第三話
目を覚ますと日が真上に来ていた。
ネリスは僕の頭を膝に乗せた状態で、服も全部着て切り株に座っている。
僕も気を失う時は裸だったはずなのに、今はきっちり服を着ている、ネリスが着せてくれたんだろう。
どのぐらい気絶していたんだか……
「起きられましたか……」
ネリスがなんだか申し訳なさそうな顔で言う。
なんか……服から異臭がするけど気にしちゃいけないんだよな？
「やっぱり誰も見ないとわかってても野外は好きじゃないです……」
「おなかはいっぱいになった？」
「五分目ほどですけど……それより心が満たされたので十分です。」
「そうか、それは良かった。」
と表面上何でもないようにしていたけど、内心とんでもなく驚いていた。
あれで五分目……？
だってネリスも気を失ってたよね？ 僕も気絶した。
なのにそれでもまだ五分目って、どれだけ必要なの？
「テリュンさんが起きるのを待ってたんですよ。」
「どうして？ 補給は済んだんだから置いて行ってもいいような気がするけど。」
「それは……あの……」
ネリスが顔を赤く染める。
もじもじと恥ずかしそうな彼女の様子を見てなんだかまたむらむらしてしまう。
「テリュンさんは……私のこと好きですか？」
「もちろん！」
だって一目惚れをしてしまった挙句に語り合ってまた一回惚れて、そしてセックスしていたときにももう一回惚れましたから。
「良かった……相思相愛って聞いて勝手に盛り上がってたんじゃないかと不安になったんです……」
そう言えばそんなことを言っていた気がするよ。
ついでに言うと、そのあとから急にネリスが激しくなった気もする。
「ところで、それがどう関係するの？」
「よろしければ……クルツに来ませんか？」
「クルツ……」
クルツ自治領。
ネリスの故郷であり魔物と人が共存する土地。
この反魔物派が大多数を占める王国で、数少ない親魔物派の土地。
「けど、クルツに一度移住してからこの王国の他の土地に移住することは現状ほぼ不可能です、ですから……」
「うん、ネリスの故郷なんだろ？ 行ってみたいよ。」
すごくまじめに話すネリスに対して、僕は気楽に答えた。
「本当ですか！？」
「うん、本当、どうせ僕はもう家族もいないし、あの土地にそこまで大きな未練があるわけじゃないからね。」
それに、クルツに行けばネリスに会える。
声には出さなかったけれど、それが一番の動機だった。
クルツ自治領までは、歩いておよそ一日。
意外に近くてびっくりだ、ネリスも帰る途中だったらしい。
とりあえず出かける前の準備として森の他の罠を点検して、何もかかっていなかったら解除、かかっていたら食料として取っておいた。
一時間ほどかけて用意を終わらせるまでの間、ネリスは何も言わずに僕を待ってくれていた。
「お待たせ。」
「いえ、じゃあ行きましょうか。」
ネリスの頭からは、角が消えている。
角隠しというサキュバスの魔法の一種で、角を他人には見えないようにするらしい、利用すれば人間の女性のようにふるまえるのだとか。
便利すぎないかと疑問に思ったけど、どうやら高い魔力を持っていないとできないらしく普通当たり前にはやらないのだそうだ。
「どっちに向かうの？」
「ここから南西です。」
耳を疑った。
ここから南西に半日ほど行けば、そこは人の立ち入りの乏しい険しい山岳地帯だ。
一番近い僕たちの村の住民ですら、そこに好んで行こうとする人はいない。
王国で一番開発が進んでいない地域とすら言われている。
「クルツ自治領は、山岳地帯にあった盆地に作られてるんです。」
「そこまで行くのに一日か……それより、良く今まで誰にも見つからなかったよね、人里から結構近いと思うんだけど。」
「そこら辺は万全です、屈強な騎士でも簡単には入ってこれません。」
形の良い胸をそらしてネリスは言い切る。
それってもしかして、存在自体はある程度外部に漏れてる？
