疑念+妖+呪術規範<信頼
「・・・・・・あり得ない事だ。」一目惚れなんて。
という事はあいつは何故俺に「一目惚れ」をしたと言って俺に就いたのだろう。
もしかしたら、ナマリクニの偵察か何かなのだろうか。もしかしたら、敵国の呪術狐で俺の命を狙っている、とか。
「いや、その可能性は低いか。」
もし仮にそうだとすれば、何故頭領は俺に仕えさせたままなのだろう。
「・・・・・・。」
疑念が渦を巻く。
「・・・・・・。」
「よろしくお願いします。」
「・・・・・・頭領。」
「なんだ?」
「初っ端からこの雌狐、俺を襲いそうで怖いです。」
目の前の狐の尾は、くねくねと誘うように、艶めかしく動いている。しかも頬が少し赤いように見える。そして、彼女の周りでは感じた事のない特殊な妖気が渦を巻いている。
「この三つの条件が混ざり合ってだんしんぐしてます。たすけて、頭領。」
「末永く爆ぜろ(笑)。」
「頭領が潰れたクズ、じゃなくて潰れて腐ったジャガイモに見えた。」
「心の中の実況放送はいいから、早くそいつを抱――ぐふッ。」
「頭領、眼底骨折と腸捻転と内臓破裂、脳挫傷、筋肉断裂を起こすと人間って何になるか知ってる?」
そう言った後に先程左手が滑って頭領の肝臓に衝撃をくわえたのは事故だと伝える。
「さあ?(笑)」
「蛋白質だよ(笑)。」
ゲラゲラ、と笑う。だけど行動には移しはしない。こいつは実は中々のキレ者で、コイツと本気で闘えば腕の二、三本は飛んでいくだろうから。
まあ、頭領と闘って腕三本で済むのは俺以外いないのだろうけど。
「・・・・とにかく、こいつがお前の二匹目の使役狐だ。まだ未熟だが、力はそれなりにある。だから、先行的にお前に仕えさせる。それでいいな?」
「はい。」
「そして、今回の結果が来年度から妖狐を使役狐に採用するか否かの判断資料になる。その事を忘れるな。」
「はい。」
肯定。その事は承知の上である。
「それと、今日はこの狐舎にある教育官用の部屋に泊っていけ。」
「はい。」
現時刻は多分六時ほど。あたりはもう暗く、狐舎からの帰路になにが出るかは分からない。
頭領は中々頭が切れる。それゆえの判断である。
転移術式等を使えればいいのだが、まだ未熟な妖狐の彼女には負担が大きい。しかも、妖狐などの魔力放出妖怪が多い狐舎では、あまりいい魔力の波が得られない。
その結果あの結論に頭領は至ったのだろう。
・・・・・こんなに賢い頭領を知っているのは多分俺だけなんだろう。
ちょっとお情けでがっかりしてみたりする。
「あの〜・・・・・・。」
「・・・・・・何だ?」
「狭くありませんか?」
「・・・・・・。(汗)」
密着するように体を寄せたり、抱きついたり、匂いを嗅いでいたり、なんかふにふにしたやわらかなモノを押し付けたり、尻尾を逃げられないように絡みつけたりしているどっかのきつねやろーには言われたくない台詞だった。弁明しておくが、一応彼女も教育官である。
何で教育官も独り身の狐ばかりなんだ・・・・・・。俺は嘆く。
しかも、布団が足りないとの事でなんか先刻から熱っぽい視線を送ってくれちゃってる奴が、「布団が足りないので、誰かの布団で一緒に寝るなんてどうですか?」なんて言い出しやがったので、流れでこうなりやがった。
教育官だから、「呪術規範」や、先刻の狐の事を聞けるのはチャンスだったが。
「なあ、教育官。」
「・・・・・・。」
「おい、教育官。」
「・・・・・・。」
「おい、糞狐。」
「・・・・・・。」
「おい!**********!」(聞くにも堪えない悪口)
「・・・・・・ガン無視か。」
「・・・・・・。」
「まあいいや、こいつは寝てしまったようだし、抜け出してもう帰ろうかな。中々可愛い奴だったけど、返事もしてくれないしなぁ〜。」
そう言うと、尻尾の締め付けがきつくなる。起きてはいるようだ。
「よし、逃げるか。」
そう言うと、奴が抱きついてきた。 に、逃げれん!!
