まもむす相談所〜真っ白あわあわ〜
私のお仕事は建物のお掃除。キャンサーの私にとって、お掃除は天職。汚れが綺麗になっていくのは嬉しい。だから今日も、朝から掃除用具を持ってお仕事を頑張る。今日は建物の中じゃなくて、外の窓を拭く。空を飛べる子がやるお仕事だけど、誰か1人はゴンドラに乗ってその子たちに洗剤を渡したりする役目がある。
「いつもありがとうね。どうにも高い所は苦手でね」
「大丈夫、任せて。多脚は安定感抜群だから」
同じ職場のおばちゃんが申し訳なさそうに言う。私としては、自分の役割が持てて嬉しいから全然気にならない。
ゴンドラに乗るのが今のところ私だけだから、中身は自然と私の仕事しやすいようになっていて、入ると安心さえする。
「今日もよろしくお願いしますね、シレットさん」
「うん。よろしく」
「そういえば、こんな垂れ幕があるんですけど、どうしますか」
ゴンドラで少しビルの屋上から降りると、ブラックハーピーの人が嬉しそうにやってきた。その子が持ってきた垂れ幕には『恋人募集中』って書いてある。
「恥ずかしいから……やめとく」
「わかりました。じゃあ私つけよっと」
嬉々としてその子は垂れ幕をタスキのようにかけると、私から掃除用具を受け取って仕事に取り掛かった。ここは屋上に近い程の高さだから、地上からあのタスキが見えることは無いと思うから、きっとビルの中にいる人に向けたメッセージなんだと思う。
思った通り窓から男の人に向けてにこやかに手を振りながら片手間に窓を掃除している子を横目に見ながら、私はまじめに仕事しようと気合を入れた。
魔物が魔物娘になって人間が共存してから、随分と時間が経ってる。激しい戦いがあったことは昔の歴史として私も学校で習ったくらいで、私みたいな普通の魔物娘にとってはそれほど大事じゃない内容だった。今大事なこととして教えられているのはどうやって理想の夫を捕まえるかで、私も多くのキャンサーの子達と一緒に勉強した。
私も一般的なキャンサーに漏れず、表情豊かじゃない。だけど人じゃなくて蟹の部分は、まるでメドゥーサみたいに私の気持ちを代弁してくれる。おばちゃんに言わせれば、私程わかりやすい子はそうそういないらしい。
私は自分が出した泡を洗剤代わりにして窓を掃除していく。たまに中で働いている人の様子を見たりするけど、他に働いている子程じゃない。男の人がいれば目にとまるけど、うっかり目が合っちゃうのは恥ずかしいから、本当にちょっと見る程度。
「あの人超イケメンじゃない?」
「ほんとだー。あ、でもダメだ。あそこでマンティスの人がめっちゃこっち睨んでる。たぶん彼女だよ」
「あちゃー、売約済みならダメだ。あ、じゃあさじゃあさ、あっちの人は」
あの子達みたいにはしゃぎながらお仕事するなんて、私にはできない。別に話しかけられれば普通に喋ることはできるんだけど、自分から話しにいくことはやっぱり苦手。
今私がお掃除している窓の中にいる男の人みたいに、呼ばれれば普通に受け答えするけど皆の輪から少し外れた場所で仕事している。それが今の私。
午前中いっぱいかけて一通りのお掃除を終えると、私はゴンドラを上げて屋上に戻った。
「あぁ、ちょうどよかったよ。一緒にお昼行かない?」
「うん」
私がそろそろ終わるだろうと思って来たおばちゃんと合流すると、私は掃除用具をしまってお昼ご飯を一緒に食べることにした。
おばちゃんは人間で、歳は55って言ってた。私が今の会社に入った時からいて、初めて一緒に働いてからずっと私の側にいてくれる。私のことを娘みたいに可愛がってくれていて、この街に来て1人だった私にはとっても嬉しかった。
「シレットちゃんやっぱりそれ好きね」
「うん。しらす定食……おいしい」
ビル内の食堂で私がご飯を食べている向かい側で、おばちゃんはにこやかにそれを見ていた。おばちゃんはいつもそうするからもう慣れたけど、最初の方は見られながら食べるのがとっても恥ずかしかった。
「そういえばシレットちゃん」
「なに」
「シレットちゃんもそろそろ彼氏とかできた?」
「…………ぜんぜん」
「そうなの? シレットちゃんもこっちにきて5ヶ月になるし、魔物娘の子はすぐに彼氏を作ってそのまま結婚するって聞いてたから、てっきりシレットちゃんにも良い人ができたのかと思ったけど」
「おばちゃん、どうして急にそんなこと言うの」
「いや午前中は中の掃除だったんだけどね、新しく結婚相談所ができてたのよ。だからシレットちゃんはどうなのかと思ってね」
「私は……今のところそういう人いない。ぜんぜん」
休みが無いとか平日も日付けが変わるまでお仕事しなきゃいけないとか、そういう世界の本を読んだことあるけど、少なくとも私達がいる世界はそんなことない。だから単純に、私に出会いがないだけ。だって良い人だと思える人がいなかったもん。
「じゃあせっかくだからさ、今日仕事終わったら行ってみたら? 良い出会いがあるかもよ」
「そうかな」
「そうでなくても、相談だけでもしてきたらいいんじゃないかしら」
「ん……おばちゃんが言うなら、行ってみる」
正直あまり気は進まないけれど、こういう時のおばちゃんには逆らえない。
「ようこそまもむす結婚相談所へ!」
私が入り口に足を踏み入れると、受付でハーピーのお姉さんがニコニコ微笑んでいた。
気圧されながら私が周りを見てみると、とっても綺麗な内装だった。柔らかそうなピンク色の絨毯に、汚れ一つ無い綺麗な青い壁紙。照明もちょうど良い明るさになっていて眩しすぎない。
「どうしましたか? こちらへどうぞ」
「あっ、はい」
意識していなかったけど、そんなにぼーっと見とれてしまっていたみたい。促されるまで、私は立ち尽くしていた。
「新規登録の方ですね。まずはこちらの書類へご記入お願いします」
渡された紙には、男性の好みについて細かい項目がたくさんあった。こういう用紙には大抵最後に少しあるだけの自由欄が、この用紙では頻繁に表れているから、皆ちゃんとはっきり好みの人を見据えて来ているのかなって思ってしまう。
「あ、別に全部記入する必要は無いですよ。殆ど記入せずに登録して、運命の出会いを待つ方もいますからね」
「そうなんですか」
大きな蟹の鋏をキリキリいわせながら私が悩んでいると、お姉さんが助け舟を出してくれた。やっぱりこれだけ項目があると、私みたいにスラスラ書けない子が多いらしい。
「はいっ、ご登録ありがとうございます。それでは少ししたら担当の者が参りますので、面談室へどうぞ」
面談室に通されると、そこは机と椅子しかない簡素な部屋だった。どうやら少し防音になっているみたいで、ちゃんと相談したことは外に漏れないようになっているみたい。
「待たせてすまない。私が君の面談を担当させてもらう」
「よろしくお願いします」
私の担当になった人は、口元を布で隠したクノイチだった。左手に光る指輪から、もう結婚している人だってわかる。
「それで君の希望は……なるほど、話をゆっくり聞いてくれる人と、一緒にいて安心できる人か。たしかに、どちらも大切だな」
「私その……あんまり話すのうまくないから」
「そういう子も多いからな。安心するといい、何も問題はないさ。だがすまないな……」
私に向かい合って椅子に座るクノイチのお姉さんは、本当に申し訳なさそうに頭を下げた。
「実は登録していた男性が、ほぼ全員結婚成立してしまってな。今すぐ紹介できそうな人がいない」
「そうなの……あ、いや、大丈夫。そんなに急いでないですから」
正直ホッとしている私がいた。おばちゃんには申し訳ないけど、いきなり結婚を視野に入れて男の人に会うなんてやっぱり恥ずかしいし……魔物娘にしては変わった子だっていうのはわかっているけど、恥ずかしいものは恥ずかしいから。少しずつ仲良くなって、自然に恋人になれたらいいなって思う。
「相手がいなくなるのはこちらとしても商売あがったりだから、早急に人材は確保したいと思っている。だから希望に添えるような男が見つかり次第、連絡したいと思うが、それで良いだろうか」
「……構いません」
「ありがたい。ちなみに、ここは紹介所ではなく相談所だから、何か相談したいことがあればいつでも来てくれて構わない。常時私が対応できるか保証しかねるが、できる限り私が対応しようと思う」
今日はこれ以上できることがなさそうだったから、私は面談室を出ることにした。
魔物娘の友達はいるけれど、最近あんまり会えてない。だから同じ魔物娘として相談できる相手ができて、私は嬉しかった。相談所の入り口で鋏をカチカチ鳴らしていると、ハーピーのお姉さんが笑顔で「いつでも来てくださいねー」って去り際に受付のカウンターから手を振ってくれた。
ここ数日は、おばちゃんがビルの中を掃除して、私が外壁や窓を外から掃除する分担になっていた。だから今日も、私は先日のブラックハーピーの子達と一緒にお仕事する。
今日作業に取り掛かった場所は、この前と違って機密性の高い会社が多いみたいで、どこも窓から会社の中身が見えないようになっている。だからあの子達は不満げな顔をしながら掃除をしていた。
そういえばこの前の掃除の時、恋人を見つけてそのまま結婚して退職した子が1人いたって言っていた。だからそのチャンスを掴み損なった子達にとってみれば再び現れたチャンスだったのに、かわいそうだなと思った。でもだからって『恋人募集中』の垂れ幕をタスキ代わりにしたまま不必要に今日の予定に無い所へ行くのはやめて欲しい。
「ふぅ、今日はもう終わり」
ゴンドラを屋上に引き上げて降りると、私はおばちゃんを探すために辺りを見渡した。今日はおばちゃんきてないみたい。だけど人影を見つけた。
……スンスン、スンスン。
風に乗って送られてきた臭いから、私の嫌いな臭いがした。
掃除用具を一旦置いてその人影に近付くと、それは男の人でタバコを吸っている。私に気付いて一瞬だけこっちを見たけれど、すぐに視線を元の青空に戻していた。
「……あの、タバコ」
「えっ、ああ、掃除の人? 別にここは禁煙じゃないからいいよね」
「そうだけど……」
「なら別にいいでしょ。携帯灰皿もホラ、ちゃんとここにあるし」
「……そうだけど」
目の前にいる男の人は、この前私が見つけた人だった。あの、1人離れたところで仕事をしてた人。
切ったばっかりなんだろうな、短い髪は綺麗に切り揃えられていて、少しつけられているワックスからはほのかにリンゴの匂いがする。だけどそれは、強烈なタバコの臭いと混じり合っちゃって、とても変な臭いになっていた。
