こんな風に俺も搾られたい
衝動とは、何故にこうも抗い難いものなのだろうかと、彼女はいつも思う。
身の内より湧き起こる焔は、放っておいても消えてくれない。消えない焔は衝動から欲求へと変わり、体を熱く火照らせる。
その火照りを鎮めるのは、何時だって白い粘液だ。
満月の灯りで、目が覚めた。
「ん･･････」
思いの外寝心地のいい草むらに横たえた体を起こし、生きていた頃の癖で伸びをする。
「ん〜っ」
随分昔に休暇を取り、この間ようやく復帰した脳に血液と酸素が行き渡る。体も軽くなった。
「よし、行くか」
暗く沈んだ夜を照らす満月の光。高台に作られた墓地を照らすスポットライトを浴びて、彼女は仄かな芳香に誘われて歩みを始める。
―――――喉が、渇いた。
先月十六になったばかりの少年は、高台の墓地に葬られた祖父に会いに来た。
重たい墓石と土の下に埋められた木製の棺。その中に納められた祖父を見たのは一年も前のことだった。
人間の記憶力とは随分と薄情なものらしく、こうして定期的に墓参りにでもこないと忘れてしまうようだ。現に彼の家族はもう祖父を忘れてしまったように思える。日々生きるということはそれだけの難行ということなのだろうが、なんともやり切れない。
せめて自分だけはと、こうして定期的に墓参りに訪れている。
「爺ちゃん、天国ってあるの？」
素朴な疑問だ。
死を悲しむには時が経ち過ぎた。寂しいと感じるには日々が忙しすぎた。風化した寂しさと悲しみが最後に見出したのがその疑問である。
無論、答えなど期待していない。
していないのに―――――。
「さあ？ ここがそうじゃないならあたしには判らないなぁ」
何故か、答えが返ってきた。
「･･････？」
顔を上げると、祖父の墓石に頬杖を突いて、やたら艶かしくこちらを見つめる女を見た。
「こ、こんばんは」
戸惑いが大きいが、ここは人として挨拶をせねばなるまい。
「礼儀正しくてとってもあたし好みなんだけど、ちょっと違ってるのよね」
頭にクエスチョンを浮かべて首を傾げる前に、女は少年の速度では対応出来ない速度で肉迫した。
「―――――！？」
「挨拶は『いただきます』が正解ね」
吐息さえ掛かる距離で見た、女の微笑。唇を舐める色っぽい仕草。自分を見つめる、欲情に濡れた捕食者の目。
―――――魔物だ！
「うわっ」
確信も動揺も、驚愕さえも遅い。
華奢な少年の体躯は、見た目にそぐわない怪力で組み敷かれた。後頭部を打ち付けないように、いつの間にか女の手が後ろに回っている。そのためか、妙に現実感がない。
ただ、薄い布越しに伝わる熱い体温が、強烈に生々しい。
「な、なに？」
「なにって、初心ねぇ。ひょっとして初めて？」
問いの意味が判らずに窮していると、女はそれで全てを察したようだ。
「うわぁ、なんてラッキーなの。あたしを死なせた時はぶっ殺してやろうかと思ったけど、こんな可愛い子をくれた神様には感謝くらいしてあげないとね」
嬉しそうに唇を舐める女。月の光に反射した、唾液に塗れた舌が淫靡だ。
「あ、じ、じいちゃ･･････」
少年の頭はパニックを引き起こし、しかし捕食者というものは得てして、そういうものに構ってはくれない。
「大丈夫大丈夫。怖くもないし痛くもないから。君はじっとして、あたしに全部委ねてくれればいいからね」
口調はやんわりと穏やかで、どこか優しささえ覚える。
だが少年のズボンと下着を剥ぎ取る様はどこからどう見ても乱暴だ。
「ひっ」
不意に外気に曝された陰部が、この事態を現実のものだと訴える。
（ゆ、夢じゃ･･････ないの）
