転魔の書 ヴァンパイア編
森の中をゆっくりと走る一台の馬車。
その中に乗った、傭兵ギルド所属の傭兵剣士ヴェンスと、彼の相棒である魔術師ティナは、とある依頼を遂行するためにこの馬車に目的地の近くまで乗せてもらっていた。
ヴェンスは背は普通、体の肉付きもそこまでよくはなく、どちらかと言えば細い。紺に近い青い髪に、黒曜石のような瞳をした若い男だ。
一方のティナはまだ少女と言っていい若い女性で、短いが見事な金髪とエメラルド色に輝く大きな瞳、そして同年代の女性と比較して少し小さな身長が特徴だった。
目的地は街道外れにある古城、その中にワーバットの群れが巣食い、夜になると男を襲いに集団で街道付近に出没することから最近ギルドに依頼が来ていたのだ。
ワーバットは対処の難しい魔物ではなく、光を浴びせられれば途端に臆病になって戦意を喪失することから群れでもそこまで討伐難度の高い魔物ではない。
時間帯は夕方、あと一時間とせず日が沈むだろう、そうなればワーバットたちの活動が始まる。
「ここでいい、ああ馬は止めなくていいよ。」
そう言ってヴェンスは立ち上がると、ティナを抱きかかえて馬車から飛び降りた。
ヴェンスが先に歩き出し、ティナがヴェンスの背後に隠れるように動く。彼女もまた、戦いが起きなければいいと思っているはずだ。
日が暮れる前にたどり着かないと見通しの悪い森の中でワーバットの群れに対抗しなくてはならず危険なので、二人は急いで歩を進めた。誰かが先に進んでいた気配はないが、なぜか出来上がっていた獣道を通り古城に向かう。
「門が開いてるな、わざわざ開け放つ意味もなさそうなのに。」
開け放たれた門を見てヴェンスはそう呟いた、ワーバットなら飛んで抜け出せばいいのでわざと門を開けておくことにメリットはない。誘われていると判断するのが妥当だ。
門から城の中に入ると、エントランスでは天井に向かって伸びる柱の合間を縫うようにたくさんの足場が設置されていた、ここで侵入者を迎え撃つようだ。
「敵襲！ 敵襲だ！！」
ヴェンスたちに気付いたワーバットの一人が大声をあげると、エントランスにいたワーバットだけではなく城の奥からも次々とワーバットが姿を現した。
バサバサと音を立ててたくさんのワーバットが天井近くまで舞い上がる。
「男だ！ 久しぶりにまともそうな男が来たぞ！」「女はつまみ出せ！ 私たちには男だけでいい！」「「誰が貰う！？」「「早い者勝ち！！」」
話が決まると、ワーバットたちは次々ヴェンスに向かって上から強襲を試みる。
しかしヴェンスとて、それを想定していないはずがない。
急降下してきたワーバットの腹めがけ、強烈なカウンターの峰打ちを叩き込む。
「あぐぅっ！！？」
悲鳴とともにワーバットは吹っ飛び、味方数人を巻き込んで地面に落下した。
そしてティナも、魔法を発動して周囲を照らし戦意を喪失させに行く。
「うわぁっ！！？」
ワーバットも光に照らされそうになると急いで退避するが光が消えるとすぐにまた向かってくるのであまり効果はなさそうに見える。とはいえ、ワーバットたちも手をこまねいているようで、ヴェンスはこれはチャンスかと判断した、
「俺たちはあんたらに危害を加えに来たんじゃない！ ただ街道を行く行商人を片っ端から襲うのをやめてほしい！ 物流止まって大変なんだよ！」
「知るかよ！」「じゃあ婿寄越せ！」「って言うか婿になれ！！」
ヴェンスの説得に対してワーバットの返事は非常にわかりやすい拒否だった。
仕方ないので物理的説得を試みることにしたヴェンスは、ティナの作った光源の範囲から出て、襲いかかろうとしてくるワーバットたちを正確に落としていく。
「大牙様を呼べ！ 私たちじゃ手におえない！」
「オオキバ様？ こいつらの群れのリーダーか？」
光を逃れて物陰に隠れながらもそう何処かのワーバットが指示を出した。その内容が気になったのでヴェンスは訊ねてみたのだが、返事はない。
「もう来ている、私の部下が世話になったようだな。」
そんな声に、エントランスにいた誰もが注目した、声の主は空中に浮かぶ椅子に座って足を組んでいた、その女性を見た瞬間にヴェンスとティナは凍りついた。
艶めくブロンドの髪、蝶のような薄紅色の装飾の施された豪奢なドレス、そして女性から感じられる強大な魔力。その女性は間違いなく
「………ヴァンパイア…？」