そう思ったけれど、気にするのはやめておいた。
六時間ほど歩いて夜。
僕も来たことのないような森の奥深くに、宿のような建物があったのでそこで休んでいる。ここから僕のいた村までは往復で半日以上かかるだろう、村人の物ではないと思う。
ロビーのような部屋にソファがあったので僕はそれに座っている。
台所には保存のきく種類の食べ物がたくさんあり、医薬品までそろっている。
さらには近くに泉があり、体を洗うこともできる。
ネリスが案内してくれたところを考えると、クルツの関係者が外に行くときに一次停留するための停留所かな？
そのネリスは泉に水浴びに行っている。
覘きに行ってもたぶん幻術で保護してあるだろう。
サキュバスにしては珍しいよな、あんな恥ずかしがり。
そう言えばもう一つ気になることがある。
ネリスはどうしてあんなに飢えていたんだろう。
はっきり言って彼女はとんでもなく可愛い。
スタイルもいいしおまけに性格もよくできてると思う。
魔物ということを除いたとしても、彼女を抱きたいと思うような男に困るとは到底思えない、ブス選はかなりの少数派だ。
つまり、精を貢ぐ男に困ることは考えなくていい。
なのに彼女は飢餓の末に僕に体を預けた。
「気持ち良かったな……」
思い出すだけで起ちそうになる。
ってそうじゃない。
「気持ち良かったなら、今夜もします？」
甘い声で背後からネリスが誘惑してきた。
後ろから抱き締められるようにして、右肩に彼女の頭が乗る。
その目線は信じられないほど妖艶で、下半身にどんどん血がたまって行くのがわかった。
「なんて、冗談ですよ。テリュンさんも水浴びしてきたらどうですか？」
彼女が僕から離れていく。
言われたとおりに水浴びをしてみる。
熱を持った下半身を冷やすのに、ちょっと時間がかかった。
ロビーにもどってきてみると、ネリスが待っていた。
普通の村娘の格好のままだ、サキュバスの格好に変わったりはしていない。
「おかえりなさい、テリュンさん。」
「ただいま、ネリス。」
夫婦のようなやり取りだけをして僕が向かいのソファに座る。
「待っててくれたの？」
「はい、聞きたいことがあったから……」
さっきの誘惑に対する返事かな？
そう思って身構えた僕の耳には、意外な質問が来た。
「テリュンさんは……自分が人間であることに不満を持ったことはないですか？」
それがネリスの質問だった。
質問の意味がわからなくて呆けていた僕に、ネリスがため息を見せた。
「ない……ですよね、それが自然なことです。はい。」
どうやら僕の沈黙を否定だと解釈したらしい。
実際、僕は自分が人間であることに不満を持ったことはなかった。
だから、彼女の言いたいことが分からなかった。
だいたい、今の言い方って
「君には、君がサキュバスであることの不満があるの？」
そう言いたげに聞こえた。
ネリスの表情が曇る。
そして、
「……あります……」
確かにネリスはそう呟いた。
サキュバス。
魅惑的な体に美しい容姿、強い魔力を持つ、現在の魔王の卷族。
優れた魔物の象徴ともとれる種族に生まれながら、それに不満がある。
どう言った不満なのか、とても気になる。
「私たちサキュバスの主食は何かご存知ですよね？ それを補給する方法も。」
僕はうなずいた、第一、教えてくれたのも僕の初めてを食べたのもネリスだった。
「では、補給しなければどうなるかは分りますか？」
「いや……わからない。」
「やがて死に至ります、そう遠くないうちに。」
彼女は重々しく告げた。
彼女の言わんとすることが、ぼんやりと分ってきた。
彼女の不満こそが、彼女の生を追い詰めたものだった。
「死にたくないなら、交わるしかありません、望む望まないに関わらず。」
僕はそれを理由に彼女に怒りを覚えたのだ。
彼女を憎く思ったのだ。
死なないための行為だったはずなのに。
望んでいたのかも知らないのに。
