ある妄想過多なサキュバスの彼氏事情
「お邪魔しまーす……」
わたしはサキュバスのサキ。
ドアをくぐって入ったのは、付き合っている彼氏の家だ。
「うん、いらっしゃい。さ、あがっていってあがっていって―」
笑顔がほんわかした彼とは、まだエッチなんてしたことない。
わたしには『初めてのエッチは絶対に襲われるシチュエーションで』って夢がある。
当然、魅了の魔法を使うのはなんか違うって思うし、ずるいから駄目。
でも……そろそろ彼と付き合い始めてから一年。
「(はぁ……。やっぱりエッチなこと、したいなぁ……)」
そうは思っても、口には出さないでおく。
何せわたしは、これでも学校では清楚なキャラで通っているから。
それに彼がそういう、女の子の身体についての雑談とか、男友達としてるのを見たことがないし。
「もしかして……枯れてたりするのかなぁ……」
……って、思ってたことをつい言っちゃった!?
「うん……枯れちゃったんだ」
……えええええええっ!?
ほ、ホントに!?
どうしよう、わたしの彼氏が実は枯れてたなんて、そんなのあまりにも酷いよ!?
「じゃあ……元気になったり、大きくなったり、子種を新しく作ったり……できないの!?」
「色々頑張ったんだけどね……栄養をあげたり、茎を真っ直ぐにしてみたり。……まあ、寿命なのかもね。しかたないよ」
そんな……そんなのって……もうキミの、男としての人生は寿命を迎えたなんて……。
わたしはこの先どうやって生きていけばいいの?
エッチなことできないなんて……辛すぎるよ……。
「ごめんね、あの花枯らしちゃって。サキ、好きだって言ってたのに。……でも、まだ種は残ってるからもう一度頑張ってみるよ」
「…………へ? 花……?」
「庭で育ててるやつ、枯れてるのに気づいちゃったんでしょ? やっぱりサキはやさしいなぁ……」
もしかして……今までのって全部お花のこと!?
キミはじゃあ別に男として枯れてたんじゃないのね!?
うぅ、よかったぁ……!!
「そ、そうなのよ! 応援してるから今度は元気な花を咲かせてあげてねっ!?」
「うん、約束するよ―!」
無邪気なキミの視線が逆に痛い。
こんなこと考えてたって知られたら絶対嫌われるよね……。
「とりあえず、僕の部屋に行こうか?」
この言葉に、わたしを誘ってるような雰囲気をまったく感じさせないのが彼のすごいところだ。
もしこんな彼がわたしを押し倒したりするようになったら……って考えただけで変な気分になってきたわ……!
「あ、そうだサキ、おまんじゅう食べる?」
「『おマン汁(じゅう)』!? でもどっちかといえば飲み物でしょ!?」
(※変な気分になってるので、脳内変換されました)
いきなり何言い出すのよ!?
しかもどうしてちょっと丁寧に言ったの!?
もしかしてホントはキミ、すごく変態!?
しかもマン汁ってことは……キミには妹がいるから、もしかして妹さんのを!?
どういうこと!? もしかしてわたしとエッチなことをしない理由は妹さんで事足りてるから!?
わたしの立場は一体どうなるの……!?
「そっか、サキは喉乾いてたの? じゃあおまんじゅうじゃなくて飲み物を用意するね」
しかもマン汁を食べ物だと思ってるところがまた……!
性的に食べるからってわけ!?
「最近ちょっとハマってるんだ、カプチーノに」
えぇっ!? 『かぷチ◯コ』に!?
(※変な気分が治まらないので、脳内変換されました)
キミの妹さんはそんなことまでOKするの!?
「ミルクは直搾りのやつを使うと濃厚になるんだよねー」
ああ……、おち◯ぽミルク、直搾りですって……!?
