囚われの勇者、確かな思い、悲しみの証(下)
・・・
キュー君を眼の前にして、私は何も考えられなかった
突然、あわられた彼を見て、私が最初に感じた感情は―――喜びだった
同時に、不安もよぎる
彼もまた、私に対して敵意を持っているのだ
で、あれば彼もまた…
「あ、きたんだDespairLance」
と、後ろからNo.11と呼ばれている少年が来た
「さ、とっとといたぶろうよ。あ、それともボクの力でいろいろしてみる?」
「…貴方の、力ですか」
「うん!!ボクの『Controlleyes(コントロールアイズ)』でね」
彼がそういうと、眼を私に向けようとした
「まだ今日は使ってないから、これ使って淫乱にでもしてやろうかな?魔物なんて、実の息子すら捨てる位好色なんだもの」
卑しい笑みを浮かべ、私に眼を向けようとしたその時だった
「そうやって、弱った者をいたぶる事しか出来ないのか、君は」
その言葉と共に、No.11は横に吹き飛んだ
「ガッ!?ゲホォ!!」
目の前の、キュー君が
「…これで貸し借りはなしですよ」
魔方陣を、叩き割った
・・・
呆然としている黒勇者の縄を解き、僕は彼女に言う
「以前の借りの為に今回は助けますが…次に会う時には、敵です」
そうして立たせようとするが―――
「待てよ、裏切り者…」
よろよろとしながら、No.11は立ち上がってきた
「それ、処分しなきゃいけないんだろ?しないとボク達が処分されるんだぞ?解ってるのか!?」
「…いくつか聞いても良いですか?」
「なんだよ!?」
彼は怒りながら、僕に言う
「貴方のそのControlleyes、まだ使ってないんですよね?」
「あぁ、そうだよ!!これか「後、私が来ていることを教団に連絡しましたか?」
「…してない」
話を遮られ、相当不満のようだ
「つまり、私は―――『存在しない人間』なんですね?」
「…さっきから訳解んない事ばっか言いやがって!何なんだよ、一体!?」
彼から眼を逸らさずに、僕は言う
「黒勇者、今回の件、貴方がした事にさせてもらいます」
「え?」
「…まさか、ボク達に勝てると思ってるの!?バッカじゃないの!!」
彼は怒りに狂い、我を忘れかけている
「そんなちっぽけな魔物一匹捕まえれない癖に!ボクに勝とうだなんて「御託は良いから、使ってみてください」
「…ボクをバカにするなぁ!!」
彼が力を使った瞬間だった
「―――で、どうです?」
「な、なんで…」
彼は、自分自身の術に掛かったのは
・・・
キュー君が、何かをしたと思ったら、No.11は動かなくなっていた
「貴方の能力、目線を合わせた相手を自在に操る能力でしたよね?」
キュー君が、彼に言う
「なら、貴方が魔力を溜めて私に向いた瞬間に、その術式をそのまま跳ね返したら、貴方をコントロールできますよね」
「な…ふざけるな!!」
No.11の言う事に、私も同調したくなった
魔力が貯まった瞬間、目線を合わせるだけで操るのだったら、普通反射なんて出来ない
事前にそういう術式を組まないと、不可能なのだ
「ボクの力をそんな簡単に反射できるわけ無いだろ!?」
「…私の能力、貴方なら知ってるでしょ?」
瞬間、理解はした
キュー君の能力―――CounterReflect(カウンターリフレクト)なら、確かに魔術もなんでもカウンターできそうだが…
「だ、だからって、目線すら反射出来るなんて…」
「多少コツは入りますが、出来ない事は無いですよ」
彼は、何を聞いてるんだ、といった風に言い切った
「さて…後二人居ます。二人を無力化したら貴方にはやってもらいたいことがありますから、それまでそのまま待機しててください。―――なにもせずに、ね」
そういうと、私を連れ出して外に出た
「後…間違ってもこれ以上無駄に使わないでくださいよ。貴方の眼がつぶれない為にも」
キュー君はそういうと、扉を閉めた
・・・
牢屋から出て、彼は直ぐには外に出ず、私に言った
「今から、私が残り二人を制圧します。完了次第、3人を連れて行ってください」
「3人?」
「No.11、No.12、No.96の3人です」
彼が言ってる事が、理解できなかった
「特にNo.11、彼は急がないと…眼が見えなくなります」
「…それって、まさか」
彼には、私の言おうとしたことが解ったらしい
「彼の眼、元々はあんなに強い力があったわけではないみたいですが…実験で無理矢理強化されてます。…悔しいですが、貴方達の方が魔術は発達してますから」
そういうと、彼は外に出て行こうとする
「そこで、待っててください。…借りは、返しますから」
