第六章 決戦
「魔物なんか殺したくないって言ってただろう!」
天使野郎は目を瞑った、そして。
巫女の嬢ちゃん諸共、私達全員を睨みつけた。
「我が深愛なる主神の兵士達よ!」
その声は相当大きく、迫力も桁違いだった。
こいつと今から戦争すんのか。
ちょっと自信なくなってきたぜ。
「悪しき異教徒を、踏み潰せ!」
千数百の兵士全てが一斉に動き出した。
咆哮で地面が揺れているみたいな錯覚が起こる。
「さてと、任せるぜ眼鏡の嬢ちゃん。」
アオオニの嬢ちゃんが動けない以上指揮は他の奴がやるしかない。
しかしアカオニに指揮とらせたらどうなるか分からんから、私が眼鏡の嬢ちゃんを推薦した。
「投石隊!投石開始!」
警備隊の人間の奴らが石を投げる。
あれ、効くのだろうか、まだ疑問だ。
「おお、効いてる効いてる。」
意外と石が効いている、次々と兵士が倒れている。
だが数が数だ、足りんな。
「私も出るか?」
「君たちは体力を温存してくれ、先発隊!用意!」
先発隊が構える、その先、敵の最前線に。
天使野郎がいた。
「お・・・い!?先には出ねぇんじゃなかったのかよ!?」
先陣の更に最前線に、天使野郎が突っ走っていた。
巫女の嬢ちゃんが言ってたのと違うじゃねぇか、あいつは後から出るはずじゃねぇのかよ。
「夏華!抑えて!」
「おう!任しとけ冬華!行くぞ、突撃!」
アカオニの嬢ちゃんとその他のアカオニ達がその軍に突撃していく。
アカオニっても分からんか、見張り台にいた嬢ちゃんだ。
「止められようと私も出るぞ!あれは別格らしい!」
「まだだ!まだ詩華姐さんが終わってない!」
武器を取り出そうとしたら肩を掴まれ、町側にぶん投げられた。
流石アカオニ、文系でも力強いなおい。
「こ、の!」
見張りの嬢ちゃんのありったけの力を込めたでろう拳での初手の一撃は、派手に空ぶった。
思いっきり体勢を崩すもアカオニの馬鹿力で無理やり体勢を直す。
「な!?うわ!?」
そうして次の剣での反撃を辛うじて避けた、はずなのに見張りの嬢ちゃんは思いっきり吹っ飛んだ。
一体どう言う手品だありゃあ。
「どうする?あれじゃ止められねぇぞ。」
「粘るしかあるまい・・・夏華!いけるか!?」
「いってぇ・・・やるしかないだろうが!」
やるしかないって、まだかよアオオニの嬢ちゃんは。
「おい!駄教徒!」
その言葉で天使野郎と見張りの嬢ちゃんが止まった。
琴理だ、琴理がもう所定の位置にいる。
「ばっ!?」
ちょっと待てよ、もう作戦を進めるつもりかよ。
まだ準備できてないってのに。
「あんたの狙いはこれでしょ!」
琴理は本を手にして叫ぶ、そしてその本を持っている鞄に突っ込んで、森の中に入った。
まさか、できるだけ遠回りして時間を稼ぐつもりか。
「いいだろう、その挑発に乗ってやる、我が深愛なる兵達よ!続けてあの町を責めろ!」
天使野郎は身を翻して、琴理と同じく森に向かう。
私も後を追わないと。
「待てやこら!」
見張りの嬢ちゃんが更に攻撃する、できるだけ時間を稼いでくれているらしい。
頼む、今はとにかく、時間を稼がないと。
急げよ、アオオニの嬢ちゃん。
「邪魔、だ!」
駄目だ、やられた、琴理を普通に追ってたら駄目だ、先回りしないと。
私は琴理とは別の方向に走り出した。
〜〜〜〜〜
あいつ、追って来てるわよね、多分。
後ろを見たいのは山々なのだけれど、そんな余裕ない。