「大牙様！」「いらっしゃったのですか！？」「誰が呼んできたんだ？ 寝てる時間なのに。」「なんでヴァンパイアがワーバットを率いてるんだよ……」
ヴェンスの意見ももっとも、夜行性以外に共通点がほとんどない二種がまさか同行しているなどとは考える人間はほとんどいない。
「利害が一致したので統率しているだけだ、おかげで助かっている。」
瞬時にヴェンスは跳躍して本気で切り付けたが、出現した黒い糸状の何かが進路を阻んだ。
「勝ち目の薄い相手には奇襲や速攻によって事を優位に運ぶ、戦術としては効果があることは認めるがそれはあくまで『勝ち目のある相手』にしか有効でないことを覚えておけ。」
黒い糸状の何かがヴェンスの体のあちこちを貫通しそのまま壁まで吹っ飛ばす。
そのままヴェンスは壁に固定され、全く動けなくなる、どうやら黒いものはヴァンパイアが魔力で作り出した攻撃魔法の一種のようだ。
「なっ……」
黒い糸は人の髪ほどの太さしかしていないにもかかわらず、力には自信のあったヴェンスの体を七か所貫通して壁に縫い付けているだけで完全に動きを封じる。
「ふむ、六本では足りなかったかもしれん、大した力」
ドンッ
磔状態のヴェンスに接近してきたヴァンパイアの体が横にふっとぶ。
ティナの放った魔法がヴァンパイアを吹っ飛ばしたのだ。
「……わるな…… 私のヴェンスに、触るな！」
無口なティナが珍しく語気を強め、目にも敵意を乗せてヴァンパイアを睨む。
「ふむ、礼儀はとにかくとして『素質』はありそうだな。」
それをヴァンパイアは余裕で受け流し、黒い糸の先端をティナに向ける。
ティナの魔術で作り出した火球が四つ、ヴァンパイアに向かって襲い掛かるが、黒い糸がそれを貫く、ただそれだけで火球があっさりかき消される。
逆にヴァンパイアが黒い糸をティナめがけて突進させる。
ティナは防御にかなり強い魔力を費やしたが、作られた防壁をやすやすと貫通した黒い糸はティナの全身を貫き、そのまま持ち上げるとヴェンス同様壁に縫い付ける。
「軽いな、まったくもって軽い。」
そう言いながら、ヴァンパイアはヴェンスに接近する、周囲のワーバットたちは早く譲ってくれないかとでも言いたげに彼に視線を集中していた。
それに対し、ティナに関心を示す魔物はほとんどいない。
「ヴェンスに………触るなぁっ！！」
叫びながら必死に抵抗して抜け出そうとするティナを見て、ヴァンパイアは標的を変えティナの方に向かっていく。何やら楽しそうな愉悦に満ちた感情が見て取れる。
「そうかそうか、ではお前からだ。」
そう言ったヴァンパイアは、迷いもなくティナの首に噛みついた。
鋭く尖った犬歯が肌を穿ち、そこから染み出た血を美味そうに啜る、
「あﾞ……！？ ひぅ………っ！！？」
最初こそ痛みに顔をゆがめたティナだったが、徐々にその顔つきは変わっていく。
体内に送り込まれた濃密かつ多量なヴァンパイアの魔力がティナの体を侵食し、ヴァンパイアへと変えているのだ。そしてその間中ずっと、ティナの体には内側から体を一気に作り変えられる快感が送り込まれ続ける。
「ひぅっ！ うっんぁあああああああああああああああっ！！？」
ひときわ大きく体が震え、半開きの口から除く犬歯が大きく鋭く尖っていく。背中からも翼が生え、ティナが完全にヴァンパイアに変わってしまったことを物語る。
「ふふ、まさか噛まれただけで達するとはな。恥ずかしい子だ。」
服の上からティナの秘部を撫でながら、大牙と呼ばれたヴァンパイアが笑う。
「あ……ごめんなさい、お姉様……」
「かまわないさ、貴族の仲間入りをした記念日だ。あとで相応しい服を持って来させる。」
そう言ったヴァンパイアは、ティナを抱きかかえると濃厚なキスをする。
ちゅくちゅくといやらしい音が立ち、月明かりが差し込む以外にはほとんど明りのないほの暗いエントランスで二人の魔物が唇を重ね合う姿はとても扇情的だ。
十秒ほどだろうか、どちらともなく二人は重ねていた唇を離す、そしてティナはヴェンスに淫靡な笑みを見せ、ヴァンパイアはその隣で優しく笑んでいる。
「ヴェンス………」
ヴェンスのもとまで接近したティナは、おもむろに彼の首筋に噛みついた。
ほんの少しチクリと痛んだ以外痛みは感じず、それどころかそこから痺れるような快感がヴェンスの全身を巡っていく、ティナはうっとりとした表情でヴェンスの血を吸い続け、一分したところでようやく口を離す。