スーツを着ているけれど、汚れが目立つ。袖には染みがあるし、ネクタイもだらしなく緩んでいるし、ポケットからはティッシュがはみ出している。しかも顔には無精髭があって、眠たそうに開かれている目のせいでとってもだらしなく見える。
「……な、なんだよ」
いつの間にか睨むような視線になっていたらしく、男の人はちょっとたじろいでいた。
「えっ、ちょ、ちょっとちょっと!」
あわあわ あわあわ あわあわ
気がつくと私は、壁際に彼を追い詰めて逃げられなくした上で、泡を出して彼を洗っていた。
キャンサーの泡はどんな汚れも落とす優れもの。彼についた嫌な臭いと汚れをどんどん落としていく。そうしていくと、彼が持つ彼だけの匂いがわかるようになるの。
「っ!?」
10分程かけて彼を洗うと、ようやく彼の匂いと性を感じることができた。でもその突然の衝撃に、私は思わず固まっちゃった。
強い。強すぎる性。こんなの今まで感じたことがない。
「うわっ……なんだこれ」
ハッとなって彼の顔を見ると、カチカチ鳴っている私の鋏を見て恐ろしいような、でも違う気持ちもあるような、何とも言えない顔をしていた。
「あ……あわあわ、ごめんなさい!」
我に返った私は、すぐに鋏をどけると恥ずかしさで真っ赤になった。初対面の人に向かって、なんてことをしちゃったんだろう。
そのまま彼から逃げるようにしてゴンドラに戻って掃除用具を回収すると、大急ぎでその場を後にした。
お休みの日には、よくおばちゃんとお買い物に行く。今日もその日だったから、おばちゃんの車でちょっと遠出してショッピングモールに来た。
このショッピングモールは私達水棲の魔物娘にとって優しい作りになっていて、所々に水を浴びることができる休憩所がある。ちょっと肌を潤すだけで良い子もいるから、ミストだけ受けることもできる。
「やっぱり水辺の子は濡れてると綺麗だねぇ」
「そうかな」
水滴をキラキラさせながら、水を浴び終えた私がおばちゃんの所へ戻ると、にこやかにそう言われた。
嬉しくて、鋏がぐるぐるとせわしなく動く。
「そういえばシレットちゃん、やっぱり相談所行ってよかったでしょ? 気になる人もできたみたいだし」
「え……どうして……じゃなくて、どういうこと」
お店に入って一緒にうどんを食べようとしたところで、おばちゃんが急にそう言った。びっくりして鋏でテーブルを下からひっくり返すところだった。
「わかるわよぉ。だって仕事してても、たまに踊るみたいに鋏鳴らしている時あったもん。前はそんなこと全然無かったのにねぇ」
「そんなことになってたの」
「自覚なかったのね」
私、そんなに浮かれてたなんて。しかも皆その姿を見ていたなんて。恥ずかしすぎる。
確かにここ数日、あの日のことが頭から離れない。どんな顔をしていたかもはっきり思い出せるし、何より強烈なのは彼の性の感触。あんなの絶対忘れようがない。
名札が無かったから名前はわからなかったけど、すれ違ったりしたら絶対にわかる。働いている場所もわかっているけど、仕事があるから会いに行けない。けどよく考えたら、自分から会いに行くなんて恥ずかしすぎてできっこなかった。今思えば、どうしてあの時はあんなことができたのか不思議で仕方ない。
「それでそれで? 好きになった人ってどんな人なの」
「……言わなきゃダメ?」
「うん。教えて」
「……わかった。でも、ここじゃない方がいい」
「なら場所を変えましょ。あそこの喫茶店ね」
おばちゃんの奢りでうどん屋さんを出ると、向かい側にあった喫茶店に入った。人が少なくて、内緒の話をするのにはぴったりだった。
「は〜、なるほどねぇ。それはたぶん、運命の出会いってやつね」
「……そうかな」
魔物娘が日常に溶け込んでいるんだから、人間のおばちゃんでもそれに近しい価値観を持っているんだと思う。私がこれまでのことを話すと、まるで魔物娘みたいなことを言って納得していた。
「それじゃシレットちゃん。週の前半は無理そうだけど、後半から掃除場所交代しましょうか。おばちゃん協力しちゃうわ」
「いいの? おばちゃん高い所ダメなのに」
「大丈夫よ。あれに乗らずに指示してるから」
「……サボり?」
「現場指揮よ、現場指揮。あ、それと、それならもう1回相談所に行ってみたらどう? 力になってくれるかもしれないわよ」
「わかった」
そうして私とおばちゃんは小さな作戦会議をして、お休みは終わった。
作戦通り動いてあれから私がわかったことは、彼の名前が宇治野ウルトということと、離れて働いていたのは部署に彼1人しかいないからということ。それに営業職なのに見た目に無頓着なせいで、あまり評判が良くないってことだった。あと、彼女がいないこともわかって、私としては一番嬉しかったのはそこだったりする。そして私にとって都合の良いことがあって、それはこれ。
「今日もいる」
「ね? 言った通りでしょ」
何事もなく外の窓掃除を終える頃になると、いつもウルトが屋上の隅にいることだった。ブラックハーピーの子に言われてゴンドラから遠目に見ると、その姿はどこかボーッとしているみたいに見える。
「また来たの?」
「あーいや、別に待ってたわけじゃなくて、ちょうど休憩だからいるだけで」
「そうなの」
いつものようにウルトの所へ行ってもそう返されてしまって、残念な気持ちになって鋏が下を向いてしまう。
「また臭いしてる」
ウルトから漂ってくる臭いを嗅ぐと、今日はキツいにんにくの臭いがした。いつもそうだけど、私と会う時にいつも何かしらのキツめの臭いをつけてくるのが気になる。
「もしかして、またするの?」
「うん、する」
一旦臭いが気になるともう止められない。たぶんこれは私の悪い癖なのかもしれない。そうだ、ついでに汚れも一緒に落とそう。
私は掃除の時みたいにブクブク泡を出して、スーツのままウルトを泡まみれにしていく。私の泡は特別で、泡だけならベタベタに濡れることはない。汚れと臭いだけを落として、彼本来の匂いになるまでしっかりと洗うことができる。
あわあわ あわあわ あわあわ
あわあわ あわあわ あわあわ
汚れと匂いを落としていくと、段々彼が持つ性と匂いが伝わってくるのを感じる。匂いもだけど、特に性は危険で、もっと欲しくなって止められなくなっちゃう。特に性の元である股間は一番注意しなくちゃいけない。これ以上止められなくなっちゃう前にやめなきゃ。
「今日は……これくらい」
「や、やっと終わった……なんかだんだん長くなってない?」
「…………気のせい」
「そうか〜? いやでも、そんな気もするか」
最初会った時と違って、もう逃げ出したりしない。耐えられるぎりぎりまで洗った後、私は壁に背中を預けて座り込むウルトの横に腰掛けた。
「聞いたんだけどさ」
「うん」
「君のその泡って凄いらしいじゃん。今だって全然臭いしないし」
「そう。特別なの」
「だからか知らないけど、最近仕事の業績上がってる気がするんだよね。取引先も増えたし」
「私に感謝する?」
「するする。あ、いや別に、だからって毎回屋上で待ってるわけじゃ無いから。たまたま、本当にたまたま会うだけだから。さすがにそんな都合良く考えてないって」
「そうなの」
私目当てに来てくれればいいのにと思ったのに。残念。仕事がうまくいくなら、いくらでも綺麗にしてあげるのに。
「でもそろそろやめないとなぁ」
「え……どうして?」
「俺聞いちゃったんだよね。会社の女の子が噂してるの。だからせっかく気に入ってたけど、休憩する場所を変えようと思って。え、ちょっと何どうしたの」
「なんでもない………………なんでも」
休憩場所を変えるってことは、もう私と会わなくなるってこと。そんなの悲しすぎる。
じーっと彼の顔を見つめる無表情な顔とは裏腹に、体は正直。鋏はカチカチキリキリ音を出して、脚もカリカリコンクリートを引っ掻いて悲しさをアピールしていた。
「あ、そろそろ時間だ。それじゃまた」
全身から不気味な音を出す私に怯えるようにして慌ただしく立ったウルトは、そそくさと屋上から出ていった。
「なるほど、事情はわかった。こっちでも調査していたが、てっきり順調に進展していると思ったんだけどな」
悲しくなった私は、その日の仕事終わりに相談所で相談することにした。実は相談所にはウルトのことが頭から離れなくなった時から通っていて、彼とあったできごとを話していた。
いつものクノイチさんは腕組みをして何度か頷いていたけど、今日の話を聞いていくうちに悲しそうな目つきになっていった。
「独自に調査したところ、身だしなみのだらしなさはあるものの、態度自体は誠実で、悪くない」最初に相談しにいって、ウルトのことについて調べてもらった時の評価がそれだった。
「調べた限り、彼に浮いた話は無いはずだし、妙な噂が立つことは無いと思っていたが……」
「……どうしよう。このままだと離れていっちゃう……よね」
「そうだな。ちょうど良い機会だし、そろそろ告白してみる他ないのではないか」
告白という言葉を聞いた瞬間、私の体はビクリと強張った。
「告白……」
「まぁわかる。一世一代の大舞台だからな。緊張も恥ずかしさもあるだろう。拙者もそうだった。しかし想像してみると良い。想いを受け入れて貰い、1つになったその時を。彼の体に触れて、性の感触を味わったのだろう? あれより強い刺激が全身に受けられるのだ」
「あれが全身に……」
私はつい数時間前の、ウルトの体を洗っていた時のことを思い出す。匂いを彼のものだけにしただけであんなに性の刺激を受けたんだ。あれより強いの、しかも1つになるってことは、つまりええええええっちするってこと……私の一番奥、女の子の一番大事なところでウルトを受け止める……。
想像しただけで、私のおま◯こはしっとりと濡れていた。
「もう彼無しの生活は考えられないようだな」
「うん」
「問題は、どうやって告白するかだが……」
「場所は、屋上が、いい。初めて会った場所だから」
「うむ、ならばそれでいこう。ではどうやって呼び出そうか。何なら私が呼び出す役を買って出るが」
「いいの? なら、それがいい。呼び出すのは、恥ずかしいから」
「承知した」
そうして今度はクノイチさんと作戦会議をした。私の前からウルトがいなくなっちゃうかもしれない。そう考えるともう後には引けなかった。
計画は翌日になった。無事に呼び出しの紙を渡したっていう連絡を貰ったから、私は予定通り仕事終わりの夕方、屋上でウルトを待っていた。