「死なないために……愛していない人に抱かれなくてはいけないのは……私にとって耐え難い苦痛です………」
悲痛さすら感じさせる声で、ネリスは言った。
彼女が恥ずかしがりやで、サキュバスらしい好色さを持ち合わせなかったからこそ、サキュバスの色と共に生きる体質が苦痛を生んでいた。
「だから、テリュンさんに会えて、愛していただけると知った時は本当に嬉しかったんです、一目惚れでしたから……」
そう言ってネリスはとびきりの笑顔を見せてくれた。
ほとんど無意識、僕は彼女を抱きしめていた。
冷やしたはずの息子も、また熱く滾っている。
「ここじゃダメです……」
「僕たちしかいないよ？」
「それでも駄目です、『ベッドルームでは自由にセックスしてもいいけど他の部屋ではしちゃいけない。』そういう決まりですから。」
頑固だなぁ。
真剣に説くネリスに、僕は思わず苦笑していた。
頑固にダメと言ったネリスも実はかなり興奮していたらしく、ベッドルームに来るとすぐに服を全部脱いで僕に股をひらいた。
積極的な彼女に誘われ始めてから五分。
「あっあぁぉおっ、うんぁっ」
ベッドの上で正常位になり、ずんずんと奥を突く。
一度のストロークごとに何度も異なるあえぎ声を出してよがる姿が本当にエロ可愛い。
ゆっくりと抜いて行く。
すぷすぷずぷ
「あ、あああ、はぁっ」
入り口近くで止めて、一気に突っ込む。
ぬぷ ごちゅん
「あっあっ、―――うんんぁああ！！」
同じ動きに見せて、刺激の仕方を変えているからネリスもなかなか慣れない。
もう一度引き抜いて行く、今度は少し早めに。
「あ、あ、やぁっ」
全部抜けてしまうと危惧した膣があわてて追いかけて来るのに合わせて、
ずにゅるん
一気にわざと襞に引っ掛かりまくるような角度で突っ込む。
「ひゃあああっ、あああぁああァン！！」
悲鳴のようなあえぎ声。
素早く引っ込めて、ゆっくり攻める。
「あぅン、あ、あぁぁぁああ」
喉の奥から洩れるようなあえぎ声。
本当に微細な攻め方の違いによって反応を変えてくれるから飽きない。
奥に届ききってなお奥に突っ込むように力を入れて攻める。
「あ、ああぅ…………子宮攻められてます……」
亀頭に吸いついてくるようなこの感触は子宮口かな？
せめるたびに僕の息子全体に彼女が絡みついてくる。
彼女の視線が訴えている。
強請ってくる。
『早く出してほしいです』と。
けどご褒美はまだ。
だって僕はまだ満足してないから。
もっと強く彼女の子宮口に僕の先端を押しつける。
「あっあっ、子宮が、形変わっちゃいます。」
ぐいぐいと、子宮口をこじ開けんがばかりに亀頭を押しつける。
ネリスの子宮口がそれに反応して亀頭にキスをまぶしてくる。
しかも、もっとほしいと言わんばかりにネリスの細くてきれいな脚が僕の腰に絡みついてくる。
「はぁ……下のお口でキスしてます……」
むしゃぶりつくように僕の尿道口とネリスの子宮口がキスしている。
その情景でも想像したんだろう、うっとりした顔でネリスが呟く。
始めると一気に淫乱になるよな……まぁ僕もだけど。
「じゃあ上の口でもキスしよう。」
シーツを握っていた手を解かせて、指をからめあう。
唇を合わせるとすぐに舌が僕の口に侵入してくるから、歯と舌で歓迎する。
「ン……ちゅく、ぢゅ……」
キスがうまいのはサキュバスの血が原因なのかな。
「ん……ぷぁ……」
ゆっくりと唇を離すと、名残惜しそうに離れる。
口からこぼれた唾液が糸をひく姿すらいやらしくて興奮をあおる。
「あ……まだ…おっきくなるんですね……」
どうにも、僕の興奮は天井知らずらしい。
もっと彼女を犯したい、もっと愛したいと思うごとに、どんどん昂る。
「テリュンさん……テリュンさん……！」
ものほしそうな瞳が僕を見上げて来る。
絡めた指に力が加えられる。
足も力いっぱい僕を抑えつけて、強く子宮口が催促する。