もうダメだわたし、妹さんに負けるくらい女の魅力無いんだ……。
「ん? どしたのサキ? もしかして苦いのは嫌い?」
「あ、ううん、キミのならどんな味だって大丈夫だから! 全部飲み干せるから! だから、いっぱいちょうだい……!!」
「うん、一杯だね。待ってて、すぐ持ってくるから」
そう言って彼は部屋を出ていった。
「もうすぐ……もうすぐ彼の生搾りが飲める……!!」
私のドキドキはもう最高潮。
胸を高鳴らせたまま待つこと数分、彼が再びやって来た。
「お待たせサキ、どうぞ」
「もう、焦らさないでよ! さあ、今すぐ濃厚なミルク、たぁくさん一緒に搾りましょう……?」
そして目の前に置かれたのは、香ばしい匂いを放つ、白く泡立った液体がフワッとのせられたコーヒーカップ。
「え……? これ、カプチーノ? なんで……?」
「なんでって…………? あ、もしかしてサキ、カプチーノは生クリームをのせるやつ派だった?」
「わ、わわわたし…………っ!?」
もしかして『かぷチ○コ』じゃなくて、『カプチーノ』だったの!?
じゃあさっきのもほんとは……!?
「それはごめんね。あと、ついでにおまんじゅうも持ってきちゃった。僕がちょっとお腹空いちゃってるし、サキも食べたいときになったら食べなよ」
ああ……こっちも『お饅頭』だ……!! わたしのバカバカぁっ!?
「サキ? どうしたの? なんか顔赤いけど……熱でもあるの? よい……しょっと」
彼がそうして、わたしの隣に来た。
こつんっ……。
おでこ同士がぶつかる音と、少しの沈黙。
「んっ……!?」
あぁぁぁぁ近い、近いって!?
息が……くすぐったいよぉ……!
「……ちょっと熱いかな? なんなら僕のベッド使っていいから、横になってたほうがいいよ」
「う、うん…………」
全然、身体の方は大丈夫なんだけど……せっかくのチャンス。
ベッドに入って布団にくるまると、彼がわたしを包んでくれたような気分になった。
「ねーむれー、ねーむれー……」
彼が手を握って、つたない調子で子守歌を歌い始めた。
「ふふ、なにそれっ。…………でも、安心できるなぁ……」
意識がだんだんとフワフワしてきた。
ある意味、これは彼の魔法な気がする。
「……わたし、キミのこと……大好きだよ…………♪」
「うん、僕もサキが大好きだよ。だから今はゆっくり休んで、元気になってね?」
曇りのない声で彼は言う。
握られた手と布団の温もりに包まれながら、わたしは思った。
「(彼とエッチできるのは…………まだまだ先になりそうな気がする……けど)」
……それも、いいかな。
わたしはサキュバスのサキ。
ドアをくぐって入ったのは、付き合っている彼氏の家だ。
「うん、いらっしゃい。さ、あがっていってあがっていって―」
笑顔がほんわかした彼とは、まだエッチなんてしたことない。
わたしには『初めてのエッチは絶対に襲われるシチュエーションで』って夢がある。
当然、魅了の魔法を使うのはなんか違うって思うし、ずるいから駄目。
でも……そろそろ彼と付き合い始めてから一年。
「(はぁ……。やっぱりエッチなこと、したいなぁ……)」
そうは思っても、口には出さないでおく。
何せわたしは、これでも学校では清楚なキャラで通っているから。
それに彼がそういう、女の子の身体についての雑談とか、男友達としてるのを見たことがないし。
「もしかして……枯れてたりするのかなぁ……」
……って、思ってたことをつい言っちゃった!?
「うん……枯れちゃったんだ」
……えええええええっ!?
ほ、ホントに!?
どうしよう、わたしの彼氏が実は枯れてたなんて、そんなのあまりにも酷いよ!?
「じゃあ……元気になったり、大きくなったり、子種を新しく作ったり……できないの!?」
「色々頑張ったんだけどね……栄養をあげたり、茎を真っ直ぐにしてみたり。……まあ、寿命なのかもね。しかたないよ」
そんな……そんなのって……もうキミの、男としての人生は寿命を迎えたなんて……。
わたしはこの先どうやって生きていけばいいの?
エッチなことできないなんて……辛すぎるよ……。
「ごめんね、あの花枯らしちゃって。サキ、好きだって言ってたのに。……でも、まだ種は残ってるからもう一度頑張ってみるよ」
「…………へ? 花……?」
「庭で育ててるやつ、枯れてるのに気づいちゃったんでしょ? やっぱりサキはやさしいなぁ……」
もしかして……今までのって全部お花のこと!?
キミはじゃあ別に男として枯れてたんじゃないのね!?
うぅ、よかったぁ……!!