これからウルトに気持ちを伝えるんだと思うと、自然と胸が高鳴るのを感じる。心臓が早鐘を打って止まらない。
雲が少ししかない逢魔が時の中、いきなり正面から向き合うのは恥ずかしいから、ウルトが来るであろう扉からは背を向けて、外側の手すりに掴まる。体がいつも以上に赤いのは、夕陽に照らされているだけじゃない。
実際目の前にしたら、私のことだからきっとうまく言えないと思う。だから少しでも練習しておこう。どうやって好きって言おうか。性の感触を受けた時、直感で好きだと思ったから? でも人間であるウルトにそんなこと言ったら引かれちゃうかな。魔物娘らしいといえばらしいけど、やっぱりもうちょっとそれなりの理由が欲しいかな。そうだ、そういえば最初ウルトを見かけた時、私と同じ雰囲気を感じたんだった。理由は全然違ったけど、それで気になったのが最初だった。実際に会ってからは、キャンサーとしての綺麗好きな本能が抑えきれなくなっちゃってたけど。
いつの間にか、日は沈み夜になっていた。地上よりは辺りに光が無い為、心なしか星が多く見えている。私がドキドキしながら長々と考えている間に、かなりの時間が過ぎていた。
「……まだかな」
つい、思っていることと反対のことを口走っちゃった。
さっきまで高揚で火照っていた体から、急激に熱が抜けていく。その時ヒュウと吹いた風が、一気に体温を奪っていった。
確かに呼び出しを人任せにしちゃったけど、時間は合っているはず。なのにこんな時間まで来ないってことは、何かあったのかな。でも、会社は定時で終わるはずだしな……。どうして……かな。
私の想像は、どんどん悪い方へ傾いていく。会う機会は何度もあった。けど私に勇気が無いせいで、ウルトの連絡先も聞いていない。それどころか、彼を名前で呼んだことってあったっけ? いつもいつも、会う度本能のままあわあわにして、それで満足するだけだった気がする。もっと恥ずかしいことをしていた癖に、恋人になって欲しいのは彼しかいないって思いながら、親密に関係を深めるステップを全然踏んでない。
「………………かえろう…………グスッ」
重い脚取りで、道行く人に泣いていることが悟られないよう、私は家に帰ることにした。
…………こんなに悲しいの、初めて……………………。
「はぁ!? 来なかったぁ!?」
次の日、何とか出勤したものの、お仕事ができる気分じゃなかった私は、皆に言われてお仕事をお休みさせてもらった。だからそのまま家に帰らず、相談所に来た。
受付に立っていたハーピーのお姉さんに姿を見せると、よっぽど酷い顔をしていたのか、すぐさま面談室に連れていかれて昨日のことを聞かれた。
「あり得ん……憎からず思っていたはずだろうに」
「そーですよ全く! こんなかわいい子を泣かせて! 1人の魔物娘として許せません!」
私の表情を代弁するかのように、ハーピーのお姉さんは羽をバタバタさせて憤慨していた。
「理由を懇々と問いただしたいところだが……そうだな。今日彼と会うことはできそうか?」
「今日? うん、なんとか、がんばる」
「よし、なら午後になったらまたここに来てくれ。ここに呼び出せば確実に会えるだろう。というか、私が直々に連れてくる」
「もちろん諦めるつもりは……」
「……ない」
「ですよね! 魔物娘に諦めるという言葉はありません!」
「午後に向けて、おしゃれしましょうおしゃれ。がんばりますよ、おー!」って、私の代わりに盛り上がっているお姉さんに案内されるまま、私達はビルを出て、普段は買わないような服やアクセサリーを買いに出た。
「それじゃ、準備はいいですね?」
「う、うん」
普段は全然しないお化粧をして、髪にはリボン、服はヒラヒラが多く少し煽情的なものを着て、私はは面談室の前に立っていた。この扉の先にウルトがいると思うと、つい数分前まで沈みきっていた心が元気を取り戻していくのを感じた。
「大丈夫、絶対成功しますよ。保証します」
「そうかな」
「彼の気持ちもリサーチ済みです、安心してください。それでは幸運を」
お姉さんが扉を開けて、それでもなかなか脚が進まない私を押し込むようにして部屋へ入れると、室内には2人だけになった。
「「あ……」」
言葉は同時だった。
ウルトの格好は、いつものスーツだった。けれどよく見るとどこか着崩れているようで、微かに魔物娘の気配がした。もう他の子に取られてしまったのではって不安になったけど、そういえばクノイチのお姉さんが「やりやすくしておいたぞ」と言っていたのを思い出して、気持ちを持ち直した。
「あのさ……昨日はその……行けなくてごめん」
それだけなのに、私の心は揺さぶられてしまって、昨日を思い出して泣きそうになっちゃう。
「……待ってたのに」
「本当にごめん。メモは受け取ったんだけど、仕事してたら忘れちゃってさ。思い出したのが家に帰ってからだったんだ」
「そうだったの……そう。やっぱり私じゃ、忘れられちゃっても仕方ないよね。こんな変な子だもん。迷惑だったよね。あんな、いきなりあわあわにして」
「それはまぁ、確かに最初は何だこいつって思ったよ。実際めっちゃこわかった」
今度こそ頑張って告白しようと思ってたのに、全然うまくいかない。やっぱり話すことって苦手。
「でも、最初に泡まみれにされた時からずっと、君のことが頭から離れなくてさ」
「えっ」
「泡で洗われるのはその……嫌いじゃなかったし。むしろ気持ちよかったって言うか。あーだからその、えっと、つまり」
視線を私から逸らして、ウルトは急にしどろもどろになりだした。そわそわと手を所在無げに動かして、まるで私みたい。
「あっ、そうだ、名前。名前をまだ聞いてなかった。俺は宇治野ウルトって言うんだ。よろしく」
「私は、シレット」
「シレット、さんだね」
「名前だけで、呼んで。私も、そうするから。ウルト」
「それじゃシレット……そう、さっき言いかけたことだけど」
またウルトの視線が泳ぐ。彼がどこを見ているのか、女の子は視線に敏感だからすぐにわかる。最初に顔を見て、次は髪、脚ときて、胸を一瞬。最後に顔に戻った時には、表情が少しキリリとしていた。
「す、好きです! 付き合ってください!」
「えっ……いいの、私」
「うん。さっきも言ったけど、もう頭から離れないんだ」
あわあわあわあわあわあわあわあわ
「えっ、ちょっと、泡で隠れないで! 返事きかせて」
泡をかき分けられて、私の顔がウルトの目の前にさらされる。もう恥ずかしいのと嬉しいのとが混ぜ合わさって、茹でられたみたいに真っ赤になっちゃう。
「もちろん、いいよ。私も、ウルトのとこ頭から離れなかったから」
小さく頷くと、私の瞳は涙で潤んでいく。
ぎゅっとウルトに抱きつくと、今日はいつもみたいに余計な臭いがしないことに気付いた。見上げてウルトの顔を見ると、そっぽを向いて照れているようだった。
「その……さ、実はわざとだったんだ。キツい臭いをつけてれば、来てくれるかと思って」
「そうだったんだ」
「ウルト、キス、しよ」
「うん」
ちゅ と1回だけ優しいキス。甘くて痺れるその感触だけで、私の気持ちは溶けていく。心がもっと欲しいもっと欲しいってねだっているのがわかる。
ウルトも気持ちは一緒みたいで、私の背中に回された手が遠慮がちに背筋を撫で始めていた。
「ほら2人共、盛り上がるのは良いがここではその先は禁止だ。すぐ近くにホテルがあるから、続きはそこでしてこい」
突然現れたクノイチのお姉さんの声に2人してビクリとした。それがなんだかおもしろくてクスリと笑うと、つられてウルトも笑っていた。
「ここまで来ちゃってから言うのもなんだけど、いいんだよね」
「うん。ちゃんと、そのつもりできた。最後まで、してね」
相談所からずっと手を繋いで来た手を離し、私とウルトはホテルの一室に入っていた。
壁紙がピンク色なのも関係しているのか、照明も合わさって薄暗い部屋はエッチな雰囲気になるのに十分だった。柔らかそうなベッドの枕元には、ローター他いろんなグッズが自動販売機で売ってあるし、加湿器みたいな機械からは気分を盛り上げるお香が焚かれるって書いてある。
「それじゃ、お風呂、入ろ」
「そうだね」
お互いに服を脱ぐと、無意識に2人共お互いの裸をまじまじと見ていた。向こう側の視線に気付かない程見つめていたのに気付くと、同じタイミングで顔を背けた。
「洗ってあげる。洗うのは、得意」
「うん、よろしくね」
一緒にシャワーを浴びて、まずはウルトに背中を向いてもらう。私は泡を出してそれを自分の体に纏わせると、ぴったりと彼の背中にくっつけた。
「んっ、ここも……綺麗にしないとっ、ふぅー」
「うわっ、これすごっ」
上半身を擦りながら、ウルトの耳を甘噛みしたり、息を吹きかけたり。そのたびにウルトの体がビクビクとして、感じてくれているのがわかって嬉しい。
私の方も、背中と乳首が当たって気持ちよくて、体が火照っていく。大きな鋏部分とその腕でウルトの脚を優しく包むようにして挟むと、ブラシ状になっている部分で同時に脚も洗っていく。その行為からは、私の奉仕したい気持ちを伝えていく。
洗っていると、ウルトのおちんちんが元気になっていくのがわかった。そこからはいつも一番強く性を感じるから、そこの様子は敏感に察知することができる。
前に回して肋骨をなぞるように這わせていた手を、洗い続けながらゆっくりと彼の股間に向けていく。するとウルトの期待が高まっていくのを感じた。
「ここ……かたくなってる。気持ちいいんだ」
「うっ、うん」
「ウルトは……優しい方が良い? 強い方がいい?」
「それは……それはっ」
根元からゆっくり竿に指を這わせた後、カリに引っ掛けるようにしておちんちんをピンッと弾く。すると待ちきれないとばかりにおちんちんはビクビクを暴れた。それを押さえつけるようにして、もう片方の手を亀頭に当てる。こっちは敢えて擦ったりせずに当てるだけで、亀頭への刺激を期待したウルトの焦らす。
耳元で囁きながら、時たま耳にキスをしながら聞く。
「つ、強くして欲しい。もう我慢できそうにない」
「わかった。じゃあまずは1回出しちゃおうね」
ウルトの希望通り、今度は竿を握って上下にシコシコ擦る。溢れていたウルトの我慢汁と私の泡でとっても滑りが良い。亀頭とカリを引っ掻くようにして重点的にいじるのと、竿をシコシコ擦るのと、両手を使って一生懸命ご奉仕する。
「くぅ!シレット、もう、もう出るっ!」
「いいよ、出しても。もっと私に体を預けて。気持ちよくなって」
「うっ、ああああ!」
ドクドク!ドクドク!