「ぷぁ……ヴェンスの血………美味しい……」
「どれ、私にも味あわせてもらおうか。ヴェンスは『私が捕まえた』のだから、私にも所有権はある。」
ティナを押しのけ、大牙もヴェンスの首筋に歯を立て、血を啜る。
僅かに頬を紅潮させ血を啜る大牙を押しのけることができず、豊かな胸を余すところなく胸板に押し付けられながら、ティナ以上に強い快感を流し込まれ
「ぅあああっ……くぅうううっ！！」
それだけで射精してしまいそうになるをの必死でこらえる。
「じゅる……確かに美味だな。いい使用人ができた。」
そんな風に、ヴァンパイアは笑う。
大きく勃起してズボンにテントを張ったヴェンスの肉棒には目もくれない。
「ヴェンス、お前は今日から私とティナの召使いだ。謹んで仕事に当たるように。そうそう名乗っていなかったな、私の名はアイリーンだ。」
そう言うと、アイリーンと名乗るヴァンパイアはヴェンスの拘束を解きそのまま放置した。
それから二週間が経った。
ヴェンスは使用人の衣服と言われた、噛みやすいように首筋が大きく露出した服を着て二人のヴァンパイアの身の回りの世話全般を務めさせられていた。
朝は二人のヴァンパイアより早く起き、二人を起こしに行き朝食の提供。
行けば貧血になり、行かなければそれだけで「主人を空腹にした罰」としてしばらく満足に立つことすら出来なくなるほど大量に吸われる。
使用人の、とはいえヴェンスしか使用人がいないのでほぼ個室の部屋を出て、アイリーンやティナのいる部屋に向かう。二人は毎日同じベッドで眠っている。
レスビアンと言うわけではないが、ともかく二人は仲が良いようだった。
貧民街出身のティナにとり、特別に働かずともある程度の仕事をこなせば生活ができ、綺麗な服も着れるここは悪いことばかりではないようだ。
アイリーンがいくらヴェンスの血を吸っても、ティナはあまり怒らない、面だって反抗することに益がないと感じているからなのか、もしくはヴェンスがもうどうでもいいのか。
「なら悲しいな。」
ため息をつきながらワーバットたちとすれ違う。
ここに住むワーバットたちは皆大食堂で食事をとる、夫を得たワーバットは勝手に城を出るので、この城の住民は殆どこの時間帯には大食堂に集まる。
アイリーンがどこかから買ってきているので最低限は用意されているがそれ以上は略奪。庇護を与え最低限の食事も賄うが基本的には放任の上下関係のようだ。
「ヴェンス様だ」「いい男だな」「大牙様、私たちにも回してくれないかな。」
すれ違うワーバットたちがひそひそとそんな会話をするのが聞こえた、アイリーンはこれまで捕獲した男で気に入らなかったものは下々に回していた。
ヴェンスが初めて「気に入られた使用人」に選ばれているらしい。
そのため、ワーバットたちはアイリーンの怒りを恐れヴェンスには手を出してこない。
ついでにワーバットたちより格上扱いらしく「ヴェンス様」と呼ばれる。
「おはようございます、リーン様。ティナ様。」
アイリーンのことはリーンと呼ぶように、ティナのことを呼び捨てることは禁じられた、使用人と主人の関係上、通称で呼ぶことはともかく呼び捨てることはあってはならないものと言われ、ティナも納得したからだ。
ベッドに接近すると、仲の良い姉妹のように抱き合った姿勢で眠る二人のヴァンパイアが目に映る。おそろいの白い寝巻は二人によく似合っているし、同じ色の見事な金髪も相まって目を閉じていれば姉妹にしか見えない。
「ん……」「ああ、もう朝か。」
瞼をこすりながらのそりと起き上がるティナと、すぐに起き上り髪を自分で整えるリーン。
更にリーンはそのまま寝間着姿でヴェンスの背後に回り込むと、後ろから抱きつくように彼の体に密着する。もち路豊かな胸も驚くほど強く押し付けられる
甘えたり誘惑したりしているわけではない、これは「食事の準備」だ。体の高さを調整し、自分やティナが吸血しやすい高さまで腰を下ろさせる。リーンはティナより背が高いが、「姉」としての優しさなのだろうかいつもティナに合わせている。
「ティナ、髪を梳くのは後でヴェンスにさせなさい。それより、食事だ。」
そう言われると、髪を梳いていたティナは「はい。」と言ってベッドから立ち上がり、前からヴェンスの体に密着して右の首筋に噛みつく。
同様にリーンもヴェンスの左首筋に噛みつき、血を吸う。
