連載小説
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二連鎖目「出会う者、戸惑う者」
「………………え?始まってる?」

…ゴホン。
朝っぱらから意味不明な事を口走ってしまった。
まぁ、結局宿屋に帰って寝れたのが深夜だったので仕方ないか。
………もう少し寝ていたかった……が、一応早いうちにギルドに報告に行かないとな…

「ふぁぁ…それに飯代がほしいし……」

ちゃんと調査はしてきてんだから貰えるだろうし。
てかあんな目に遭ったのになんも貰えなかったら詐欺だ。

「調査に行ったと思ったらヴァンパイアと戦ってた……なんのこっただよ本当に…」

のそのそとベッドから起き上がりとりあえず着替える。
あ……寝ぐせひどい…水水っと…
うぅ……久しぶりに魔法まで使ったせいか疲れてるな俺…

「まぁ…とにかく今は金と飯だな…」

またのそのそと準備を始める俺であった…


















「はぁ…生き返った…」

ただいま、ギルド併設の酒場である。
さっさとギルドで報告を済ませた俺は、ここで軽い朝食をとっていた。
パンにベーコンエッグにサラダなんだがすきっ腹には嬉しかったりする。
………メニューにあった「朝限定・ギルドモーニングセットA」っつう格安なのだったりもする(泣

「ううむ……少しの間は稼ぐべきかな…まだまだ心もとないし」

一通り食べて、財布の中身を確かめて嘆息。
今回の依頼で一応飲み食い出来なくなる心配は無くなったが、旅は何かと金がかかったりするので大変だ。
まぁ、そこをどうやりくりしていくのかが、醍醐味だと話す人もいるらしいが。

「俺はそこら辺うまくないからなぁ…」

再び嘆息。
しかし、このまま嘆いていても始まらないので腰を上げ、皿の入ったトレイをカウンター脇の返却台に置いておく。
そのままの足取りで斡旋窓口の受付嬢の所に向かう。
ふむ…しかし、昨日の今日だ……ろくな依頼が在るかどうか…

「あ、噂をすれば来ましたね」

「んあ?」

酒場との仕切りを開けて受付に来たら受付嬢が俺の方を向いて何か言ってた。
その受付嬢のカウンターを挟んで向かい側には青年…が一人、こちらもこっちを見ていた。

「何か俺に用か?」

とりあえず受付嬢に話を聞いてみる。

「用と言えば用ですね。とりあえずこれを見てください」

「これって……何これ」

「依頼書ですが?」

いや、依頼書は分るんだが…見てみるか……

「依頼名、希少種薬草調達……内容、紅鱗束草<アカリンソクソウ>の調達……これがどうしたんだ?」

「率直に言いますと、彼と一緒に受けて貰いたいんです。この依頼を」

「えー、っと、どうもです」

「ん?おう」

と、ここで受付嬢が今まで黙って見てた焦げ茶色でレザー系の服とも防具とも取れる服装の青年を示して来た。
その青年…はおずおずといった感じで会釈してきたのでこっちも軽く返事する。
…んだけど、こいつどっかで見たことあるような……?

「あの…昨日、森で会いました」

「昨日…あぁ、あの見習い少年か」

「少年じゃ無いです!これでも17です!」

だって顔がかなり童顔だし、屈んでたし、てか17って実際どっちなんだ?
いや、しかしまさか俺の忘れたい迷(ryを知る人物と再会するとは…
しかし、確かにこうみれば背もそこそこ高いし青年らしく見えるな。

「っと…だけど、いくら貴重だからってなんで俺が一緒に行くことになるんだ?危険な所ならそもそも見習いクラスには渡さないだろうし」

話もそこそこに、気になることを聞いてみた。
仕事があるのはいいけど、あれもこれもと簡単に受けていたら身が持たないからなぁ。
それに、何で来たばかりの俺にわざわざ振ってくるのかも気になる。

「それは、紅鱗束草の調達場所を見ていただければ分かりますよ?依頼詳細に書いてありますから」

「場所?……………げ…」



依頼詳細、調達場所…退廃の古城・裏庭、朽ちた菜園。



一瞬で分かっちまったよ、理由…

「つまり…俺にまたあの廃墟に行けと?」

「その通りです。あの場所で報告にあったようなヴァンパイアに会ったのなら、何があるか分りませんから」

「むぅ…しかし、なら別に今行かなくても良いんじゃないか?」

「残念ながら急ぎの依頼でして」

「ぅぅむ……ん?急ぎ?」

昼間には着くとはいえ、あの少女にまた遭遇するのは躊躇われる。
今思えば、日が出てる間の時でも様子見な感じがしてならない。
…まぁ、それは俺も同じだったし結局最後まで戦わなかったからあんまり分からんけど。
しかし、急ぎの依頼というのが気になった。

