一連鎖目「繋がりは自然に、突然に」
昔、とある教会の偉い人は言いました。
「魔物は敵だ、すべからく討つべし」
昔、とある国の王様は言いました。
「意思疎通が出来て害が無ければ問題無いんじゃないか?」
昔、とある紳士が言いました。
「可愛ければ正義なのだよ。つまり幼j(ry」
そして現在、魔王が交代して魔物が魔物娘になった現在では………
とある教会の偉い人は言いました。
「魔物は魔物だ。すべからく討つべし」
とある国の王様は言いました。
「意思疎通が出来て害意がないなら魔物娘でも問題無いんじゃないか?」
とある紳士は言いました。
「魔物娘?可愛いからいいじゃないか。ところでサバt(ry」
つまり何が言いたいかと言うと、
「偉い人達はなんやかんや言うけど、実際に動く奴らは大変なんだよなぁ…旅人してる俺が言うのも何だけど」
実際には上の人間も大変なのだが、眼下でせっせと動き回る王国の兵隊達を見るとそう思ってしまう。
「ふあぁ…にしても、何かあったのかね、こんな朝っぱらから忙しく動いて」
欠伸を噛み殺し、街の大通りに面した宿屋の窓から覗きながら考える。
ちなみに時刻は早朝、大抵の子供ならまだまだ寝てる時間帯だ。
「……一度起きるとなかなか寝付けんし…まだ朝飯の時間にしても少し早いし…これからの事でも考えるか」
荷物から地図を取り出してベッドに広げて考える。
(えー、と今広げてる地図はマイレス王国って言う、今俺がいる王国の地図だ。
この国は北の山脈からアルヴェラ大河っていう河がちょうど国の真ん中を流れてる。
んで、支流とか他の川と合流したりでちょうどいい具合に東西南北に水路が出来上がってるんだ。
それで、やっぱりでかい河があると国が栄えるようで、ここら辺の国じゃかなり大きな国だ。
ただ親魔物領と反魔物領の境目が近かったり、近隣諸国が小競り合いしたりするから情勢はいささか不安。
更に、最近本格的に国が魔物との融和政策に乗り出したせいで教会とも仲が悪かったりする………まぁ、前から何処も魔物に対して友好的だったけどな。
っと、話がそれたな……そんな国だから、俺がいる街も河が近い……って訳じゃなかったりする。
渡り歩く商業都市[エイネス]
これが今俺がいる街の名前だ。
………別に街が動いてる訳じゃないぞ?ただ、北西の砂漠の国に向かったり、逆にこっちの国に入ってきた商人の通りが多い街道に自然と出来上がったから付いた名前だ。
んー…長くなりそうだし、今回はこれくらいにするか。じゃ、続きは次回な)
「………何で説明口調なんだよ俺…誰に説明してんだよ……てか次回て何だよ次回って………」
気づいたらどうやら暇すぎて変になっちまったようだ………
次にいつの間にか大通りに活気が出始めていることに気がついた。
その直後に、自分の腹が空腹を訴えていることに気がついた。
「……はぁ、いいや、なんか食おうか……な…ぁ」
最後に、所持金が底をつき始めていた事を思い出した。
………どうすっかなぁ…
「という訳で何かいい依頼ない?」
「とりあえず殴っていいですか?」
何とか安く朝食を済ませ、冒険者とかに依頼を斡旋するギルドに来たんだが………ここの受付嬢乱暴だな……いや、カウンターで長話したからなんだけどさ。
「はぁ…とりあえずギルドの証明書みせてください」
「ん……あー、とこれだ」
腰に掛けていた荷物から今までの実績とか経歴とか書かれてる羊皮紙を渡すと、さっさと奥に行ってしまった。
「……ん?どれどれ…」
と、カウンター横の掲示板が目に入ったので見てみることにした。
・各地のニュース………牧場でホルスタウルス大暴れ!?
・広告……………………おいしいパンはハニー工房へ。
・ギルド通信……………冒険も人生も計画的に。
・二つ名付き情報………気になる奴らをお届け!