このまま限界まで森の中をジグザグ走ってやる。
「ちょ、ちょっと、だ、け!はぁ!?」
ほんのすこしだけ背後を見たら、何かが飛んできて近くの木にぶつかった。
これは、木なのか。
「木を投げて来てんの!?」
何それ型破りにも程があるでしょうに。
更に勢いを増して何個かまとめて木を投げてきた。
「うわぁぁぁあ!?」
一個が危うく当たりそうになった。
か、隠れよう。
私は木を登る、そして木を飛んで渡る。
もう暗くなってきている、それなら私は闇に紛れられるはず。
「・・・面倒だ。」
駄教徒は急に風か何かを周りに発生させた。
もちろん私にもその風が吹いてきて、私は木の上から吹き飛ばされた。
「いったぁ!?」
木から落とされて地面に叩きつけられる。
「そこ、か!」
構える暇もなく駄教徒は一瞬で近づいてきた。
蜘蛛足で地面を蹴って飛ぶ、剣がかすって鞄の紐が切られた。
やばい。
地面に着いた瞬間、私は落とした鞄に飛びつく。
相手の方が早い、まずい。
「らっしゃあぁ!」
刀で鞄を思いっきり叩いて飛ばした、そしてすぐに走る。
「うっとおしい!」
「うわ!?」
肩を掴まれて後ろに投げられた、木にぶつかってようやく止まる。
だが、ここから走ってもどうやっても本に届きそうにない、あいつの方が圧倒的に近い。
不甲斐なさを感じつつ鞄を睨みつけると、その後ろの木の影に誰かがいた。
「ことりん・・・!」
「あんた・・・青魚!」
青魚は槍で器用に鞄を弾いた、私はそれをどうにか受け取る。
「いって・・・。」
そしてそのまま、体勢を変えようとした駄教徒に攻撃した。
私は立ち上がって、森を走り抜けていく。
「ことりんって何よ!?」
それだけは言いたかった。
〜〜〜〜〜
森を睨みつける、場所は確認したし目印の槍も刺した、後は伝えるだけ。
ここは燃えた周辺の森だ、灰を踏みしめる。
まだ出口ができていない、間に合うか。
「リスの嬢ちゃん!なんでもいいから急げってアオオニの嬢ちゃんに言え!」
「ぜはぁぜはぁ・・・こっちも全速力だって!」
ああ、そうかよ、私は森に向けて走った、ここにいたらまずいからな。
「あ?くっそ、言うほど時間稼げてねぇじゃねぇか・・・。」
琴理が必死な表情で走ってくる、そのすぐ後ろを天使野郎がくっついて走っていた。
私はそっちに方向を変え、琴理に走り寄る。
私は刀、になる前の唯の鉄の棒を構える。
急に揃えられたのはこれしかなかったんだよ。
「あの槍の所だ!だけどまだ通ってねぇ!入る時抜けよ!」
「知るか!こっち、も、もう、無理!」
すれ違い様に情報を伝えた。
しかし無理っつったってな、分かってるよ、やってやる。
私は天使野郎にまっすぐ突っ込んだ。
病み上がりだってのにな。
「おぉぉぉぉぉお!」
初手、私は右手で刀を振る。
天使野郎はそれを読んでいた、つもりだった。
「何?」
「あめぇんだよ!」
不意の一撃、右手のそれは唯の木刀で本命は左手の鉄の棒。
左手の一撃は天使野郎の右脇に当たった。
しかし全く力の入ってない一撃、天使野郎は少しよろめいただけだった。
「まぁ見事な手品だな。」
「だろ?」
ようやく一撃入れたのにこの反応かよ。
すぐさま天使野郎は反撃する、その攻撃を受けた木刀がバラバラに砕け散った。
「うぉ!?」
更に天使野郎は踏み込んできた、私はそれを。
「おらぁ!」
滑り込んで、スネを蹴って返す、が。
「かってぇ!?」
「鎧が見えないのか?」
