第五話 甘くて甘くない
「あっん……ふあ、これ、すきぃ♥」
俺の膝の上に座ったプラムのたわわな乳房を優しく解すように揉む、柔らかくて弾力のある瑞々しい胸は、指に吸い付くように触れながらも少しでも押し込もうものなら確かな弾力を持って応えてくる。
これが今朝は俺のあれを挟んでたんだよな……
ついでに言えば、俺の腰辺りに押し付けられてる可愛いお尻の感触もまたたまらない、そう思うとズボンの中でムクムク大きくなってくるのを感じる。そう言えば今朝は中に入れるあと一歩手前のところでハロルドさんが邪魔したんだよな。
「お尻に当たってる♪ 入れたい? いいよ、朝はできなかったもんね。」
そう言いながらも俺が自分の意思で行動するよう、腰を振って軽くお尻を押し付けてくることはあっても自分から中に入れようとはしない。やり手だ、この女。
しかしやっぱり俺の方から積極的にそこまで行くのは気が引けた、もうここまで来てしまったんだからそれもどうかと思うけれどやっぱり、幼い少女を相手に肉体関係を結んでしまうことに倫理的な嫌悪を覚えていた。
幼い女の子に対する背徳と快楽を教義とするサバトの一員でもないのに、そんなことを好んでする性質は俺にはない。
プラムのことは本気で好きなんだかそれとこれとは基本的に別。
けどやっぱ、入れたい。彼女と深いところで一つになりたい。
そう悶々としていると、テントの隅に置いてあった木簡が光り出した。
「あ……うぅー。」
不満そうな顔で俺の膝の上から退いたプラムが木簡を取ると、そこからハロルドさんの切羽詰まった声が漏れてくる。そのほかにも小さな怒声がいくつも聞こえる。
『プラム、ロットも一緒だよね! まずいことになった、とり逃した残党が……プラムのお母さんのいる洞窟を見つけた。今……人質にとられてる。』
「っ!?」「マジかよ……」
最悪だ、邪魔されたこともかなり腹の立つ出来事ではあったが、それ以上にプラムの母親のエルテさんたちが人質にとられていることが信じられないくらい良くない。
なんて失態晒してくれてるんだあの人たちは。
「ど、どうしよう。お母さん助けに行かないと! 殺されちゃう!」
「わかった、わかるから今は少し落ち着け。」
どうすればいいのか、ハロルドさんがわざわざ俺たちに連絡してきたことにも多分意味はあると思う。あの人のことだし自分たちの力だけで解決できることなら、俺たちを不安にさせるような意味のない連絡はしてこないはずだ。多分。
「そうだ! あの抜け道!」
『避難者』たちの洞窟を抜けるときに使ったあの通路からなら、恐らくスラム側から侵入したであろう人質に取ってる連中の死角を突いて人質を救出できるチャンスがあるかもしれない。
「行くぞ、お前のお母さんや、他の皆を助けるのは俺たちだ。」
まだわかってない顔のプラムの腕をつかみ、抱き上げてから強引にテントの外に連れ出すとドヴィーのことを見張っていたクルツの人達に頭を下げ、洞窟につながる廃村の古井戸を一直線に目指す。
下手をしたら見張られていたせいで場所が割れるかもしれないという危機感こそあったものの、それ以上に早く助けなければという気持ちで一杯だった。
日が傾いているから、帰るころには食事の時間だろう。
レクターンにほど近い森を抜け、自分でも信じられないほど速く廃村の古井戸にたどり着くと、プラムを待たせて梯子を手早く降りていく、無事におりきって敵が近くにいないことを確認すると、プラムに「飛び降りてこい」という趣旨の合図を出す。
目を閉じながらもしっかり飛び降りてきたプラムを受け止めて、また抱きかかえた姿勢のまま洞窟を走り抜ける。
そして月明かりに照らされた、俺たちが探していた人たちに出会ったその場所に役者がそろっていた。声を出しそうになったプラムの口をすぐに塞ぐ。
旧王国軍残党六人と人質三人、拳銃を持っているのが三人で、やはり銃を持っている俺たちに絡んできたリーダーがエルテさんを抑え込んで額に銃を突き付けている。
丁度みんなを挟んで反対側にハロルドさんとキサラギ監査官率いるクルツ・王の目チーム。俺たちの存在に気付いているようだが、気づかないふりをし続けていてくれる。
「こいつらの命が惜しいんだろう? だったらさっさと道を開け。」
「………」「…………」
男の要求に対してハロルドさんやキサラギ監査官の反応はない。状況がどうにか動くのを待っている、俺たちの手で状況が変わることを、だ。