急転する事態は現実感を見失わせ、夢心地にする。しかし夢のものでは決してありえない感触の群れが、それを簡単に否定する。
「割礼は済ませてるのね。可愛らしいピンク色の亀さん♪」
自分の陰部に注がれる熱烈な視線。それを敏感に察知した思春期の青い欲望が、肥大した恐怖をせき止め、新しい何かを生んだ。
「あら、おっきくなってきた」
期待である。
少年は知識でなく、女の風情や仕草から、これから行われるであろう淫靡な行為をおぼろげながら感じ取った。
「うわ、期待以上ね。随分立派なもの持ってるじゃない」
色の白い肌色が屹立し、桜色の亀頭が赤く染まる。
「こんなにいやらしい匂い撒き散らしちゃって･･････もう無理、我慢できない！」
舌を出したまま大きく開いた口が、少年の屹立した肉棒を頬張る。
「くあっ！」
突如脳髄に響く強烈な快楽。
温かな口腔内の温度を感じるよりも先に、亀頭部の敏感な粘膜に触れた唾液に快感の声が洩れた。
「んむふぅーーーーッッ･･･････んフーーーッ」
ぱっくりと少年の肉竿を根元まで咥えた彼女も、快楽と喜悦に塗れた吐息を漏らす。情欲に塗れた瞳が、安心感と快楽に緩み、
「ぢゅるるるるるうぅぅぅッ･･････！」
新たな欲望に濡れた。
「ッあ、ウア、ああっ」
脳の快楽中枢とかいう場所に、直接電気を流し込まれたような。強烈で鋭利な快楽。
それは精通より二年間、手淫しか知らなかった少年には過剰なものであった。
「んあッ･･････！」
「んぶうぅぅぅッ！？」
少年の許容量を大幅に超えた快楽は、少年が限界を意識するよりも先に爆ぜた。
全身が跳ね、一瞬だけフラッシュした視界を認識して初めて、自分が射精したことを知った。
突如口内で爆ぜた白濁色の欲望に一瞬驚いた彼女であったが、
「んッぢゅるッ！ ぢゅるるうぅぅッ！」
すぐさま吸い上げた。
「あ、うああっ！」
尿道と鈴口を通過する自身の熱い弾丸。その感触だけでも充分な快楽なのに、それを強烈な吸引で吸い上げようとするものが居る。貪欲に、味わい尽くすように、勿体無いとでも言いたげに、激しく。
「んぐ、ん、んふ、んんぅ！」
勢い良く迸った分を嚥下しながら、ねだるように吸い付いて。
「うく、んひぃ」
少年は、自分の口から漏れる少女のような声を聞きながら、
（ああ、食べられてる･･････）
被虐的な喜びに酔い痴れた。
「ぢゅっっッぽん」
「んひっ！」
口内にある全ての精を飲み干して、ようやく彼女は少年の肉棒から口を離す。
「ッッッッッぷはぁっ！ 最っっっっっ高！」
喜悦にまみれた声に、快楽の色が混じっているのは彼女も軽く絶頂したためだろう。
「はっ、はぁ、はぁ」
「ん〜？ 大丈夫？ 若いんだから大丈夫よね。一回だけで終わりなんて言わせる気もないし」
「はぁ･･････え？」
荒い息を吐きながら、全身を襲う倦怠感に晒されていると、不吉な一言がやけに明るい調子で投げかけられた気がした。
「い、一回だけで･･････って？」
「最低でもあと一回？ くらいは射精してもらうってことよ。まあちょっと休憩しよっか。じっとしててね」
弛緩して力の入っていない少年の腕を胸に抱きかかえる。
腕に触れる二つの膨らみが心地いい。
「あむ」
指を、咥えられた。
「うわ･･････」
「ちゅ、れる、気持ひいい？」
肉棒をしゃぶられた時とは違う、じんわりした心地よさ。いやそれでも快楽の部類としては強烈だ。手淫をする時よりも気持ちいいだろう。
「じゅる、ちゅる、ちゅ･･････れる･･････」
舌が指を這い回る。肉厚の、それでいて蛇を思わせる長い舌。うねうねと縦横無尽に指をしゃぶっていく。
「ん･･････くっ、うう･･････」
