どっぺりげんがーだよっ
「はぁ・・・エリカさん・・・きれいだなぁ・・・」
とある学校で、青年、ユイトは授業中にもかかわらず溜息が尽きなかった。
教室の机について教科書を机に立て、授業を受けるふりをしながら眺めているのは、校庭で体育の授業で汗を流す学園のマドンナ、サキュバスの「エリカ」である。全男子の羨望の的である彼女に、当然のごとくユイトも執心中だった。
「むぅ〜〜〜〜〜」
その隣で、夏の暑さかはたまた別の要因があるのか、ユイトの幼馴染であるスライムのアイが溶けかかりながら不平を漏らしていた。
「ん?どしたアイ」
「じゅ〜ぎょ〜う〜」
「別にこんなもん受けなくてもだいじょーぶだいじょー・・・」
「後ろの二人。私語は慎んでください」
「「すいません・・・」」
『お前のせいでおこられただろ!』
「え〜!わたしのせいじゃないよ〜〜〜!!」
ぷるん、と体を揺らしながらまったく声量を変えずアイが反論する。
「ばっかお前!声でけぇって!」
「「あ」」
きらりと教師の眼鏡が光っていた。
「・・・廊下に、立ってましょうか。あなたたち」
「「はーい・・・」」
そして授業が終わり、最終授業だったためすぐさま放課後に有難いお説教を受けた二人は、見事にぐったりとしていた。
「・・・帰るか」
「そだねぇ」
そして、手を繋ぎ(めり込ませ?)ながら二人は校舎の中を帰っていく。
「ったく・・・今日は散々だよ・・・」
「でも、ユーくんもわるいよ!女の人ばっかりみて!」
「ばっ!?ちげーよ! ってかお前こそ授業受けずに外見てたんじゃねえか!」
「ち、ちがうよぉ〜。あれはユーくんを・・・あっ」
「え?なんで俺?」
「な、なんでもないぃ〜」
慌てたアイが廊下を玄関とは逆方向に走って(滑って?)行く。
「あ、おい」
思わず、ユイトも駆け出し、中庭へと逃げたアイをなんとか捕まえる。
「はーなーしーてー!」
「ああもう、駄々こねんなって、よくわからんが聞かなかった事にしとくから帰るぞ」
「う〜〜〜」
そしてアイの体を掴んで帰ろうとしていたユイトの耳に、よく知っている声が聞こえた。
「ほ、ホントにいいの?エリカさん・・・?」
「ええ、今日の授業でのあなたの活躍に感動してしまって・・・体の疼きが止められないんです・・・。ですから・・・どうか!」
そこにいたのは、別のクラスの男子と、学園のマドンナ、エリカ。
その二人は人目につくかもしれない場所でありながら、既に下着だけになっており、これから行われる行為を、ユイトの頭の中に容易に想像させた。
「?ユーくん?どしたの〜」
「いや、なんでも・・・ない・・・」
「ん〜?」
そして、アイもユイトの視線に釣られて二人を発見する。
「あ、エリカさんと・・・だれ?・・・あわわ」
アイの全身が少し赤くなる。
「っ!」
アイが口にして表したことで、完成させたくなかった想像が、ユイトの頭の中で完全にできあがる。
そして、アイの体から手を引っこ抜き、玄関へと駆け出した。
「ま、まってええ〜〜」
その後、ユイトを心配したアイがユイトの家を訪問するが、気分が優れないから会えない、というのをユイトの母から告げられ、入れてもらうことはできなかった。
「・・・よ〜しっ」
その夜、9時を過ぎ、ユイトが自室でふてくされていた頃。
「〜♪〜♪〜♪」
アイはユイト家の屋根に上り、その瓦の隙間から少しずつその部屋をめがけて染み込み始めていた。
ペト・・・ペト・・・
「・・・ん?」
うつ伏せのままのユイトには、それが何の音なのかはわからない。しかし、そんなことはどうでもよく、今はただ悲しみに打ちひしがれたいユイトは顔を上げない。
ベチャ!