・街別ギルドスペース…従業員(雑務)募集中。詳しくは受付まで。
・従業員の一言…………「新しいとこに異動したい」byポニテ受付嬢
………とりあえず、牧場で赤いものはダメだろうに。
次は……ハニー工房か…確かに美味かったな、安かったし。
ただ、店主がハニービー一人引きずって出てきたのはびびったな…
後は…二つ名付き情報か。
この国は何でか知んないけど、どっかで有名になったりするとすぐに国中に知れ渡るからなぁ……名乗っても無い二つ名付きで。
しかも誰が付けてるんだか知らないけどセンスもまちまちだったり、いかにもカッコ良く付けました的なのもあるからなぁ…
最近の奴を挙げてみると………「氷瞳」「赤銅の牙」「白夜の主」エトセトラetc…
ただ、これはこれで役に立つ。名のある盗賊とか危険な奴の情報も分かるし、近辺目撃情報の欄を見れば近くにどんな奴が居るのかも分かる。
もちろん、情報に載ってない奴も居るかも知れないが、護衛を請け負う場合とかは見ておいて損は無かったりする。
という訳で早速見てみる。
「…闘争鬼…あぶねぇ、通り過ぎた後か……ほかは風琴詠みに……双迅か」
なんか最初に危険そうな名前があったけどどうやら通り去った後みたいだし、残りは危険じゃないから良いか。
にしても結構正確に目撃情報は出るんだよなぁ………
「確認おわりました」
「ん、んで何かちょうどいいのある?」
少しの間色々見てると受付が戻ってきた。
……なんだか表情が微妙だな。何かあったのか?
「そうですね…行方不明者捜索と薬草調達、商人護衛がありますよ?」
「うーん………護衛は何処まで?」
「ガザです。少し急ぎみたいでキジェ洞窟を通りたいそうですが?」
ガザかぁ…山脈の麓にある街だけど、最近、てかそこから来たしなぁ。
「他には?」
「そうですねぇ……昨日までなら小規模の盗賊段討伐員の募集をしてたんですけど………今朝、ボロボロの状態で街道に放置されてるのが見つかりまして…」
「ん?今朝兵士が騒がしかったのはそれか…」
「多分そうじゃないですか?……あ、そうそう、古城調査というのがありますよ?」
「調査か…」
「ここからすぐ南にあるオルトレーク森林に、退廃の古城と呼ばれてる廃城があるんですけど、最近何者かが出入りしてるみたいなので調査して欲しいとのことです」
「うーん……依頼書みせてくれ」
どうぞ、と渡された依頼書を見てみる。
……報酬、良し。
「これ、請けるわ」
「じゃあサインお願いしますね」
えー、と…名前名前っと…よし。
「…はい、確かに。それでは頑張ってくださいね」
営業スマイル、そしてぺこりとお辞儀である。
………………今気づいたけどポニーテールだった。
「まぁ、せいぜい頑張るかな…じゃ」
早速、依頼をこなすためにギルドから出ることにした。
………何か、「それにしても何で」何たらかんたらと受付嬢が言ってるけどやっぱり何かあったんだろうか?
「そして現在に至るっと…」
手ごろな切り株に腰を下ろして休む。
ギルドから出て、宿屋で準備をしてエイネスを出たのが昼前。
森林に着いてしばらく進むうちに道が分からなくなったのがちょうど太陽が上にあった時。
しばらく途方にくれていると、運よく薬草を探しに来ていた冒険者見習いの少年に出会ったのが多分昼過ぎくらい。
んで、今こうして休んでるのが自信はないが子供のおやつ時、目の前には件の古城。
「ふぅ……今のところ誰かが住んでそうな気配は無いしな」
少し観察してみるけど、やはり誰かが住み始めた様子ではない。
「………まぁ、行けば分かるか。誰か居ても通りすがりの旅人ってごまかせるし」
今の格好は、茶色を中心とした配色の動きやすい軽装に外套という良くある(?)旅装だ。
それにいざという時の「相棒」を肩に引っさげて、立ち上がり古城に進む事にした。
「……さて、盗賊が出るか単なる物好きが出るか、はたまた魔物が出てくるのか…」
崩れかけた門を通り過ぎて警戒しながら進んでいく。
ぽっと出の盗賊とか、低位の魔物とかなら軽くいなせる自信はあるがやはり油断は命取りだ。
………にしても、魔物だとしたらどんな奴が出てくる?