そろそろ快楽が我慢できない領域に入っていく。指が肉棒に変わったような感覚に翻弄され、情けないことに声までも漏れてきた。
「んふふ、勃ってきてる」
「え？ あ･･････」
確かに、言葉通りさっきまで力なく萎れていた少年の肉竿は硬度を取り戻しつつある。上を向いた少年の恥部を見つめて、指から口を離した。
「でもま、だからって攻めるのは可哀想だから、こっちね。ずっとお預けされてるこっちの方が可哀想だし」
なにを言っているのか判らない。少年がまた下に移動していく女を見送って、恥部に顔を埋めたところまで確認したところで、
「はむっ」
「んあっ！」
慣れない刺激に体が跳ねた。
「わ、びんか〜ん♪ これは可愛がってあげないとね」
陰嚢である。
ずっしりとした玉袋を舌で掬い、重さを楽しむ。時折唇であまがみして、舌を這わせて皺を伸ばす。
「あむ･･････んちゅ、れろ･･････れるれる」
縦にある袋の筋に合わせて舌を這わせ、往復させて何度も舐めあげる。舌の表と裏でこうも感触が違うのかと、痺れるような快感に晒されながら感銘を覚えた。
「ここ、思ってるより感じるでしょ？ あむ、んちゅ･･････べろべろ･･････っ」
皺の間に舌を滑り込ませ、先端だけでなくサイドも使って刺激してくる。
「な、に･･････これぇ！」
「むふふ、気に入ったみたいだねぇ。じゃ、そろそろ･･････べろおぉぉん」
舌の腹で玉袋を持ち上げて、重さと感触を味わって全体を一舐めして。
「ふぁむ･･････んちゅぅ、ちゅ、ちゅぅ･･････ちゅるるうぅぅッ！」
「んああッ！」
腰全体に広がる甘く痺れるような快感。
玉袋までも、吸われている―――――。
「ちゅちゅちゅっ、ちゅる･･････んぢゅぅぅぅッ！」
「あ･･････ああ、あっ、むああ！」
疼く。
ここまで丹念に刺激されながら、手を触れてさえ貰えない肉竿が疼く。鈴口に独特の感触がある。先走った透明の氏腺液が溢れているのだろう。
「ぷふぅ･･････そろそろ食べ頃かな？」
月明かりにきらりと光る肉竿。
透明な涙を垂れ流しながら刺激を乞う熱い欲望が、先刻飲み干した白濁の味を想起させる。知らず、溢れた涎を啜った。
「あ、ああ･･････」
少年も待ち望んでしまっている。
捕食される喜びを見出してしまった今、もしこのまま解放されたら気が狂いかねない。舌を大きく出して、屹立した肉竿の裏筋を舐め上げようとする様を、今か今かと待ち侘びる。
「れろぉ･･････ん」
「うんぐっ！」
瞬間、走る快感。
たっぷりと唾液を絡ませた舌が敏感な裏筋を通過し、鈴口までも舐め上げる。
「れろ･･････んふ、おいし♪」
溢れ出る雫を全て舐めとって、今度は舌の裏側を雁首に這わせる。
「うあ！ うっあ」
ざらざらとした質感の表とは違う、つるつるとした舌。敏感な雁首に沿って、ゆっくりと這わせられる舌が、少年を翻弄する。
気を抜くと、もう暴発してしまいそうだ。
「れろ、ちろ･･････もうちょっと我慢してね。せっかく一回出して頑張れるようにしたんだから。
･･････ま、初心に爆発しちゃうのも可愛いから、それはそれでいいけどね」
咥えるのではなく、丁寧に舐めしゃぶる。
刺激の弱い箇所を重点的に舐め回したかと思えば、そうでもない箇所を執拗に責め立てる。
「鈴口に舌、ちょっとだけ入れるけど我慢してね。きっと物凄く熱くて気持ちいいだろうけど頑張れるなら頑張って」
言葉通り、尖らせた舌の先端を、ぱっくりと口を開けた尿道口に差し込む。
「むああッ！ それ、あつ･･････！」
「れろれろれろ･･････れる、れろ、れる･･････ゴクン」