今度は剣を振り下ろしてきた、一々の攻撃の迫力がすごい。
なんとか避けるが、例の突風で私は吹っ飛んでしまった。
「ぐは!?」
私に全く興味を示さず、天使野郎は顔を上げたが。
「何だと?」
ほとんどだだっ広い平地だと言うのに琴理の姿はなかった、だけどここまで追い詰められたらもう何もできねぇな。
私は祈るだけだ。
「やってくれたな、ふん。」
天使野郎は羽を広げて飛んだ、そしてアオオニの嬢ちゃんが掘った穴はすぐに見つけられた。
ずっとこの為に時間を稼いでいたのだ。
「頼んだぜ・・・巫女の嬢ちゃん。」
天使野郎はそのまま急降下して穴の中に入っていった。
〜〜〜〜〜
穴の中は意外と広かった、しかし出口が通っていないと言う話だ。
「だ、だだ、大丈夫だよね!?ことりん!?」
「あの馬鹿巫女信じるしかないわね・・・ちょっと見てくるやってて。」
穴の中では馬鹿巫女がブツブツ早口で呟いていた。
その一、青い方の鬼が穴を急いで掘って入り口と出口を貫通させる、愛玩リス子はその手伝い。
その二、戦いが始まったらその穴で馬鹿巫女が待機して詠唱魔法の準備をする。
その三、私達は全力で敵兵を減らしつつ時間稼ぎ、駄教徒が動き出したらこの穴に誘導。
その四、馬鹿巫女がドカン、私達は出口から脱出。
なんだけど。
「出口・・・。」
出口は無い、今全力で掘っている。
掘った土はリス子が穴の外まで運ぶのだけど、多分もうあの駄教徒入り込んでるわよね。
「来た・・・馬鹿巫女!お願い!」
「顕現せよ!我が元へ!《邪神剣》!」
その狭く、逃げ場もなく、そして不意打ちに仕掛けた魔法。
これなら流石に効くでしょう。
で、どう逃げようかしら
「いやぁぁぁぁぁん!?」
「ぴゅぅぅあ!?」
「きゃぁぃぁあ!?」
〜〜〜〜〜
「いてて・・・腰打った・・・。」
結構傷跡が開いて血が出始めている、私はここで限界か。
一戦交えただけだってのに。
「情けねぇ・・・。」
ぼやいていると、突然地面が爆発した。
土を吹き飛ばして色んな物が飛び出して来た。
「いぃぃいやだぁぁ!?」
「ぷゅぃぁぁぁぁぁあ!?」
「きゃぁぁあ!?」
「琴理!がっ!?」
立ち上がろうとした時、腰から衝撃が走った。
まさか、ぎっくり腰か。
「いぃ!?てぇ!」
そのまま灰やら木の破片やらで塗れた地面に頭から突っ込んだ、やばい立てない。
「ちょっと!ここは普通受け取ってくれる所じゃないの!?」
琴理が憤慨しながら走り寄ってきた、しかしそれどころでない。
「ぐぉぉぉぉ!?すまん!文句は後で聞く!今は、今はそっとしてくれ!」
ギリギリと腰が痛む、さっきの突風より余程痛い。
これじゃあ戦うどころの話ではない。
「いてて、腰やったのかい・・・座ってなウチらでなんとかするよ。」
「悪い・・・だが。」
目の前には陥没した地面が見えていた、この規模の術をまともに食らったと言うのなら。
倒れてくれないと困るな。
「肩借してくれ・・・」
「しょうがないねぇ・・・。」
アオオニの嬢ちゃんが私の肩に手を回して立ち上がる。
やれやれ災難だったぜ。
帰ろうとした時、陥没した地面が再び爆発した。
「ふぅー・・・気のせいだよな。」
「やってくれたな、本当に・・・。」
ぴんぴんしてやがる、嘘だろ。
砂をかぶりながら地面から天使野郎が這い出てきた。
巫女の嬢ちゃんは、まだいない、土葬されたか。
アオオニの嬢ちゃんは私を座れそうな破片に座らせた。