周りは森だからアルラウネとかグリズリー、ホーネットとかが出てきてもいい気がするがこの廃城に来そうな気がしない。
デビルバグ、ラージマウスならすぐに分かりそうだし。
スケルトン、ゾンビ、グールは主に墓場とかだから可能性低い
デュラハン、エキドナ、ドラゴンがこんな所に居るとも思えんし…てか考えたくない…
「現実的に考えてゴブリンとかオークだよなぁ…」
うん、いつも通りに対処すれば何とかなる相手だな。
……俺独り言多いなぁ…はぁ…
「まぁ、置いといてと…お邪魔しまーす、と」
何も無くたどり着いた正面玄関を開いて中を確認。
………薄暗くて、そこかしこに物が散乱していた。
ただ、廃城というからもっと崩れているのかと思っていたのだが建物自体は壊れていないようだな。
「……出迎えは無し…進むか…」
窓から差し込む光をのおかげで、十分に周りが見えるので足元に注意しながら玄関ホールを抜けて、まずは階段を上る事にした。
ついで左右に通路が分かれていたので左に進むと螺旋階段といくつかの部屋があったので部屋を確認した後に螺旋階段を上る。
上りきると今度は正面と右側に通路があったので、光が差し込んでいる正面の通路を進むと割れたステンドグラスが見える開けた場所に出た。
外が見えるのに少し薄暗いのは、多分日差しが逆を向いてるからだろうな………
「………居そうに無いな…」
まだ上の階はあるが、何か居るならそろそろ出てきても良い頃合だけど、そんな気配がしない…それにしても……
「……なかなか、見ていると寂しくなる光景だなぁ…」
歩きながら辺りを見渡す。
割れたステンドグラスに開けた造りで奥に見えるのは多分ステージ。
多分、ダンスホールだろうな……俺は、何故か、しばらくの間この場所を見まわしていた…
「踊る奴が居ないダンスホールってのも、悲しくなるもんだな…はぁ、らしくn「では、今日限りのダンスパーティでも始めようか?」っ!?」
ふと呟いた独り言への返答、沸き立つ殺気、咄嗟に身を翻し声とは反対側へ下がる。
「報復か、誰かの差し金か、それとも別の賊か…今ならまだ間に合うと?」
続く女の声。
視線を向けるとそこには両の手に片刃の剣を一つづつ、逆手に持った人影があった。
「…えー、何のことかな?」
「………ふむ…まぁ良い。とりあえずは大人しく眠っていてもらおうか」
「一応、通りすがりの旅人なんだけどなぁ」
「大丈夫だ、殺しはしない」
問答無用かよ…
「はぁ…やるしかないか…」
視線を向けたまま、仕方なく肩に引っさげていたのを手に取り布の封をはずす。
「…珍しいものを使うな」
「それはどうも」
俺が取り出したのは、少し長い柄の両端に刃が装着されている剣。
あまり知られていないけど、両剣とでも言えば良いんだろうか?正式な名前は分からなかったりする。
まぁ、扱いが難しいし作る物好きも少ないし仕方ないか…俺にとっては「こういう時の相棒」何だけどな。
「ついでにその物騒なのをしまって欲しかったりする」
「武器を出したのならすでに無理な話だな」
………おっしゃる通りで。
右腕を下げ背に回すように両剣を持ち、それ以外はほぼ自然体で立ちながら相手を観察する。
薄暗い所に立たれているせいでよく見えないが、黒を中心に赤のラインが見える服装に手には手袋か、そして隙のない姿勢。
やば……強いそう…
てか盗賊には見えないし、かといってぱっと見て魔物にも見えないしなぁ…
「………この舞踏についてこれるか?」
「種類によるっと!?」
踏み込み、剣閃、柄を両手で持ち二つの刃で立て続けに受け止めいなす。
が、
さらに続く剣閃、強く弾いて踏み込み斬り下ろすが即座にバックステップでかわされる。
更に大きく踏み込みさっきとは逆の刃で斬り上げるが受け流され、体を一回転させて更に反対側の刃で突きを放つがいなされ踏み込まれ斬りつけられる。