「いえ、どこかの商人が急に持ってきた依頼なんですけどね。なんか今なら高額で売り捌けるから急いで集めて欲しいって。報酬見てみたら分かりますよ?」

「どれどれ…………マジか」

なんかこの手の依頼につく筈のない金額が書かれていた。
それこそ昨日の古城調査の三倍以上、旅の消耗品をすべて買い替えても余る額だった。

「え?いいのこれ?こんなに貰っちゃって?」

「受けるんなら二人で報酬分けてくださいね」

ふむ…半分にしても十分事足りるし、そんなに贅沢する気も無いし…
しかし、下手するとまた遭遇する可能性もある訳で…

「うぅむ…」

「えぇっと…」

「……………………………………………………………………早くしないと夜になりますよ?(ボソ」

「受けます。受けさせてください。資金は大切なんです」

即座に決めた。
決して金額の誘惑に負けたとか夜に戦ったら今度こそどうなるか分からないからとか受付嬢が一瞬マジで怖かったからとかではない。
断じて無い。
こら、そこの少年モドキ、何苦笑してんだ…はぁ……

「良かったですねシン君。これでどうやら君の目的も達成出来そうですよ?」

「あ、はい。なんか、毎回ありがとうございます」

「良いんですよ。駆け出しの頃は勢いも大事ですし」

「うぅ…と、受けるとなればパートナーは大事だよなぁ」

なんか談笑されてたけど復活することにした。
ついでに改めて自己紹介もしておこうと思いウィルと呼ばれた青年に向きなおる。

「とりあえず、シュウ・クロムウェルだ。ただの旅人さ」

「シン・ライナットです。今は見習い冒険者って昨日言いましたよねι」

「まぁな〜…さてと、自己紹介も済んだ事だしとっとと行くかな」

「え、今から行くんですか?」

「早いうちの方が良いだろ、こういうのは。それに真昼間なら出会うことも無いと思うし」

「その前にサインお願いしますね?」

ぐっと体を伸ばしウィルを連れてギルドを出る事にしたけど危うく契約サインを忘れるところした……危ない危ない…

「え〜っと…シュウ・クロムウェルっと…っと、ほい」

「あ…シン…ライナット……できました」

「はい、それでは頑張って下さいね」

サインを受け取りニコ、ペコリっという擬音が付きそうなくらいの笑顔とお辞儀であった。
………やっぱりポニーテールだった。

「ま、問題ないかな…んじゃ行きますか」

シンに声を掛け、今度こそギルドから出ていく。




ま、何とかなるだろう。
あんなハプニング何回もあるわけ無いし。





















「………それがどうして、こうなったんだろう」

辺りを見回してみて、思わずがくりと視線を下に向けてしまいます。
周りを見ても木に草に茂みに蔦に花にといつもどうりの森林の景色で自分以外に誰もいないし。
ついでに言うと道からも逸れてしまってこの森に慣れている僕でも現在位置が曖昧になってるのも痛いかなぁ。

「少しトイレに行っただけで、何でホーネットの住み家にたどり着くんだろ……それにシュウさん大丈夫かな?」

少しの間一緒に逃げ回ってたけど途中で囮になってくれただけに、心配してしまう。
本人は大丈夫大丈夫って言ってたけどちょっと顔が引き攣ってたし。
…合流できたら、ちゃんと謝っておこう……まぁ


現状=森の一角、途方に暮れるシン・ライナットの図。
なんて事になってるんだけどね。


「とりあえず歩こうかな…開けた場所に出ればもしかしたらあの城が見えるかもしれないし」

一応、周りを確認してから隠れていた大きな茂みから出てみる。
……やっぱり何も居ない。

「……大丈夫、かな?」

あんまり手荒な事は苦手だし、とにかく気をつけよ…
それに…

「出来るならあんまり使いたくはないしなぁ…」

腰に下げている二つのホルダーの留め具を外してしまっているものに触れる。
うーん…少し重いし……まぁいいや、進もう…

「こっち、かな?」

適当に歩き出してみる。
これで全然見当違いなら嫌だなぁ………そういえばあの人、前に迷子になってたけど本当に大丈夫かな?
この森、ちゃんとした道とかにはあまりいないけど少し奥の方に入ったりすると思った以上に魔物が居るし。
駆け出しのころはゴブリンとかワーウルフとかに追いかけられたりしたなぁ。
最近は慣れてきたけど、それでもさっきみたいにホーネットの巣に着いたりワーキャットが寝てたりコカトリスに石にされたりもした。
あとは、アルラウネに会ったり……そういえばマンティスにも遭遇したっけ?
…こう考えると、よく今まで無事に帰ってこれてたなぁ。
きっと一歩間違えたらお持ち帰りされてたろうし、もしかして悪運強いのかな?