どうするのかと言えば、背後から気づかれないように接近して、最低でもリーダーを含む二人を同時に黙らせる、チャンスは一度きり。慎重に機を窺う必要がある。
「そう言えばお前には、大事な商品を強奪された恨みを晴らしておかんとな。」
そう言って男が、ハロルド氏に銃口を向ける、そして他の銃持ちも彼に狙いを定める。
動かれないよう、人質の一人の首筋にナイフが押し当てられる、俺に情報を流してくれた中年の女性だった。動けば彼女の命はないという意味だろう。
しかし、チャンスだ。
「記憶にないなー、そういう経験、たくさんありすぎるから、さ。」
とぼけた顔で手を挙げて見せるが、「撃てない」と確信していることが見て取れる。
それもそうだ、あの拳銃は軽量小型で片手で使えるとはいえ魔法銃と違って連射が効かない、一発撃ってしまったら弾丸の再装填は必須、いくら人質がいると言ってもそれがどこまで有効なのかわからない以上発射はできない。
「十年ほど前のことだ、この町で捕獲したホブゴブリンや、近場でとらえたミノタウロスをお前に強奪された、あの時は何人も貴様に顎を砕かれて大騒ぎだったぞ。」
その発言を聞いた瞬間怒りが込み上げてきた、プラムから、俺の女から母親を奪った野郎がのうのうと今その母親を人質にして助かろうとしてる。その事実が許せなかった。
「ふーん、でも悪いのは僕じゃなくて禁じられた奴隷売買を行ってる側だろ?」
「うるせぇっ!!」
発砲音がして、ハロルド氏の頬に傷ができる。
「あー……まぁいいや、フレッド先生やハルトなら治してくれるだろ。」
血が出ているのを特に気にする様子もなく、ハロルド氏は男を見やる。
「ほら、再装填したらどう?」
のんびりとした口調で挑発し、一歩前に足を出そうとして
「動くなァ―――――――――――――っ!! それ以上前に出て見ろ人質がどうなるか、分かってんだろをなぁ――――――――――――――――っ!!」
絶叫に近い、かなり呂律の廻らないトチ狂った叫び声で男が威嚇する。
男たちからしてみても正直絶望的な状況、パニックから興奮して当たり前だ。しかしその当たり前のせいでかなり人質が危険なことは疑いようもないだろう。早く助けなくては何をされるかわからない。
「わかってるよ、近づかないって。僕は、ね。」
そう言ってハロルド氏が、棒を上に投げた。注意を一瞬でも惹きつけるための陽動だ。
今だ。そう確信して一気に突っ込み、背後から抜剣しながら切りかかってナイフを持っていた中で一番近くにいたやつの肩から先を切り捨てる。返す刀で更に一人切り倒し、プラムが後ろから棍棒を投げつけてリーダー格の頭に直撃させ一撃で昏倒させる。
「撃ちなさい!」
キサラギ監査官の指示で一気に大局が決まった。
人の列の後ろで隠れて銃を構えていた彼女の部下二人が一瞬で人質を抑え込んでいた二人の肩を狙撃し行動を封じ、俺とプラムでそいつを気絶させる。
クルツ人たちも一斉に襲い掛かり六人全員が取り押さえられ、人質も無事に解放される。
「この銃、この都市の防備隊に支給されているモノですね、盗難された記録もないのに数が明らかにおかしいから疑ってたんですけれどやっぱり真っ黒じゃないですか。」
没収した銃をまじまじと見つめながらキサラギ監査官がそう呟く。
「お母さん、お母さん。」
プラムがまた泣きながら、エルテさんと抱擁している。
「怪我とかない? 大丈夫?」
「大丈夫よ、でもまさか自分の子供に助けられるなんてね。」
心配そうなプラム相手にエルテさんはにこやかに語りかける、幼い姿のままあまり成長しないゴブリン種の特性のために見た目は姉妹にしか見えないのに、確かにエルテさんの態度を見ると親子で、エルテさんが母親だとよくわかる。
「子供って、わたしだってもう大人なんだよー」
「そうね、離れてたから実感ないけど、もう『○○歳』になるんだもんね。でもお母さんにとってはずっと可愛い娘のままだよ。」
「…………○○歳?」
今明らかにエルテさんは聞き捨てならないことを言った。○○歳だと言った。
あれ、
「俺どころか、ハロルド氏より年上なのかよ! 全然知らなかったっつーか全く一度もそんな話聞いてないぞどう言うこった!!」
「ありゃりゃ? 言って無かったっけ?」
言われてない、一言も言われてないどころか俺が今までプラムとするのを我慢してきたのはずっと俺より年下の、まだ幼児と言っていい年齢とばかり思い込んでいたという理由があったからだ、そうでなかったら早くから襲ってた可能性もある。
なんてことだ、そんなのありか?