そう言って、彼は出て行ってしまった
・・・
「…わかっているのであるか?No.93」
僕が外に出たら、No.96が話しかけてきた
「この移動用の牢屋の術式は、我輩が管理している。…中で何があったか、わかるのだぞ」
僕は何も言わない
ただ、彼を見ているだけだ
「…やはり、お主は…」
「私の、邪魔をしないでください。そうしたら怪我はしませんよ」
僕は剣を構えれるようにするが―――
「…排除開始」
後ろから、突然攻撃された
「…No.12」
辛うじて防御した僕の前には、双剣を持つ女性と―――
「Bloodmist(ブラッドミスト)」
戦闘態勢に入った、この3人中最強の白勇者がいた
・・・
先に動いたのは、No.12だった
その身のこなし、自身の赤毛から―――
Crimsonshadow(クリムゾンシャドー)と呼ばれた女戦士のスピードは、僕が本来反応できないスピードなのだろう
が、僕には彼女がどこに攻めてこようとしてるのか―――
手に取るように解ってしまった
「そこ!!」
僕の右斜め後ろから攻撃がきたのに対し、僕は思いっきり攻撃をした
なぜなら―――
「…まだ、耐えますか」
一撃で人が死ぬ攻撃を、瞬時に回復するのが、No.12の能力だから
「…Threeliferevive(スリーライフリバイブ)」
彼女は淡々と語る
いや、それしか出来ないのだ
彼女は自分の体を傷つけ、その痛みに耐えてきていたらしい
が、痛みを耐えても、耐えても―――
永久に続いたら、どうなってしまうだろう?
結果は、彼女の現状だった
心を無くし、ただ単に戦うだけの存在になることだった
「我輩を忘れてもらっては困るな!!」
そう言いながら、赤い霧を出すNo.96
彼の能力もまた、危険であった
赤い霧―――自らの血液で結界を作り、自身の身体能力を上げるばかりか、相手の身体能力を奪うことも出来る
正直、二人が組んでいれば、正に無敵なのだろう
最も―――
「だから…」
自分が相手でなかったら、だが
「効かないって、言ってるんですよ!!」
二人が同時に攻めてきたのを、僕は反射し、反撃する
中々のコンビネーションだが、僕の防御に届かなかった
「これで…どうであるか!!」
No.96が血液を固めて、僕に投げるが、僕はそれを弾き、No.12にぶつける
「死角からの攻撃も、反応するのか…」
「…今、僕に勝てるだけの血液量残ってますか?」
「無い、な…」
彼は降参してくれた
「が、No.12は…」
「とめます…」
何度も、何度も斬りつけても起き上がる彼女に僕は―――
耐え難い痛みを感じた
・・・
外の戦闘の音がやんだと思うと、キュー君は中に入ってきた
が、私の前をそのまま素通りし、No.11を外に連れ出す
連れ出してから、少したって、私に声を掛けてきた
「申し訳ありませんが、今回『僕には会ってない』ことにしてくれませんか?」
「…さっき言ってたのって」
彼は頷く
彼が言ってた私がした事とは―――
「自力で逃げ出して、あの子達を連れて行ったことにしてほしいのね?」
「教団には、そう報告します」
彼は何も言わず、そのまま出て行こうとしたが―――
「だったら、何か口止め料はないかしら?」
つい、私は言ってしまった
「…がめついですね。ただ、以前助けてもらった借りを返しに来ただけなのに」
彼は振り向き、私に笑いかける
―――どこと無く、寂しそうで悲しい笑顔
それを見た私は―――
「…そんな事、しないでくださいよ」
つい、彼を抱き締めてしまった
「僕は…そんなことしてほしくてしたんじゃ…」
「私がしたいだけ。…嫌なら、やめるから」
泣きそうな彼を強く抱き締め、彼のぬくもりをかみ締める
なんて、小さな体なのだろう
まだ家族と居て、友だちと悪さをして、遊びながらも勉強をして―――
そんな年のはずなのに、なんでこんなに辛い魂の色をしているのだろう
私は、泣きそうになるのを堪えようとした
が、出来なかった
「…泣かないで、ください」
彼はその小さな体から手を伸ばし、私の涙を拭う
「…泣かれたら、次にあったとき戦えないじゃないですか」
「貴方だって、そうじゃない」
お互いに、立場は違う
違うが、分かり合えるのを実感できた瞬間だった
けど、今にして思えば―――
この時、彼の事をもっと気にしていれば
いや、無理矢理にでも連れて行ければ
彼はあんな目に会わなかっただろうし、彼と結ばれなかったのかもしれない
そんな事を、私は気付けないまま、彼を抱き締めていた
キュー君を眼の前にして、私は何も考えられなかった