喉を鳴らして、嚥下する。
その度に、彼女の体にも快楽の電流が走る。
「れるうぅぅぅぅッ！」
連続で叩き込まれる快楽の奔流に気をやりかけた時、舌を鈴口から離された。
「んっは、あ･･････」
刺激から解放されると、すぐさま肉竿が震えながら次の刺激をねだる。
その貪欲さに目を細めながら、今度は口に含む。
「もう我慢しなくていいよ。好きな時に出しちゃって」
口腔内に導かれる感触。掛かる吐息が熱い。
ぱくり、とまた食われた。
「うああ･･････」
少年はもう夢心地だ。
随分長い間この感触を味わってなかったような気さえする。快感の塊のような唾液と、柔らかな口内の肉に包まれながら安心感が湧き出てきた。
（ああ、もうこれから離れられない）
否、離れたくない。
咥えられることのなんと安心することか。自分の肉棒は、ここに入るためにあるような気さえする。
「んぢゅっ、るろぉぉおんっ！」
口内で動き回る舌。表も裏も全て舐られ、口内で優しく扱かれる。敏感な雁首を唇で引っ掛けて扱き上げる。
「んぐッ！ んんむッ！ じゅ、じゅる、じゅるるるうぅぅぅッ！」
頭を激しく揺らしながら、貪欲に射精をねだる。
いや寧ろ脅迫に近い。
快楽を人質に取られた脅迫。出さなければ永遠にこの快楽地獄を見舞う、と。
「ううううっ！」
丹田に力を込めても、もう限界だ。
尿道に込み上げる熱いマグマの存在感が強すぎる。為す術もない快楽の奔流が、少年を追い立てる。
「んんッ！ んふうッ！ じゅろろろろッ！ んぼッ！ んぼうッ！」
「も、だ･･････！」
「ぢゅるるるるるうぅぅぅッ･･････！」
「うあああっ！」
「むぐッ！ んむぶ！ んぐ、んふぅ･･････ん」
爆ぜた。
一度目よりも余ほど強い快感が走り、思い切り口内で爆ぜた。
彼女はそれでも離さない。口内でどんな勢いで迸ろうと、喉に直接叩き込まれても離さない。か細い喉を鳴らして次々と嚥下していく。
「んぐッ！ ゴク･･････ゴクゴク、んっ･･････んふぅ。
んちゅ･･････んちゅる、ちゅるちゅる、ぢゅるるうぅぅぅ･･････ッ！」
尿道内に残った最後の一滴までも吸い取って、それもまた嚥下して。
「んんっ！ んぐッ！ ふぅふぅ、ふぐッ！ んくッ！ んッッッくぅううぅううぅッ！」
自分も、盛大な絶頂を迎えた。
「んっは、はあ、ああっ、はぁ･･････」
絶頂の余韻に体が暴れる。肉棒から口を離しても、頭を痺れさせる快感が残り香となって体を襲う。
びくびくと震わせながら、心底満足した表情で少年を見上げ、
「ごちそうさま♪」
行儀良く挨拶で締めた。
「うっは、はぁ･･････はっ、はぁ」
強烈な快感の名残りに呼吸さえ覚束ない。
荒い息をつきながら、明瞭に成らない思考で。
（もう、中毒になったかな、これは･･････）
自分は取り返しのつかない一線を越えてしまったのだと確信した。
「今、なに考えてる？」
「はっ、はぁ、はぁ」
「なに考えててもいいけどね。君はこれからあたしが攫うから。どこに逃げてもいいよ。追いつかれたいところで追いついてあげる。そんで、もう絶対にあたしから離れられなくなるくらい搾り尽くしてあげる」
なにを言っているのかもう判らない。失神しそうでそれどころじゃない。
ちくりとした背徳の罪悪感が胸を襲うが、もうどうでもいい。意識を手放してしまいたくて仕方がない。
取り敢えず、この全身を襲う並大抵でない倦怠感に従おう。
意識が落ちる刹那。
「いいんじゃね？ いいんじゃね、孫よ。人外でも気持ちよければ、それって正義じゃね？」