「なんて、だったらそもそも出会わないよね………そういえば、前にも同じような状況になったっけ?」

まだそんなに経ってないはずなのに今日は色々懐かしく感じるな、本当に。
確かあれは…ゴブリンに追いかけられた後だったかな?
とにかく逃げて隠れて、なんとか逃げ切ったんだけど道に迷って…それから……
それから……何かに足を取られて…

「取られて…あれ……気づいたら倒れてて……頭痛くてだるくて…?」

何か、ひっかかるな……他になにかあった気が…

「うーん………あ」

色々と考え事をしているといつの間にか比較的に開けた場所に出ていた。

「…まぁいいや。とりあえず……」




ミ イ ツ ケ タ




「え?」















「ぜぇ、はぁ、はぁ…」

さ、流石に疲れたι
今までずっと追って来るホーネットを気絶させたり隠れたりしながら逃げてきたけど、もう無理;
なんとか廃城の門の内側に逃げ込んで事なきを得たけど…もう少し隠れていた方がいいな…

「はぁ、はぁ……ふぅ」

深呼吸深呼吸…

「………はぁ…あ〜、そいえばアイツ大丈夫だろうな…」

途中で別れたけど実際かなり心配だな…
なんていうか…まっ先に捕まりそうだし。
それでなくてもさっきの原因はシンだしな、うぅむ…

「まぁ、とりあえずは目的の場所を見てみるか」

疲れた体を多少引きづりながら城を迂回してそのまま裏手に回っていくことにした。
……大丈夫、居ない居ない…

「っと、ここが裏庭か…てことは目的の草はあっち、か?」

しばらく壁にそって進むと花壇の多い場所にでたので適当にあたりをつけて進んでみることにする。
にしても、やっぱりここも廃れてるな…さてと、たしかこっちで合ってるはずっと…
更に少し、奥まった場所に進むと何か一面赤くなってる場所に辿りついた。

「…ここ、か?………やっぱりまだ来てないか」

ざっと辺りを見回してみるけど自分以外に誰かいる気配がない。
さて、どうするかな…

「…まずは草を取っておくか。取ってる間に来るかもしれないし、もしすれ違っても無くなってたら気づくだろうし」

という訳でこの、これだよな?……紅鱗束草をってうわ、よく見ると刺々しいなこれ…
えーと、引っこ抜けばいいんだよな……よっとってイタタ……刺さるし…てかこれ幾つ取れば良いんだよ…
とりあえず持ってきた袋に入れてと…はぁ……手袋でも持ってくれば良かった…





…………………………………………一時間後………………………………………





「遅い。そして手が痛い」

なんか適当に時間が飛んだ気がするが手が痛いので流すことにする。
しかし遅い……もしかして捕まったか?………ご愁傷様に…
こんなことになるなら片っぱしから草むしりしてないで探しに行けばよかったかな……
いや、そもそも離れないで逃げれば良かったか?
まぁ今考えても仕方ないか…

「犠牲は無駄にはしないさ、せめて報酬の五分n「あ、やっとたどり着いた」………おー無事だったかー」

「え、なんでそんなに棒読みなんですか?ι」

がさがさと生い茂ってる茂みから現れるシン。
………………うん、まぁ無事でよかった。

「気にするな。それより遅かったな」

「ちょっと、必死に逃げすぎて道に迷ってしまってι……なんか手が痛々しいんですけど大丈夫ですか?」

「いや、少し赤鱗束草を取るときにな…」

「あぁー、そういえば手袋用意してたんですけど…本当にすみませんι」

「…………まぁ、気にしなくても大丈夫さこのくらい」

実際は痛いけどな……

「あれ、ていう事はもしかしてもう集め終わってます?」

「だいたいはな。これだけあれば十分ってくらいは取ったぞ」

「………すみませんです;」

「運が悪かっただけだからあまり気にするな…………」

「はい…………」

「……………………」

「………………………………」

「…………………………………………」

「……………………………………………………」

「………………………………………………………………(クイクイ

「……………………………………………………………………………………;」

「……………………………………………………………………………………………なぁ」

「……………………はいι」

「…………その後ろの子、誰?」

「えー、と……………あー……その…うん……この子は…………」

「この子は?」




「……命の恩人、兼…………恋人、です」




え………………………………?









え…………?



fin…?
11/05/05 01:43更新 / 黒夢
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■作者メッセージ
やっとだ…やっと二話目だ…

「遅い、粗い、空白多いの三拍子だがな」

う…まぁ気にするな主人公一号
…どうもスミマセンでしたorz

「はぁ…まて、一号ってどういう意m」

では皆さん、よんで頂きありがとうございました!

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