精神的に幼いし母親をわざわざ探すくらいだから、俺の方が年上でもっと幼いと勝手に思い込んでた。失礼な話だけど仕方がないと思ってほしい。
「ごめんね、邪魔しちゃって。」
ハロルド氏が俺たちに頭を下げてくる、何を邪魔したと思ってるんだろうか。
「ハロルドさん、私は早馬を飛ばして王国正規軍に協力を要請してきます、あれだけの大人数を一気に連行するとなると王の目だけでは足りませんので。ハロルドさんたちクルツの皆さんは以前と同様に復興支援をお願いします。」
「ああ、お疲れ様。」
「それと姫様から伝言が『いつもありがとうございます、そのうちもう一度、皆さんと食事がしたいです』だそうです。」
それだけ告げるとキサラギ監査官はもう一度頭を下げてから洞窟を飛び出していった。
あの若さは多分、素なんだろう。年齢は俺より下のはずだ。
「やれやれ、あの子も、そのうち良い相手を見つけられるといいんだけどね。」
ハロルド氏はそう言いながらキサラギ監査官を見送っている。
あれだけ精力的に働いていれば確かに、あまり人と関わったり結婚する相手を探している時間もないだろう。すごくイイ人そうなのにもったいない。
「ね、帰ろう? さっきの続き、してほしいから、ね?」
俺がいろいろ考えていると服の袖をつかんでプラムがそうねだってきた。
「そうだね、それがいいと思う。僕たちのせいで二人っきりの時間を邪魔しちゃったみたいだし、今度こそゆっくりしてよ。」
何かを察したハロルド氏もすんなり許可してくれた、なので、少し早足にプラムを連れて自分たちの幕舎をめざし移動を開始する。
今までの鬱憤を、晴らさせてもらおうじゃないか。
俺の膝の上に座ったプラムのたわわな乳房を優しく解すように揉む、柔らかくて弾力のある瑞々しい胸は、指に吸い付くように触れながらも少しでも押し込もうものなら確かな弾力を持って応えてくる。
これが今朝は俺のあれを挟んでたんだよな……
ついでに言えば、俺の腰辺りに押し付けられてる可愛いお尻の感触もまたたまらない、そう思うとズボンの中でムクムク大きくなってくるのを感じる。そう言えば今朝は中に入れるあと一歩手前のところでハロルドさんが邪魔したんだよな。
「お尻に当たってる♪ 入れたい? いいよ、朝はできなかったもんね。」
そう言いながらも俺が自分の意思で行動するよう、腰を振って軽くお尻を押し付けてくることはあっても自分から中に入れようとはしない。やり手だ、この女。
しかしやっぱり俺の方から積極的にそこまで行くのは気が引けた、もうここまで来てしまったんだからそれもどうかと思うけれどやっぱり、幼い少女を相手に肉体関係を結んでしまうことに倫理的な嫌悪を覚えていた。
幼い女の子に対する背徳と快楽を教義とするサバトの一員でもないのに、そんなことを好んでする性質は俺にはない。
プラムのことは本気で好きなんだかそれとこれとは基本的に別。
けどやっぱ、入れたい。彼女と深いところで一つになりたい。
そう悶々としていると、テントの隅に置いてあった木簡が光り出した。
「あ……うぅー。」
不満そうな顔で俺の膝の上から退いたプラムが木簡を取ると、そこからハロルドさんの切羽詰まった声が漏れてくる。そのほかにも小さな怒声がいくつも聞こえる。
『プラム、ロットも一緒だよね! まずいことになった、とり逃した残党が……プラムのお母さんのいる洞窟を見つけた。今……人質にとられてる。』
「っ!?」「マジかよ……」
最悪だ、邪魔されたこともかなり腹の立つ出来事ではあったが、それ以上にプラムの母親のエルテさんたちが人質にとられていることが信じられないくらい良くない。
なんて失態晒してくれてるんだあの人たちは。
「ど、どうしよう。お母さん助けに行かないと! 殺されちゃう!」
「わかった、わかるから今は少し落ち着け。」
どうすればいいのか、ハロルドさんがわざわざ俺たちに連絡してきたことにも多分意味はあると思う。あの人のことだし自分たちの力だけで解決できることなら、俺たちを不安にさせるような意味のない連絡はしてこないはずだ。多分。
「そうだ! あの抜け道!」