「そ、そうなのよ! 応援してるから今度は元気な花を咲かせてあげてねっ!?」
「うん、約束するよ―!」
無邪気なキミの視線が逆に痛い。
こんなこと考えてたって知られたら絶対嫌われるよね……。
「とりあえず、僕の部屋に行こうか?」
この言葉に、わたしを誘ってるような雰囲気をまったく感じさせないのが彼のすごいところだ。
もしこんな彼がわたしを押し倒したりするようになったら……って考えただけで変な気分になってきたわ……!
「あ、そうだサキ、おまんじゅう食べる?」
「『おマン汁(じゅう)』!? でもどっちかといえば飲み物でしょ!?」
(※変な気分になってるので、脳内変換されました)
いきなり何言い出すのよ!?
しかもどうしてちょっと丁寧に言ったの!?
もしかしてホントはキミ、すごく変態!?
しかもマン汁ってことは……キミには妹がいるから、もしかして妹さんのを!?
どういうこと!? もしかしてわたしとエッチなことをしない理由は妹さんで事足りてるから!?
わたしの立場は一体どうなるの……!?
「そっか、サキは喉乾いてたの? じゃあおまんじゅうじゃなくて飲み物を用意するね」
しかもマン汁を食べ物だと思ってるところがまた……!
性的に食べるからってわけ!?
「最近ちょっとハマってるんだ、カプチーノに」
えぇっ!? 『かぷチ◯コ』に!?
(※変な気分が治まらないので、脳内変換されました)
キミの妹さんはそんなことまでOKするの!?
「ミルクは直搾りのやつを使うと濃厚になるんだよねー」
ああ……、おち◯ぽミルク、直搾りですって……!?
もうダメだわたし、妹さんに負けるくらい女の魅力無いんだ……。
「ん? どしたのサキ? もしかして苦いのは嫌い?」
「あ、ううん、キミのならどんな味だって大丈夫だから! 全部飲み干せるから! だから、いっぱいちょうだい……!!」
「うん、一杯だね。待ってて、すぐ持ってくるから」
そう言って彼は部屋を出ていった。
「もうすぐ……もうすぐ彼の生搾りが飲める……!!」
私のドキドキはもう最高潮。
胸を高鳴らせたまま待つこと数分、彼が再びやって来た。
「お待たせサキ、どうぞ」
「もう、焦らさないでよ! さあ、今すぐ濃厚なミルク、たぁくさん一緒に搾りましょう……?」
そして目の前に置かれたのは、香ばしい匂いを放つ、白く泡立った液体がフワッとのせられたコーヒーカップ。
「え……? これ、カプチーノ? なんで……?」
「なんでって…………? あ、もしかしてサキ、カプチーノは生クリームをのせるやつ派だった?」
「わ、わわわたし…………っ!?」
もしかして『かぷチ○コ』じゃなくて、『カプチーノ』だったの!?
じゃあさっきのもほんとは……!?
「それはごめんね。あと、ついでにおまんじゅうも持ってきちゃった。僕がちょっとお腹空いちゃってるし、サキも食べたいときになったら食べなよ」
ああ……こっちも『お饅頭』だ……!! わたしのバカバカぁっ!?
「サキ? どうしたの? なんか顔赤いけど……熱でもあるの? よい……しょっと」
彼がそうして、わたしの隣に来た。
こつんっ……。
おでこ同士がぶつかる音と、少しの沈黙。
「んっ……!?」
あぁぁぁぁ近い、近いって!?
息が……くすぐったいよぉ……!
「……ちょっと熱いかな? なんなら僕のベッド使っていいから、横になってたほうがいいよ」
「う、うん…………」
全然、身体の方は大丈夫なんだけど……せっかくのチャンス。
ベッドに入って布団にくるまると、彼がわたしを包んでくれたような気分になった。
「ねーむれー、ねーむれー……」
彼が手を握って、つたない調子で子守歌を歌い始めた。
「ふふ、なにそれっ。…………でも、安心できるなぁ……」
意識がだんだんとフワフワしてきた。
ある意味、これは彼の魔法な気がする。
「……わたし、キミのこと……大好きだよ…………♪」
「うん、僕もサキが大好きだよ。だから今はゆっくり休んで、元気になってね?」
曇りのない声で彼は言う。
握られた手と布団の温もりに包まれながら、わたしは思った。
「(彼とエッチできるのは…………まだまだ先になりそうな気がする……けど)」
……それも、いいかな。
13/04/01 22:38更新 / ノータ