「んちゅぅ……じゅるじゅる……ちゅるるるる、ぺろ」
「じゅぐ……じゅるるるる、んじゅっんじゅっ……ん……」
「うぁああぐっ！ これ、やっぱっ！！」
ヴァンパイア二人から二か所同時に血を吸われる快感はすさまじく、ヴェンスの体からはあっという間に力が抜けていく、その中で肉棒だけが固くなって、ティナのお腹にぐりぐりとこすりつけられる。
ティナもリーンも顔は真っ赤だが、ティナの方はより目が蕩けていて、まるで淫蕩な行為の途中か何かのようにしか見えない。
「ちゅぱ。」「ぷぁ……」
示し合わせたように二人が牙と腕を離すと、ヴェンスはその場に尻もちをついた。
大量の血を一気に抜きとられ、足がふらつく。
「ヴェンスぅ……」
尻もちをついたヴェンスにのしかかるようにティナが体を預ける、ティナの息は荒く顔が明らかに紅潮し目にも理性の光が灯っていない、そして左手がヴェンスの服の上から肉棒を摩っていた。
「……下人との交わりは好ましくないが、今日は目を瞑ろう。」
そう言ってリーンは部屋を出て、残されたのはヴェンスとティナのみ。
「ティナ………さま？」
「ティナって呼んで！ 今だけ、今だけでいいから！」
そう言いながらもティナは荒い息のままヴェンスの服を剥ぎ取り、自らも寝巻を脱ぐ。
ティナの下着は既に濡れていて、彼女はそれも脱ぐとヴェンスの肉棒の上に腰をおろし、前戯も何もなく挿入した。
ずぷっずぷぷぷぷっプチン
処女膜が破れる音がして、一瞬だけティナは顔をゆがめる。
しかしすぐ痛みも気にならなくなったのか腰を上下させ始めた。ヴェンスもそれにつられるように腰を振る、とはいえ混乱していてその動きはぎこちない。しかしそれゆえに二人はより興奮していた。
「はぁ………入ってる……」
うっとりとした、真っ赤な顔でティナは呟く、二週間のうちに学んだ貴族の作法を忘れ、ただのメスのように浅ましく腰を振る。
じゅぱんっぱんぱんぱんぱんぱん！
肌と肌がぶつかり合う音と、結合部で愛液が撹拌される淫らな音が鳴り、二人は体を重ね、そして唇も重ねて睦み合う。
「ちゅちゅっちゅ………れろれろ、ちゅる……あむ……」
キスだけでも興奮するのか、体の小ささと相まってティナの膣の締まりはかなりきつくヴェンスの肉棒を扱き、今までの吸血はされるが性処理は禁じられていた生活の鬱憤がよりヴェンスを快感に対して敏感にしている。
「……私の中をヴェンスの形にされてる……気持ちいい……イくの止まらない…」
しっかりとヴェンスに密着し、指をからめ束の間の逢瀬を楽しむ。
「初めて血を吸った時からずっと……子宮が疼いてたの。もう我慢できなくて……気持ちいい。こんなに気持ちいいなら最初から……あ……すればよかった♥」
うっとりした表情で腰を振るティナに触発されるように、ヴェンスは精を放っていた。
ほとんど無意識に、射精しているという実感もさほどわかないような量でしかなかったが、しかしティナは顔を綻ばせ、更に発情したいやらしい顔つきになる。
「精液……血なんかよりずっと美味しい。もっと、もっと出して……」
ぬっぷぬちゅぬちゅぬっちゅ……にゅぷにゅぷ
膣壁が搾り取るように蠢動し、ティナはそれに加えて腰を振り、たまに一番奥に突っ込んでは驚いたように腰を引っ込める。その時にする強い快感におびえた顔があまりに可愛くて、ヴェンスは彼女を抱きしめていた。
「ティナ……、愛してる、今までもこれからも、ずっとそばにいるから……」
抱きしめる手を取り、嬉しそうに「うん」というティナに向けて、
ずんっ！！
思い切り腰を突き上げた。
「ぁ………？ うぁあﾞあああああああっ！！？」
一瞬だけでも恐怖を覚えるほど敏感な個所をこれでもかと刺激され激しく痙攣し潮を吹きながら絶頂するティナに向け、
「ティナ、俺の全部。受け取ってくれ！！」
そう叫びながら
どぶっどぷどぷどぷっどぶぅうううううううううううううううううっ！！
濃厚かつ多量の精液を一気に流し込む。
数度ティナの体が跳ね、そして次の瞬間にぐったりと崩れ落ちる。
「やれやれ、愛し合い方が少し野蛮だな。」
いつの間にか、脱力する二人のすぐそばにリーンが現れていた。
「おめでとう、ようやくお前も貴族の仲間入りだ………今日は記念日だ、私も、楽しませろ。」
そう言ってリーンがヴェンスにキスをして、誕生したばかりの新たな「貴族」の悲鳴がその部屋から漏れ出たのは十分ほど後の話だという。