『避難者』たちの洞窟を抜けるときに使ったあの通路からなら、恐らくスラム側から侵入したであろう人質に取ってる連中の死角を突いて人質を救出できるチャンスがあるかもしれない。
「行くぞ、お前のお母さんや、他の皆を助けるのは俺たちだ。」
まだわかってない顔のプラムの腕をつかみ、抱き上げてから強引にテントの外に連れ出すとドヴィーのことを見張っていたクルツの人達に頭を下げ、洞窟につながる廃村の古井戸を一直線に目指す。
下手をしたら見張られていたせいで場所が割れるかもしれないという危機感こそあったものの、それ以上に早く助けなければという気持ちで一杯だった。
日が傾いているから、帰るころには食事の時間だろう。
レクターンにほど近い森を抜け、自分でも信じられないほど速く廃村の古井戸にたどり着くと、プラムを待たせて梯子を手早く降りていく、無事におりきって敵が近くにいないことを確認すると、プラムに「飛び降りてこい」という趣旨の合図を出す。
目を閉じながらもしっかり飛び降りてきたプラムを受け止めて、また抱きかかえた姿勢のまま洞窟を走り抜ける。
そして月明かりに照らされた、俺たちが探していた人たちに出会ったその場所に役者がそろっていた。声を出しそうになったプラムの口をすぐに塞ぐ。
旧王国軍残党六人と人質三人、拳銃を持っているのが三人で、やはり銃を持っている俺たちに絡んできたリーダーがエルテさんを抑え込んで額に銃を突き付けている。
丁度みんなを挟んで反対側にハロルドさんとキサラギ監査官率いるクルツ・王の目チーム。俺たちの存在に気付いているようだが、気づかないふりをし続けていてくれる。
「こいつらの命が惜しいんだろう? だったらさっさと道を開け。」
「………」「…………」
男の要求に対してハロルドさんやキサラギ監査官の反応はない。状況がどうにか動くのを待っている、俺たちの手で状況が変わることを、だ。
どうするのかと言えば、背後から気づかれないように接近して、最低でもリーダーを含む二人を同時に黙らせる、チャンスは一度きり。慎重に機を窺う必要がある。
「そう言えばお前には、大事な商品を強奪された恨みを晴らしておかんとな。」
そう言って男が、ハロルド氏に銃口を向ける、そして他の銃持ちも彼に狙いを定める。
動かれないよう、人質の一人の首筋にナイフが押し当てられる、俺に情報を流してくれた中年の女性だった。動けば彼女の命はないという意味だろう。
しかし、チャンスだ。
「記憶にないなー、そういう経験、たくさんありすぎるから、さ。」
とぼけた顔で手を挙げて見せるが、「撃てない」と確信していることが見て取れる。
それもそうだ、あの拳銃は軽量小型で片手で使えるとはいえ魔法銃と違って連射が効かない、一発撃ってしまったら弾丸の再装填は必須、いくら人質がいると言ってもそれがどこまで有効なのかわからない以上発射はできない。
「十年ほど前のことだ、この町で捕獲したホブゴブリンや、近場でとらえたミノタウロスをお前に強奪された、あの時は何人も貴様に顎を砕かれて大騒ぎだったぞ。」
その発言を聞いた瞬間怒りが込み上げてきた、プラムから、俺の女から母親を奪った野郎がのうのうと今その母親を人質にして助かろうとしてる。その事実が許せなかった。
「ふーん、でも悪いのは僕じゃなくて禁じられた奴隷売買を行ってる側だろ?」
「うるせぇっ!!」
発砲音がして、ハロルド氏の頬に傷ができる。
「あー……まぁいいや、フレッド先生やハルトなら治してくれるだろ。」
血が出ているのを特に気にする様子もなく、ハロルド氏は男を見やる。
「ほら、再装填したらどう?」
のんびりとした口調で挑発し、一歩前に足を出そうとして
「動くなァ―――――――――――――っ!! それ以上前に出て見ろ人質がどうなるか、分かってんだろをなぁ――――――――――――――――っ!!」
絶叫に近い、かなり呂律の廻らないトチ狂った叫び声で男が威嚇する。
男たちからしてみても正直絶望的な状況、パニックから興奮して当たり前だ。しかしその当たり前のせいでかなり人質が危険なことは疑いようもないだろう。早く助けなくては何をされるかわからない。