それをまた体を回転させて両剣で受け止め弾くが今度は右に左にとステップを刻まれながら翻弄される。
「…………やりづらい…」
数瞬の斬り合いで思った感想だ。
力もあまり無くスピードも見えない訳では無いが、技量が違った。
受け止められ、弾かれるのが当然のように攻めてくるが、反撃のタイミングをうまく外され、強引に攻めても受け流される。
かと言って受け続ければ勝てるはずも無いし……しかも、攻撃のテンポも急に変えて来るからなかなか……
「どうした?その程度ではないのだろう?」
「言ってくれる……な!」
一際強く振るわれた右の剣を受け止め押し込むがすぐに両手で対抗される。
かわされる視線、競り合う刃、暗がりの中で唯一はっきり見える吸い込まれるような赤く緋い紅眼。
どちらからとも無く弾き合い、互いに距離をとり相手を観察しようとするがダンスホールの特に暗がりに入られよく見えなかった。
「…あんた、何者だ?」
「なに、ただの旅人だ」
「ただの旅人がこんな所にわざわざ来るか?」
「それはお前もだろう」
うっ…言い返せない…
「はぁ…止める気は無いみたいだな」
「フフ……久しぶりに楽しめそうな者に会えたのでな。いまさら止める気はないさ」
「俺としては穏便に済ませたいんだけどなぁ…」
「ならば抵抗しなければ良かったんじゃないのか?」
「それも嫌なんでね……あぁもう、夜前には帰るつもりだったのに…」
ステンドグラスの向こう、夕暮れ時の空を見上げる。
あー……たとえ今からここを出たとしても街に着くころには完全に夜だろうな…
「ふむ…そんなに悠長に構えていていいのかな?」
「おっと!?」
タンっという踏み込む音と共に迫る剣閃を受け止め二回目の剣舞が始まる。
踏み込み、踏みしめ、ステップを刻み響く足音。
空を切り、ぶつかり受け止めあい、打ち鳴らしあう刃の音。
それらの音を響かせながら幾度目かの剣閃を弾き、踏み込み左右両方の刃を交互に斬りつける。
それらすべては受け止めいなされ、軽やかなステップでかわされていく。
さらに追撃、受け止められ逆の刃で切り上げるが同じく逆の剣に阻まれる。
そして反撃、両の剣を刃で柄で受け止め一度距離を取るがすかさず詰め寄ってくる。
「このままじゃ平行線のままか…」
受け止めて弾いて距離を取って踏み込んで詰められてまた受け止めて弾きあう。
先ほどからずっとこの繰り返しだ。
体力にも自信はあるのでへばる心配は無いが、このままではやはり埒が明かない。
打開する方法はあるが、あまり対等じゃない気がしてする気にはなれない…我ながらめんどくさい性格だ……
「けど、流石に…」
「……ふむ、そろそろか」
と、急に後退する女性。
「やはり、私の目に狂いは無かったか……十分すぎるくらいについて来る」
「それはどうも。ついでにそろそろ止めて欲しいなぁなんて思ったり」
「残念だがそれはできないな。どうやら本気を出せそうなんだ、悪く思わないでくれ」
「……おいおい…今ので本気じゃないのかよ」
「十分本気さ…本来の本気ではないがな」
「…どういう事だ?」
「なに、こういう事だ」
徐に、ステンドグラスの下に移りこちらを向く女性。
もはや夕闇が訪れようとしている中だが、それでも今までよりははっきりと姿を見ることが出来た。
彼女の黒の服装からは気品が感じられ、長めの袖から先からは色の白い腕が見えたり短いズボンと長いブーツの間からは腕以上に白い太腿が覗いている。
「…いやいやマテマテ落ち着け俺」
仕方ない、目が行くのだから……いや良くないかι
更に胸元に行きそうになった視線を慌てて上にむけると今までよりはっきりと顔が見えたのだが、大人びた声音に反して顔つきからして少女という方が正しいこと驚いた。
そして、吸い込まれそうな紅い眼に腰まである銀髪をかきあげる右手、そこに隠れていた尖った耳が見え……………ヱ?