「ほしい！ ほしいです……」
「何が？ 言ってくれないよわからないよ？」
求めているものが何かなんてわかりきってるけど、ここは焦らす。
彼女の口からそれを求める明確な意思を伝えてほしい。
そして僕の望んだとおりに、彼女は強請ってきた。
「精液！ 精液ほしいです、私の中に、孕んじゃうくらいぃいい！！」
「よく、できました。」
百点満点の答え。
指を少しだけ強引にはずし、ネリスの腰をつかむ。
腰と両手を利用して、乱暴なまでに豪快なピストンを始める。
ばちゅん ぱぢゅん ぺぢゃん ずちゃ
卑猥ということすら躊躇われるほどいやらしい音が響く。
「あぁっ ア、 ひゃぐっ、ふはぁ！」
ただ息を喉から出してるだけにしか聞こえないけど、顔を見ればとんでもなく感じまくってることが分かる。
膣がイキっぱなしのように力強く絞り上げて来るから。
これはもう持たない。
「出すよ！ 花マルの代わりに精液を上げる、しっかり受け取るように！」
「はい！ ありがとうござ――」
ネリスが言いきる前に、僕の堤防が決壊した。
どぶどぐぶぐびじゃぐぢょおっ
擬音にするのが困難なくらいとにかくものすごい勢いで精液を彼女の中にぶちまけた。
「ァ――――――――っ！！ ざーめんすごいのきたぁ――――――！！！！」
これが本当にネリスかと思うくらい普通に卑猥な単語を口走りながら、彼女は体中を膣内含め余すところなく痙攣させてイキまくる。
一分ほど続いたバカげた射精のあとで、ネリスはそれでも意識は保っていた。
「サキュバスに生まれたこと……今は良かったって思えました……」
悦に狂ったような焦点の定まらない目で、僕にしがみつきながらネリスはそう言った。
「だって……こんなに気持ちいい時間を大好きな人と一緒に生きられますから……」
返事をする気力もなくて、僕はそのまま彼女を抱いて眠りについた。
ネリスは僕の頭を膝に乗せた状態で、服も全部着て切り株に座っている。
僕も気を失う時は裸だったはずなのに、今はきっちり服を着ている、ネリスが着せてくれたんだろう。
どのぐらい気絶していたんだか……
「起きられましたか……」
ネリスがなんだか申し訳なさそうな顔で言う。
なんか……服から異臭がするけど気にしちゃいけないんだよな？
「やっぱり誰も見ないとわかってても野外は好きじゃないです……」
「おなかはいっぱいになった？」
「五分目ほどですけど……それより心が満たされたので十分です。」
「そうか、それは良かった。」
と表面上何でもないようにしていたけど、内心とんでもなく驚いていた。
あれで五分目……？
だってネリスも気を失ってたよね？ 僕も気絶した。
なのにそれでもまだ五分目って、どれだけ必要なの？
「テリュンさんが起きるのを待ってたんですよ。」
「どうして？ 補給は済んだんだから置いて行ってもいいような気がするけど。」
「それは……あの……」
ネリスが顔を赤く染める。
もじもじと恥ずかしそうな彼女の様子を見てなんだかまたむらむらしてしまう。
「テリュンさんは……私のこと好きですか？」
「もちろん！」
だって一目惚れをしてしまった挙句に語り合ってまた一回惚れて、そしてセックスしていたときにももう一回惚れましたから。
「良かった……相思相愛って聞いて勝手に盛り上がってたんじゃないかと不安になったんです……」
そう言えばそんなことを言っていた気がするよ。
ついでに言うと、そのあとから急にネリスが激しくなった気もする。
「ところで、それがどう関係するの？」
「よろしければ……クルツに来ませんか？」
「クルツ……」
クルツ自治領。
ネリスの故郷であり魔物と人が共存する土地。
この反魔物派が大多数を占める王国で、数少ない親魔物派の土地。
「けど、クルツに一度移住してからこの王国の他の土地に移住することは現状ほぼ不可能です、ですから……」
「うん、ネリスの故郷なんだろ？ 行ってみたいよ。」
