連載小説
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第三の研究!
「あん? ここぁ、どこだぁ? ……まぁいいかもう一回寝よう」

鉄の檻の中に、一匹のオーガが捕えられていた!
手足には枷をはめられ、脱出もままならない!
檻の外には一人の男が立っていた!

フハハハハハハハハ! そうやって余裕でいられるのも今のうちだぞぉ! 神に見放されし下劣な悪魔どもよぉ! フハハハハハハハハハ!

男は、自らの白衣を翻し、魔物に対して威圧的な雰囲気で高らかに笑った!

「あ? なんだいアンタ。新しいご近所さんかい?」

魔物が男に向かって尋ねる!

フハハハハハハハハハハハ! ワガハイがご近所さんだとぉ? アホウがぁ!  ワガハイは誇りある教団騎士の、そのうえ上級幹部の一員であるぞぉ! キサマを生かしておいたのは、ワガハイがこの国における教団騎士団魔物対策技術研究班第一責任者であるからだぁ! キサマはワガハイの魔物研究の実験材料になるのだぁ!! ブァーッハハハハハハハハハハハハハハハハ! ゲホッ!ゲホッ!……ハハハハハハハハ!

なんと教団騎士!
あの、すべての魔物に神の鉄槌を下さんとする、教団騎士!
しかもそのうえ、上級幹部!
オーガの不利は火を見るより明らか!

「え? 何か言った? とりあえずもう帰るつもりだけど」

なんと予想外!
あっさりと拘束を解いてしまっている!
ひしゃげた拘束具が彼女の力量を明示している!

ハァ!? そんなバカなぁ!!? その枷はワガハイ特注の拘束具だぁ! 並大抵の力で壊れるようには設計されてはいなぁいぃ! 強度が足りなかったというのかぁ! ゲッホゲホ! ウエッホ!びっくりしすぎてのどが……

完全に予想を裏切られた!
これは、彼の想定が甘かったせいだろうか!
いや、違う!
新世代のデータが集めきれていない今、彼を責めることなど誰にもできない!
この失敗経験もまた研究なのだから!

「じゃ、そういうことでぇー」

オーガは、すでに鉄格子もひん曲げて、檻から脱出している!
力自慢の魔物、恐るべし!
すごいぞ魔物!
かっこいいぞ魔物!

「ま、まてぇいぃ! ここで逃がすわけには……! イカァァァァァァァァァァン!

響き渡る教(略)責任者の雄叫び!
腐っても魔物研究の第一人者!
懐から取り出すのは、一本の注射器!

注射の時間だぁ! 観念するがいいぃ!

素早くオーガに飛びつき、注射器を刺す!
そして薬液を注入!
一体何をしたというのか!

「あっ!? アンタ何を……ふぁ……んぁ……体が……熱ぅ……♥」

な、なんということか!
オーガが地に膝を着き、倒れこんでしまったではないか!
口からは、彼女自身の発情を示す吐息と声が漏れている!
これは、いったい!

「ふぅ……ふぅ……フハハ! 失敗を成功に変えるのも、魔研の信条よぉ! 今、キサマに注射したのはこれだぁ! ワガハイ特製、精液麻酔ぃ! 精液も、多すぎれば媚薬となり、魔物の力となるぅ! だがぁ! 分量さえ間違えなければ、確実に魔物の戦意を削げる、恐ろしい武器になるのだぁ!」

なんと!
これはまさしく、以前にあのサキュバスから聞いた弱点!
精液爆弾投下の失敗を、転じて有効な武器に変えた!
これこそが教(略)者の実力!
伊達に上級幹部を名乗っていない!

「はぁん……らめぇ……耐えられないよぉ……♥ ……オトコ……オトコガホシイイイイイイ!

だが、普通に分量を間違えていた!
戦意喪失どころか、逆に暴走しかけている!

なにぃ!? この濃度では媚薬になってしまうというのかぁ! おのれぇ! オーガ種は精液に対する耐性が低いのかぁ!? だがぁ! 諦めるわけにはぁ!」

やはり、圧倒的に経験値が足りない!
猛牛と化したオーガの前に立ちはだかる責任者!
止められるのか責任者!

グッホォアァ!!

あぁー!
やっぱりだめだった!
いかに百戦錬磨のつわものといえど、魔物の力には適わない!
吹き飛ぶ責任者!

オトコオオオオオオォォォォォォォォォォ…… アンタ、オイシソウ! オモチカエリイイイイイ!

研究室から飛び出し、廊下を疾駆するオーガ!
途中にいた、警備兵をお持ち帰りするのも忘れない!
またも捕まえた魔物を逃がしてしまった!

くそおおおおおおおおおおおおおおおお! 貴重な実験サンプルがああああああああああああ! ケホッ! ケホッ! カハッ! のどが……のどの調子がぁ……

悔しさのあまり咆哮!
しかし、のどのダメージが深刻だ!
大丈夫か責任者!
しっかり休め責任者!


