可愛い娘は、病んでも可愛い

僕――七塚遊は路地裏を歩いていた
僕は別に不良では無いし、人と話すのが苦手な訳でもない
ただ・・・・・・今回は事情が少し違った

「・・・・・・この辺まで来ればもう大丈夫かな」

現状、僕は「追われている」と言う表現が適切な状況下にいる
命を狙われているわけでは無い・・・と言うかそんな事が日常茶飯事だとか嫌すぎる

「遊さーん・・・こっちですかー?」

来た道の方向から、明るい声が聞こえる
耳に残る良い声だと思うが・・・しかし今はそんな事をきに掛けている場合では無い

「・・・もう来た・・・・・・流石に空を飛ばれると逃げ切れないか」

小声で悪態を吐く
そう、僕が裏路地にいるのは追ってが空から迫ってこない様にするためだ
・・・アニメとかで空から狭い道に入る翼人とかいるけど、アレ普通は無理だから

「あ、遊さん・・・こっちにいるんですね、気配で分かりますよ」

・・・・・・逃げるか
多分逃げ切れないだろうけど・・・そもそも魔物娘から逃げ切るって無理だろ
じゃぁなんで逃げるかって?
追われてるからだよ

「この辺、全然道分かんないんだけどなぁ」

行き止まりにだけは辿り着きませんように・・・
・・・・・・・・・・・・・・・行き止まりについてもクライミングとかすれば大丈夫か?
































「・・・・・・・・・行き止まりかぁ」

うん、そんな気はしてたよ
無事に脱出できても、どうせ飛んで追いつかれるし
気配で分かりますって言ってる相手に隠れようとも思わないし・・・

「遊さーん、そろそろ出てきて下さい」

イラついた様子も無く、とても楽しそうな声で彼女が近づいてくる
別に出て行っても何の損もしないのだけど・・・
此処まで逃げてしまった以上、最後まで逃げたいと思う

「・・・・・・と、いう訳でー」

・・・・・・まぁ、何とかして逃げたいと言う思いはあるが
逃げ場がないのも事実で・・・考えたらクライミングしても飛ばれたら意味がないし

「下に逃げるか」

仕方がないので、マンホールを外して下水道に逃げ込もうとして・・・

「何やってるんですか? 遊さん」

見つかった・・・そりゃマンホールを外してる時間があれば追いつくよね
声聞こえてたし

「君から逃げる為に今からここを降りようと思ってね」

まぁ、もう見つかってしまったので体を穴から引き上げる
ついでにマンホールも元の位置に戻しておく

「さて、遊さん」
「なにかな?」
「どうして逃げたんですか?」
「・・・・・・とりあえず、寮に戻ろうか」
「はい♪」

閑話休題

さて、何故このような事になったか
理由はそれほど難しい事ではないし、今にして思うと逃げるようなことでもなかったと思う
ただ、状況的に危機を感じたのかそうで無いのか・・・自然と逃げていただけだ
落ち着いて考えてみると、なんで逃げたのかよく分からない・・・


―――まぁ
落ち着いてみると、別に何でもなかったんじゃないかと
そんな風に思えてしまう訳で・・・

「・・・さて、一つ聞きたいんだけど」

しかし、どうしても聞いておかなければいけない事もある

「なんで僕は縛られてるのかな?」

どうして僕は椅子に縛り付けられているのだろうか?

「だって遊さん、また逃げるかもしれないじゃないですか」
「いや、流石にもう逃げないよ・・・」
「遊さんは嘘つきさんなんです」
「・・・僕、そんなに信用無いかなぁ」

逃げ出した原因は、確か僕のせいじゃなかった気もするんだけどなぁ

「じゃぁ、もう一つ聞きたいんだけど・・・」
「なんですか?」
「どうして服を脱いでるのかな?」

しっかりと縛られている僕の目の前で、当たり前の様に服を脱いでいるのは
本当に理解しがたいのだけれど・・・
・・・あれ、さっき逃げたのもこんな感じの問答に問題があったからじゃなかったっけ?