その中に乗った、傭兵ギルド所属の傭兵剣士ヴェンスと、彼の相棒である魔術師ティナは、とある依頼を遂行するためにこの馬車に目的地の近くまで乗せてもらっていた。
ヴェンスは背は普通、体の肉付きもそこまでよくはなく、どちらかと言えば細い。紺に近い青い髪に、黒曜石のような瞳をした若い男だ。
一方のティナはまだ少女と言っていい若い女性で、短いが見事な金髪とエメラルド色に輝く大きな瞳、そして同年代の女性と比較して少し小さな身長が特徴だった。
目的地は街道外れにある古城、その中にワーバットの群れが巣食い、夜になると男を襲いに集団で街道付近に出没することから最近ギルドに依頼が来ていたのだ。
ワーバットは対処の難しい魔物ではなく、光を浴びせられれば途端に臆病になって戦意を喪失することから群れでもそこまで討伐難度の高い魔物ではない。
時間帯は夕方、あと一時間とせず日が沈むだろう、そうなればワーバットたちの活動が始まる。
「ここでいい、ああ馬は止めなくていいよ。」
そう言ってヴェンスは立ち上がると、ティナを抱きかかえて馬車から飛び降りた。
ヴェンスが先に歩き出し、ティナがヴェンスの背後に隠れるように動く。彼女もまた、戦いが起きなければいいと思っているはずだ。
日が暮れる前にたどり着かないと見通しの悪い森の中でワーバットの群れに対抗しなくてはならず危険なので、二人は急いで歩を進めた。誰かが先に進んでいた気配はないが、なぜか出来上がっていた獣道を通り古城に向かう。
「門が開いてるな、わざわざ開け放つ意味もなさそうなのに。」
開け放たれた門を見てヴェンスはそう呟いた、ワーバットなら飛んで抜け出せばいいのでわざと門を開けておくことにメリットはない。誘われていると判断するのが妥当だ。
門から城の中に入ると、エントランスでは天井に向かって伸びる柱の合間を縫うようにたくさんの足場が設置されていた、ここで侵入者を迎え撃つようだ。
「敵襲！ 敵襲だ！！」
ヴェンスたちに気付いたワーバットの一人が大声をあげると、エントランスにいたワーバットだけではなく城の奥からも次々とワーバットが姿を現した。
バサバサと音を立ててたくさんのワーバットが天井近くまで舞い上がる。
「男だ！ 久しぶりにまともそうな男が来たぞ！」「女はつまみ出せ！ 私たちには男だけでいい！」「「誰が貰う！？」「「早い者勝ち！！」」
話が決まると、ワーバットたちは次々ヴェンスに向かって上から強襲を試みる。
しかしヴェンスとて、それを想定していないはずがない。
急降下してきたワーバットの腹めがけ、強烈なカウンターの峰打ちを叩き込む。
「あぐぅっ！！？」
悲鳴とともにワーバットは吹っ飛び、味方数人を巻き込んで地面に落下した。
そしてティナも、魔法を発動して周囲を照らし戦意を喪失させに行く。
「うわぁっ！！？」
ワーバットも光に照らされそうになると急いで退避するが光が消えるとすぐにまた向かってくるのであまり効果はなさそうに見える。とはいえ、ワーバットたちも手をこまねいているようで、ヴェンスはこれはチャンスかと判断した、
「俺たちはあんたらに危害を加えに来たんじゃない！ ただ街道を行く行商人を片っ端から襲うのをやめてほしい！ 物流止まって大変なんだよ！」
「知るかよ！」「じゃあ婿寄越せ！」「って言うか婿になれ！！」
ヴェンスの説得に対してワーバットの返事は非常にわかりやすい拒否だった。
仕方ないので物理的説得を試みることにしたヴェンスは、ティナの作った光源の範囲から出て、襲いかかろうとしてくるワーバットたちを正確に落としていく。
「大牙様を呼べ！ 私たちじゃ手におえない！」
「オオキバ様？ こいつらの群れのリーダーか？」
光を逃れて物陰に隠れながらもそう何処かのワーバットが指示を出した。その内容が気になったのでヴェンスは訊ねてみたのだが、返事はない。
「もう来ている、私の部下が世話になったようだな。」
そんな声に、エントランスにいた誰もが注目した、声の主は空中に浮かぶ椅子に座って足を組んでいた、その女性を見た瞬間にヴェンスとティナは凍りついた。
艶めくブロンドの髪、蝶のような薄紅色の装飾の施された豪奢なドレス、そして女性から感じられる強大な魔力。その女性は間違いなく
「………ヴァンパイア…？」
「大牙様！」「いらっしゃったのですか！？」「誰が呼んできたんだ？ 寝てる時間なのに。」「なんでヴァンパイアがワーバットを率いてるんだよ……」