そしてその辺の破片を持った。
「棍棒を無くすなんてね・・・やれるか?琴理嬢。」
琴理も刀を取り出して構える。
「聞くまでもないでしょう?」
お互い構える、そして天使野郎もまた剣を構えていた。
しかし。
「ここは俺に任せてくれ。」
その二人を制止したのは、半べそかいている魚の嬢ちゃんを連れた青助だった。
今まで何してたんだよこいつは。
「ここで格好つけなきゃ、情けないんでね。」
悪かったな、ぎっくり腰になって格好つかなくて。
「あの町を・・・愛する者を守るため、俺は負けない!絶対負けない!」
そうか、頑張れよ、私は応援しないが。
「さぁかかってこい!別にあれを倒しても構わんだろう!」
まぁ倒してくれたら面倒なくて助かるな、無理そうだけど。
「俺、帰ったら結婚するんだ!ここにいるはると!」
なんでそれを敵に宣言するんだよ、と言うかやめてやれよ、隣で嫁が頭の先まで真っ赤になってるだろうが。
「さっさと行け!あっ、いたたたた・・・。」
思わず叫んでしまった、なんか変なことばっか言ってたらつい。
「人がせっかく時間稼いでいるのに!何を言うんですか!」
確かに巫女の嬢ちゃんが復活してくれればなんとかなるかもしれんが、だが。
「それ言ったらダメだろ!」
あとついでに惚気たいだけだろそれ。
「あっ!?」
「・・・ばか。」
話は終わったとばかりに天使野郎が琴理に突っ込んだ。
「ことりん・・・。」
魚の嬢ちゃんが琴理の目の前に立つ、そっちは頼んだぞ。
しかし速度がさっきより遅い、効いてきてはいるらしい。
「無視!すん、な!」
槍でその突撃を止め、斧に持ち替えて弾いた。
持ち替えは非常に早く、更に刀に持ち替えて追撃した。
「ほらよ!」
そして癇癪玉で光と音が発生する。
怯んだ天使野郎にさらなる追撃をしかける。
斧を持って飛びかかった。
「小賢しい!」
しかし剣で防がれる、が片手で槍を取り出して。
「そりゃ!」
更に槍で突いた、それも盾で防がれる。
しかし青助はその武器の両方を離して。
剣の盾の隙間から天使野郎の頭に蹴りを放った。
「守りは得意じゃなさそうだな。」
青助は斧と槍を回収したから飛び退いた。
天使野郎は頭を抑えている。
「いた、まりあんぬいたぞ。」
アオオニの嬢ちゃんはこっそりと巫女の嬢ちゃんを助けていた。
掘り出された巫女の嬢ちゃんは目を回していた。
「こっち運んでこい!こっそりな!」
いま天使野郎は青助が相手していて琴理も位置を変えてこちらの事を天使野郎が見えないようにしている。
今しかない。
「うーん・・・魔力が足りない・・・うん?マリアンヌ?僕マリアレイなんだけどな・・・。」
ペチペチと軽く顔を叩いて巫女の嬢ちゃんを起こす、ようやく目が覚めたらしい。
「はっ!?どうなってる?」
「今青助が必死に抑えてる、さっさと起きろ。」
だが巫女の嬢ちゃんは力無く私の肩を掴むだけだった。
「ごめん、魔力切れで戦力になれそうにないや・・・。」
やっぱりか、だったら選択肢は一つ。
「私の精とやらを吸え、お前の種族からそう言う事をできるのだろう?」
作戦前に語っていた、ワイトの特性とやらを思い出して言う。
巫女の嬢ちゃんが顔を上げる、そんな顔するなよ。
「い、いいのか?」
「私はぎっくり腰の所為で動けんからな。」
巫女の嬢ちゃんが肩を掴んでいた手を取る。
「さっさとやってくれ、いい加減決めろ。」
頷いて、巫女の嬢ちゃんの手から青い光が出る。