「わかってるよ、近づかないって。僕は、ね。」
そう言ってハロルド氏が、棒を上に投げた。注意を一瞬でも惹きつけるための陽動だ。
今だ。そう確信して一気に突っ込み、背後から抜剣しながら切りかかってナイフを持っていた中で一番近くにいたやつの肩から先を切り捨てる。返す刀で更に一人切り倒し、プラムが後ろから棍棒を投げつけてリーダー格の頭に直撃させ一撃で昏倒させる。
「撃ちなさい!」
キサラギ監査官の指示で一気に大局が決まった。
人の列の後ろで隠れて銃を構えていた彼女の部下二人が一瞬で人質を抑え込んでいた二人の肩を狙撃し行動を封じ、俺とプラムでそいつを気絶させる。
クルツ人たちも一斉に襲い掛かり六人全員が取り押さえられ、人質も無事に解放される。
「この銃、この都市の防備隊に支給されているモノですね、盗難された記録もないのに数が明らかにおかしいから疑ってたんですけれどやっぱり真っ黒じゃないですか。」
没収した銃をまじまじと見つめながらキサラギ監査官がそう呟く。
「お母さん、お母さん。」
プラムがまた泣きながら、エルテさんと抱擁している。
「怪我とかない? 大丈夫?」
「大丈夫よ、でもまさか自分の子供に助けられるなんてね。」
心配そうなプラム相手にエルテさんはにこやかに語りかける、幼い姿のままあまり成長しないゴブリン種の特性のために見た目は姉妹にしか見えないのに、確かにエルテさんの態度を見ると親子で、エルテさんが母親だとよくわかる。
「子供って、わたしだってもう大人なんだよー」
「そうね、離れてたから実感ないけど、もう『○○歳』になるんだもんね。でもお母さんにとってはずっと可愛い娘のままだよ。」
「…………○○歳?」
今明らかにエルテさんは聞き捨てならないことを言った。○○歳だと言った。
あれ、
「俺どころか、ハロルド氏より年上なのかよ! 全然知らなかったっつーか全く一度もそんな話聞いてないぞどう言うこった!!」
「ありゃりゃ? 言って無かったっけ?」
言われてない、一言も言われてないどころか俺が今までプラムとするのを我慢してきたのはずっと俺より年下の、まだ幼児と言っていい年齢とばかり思い込んでいたという理由があったからだ、そうでなかったら早くから襲ってた可能性もある。
なんてことだ、そんなのありか?
精神的に幼いし母親をわざわざ探すくらいだから、俺の方が年上でもっと幼いと勝手に思い込んでた。失礼な話だけど仕方がないと思ってほしい。
「ごめんね、邪魔しちゃって。」
ハロルド氏が俺たちに頭を下げてくる、何を邪魔したと思ってるんだろうか。
「ハロルドさん、私は早馬を飛ばして王国正規軍に協力を要請してきます、あれだけの大人数を一気に連行するとなると王の目だけでは足りませんので。ハロルドさんたちクルツの皆さんは以前と同様に復興支援をお願いします。」
「ああ、お疲れ様。」
「それと姫様から伝言が『いつもありがとうございます、そのうちもう一度、皆さんと食事がしたいです』だそうです。」
それだけ告げるとキサラギ監査官はもう一度頭を下げてから洞窟を飛び出していった。
あの若さは多分、素なんだろう。年齢は俺より下のはずだ。
「やれやれ、あの子も、そのうち良い相手を見つけられるといいんだけどね。」
ハロルド氏はそう言いながらキサラギ監査官を見送っている。
あれだけ精力的に働いていれば確かに、あまり人と関わったり結婚する相手を探している時間もないだろう。すごくイイ人そうなのにもったいない。
「ね、帰ろう? さっきの続き、してほしいから、ね?」
俺がいろいろ考えていると服の袖をつかんでプラムがそうねだってきた。
「そうだね、それがいいと思う。僕たちのせいで二人っきりの時間を邪魔しちゃったみたいだし、今度こそゆっくりしてよ。」
何かを察したハロルド氏もすんなり許可してくれた、なので、少し早足にプラムを連れて自分たちの幕舎をめざし移動を開始する。
今までの鬱憤を、晴らさせてもらおうじゃないか。
13/04/17 16:30更新 / なるつき
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