連載小説
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第四話 天満と魔界と淫魔の誘い
目が覚めると、あたしはよくわからない場所にいた。
変な形に曲がった木、全体的に何かがおかしなまるで不思議の国の童話のワンシーンのような異常な光景。
それらをひとしきり眺めてみて、あたしの身に何が起きたのかを考える。
「えっと……皆で魔法陣を作って、魔法陣を使ってみて、そしたらこんなことになって……」
その瞬間あたしはあることに気づく。
それを確認するために、もしくは否定するために辺りを見回してみて、理解する。
「昊が……いない?」
弟の昊が、あたしの目の届く場所にいない。
そうだった、空中を自由落下しているときに少なくともあたしと吹雪はどこかに弾き飛ばされて他の二人とはぐれてしまった。弾き飛ばされた時からの記憶がほとんどないのは、あたしが気絶していた証拠だろう。
一気に不安になる。
こんなわけのわからない場所に何の準備もなく放り出されて、一番信用している大切で大好きな弟ともはぐれて一人ぼっち。
両親が事故で死んだときだって、莫大な遺産を引き継いだせいで周囲の大人に何度も獣のような眼で見られたときだって、こんなに不安になったことはなかった。
だってそのときは、昊がそばにいてくれたから。
けど今、あたしのすぐそばに昊はいない。こんなところにあたし一人。
「そらぁ! 居ないのぉ!?」
目から流れそうになる塩辛い液体を堪えながら、弟の名前を呼ぶ。
すぐ近くにいたら、昊は何をおいてでもあたしのことを助けてくれる。
今までだってそうだった。
ぶつくさ文句を言いながらでも、あとで小言が待っていようとも、昊は絶対にあたしのことを見捨てなかった。いつだってあいつはあたしに大きな負担がかからないように細かな配慮をしてくれて、そしてあたしのことを助けてくれた。
そんな弟に、姉としての立場を逸脱した感情を抱いたのはいつからだっただろう。
一線を越えなかったのは、そこまで昊に迷惑をかけられないと思ったから。いつも迷惑をかけてばかりのお姉ちゃんが、そこまで弟に甘えることなんかできっこないと思ったから、だから必死に我慢した。
「こんなところに来るくらいなら、言っておけばよかったのかな?」
お姉ちゃんとしてでも家族としてでもなく、一人の女として「好きだよ」と言えばよかったのかな?
もしかしたら昊だって受け入れてくれたのかもしれない。
それともあたしは、受け入れられることが怖かったのかな。
そうやって背負いきれない昊の人生まで一緒に抱えることが怖かったから、昊の人生に「近親相姦」なんて重荷を加える責任をとれないのが分かっていたから、だから怖かったのかな。
吹雪にはよく「この超弩級ブラコン」なんて言われたなぁ。
如月は応援してくれてたっけ、面白いからって。
「ははは、ブラコンだねあたしってば。」
吹雪の言ってた通りに、あたしは超弩級のブラコンだ。
だってこんなところに一人ぼっちになってるはずなのに、弟のことで頭がいっぱいなんだから。目を閉じた瞬間、弟の顔が浮かんでくるんだから。
「ふーん、お姉さんブラコンなんだ。」
あたしの視界に突然顔を出したのは、あたしよりいくらか年下に見える女の子だった。
けどその女の子は、普通じゃなかった。
綺麗な栗色の髪に黄金色の瞳は日本じゃ滅多に見れないけどここは日本じゃなさそうだからまぁ別に放置するとして、問題はそのほか。
栗色の髪の間からにょきっと生えてる角。
青色をした翼と同じ色の尻尾、そして日本の往来を歩いていたら職務質問まっしぐらの露出が異様に多い格好。
「貴方は誰?」
「ボクはサキュバスのメリオだよ、よろしくね。」
メリオと名乗った女の子は、とても魅力的な笑顔でそう言う。
サキュバス、ゲームとかに出てくるよくエッチな恰好してるあれ?
「ボクのお姉様からここを守るように言われてるんだけど、お姉さんどこから入ってきたの?」
「えっと……気付いたらここに居て…」
あたしはとりあえずメリオにここまで来た経緯を全部説明した。
もちろん皆のことも如実に話した、気付いたら昊のことを言ってる割合が多かった気もするけど、メリオはそれを全部笑顔で聞いていた。
「なーるほどねー、うん大体わかったかな。」
あたしのつたない説明を空中でくるくる回転しながら聞いていたメリオは、あたしの話が終わるとすぐにその動きを制止する。
「お姉様が帰ってきてるならお姉様に指示をうかがったけど、いないからなー。」
「お姉さま?」
「ボクをサキュバスに変えてくれた人だよ、ボクの恩人なんだ。」
ちょっと自慢げに話してくれる。
ところでサキュバスに「変える」ってどういう意味だろう、もとは何だったのかな。
「そうだ!」
何かを閃いたような表情でメリオが突然大きな声を上げる。
「ねえお姉さん、ブラコンなんだよね?」
「………うん。」
「じゃあ………弟と結ばれたい?」
メリオが笑顔で聞いてきたとんでもない質問に、あたしの顔が一瞬で真っ赤になる。
それは…本音で言えば肯定するしかない。
たとえ許されないことだろうと誰も認めてくれない恋であろうと、あたしは昊のことが大好きで、そしてできることならこの恋を成就させたいとすら思ってるんだから。
けれど同時に、それが許されないことだと理解している。
絶対にダメなのだ、あたしの抱く感情を成就させることは。
「ね、結ばれたい? 結ばれたくない?」
メリオが笑顔でもう一度訪ねてくる。
そんな質問に対する答えなんか、決まってる。
「結ばれ……たい……」
あたしは、腹の底から絞り出すように弟に向けた思いをメリオに打ち明けていた。
「おっけー、じゃお姉さんの恋が叶うように、僕がキューピッドになろう。」
そういったメリオは、あたしにキスをする。
「んむっふぅ――――――っ!」
突然の事態に驚いてメリオを振り払おうとする。
あたしとメリオの腕は同じくらいの太さしかしてない。
なのにメリオの腕の力はあたしの倍か、それ以上は当たり前のようにある。
そんな相手に頭を抑え込まれて、
「んちゅ…れるっくちゅ……ちゅ…」
昊相手におふざけ半分でした軽いキスとは比較にならないような濃厚なキスをされる。
唇をこじ開けて、メリオの舌があたしの舌に絡み付く。
舌の裏側を嘗め回され、先端を軽く噛まれる、そう思ったらあたしの口の中に唾液を送り込んできて、それを撹拌するようにまた舌がからめられる。