ひときわ大きな塊が落ち、大きな音が鳴る。
「な、なんだなんだ!?」
これにはさすがにユイトも構わずにはいられずとび起きる。
そこにいたのは・・・
「ユーく・・・ユイト君・・・」
憧れのエリカさんにそっくりに
「きょう・・・今日の事はごめんなさい・・・」
「何やってんだアイ?」
なろうとして失敗した見覚えのある液状の物体がいた。
「わ、私はスライムのアイなどではありません!エリカで
す!」
「いやいやいや・・・いろいろ違いすぎるだろ・・・」
「じゃ、じゃあどっぺりげんがーですっ」
「・・・なんだって?」
「どっぺりげんがー!」
「俺が知ってるのはドッペルゲンガーなわけだが?」
ドッペルゲンガーといえば男の理想形の女性に化ける魔物、という程度の認識しかないユイトとはいえ、名前を間違えることはない。
「・・・う」
「とりあえず戻れ、話はそれからだ」
「あい・・・」
一瞬どろっと液化したかと思うと、いつものアイの姿へと戻る。
「さて、なんでこんなことをしたのか教えてもらおうか?」
「ユーくんがかなしそうだったから・・・」
「んで、なんでエリカさんなんだ?」
「だってユーくんがよくみてて・・・。すきなんでしょ?」
「・・・別に好きってわけじゃなかったさ・・・憧れだっただけで・・・ショックはでかかったけど・・・」
「そーなの?」
「まあ、ありがとな」
「う、うん///」
お礼を言うユイトの笑顔に、思わずアイは赤面してしまう。
「でも、アイって、さ。ほんとにいいやつだよな」
「ふぇ?」
「俺にばっか関わってなけりゃ、男子からも人気なんだぜ?」
「へ〜〜」
「好きなやつとかいねえの?」
アイが突然ぽかん、とした表情で見つめる。
「ユーくんだよ?」
今度はユイトが少し赤面する。
「いや、そゆんじゃなく、あー。恋みたいな感じの」
「だから、ユーくんだよ?」
ユイトの顔が赤みを増していく。そして、アイも自分の発言の重大さに気づいていく。
「あ、えとね///だからわたしはユーくんが」
「いや、わかったからっ これ以上言わなくていいっ」
お互い、気まずい空気になるが、それは決して不快なものではなかった。
「あの、さ」
「うん」
「俺は・・・。いや、俺もその」
「うん///」(ウズウズ
「お前の事・・・」
「ユーくぅぅぅぅぅん!!!!」(ダバーッ!!
「ちょ、ちょっと待っ!?」
凄まじい勢いで液化したアイに、ユイトが飲み込まれる。
「ごぼっ・・・」
「ちゅー♪」
キスというには、あまりに全身を密着させすぎてはいるが
苦しむユイトの顔にも、どこか安らかな表情が・・・
「ん・・・んぐ・・・」
「わーーーー!ユーくーん!」
数時間後、意識を取り戻したユイトにたっぷりと叱られ(+etc...
晴れて二人は幼馴染からカップルへとなっていった。
数日後。
「あら、確かユイトさん。でしたね。おはようございます」
アイと二人で登校中だったユイトは、エリカに出会う。
「あ、ども・・・っす」
「んふー♪ユーくぅん♪」
アイは一緒に歩くというより、体全体にまとわり着きながら甘えた声を出している。
「あなたは・・・確かアイさんでしたね。おはようございます。仲がよろしくて羨ましいですわ」
にっこりとアイにも微笑みかけるエリカ。
「んふー♪・・・・・・あ、えりかさんだー」
「ええ、おはようございます」
眼中になかったことすら咎めず、またも礼儀正しく挨拶をする。
そのままいくつかの雑談を交わしつつユイト達は学校の正門へとたどり着いた。生徒が入るピークの時間であるため、周囲には大量の生徒がいた。
「では、ここでお別れですね」
優雅に手を振ってエリカが去っていく。
その背中に
「えりかさーん」
微笑みを絶やさず振り向いたその顔に
「ありがとーございました♪」
理解ができず愛想笑いしたその笑顔に
「このまえなかにわでエッチしててくれて、ユーくんとなかよくなれました!」
ありがとー!と一際大きな声で締めくくった。