突然、あわられた彼を見て、私が最初に感じた感情は―――喜びだった
同時に、不安もよぎる
彼もまた、私に対して敵意を持っているのだ
で、あれば彼もまた…
「あ、きたんだDespairLance」
と、後ろからNo.11と呼ばれている少年が来た
「さ、とっとといたぶろうよ。あ、それともボクの力でいろいろしてみる?」
「…貴方の、力ですか」
「うん!!ボクの『Controlleyes(コントロールアイズ)』でね」
彼がそういうと、眼を私に向けようとした
「まだ今日は使ってないから、これ使って淫乱にでもしてやろうかな?魔物なんて、実の息子すら捨てる位好色なんだもの」
卑しい笑みを浮かべ、私に眼を向けようとしたその時だった
「そうやって、弱った者をいたぶる事しか出来ないのか、君は」
その言葉と共に、No.11は横に吹き飛んだ
「ガッ!?ゲホォ!!」
目の前の、キュー君が
「…これで貸し借りはなしですよ」
魔方陣を、叩き割った
・・・
呆然としている黒勇者の縄を解き、僕は彼女に言う
「以前の借りの為に今回は助けますが…次に会う時には、敵です」
そうして立たせようとするが―――
「待てよ、裏切り者…」
よろよろとしながら、No.11は立ち上がってきた
「それ、処分しなきゃいけないんだろ?しないとボク達が処分されるんだぞ?解ってるのか!?」
「…いくつか聞いても良いですか?」
「なんだよ!?」
彼は怒りながら、僕に言う
「貴方のそのControlleyes、まだ使ってないんですよね?」
「あぁ、そうだよ!!これか「後、私が来ていることを教団に連絡しましたか?」
「…してない」
話を遮られ、相当不満のようだ
「つまり、私は―――『存在しない人間』なんですね?」
「…さっきから訳解んない事ばっか言いやがって!何なんだよ、一体!?」
彼から眼を逸らさずに、僕は言う
「黒勇者、今回の件、貴方がした事にさせてもらいます」
「え?」
「…まさか、ボク達に勝てると思ってるの!?バッカじゃないの!!」
彼は怒りに狂い、我を忘れかけている
「そんなちっぽけな魔物一匹捕まえれない癖に!ボクに勝とうだなんて「御託は良いから、使ってみてください」
「…ボクをバカにするなぁ!!」
彼が力を使った瞬間だった
「―――で、どうです?」
「な、なんで…」
彼は、自分自身の術に掛かったのは
・・・
キュー君が、何かをしたと思ったら、No.11は動かなくなっていた
「貴方の能力、目線を合わせた相手を自在に操る能力でしたよね?」
キュー君が、彼に言う
「なら、貴方が魔力を溜めて私に向いた瞬間に、その術式をそのまま跳ね返したら、貴方をコントロールできますよね」
「な…ふざけるな!!」
No.11の言う事に、私も同調したくなった
魔力が貯まった瞬間、目線を合わせるだけで操るのだったら、普通反射なんて出来ない
事前にそういう術式を組まないと、不可能なのだ
「ボクの力をそんな簡単に反射できるわけ無いだろ!?」
「…私の能力、貴方なら知ってるでしょ?」
瞬間、理解はした
キュー君の能力―――CounterReflect(カウンターリフレクト)なら、確かに魔術もなんでもカウンターできそうだが…
「だ、だからって、目線すら反射出来るなんて…」
「多少コツは入りますが、出来ない事は無いですよ」
彼は、何を聞いてるんだ、といった風に言い切った
「さて…後二人居ます。二人を無力化したら貴方にはやってもらいたいことがありますから、それまでそのまま待機しててください。―――なにもせずに、ね」
そういうと、私を連れ出して外に出た
「後…間違ってもこれ以上無駄に使わないでくださいよ。貴方の眼がつぶれない為にも」
キュー君はそういうと、扉を閉めた
・・・
牢屋から出て、彼は直ぐには外に出ず、私に言った
「今から、私が残り二人を制圧します。完了次第、3人を連れて行ってください」
「3人?」
「No.11、No.12、No.96の3人です」
彼が言ってる事が、理解できなかった
「特にNo.11、彼は急がないと…眼が見えなくなります」
「…それって、まさか」
彼には、私の言おうとしたことが解ったらしい
「彼の眼、元々はあんなに強い力があったわけではないみたいですが…実験で無理矢理強化されてます。…悔しいですが、貴方達の方が魔術は発達してますから」
そういうと、彼は外に出て行こうとする
「そこで、待っててください。…借りは、返しますから」
そう言って、彼は出て行ってしまった
・・・
「…わかっているのであるか?No.93」