そんな、祖父のひょうきんな声を聞いた気がした。
身の内より湧き起こる焔は、放っておいても消えてくれない。消えない焔は衝動から欲求へと変わり、体を熱く火照らせる。
その火照りを鎮めるのは、何時だって白い粘液だ。
満月の灯りで、目が覚めた。
「ん･･････」
思いの外寝心地のいい草むらに横たえた体を起こし、生きていた頃の癖で伸びをする。
「ん〜っ」
随分昔に休暇を取り、この間ようやく復帰した脳に血液と酸素が行き渡る。体も軽くなった。
「よし、行くか」
暗く沈んだ夜を照らす満月の光。高台に作られた墓地を照らすスポットライトを浴びて、彼女は仄かな芳香に誘われて歩みを始める。
―――――喉が、渇いた。
先月十六になったばかりの少年は、高台の墓地に葬られた祖父に会いに来た。
重たい墓石と土の下に埋められた木製の棺。その中に納められた祖父を見たのは一年も前のことだった。
人間の記憶力とは随分と薄情なものらしく、こうして定期的に墓参りにでもこないと忘れてしまうようだ。現に彼の家族はもう祖父を忘れてしまったように思える。日々生きるということはそれだけの難行ということなのだろうが、なんともやり切れない。
せめて自分だけはと、こうして定期的に墓参りに訪れている。
「爺ちゃん、天国ってあるの？」
素朴な疑問だ。
死を悲しむには時が経ち過ぎた。寂しいと感じるには日々が忙しすぎた。風化した寂しさと悲しみが最後に見出したのがその疑問である。
無論、答えなど期待していない。
していないのに―――――。
「さあ？ ここがそうじゃないならあたしには判らないなぁ」
何故か、答えが返ってきた。
「･･････？」
顔を上げると、祖父の墓石に頬杖を突いて、やたら艶かしくこちらを見つめる女を見た。
「こ、こんばんは」
戸惑いが大きいが、ここは人として挨拶をせねばなるまい。
「礼儀正しくてとってもあたし好みなんだけど、ちょっと違ってるのよね」
頭にクエスチョンを浮かべて首を傾げる前に、女は少年の速度では対応出来ない速度で肉迫した。
「―――――！？」
「挨拶は『いただきます』が正解ね」
吐息さえ掛かる距離で見た、女の微笑。唇を舐める色っぽい仕草。自分を見つめる、欲情に濡れた捕食者の目。
―――――魔物だ！
「うわっ」
確信も動揺も、驚愕さえも遅い。
華奢な少年の体躯は、見た目にそぐわない怪力で組み敷かれた。後頭部を打ち付けないように、いつの間にか女の手が後ろに回っている。そのためか、妙に現実感がない。
ただ、薄い布越しに伝わる熱い体温が、強烈に生々しい。
「な、なに？」
「なにって、初心ねぇ。ひょっとして初めて？」
問いの意味が判らずに窮していると、女はそれで全てを察したようだ。
「うわぁ、なんてラッキーなの。あたしを死なせた時はぶっ殺してやろうかと思ったけど、こんな可愛い子をくれた神様には感謝くらいしてあげないとね」
嬉しそうに唇を舐める女。月の光に反射した、唾液に塗れた舌が淫靡だ。
「あ、じ、じいちゃ･･････」
少年の頭はパニックを引き起こし、しかし捕食者というものは得てして、そういうものに構ってはくれない。
「大丈夫大丈夫。怖くもないし痛くもないから。君はじっとして、あたしに全部委ねてくれればいいからね」
口調はやんわりと穏やかで、どこか優しささえ覚える。
だが少年のズボンと下着を剥ぎ取る様はどこからどう見ても乱暴だ。
「ひっ」
不意に外気に曝された陰部が、この事態を現実のものだと訴える。
（ゆ、夢じゃ･･････ないの）
急転する事態は現実感を見失わせ、夢心地にする。しかし夢のものでは決してありえない感触の群れが、それを簡単に否定する。