ヴェンスの意見ももっとも、夜行性以外に共通点がほとんどない二種がまさか同行しているなどとは考える人間はほとんどいない。
「利害が一致したので統率しているだけだ、おかげで助かっている。」
瞬時にヴェンスは跳躍して本気で切り付けたが、出現した黒い糸状の何かが進路を阻んだ。
「勝ち目の薄い相手には奇襲や速攻によって事を優位に運ぶ、戦術としては効果があることは認めるがそれはあくまで『勝ち目のある相手』にしか有効でないことを覚えておけ。」
黒い糸状の何かがヴェンスの体のあちこちを貫通しそのまま壁まで吹っ飛ばす。
そのままヴェンスは壁に固定され、全く動けなくなる、どうやら黒いものはヴァンパイアが魔力で作り出した攻撃魔法の一種のようだ。
「なっ……」
黒い糸は人の髪ほどの太さしかしていないにもかかわらず、力には自信のあったヴェンスの体を七か所貫通して壁に縫い付けているだけで完全に動きを封じる。
「ふむ、六本では足りなかったかもしれん、大した力」
ドンッ
磔状態のヴェンスに接近してきたヴァンパイアの体が横にふっとぶ。
ティナの放った魔法がヴァンパイアを吹っ飛ばしたのだ。
「……わるな…… 私のヴェンスに、触るな！」
無口なティナが珍しく語気を強め、目にも敵意を乗せてヴァンパイアを睨む。
「ふむ、礼儀はとにかくとして『素質』はありそうだな。」
それをヴァンパイアは余裕で受け流し、黒い糸の先端をティナに向ける。
ティナの魔術で作り出した火球が四つ、ヴァンパイアに向かって襲い掛かるが、黒い糸がそれを貫く、ただそれだけで火球があっさりかき消される。
逆にヴァンパイアが黒い糸をティナめがけて突進させる。
ティナは防御にかなり強い魔力を費やしたが、作られた防壁をやすやすと貫通した黒い糸はティナの全身を貫き、そのまま持ち上げるとヴェンス同様壁に縫い付ける。
「軽いな、まったくもって軽い。」
そう言いながら、ヴァンパイアはヴェンスに接近する、周囲のワーバットたちは早く譲ってくれないかとでも言いたげに彼に視線を集中していた。
それに対し、ティナに関心を示す魔物はほとんどいない。
「ヴェンスに………触るなぁっ！！」
叫びながら必死に抵抗して抜け出そうとするティナを見て、ヴァンパイアは標的を変えティナの方に向かっていく。何やら楽しそうな愉悦に満ちた感情が見て取れる。
「そうかそうか、ではお前からだ。」
そう言ったヴァンパイアは、迷いもなくティナの首に噛みついた。
鋭く尖った犬歯が肌を穿ち、そこから染み出た血を美味そうに啜る、
「あﾞ……！？ ひぅ………っ！！？」
最初こそ痛みに顔をゆがめたティナだったが、徐々にその顔つきは変わっていく。
体内に送り込まれた濃密かつ多量なヴァンパイアの魔力がティナの体を侵食し、ヴァンパイアへと変えているのだ。そしてその間中ずっと、ティナの体には内側から体を一気に作り変えられる快感が送り込まれ続ける。
「ひぅっ！ うっんぁあああああああああああああああっ！！？」
ひときわ大きく体が震え、半開きの口から除く犬歯が大きく鋭く尖っていく。背中からも翼が生え、ティナが完全にヴァンパイアに変わってしまったことを物語る。
「ふふ、まさか噛まれただけで達するとはな。恥ずかしい子だ。」
服の上からティナの秘部を撫でながら、大牙と呼ばれたヴァンパイアが笑う。
「あ……ごめんなさい、お姉様……」
「かまわないさ、貴族の仲間入りをした記念日だ。あとで相応しい服を持って来させる。」
そう言ったヴァンパイアは、ティナを抱きかかえると濃厚なキスをする。
ちゅくちゅくといやらしい音が立ち、月明かりが差し込む以外にはほとんど明りのないほの暗いエントランスで二人の魔物が唇を重ね合う姿はとても扇情的だ。
十秒ほどだろうか、どちらともなく二人は重ねていた唇を離す、そしてティナはヴェンスに淫靡な笑みを見せ、ヴァンパイアはその隣で優しく笑んでいる。
「ヴェンス………」
ヴェンスのもとまで接近したティナは、おもむろに彼の首筋に噛みついた。
ほんの少しチクリと痛んだ以外痛みは感じず、それどころかそこから痺れるような快感がヴェンスの全身を巡っていく、ティナはうっとりとした表情でヴェンスの血を吸い続け、一分したところでようやく口を離す。
「ぷぁ……ヴェンスの血………美味しい……」
