嘘
俺は、彼女に名前を教えた。
だけどその時は、その行為が命を預けるようなものだ、という事を俺は知らなかったのだ。
「・・・・・・なんだと?」
その事をこの世界に来てお世話になった呪術師の頭領に伝えると、何か難しいような顔をしてこちらを睨んできた。
「ああ〜、そうかそうか、じゃあお前は・・・・・・死ぬんだな。」
するととんでもない答えが返ってきた。
「・・・・・・死、死ぬのか・・・・・・。」
嗚呼、ミスった。
そんな後悔とも言えぬ清々しさを伴う何かが心の中で渦を巻いた。
「これが千二百年前ならな。」
「・・・・・・へ?」
「だから、千二百年前だよ、千二百年前。」
何なのだろう、千二百年前とは。
「だからさ、その千二百年前から、妖怪たちは人を襲わなくなっていったんだよ、何故か。」
「・・・・・・意味が分からない・・・・・・。」
俺はぼそりと呟いた。
「まあ、そりゃあそうだよな、おめぇはまだ此処に来て三週間しか経ってないんだからな。」
「そりゃあそうですよ。」
これは事実だ。俺の元々いた世界の理は科学であったのだ。
だがある日突然、強力な転移術式とみられる術式に巻き込まれ、この異世界に来てしまったのだ。それはもう何とも言えぬ理不尽なことで、三日三晩嘆き続けた。そしてそのところを、自分はこの陰陽受動式の頭領であるこの人に拾われたのだ。
「その呪術の基礎すら知らない奴が使役する狐に呪術の講釈をして、相手に名前を教えた、なんて何処の笑い話だよ。」
「教えてくれなかったのは何処のどいつだよ・・・・・・。」
また俺はぼそぼそつぶやいた。
コイツ(頭領)は、俺を拾った後に、「テキトーにこれ読んで覚えろ。」と言って、呪術教本を投げて渡し、何も教えてくれなかったのだ。釣った魚には餌をやらないくらいの理不尽さだ。
しかも、俺を拾ったときに言った言葉が、
「おめぇには呪術の才能がある。だから来てくれ。」という言葉だったのに、この対応だ。その理不尽さに三日三晩嘆いた。
「まあいいじゃねえか。あいつも超がつくほどの美人なんだし。」
「・・・・・・は?」
またまた意味不明だった。
「だからさ、命を預ける、すなわち、生涯を共にする。」
「は?」
なんか目の前のボンクラは「いい事言った」的な顔をしている。とっても意味不明。
「それよりも腐ったジャガイモの様な顔の口角を上げるのを止めて頂けませんか。」
「さらりとジャガイモの芽の様な毒を吐くねえ、哲也君。」
「自覚してるじゃないすか、頭領。」
はぁ、と溜息をつく。
「だからさあ、名前を教えるってことは、『愛の告白』ってことだよ。」
「はぁぁぁぁぁぁ!?」
驚愕。
また三日三晩嘆くようになったのは言うまでもない。
だけどその時は、その行為が命を預けるようなものだ、という事を俺は知らなかったのだ。
「・・・・・・なんだと?」
その事をこの世界に来てお世話になった呪術師の頭領に伝えると、何か難しいような顔をしてこちらを睨んできた。
「ああ〜、そうかそうか、じゃあお前は・・・・・・死ぬんだな。」
するととんでもない答えが返ってきた。
「・・・・・・死、死ぬのか・・・・・・。」
嗚呼、ミスった。
そんな後悔とも言えぬ清々しさを伴う何かが心の中で渦を巻いた。
「これが千二百年前ならな。」
「・・・・・・へ?」
「だから、千二百年前だよ、千二百年前。」
何なのだろう、千二百年前とは。
「だからさ、その千二百年前から、妖怪たちは人を襲わなくなっていったんだよ、何故か。」
「・・・・・・意味が分からない・・・・・・。」
俺はぼそりと呟いた。
「まあ、そりゃあそうだよな、おめぇはまだ此処に来て三週間しか経ってないんだからな。」
「そりゃあそうですよ。」
これは事実だ。俺の元々いた世界の理は科学であったのだ。
だがある日突然、強力な転移術式とみられる術式に巻き込まれ、この異世界に来てしまったのだ。それはもう何とも言えぬ理不尽なことで、三日三晩嘆き続けた。そしてそのところを、自分はこの陰陽受動式の頭領であるこの人に拾われたのだ。
「その呪術の基礎すら知らない奴が使役する狐に呪術の講釈をして、相手に名前を教えた、なんて何処の笑い話だよ。」
「教えてくれなかったのは何処のどいつだよ・・・・・・。」
また俺はぼそぼそつぶやいた。
コイツ(頭領)は、俺を拾った後に、「テキトーにこれ読んで覚えろ。」と言って、呪術教本を投げて渡し、何も教えてくれなかったのだ。釣った魚には餌をやらないくらいの理不尽さだ。
しかも、俺を拾ったときに言った言葉が、
「おめぇには呪術の才能がある。だから来てくれ。」という言葉だったのに、この対応だ。その理不尽さに三日三晩嘆いた。
「まあいいじゃねえか。あいつも超がつくほどの美人なんだし。」
「・・・・・・は?」
またまた意味不明だった。
「だからさ、命を預ける、すなわち、生涯を共にする。」
「は?」
なんか目の前のボンクラは「いい事言った」的な顔をしている。とっても意味不明。
「それよりも腐ったジャガイモの様な顔の口角を上げるのを止めて頂けませんか。」
「さらりとジャガイモの芽の様な毒を吐くねえ、哲也君。」
「自覚してるじゃないすか、頭領。」
はぁ、と溜息をつく。
「だからさあ、名前を教えるってことは、『愛の告白』ってことだよ。」
「はぁぁぁぁぁぁ!?」
驚愕。
また三日三晩嘆くようになったのは言うまでもない。
12/06/23 17:55更新 / M1911A1
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