勢い良く飛び出したウルトの精液を、亀頭を弄っていた手で全部受け止める。少し手の平を丸めて溜まるようにして、溢れないように注意した。
「はぁ、はぁ……凄かった」
「たくさん出たね。すごい」
全部出たのを確認すると、ウルトを正面に向かせて、どれだけ出したのかを彼に見せつけるようにして持っていた精液を私の顔の前にもっていった。
「こんなにプルプルでドロドロなんだ……」
初めて見る精液は、なんだか少し溶けたゼリーみたいだった。でも魔物娘の本能が、これこそ一番欲しいものだってさっきから頭の中で言っている。
「いただきます」
どんな顔をするか興味があったから、私は視線をウルトに向けたままゆっくりと性液を啜ってみた。
あ……これおいしい。今まで食べたものの中で一番おいしい。こんなの一度味わったら、もうこれ以上のものなんてないってわかっちゃう。大好き。もっと欲しいもっと欲しい。今度はお口じゃなくて直接欲しい。私の一番大事なところ、おま○こに欲しい。でも我慢しなきゃ。最後、最後にとっておくの。一番好きなものは、後に取っておく。
「次は前ね」
「はぁ、はぁ……え、あぁ、そうだね」
まだ背中を洗っただけなのに、ウルトは息絶え絶えだった。そんなに気持ちよくなってもらえたんだと思うと、嬉しさがこみ上げてくる。
「ウルト、また、大きくなってる」
「だ、だってあんなの見せつけられたら、こうなっちゃうって」
ついさっき出したばっかりなのに、私が精液飲むのを見て興奮したウルトのおちんちんはまた大きくなっていた。
「まだ少し残ってるね。任せて……はむっ」
私は少し屈むと、舌を出して根元からカリに沿って何度か舐めた後、一気に奥までおちんちんを咥えた。鼻腔からウルトの性臭が強烈に攻めてきて、頭が痺れたみたいになる。
「だ、大丈夫?」
「ん……へいひ」
刺激の余韻でしばらく動けなかった私を心配したウルトが話しかけてきた。優しい。
ズズッ、チュゥゥゥーーー。
奥まで咥えたまま舌を使って、おちんちん全体を舐めて綺麗にする。そうしながら残っていた精子を全部吸っちゃえば、お掃除終わり。
「これでお掃除終わり。今度こそ前、洗うね」
ちょっと泡が少なくなってきちゃったから、私はまた泡を出して自分を泡まみれにした。それから一度だけ口をすすいで、中を綺麗にする。たぶん精子の味って、男の人はマズいと思うから。
今度は面と向き合って、さっきとは違いゆっくり近付いてくっつく。
「……大好き」
「僕もだよ、シレット」
こうやって抱きついているだけでもとっても幸せな気持ちになる。ウルトも背中に手を回してくれて、相談室で抱き合った以上の強さでぎゅっとしてくれていた。
「ん……ちゅ」
どちらからともなく顔を見合わせると、自然とキスをした。最初はついばむように数回キス。それからお互いもっと、もっとと求め合うように、だんだん1回のキスにかける時間が長くなっていく。
「シレットって、甘くておいしいね」
「んぅ……ウルトもおいしい。もっと舌絡めて。唾液もちょうだい」
舌を絡めて、唇を舐めて。抱き合ったままゆっくり時間が過ぎていく。さっきの動きがあるご奉仕とは違う、静かな愛し方。でも、そろそろ限界。
「ウルト……もう、いいよね」
「うん。しようか」
「私、初めてだからうまくできるかわからないけど、頑張るから」
「実は、俺も初めてなんだ。けど、きっとうまくいくと思う」
ウルトに頭を撫でられて少し安心すると、私は彼のおちんちんを自分のおま○こに合わせた。
これからやっと1つになれると思うと、早く繋がりたいという思いよりも嬉しいという気持ちの方が強かった。
「ん……んぅぅぅ!」
「うぁぁ!」
ウルトが腰を突き出すと、一瞬強い痛みが走った。その後はジンジンとした痛みが尾を引いたまま、奥まで一気に突き入れらるのがわかった。
「あ……は、はいった」
「うん。大丈夫? シレット」
「ちょっと痛い。でも、平気。嬉しいから」
鋏を使って、ウルトの体を抱き寄せてもっと密着させる。
「シレット?」
「もう、逃がさないからね。離れちゃ、いや。大丈夫、腰振れるくらいは動けるよ」
「もういいの?」
「うん、動いていいよ。私も動くから」
クチュ、ヌチュっていう水音を立てながら、ウルトは腰を動かし始めた。だから私もそれに合わせて腰を動かす。私がウルトに気持ちよくなってもらおうとするみたいに、ウルトの方も私に気持ちよくなってもらおうと思って動いているのがわかる。そんなお互いを思いやるエッチが、とても気持ちいい。
「シレット、シレット!」
「ウルト、大好き、大好き!」
ウルトに膣壁を擦られるだけじゃない。ずっと上半身を擦り合わせながら、時にはキス、時にはさっきのお返しとばかりに耳を嬲られながら、常に複数の快感を与えられている。その気持ちよすぎる刺激に、私はどうにかなっちゃいそう。
浴室に、2人で腰を打ち付け合う音が響く。音のペースはどんどん速くなっていって、私の脚はガクガクガチガチと大きな音を立てながら震えていた。
「シレット!もう、もう出そうだ」
「うん! 一緒にイこっ! 私も、もうすぐイクからっ!」
体を反らせると、一際大きくウルトの体が跳ねた。それに合わせて、私も絶頂を迎える。
ドクドクと、さっきと同等かそれ以上に性液が溢れてくるのを私は膣内で感じていた。流れ込んでくる精子1つ1つが私を孕ませようと膣内を進んでいるのを感じるような気がして、ゾクゾクする。
「また……いっぱい、出たね」
「はぁ、はぁ……あ、ごめん。中に出しちゃった」
「平気。魔物娘は赤ちゃんできにくい」
「でも……」
「私と結婚は、嫌?」
いきなり結婚なんていい出しちゃったけど、やっぱり重い女だと思われたかな。
「そんなことないよ。その……ゆくゆくはそうなりたいと俺も思ってるし」
「よかった」
不安そうな顔をしていた私の頭をまた撫でてくれた。
「ウルト、もう休む?」
「そうだね。さすがにこんなに2回も出したから休みたい」
「じゃあ洗い流したらベッド行こ」
シャワーで軽くお互いの体を洗い流すと、私たちはベッドのある部屋に戻った。
「何かいろいろ置いてあるなー」
「本当だ。やっぱり買っていく人、いるのかな」
ベッドに腰かけたウルトは、枕元に備え付けられている、グッズの自動販売機に興味を持ったみたいだった。実際にウルトとエッチしたからか、実は最初部屋に来た時よりは私も内容に興味が沸いていた。
「さすがに今日はもう2回もしたからいいけど、今度何か使ってみる? って、シレット」
「これ、いいかもしれない」
驚くウルトを横目にお金を入れて私が買ったものは、缶が濃いピンク色をしたジュースだった。そこには『オマケ、もう1回』って書かれていて、説明欄には『インキュバスじゃなくても安心。追加で1回できます。ただし1日1本しか効果がありません』って記載されていた。
「シレット、まだ足りなかったの?」
「ごめんね」
「いや、こっちこそごめん。そういえば、俺ばっかり気持ちよくなってた気がするし。飲むよ、それ」
ウルトは私から缶を受け取ると、勢いよくそれを飲み干した。
「どう?」
「うーん、さすがにそんなに即効性は無いと思うけ……ど?」
「わ、もう大きくなった」
魔物娘のカップルが多い世の中だから当然とでもいうのか、ジュースの効果は絶大だった。
「あ、でもこれダメだ。脚動かそうとすると敏感だから動いた時の風圧で辛い」
「大丈夫。また私がしてあげる、から」
「うん。ごめんね」
「いいの。そのかわり、頑張ってね」
私は彼に覆い被さるようにして押し倒すと、ずっと準備できていたおま○こにウルトのおちんちんをあてがった。そしてじっとウルトの目を見つめながら、ゆっくりとそれを自分の膣内に受け入れていった。
「ん……すごい。さっきと同じで、とっても硬い」
「シレットの中も、柔らかくて気持ちいい」
再び彼を受けれた喜びに震える。次から次へと愛液が溢れてきて、私たちの結合部をいやらしく濡らしていくのがわかる。
「動いて、いい?」
「うん。なんだか不思議なんだ。あんなに敏感だったから、シレットの中に入ったらすぐイっちゃうかと思ったんだけど、今は長いこと頑張れそうだよ」
入れてないと敏感になるなんて、不思議なジュースだと思った。でもそれはそれで、違った楽しみ方ができそうなのかもしれない。
私はクチュクチュと音を立てながら、腰を動かし始めた。
根元まで入っている時のウルトはどこか安心しているような顔になって、それが可愛かった。
「すごい、これ、きもちいぃ……はヒャ!」
私が腰を降ろすのに合わせて、ウルトが腰を打ち付けてきた。いきなり与えられた予想外の刺激に、私の目がチカチカした。
「あ、ごめん」
「いいの。もっとして、よかったから」
動きが止まってしまった私にウルトが謝ったけど、頭を振った。
洗ってあげたり、ご奉仕するのも好きだけど、ウルトから積極的にされるのも好きなのかもしれないって、私は何となく気付き始めていた。
しっかりと踏ん張って腰を打ち付けて、どんどん気持ちよくなっていく。けれど上半身には力が入らなくなっちゃって、くたりとウルトの体に預けることになった。
「ウルト、もうすぐ、イきそう?」
「うん、そろそろ、イきそうだ。シレットは?」
「わ、私も、もう限界……力入らない、し……小さく、イってるの、止まらない、の」
それを聞いて私を一気にイかせようと思ったのか、ウルトは一層強く腰を振り始めた。
「んっ、あっ、あ、ダメッ、だめだよ、ウルトッ、あ、あっ、」
「くぅ……シレット、もう、もう!」
「イクぅ〜〜〜!!!!」
私の膣が1滴も残さないとばかりにキュウキュウと収縮して、ウルトのおちんちんから性液を搾り取る。
「ふわぁ……すごかった。まんぞく」
「はぁ、はぁ、こんなに出したの初めてだ」
お互い息も絶え絶えになりながら、ぐったりと並んで寝て動けない。
「ウルト」
「何?」
「これから、ずっとよろしく、ね」
「うん、こっちこそ」
脚をウルトの脚に絡めると、彼は優しく頭を撫でてくれた。
恋人同士になってわかったことは、私は自分が思っているより甘えん坊だったっていうことだった。ビル内でウルトを見かければ、おばちゃんと話している最中でも駆け寄っていくし、仕事が終わって帰るのが一緒じゃないと嫌だと思うようになった。さすがに毎日一緒にとはいかないけど、夜ごはんは一緒に食べたい。
「だいたい後から思い出して、そうやって泡で隠れようとするよね」
最初にエッチしたホテルに来ている私は、ウルトの言う通り恥ずかしくて全身泡まみれになっていた。
「だって、恥ずかしいから」
「そういうところもかわいいなぁ、もう」
泡が払われて顔を見えるようにされると、ウルトが優しく頭を撫でてきた。私のことをかわいいと思った時に、いつもウルトは頭を撫でてくれる。撫でられるのが好きって言ってないのに。