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「ふむ、気を取り直すとしようぅ」

のど飴を舐めながら椅子に座りなおす責任者!

「サンプルが逃げたのは、確かに惜しいぃ。だが、ワガハイは過ぎたことは悔やまぬぅ。今日のミスは明日の成功だぁ。とにかく、今までの資料を見返すのだぁ。何か手がかりがつかめるやもしれぇんぅ」

さすが責任者!
立ち直るのも早いぞ!
手元の資料を見返す責任者!
何か習性はつかめたのか!

「とにかく、ヤツラめ男と見れば見境なしだぁ……すでに前線兵士どもは、魔物どもによって性的に襲われたり、誘惑に負けて性的に襲わせられたりしているぅ。教団は色恋に関して厳しいからなぁ。兵士どもが女性に弱いのは、どうしようもあるまいぃ」

さすが研究者!
現状の正確な把握はお手の物だ!

「ふむぅ……男ぉ……かぁ……」

机に足をのせて、椅子に思い切り背を預ける!
宙を見つめて、何やら思案している!

「そういえばぁ……”勇者育成計画”なぞというものがあったなぁ……」

勇者育成計画!
なにやら怪しげな計画だ!
まだ提案の段階である、その計画書を読む!
中には老若男女問わず、さまざまな勇者候補の名が!
そのとき、男の目が見開いた!

そうかぁ! これだぁ! この手があったぁ!

椅子を弾き飛ばし、思い切り立ち上がった!
照明に反射し、男のメガネが怪しく光る!

「見ていろよぉ! 魔物娘ぇ! ワガハイは今ぁ! キサマラの攻略法を思いついたぁ! 待っていろよぉ! 必ずツケを払わせるからなぁ! フフ…… ハハハ…… ハァーッハッハッハッハッハハハハハハハハハハァ!!! ハァーッハッハッハッハッハッハハハハハハハハァ!

勝利を確信し、狂喜に打ち震えて、笑い声をあげる!
今度こそ、彼は勝利を掴めるのか!

ハァーッハッハッハ…… ゲェーッホ!! ゲッホ! ゲッホ! ウェェーッホゥ! ガッ!? カッ……!? 飴が……! 飴がのどに詰まった……! 誰か…… 助けてぇ……

その前に、彼は助かるのだろうか!


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


前線基地!
魔王軍の侵攻を受け止める、人類の防波堤!
魔王軍と教団騎士団がメンチを切りあうその戦場!
その前線基地の砦の上に、あの男が立っていた!

フハハハハハハハハハハハハハハハハァ! やってきたぞぉ! 魔王軍めぇ! 今日はワガハイ直々にぃ! 出陣してきたぞぉ!

尖塔の上で戦場を見下ろし、高らかに叫ぶ!
白衣が風になびいて、旗のようだ!
そして広いから声もよく響く!
さすが上級幹部!
納得の威厳だ!

いつもと同じ、と侮るなよぉ! 今日の兵どもはいつもと違うぞぉ! 何せワガハイが思いついた、必勝の策を施したのだからなぁ!

必勝の策!
それはいったいなんなのだろうか!

では、行くぞぉ! 教団騎士団特別女性部隊ぃ! 出陣ぅ!

そう叫ぶと、陣から出撃してきたのは、女性だけで構成された騎士団だ!
これはいったい!

フハハ! 新世代の魔物はぁ! 人間の男性を相手取ることに特化しているぅ! 精を絞りぃ! 誘惑しぃ! 魔へ誘うことを得意とするぅ! だがぁ! その姿も技もぉ! 所詮は男性に効果的というだけの話ぃ! ならばぁ! こちらも女性であるならばぁ! 誘惑の術もぉ! その魅惑の容姿もぉ! 吸精の術もぉ! なんら問題はなぁいぃ! さぁ、無様に這いつくばれぇ! ハァーッハッハッハッハッハッハッハッハァ!!

な、なんという発想の転換!
相手が女で、男女のまぐわいが得意なら、いっそ女をぶつけてしまえ!
これこそが彼の真骨頂!
薬を転じて毒となし、強みも転じて弱みとする!
すごいぞ教団騎士団魔物対策技術研究班第一責任者!
今日の彼は一味違う!
のどの調子も絶好調だ!

ホラホラホラァ! いつもの精彩はどうしたぁ? 動きにキレがないぞぉ? あがけあがけぇ! 彼女らはキサマラ魔物娘とは違ぁうぅ! 神に仕えし淑女なのだからなぁ! 爛れた『性』活を送るキサマラなんぞに負けるはずがぁ……あぁ? どうしたぁ? なぜ止まっているぅ!? 攻撃はどうしたぁ!?」

おお、あれを見よ!
先ほどまで、意気揚々と魔物娘と切り結んでいた女騎士たちの動きが止まっている!
何が起こってしまったのか!
すると!