正門に集まった大量の生徒のど真ん中で、笑顔をまったく崩さないまま
マダムという称号とともに地に崩れ落ちたのは言うまでもない。
その後は別のファンクラブが出来たといううわさもあったとか。
「ユーくーん。だいすきだよー♪」
「ああもう!俺もだって何回も言ってんだろこのやろう!恥ずかしからやめろって!」
ところ構わずいちゃつくユイト達には、常に羨望と妬みのまなざしがあったとかなかったとか・・・
とある学校で、青年、ユイトは授業中にもかかわらず溜息が尽きなかった。
教室の机について教科書を机に立て、授業を受けるふりをしながら眺めているのは、校庭で体育の授業で汗を流す学園のマドンナ、サキュバスの「エリカ」である。全男子の羨望の的である彼女に、当然のごとくユイトも執心中だった。
「むぅ〜〜〜〜〜」
その隣で、夏の暑さかはたまた別の要因があるのか、ユイトの幼馴染であるスライムのアイが溶けかかりながら不平を漏らしていた。
「ん?どしたアイ」
「じゅ〜ぎょ〜う〜」
「別にこんなもん受けなくてもだいじょーぶだいじょー・・・」
「後ろの二人。私語は慎んでください」
「「すいません・・・」」
『お前のせいでおこられただろ!』
「え〜!わたしのせいじゃないよ〜〜〜!!」
ぷるん、と体を揺らしながらまったく声量を変えずアイが反論する。
「ばっかお前!声でけぇって!」
「「あ」」
きらりと教師の眼鏡が光っていた。
「・・・廊下に、立ってましょうか。あなたたち」
「「はーい・・・」」
そして授業が終わり、最終授業だったためすぐさま放課後に有難いお説教を受けた二人は、見事にぐったりとしていた。
「・・・帰るか」
「そだねぇ」
そして、手を繋ぎ(めり込ませ?)ながら二人は校舎の中を帰っていく。
「ったく・・・今日は散々だよ・・・」
「でも、ユーくんもわるいよ!女の人ばっかりみて!」
「ばっ!?ちげーよ! ってかお前こそ授業受けずに外見てたんじゃねえか!」
「ち、ちがうよぉ〜。あれはユーくんを・・・あっ」
「え?なんで俺?」
「な、なんでもないぃ〜」
慌てたアイが廊下を玄関とは逆方向に走って(滑って?)行く。
「あ、おい」
思わず、ユイトも駆け出し、中庭へと逃げたアイをなんとか捕まえる。
「はーなーしーてー!」
「ああもう、駄々こねんなって、よくわからんが聞かなかった事にしとくから帰るぞ」
「う〜〜〜」
そしてアイの体を掴んで帰ろうとしていたユイトの耳に、よく知っている声が聞こえた。
「ほ、ホントにいいの?エリカさん・・・?」
「ええ、今日の授業でのあなたの活躍に感動してしまって・・・体の疼きが止められないんです・・・。ですから・・・どうか!」
そこにいたのは、別のクラスの男子と、学園のマドンナ、エリカ。
その二人は人目につくかもしれない場所でありながら、既に下着だけになっており、これから行われる行為を、ユイトの頭の中に容易に想像させた。
「?ユーくん?どしたの〜」
「いや、なんでも・・・ない・・・」
「ん〜?」
そして、アイもユイトの視線に釣られて二人を発見する。
「あ、エリカさんと・・・だれ?・・・あわわ」
アイの全身が少し赤くなる。
「っ!」
アイが口にして表したことで、完成させたくなかった想像が、ユイトの頭の中で完全にできあがる。
そして、アイの体から手を引っこ抜き、玄関へと駆け出した。
「ま、まってええ〜〜」
その後、ユイトを心配したアイがユイトの家を訪問するが、気分が優れないから会えない、というのをユイトの母から告げられ、入れてもらうことはできなかった。
「・・・よ〜しっ」
その夜、9時を過ぎ、ユイトが自室でふてくされていた頃。
「〜♪〜♪〜♪」
アイはユイト家の屋根に上り、その瓦の隙間から少しずつその部屋をめがけて染み込み始めていた。
ペト・・・ペト・・・
「・・・ん?」
うつ伏せのままのユイトには、それが何の音なのかはわからない。しかし、そんなことはどうでもよく、今はただ悲しみに打ちひしがれたいユイトは顔を上げない。
ベチャ!