「いつも私がご奉仕するから、今日はウルトが私を好きにしていいよ。その代わり、お願いがあるんだけど、いい?」
「何?」
「遠慮せずに、子作り、孕ませるつもりで、してね」
「いいの?」
「うん。たくさん、気持ち良くしてね」
私の中では、もうウルトと結婚することは決まっていた。今日は危ない日っていうわけじゃないけど、普段からウルトにはそういうつもりでして欲しいと思ってる。
ウルトの体はあれから殆ど毎日私が洗っている。だからいつも清潔に、余計な匂いがつかないようになっている。最初は吸っていたタバコも、私が少しお願いしたらやめてくれた。そのおかげでウルトの業績が上がって、この前大きな取引がうまくいったって言ってた。
「あのさシレット」
「なに?」
「俺、シレットに会えてよかったよ。だからこれからも一緒にいてくれる?」
「うん、もちろん。ずっと、一緒」
エッチの前にお互いの気持ちを確かめ合って雰囲気を高めていくのがいつものやり方。
そうやって私たちの夜は始まっていった。
「いつもありがとうね。どうにも高い所は苦手でね」
「大丈夫、任せて。多脚は安定感抜群だから」
同じ職場のおばちゃんが申し訳なさそうに言う。私としては、自分の役割が持てて嬉しいから全然気にならない。
ゴンドラに乗るのが今のところ私だけだから、中身は自然と私の仕事しやすいようになっていて、入ると安心さえする。
「今日もよろしくお願いしますね、シレットさん」
「うん。よろしく」
「そういえば、こんな垂れ幕があるんですけど、どうしますか」
ゴンドラで少しビルの屋上から降りると、ブラックハーピーの人が嬉しそうにやってきた。その子が持ってきた垂れ幕には『恋人募集中』って書いてある。
「恥ずかしいから……やめとく」
「わかりました。じゃあ私つけよっと」
嬉々としてその子は垂れ幕をタスキのようにかけると、私から掃除用具を受け取って仕事に取り掛かった。ここは屋上に近い程の高さだから、地上からあのタスキが見えることは無いと思うから、きっとビルの中にいる人に向けたメッセージなんだと思う。
思った通り窓から男の人に向けてにこやかに手を振りながら片手間に窓を掃除している子を横目に見ながら、私はまじめに仕事しようと気合を入れた。
魔物が魔物娘になって人間が共存してから、随分と時間が経ってる。激しい戦いがあったことは昔の歴史として私も学校で習ったくらいで、私みたいな普通の魔物娘にとってはそれほど大事じゃない内容だった。今大事なこととして教えられているのはどうやって理想の夫を捕まえるかで、私も多くのキャンサーの子達と一緒に勉強した。
私も一般的なキャンサーに漏れず、表情豊かじゃない。だけど人じゃなくて蟹の部分は、まるでメドゥーサみたいに私の気持ちを代弁してくれる。おばちゃんに言わせれば、私程わかりやすい子はそうそういないらしい。
私は自分が出した泡を洗剤代わりにして窓を掃除していく。たまに中で働いている人の様子を見たりするけど、他に働いている子程じゃない。男の人がいれば目にとまるけど、うっかり目が合っちゃうのは恥ずかしいから、本当にちょっと見る程度。
「あの人超イケメンじゃない?」
「ほんとだー。あ、でもダメだ。あそこでマンティスの人がめっちゃこっち睨んでる。たぶん彼女だよ」
「あちゃー、売約済みならダメだ。あ、じゃあさじゃあさ、あっちの人は」
あの子達みたいにはしゃぎながらお仕事するなんて、私にはできない。別に話しかけられれば普通に喋ることはできるんだけど、自分から話しにいくことはやっぱり苦手。
今私がお掃除している窓の中にいる男の人みたいに、呼ばれれば普通に受け答えするけど皆の輪から少し外れた場所で仕事している。それが今の私。
午前中いっぱいかけて一通りのお掃除を終えると、私はゴンドラを上げて屋上に戻った。
「あぁ、ちょうどよかったよ。一緒にお昼行かない?」
「うん」
私がそろそろ終わるだろうと思って来たおばちゃんと合流すると、私は掃除用具をしまってお昼ご飯を一緒に食べることにした。
おばちゃんは人間で、歳は55って言ってた。私が今の会社に入った時からいて、初めて一緒に働いてからずっと私の側にいてくれる。私のことを娘みたいに可愛がってくれていて、この街に来て1人だった私にはとっても嬉しかった。
「シレットちゃんやっぱりそれ好きね」
「うん。しらす定食……おいしい」
ビル内の食堂で私がご飯を食べている向かい側で、おばちゃんはにこやかにそれを見ていた。おばちゃんはいつもそうするからもう慣れたけど、最初の方は見られながら食べるのがとっても恥ずかしかった。
「そういえばシレットちゃん」
「なに」
「シレットちゃんもそろそろ彼氏とかできた?」
「…………ぜんぜん」
「そうなの? シレットちゃんもこっちにきて5ヶ月になるし、魔物娘の子はすぐに彼氏を作ってそのまま結婚するって聞いてたから、てっきりシレットちゃんにも良い人ができたのかと思ったけど」
「おばちゃん、どうして急にそんなこと言うの」
「いや午前中は中の掃除だったんだけどね、新しく結婚相談所ができてたのよ。だからシレットちゃんはどうなのかと思ってね」
「私は……今のところそういう人いない。ぜんぜん」
休みが無いとか平日も日付けが変わるまでお仕事しなきゃいけないとか、そういう世界の本を読んだことあるけど、少なくとも私達がいる世界はそんなことない。だから単純に、私に出会いがないだけ。だって良い人だと思える人がいなかったもん。
「じゃあせっかくだからさ、今日仕事終わったら行ってみたら? 良い出会いがあるかもよ」
「そうかな」
「そうでなくても、相談だけでもしてきたらいいんじゃないかしら」
「ん……おばちゃんが言うなら、行ってみる」
正直あまり気は進まないけれど、こういう時のおばちゃんには逆らえない。
「ようこそまもむす結婚相談所へ!」
私が入り口に足を踏み入れると、受付でハーピーのお姉さんがニコニコ微笑んでいた。
気圧されながら私が周りを見てみると、とっても綺麗な内装だった。柔らかそうなピンク色の絨毯に、汚れ一つ無い綺麗な青い壁紙。照明もちょうど良い明るさになっていて眩しすぎない。
「どうしましたか? こちらへどうぞ」
「あっ、はい」
意識していなかったけど、そんなにぼーっと見とれてしまっていたみたい。促されるまで、私は立ち尽くしていた。
「新規登録の方ですね。まずはこちらの書類へご記入お願いします」
渡された紙には、男性の好みについて細かい項目がたくさんあった。こういう用紙には大抵最後に少しあるだけの自由欄が、この用紙では頻繁に表れているから、皆ちゃんとはっきり好みの人を見据えて来ているのかなって思ってしまう。
「あ、別に全部記入する必要は無いですよ。殆ど記入せずに登録して、運命の出会いを待つ方もいますからね」
「そうなんですか」
大きな蟹の鋏をキリキリいわせながら私が悩んでいると、お姉さんが助け舟を出してくれた。やっぱりこれだけ項目があると、私みたいにスラスラ書けない子が多いらしい。
「はいっ、ご登録ありがとうございます。それでは少ししたら担当の者が参りますので、面談室へどうぞ」
面談室に通されると、そこは机と椅子しかない簡素な部屋だった。どうやら少し防音になっているみたいで、ちゃんと相談したことは外に漏れないようになっているみたい。
「待たせてすまない。私が君の面談を担当させてもらう」
「よろしくお願いします」
私の担当になった人は、口元を布で隠したクノイチだった。左手に光る指輪から、もう結婚している人だってわかる。
「それで君の希望は……なるほど、話をゆっくり聞いてくれる人と、一緒にいて安心できる人か。たしかに、どちらも大切だな」
「私その……あんまり話すのうまくないから」
「そういう子も多いからな。安心するといい、何も問題はないさ。だがすまないな……」
私に向かい合って椅子に座るクノイチのお姉さんは、本当に申し訳なさそうに頭を下げた。
「実は登録していた男性が、ほぼ全員結婚成立してしまってな。今すぐ紹介できそうな人がいない」
「そうなの……あ、いや、大丈夫。そんなに急いでないですから」
正直ホッとしている私がいた。おばちゃんには申し訳ないけど、いきなり結婚を視野に入れて男の人に会うなんてやっぱり恥ずかしいし……魔物娘にしては変わった子だっていうのはわかっているけど、恥ずかしいものは恥ずかしいから。少しずつ仲良くなって、自然に恋人になれたらいいなって思う。
「相手がいなくなるのはこちらとしても商売あがったりだから、早急に人材は確保したいと思っている。だから希望に添えるような男が見つかり次第、連絡したいと思うが、それで良いだろうか」
「……構いません」
「ありがたい。ちなみに、ここは紹介所ではなく相談所だから、何か相談したいことがあればいつでも来てくれて構わない。常時私が対応できるか保証しかねるが、できる限り私が対応しようと思う」
今日はこれ以上できることがなさそうだったから、私は面談室を出ることにした。
魔物娘の友達はいるけれど、最近あんまり会えてない。だから同じ魔物娘として相談できる相手ができて、私は嬉しかった。相談所の入り口で鋏をカチカチ鳴らしていると、ハーピーのお姉さんが笑顔で「いつでも来てくださいねー」って去り際に受付のカウンターから手を振ってくれた。
ここ数日は、おばちゃんがビルの中を掃除して、私が外壁や窓を外から掃除する分担になっていた。だから今日も、私は先日のブラックハーピーの子達と一緒にお仕事する。
今日作業に取り掛かった場所は、この前と違って機密性の高い会社が多いみたいで、どこも窓から会社の中身が見えないようになっている。だからあの子達は不満げな顔をしながら掃除をしていた。
そういえばこの前の掃除の時、恋人を見つけてそのまま結婚して退職した子が1人いたって言っていた。だからそのチャンスを掴み損なった子達にとってみれば再び現れたチャンスだったのに、かわいそうだなと思った。でもだからって『恋人募集中』の垂れ幕をタスキ代わりにしたまま不必要に今日の予定に無い所へ行くのはやめて欲しい。
「ふぅ、今日はもう終わり」
ゴンドラを屋上に引き上げて降りると、私はおばちゃんを探すために辺りを見渡した。今日はおばちゃんきてないみたい。だけど人影を見つけた。
……スンスン、スンスン。
風に乗って送られてきた臭いから、私の嫌いな臭いがした。
掃除用具を一旦置いてその人影に近付くと、それは男の人でタバコを吸っている。私に気付いて一瞬だけこっちを見たけれど、すぐに視線を元の青空に戻していた。
「……あの、タバコ」