「……ホッ?  ハァッ!? なななぁ!? オマエ達、なぜ剣を捨てるぅ!?」

なんと、女騎士たちが次々武装解除した!
まさか、催眠か!
その表情は、遠くからではうかがい知れない!
ここからではなぜそうなっているのかわからない!

「こらぁ! 鎧を脱ぐんじゃなぁいぃ!! 魔物娘に体を預けて、何をしようというのだぁ!? やめろぉ! 女同士でのまぐわいなんぞ、不潔だぞぉ! 神への冒涜だぁ! 早く思いとどまるのだぁ! やめっやめろぉ!!

だが、その声届かず!
女騎士たちが見る見るうちに魔物と交わり始めた!

「くぅ〜〜〜!! このままではイカァン! すぐに近くに行きぃ! 様子を見なければぁ!」

慌てて尖塔から降りていく男!
だが、時すでに遅し!
城内に戻ったところで、ボロボロの女騎士が一人駆け寄ってきた!

「魔研責任者様! ……申し訳ありません……我々女騎士団は……壊滅状態です……!」

息も絶え絶えで報告する!

「なぁ!? 壊滅ぅ!? 何故だぁ!! 何故そんなことにぃ!! 何故お前たちは、急に武装解除なぞしたのだぁ!?」

これこそ最大の疑問!
なにゆえ、彼女たちは魔物の前で無防備になってしまったのか!

「そ、それは……戦っている最中……魔物たちが私たちを誘惑してきたのです……私たちと一緒に気持ちよくならないか、と……!」

なんと、誘惑してきたというのだ!
よもや、魔物はレズプレイすら守備範囲内だというのか!

「もちろん、最初は下らぬことだと吐き捨て、戦いました……ですがぁ……そのうちぃ……体があつぅくなってきちゃってぇ……わたしたちぃ、女騎士団はぁ……魔物たちの甘ぁい誘惑に耐えられなくなっちゃったのぉ……♪」

な、なんということだろうか!
鉄の理性を有していたはずの教団騎士ですら、たやすく陥落してしまったのだ!
恐るべし、魔物の誘惑!

「そしたらぁ……魔物たちがぁ……私たちの体に、ぐちょぐちょの魔力を注入してぇ……♥ みぃんな魔物になっちゃったのぉ……♥」

なんと、またしても驚愕の事実!

「ま、魔物化だとぉ!? 聞いていないぞ、そんなことぉ! 反則だぁ!!」

これはまさに新発見!
魔物たちは、人間の女性を魔物娘に変えられるというのだ!
これは、またしても失態を重ねてしまったことになる!
今回の作戦は、魔王軍に騎士団の兵士を味方として差し出してしまったようなものだ!

「そ、それでぇ!? オマエはどうなのだぁ! ちゃんと誘惑に打ち勝ったんだろうなぁ!?」

すぐさま確認する!

「ごめんなさぁい……わたしもぉ……めちゃくちゃにされててぇ……♪ アソコとかぁ……すっごいムズムズしてぇ……耐えられないのぉ……♪ せきにんしゃさまぁ……せーえきちょうだぁい……♥」

なんと、女騎士の首が取れた!
彼女はすでにデュラハンだ!
よく見ると、彼女の後ろにはすっかり多種多様な魔物に変化した女騎士団!

「責任者様ぁ……♥ ワフッ♥ 美味しそうなのぉ……♪ くぅーん……♥」

ワーウルフだ!

「責任者様は私の物にしちゃうんだから……♥ ……ほかの子には絶対渡さない……!」

ラミアだ!

「責任者さぁん……おかしいんです……僕のおちんちんが、いつの間にかなくなっててぇ……」

サキュバス?だ!
そして、その他大勢の魔物!
全員が責任者のことを狙っている!
なぜなら、この戦場にいる男は彼だけだからだ!

いただきまーす♥

そして、一斉に彼の精を目当てに押し寄せてくる!

ヌワァァァァァァァァァ!? くそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ! またもや失敗かぁぁぁぁぁぁ! 次こそは退治してやるからなぁぁぁぁぁぁ! 覚えていろよぉぉぉぉぉぉぉぉ! ゲェーッホ! ゲッホ! ゲッホ! ちくしょう、捕まってたまるかぁぁぁぁぁぁぁ!!

逃げろ責任者!
走れ責任者!
まだまだ教団はおまえを必要としているのだから!
13/12/10 21:30更新 / ねこなべ
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■作者メッセージ
捕まる魔物チョイスは思いつきだ!

それで、オーガを選んだら出落ちになってしまった!

さすがに短すぎたので、出陣編もくっついた!

後方支援も時には前線に立つのです!

たぶん!

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