「割礼は済ませてるのね。可愛らしいピンク色の亀さん♪」
自分の陰部に注がれる熱烈な視線。それを敏感に察知した思春期の青い欲望が、肥大した恐怖をせき止め、新しい何かを生んだ。
「あら、おっきくなってきた」
期待である。
少年は知識でなく、女の風情や仕草から、これから行われるであろう淫靡な行為をおぼろげながら感じ取った。
「うわ、期待以上ね。随分立派なもの持ってるじゃない」
色の白い肌色が屹立し、桜色の亀頭が赤く染まる。
「こんなにいやらしい匂い撒き散らしちゃって･･････もう無理、我慢できない！」
舌を出したまま大きく開いた口が、少年の屹立した肉棒を頬張る。
「くあっ！」
突如脳髄に響く強烈な快楽。
温かな口腔内の温度を感じるよりも先に、亀頭部の敏感な粘膜に触れた唾液に快感の声が洩れた。
「んむふぅーーーーッッ･･･････んフーーーッ」
ぱっくりと少年の肉竿を根元まで咥えた彼女も、快楽と喜悦に塗れた吐息を漏らす。情欲に塗れた瞳が、安心感と快楽に緩み、
「ぢゅるるるるるうぅぅぅッ･･････！」
新たな欲望に濡れた。
「ッあ、ウア、ああっ」
脳の快楽中枢とかいう場所に、直接電気を流し込まれたような。強烈で鋭利な快楽。
それは精通より二年間、手淫しか知らなかった少年には過剰なものであった。
「んあッ･･････！」
「んぶうぅぅぅッ！？」
少年の許容量を大幅に超えた快楽は、少年が限界を意識するよりも先に爆ぜた。
全身が跳ね、一瞬だけフラッシュした視界を認識して初めて、自分が射精したことを知った。
突如口内で爆ぜた白濁色の欲望に一瞬驚いた彼女であったが、
「んッぢゅるッ！ ぢゅるるうぅぅッ！」
すぐさま吸い上げた。
「あ、うああっ！」
尿道と鈴口を通過する自身の熱い弾丸。その感触だけでも充分な快楽なのに、それを強烈な吸引で吸い上げようとするものが居る。貪欲に、味わい尽くすように、勿体無いとでも言いたげに、激しく。
「んぐ、ん、んふ、んんぅ！」
勢い良く迸った分を嚥下しながら、ねだるように吸い付いて。
「うく、んひぃ」
少年は、自分の口から漏れる少女のような声を聞きながら、
（ああ、食べられてる･･････）
被虐的な喜びに酔い痴れた。
「ぢゅっっッぽん」
「んひっ！」
口内にある全ての精を飲み干して、ようやく彼女は少年の肉棒から口を離す。
「ッッッッッぷはぁっ！ 最っっっっっ高！」
喜悦にまみれた声に、快楽の色が混じっているのは彼女も軽く絶頂したためだろう。
「はっ、はぁ、はぁ」
「ん〜？ 大丈夫？ 若いんだから大丈夫よね。一回だけで終わりなんて言わせる気もないし」
「はぁ･･････え？」
荒い息を吐きながら、全身を襲う倦怠感に晒されていると、不吉な一言がやけに明るい調子で投げかけられた気がした。
「い、一回だけで･･････って？」
「最低でもあと一回？ くらいは射精してもらうってことよ。まあちょっと休憩しよっか。じっとしててね」
弛緩して力の入っていない少年の腕を胸に抱きかかえる。
腕に触れる二つの膨らみが心地いい。
「あむ」
指を、咥えられた。
「うわ･･････」
「ちゅ、れる、気持ひいい？」
肉棒をしゃぶられた時とは違う、じんわりした心地よさ。いやそれでも快楽の部類としては強烈だ。手淫をする時よりも気持ちいいだろう。
「じゅる、ちゅる、ちゅ･･････れる･･････」
舌が指を這い回る。肉厚の、それでいて蛇を思わせる長い舌。うねうねと縦横無尽に指をしゃぶっていく。
「ん･･････くっ、うう･･････」