「えっ、ああ、掃除の人? 別にここは禁煙じゃないからいいよね」
「そうだけど……」
「なら別にいいでしょ。携帯灰皿もホラ、ちゃんとここにあるし」
「……そうだけど」
目の前にいる男の人は、この前私が見つけた人だった。あの、1人離れたところで仕事をしてた人。
切ったばっかりなんだろうな、短い髪は綺麗に切り揃えられていて、少しつけられているワックスからはほのかにリンゴの匂いがする。だけどそれは、強烈なタバコの臭いと混じり合っちゃって、とても変な臭いになっていた。
スーツを着ているけれど、汚れが目立つ。袖には染みがあるし、ネクタイもだらしなく緩んでいるし、ポケットからはティッシュがはみ出している。しかも顔には無精髭があって、眠たそうに開かれている目のせいでとってもだらしなく見える。
「……な、なんだよ」
いつの間にか睨むような視線になっていたらしく、男の人はちょっとたじろいでいた。
「えっ、ちょ、ちょっとちょっと!」
あわあわ あわあわ あわあわ
気がつくと私は、壁際に彼を追い詰めて逃げられなくした上で、泡を出して彼を洗っていた。
キャンサーの泡はどんな汚れも落とす優れもの。彼についた嫌な臭いと汚れをどんどん落としていく。そうしていくと、彼が持つ彼だけの匂いがわかるようになるの。
「っ!?」
10分程かけて彼を洗うと、ようやく彼の匂いと性を感じることができた。でもその突然の衝撃に、私は思わず固まっちゃった。
強い。強すぎる性。こんなの今まで感じたことがない。
「うわっ……なんだこれ」
ハッとなって彼の顔を見ると、カチカチ鳴っている私の鋏を見て恐ろしいような、でも違う気持ちもあるような、何とも言えない顔をしていた。
「あ……あわあわ、ごめんなさい!」
我に返った私は、すぐに鋏をどけると恥ずかしさで真っ赤になった。初対面の人に向かって、なんてことをしちゃったんだろう。
そのまま彼から逃げるようにしてゴンドラに戻って掃除用具を回収すると、大急ぎでその場を後にした。
お休みの日には、よくおばちゃんとお買い物に行く。今日もその日だったから、おばちゃんの車でちょっと遠出してショッピングモールに来た。
このショッピングモールは私達水棲の魔物娘にとって優しい作りになっていて、所々に水を浴びることができる休憩所がある。ちょっと肌を潤すだけで良い子もいるから、ミストだけ受けることもできる。
「やっぱり水辺の子は濡れてると綺麗だねぇ」
「そうかな」
水滴をキラキラさせながら、水を浴び終えた私がおばちゃんの所へ戻ると、にこやかにそう言われた。
嬉しくて、鋏がぐるぐるとせわしなく動く。
「そういえばシレットちゃん、やっぱり相談所行ってよかったでしょ? 気になる人もできたみたいだし」
「え……どうして……じゃなくて、どういうこと」
お店に入って一緒にうどんを食べようとしたところで、おばちゃんが急にそう言った。びっくりして鋏でテーブルを下からひっくり返すところだった。
「わかるわよぉ。だって仕事してても、たまに踊るみたいに鋏鳴らしている時あったもん。前はそんなこと全然無かったのにねぇ」
「そんなことになってたの」
「自覚なかったのね」
私、そんなに浮かれてたなんて。しかも皆その姿を見ていたなんて。恥ずかしすぎる。
確かにここ数日、あの日のことが頭から離れない。どんな顔をしていたかもはっきり思い出せるし、何より強烈なのは彼の性の感触。あんなの絶対忘れようがない。
名札が無かったから名前はわからなかったけど、すれ違ったりしたら絶対にわかる。働いている場所もわかっているけど、仕事があるから会いに行けない。けどよく考えたら、自分から会いに行くなんて恥ずかしすぎてできっこなかった。今思えば、どうしてあの時はあんなことができたのか不思議で仕方ない。
「それでそれで? 好きになった人ってどんな人なの」
「……言わなきゃダメ?」
「うん。教えて」
「……わかった。でも、ここじゃない方がいい」
「なら場所を変えましょ。あそこの喫茶店ね」
おばちゃんの奢りでうどん屋さんを出ると、向かい側にあった喫茶店に入った。人が少なくて、内緒の話をするのにはぴったりだった。
「は〜、なるほどねぇ。それはたぶん、運命の出会いってやつね」
「……そうかな」
魔物娘が日常に溶け込んでいるんだから、人間のおばちゃんでもそれに近しい価値観を持っているんだと思う。私がこれまでのことを話すと、まるで魔物娘みたいなことを言って納得していた。
「それじゃシレットちゃん。週の前半は無理そうだけど、後半から掃除場所交代しましょうか。おばちゃん協力しちゃうわ」
「いいの? おばちゃん高い所ダメなのに」
「大丈夫よ。あれに乗らずに指示してるから」
「……サボり?」
「現場指揮よ、現場指揮。あ、それと、それならもう1回相談所に行ってみたらどう? 力になってくれるかもしれないわよ」
「わかった」
そうして私とおばちゃんは小さな作戦会議をして、お休みは終わった。
作戦通り動いてあれから私がわかったことは、彼の名前が宇治野ウルトということと、離れて働いていたのは部署に彼1人しかいないからということ。それに営業職なのに見た目に無頓着なせいで、あまり評判が良くないってことだった。あと、彼女がいないこともわかって、私としては一番嬉しかったのはそこだったりする。そして私にとって都合の良いことがあって、それはこれ。
「今日もいる」
「ね? 言った通りでしょ」
何事もなく外の窓掃除を終える頃になると、いつもウルトが屋上の隅にいることだった。ブラックハーピーの子に言われてゴンドラから遠目に見ると、その姿はどこかボーッとしているみたいに見える。
「また来たの?」
「あーいや、別に待ってたわけじゃなくて、ちょうど休憩だからいるだけで」
「そうなの」
いつものようにウルトの所へ行ってもそう返されてしまって、残念な気持ちになって鋏が下を向いてしまう。
「また臭いしてる」
ウルトから漂ってくる臭いを嗅ぐと、今日はキツいにんにくの臭いがした。いつもそうだけど、私と会う時にいつも何かしらのキツめの臭いをつけてくるのが気になる。
「もしかして、またするの?」
「うん、する」
一旦臭いが気になるともう止められない。たぶんこれは私の悪い癖なのかもしれない。そうだ、ついでに汚れも一緒に落とそう。
私は掃除の時みたいにブクブク泡を出して、スーツのままウルトを泡まみれにしていく。私の泡は特別で、泡だけならベタベタに濡れることはない。汚れと臭いだけを落として、彼本来の匂いになるまでしっかりと洗うことができる。
あわあわ あわあわ あわあわ
あわあわ あわあわ あわあわ
汚れと匂いを落としていくと、段々彼が持つ性と匂いが伝わってくるのを感じる。匂いもだけど、特に性は危険で、もっと欲しくなって止められなくなっちゃう。特に性の元である股間は一番注意しなくちゃいけない。これ以上止められなくなっちゃう前にやめなきゃ。
「今日は……これくらい」
「や、やっと終わった……なんかだんだん長くなってない?」
「…………気のせい」
「そうか〜? いやでも、そんな気もするか」
最初会った時と違って、もう逃げ出したりしない。耐えられるぎりぎりまで洗った後、私は壁に背中を預けて座り込むウルトの横に腰掛けた。
「聞いたんだけどさ」
「うん」
「君のその泡って凄いらしいじゃん。今だって全然臭いしないし」
「そう。特別なの」
「だからか知らないけど、最近仕事の業績上がってる気がするんだよね。取引先も増えたし」
「私に感謝する?」
「するする。あ、いや別に、だからって毎回屋上で待ってるわけじゃ無いから。たまたま、本当にたまたま会うだけだから。さすがにそんな都合良く考えてないって」
「そうなの」
私目当てに来てくれればいいのにと思ったのに。残念。仕事がうまくいくなら、いくらでも綺麗にしてあげるのに。
「でもそろそろやめないとなぁ」
「え……どうして?」
「俺聞いちゃったんだよね。会社の女の子が噂してるの。だからせっかく気に入ってたけど、休憩する場所を変えようと思って。え、ちょっと何どうしたの」
「なんでもない………………なんでも」
休憩場所を変えるってことは、もう私と会わなくなるってこと。そんなの悲しすぎる。
じーっと彼の顔を見つめる無表情な顔とは裏腹に、体は正直。鋏はカチカチキリキリ音を出して、脚もカリカリコンクリートを引っ掻いて悲しさをアピールしていた。
「あ、そろそろ時間だ。それじゃまた」
全身から不気味な音を出す私に怯えるようにして慌ただしく立ったウルトは、そそくさと屋上から出ていった。
「なるほど、事情はわかった。こっちでも調査していたが、てっきり順調に進展していると思ったんだけどな」
悲しくなった私は、その日の仕事終わりに相談所で相談することにした。実は相談所にはウルトのことが頭から離れなくなった時から通っていて、彼とあったできごとを話していた。
いつものクノイチさんは腕組みをして何度か頷いていたけど、今日の話を聞いていくうちに悲しそうな目つきになっていった。
「独自に調査したところ、身だしなみのだらしなさはあるものの、態度自体は誠実で、悪くない」最初に相談しにいって、ウルトのことについて調べてもらった時の評価がそれだった。
「調べた限り、彼に浮いた話は無いはずだし、妙な噂が立つことは無いと思っていたが……」
「……どうしよう。このままだと離れていっちゃう……よね」
「そうだな。ちょうど良い機会だし、そろそろ告白してみる他ないのではないか」
告白という言葉を聞いた瞬間、私の体はビクリと強張った。
「告白……」
「まぁわかる。一世一代の大舞台だからな。緊張も恥ずかしさもあるだろう。拙者もそうだった。しかし想像してみると良い。想いを受け入れて貰い、1つになったその時を。彼の体に触れて、性の感触を味わったのだろう? あれより強い刺激が全身に受けられるのだ」
「あれが全身に……」
私はつい数時間前の、ウルトの体を洗っていた時のことを思い出す。匂いを彼のものだけにしただけであんなに性の刺激を受けたんだ。あれより強いの、しかも1つになるってことは、つまりええええええっちするってこと……私の一番奥、女の子の一番大事なところでウルトを受け止める……。
想像しただけで、私のおま◯こはしっとりと濡れていた。
「もう彼無しの生活は考えられないようだな」
「うん」
「問題は、どうやって告白するかだが……」
「場所は、屋上が、いい。初めて会った場所だから」
「うむ、ならばそれでいこう。ではどうやって呼び出そうか。何なら私が呼び出す役を買って出るが」
「いいの? なら、それがいい。呼び出すのは、恥ずかしいから」
「承知した」
そうして今度はクノイチさんと作戦会議をした。私の前からウルトがいなくなっちゃうかもしれない。そう考えるともう後には引けなかった。
