったような気がする。
それはあるいは、麻理依自身が発する幼い体臭だろうか。

「教えて、ほしいです」

ぼそりと、麻理依は恥ずかしげに言う。

「恥ずかしいのがいいとか、お兄さんの言うこと……よくわかんないです。だから、もっとエッチなことしたらわかるかもしれないから……だから」

だからもっと触ってほしいです、と、由那は露わになった尻を突き出してくる。

尻の愛撫を願う前、麻理依は「スカート越しに触れられたのが、痴漢にされた最後のこと」だと言った。

だからこれは、本当ならばルール違反。
痴漢にされた時と同じことをしてほしいという、彼女が最初にした願いからすれば、大幅に逸脱した行為となる。

だが、もはや凱も、そしておそらく間違いなく麻理依の方も、当初の目的は完全にどうでもよくなっていた。

「…………」

無言で促してくる麻理依に応え、凱は彼女の半ば露出した尻に改めて触れた。
今まで彼女に触れたことがあっても、それは所詮、隣同士に座った時の服越しの触れ合い。
当然、手を繋いだことすらないのに今、凱は、あるべき手順をすべてすっ飛ばし、麻理依の尻に、直に手を触れているのだ。

麻理依の尻の感触は、とにかくスベスベで、つるりとした肌触り。人肌と言うより、柔らかいゆで卵と表現した方がよほどしっくりくる。
瑞姫らヨメンバーズの肌とは、違う次元の触り心地であり、若々しく、《瑞々(みずみず)》しい。

「ん……っ」

それと同時に、尻を包むショーツの感触も凄まじい。
おそらく昨日お風呂から上がってから、一晩分ずっと麻理依のその場所を覆い続けてきた柔布は、わずかに汗を吸い、何より彼女の体温によって蒸れている。
じっと手のひらを尻の丸みに沿わせて触れてみれば、じんわりと熱っぽい彼女の体温を、今まで以上に生々しく感じられた。

「はぅ、んん……」

不道徳な行為をしているというのに、麻理依の吐息はどこか安らかなもの。まるでそれは、彼女の方も、凱の体温を直に感じて安心しているようでもある。

(……可愛い)

率直に凱はそう思った。
彼女の眠れる淫性をもっと開花させたいという欲求と同時に、この《稚(いとけな)》い少女をずっと《愛(め)》でていたいとも思う。
痴漢と何ら変わらない下卑た思いと、可愛い小さな子供の頭を撫でる時のような優しい気持ちも確かにあって……もう自分で自分の気持ちが判らない。

「あ、あ、あ……っ」

そうしていくうちに、麻理依はその声を、甘く大きくしていく。
素直な彼女は、手で口を押えそうになるのを我慢しているらしい。きゅっと両手でスカートの裾を掴み、何かをこらえるように握りしめて、ふるふると拳を震わせていた。そのせいか、彼女の口から漏れる声は、先ほどよりも随分と大きくなっていた。

「う、んんんっ、あう、あ、はうっ、あうっ」

耳元に響く甘い声に、凱の脳が溶かされる。
凱が彼女の尻を揉み、撫で擦り、くすぐり……そうやって愛でれば愛でるほど、その声はさらに甘さを増してくる。
理性を溶かし、腐らせ、いけない気持ちがどんどん大きくなる。
そうして……二人は、深みに嵌まり込んでいく。

「ん、あ……っ。あああっ」

麻理依はびくんと体を大きく《痙攣(けいれん)》させ、その拍子に、凱の手が麻理依の下着のやや下の方に触れてしまって……そして凱は、麻理依に起きている重大な変化に、今さらながらに気がついた。

(……え?)

ほんの少し触れただけのその感触に、一瞬で意識を持っていかれてしまった。
熱く火照った麻理依の肌を包み込む、純白の柔らかなショーツ。
さらりとした肌触りのいいはずのその布地の中に、ぬるりとした、明らかに異常な湿り気を、わずかに、しかし確かに感じたのだ。

(まさか……まさか……)

考えるよりも先に身体が動いていた。
凱はすぐさま、麻理依の身体の前側に腕を回り込ませ、その指先が触れた先は、当然、麻理依の股間の中心部、陰唇の、スジの場所。

「あ、んあ……っ、ひぅ、んん……っ」

ひと際甲高い麻理依の甘鳴き。
それと同時に、はっきりと大きく「くちゅり」と湿った水音が、凱の耳に確かに届いた。
そして……その水音が何かを自己主張するように、彼の指の腹は、先ほどと同様に、疑いようのない湿り気を感じ取っている。

間違いない。
麻理依は……この少女は、《股座(またぐら)》を濡らしているのだ。
麻理依は、まだ小学生。二次性徴に差し掛かったばかりの、幼さを多分に残した体つきを持った少女だ。
性的快感の経験が乏しいために、それを性的快感として認識できないほど、そういった行為とは無縁の生活を今まで送っていたはずだ。

だというのに、今、そんな少女は……笹川麻理依は、間違えようのない快感を覚え、快感の証である愛液を分泌させているのである。
その事実を、今さら、改めて凱は認識した。
このショーツのさらに奥には、愛液を分泌する器官が……つまり、膣がある。
男性器を受け入れ、男と快楽を共にし、精子を受け入れ、子を《成(な)》すための生殖器がある。