閑話休題

回想

「遊さん、遊さん」
「んー、どうかしたの空」

彼女の名前は、天宮 空
隣のクラスの委員長で、種族はエンジェル
紙束を運ぶのを手伝ったんだったか、不良に絡まれてるのを助けたんだったか忘れたけど
・・・まぁ、気が付いたら周りをウロウロするようになって・・・・・・・・・
ちょっと、最近よく分からない事を言い始めたなーと思っていた矢先・・・

「性処理をしましょう」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん?」

こんな事を言われてしまい、柄にもなく困惑してしまったのは認めよう

「・・・・・・なんでまた・・・別に僕、欲求不満じゃないよ?」
「遊くん、最近魔物達とよく交わってますよね」
「え、あぁ、うん、そうだね」
「それって、良くない事なんです・・・神様の考えに背く行為なんですよ?」

一瞬、空の瞳から光が消えた気がした

「だとしても、彼女たちにも色々と事情があるんだよ」
「そんな事知りません、遊くんがしてる事は神様の創った制約に反してる事なんです」
「・・・・・・それで、なんで性処理なの?」
「遊くんが魔物何かに欲情するのは、きっと遊くんが欲求不満だからです」
「いや、だから欲求不満じゃないって・・・・・・」

全く人の話を聞いてないな・・・
さっきよりもなんか怖くなってきてるし・・・目がね・・・何かね

「私が遊くんの性的欲求を処理すれば、遊くんは別に魔物何かと交わる必要無いじゃないですか」
「別に僕は、自分の性処理の為に夏花達とセックスしてる訳じゃないから・・・」
「でも、交わってる事には変わりありませんよね?」
「うん、それはそうだけど」
「駄目なんですよ・・・汚らわしい魔物なんかと交わっちゃ!!」

一瞬、物凄い寒気がして
僕は部屋を飛び出した




・・・・・・・・・やばい
全然大丈夫じゃないし・・・なんかもう、なんで冷静になったんだろう僕

「なんでって、遊くんの性処理をするためですよ?」
「・・・僕、そんなお願いしたっけなぁ」
「私がしたいから勝手にするんです・・・遊くんは座っててくれるだけで構いませんから」
「すごく不安だー」

若干投げやり気味の僕を完全に無視して、空は服を脱ぎ終える
下着まできっちり脱いでいる・・・・・・
空は僕の前で膝立ちになり、僕のズボンを下ろしにかかる
肌は白く艶があり、長い金髪が光に反射して、体型の良さが強調されている
幼さを残す顔には僅かに朱がかかり、上目づかいにこっちを見てくる

「そういえば遊くん」

僕のズボンを下ろしながら、空が不意に不思議そうな顔をした

「・・・ん、どうしたの?」
「どうして下水に逃げようと思ったの?」
「あぁ、上に逃げたら飛ばれるかな、と思って」
「・・・・・・この翼、邪魔ですか?」


この瞬間、大人しく縛られた少し前の僕を殴りたくなった
全身に冷や汗が流れて、嫌な動悸が忙しく脈打つ
そのまましばらく、沈黙が続く
空は手を止めて動かないし、僕も縛られているので動けない


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」
「あ、邪魔ですよね・・・・・・」
「いや、別に邪魔なん―――」
「遊さんが飛べないのに私が飛べるなんて、おこがましいですよね」
「だから、別にじゃ――――――」