そろそろ快楽が我慢できない領域に入っていく。指が肉棒に変わったような感覚に翻弄され、情けないことに声までも漏れてきた。
「んふふ、勃ってきてる」
「え？ あ･･････」
確かに、言葉通りさっきまで力なく萎れていた少年の肉竿は硬度を取り戻しつつある。上を向いた少年の恥部を見つめて、指から口を離した。
「でもま、だからって攻めるのは可哀想だから、こっちね。ずっとお預けされてるこっちの方が可哀想だし」
なにを言っているのか判らない。少年がまた下に移動していく女を見送って、恥部に顔を埋めたところまで確認したところで、
「はむっ」
「んあっ！」
慣れない刺激に体が跳ねた。
「わ、びんか〜ん♪ これは可愛がってあげないとね」
陰嚢である。
ずっしりとした玉袋を舌で掬い、重さを楽しむ。時折唇であまがみして、舌を這わせて皺を伸ばす。
「あむ･･････んちゅ、れろ･･････れるれる」
縦にある袋の筋に合わせて舌を這わせ、往復させて何度も舐めあげる。舌の表と裏でこうも感触が違うのかと、痺れるような快感に晒されながら感銘を覚えた。
「ここ、思ってるより感じるでしょ？ あむ、んちゅ･･････べろべろ･･････っ」
皺の間に舌を滑り込ませ、先端だけでなくサイドも使って刺激してくる。
「な、に･･････これぇ！」
「むふふ、気に入ったみたいだねぇ。じゃ、そろそろ･･････べろおぉぉん」
舌の腹で玉袋を持ち上げて、重さと感触を味わって全体を一舐めして。
「ふぁむ･･････んちゅぅ、ちゅ、ちゅぅ･･････ちゅるるうぅぅッ！」
「んああッ！」
腰全体に広がる甘く痺れるような快感。
玉袋までも、吸われている―――――。
「ちゅちゅちゅっ、ちゅる･･････んぢゅぅぅぅッ！」
「あ･･････ああ、あっ、むああ！」
疼く。
ここまで丹念に刺激されながら、手を触れてさえ貰えない肉竿が疼く。鈴口に独特の感触がある。先走った透明の氏腺液が溢れているのだろう。
「ぷふぅ･･････そろそろ食べ頃かな？」
月明かりにきらりと光る肉竿。
透明な涙を垂れ流しながら刺激を乞う熱い欲望が、先刻飲み干した白濁の味を想起させる。知らず、溢れた涎を啜った。
「あ、ああ･･････」
少年も待ち望んでしまっている。
捕食される喜びを見出してしまった今、もしこのまま解放されたら気が狂いかねない。舌を大きく出して、屹立した肉竿の裏筋を舐め上げようとする様を、今か今かと待ち侘びる。
「れろぉ･･････ん」
「うんぐっ！」
瞬間、走る快感。
たっぷりと唾液を絡ませた舌が敏感な裏筋を通過し、鈴口までも舐め上げる。
「れろ･･････んふ、おいし♪」
溢れ出る雫を全て舐めとって、今度は舌の裏側を雁首に這わせる。
「うあ！ うっあ」
ざらざらとした質感の表とは違う、つるつるとした舌。敏感な雁首に沿って、ゆっくりと這わせられる舌が、少年を翻弄する。
気を抜くと、もう暴発してしまいそうだ。
「れろ、ちろ･･････もうちょっと我慢してね。せっかく一回出して頑張れるようにしたんだから。
･･････ま、初心に爆発しちゃうのも可愛いから、それはそれでいいけどね」
咥えるのではなく、丁寧に舐めしゃぶる。
刺激の弱い箇所を重点的に舐め回したかと思えば、そうでもない箇所を執拗に責め立てる。
「鈴口に舌、ちょっとだけ入れるけど我慢してね。きっと物凄く熱くて気持ちいいだろうけど頑張れるなら頑張って」
言葉通り、尖らせた舌の先端を、ぱっくりと口を開けた尿道口に差し込む。
「むああッ！ それ、あつ･･････！」
「れろれろれろ･･････れる、れろ、れる･･････ゴクン」
喉を鳴らして、嚥下する。