僕が外に出たら、No.96が話しかけてきた
「この移動用の牢屋の術式は、我輩が管理している。…中で何があったか、わかるのだぞ」
僕は何も言わない
ただ、彼を見ているだけだ
「…やはり、お主は…」
「私の、邪魔をしないでください。そうしたら怪我はしませんよ」
僕は剣を構えれるようにするが―――
「…排除開始」
後ろから、突然攻撃された
「…No.12」
辛うじて防御した僕の前には、双剣を持つ女性と―――
「Bloodmist(ブラッドミスト)」
戦闘態勢に入った、この3人中最強の白勇者がいた
・・・
先に動いたのは、No.12だった
その身のこなし、自身の赤毛から―――
Crimsonshadow(クリムゾンシャドー)と呼ばれた女戦士のスピードは、僕が本来反応できないスピードなのだろう
が、僕には彼女がどこに攻めてこようとしてるのか―――
手に取るように解ってしまった
「そこ!!」
僕の右斜め後ろから攻撃がきたのに対し、僕は思いっきり攻撃をした
なぜなら―――
「…まだ、耐えますか」
一撃で人が死ぬ攻撃を、瞬時に回復するのが、No.12の能力だから
「…Threeliferevive(スリーライフリバイブ)」
彼女は淡々と語る
いや、それしか出来ないのだ
彼女は自分の体を傷つけ、その痛みに耐えてきていたらしい
が、痛みを耐えても、耐えても―――
永久に続いたら、どうなってしまうだろう?
結果は、彼女の現状だった
心を無くし、ただ単に戦うだけの存在になることだった
「我輩を忘れてもらっては困るな!!」
そう言いながら、赤い霧を出すNo.96
彼の能力もまた、危険であった
赤い霧―――自らの血液で結界を作り、自身の身体能力を上げるばかりか、相手の身体能力を奪うことも出来る
正直、二人が組んでいれば、正に無敵なのだろう
最も―――
「だから…」
自分が相手でなかったら、だが
「効かないって、言ってるんですよ!!」
二人が同時に攻めてきたのを、僕は反射し、反撃する
中々のコンビネーションだが、僕の防御に届かなかった
「これで…どうであるか!!」
No.96が血液を固めて、僕に投げるが、僕はそれを弾き、No.12にぶつける
「死角からの攻撃も、反応するのか…」
「…今、僕に勝てるだけの血液量残ってますか?」
「無い、な…」
彼は降参してくれた
「が、No.12は…」
「とめます…」
何度も、何度も斬りつけても起き上がる彼女に僕は―――
耐え難い痛みを感じた
・・・
外の戦闘の音がやんだと思うと、キュー君は中に入ってきた
が、私の前をそのまま素通りし、No.11を外に連れ出す
連れ出してから、少したって、私に声を掛けてきた
「申し訳ありませんが、今回『僕には会ってない』ことにしてくれませんか?」
「…さっき言ってたのって」
彼は頷く
彼が言ってた私がした事とは―――
「自力で逃げ出して、あの子達を連れて行ったことにしてほしいのね?」
「教団には、そう報告します」
彼は何も言わず、そのまま出て行こうとしたが―――
「だったら、何か口止め料はないかしら?」
つい、私は言ってしまった
「…がめついですね。ただ、以前助けてもらった借りを返しに来ただけなのに」
彼は振り向き、私に笑いかける
―――どこと無く、寂しそうで悲しい笑顔
それを見た私は―――
「…そんな事、しないでくださいよ」
つい、彼を抱き締めてしまった
「僕は…そんなことしてほしくてしたんじゃ…」
「私がしたいだけ。…嫌なら、やめるから」
泣きそうな彼を強く抱き締め、彼のぬくもりをかみ締める
なんて、小さな体なのだろう
まだ家族と居て、友だちと悪さをして、遊びながらも勉強をして―――
そんな年のはずなのに、なんでこんなに辛い魂の色をしているのだろう
私は、泣きそうになるのを堪えようとした
が、出来なかった
「…泣かないで、ください」
彼はその小さな体から手を伸ばし、私の涙を拭う
「…泣かれたら、次にあったとき戦えないじゃないですか」
「貴方だって、そうじゃない」
お互いに、立場は違う
違うが、分かり合えるのを実感できた瞬間だった
けど、今にして思えば―――
この時、彼の事をもっと気にしていれば
いや、無理矢理にでも連れて行ければ
彼はあんな目に会わなかっただろうし、彼と結ばれなかったのかもしれない
そんな事を、私は気付けないまま、彼を抱き締めていた
11/11/18 23:29更新 / ネームレス
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