あ…あれ? なんか……気持ちいい?

そう、だんだん、あたしはメリオとのキスを気持ちいいと感じ始めていた。
それに気づくと、あたしは抵抗するのをやめた。
もともと無駄な抵抗だったんだから、する意味もないことに気づいたんだ。
それに、こんな気持ちいいこと止めるなんてもったいない。
メリオの腕から離した手をあたしはそれぞれメリオの腰と頭に当てる。
「ん…ふぅ……んむっ……んく…ちゅ…」
「んぁ……はぁ…んふぅ……んんっ!」
あたしたちが舌をからめる音と息を吐き出す音だけが周囲に響いていく。
一分ほど続いた長いキスの後、メリオはあたしの腕をやさしくどけると、あたしのことを見ながら
「お姉さん、ボクよりよっぽど淫魔の素質あるよ?」
と言った。
「さて、いい具合に発情してるみたいだし、本番にしよっか。そこの木に手をついてボクにお尻を向けて。」
あたしはメリオの指示に従ってお尻を彼女に向けると、メリオはあたしの制服のスカートをまくりあげて、下に隠れていたショーツをずり落とす。
「処女は、弟君にあげたいよね?」
あたしは声を出さずにうなずく。
メリオはその返事を見てすぐに、あたしのお尻の穴に舌を突っ込んできた。
普段排泄行為に使っている穴をいきなり逆からこじ開けられたのに、
「ふわぁああああっ!!」
あたしが感じたのは痛みじゃなくて快感だった。
にゅぐぬぶっじゅろぬぐぷぴゅ
メリオの舌があたしのお尻をえぐるようにかき回す。
「うぁっああぁっ! ひァン!」
たまらなく気持ちよくて、あたしは頭を振ってあえぐ。
にゅぶぶぶぶ ぐぶ こぽっ ぬぢゅるううう
括約筋をこじ開け、メリオの舌はさらに奥まで入り込んでくる。
どうやらあたしはそれに反応して腸液を分泌しているようで、メリオの舌があたしのお尻をえぐる速度がだんだん早くなってくる。
何かがあたしのお腹から降りてくる感じがする。
一度も自慰もセックスもしたことがないのに、あたしはそれが絶頂の感覚であることを本能かもしくは直感で理解した。
ああ……あたしお尻の中舐められてイっちゃうんだ……
どこかぼんやりとそんな風に考えながら、あたしはそれに身をゆだねて、
「来るっ来るぅっ! あたし、あたひお尻で、お尻でイっひゃぅうううううう!!」
ぶっしゃあああああああ
股間から派手に潮をぶちまけながら、あたしはがくがくと体を痙攣させて生まれて初めてのオーガズムをその身に刻んだ。
にゅぐぐぐぐ ぬぽん
「ふわぅっ」
メリオの舌があたしのお尻から抜ける。
「イっちゃったんだ…お姉さんホントに淫魔の資質あるよ?」
メリオがパタパタと嬉しそうに翼をはためかせながら言う。
あたしはと言えば体中から力が抜けて、地面に突っ伏したまま動けないでいた。
「さて、フィニッシュを行こうか。」
その言葉とともに、あたしのお尻に何かが当たる。
振り返ってそれを見てみると、それはメリオの尻尾だった。
「ここからボクの魔物の魔力をぶち込んで、お姉さんを魔物に変えてあげる。」
「魔物ぉ? 魔物になるのって気持ちいいぃ?」
あたしはもう、魔物になることも昊に会うこともどうでもよくなっていた。
ただ気持ちよくなりたくて、それだけで頭がいっぱいだった。
「気持ちいいよぉ? 弟に会えたらきっと最高だよぉ?」
そのメリオの言葉だけで、あたしはイきそうになった。
昊に会えたら、そしたら最高に気持ちいいなんて、考えるだけでそうなる。
「来てっ きてぇっ! あたしを魔物に変えてぇっ!!」
ずぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぅ!!