すごくまじめに話すネリスに対して、僕は気楽に答えた。
「本当ですか！？」
「うん、本当、どうせ僕はもう家族もいないし、あの土地にそこまで大きな未練があるわけじゃないからね。」
それに、クルツに行けばネリスに会える。
声には出さなかったけれど、それが一番の動機だった。
クルツ自治領までは、歩いておよそ一日。
意外に近くてびっくりだ、ネリスも帰る途中だったらしい。
とりあえず出かける前の準備として森の他の罠を点検して、何もかかっていなかったら解除、かかっていたら食料として取っておいた。
一時間ほどかけて用意を終わらせるまでの間、ネリスは何も言わずに僕を待ってくれていた。
「お待たせ。」
「いえ、じゃあ行きましょうか。」
ネリスの頭からは、角が消えている。
角隠しというサキュバスの魔法の一種で、角を他人には見えないようにするらしい、利用すれば人間の女性のようにふるまえるのだとか。
便利すぎないかと疑問に思ったけど、どうやら高い魔力を持っていないとできないらしく普通当たり前にはやらないのだそうだ。
「どっちに向かうの？」
「ここから南西です。」
耳を疑った。
ここから南西に半日ほど行けば、そこは人の立ち入りの乏しい険しい山岳地帯だ。
一番近い僕たちの村の住民ですら、そこに好んで行こうとする人はいない。
王国で一番開発が進んでいない地域とすら言われている。
「クルツ自治領は、山岳地帯にあった盆地に作られてるんです。」
「そこまで行くのに一日か……それより、良く今まで誰にも見つからなかったよね、人里から結構近いと思うんだけど。」
「そこら辺は万全です、屈強な騎士でも簡単には入ってこれません。」
形の良い胸をそらしてネリスは言い切る。
それってもしかして、存在自体はある程度外部に漏れてる？
そう思ったけれど、気にするのはやめておいた。
六時間ほど歩いて夜。
僕も来たことのないような森の奥深くに、宿のような建物があったのでそこで休んでいる。ここから僕のいた村までは往復で半日以上かかるだろう、村人の物ではないと思う。
ロビーのような部屋にソファがあったので僕はそれに座っている。
台所には保存のきく種類の食べ物がたくさんあり、医薬品までそろっている。
さらには近くに泉があり、体を洗うこともできる。
ネリスが案内してくれたところを考えると、クルツの関係者が外に行くときに一次停留するための停留所かな？
そのネリスは泉に水浴びに行っている。
覘きに行ってもたぶん幻術で保護してあるだろう。
サキュバスにしては珍しいよな、あんな恥ずかしがり。
そう言えばもう一つ気になることがある。
ネリスはどうしてあんなに飢えていたんだろう。
はっきり言って彼女はとんでもなく可愛い。
スタイルもいいしおまけに性格もよくできてると思う。
魔物ということを除いたとしても、彼女を抱きたいと思うような男に困るとは到底思えない、ブス選はかなりの少数派だ。
つまり、精を貢ぐ男に困ることは考えなくていい。
なのに彼女は飢餓の末に僕に体を預けた。
「気持ち良かったな……」
思い出すだけで起ちそうになる。
ってそうじゃない。
「気持ち良かったなら、今夜もします？」
甘い声で背後からネリスが誘惑してきた。
後ろから抱き締められるようにして、右肩に彼女の頭が乗る。
その目線は信じられないほど妖艶で、下半身にどんどん血がたまって行くのがわかった。
「なんて、冗談ですよ。テリュンさんも水浴びしてきたらどうですか？」
彼女が僕から離れていく。
言われたとおりに水浴びをしてみる。
熱を持った下半身を冷やすのに、ちょっと時間がかかった。
ロビーにもどってきてみると、ネリスが待っていた。
普通の村娘の格好のままだ、サキュバスの格好に変わったりはしていない。
「おかえりなさい、テリュンさん。」
「ただいま、ネリス。」
