『プロローグ』 恋煩イ
とても理不尽だった。
あり得ないほどに理不尽だった。
・・・だけど、その「あり得ない」が「あり得て」しまったのだから、しょうが無いと言えばしょうがない。
「・・・・・・はぁ。」
自分の溜息が電離して、虚空に消える。電離の意味は良く分からないのだけど、聞くたびに何故か寂寥の感がこみ上げ、故郷の香りを思い出してしまう。
「・・・・・・はぁ。」
二度目の溜息。この感情は恋煩いに似たような感情だ。
――もう二度と届かないもの、自分の故郷。俗世から突然切り離されて感じたのは大きな喪失感と何処から湧き出てきたよく分からない希望。
例えるなら、自信はないけど告白してやりたい、という感情に似ている。。
「・・・波乱万丈ですね。」
そんな声が囲炉裏を挟んだ先の彼女から聞こえた。彼女は、俺の心が読めるというプライバシー権もへったくれもない能力を宿している、俺の職業上でのパートナーである。
「・・・・・・。勝手に心読むなよ。」
「だって、聞こえるんだもん。」
「そんなに俺は受信しやすい電波がでてんのか?」俺はラジオの放送局じゃねーぞ、と心の中でつぶやく。
「・・・・でんぱ?」
「いや、なんでもない。」
「・・・・・・?」
彼女は、「それもあなたの居た世界のものですか?」と言いたげな顔でこちらを見ているが、それを口に出すことはない。つまり野暮ってやつだった。
出来る限り俺に昔の事を思い出させたくないのだろう。その心づかいが俺には嬉しかった。
その優しい大人びた心づかいは彼女の「稲荷」という種族から来るものなのだろう。
「・・・・・・むむぅ。」彼女が唸る。
「どうした?」
「・・・・・・。」彼女がぷい、とそっぽを向いてしまった。
「どうしたんだよ、如月?」俺が尋ねる。おれは如月の様に旨く気づかいも出来ない人間だから、なぜ如月がそっぽを向いたのかは解らなかった。
「・・・・・・。」
「なんだよ。」
「さっき私の心を読みましたね。」
「はぁ?」
「わたしが、それもあなたの居た世界のものですか?と尋ねようとした時の話ですよ。」
「あぁ〜あれか。」やっと気付く俺。鈍感だなと自嘲。
「・・・・・・。(せっかく私が貴方のために気づかいをしてやったのに)」
なんかぶつぶつと喋っているけれど、これは無視。
「・・・でもさ、『目隠し』すら出来ないくせに心を読むお前の方が悪い気がするのは気のせいか・・・・・・?」
達の悪い言い訳をする俺。俺は狐ばりに小汚い奴だ。
「・・・・・・チッ。」
・・・・・・何なんだこいつは、と如月が心の中で呟いているのが分かる。これはあくまで推測であり、心を読んでいないから本当の事は解らないが。
「『見られないように見て、聞かれないように聞く。』それが俺たち、『呪術師』に重要な事だろう?」
「・・・それはそうですけど、乙女の心の中をのぞくことははしたない事だと存じ上げます。」
如月の口調が敬語に戻る。大抵、この様な時は何か打開法を見つけて、自信をつけた時だ。
「・・・・・・すまん。」
何となく、相手をするのに飽きたので謝って話を終える。
すると、なぜか如月はポカンとした表情で無口になる。さっきのねちっこい言い争いはどこ吹く風だ。
「・・・・・・どうした?」
「・・・いや、なんでもありません。」
「・・・・・・いや、なんでもあるだろう」と言いかけてやめた。
「(気分屋の相手は大変だ。)」
なぜなら、そんなつぶやきが聞こえてきたからだった。
あり得ないほどに理不尽だった。
・・・だけど、その「あり得ない」が「あり得て」しまったのだから、しょうが無いと言えばしょうがない。
「・・・・・・はぁ。」
自分の溜息が電離して、虚空に消える。電離の意味は良く分からないのだけど、聞くたびに何故か寂寥の感がこみ上げ、故郷の香りを思い出してしまう。
「・・・・・・はぁ。」
二度目の溜息。この感情は恋煩いに似たような感情だ。
――もう二度と届かないもの、自分の故郷。俗世から突然切り離されて感じたのは大きな喪失感と何処から湧き出てきたよく分からない希望。
例えるなら、自信はないけど告白してやりたい、という感情に似ている。。
「・・・波乱万丈ですね。」
そんな声が囲炉裏を挟んだ先の彼女から聞こえた。彼女は、俺の心が読めるというプライバシー権もへったくれもない能力を宿している、俺の職業上でのパートナーである。
「・・・・・・。勝手に心読むなよ。」
「だって、聞こえるんだもん。」
「そんなに俺は受信しやすい電波がでてんのか?」俺はラジオの放送局じゃねーぞ、と心の中でつぶやく。
「・・・・でんぱ?」
「いや、なんでもない。」
「・・・・・・?」
彼女は、「それもあなたの居た世界のものですか?」と言いたげな顔でこちらを見ているが、それを口に出すことはない。つまり野暮ってやつだった。
出来る限り俺に昔の事を思い出させたくないのだろう。その心づかいが俺には嬉しかった。
その優しい大人びた心づかいは彼女の「稲荷」という種族から来るものなのだろう。
「・・・・・・むむぅ。」彼女が唸る。
「どうした?」
「・・・・・・。」彼女がぷい、とそっぽを向いてしまった。
「どうしたんだよ、如月?」俺が尋ねる。おれは如月の様に旨く気づかいも出来ない人間だから、なぜ如月がそっぽを向いたのかは解らなかった。
「・・・・・・。」
「なんだよ。」
「さっき私の心を読みましたね。」
「はぁ?」
「わたしが、それもあなたの居た世界のものですか?と尋ねようとした時の話ですよ。」
「あぁ〜あれか。」やっと気付く俺。鈍感だなと自嘲。
「・・・・・・。(せっかく私が貴方のために気づかいをしてやったのに)」
なんかぶつぶつと喋っているけれど、これは無視。
「・・・でもさ、『目隠し』すら出来ないくせに心を読むお前の方が悪い気がするのは気のせいか・・・・・・?」
達の悪い言い訳をする俺。俺は狐ばりに小汚い奴だ。
「・・・・・・チッ。」
・・・・・・何なんだこいつは、と如月が心の中で呟いているのが分かる。これはあくまで推測であり、心を読んでいないから本当の事は解らないが。
「『見られないように見て、聞かれないように聞く。』それが俺たち、『呪術師』に重要な事だろう?」
「・・・それはそうですけど、乙女の心の中をのぞくことははしたない事だと存じ上げます。」
如月の口調が敬語に戻る。大抵、この様な時は何か打開法を見つけて、自信をつけた時だ。
「・・・・・・すまん。」
何となく、相手をするのに飽きたので謝って話を終える。
すると、なぜか如月はポカンとした表情で無口になる。さっきのねちっこい言い争いはどこ吹く風だ。
「・・・・・・どうした?」
「・・・いや、なんでもありません。」
「・・・・・・いや、なんでもあるだろう」と言いかけてやめた。
「(気分屋の相手は大変だ。)」
なぜなら、そんなつぶやきが聞こえてきたからだった。
12/06/20 19:46更新 / M1911A1
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