そんな行動に、「あ、かわいいな。」とおれは思ってしまった。
「・・・・・・起きてますよ。」少し拗ねたように背中側の奴がつぶやく。
「じゃあ何で返事しなかったんだよ・・・・・・。」
「私の名前を呼んでくれなかったから・・・・・・。」
「・・・・・・は?」
「だから、わたしのなまえを・・・・・・。」
段々と奴の声が尻すぼみになっていく。
「え?あ?うん?あ!?そうだそうだ、『美弥』さんだっけ?」
一瞬、状況が分からなかったのは内緒だ。
「はい。なんですか?」
「呪術規範の事、聞いていいか?」
「・・・・・・え?呪術師は必ず内容を全て暗記しなければいけないはずでは?」
「・・・・・・俺、特例で頭領に覚えなくてもいいって言われてる。」
三週間で辞書の内容を丸暗記が出来る人はいない。あれを暗記するのはそれと同じ、かそれ以上のものだ。
「え、じゃあ、他の人に言わない方がいいですよね?秘密にしておいた方が貴方のためになりますよね!?」
「お、おう。」
「つ、つまり二人だけの秘密ですね!?なんかいいですね、それ!?」
「ま、まぁ、そうじゃね?」
なぜ、彼女は興奮しているのだろうか。「二人だけの秘密」の事よりその事が気になる。
「つまりですね、狐たちは主人となる人物をその時まで見る事は出来ず、また、それと同様にに主人も自分の奴隷である狐を選べないわけです。」
「ふぅむ。なるほど。」
「聞いてます?」
「きいてるよ。」
「ですから、その・・・・・・如月さんは・・・・・・。」
「敵の可能性がある。ってことか。」
「はい。もしかしたら賊討伐の際に口実として言っていた事は嘘で、未熟なあの狐を狙って魔力干渉をして、賊に貴方を殺させる。なんて作戦が遂行されているのかも知れません。」
「どんだけマイナス思考なんだよ・・・・・・。」
否定したい、そう思った。だけど、否定してもそれを証明する証拠が少なすぎる。
「あの『葉月』ちゃんも力は強いとはいえ、まだまだ未熟ですし。」
「まあな。」
俺のもう一人の狐である奴の名前は葉月と言い、最上級学年である三期生の主席であるらしい。
「だけどさ、美弥。君は如月が敵だと思うか?」
「・・・・・・確率は高いと思います。」
「だけど、俺にはそう思えないんだよ。」
「何故です?」
この先、話そうかどうか迷った。
だけど、その迷いを吹き飛ばして、俺は言うだろう。
「だってさ、おれは、『名前』を教えているから」
という事はあいつは何故俺に「一目惚れ」をしたと言って俺に就いたのだろう。
もしかしたら、ナマリクニの偵察か何かなのだろうか。もしかしたら、敵国の呪術狐で俺の命を狙っている、とか。
「いや、その可能性は低いか。」
もし仮にそうだとすれば、何故頭領は俺に仕えさせたままなのだろう。
「・・・・・・。」
疑念が渦を巻く。
「・・・・・・。」
「よろしくお願いします。」
「・・・・・・頭領。」
「なんだ?」
「初っ端からこの雌狐、俺を襲いそうで怖いです。」
目の前の狐の尾は、くねくねと誘うように、艶めかしく動いている。しかも頬が少し赤いように見える。そして、彼女の周りでは感じた事のない特殊な妖気が渦を巻いている。
「この三つの条件が混ざり合ってだんしんぐしてます。たすけて、頭領。」
「末永く爆ぜろ(笑)。」
「頭領が潰れたクズ、じゃなくて潰れて腐ったジャガイモに見えた。」
「心の中の実況放送はいいから、早くそいつを抱――ぐふッ。」
「頭領、眼底骨折と腸捻転と内臓破裂、脳挫傷、筋肉断裂を起こすと人間って何になるか知ってる?」
そう言った後に先程左手が滑って頭領の肝臓に衝撃をくわえたのは事故だと伝える。
「さあ?(笑)」
「蛋白質だよ(笑)。」
ゲラゲラ、と笑う。だけど行動には移しはしない。こいつは実は中々のキレ者で、コイツと本気で闘えば腕の二、三本は飛んでいくだろうから。
まあ、頭領と闘って腕三本で済むのは俺以外いないのだろうけど。
「・・・・とにかく、こいつがお前の二匹目の使役狐だ。まだ未熟だが、力はそれなりにある。だから、先行的にお前に仕えさせる。それでいいな?」
「はい。」
「そして、今回の結果が来年度から妖狐を使役狐に採用するか否かの判断資料になる。その事を忘れるな。」
「はい。」
肯定。その事は承知の上である。
「それと、今日はこの狐舎にある教育官用の部屋に泊っていけ。」
「はい。」
現時刻は多分六時ほど。あたりはもう暗く、狐舎からの帰路になにが出るかは分からない。