あたしのその言葉に応じるように、メリオの尻尾があたしのお尻を穿って奥の奥まで一気に突撃を仕掛けてくる。
「あ゙ッああああ゙ヲほオ゙っいあああああああ゙っ!!」
涙で視界が歪み、口からはとめどなく涎があふれてくる。
立った一突きメリオにねじ込まれただけ、まだ始まったばかり。
なのにあたしは無様なアヘ顔をさらしてイきまくっていた。
「はははっ魔物化してないのにこんなに締めるんだ! お姉さん淫魔の資質があるんじゃなくてただの変態だねっ!」
メリオも気持ちよさそうな表情になって、あたしに暴言を吐きかけてくる。
そんな暴言は正直心底どうでもよくて、あたしはお尻を振って次の快楽を求めていた。
じゅぼ ぬぼっ プビっ じゅぼっぼっぼっぼっぼっぼっぼっ!
メリオの尻尾がピストン運動を開始する。
「ほぁア゙っあ゙お゙あ゙お゙お゙お゙お゙っ!!!」
一発一発に意識が吹っ飛ばされそうなほどの快感を感じながら、しかし次の快感によって強制的に意識が引き戻されて、あたしは天国と極楽の境界を行ったり来たりする。
「出るっ! 出すよ! 変態お姉さんをどうしようもない変態魔物に変えてあげる!!」
「出してっ! 変えてっ! あたしを変態魔物に変えちゃってぇええええ!!!」
ぼびゅっ どぼぼぼぼぼぼぼぼぼっ!!
「うぁあ゙―――――――――――――――――――っ!!!!」
メリオの尻尾の先端から何かが噴出してあたしのお腹の中を満たす。
それと同時にあたしの体は気が狂いそうな快感に襲われる。
全身が焼けるように熱いような、でもこの熱さはまるで絶頂が長く続いているようにも感じられて、本当に気が狂いそうなほど気持ちいい。
すべての快感が引いて行った頃、余韻に打ち震えるあたしの体は変わっていた。
メリオのものほど立派じゃないけど角と尻尾と羽が生えている。
体を見回してみると、さっき気持ちよかった部分にびっしりとピンク色の毛が生えている。
「魔物化完了♪ おめでとう、お姉さんはレッサーサキュバスになったよ。」
そう言われて、あたしは自分が変わってしまったことを認識した。
「完全なサキュバスになる仕上げは弟君にしてもらってね、居場所、わかるよね?」
わかる。
昊のいる方角がどっちなのか、どれくらいの距離にいるのかまではっきりわかる。
「ふふふ……昊ぁ……」
あたしの顔がエッチに歪んだことがはっきりとわかる。
昊のことを考えるだけでも子宮がうずいてくる。
早く昊の精液をどぷどぷ子宮に流し込んでほしい。
「この世界には、ボクみたいなエッチな魔物がたくさんいるんだ。」
メリオがあたしに向かって微笑みながら囁く。
「そぉなのぉ?」
「そうだよ、だから早くいかないと、弟君が誰かに食べられちゃうよ。」
その言葉を聞いた瞬間、いやすぎる想像にあたしは襲われた。
あたし以外の女に、昊が襲われる光景。
そんなのだめだ。
昊、待ってて
お姉ちゃんが絶対守ってあげるから。
だから、昊の全部をもらいに行くよ。
それまで、待ってて。



11/07/10 19:59更新 / なるつき
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■作者メッセージ
ってなわけで天満は魔物化してのスタート。
果たして彼女は無事にブラコンの勘だけで弟のところまでたどり着けるんでしょうか。

処女貫通禁止縛り 今後のためとはいえきっつい……

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