計画は翌日になった。無事に呼び出しの紙を渡したっていう連絡を貰ったから、私は予定通り仕事終わりの夕方、屋上でウルトを待っていた。
これからウルトに気持ちを伝えるんだと思うと、自然と胸が高鳴るのを感じる。心臓が早鐘を打って止まらない。
雲が少ししかない逢魔が時の中、いきなり正面から向き合うのは恥ずかしいから、ウルトが来るであろう扉からは背を向けて、外側の手すりに掴まる。体がいつも以上に赤いのは、夕陽に照らされているだけじゃない。
実際目の前にしたら、私のことだからきっとうまく言えないと思う。だから少しでも練習しておこう。どうやって好きって言おうか。性の感触を受けた時、直感で好きだと思ったから? でも人間であるウルトにそんなこと言ったら引かれちゃうかな。魔物娘らしいといえばらしいけど、やっぱりもうちょっとそれなりの理由が欲しいかな。そうだ、そういえば最初ウルトを見かけた時、私と同じ雰囲気を感じたんだった。理由は全然違ったけど、それで気になったのが最初だった。実際に会ってからは、キャンサーとしての綺麗好きな本能が抑えきれなくなっちゃってたけど。
いつの間にか、日は沈み夜になっていた。地上よりは辺りに光が無い為、心なしか星が多く見えている。私がドキドキしながら長々と考えている間に、かなりの時間が過ぎていた。
「……まだかな」
つい、思っていることと反対のことを口走っちゃった。
さっきまで高揚で火照っていた体から、急激に熱が抜けていく。その時ヒュウと吹いた風が、一気に体温を奪っていった。
確かに呼び出しを人任せにしちゃったけど、時間は合っているはず。なのにこんな時間まで来ないってことは、何かあったのかな。でも、会社は定時で終わるはずだしな……。どうして……かな。
私の想像は、どんどん悪い方へ傾いていく。会う機会は何度もあった。けど私に勇気が無いせいで、ウルトの連絡先も聞いていない。それどころか、彼を名前で呼んだことってあったっけ? いつもいつも、会う度本能のままあわあわにして、それで満足するだけだった気がする。もっと恥ずかしいことをしていた癖に、恋人になって欲しいのは彼しかいないって思いながら、親密に関係を深めるステップを全然踏んでない。
「………………かえろう…………グスッ」
重い脚取りで、道行く人に泣いていることが悟られないよう、私は家に帰ることにした。
…………こんなに悲しいの、初めて……………………。
「はぁ!? 来なかったぁ!?」
次の日、何とか出勤したものの、お仕事ができる気分じゃなかった私は、皆に言われてお仕事をお休みさせてもらった。だからそのまま家に帰らず、相談所に来た。
受付に立っていたハーピーのお姉さんに姿を見せると、よっぽど酷い顔をしていたのか、すぐさま面談室に連れていかれて昨日のことを聞かれた。
「あり得ん……憎からず思っていたはずだろうに」
「そーですよ全く! こんなかわいい子を泣かせて! 1人の魔物娘として許せません!」
私の表情を代弁するかのように、ハーピーのお姉さんは羽をバタバタさせて憤慨していた。
「理由を懇々と問いただしたいところだが……そうだな。今日彼と会うことはできそうか?」
「今日? うん、なんとか、がんばる」
「よし、なら午後になったらまたここに来てくれ。ここに呼び出せば確実に会えるだろう。というか、私が直々に連れてくる」
「もちろん諦めるつもりは……」
「……ない」
「ですよね! 魔物娘に諦めるという言葉はありません!」
「午後に向けて、おしゃれしましょうおしゃれ。がんばりますよ、おー!」って、私の代わりに盛り上がっているお姉さんに案内されるまま、私達はビルを出て、普段は買わないような服やアクセサリーを買いに出た。
「それじゃ、準備はいいですね?」
「う、うん」
普段は全然しないお化粧をして、髪にはリボン、服はヒラヒラが多く少し煽情的なものを着て、私はは面談室の前に立っていた。この扉の先にウルトがいると思うと、つい数分前まで沈みきっていた心が元気を取り戻していくのを感じた。
「大丈夫、絶対成功しますよ。保証します」
「そうかな」
「彼の気持ちもリサーチ済みです、安心してください。それでは幸運を」
お姉さんが扉を開けて、それでもなかなか脚が進まない私を押し込むようにして部屋へ入れると、室内には2人だけになった。
「「あ……」」
言葉は同時だった。
ウルトの格好は、いつものスーツだった。けれどよく見るとどこか着崩れているようで、微かに魔物娘の気配がした。もう他の子に取られてしまったのではって不安になったけど、そういえばクノイチのお姉さんが「やりやすくしておいたぞ」と言っていたのを思い出して、気持ちを持ち直した。
「あのさ……昨日はその……行けなくてごめん」
それだけなのに、私の心は揺さぶられてしまって、昨日を思い出して泣きそうになっちゃう。
「……待ってたのに」
「本当にごめん。メモは受け取ったんだけど、仕事してたら忘れちゃってさ。思い出したのが家に帰ってからだったんだ」
「そうだったの……そう。やっぱり私じゃ、忘れられちゃっても仕方ないよね。こんな変な子だもん。迷惑だったよね。あんな、いきなりあわあわにして」
「それはまぁ、確かに最初は何だこいつって思ったよ。実際めっちゃこわかった」
今度こそ頑張って告白しようと思ってたのに、全然うまくいかない。やっぱり話すことって苦手。
「でも、最初に泡まみれにされた時からずっと、君のことが頭から離れなくてさ」
「えっ」
「泡で洗われるのはその……嫌いじゃなかったし。むしろ気持ちよかったって言うか。あーだからその、えっと、つまり」
視線を私から逸らして、ウルトは急にしどろもどろになりだした。そわそわと手を所在無げに動かして、まるで私みたい。
「あっ、そうだ、名前。名前をまだ聞いてなかった。俺は宇治野ウルトって言うんだ。よろしく」
「私は、シレット」
「シレット、さんだね」
「名前だけで、呼んで。私も、そうするから。ウルト」
「それじゃシレット……そう、さっき言いかけたことだけど」
またウルトの視線が泳ぐ。彼がどこを見ているのか、女の子は視線に敏感だからすぐにわかる。最初に顔を見て、次は髪、脚ときて、胸を一瞬。最後に顔に戻った時には、表情が少しキリリとしていた。
「す、好きです! 付き合ってください!」
「えっ……いいの、私」
「うん。さっきも言ったけど、もう頭から離れないんだ」
あわあわあわあわあわあわあわあわ
「えっ、ちょっと、泡で隠れないで! 返事きかせて」
泡をかき分けられて、私の顔がウルトの目の前にさらされる。もう恥ずかしいのと嬉しいのとが混ぜ合わさって、茹でられたみたいに真っ赤になっちゃう。
「もちろん、いいよ。私も、ウルトのとこ頭から離れなかったから」
小さく頷くと、私の瞳は涙で潤んでいく。
ぎゅっとウルトに抱きつくと、今日はいつもみたいに余計な臭いがしないことに気付いた。見上げてウルトの顔を見ると、そっぽを向いて照れているようだった。
「その……さ、実はわざとだったんだ。キツい臭いをつけてれば、来てくれるかと思って」
「そうだったんだ」
「ウルト、キス、しよ」
「うん」
ちゅ と1回だけ優しいキス。甘くて痺れるその感触だけで、私の気持ちは溶けていく。心がもっと欲しいもっと欲しいってねだっているのがわかる。
ウルトも気持ちは一緒みたいで、私の背中に回された手が遠慮がちに背筋を撫で始めていた。
「ほら2人共、盛り上がるのは良いがここではその先は禁止だ。すぐ近くにホテルがあるから、続きはそこでしてこい」
突然現れたクノイチのお姉さんの声に2人してビクリとした。それがなんだかおもしろくてクスリと笑うと、つられてウルトも笑っていた。
「ここまで来ちゃってから言うのもなんだけど、いいんだよね」
「うん。ちゃんと、そのつもりできた。最後まで、してね」
相談所からずっと手を繋いで来た手を離し、私とウルトはホテルの一室に入っていた。
壁紙がピンク色なのも関係しているのか、照明も合わさって薄暗い部屋はエッチな雰囲気になるのに十分だった。柔らかそうなベッドの枕元には、ローター他いろんなグッズが自動販売機で売ってあるし、加湿器みたいな機械からは気分を盛り上げるお香が焚かれるって書いてある。
「それじゃ、お風呂、入ろ」
「そうだね」
お互いに服を脱ぐと、無意識に2人共お互いの裸をまじまじと見ていた。向こう側の視線に気付かない程見つめていたのに気付くと、同じタイミングで顔を背けた。
「洗ってあげる。洗うのは、得意」
「うん、よろしくね」
一緒にシャワーを浴びて、まずはウルトに背中を向いてもらう。私は泡を出してそれを自分の体に纏わせると、ぴったりと彼の背中にくっつけた。
「んっ、ここも……綺麗にしないとっ、ふぅー」
「うわっ、これすごっ」
上半身を擦りながら、ウルトの耳を甘噛みしたり、息を吹きかけたり。そのたびにウルトの体がビクビクとして、感じてくれているのがわかって嬉しい。
私の方も、背中と乳首が当たって気持ちよくて、体が火照っていく。大きな鋏部分とその腕でウルトの脚を優しく包むようにして挟むと、ブラシ状になっている部分で同時に脚も洗っていく。その行為からは、私の奉仕したい気持ちを伝えていく。
洗っていると、ウルトのおちんちんが元気になっていくのがわかった。そこからはいつも一番強く性を感じるから、そこの様子は敏感に察知することができる。
前に回して肋骨をなぞるように這わせていた手を、洗い続けながらゆっくりと彼の股間に向けていく。するとウルトの期待が高まっていくのを感じた。
「ここ……かたくなってる。気持ちいいんだ」
「うっ、うん」
「ウルトは……優しい方が良い? 強い方がいい?」
「それは……それはっ」
根元からゆっくり竿に指を這わせた後、カリに引っ掛けるようにしておちんちんをピンッと弾く。すると待ちきれないとばかりにおちんちんはビクビクを暴れた。それを押さえつけるようにして、もう片方の手を亀頭に当てる。こっちは敢えて擦ったりせずに当てるだけで、亀頭への刺激を期待したウルトの焦らす。
耳元で囁きながら、時たま耳にキスをしながら聞く。
「つ、強くして欲しい。もう我慢できそうにない」
「わかった。じゃあまずは1回出しちゃおうね」
ウルトの希望通り、今度は竿を握って上下にシコシコ擦る。溢れていたウルトの我慢汁と私の泡でとっても滑りが良い。亀頭とカリを引っ掻くようにして重点的にいじるのと、竿をシコシコ擦るのと、両手を使って一生懸命ご奉仕する。
「くぅ!シレット、もう、もう出るっ!」
「いいよ、出しても。もっと私に体を預けて。気持ちよくなって」
「うっ、ああああ!」
ドクドク!ドクドク!