頭領は中々頭が切れる。それゆえの判断である。
転移術式等を使えればいいのだが、まだ未熟な妖狐の彼女には負担が大きい。しかも、妖狐などの魔力放出妖怪が多い狐舎では、あまりいい魔力の波が得られない。
その結果あの結論に頭領は至ったのだろう。
・・・・・こんなに賢い頭領を知っているのは多分俺だけなんだろう。
ちょっとお情けでがっかりしてみたりする。
「あの〜・・・・・・。」
「・・・・・・何だ?」
「狭くありませんか?」
「・・・・・・。(汗)」
密着するように体を寄せたり、抱きついたり、匂いを嗅いでいたり、なんかふにふにしたやわらかなモノを押し付けたり、尻尾を逃げられないように絡みつけたりしているどっかのきつねやろーには言われたくない台詞だった。弁明しておくが、一応彼女も教育官である。
何で教育官も独り身の狐ばかりなんだ・・・・・・。俺は嘆く。
しかも、布団が足りないとの事でなんか先刻から熱っぽい視線を送ってくれちゃってる奴が、「布団が足りないので、誰かの布団で一緒に寝るなんてどうですか?」なんて言い出しやがったので、流れでこうなりやがった。
教育官だから、「呪術規範」や、先刻の狐の事を聞けるのはチャンスだったが。
「なあ、教育官。」
「・・・・・・。」
「おい、教育官。」
「・・・・・・。」
「おい、糞狐。」
「・・・・・・。」
「おい!**********!」(聞くにも堪えない悪口)
「・・・・・・ガン無視か。」
「・・・・・・。」
「まあいいや、こいつは寝てしまったようだし、抜け出してもう帰ろうかな。中々可愛い奴だったけど、返事もしてくれないしなぁ〜。」
そう言うと、尻尾の締め付けがきつくなる。起きてはいるようだ。
「よし、逃げるか。」
そう言うと、奴が抱きついてきた。 に、逃げれん!!
そんな行動に、「あ、かわいいな。」とおれは思ってしまった。
「・・・・・・起きてますよ。」少し拗ねたように背中側の奴がつぶやく。
「じゃあ何で返事しなかったんだよ・・・・・・。」
「私の名前を呼んでくれなかったから・・・・・・。」
「・・・・・・は?」
「だから、わたしのなまえを・・・・・・。」
段々と奴の声が尻すぼみになっていく。
「え?あ?うん?あ!?そうだそうだ、『美弥』さんだっけ?」
一瞬、状況が分からなかったのは内緒だ。
「はい。なんですか?」
「呪術規範の事、聞いていいか?」
「・・・・・・え?呪術師は必ず内容を全て暗記しなければいけないはずでは?」
「・・・・・・俺、特例で頭領に覚えなくてもいいって言われてる。」
三週間で辞書の内容を丸暗記が出来る人はいない。あれを暗記するのはそれと同じ、かそれ以上のものだ。
「え、じゃあ、他の人に言わない方がいいですよね?秘密にしておいた方が貴方のためになりますよね!?」
「お、おう。」
「つ、つまり二人だけの秘密ですね!?なんかいいですね、それ!?」
「ま、まぁ、そうじゃね?」
なぜ、彼女は興奮しているのだろうか。「二人だけの秘密」の事よりその事が気になる。
「つまりですね、狐たちは主人となる人物をその時まで見る事は出来ず、また、それと同様にに主人も自分の奴隷である狐を選べないわけです。」
「ふぅむ。なるほど。」
「聞いてます?」
「きいてるよ。」
「ですから、その・・・・・・如月さんは・・・・・・。」
「敵の可能性がある。ってことか。」
「はい。もしかしたら賊討伐の際に口実として言っていた事は嘘で、未熟なあの狐を狙って魔力干渉をして、賊に貴方を殺させる。なんて作戦が遂行されているのかも知れません。」
「どんだけマイナス思考なんだよ・・・・・・。」
否定したい、そう思った。だけど、否定してもそれを証明する証拠が少なすぎる。
「あの『葉月』ちゃんも力は強いとはいえ、まだまだ未熟ですし。」
「まあな。」
俺のもう一人の狐である奴の名前は葉月と言い、最上級学年である三期生の主席であるらしい。
「だけどさ、美弥。君は如月が敵だと思うか?」
「・・・・・・確率は高いと思います。」
「だけど、俺にはそう思えないんだよ。」
「何故です?」
この先、話そうかどうか迷った。
だけど、その迷いを吹き飛ばして、俺は言うだろう。
「だってさ、おれは、『名前』を教えているから」
12/07/28 21:04更新 / M1911A1
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