っこきゅり

軽い音を立てて、それは行われた
真っ白な翼が、根本から赤黒く染まって
地面に赤い液体が滴る
それから、嫌な鉄の臭いがして

彼女は、満足気に微笑んだ

「これで、遊と同じだね」

ふと、流れる空気が生温かくなった気がした
それは、流れ出る温かい血のせいか
あるいは人は寒気を通り越すと、こんな感覚に襲われるのだろうか

ミシッ、ミジュッ

翼の付け根から、大量の血が床に流れ出し

ギッ、ジュッ、ギリィ

肉と骨が擦れ合う嫌な水っぽい音が室内に響き

ブチィィッ

引きちぎれるような音が聞こえて

真っ白で大きな翼が、真っ赤に水面に堕ちた

「っぁ・・・っはぁ・・・っくぅ・・・・・・・・・ぅ」

空の表情は、明らかに苦悶に歪んでいて
とても苦しそうに見える

「空、もうやめるんだ!!」

ガタンと、椅子ごと横に倒れた
うん、立ち上がれなかった・・・・・・
超頑丈に縛られてるし
目の前に・・・ゆっくりと広がっていく血だまりがみえた

「だい・・・・・・じょうぶ・・・です・・・すぐ、終わり・・・ますから・・・」
「そういう問題じゃない!!」

こきゅっ

僕の叫びを無視して、さっきよりも軽い音が聞こえる

「空!!」

ミシッ、ギチッ

「ほら・・・もう・・・・・・終しまい・・・・・・です」

ギュゥ・・・ギッ

今度は、ねじ切れるような音で・・・微かに朱い染みの付いた翼が、血だまりに堕ちた

「おい馬鹿、やめろって言っただろ!!?」
「でも・・・こんな翼・・・いらないじゃ、無いですか・・・・・・ぁ」

横たわったままの体勢で・・・広がってきた血が、頬を濡らす

「ほら・・・・・・遊、倒れたままじゃ・・・・・・ダメだよね」

空が僕の座っている椅子ごと、僕を起こす
僕の右半身は、大けがをしたように見える程真っ赤だ

「空、もうやめるんだ・・・!!」
「やめないよ・・・放っておいたら遊はまた魔物と交わるでしょ?」
「空、僕はそんな事を言ってるんじゃない」
「だーめ、遊は魔物何かと交わっちゃ駄目なの」

痛みが治まってきたのか、喋り方に活気が戻ってきている
・・・さりげなく、呼び捨てにされてる

「それじゃぁ、気を取り直して・・・・・・」

空の血に塗れた手が、僕のズボンとパンツを下ろす

「遊、こっちはちゃーんと準備できてるよ?」

こんな状況でも・・・いや、こんな状況だからか
生物は危機を感じると、生存本能で精力が跳ね上がる云々
・・・であるかはともかくとして、僕の性器はしっかりとスタンバイしていた

「やっぱり、欲求不満なんだよね・・・だから魔物なんかと交わってるんだよね」
「空、もうやっ・・・っぅぁ」

空は僕の性器のスジ裏を人舐めして、それからカリを舐めて
亀頭で下をグルリと回してから、ゆっくりと銜えこんでいく

「ふぅうふぁ、ふぉうふぅうもがふふぃふぁふふぁふぉふぇ」
「ぁ、ひゃ、喋る・・・なぁ」

空の口内の振動が、地味に敏感になってきた性器に快感を与えてくる
下が器用に亀頭の周りに纏わりついて、不規則に動き回る

「んっ・・・そ、らぁ・・・」
「んふぃ・・・・・・ふぁふぃ・・・?」
「もう・・・や、め・・・」

一瞬、空の動きが止まって
空は僕の性器から口を放した

「・・・っはぁ、出来れば縄も解いて――」
「どうして、そんな事いうんですか?」

空は僕を上目づかいに見て、水音が聞こえて
縄が解けた

「だめですよ?」

立ち上がろうとした僕に、空が覆いかぶさってくる
椅子が倒れない様に、横に倒される

「っわっ!?」

ベチャっと

まだ乾いていない・・・しかし人肌のぬくもりを失った血が、左半身から背中に
・・・・・・寒気を誘う感覚が走る

「やっぱり遊くんは、魔物なんかと交わってるから・・・こんなくらいじゃ満足出来ないんですよね」

そう言って空は、僕の上に覆いかぶさって
そのまま口づけをされる
舌が唇の間を潜り抜けて、口内を這い回り
背骨に何かが這いずり回っている様な感覚に襲われる

「っっぅ!!?」

鈴口に、生暖かい感触が当たって
ビクリと体が跳ねる

「こっちじゃなら、満足できるよね・・・?」

ゆっくりと空が腰をおろしてくる
僕は、まるで金縛りにあったかのように動けない
口から伝わってくる痺れる様な感触と、性器を飲み込まれていく軽い電流の様な快感に縛られて
思考まで、持って行かれそうになる