「どれ、私にも味あわせてもらおうか。ヴェンスは『私が捕まえた』のだから、私にも所有権はある。」
ティナを押しのけ、大牙もヴェンスの首筋に歯を立て、血を啜る。
僅かに頬を紅潮させ血を啜る大牙を押しのけることができず、豊かな胸を余すところなく胸板に押し付けられながら、ティナ以上に強い快感を流し込まれ
「ぅあああっ……くぅうううっ！！」
それだけで射精してしまいそうになるをの必死でこらえる。
「じゅる……確かに美味だな。いい使用人ができた。」
そんな風に、ヴァンパイアは笑う。
大きく勃起してズボンにテントを張ったヴェンスの肉棒には目もくれない。
「ヴェンス、お前は今日から私とティナの召使いだ。謹んで仕事に当たるように。そうそう名乗っていなかったな、私の名はアイリーンだ。」
そう言うと、アイリーンと名乗るヴァンパイアはヴェンスの拘束を解きそのまま放置した。
それから二週間が経った。
ヴェンスは使用人の衣服と言われた、噛みやすいように首筋が大きく露出した服を着て二人のヴァンパイアの身の回りの世話全般を務めさせられていた。
朝は二人のヴァンパイアより早く起き、二人を起こしに行き朝食の提供。
行けば貧血になり、行かなければそれだけで「主人を空腹にした罰」としてしばらく満足に立つことすら出来なくなるほど大量に吸われる。
使用人の、とはいえヴェンスしか使用人がいないのでほぼ個室の部屋を出て、アイリーンやティナのいる部屋に向かう。二人は毎日同じベッドで眠っている。
レスビアンと言うわけではないが、ともかく二人は仲が良いようだった。
貧民街出身のティナにとり、特別に働かずともある程度の仕事をこなせば生活ができ、綺麗な服も着れるここは悪いことばかりではないようだ。
アイリーンがいくらヴェンスの血を吸っても、ティナはあまり怒らない、面だって反抗することに益がないと感じているからなのか、もしくはヴェンスがもうどうでもいいのか。
「なら悲しいな。」
ため息をつきながらワーバットたちとすれ違う。
ここに住むワーバットたちは皆大食堂で食事をとる、夫を得たワーバットは勝手に城を出るので、この城の住民は殆どこの時間帯には大食堂に集まる。
アイリーンがどこかから買ってきているので最低限は用意されているがそれ以上は略奪。庇護を与え最低限の食事も賄うが基本的には放任の上下関係のようだ。
「ヴェンス様だ」「いい男だな」「大牙様、私たちにも回してくれないかな。」
すれ違うワーバットたちがひそひそとそんな会話をするのが聞こえた、アイリーンはこれまで捕獲した男で気に入らなかったものは下々に回していた。
ヴェンスが初めて「気に入られた使用人」に選ばれているらしい。
そのため、ワーバットたちはアイリーンの怒りを恐れヴェンスには手を出してこない。
ついでにワーバットたちより格上扱いらしく「ヴェンス様」と呼ばれる。
「おはようございます、リーン様。ティナ様。」
アイリーンのことはリーンと呼ぶように、ティナのことを呼び捨てることは禁じられた、使用人と主人の関係上、通称で呼ぶことはともかく呼び捨てることはあってはならないものと言われ、ティナも納得したからだ。
ベッドに接近すると、仲の良い姉妹のように抱き合った姿勢で眠る二人のヴァンパイアが目に映る。おそろいの白い寝巻は二人によく似合っているし、同じ色の見事な金髪も相まって目を閉じていれば姉妹にしか見えない。
「ん……」「ああ、もう朝か。」
瞼をこすりながらのそりと起き上がるティナと、すぐに起き上り髪を自分で整えるリーン。
更にリーンはそのまま寝間着姿でヴェンスの背後に回り込むと、後ろから抱きつくように彼の体に密着する。もち路豊かな胸も驚くほど強く押し付けられる
甘えたり誘惑したりしているわけではない、これは「食事の準備」だ。体の高さを調整し、自分やティナが吸血しやすい高さまで腰を下ろさせる。リーンはティナより背が高いが、「姉」としての優しさなのだろうかいつもティナに合わせている。
「ティナ、髪を梳くのは後でヴェンスにさせなさい。それより、食事だ。」
そう言われると、髪を梳いていたティナは「はい。」と言ってベッドから立ち上がり、前からヴェンスの体に密着して右の首筋に噛みつく。
同様にリーンもヴェンスの左首筋に噛みつき、血を吸う。
「んちゅぅ……じゅるじゅる……ちゅるるるる、ぺろ」