勢い良く飛び出したウルトの精液を、亀頭を弄っていた手で全部受け止める。少し手の平を丸めて溜まるようにして、溢れないように注意した。
「はぁ、はぁ……凄かった」
「たくさん出たね。すごい」
全部出たのを確認すると、ウルトを正面に向かせて、どれだけ出したのかを彼に見せつけるようにして持っていた精液を私の顔の前にもっていった。
「こんなにプルプルでドロドロなんだ……」
初めて見る精液は、なんだか少し溶けたゼリーみたいだった。でも魔物娘の本能が、これこそ一番欲しいものだってさっきから頭の中で言っている。
「いただきます」
どんな顔をするか興味があったから、私は視線をウルトに向けたままゆっくりと性液を啜ってみた。
あ……これおいしい。今まで食べたものの中で一番おいしい。こんなの一度味わったら、もうこれ以上のものなんてないってわかっちゃう。大好き。もっと欲しいもっと欲しい。今度はお口じゃなくて直接欲しい。私の一番大事なところ、おま○こに欲しい。でも我慢しなきゃ。最後、最後にとっておくの。一番好きなものは、後に取っておく。
「次は前ね」
「はぁ、はぁ……え、あぁ、そうだね」
まだ背中を洗っただけなのに、ウルトは息絶え絶えだった。そんなに気持ちよくなってもらえたんだと思うと、嬉しさがこみ上げてくる。
「ウルト、また、大きくなってる」
「だ、だってあんなの見せつけられたら、こうなっちゃうって」
ついさっき出したばっかりなのに、私が精液飲むのを見て興奮したウルトのおちんちんはまた大きくなっていた。
「まだ少し残ってるね。任せて……はむっ」
私は少し屈むと、舌を出して根元からカリに沿って何度か舐めた後、一気に奥までおちんちんを咥えた。鼻腔からウルトの性臭が強烈に攻めてきて、頭が痺れたみたいになる。
「だ、大丈夫?」
「ん……へいひ」
刺激の余韻でしばらく動けなかった私を心配したウルトが話しかけてきた。優しい。
ズズッ、チュゥゥゥーーー。
奥まで咥えたまま舌を使って、おちんちん全体を舐めて綺麗にする。そうしながら残っていた精子を全部吸っちゃえば、お掃除終わり。
「これでお掃除終わり。今度こそ前、洗うね」
ちょっと泡が少なくなってきちゃったから、私はまた泡を出して自分を泡まみれにした。それから一度だけ口をすすいで、中を綺麗にする。たぶん精子の味って、男の人はマズいと思うから。
今度は面と向き合って、さっきとは違いゆっくり近付いてくっつく。
「……大好き」
「僕もだよ、シレット」
こうやって抱きついているだけでもとっても幸せな気持ちになる。ウルトも背中に手を回してくれて、相談室で抱き合った以上の強さでぎゅっとしてくれていた。
「ん……ちゅ」
どちらからともなく顔を見合わせると、自然とキスをした。最初はついばむように数回キス。それからお互いもっと、もっとと求め合うように、だんだん1回のキスにかける時間が長くなっていく。
「シレットって、甘くておいしいね」
「んぅ……ウルトもおいしい。もっと舌絡めて。唾液もちょうだい」
舌を絡めて、唇を舐めて。抱き合ったままゆっくり時間が過ぎていく。さっきの動きがあるご奉仕とは違う、静かな愛し方。でも、そろそろ限界。
「ウルト……もう、いいよね」
「うん。しようか」
「私、初めてだからうまくできるかわからないけど、頑張るから」
「実は、俺も初めてなんだ。けど、きっとうまくいくと思う」
ウルトに頭を撫でられて少し安心すると、私は彼のおちんちんを自分のおま○こに合わせた。
これからやっと1つになれると思うと、早く繋がりたいという思いよりも嬉しいという気持ちの方が強かった。
「ん……んぅぅぅ!」
「うぁぁ!」
ウルトが腰を突き出すと、一瞬強い痛みが走った。その後はジンジンとした痛みが尾を引いたまま、奥まで一気に突き入れらるのがわかった。
「あ……は、はいった」
「うん。大丈夫? シレット」
「ちょっと痛い。でも、平気。嬉しいから」
鋏を使って、ウルトの体を抱き寄せてもっと密着させる。
「シレット?」
「もう、逃がさないからね。離れちゃ、いや。大丈夫、腰振れるくらいは動けるよ」
「もういいの?」
「うん、動いていいよ。私も動くから」
クチュ、ヌチュっていう水音を立てながら、ウルトは腰を動かし始めた。だから私もそれに合わせて腰を動かす。私がウルトに気持ちよくなってもらおうとするみたいに、ウルトの方も私に気持ちよくなってもらおうと思って動いているのがわかる。そんなお互いを思いやるエッチが、とても気持ちいい。
「シレット、シレット!」
「ウルト、大好き、大好き!」
ウルトに膣壁を擦られるだけじゃない。ずっと上半身を擦り合わせながら、時にはキス、時にはさっきのお返しとばかりに耳を嬲られながら、常に複数の快感を与えられている。その気持ちよすぎる刺激に、私はどうにかなっちゃいそう。
浴室に、2人で腰を打ち付け合う音が響く。音のペースはどんどん速くなっていって、私の脚はガクガクガチガチと大きな音を立てながら震えていた。
「シレット!もう、もう出そうだ」
「うん! 一緒にイこっ! 私も、もうすぐイクからっ!」
体を反らせると、一際大きくウルトの体が跳ねた。それに合わせて、私も絶頂を迎える。
ドクドクと、さっきと同等かそれ以上に性液が溢れてくるのを私は膣内で感じていた。流れ込んでくる精子1つ1つが私を孕ませようと膣内を進んでいるのを感じるような気がして、ゾクゾクする。
「また……いっぱい、出たね」
「はぁ、はぁ……あ、ごめん。中に出しちゃった」
「平気。魔物娘は赤ちゃんできにくい」
「でも……」
「私と結婚は、嫌?」
いきなり結婚なんていい出しちゃったけど、やっぱり重い女だと思われたかな。
「そんなことないよ。その……ゆくゆくはそうなりたいと俺も思ってるし」
「よかった」
不安そうな顔をしていた私の頭をまた撫でてくれた。
「ウルト、もう休む?」
「そうだね。さすがにこんなに2回も出したから休みたい」
「じゃあ洗い流したらベッド行こ」
シャワーで軽くお互いの体を洗い流すと、私たちはベッドのある部屋に戻った。
「何かいろいろ置いてあるなー」
「本当だ。やっぱり買っていく人、いるのかな」
ベッドに腰かけたウルトは、枕元に備え付けられている、グッズの自動販売機に興味を持ったみたいだった。実際にウルトとエッチしたからか、実は最初部屋に来た時よりは私も内容に興味が沸いていた。
「さすがに今日はもう2回もしたからいいけど、今度何か使ってみる? って、シレット」
「これ、いいかもしれない」
驚くウルトを横目にお金を入れて私が買ったものは、缶が濃いピンク色をしたジュースだった。そこには『オマケ、もう1回』って書かれていて、説明欄には『インキュバスじゃなくても安心。追加で1回できます。ただし1日1本しか効果がありません』って記載されていた。
「シレット、まだ足りなかったの?」
「ごめんね」
「いや、こっちこそごめん。そういえば、俺ばっかり気持ちよくなってた気がするし。飲むよ、それ」
ウルトは私から缶を受け取ると、勢いよくそれを飲み干した。
「どう?」
「うーん、さすがにそんなに即効性は無いと思うけ……ど?」
「わ、もう大きくなった」
魔物娘のカップルが多い世の中だから当然とでもいうのか、ジュースの効果は絶大だった。
「あ、でもこれダメだ。脚動かそうとすると敏感だから動いた時の風圧で辛い」
「大丈夫。また私がしてあげる、から」
「うん。ごめんね」
「いいの。そのかわり、頑張ってね」
私は彼に覆い被さるようにして押し倒すと、ずっと準備できていたおま○こにウルトのおちんちんをあてがった。そしてじっとウルトの目を見つめながら、ゆっくりとそれを自分の膣内に受け入れていった。
「ん……すごい。さっきと同じで、とっても硬い」
「シレットの中も、柔らかくて気持ちいい」
再び彼を受けれた喜びに震える。次から次へと愛液が溢れてきて、私たちの結合部をいやらしく濡らしていくのがわかる。
「動いて、いい?」
「うん。なんだか不思議なんだ。あんなに敏感だったから、シレットの中に入ったらすぐイっちゃうかと思ったんだけど、今は長いこと頑張れそうだよ」
入れてないと敏感になるなんて、不思議なジュースだと思った。でもそれはそれで、違った楽しみ方ができそうなのかもしれない。
私はクチュクチュと音を立てながら、腰を動かし始めた。
根元まで入っている時のウルトはどこか安心しているような顔になって、それが可愛かった。
「すごい、これ、きもちいぃ……はヒャ!」
私が腰を降ろすのに合わせて、ウルトが腰を打ち付けてきた。いきなり与えられた予想外の刺激に、私の目がチカチカした。
「あ、ごめん」
「いいの。もっとして、よかったから」
動きが止まってしまった私にウルトが謝ったけど、頭を振った。
洗ってあげたり、ご奉仕するのも好きだけど、ウルトから積極的にされるのも好きなのかもしれないって、私は何となく気付き始めていた。
しっかりと踏ん張って腰を打ち付けて、どんどん気持ちよくなっていく。けれど上半身には力が入らなくなっちゃって、くたりとウルトの体に預けることになった。
「ウルト、もうすぐ、イきそう?」
「うん、そろそろ、イきそうだ。シレットは?」
「わ、私も、もう限界……力入らない、し……小さく、イってるの、止まらない、の」
それを聞いて私を一気にイかせようと思ったのか、ウルトは一層強く腰を振り始めた。
「んっ、あっ、あ、ダメッ、だめだよ、ウルトッ、あ、あっ、」
「くぅ……シレット、もう、もう!」
「イクぅ〜〜〜!!!!」
私の膣が1滴も残さないとばかりにキュウキュウと収縮して、ウルトのおちんちんから性液を搾り取る。
「ふわぁ……すごかった。まんぞく」
「はぁ、はぁ、こんなに出したの初めてだ」
お互い息も絶え絶えになりながら、ぐったりと並んで寝て動けない。
「ウルト」
「何?」
「これから、ずっとよろしく、ね」
「うん、こっちこそ」
脚をウルトの脚に絡めると、彼は優しく頭を撫でてくれた。
恋人同士になってわかったことは、私は自分が思っているより甘えん坊だったっていうことだった。ビル内でウルトを見かければ、おばちゃんと話している最中でも駆け寄っていくし、仕事が終わって帰るのが一緒じゃないと嫌だと思うようになった。さすがに毎日一緒にとはいかないけど、夜ごはんは一緒に食べたい。
「だいたい後から思い出して、そうやって泡で隠れようとするよね」
最初にエッチしたホテルに来ている私は、ウルトの言う通り恥ずかしくて全身泡まみれになっていた。
「だって、恥ずかしいから」
「そういうところもかわいいなぁ、もう」
泡が払われて顔を見えるようにされると、ウルトが優しく頭を撫でてきた。私のことをかわいいと思った時に、いつもウルトは頭を撫でてくれる。撫でられるのが好きって言ってないのに。
「いつも私がご奉仕するから、今日はウルトが私を好きにしていいよ。その代わり、お願いがあるんだけど、いい?」
「何?」
「遠慮せずに、子作り、孕ませるつもりで、してね」
「いいの?」
「うん。たくさん、気持ち良くしてね」
私の中では、もうウルトと結婚することは決まっていた。今日は危ない日っていうわけじゃないけど、普段からウルトにはそういうつもりでして欲しいと思ってる。
ウルトの体はあれから殆ど毎日私が洗っている。だからいつも清潔に、余計な匂いがつかないようになっている。最初は吸っていたタバコも、私が少しお願いしたらやめてくれた。そのおかげでウルトの業績が上がって、この前大きな取引がうまくいったって言ってた。
「あのさシレット」
「なに?」
「俺、シレットに会えてよかったよ。だからこれからも一緒にいてくれる?」
「うん、もちろん。ずっと、一緒」
エッチの前にお互いの気持ちを確かめ合って雰囲気を高めていくのがいつものやり方。
そうやって私たちの夜は始まっていった。
17/12/17 02:07更新 / NEEDLE