「っん・・・・・・ふぁっ、ぁ!」

プツッと、何かがちぎれる感覚がした
涙目になってる空と、僕と繋がっている部分から流れ出す血

どうしよう、何だかよく分からないけど罪悪感が・・・・・・

「ぜんぶ・・・入りましたね」

涙目のまま僕の口から舌を出して、超至近距離でそんな事を囁いてくる

「空・・・どうしてこんな事を・・・・・・」
「遊が、魔物なんて抱くからです」

痛みで腰が動かないのか、少し顔の距離を離して空は一呼吸おく
それから、奥の見えない暗い瞳で僕をみて
壊れた様に、呟く様に言った

「魔物は不浄な存在で遊くんは神様に愛されて創られた人間なんです、遊くんが盛り時の男の子なのは分かりますけど、魔物なんて抱いちゃいけないんです、遊くんは神聖な存在で、完璧な存在で、魔物なんかが好きにしていいような人じゃないんです、私も別に昔の様に魔物を殺したりなんてしませんが、それでも我慢できない事はあるんです、遊くんはいつだって完璧であるべきで魔物なんかに汚されちゃいけないんです、遊くんが優しいのは知ってるんですよ? でもですね、魔物は人を堕落させるんです、遊くんは優しさに付け入られてるんです、遊くんは誰に対しても優しすぎるんです、遊くんはもう少し優しくしていい相手を考えた方がいいんです、魔物は優しい人の心に付け入るんです、遊くんが魔物に堕落させられるのなんて耐えられないんです・・・・・・遊くん、遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊遊遊遊遊遊遊遊遊遊遊・・・・・・・・・ねぇ」

ゾクリと、背筋に寒気がゆっくりと通り抜ける感覚に襲われて
自分が血だまりの上にいる事を、今まで忘れていたような感覚で思い出す
一瞬世界が真っ暗になった様な眩暈がして
                    耳元で囁く様な声が聞こえた

「愛してよ」

近くで聞こえたはずなのに、遠くで声が響いている様な錯覚に陥る
硬直していた体が急激な脱力感に襲われて、力が入らなくなる

「そ・・・ら・・・・・・ぁ?」

肺から空気が抜けていき
そこでようやく、自分の首が絞められている事に気づく
小さな手で、先ほどの力が嘘のような弱い力で
・・・泣きそうな顔で、僕の首に手を掛けていた

「愛してくれなきゃ・・・やだよ・・・」

言葉の意味が理解できなくなっていく
意識が遠のいて、視界がぼやけて、目の前にいる彼女が誰かさえ、分からなくなる

「っか・・・・・・ぁ・・・ぁ・・・」

首への緩い圧迫は、しかし意識を確実に削ぎ落としていた

「愛してるって言って、それだけでいいから」

真っ暗な世界に引き込まれる直前に
目の前にいる誰かのいった言葉を反復する

「ぁ・・・ぃし・・・て・・・る?」
「はい♪ 私もです」

何も見えない世界の中で・・・冷たくなった唇に、温かくて柔らかい物が当たって
意識が、重い水の中に沈んだ




































「ふふっ・・・遊、遊、ゆーうー」

日の落ちた、月明かりの照らす部屋の中
半乾きの血だまりの中で、長い金髪がキラキラを光っている

「大好きだよ・・・・・・ずっと、ずぅっと・・・」

少し温かみを取り戻した唇に、口づけをして・・・
下はもちろんつながったまま・・・と言うか、気絶している間に3回ほど・・・

「だから・・・・・・」

彼女は、血で濡れた手で彼の頬に触れる
血の冷たさが、人肌に触れて心地よく感じる

「私だけを愛して・・・・・・」

12/01/13 00:35 稲月 乙夜


自分で読み返して・・・思ったよりも病まなかったなぁ、と思いつつ

やはりヤンデレはライバルがいないと際立ちませんね・・・と凹みます

・・・言い訳はこのへんにしておいて、別にグロが書きたかった訳ではありませんとさらに言い訳を続けます

そして、ヤンデレは純愛だと言い張ります
えぇ、純愛なんです!!

あ、いえ、エンジェルちゃんの主人公に対する思いも純愛ですが、私が魔物娘に向けてる愛も純愛ですよ?
もちろん

さて、ふてぶてしく言い訳をするのもこの辺りにしておきましょう

正直、この後のアフターストーリーは読者様にお任せいたしますという形式になりそうです

サボりじゃありま・・・・・・せん・・・?
はい、サボりではないです、多分

一応私の中ではここが区切りだったので、勝手ながらこんな微妙な場所で切り取りました

(・_・;)<後は、もう・・・そう、妄想するんだ!!!

では
[エロ魔物娘図鑑・SS投稿所]
まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33