そして私から力が抜けていく、後は任せたぞ。
「気張れよ・・・罷り通る太郎。」
「ま、しか合ってないんだが。」
私はアオオニの嬢ちゃんに倒れこんだ。
もう指動かす力も残ってないな、腰も痛いし。
〜〜〜〜〜
なんかあの青助とやらは、駄教徒にそれなりに健闘したが。
「ごっふぅ。」
普通に剣技で負けた、不意打ちとかでなく普通に押し負けた。
剣ではなく盾で腹を殴られ派手に体勢を崩す。
そのまま盾で持ち上げられ、投げられた。
「赤尾・・・さん!」
青魚は青助に駆け寄ろうとした、けれどぐっと押し止まり、もう一度私の前に立つ。
「ことりんに・・・手は・・・ださせないから!」
無理して声を張り上げている、上ずった声で分かった。
ふと気付いたのだが、鞄、どこだろ。
「っ!?」
声にならない声を上げる、無い、いつから、いや穴から吹き飛ばされた時。
じゃあ。
「うまっ!?」
埋まってるのではないか、さっき落としたから。
だけど今は持っている振りをするしかない、気付かれないように祈りながら。
「サナ。」
この暗闇でもよく通る声が響いた。
その声は馬鹿巫女だった。
復活したか、さっさとその駄教徒倒しなさいよ。
そう言いたいのは山々だったけど、今は極力目立ちたくなかった。
「魔物に堕ちた者と話す事などない。」
馬鹿巫女はかなり苛ついた様に眉間に皺を寄せた、藤が持っていた鉄の棒を地面に突き刺した。
そして。
「私はここにいる!私はマリアレイ=ジルドだ!お前が殺したマリアレイだ!だけど私はここにいる!」
刀を持ち直した、そして気付いたら駄教徒は上空に吹き飛んでいた。
まったくもって見えなかった、馬鹿巫女が刀を張り上げている姿で辛うじて何をしたか分かった。
「お前は昔から、話を聞かなかった、私はずっと、ずっと!」
ぎり、その音は離れている私にも聞こえた気がした。
歯をくいしばる様な音だ。
「お前を、倒す!ずっとお前を倒したかった!私が正しい事を示す!」
「それがあの!訳の分からない魔術か!」
落ちてきた駄教徒は、空中でいきなり速度を増した。
しかし馬鹿巫女は一切動じず重力と速度の力を持ったその剣を刀で弾いた。
「な!?」
「魔物になった影響で肉体は全盛期、いや一番美しかった頃か、それに近くなっているのでな。」
ぶわっと、馬鹿巫女は力を溜めた。
「魔力も戦闘能力も、お前に殺された時よりも随分と増え、あの町でさらに成長した、お前に殺された時は私もババアだったしな。」
更にその力を強くする、いつ踏み込んでもおかしくない規模だ。
馬鹿巫女はその状態でゆっくりと刀を構える。
「逃げてもいいぞ、逃がさんが。」
そう啖呵を切った。
駄教徒は顔を歪めつつも、同じく力は溜め始めた。
迎え撃つつもりか。
「随分と生意気な口を、吐くようになったな。」
「名前を覚えてくれない誰かさんのおかげでね。」
馬鹿巫女はちらりと藤を見た、気がした。
あいつ、二人も女はべらせてたのか。
「恋心とは違うが・・・好きだったよ。」
なんでそう不毛な恋ばっかあいつは量産してんのよ。
心の中で文句を言った次の瞬間、決着はついた。
双方同時に相手に突っ込んだ。
私は、私達は衝撃で思いっきり吹き飛んだ。
〜〜〜〜〜
思い切り顔をぶつけた。
「ぐぁぁぁぁあ!?」
そして腰もぶつけた、ようやく治りかけてたのに痛みが程度を増して振り返す。
「ぐぉぉぉぉお!?」