その度に、彼女の体にも快楽の電流が走る。
「れるうぅぅぅぅッ！」
連続で叩き込まれる快楽の奔流に気をやりかけた時、舌を鈴口から離された。
「んっは、あ･･････」
刺激から解放されると、すぐさま肉竿が震えながら次の刺激をねだる。
その貪欲さに目を細めながら、今度は口に含む。
「もう我慢しなくていいよ。好きな時に出しちゃって」
口腔内に導かれる感触。掛かる吐息が熱い。
ぱくり、とまた食われた。
「うああ･･････」
少年はもう夢心地だ。
随分長い間この感触を味わってなかったような気さえする。快感の塊のような唾液と、柔らかな口内の肉に包まれながら安心感が湧き出てきた。
（ああ、もうこれから離れられない）
否、離れたくない。
咥えられることのなんと安心することか。自分の肉棒は、ここに入るためにあるような気さえする。
「んぢゅっ、るろぉぉおんっ！」
口内で動き回る舌。表も裏も全て舐られ、口内で優しく扱かれる。敏感な雁首を唇で引っ掛けて扱き上げる。
「んぐッ！ んんむッ！ じゅ、じゅる、じゅるるるうぅぅぅッ！」
頭を激しく揺らしながら、貪欲に射精をねだる。
いや寧ろ脅迫に近い。
快楽を人質に取られた脅迫。出さなければ永遠にこの快楽地獄を見舞う、と。
「ううううっ！」
丹田に力を込めても、もう限界だ。
尿道に込み上げる熱いマグマの存在感が強すぎる。為す術もない快楽の奔流が、少年を追い立てる。
「んんッ！ んふうッ！ じゅろろろろッ！ んぼッ！ んぼうッ！」
「も、だ･･････！」
「ぢゅるるるるるうぅぅぅッ･･････！」
「うあああっ！」
「むぐッ！ んむぶ！ んぐ、んふぅ･･････ん」
爆ぜた。
一度目よりも余ほど強い快感が走り、思い切り口内で爆ぜた。
彼女はそれでも離さない。口内でどんな勢いで迸ろうと、喉に直接叩き込まれても離さない。か細い喉を鳴らして次々と嚥下していく。
「んぐッ！ ゴク･･････ゴクゴク、んっ･･････んふぅ。
んちゅ･･････んちゅる、ちゅるちゅる、ぢゅるるうぅぅぅ･･････ッ！」
尿道内に残った最後の一滴までも吸い取って、それもまた嚥下して。
「んんっ！ んぐッ！ ふぅふぅ、ふぐッ！ んくッ！ んッッッくぅううぅううぅッ！」
自分も、盛大な絶頂を迎えた。
「んっは、はあ、ああっ、はぁ･･････」
絶頂の余韻に体が暴れる。肉棒から口を離しても、頭を痺れさせる快感が残り香となって体を襲う。
びくびくと震わせながら、心底満足した表情で少年を見上げ、
「ごちそうさま♪」
行儀良く挨拶で締めた。
「うっは、はぁ･･････はっ、はぁ」
強烈な快感の名残りに呼吸さえ覚束ない。
荒い息をつきながら、明瞭に成らない思考で。
（もう、中毒になったかな、これは･･････）
自分は取り返しのつかない一線を越えてしまったのだと確信した。
「今、なに考えてる？」
「はっ、はぁ、はぁ」
「なに考えててもいいけどね。君はこれからあたしが攫うから。どこに逃げてもいいよ。追いつかれたいところで追いついてあげる。そんで、もう絶対にあたしから離れられなくなるくらい搾り尽くしてあげる」
なにを言っているのかもう判らない。失神しそうでそれどころじゃない。
ちくりとした背徳の罪悪感が胸を襲うが、もうどうでもいい。意識を手放してしまいたくて仕方がない。
取り敢えず、この全身を襲う並大抵でない倦怠感に従おう。
意識が落ちる刹那。
「いいんじゃね？ いいんじゃね、孫よ。人外でも気持ちよければ、それって正義じゃね？」
そんな、祖父のひょうきんな声を聞いた気がした。
13/04/04 15:32更新 / 一