「じゅぐ……じゅるるるる、んじゅっんじゅっ……ん……」
「うぁああぐっ！ これ、やっぱっ！！」
ヴァンパイア二人から二か所同時に血を吸われる快感はすさまじく、ヴェンスの体からはあっという間に力が抜けていく、その中で肉棒だけが固くなって、ティナのお腹にぐりぐりとこすりつけられる。
ティナもリーンも顔は真っ赤だが、ティナの方はより目が蕩けていて、まるで淫蕩な行為の途中か何かのようにしか見えない。
「ちゅぱ。」「ぷぁ……」
示し合わせたように二人が牙と腕を離すと、ヴェンスはその場に尻もちをついた。
大量の血を一気に抜きとられ、足がふらつく。
「ヴェンスぅ……」
尻もちをついたヴェンスにのしかかるようにティナが体を預ける、ティナの息は荒く顔が明らかに紅潮し目にも理性の光が灯っていない、そして左手がヴェンスの服の上から肉棒を摩っていた。
「……下人との交わりは好ましくないが、今日は目を瞑ろう。」
そう言ってリーンは部屋を出て、残されたのはヴェンスとティナのみ。
「ティナ………さま？」
「ティナって呼んで！ 今だけ、今だけでいいから！」
そう言いながらもティナは荒い息のままヴェンスの服を剥ぎ取り、自らも寝巻を脱ぐ。
ティナの下着は既に濡れていて、彼女はそれも脱ぐとヴェンスの肉棒の上に腰をおろし、前戯も何もなく挿入した。
ずぷっずぷぷぷぷっプチン
処女膜が破れる音がして、一瞬だけティナは顔をゆがめる。
しかしすぐ痛みも気にならなくなったのか腰を上下させ始めた。ヴェンスもそれにつられるように腰を振る、とはいえ混乱していてその動きはぎこちない。しかしそれゆえに二人はより興奮していた。
「はぁ………入ってる……」
うっとりとした、真っ赤な顔でティナは呟く、二週間のうちに学んだ貴族の作法を忘れ、ただのメスのように浅ましく腰を振る。
じゅぱんっぱんぱんぱんぱんぱん！
肌と肌がぶつかり合う音と、結合部で愛液が撹拌される淫らな音が鳴り、二人は体を重ね、そして唇も重ねて睦み合う。
「ちゅちゅっちゅ………れろれろ、ちゅる……あむ……」
キスだけでも興奮するのか、体の小ささと相まってティナの膣の締まりはかなりきつくヴェンスの肉棒を扱き、今までの吸血はされるが性処理は禁じられていた生活の鬱憤がよりヴェンスを快感に対して敏感にしている。
「……私の中をヴェンスの形にされてる……気持ちいい……イくの止まらない…」
しっかりとヴェンスに密着し、指をからめ束の間の逢瀬を楽しむ。
「初めて血を吸った時からずっと……子宮が疼いてたの。もう我慢できなくて……気持ちいい。こんなに気持ちいいなら最初から……あ……すればよかった♥」
うっとりした表情で腰を振るティナに触発されるように、ヴェンスは精を放っていた。
ほとんど無意識に、射精しているという実感もさほどわかないような量でしかなかったが、しかしティナは顔を綻ばせ、更に発情したいやらしい顔つきになる。
「精液……血なんかよりずっと美味しい。もっと、もっと出して……」
ぬっぷぬちゅぬちゅぬっちゅ……にゅぷにゅぷ
膣壁が搾り取るように蠢動し、ティナはそれに加えて腰を振り、たまに一番奥に突っ込んでは驚いたように腰を引っ込める。その時にする強い快感におびえた顔があまりに可愛くて、ヴェンスは彼女を抱きしめていた。
「ティナ……、愛してる、今までもこれからも、ずっとそばにいるから……」
抱きしめる手を取り、嬉しそうに「うん」というティナに向けて、
ずんっ！！
思い切り腰を突き上げた。
「ぁ………？ うぁあﾞあああああああっ！！？」
一瞬だけでも恐怖を覚えるほど敏感な個所をこれでもかと刺激され激しく痙攣し潮を吹きながら絶頂するティナに向け、
「ティナ、俺の全部。受け取ってくれ！！」
そう叫びながら
どぶっどぷどぷどぷっどぶぅうううううううううううううううううっ！！
濃厚かつ多量の精液を一気に流し込む。
数度ティナの体が跳ね、そして次の瞬間にぐったりと崩れ落ちる。
「やれやれ、愛し合い方が少し野蛮だな。」
いつの間にか、脱力する二人のすぐそばにリーンが現れていた。
「おめでとう、ようやくお前も貴族の仲間入りだ………今日は記念日だ、私も、楽しませろ。」
そう言ってリーンがヴェンスにキスをして、誕生したばかりの新たな「貴族」の悲鳴がその部屋から漏れ出たのは十分ほど後の話だという。
12/09/16 21:20更新 / なるつき