夫婦のようなやり取りだけをして僕が向かいのソファに座る。
「待っててくれたの？」
「はい、聞きたいことがあったから……」
さっきの誘惑に対する返事かな？
そう思って身構えた僕の耳には、意外な質問が来た。
「テリュンさんは……自分が人間であることに不満を持ったことはないですか？」
それがネリスの質問だった。
質問の意味がわからなくて呆けていた僕に、ネリスがため息を見せた。
「ない……ですよね、それが自然なことです。はい。」
どうやら僕の沈黙を否定だと解釈したらしい。
実際、僕は自分が人間であることに不満を持ったことはなかった。
だから、彼女の言いたいことが分からなかった。
だいたい、今の言い方って
「君には、君がサキュバスであることの不満があるの？」
そう言いたげに聞こえた。
ネリスの表情が曇る。
そして、
「……あります……」
確かにネリスはそう呟いた。
サキュバス。
魅惑的な体に美しい容姿、強い魔力を持つ、現在の魔王の卷族。
優れた魔物の象徴ともとれる種族に生まれながら、それに不満がある。
どう言った不満なのか、とても気になる。
「私たちサキュバスの主食は何かご存知ですよね？ それを補給する方法も。」
僕はうなずいた、第一、教えてくれたのも僕の初めてを食べたのもネリスだった。
「では、補給しなければどうなるかは分りますか？」
「いや……わからない。」
「やがて死に至ります、そう遠くないうちに。」
彼女は重々しく告げた。
彼女の言わんとすることが、ぼんやりと分ってきた。
彼女の不満こそが、彼女の生を追い詰めたものだった。
「死にたくないなら、交わるしかありません、望む望まないに関わらず。」
僕はそれを理由に彼女に怒りを覚えたのだ。
彼女を憎く思ったのだ。
死なないための行為だったはずなのに。
望んでいたのかも知らないのに。
「死なないために……愛していない人に抱かれなくてはいけないのは……私にとって耐え難い苦痛です………」
悲痛さすら感じさせる声で、ネリスは言った。
彼女が恥ずかしがりやで、サキュバスらしい好色さを持ち合わせなかったからこそ、サキュバスの色と共に生きる体質が苦痛を生んでいた。
「だから、テリュンさんに会えて、愛していただけると知った時は本当に嬉しかったんです、一目惚れでしたから……」
そう言ってネリスはとびきりの笑顔を見せてくれた。
ほとんど無意識、僕は彼女を抱きしめていた。
冷やしたはずの息子も、また熱く滾っている。
「ここじゃダメです……」
「僕たちしかいないよ？」
「それでも駄目です、『ベッドルームでは自由にセックスしてもいいけど他の部屋ではしちゃいけない。』そういう決まりですから。」
頑固だなぁ。
真剣に説くネリスに、僕は思わず苦笑していた。
頑固にダメと言ったネリスも実はかなり興奮していたらしく、ベッドルームに来るとすぐに服を全部脱いで僕に股をひらいた。
積極的な彼女に誘われ始めてから五分。
「あっあぁぉおっ、うんぁっ」
ベッドの上で正常位になり、ずんずんと奥を突く。
一度のストロークごとに何度も異なるあえぎ声を出してよがる姿が本当にエロ可愛い。
ゆっくりと抜いて行く。
すぷすぷずぷ
「あ、あああ、はぁっ」
入り口近くで止めて、一気に突っ込む。
ぬぷ ごちゅん
「あっあっ、―――うんんぁああ！！」
同じ動きに見せて、刺激の仕方を変えているからネリスもなかなか慣れない。
もう一度引き抜いて行く、今度は少し早めに。
「あ、あ、やぁっ」
全部抜けてしまうと危惧した膣があわてて追いかけて来るのに合わせて、
ずにゅるん
一気にわざと襞に引っ掛かりまくるような角度で突っ込む。
「ひゃあああっ、あああぁああァン！！」
悲鳴のようなあえぎ声。
素早く引っ込めて、ゆっくり攻める。
「あぅン、あ、あぁぁぁああ」
喉の奥から洩れるようなあえぎ声。
本当に微細な攻め方の違いによって反応を変えてくれるから飽きない。