ひときわ大きな塊が落ち、大きな音が鳴る。
「な、なんだなんだ!?」
これにはさすがにユイトも構わずにはいられずとび起きる。
そこにいたのは・・・
「ユーく・・・ユイト君・・・」
憧れのエリカさんにそっくりに
「きょう・・・今日の事はごめんなさい・・・」
「何やってんだアイ?」
なろうとして失敗した見覚えのある液状の物体がいた。
「わ、私はスライムのアイなどではありません!エリカで
す!」
「いやいやいや・・・いろいろ違いすぎるだろ・・・」
「じゃ、じゃあどっぺりげんがーですっ」
「・・・なんだって?」
「どっぺりげんがー!」
「俺が知ってるのはドッペルゲンガーなわけだが?」
ドッペルゲンガーといえば男の理想形の女性に化ける魔物、という程度の認識しかないユイトとはいえ、名前を間違えることはない。
「・・・う」
「とりあえず戻れ、話はそれからだ」
「あい・・・」
一瞬どろっと液化したかと思うと、いつものアイの姿へと戻る。
「さて、なんでこんなことをしたのか教えてもらおうか?」
「ユーくんがかなしそうだったから・・・」
「んで、なんでエリカさんなんだ?」
「だってユーくんがよくみてて・・・。すきなんでしょ?」
「・・・別に好きってわけじゃなかったさ・・・憧れだっただけで・・・ショックはでかかったけど・・・」
「そーなの?」
「まあ、ありがとな」
「う、うん///」
お礼を言うユイトの笑顔に、思わずアイは赤面してしまう。
「でも、アイって、さ。ほんとにいいやつだよな」
「ふぇ?」
「俺にばっか関わってなけりゃ、男子からも人気なんだぜ?」
「へ〜〜」
「好きなやつとかいねえの?」
アイが突然ぽかん、とした表情で見つめる。
「ユーくんだよ?」
今度はユイトが少し赤面する。
「いや、そゆんじゃなく、あー。恋みたいな感じの」
「だから、ユーくんだよ?」
ユイトの顔が赤みを増していく。そして、アイも自分の発言の重大さに気づいていく。
「あ、えとね///だからわたしはユーくんが」
「いや、わかったからっ これ以上言わなくていいっ」
お互い、気まずい空気になるが、それは決して不快なものではなかった。
「あの、さ」
「うん」
「俺は・・・。いや、俺もその」
「うん///」(ウズウズ
「お前の事・・・」
「ユーくぅぅぅぅぅん!!!!」(ダバーッ!!
「ちょ、ちょっと待っ!?」
凄まじい勢いで液化したアイに、ユイトが飲み込まれる。
「ごぼっ・・・」
「ちゅー♪」
キスというには、あまりに全身を密着させすぎてはいるが
苦しむユイトの顔にも、どこか安らかな表情が・・・
「ん・・・んぐ・・・」
「わーーーー!ユーくーん!」
数時間後、意識を取り戻したユイトにたっぷりと叱られ(+etc...
晴れて二人は幼馴染からカップルへとなっていった。
数日後。
「あら、確かユイトさん。でしたね。おはようございます」
アイと二人で登校中だったユイトは、エリカに出会う。
「あ、ども・・・っす」
「んふー♪ユーくぅん♪」
アイは一緒に歩くというより、体全体にまとわり着きながら甘えた声を出している。
「あなたは・・・確かアイさんでしたね。おはようございます。仲がよろしくて羨ましいですわ」
にっこりとアイにも微笑みかけるエリカ。
「んふー♪・・・・・・あ、えりかさんだー」
「ええ、おはようございます」
眼中になかったことすら咎めず、またも礼儀正しく挨拶をする。
そのままいくつかの雑談を交わしつつユイト達は学校の正門へとたどり着いた。生徒が入るピークの時間であるため、周囲には大量の生徒がいた。
「では、ここでお別れですね」
優雅に手を振ってエリカが去っていく。
その背中に
「えりかさーん」
微笑みを絶やさず振り向いたその顔に
「ありがとーございました♪」
理解ができず愛想笑いしたその笑顔に
「このまえなかにわでエッチしててくれて、ユーくんとなかよくなれました!」
ありがとー!と一際大きな声で締めくくった。
正門に集まった大量の生徒のど真ん中で、笑顔をまったく崩さないまま
マダムという称号とともに地に崩れ落ちたのは言うまでもない。
その後は別のファンクラブが出来たといううわさもあったとか。
「ユーくーん。だいすきだよー♪」
「ああもう!俺もだって何回も言ってんだろこのやろう!恥ずかしからやめろって!」
ところ構わずいちゃつくユイト達には、常に羨望と妬みのまなざしがあったとかなかったとか・・・
11/04/19 19:43更新 / 機械人形