そして動けない為叫ぶしかない。
巫女の嬢ちゃんと天使野郎がぶつかった瞬間は見えたが、その後は周囲の灰やら破片が私達ごと吹き飛ばしたので何も見えなかった。
「いてぇ・・・くそ、涙出てきた。」
何か私、今回良いところなかったぞ、森火事に巻き込まれるわ、普通に負けるわ、腰痛めるわ。
情けなさに涙が出てきた、あと痛みで。
「藤坊・・・生きてるかい?」
「どうにかな・・・いっ!?」
めし、と腰が軋んで痛む、本当に動けん。
「ほら肩かしてやるから、今動かないと本当に良いとこ無しだぞ。」
肩を持たれ無理やり立ち上がらせられた、少し腰が痛む。
少し、結構、大分。
「いてててててて!?」
「我慢しろ藤坊。」
ずりずりと引きずられるみたいに吹き飛ばされた先の森から出る。
元の所に戻ってくると灰がほとんど吹き飛ばされていて唯の広場の様になっていた。
「派手に暴れたねぇ。」
「おい、あそこ巫女の嬢ちゃんじゃねぇか?」
人影が広場の真ん中に立っている、それに私達は近寄った。
やはりそれは巫女の嬢ちゃんだった。
「おーい真里、大丈夫か?」
巫女の嬢ちゃんにアオオニの嬢ちゃんが声をかける、巫女の嬢ちゃんはゆっくり振り返って。
「あーもう動けん・・・。」
巫女の嬢ちゃんは後ろに座り込んだ、かなり顔色が悪い。
のは元々だが一層青く見えた。
「おい、明かりないか?見えねぇ。」
「あーそうだな、と言うよく真里の事見つけられたね、あんた。」
既に完全に陽は落ちている、短い様で長い戦いだったな。
「ありがとう、僕一人じゃサナには勝てなかった。」
「町を守るのは当たり前さ、礼を言われる様な事じゃない。」
まぁ色々あったが、なんだかんだなんとかなったしな。
「今度こそ終わったか?」
しかし。
「まだ、私は、負けていない。」
やれやれだ。
振り返ると暗闇に白い影が、剣も盾も落としたらしい。
体を引きずる様にこちらににじり寄ってくる。
「アオオニの嬢ちゃん、もう大丈夫だ。」
私はふらつきつつも天使野郎に対面した。
ちょっと、同じく師匠の真似事してる身として、言いたい事があったのだ。
「お前、こいつの師匠なんだろ?」
「それが・・・どうした!?」
初めて、こいつが怒った、今まではなんと言うか、表情は事務的な物だったからだ。
「神は絶対!神の声には!従わなくてはならない!」
私は持てる力全てで、拳を振りかぶった。
「だか、あぐ!?」
そして、天使野郎をぶん殴った。
「だからって殺していい道理がどこにある!てめぇが育てたてめぇの娘同然の奴が!そんなに信じられねぇのか!」
腰が爆発でもしそうなくらいに痛む、もう一度耐えてくれ。
「お前がもう少し考えてりゃあ!マリアンヌは死ななくて済んだんじゃねぇのか!?」
私は、ずっとあの流木の町の下から出られない巫女の嬢ちゃんを見てた。
町づくりに参加したくても、種族の壁でできない巫女の嬢ちゃんを見てきた。
「お前も、師匠なら。」
師弟の繋がりは相当強い、私はそう思う、だから。
「信じてやれ、あいつを。」
それだけ言い切ったら、私は倒れ込んだ。
あぁ、最後まで格好つかねぇ。
「ふ、藤太郎!?」
私は、抑えきれずに。
「いいっ・・・てぇぇぇぇぇぇぇえ!?」
夜の森の中で叫んだ。
17/04/16 12:01更新 / ノエル=ローヒツ
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