奥に届ききってなお奥に突っ込むように力を入れて攻める。
「あ、ああぅ…………子宮攻められてます……」
亀頭に吸いついてくるようなこの感触は子宮口かな？
せめるたびに僕の息子全体に彼女が絡みついてくる。
彼女の視線が訴えている。
強請ってくる。
『早く出してほしいです』と。
けどご褒美はまだ。
だって僕はまだ満足してないから。
もっと強く彼女の子宮口に僕の先端を押しつける。
「あっあっ、子宮が、形変わっちゃいます。」
ぐいぐいと、子宮口をこじ開けんがばかりに亀頭を押しつける。
ネリスの子宮口がそれに反応して亀頭にキスをまぶしてくる。
しかも、もっとほしいと言わんばかりにネリスの細くてきれいな脚が僕の腰に絡みついてくる。
「はぁ……下のお口でキスしてます……」
むしゃぶりつくように僕の尿道口とネリスの子宮口がキスしている。
その情景でも想像したんだろう、うっとりした顔でネリスが呟く。
始めると一気に淫乱になるよな……まぁ僕もだけど。
「じゃあ上の口でもキスしよう。」
シーツを握っていた手を解かせて、指をからめあう。
唇を合わせるとすぐに舌が僕の口に侵入してくるから、歯と舌で歓迎する。
「ン……ちゅく、ぢゅ……」
キスがうまいのはサキュバスの血が原因なのかな。
「ん……ぷぁ……」
ゆっくりと唇を離すと、名残惜しそうに離れる。
口からこぼれた唾液が糸をひく姿すらいやらしくて興奮をあおる。
「あ……まだ…おっきくなるんですね……」
どうにも、僕の興奮は天井知らずらしい。
もっと彼女を犯したい、もっと愛したいと思うごとに、どんどん昂る。
「テリュンさん……テリュンさん……！」
ものほしそうな瞳が僕を見上げて来る。
絡めた指に力が加えられる。
足も力いっぱい僕を抑えつけて、強く子宮口が催促する。
「ほしい！ ほしいです……」
「何が？ 言ってくれないよわからないよ？」
求めているものが何かなんてわかりきってるけど、ここは焦らす。
彼女の口からそれを求める明確な意思を伝えてほしい。
そして僕の望んだとおりに、彼女は強請ってきた。
「精液！ 精液ほしいです、私の中に、孕んじゃうくらいぃいい！！」
「よく、できました。」
百点満点の答え。
指を少しだけ強引にはずし、ネリスの腰をつかむ。
腰と両手を利用して、乱暴なまでに豪快なピストンを始める。
ばちゅん ぱぢゅん ぺぢゃん ずちゃ
卑猥ということすら躊躇われるほどいやらしい音が響く。
「あぁっ ア、 ひゃぐっ、ふはぁ！」
ただ息を喉から出してるだけにしか聞こえないけど、顔を見ればとんでもなく感じまくってることが分かる。
膣がイキっぱなしのように力強く絞り上げて来るから。
これはもう持たない。
「出すよ！ 花マルの代わりに精液を上げる、しっかり受け取るように！」
「はい！ ありがとうござ――」
ネリスが言いきる前に、僕の堤防が決壊した。
どぶどぐぶぐびじゃぐぢょおっ
擬音にするのが困難なくらいとにかくものすごい勢いで精液を彼女の中にぶちまけた。
「ァ――――――――っ！！ ざーめんすごいのきたぁ――――――！！！！」
これが本当にネリスかと思うくらい普通に卑猥な単語を口走りながら、彼女は体中を膣内含め余すところなく痙攣させてイキまくる。
一分ほど続いたバカげた射精のあとで、ネリスはそれでも意識は保っていた。
「サキュバスに生まれたこと……今は良かったって思えました……」
悦に狂ったような焦点の定まらない目で、僕にしがみつきながらネリスはそう言った。
「だって……こんなに気持ちいい時間を大好きな人と一緒に生きられますから……」
返事をする気力もなくて、僕はそのまま彼女を抱いて眠りについた。
11/03/19 20:56更新 / なるつき
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