だが、今この場で、その場所に、直に触れる訳にはいかなかった。そういう関係である以前に、二人はまだ顔見知りからようやく脱したばかりの関係だ。
けれどそれでも、この現実を前に、否応なく興奮してしまうのも、また事実。

「あ、あっ、んああ……っ」

だからもう、止まれない。
ショーツの股間の部分を、指で念入りにまさぐる。
擦りつけるようなことはせず、クロッチ部に指先を押し付け、ぐりぐりと圧迫し、凱自身も麻理依の感触を楽しみながら、彼女に快楽を刻み付けていく。

「う、ん、はう、う……っ、あ……っ」

指を少し押し込むごとに、ショーツの向こう側で陰唇が《綻(ほころ)》んでいるのか、じわりと新しい愛液が染み出してくる。
木綿の薄布は甘ったるい液体を吸い、べったりと肌に貼り付いて、もうほとんど直に触れているのと変わらないほどの手触りを、凱に伝えてくれる。

「はうう……う、う……っ、ん……っ」

ひく、ひく、と小さく震える身体。
物欲しそうに震える秘肉。
小さな身の内に、《爛(ただ)》れた甘い熱が蓄積し、高まっていくのが確かに判った。

「あぅ……あ、あっ、あう、あっ……だめ、だめ、だめえ……っ」

そして……とうとう、限界が来たらしい。

「……あ……っ」

顎が上がり、膝ががくがくと震え……きゅ、と麻理依の全身が不自然にいきむ。
そして次の瞬間、もう立つことも《覚束(おぼつか)》なくなったようで、彼女はがくりと体勢を崩してしまった。

「あ、おっと……」

咄嗟に支えようと、凱は腕で麻理依の体を支える。
そのお陰で体を強く打つようなことは免れ、麻理依を座敷席に横たえさせる。

「はう、あぅ……あ、あぁ……んんっ、はう……」

横寝の格好でしばらく身悶え、しかしそれだけでは息苦しかったのか、仰向けに姿勢を変え、大きく呼吸を繰り返す麻理依。

「……ふぁぁ……あう、んん、はぅ……」

そんな彼女は今、《惨憺(さんたん)》たる有様になっていた。
胸を愛撫したせいもあるが、制服は半ばまで脱げ、へそや鎖骨や、さらには肌着まで覗けて見えてしまっている。
それより何より酷いのは、下半身部分。
膝を緩く立てているせいでスカートがまくれ、中の白いショーツが丸見えだ。
清潔で子供らしい無地の下着は、その子供らしい佇まいに反し、先ほど雄也が指先で触れていた感触が示すように、クロッチ部にハッキリとした染みが出来てしまっている。
下着が脱がされていない状態ではあるが、それでもこれはまさしく、恐ろしい性的な暴力に晒された後の、あられもない姿だ。

(……やばい)

今さらながらに、凱はどうしようもないと思ってしまう。
未だに興奮の冷めやらぬまま、それでも行為が一段落ついたことで幾分か頭が冷静になってみれば、自分のしでかした事に《慄(おのの)》かずにはいられない。

「はふ……」

一方で……麻理依は何を思うのだろう。
凱の目の前で、しばらく浅い呼吸を繰り返していた麻理依の表情は、やはり判別出来ない。
まだ幼い身を苛む淫熱は抜き切れていないようで、凱を見上げるその瞳はとろんと潤み、口元も緩んで力が入っていないのか、わずかに涎が垂れていた。

「麻理依ちゃん、涎」
「え、う、うそ」

指摘すると、ふわふわした表情のまま、麻理依は手の甲で口元をごしごしと擦り、そして「えへ……恥ずかしい」と照れ隠しのように小さく笑う。

けれど互いに何を話せばいいかわからず、沈黙の中で視線が絡み合う。
自分はいったい、どんな顔をしているだろうかと、そんなことを凱は思う。
何かと聡い麻理依であれば、そんな凱の表情から、彼が何を考えているかを見透かして、そして傷ついてしまうかも知れないから。

「……えへへぇ」

けれど、激しい快感の余韻の中ではそんな余裕も無いのか、麻理依はただただうっとりと、口元に手の甲を押し付けたまま、ゆるゆると幸せそうに笑う。
何とも不思議な表情だった。
どこか恥ずかしそうな。それでいながら、何だかほっとしたような。

少なくても今の麻理依の表情には、今朝方見せていた硬さはどこにもない。
そうして、彼女は言う。ゆるゆるとした、のんびりな笑顔で。

「やっぱり、お兄さんにされても、ぜんぜんイヤな気持ちにはならなかったです」
「そっか」
「あとね……さっき言ってた、恥ずかしいのがいいっていうの……ちょっとわかったかもです」
「……そっか」

凱は思う。
果たして今も自分は、優しい笑顔を浮かべたままでいられるのか、と。
怨敵に連なる少女に対し、前のように接していけるのだろうか、と。

凱の指にまとわりついたままの麻理依の淫液が、新たな絆の証となっていたことに気付かぬまま……。
25/09/28 00:53更新 / rakshasa
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■作者メッセージ
微エロ回の後編でした。
こんな展開でも、長くなるのはエロ表現ゆえのことなので、短くしても伝わる文章を模索していきたいです。

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