「……あぁー…魔物だったのかよ…」
可能性は考えてたし予想の範囲内だ。
それに、それならさっきから膨れ上がってる魔力にも説明がつ……く…?
「おいおい…何だよこの魔力……そこらの二流魔術師よりよほどあるじゃねーかよ…」
「当然だ。この身は多少特殊だが、それでも夜になるのだからな」
「特殊?……いや、それよりも夜だからってそんな…」
簡単に。と言おうとして止まる。
何か、頭が警鐘を鳴らしている気がしてならない。
「魔物…夜……魔力…夜………本気……あ」
思いっきりピンっと来た。
「……まさか…ヴァンパイアか?」
思わず一歩下がる。ついでに冷や汗が出て来る。
いや、まさかだが、そうならさっきからしてる話と照らし合わせても一番しっくりくる。
「フフ…夕暮までここに居たのが失敗だったな。もう少し調べていれば結果は変わっていただろうに」
右の剣を順手に持ちかえ、先ほどとは違う構えをとる女性―――否、少女。
そして、今までとは段違いの威圧感に圧迫感。
「あぁー……無理すぎる…」
「その割には、ずいぶんと落ち着いてるじゃない、か!」
「くっ…場数だけは踏んでるんで、っな!」
再三の踏み込みによる開幕。
だが、今度は明らかに押され、弾こうとする剣は逆に弾かれ防戦一方となる。
さらに、逆手から順手に変わった事によってより攻撃的な攻め方をとられた。
一瞬で不利を悟り、打開策を取ることにする。
「ちっ…『輝く光よ、わが命に応え眼前の敵を討て』!」
「む…『夜を包む闇よ、黒き刃となりて切り刻め』」
状況の不利を変えるために今まで使わなかった魔法で、光の矢を放つが即座に無数の黒い剣に相殺された。
「まだだ!『閃光よ、駆け抜ける力となり障害を討ち払え』!」
「そう来るか…『漆黒よ、夜の帳をもってわが身を守れ』」
続けて放った光線は防御魔法で的確に防がれる。
やはり、付け焼刃の魔法ではヴァンパイア相手には効かないか…
だが、それはもとより承知の上…一瞬の隙さえ作り出せれば良い。
「しかしきっつい…」
「フフフ…剣技…」
「っ!」
魔法による牽制と剣による攻撃を織り交ぜて攻めるがそれでも不利は覆らない。
そして、焦りを感じた直後に踏み込まれ放たれた二つの剣閃。
右の斬り下ろし、左の斬り上げ。
単純な、それでいて鋭く重みのある二撃をなんとか受けきる。
が
「…――なりて切り刻め』」
「なっ!?」
至近距離から放たれた黒の刃。
しかし、それでも両剣で弾き払い受け止めようとするがそれでも掠り、傷を増やした。
「……今のを捌ききるか…魔法を使える事といい、何者だ?」
「さぁ、ね…はぁ、はぁ、久しぶりに、危なかった…」
「ふむ……む?」
鈍ったかな…等と考えつつも息を整えていると、急に彼女から放たれる重圧が霧散していった。
「…少し早いが……まぁいいか」
「ぁ…?」
「心残りだが、用事ができたのでな。これくらいで我慢しておくことにしたよ」
そのまま、俺が入ってきた通路に進むヴァンパイアの少女とそれを見つめる俺だったが、ふと少女がこちらを振り向いた。
「……………」
「…なんだよ?」
「……フフ―――――」
踵を返し、今度こそ去っていく少女。
そして、それをぽけーっと見てる俺。
「……疲れたぁ…はぁ」
少女が完全に去った後に脱力、そしてため息。
「なんだったんだか……帰るか」
体は疲れているが、ここで寝るわけにも行かず、とりあえず帰ることにした。
結局、街に帰り着くのは真夜中だった………
fin...?
11/03/21 19:47更新 / 黒夢
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