ウツボカズラの円舞曲
「それじゃー、お兄さんの為にちょっぴり周囲を見て回ってくるねー♥」
そう言って彼女は翼をはためかせ風の如く舞い上がっていった。
あの後お互いを知るために軽い自己紹介と、ここの詳しい説明を鳥の翼を持つ彼女、アモネアに求めた。
彼女はジャブジャブと呼ばれる種族らしい、本人曰く「飛んでるジャブジャブはみんな男ぼしゅーちゅー♥」らしいから気を付けないといけないとの事。
俺がどういった境遇の中妹と生き抜いてきたか話している最中は表情をコロコロ変えて聞いてくれた。しかし妹の話題になると何やらニヤついた様子だった。
んでもって不思議の国と言われた此処は本当に狂った世界であるというのか聞いてくうちによーーーーーーくわかった。
こんな世界に妹が取り残されてるとわかって焦燥感ばかり募っていく。くそっ、何も出来ないわからない状況下に酷くイライラする。
とにかくアモネアが戻ってくるまではこちらとしても動きようがない。ただただ色彩も造形もサイケデリックなこの風景を見続ける他にないのだ。
「...ぉーぃ、見つけたよー、少し遠い所にいたよーー!」
「何!?本当か!?」
何という吉報、こんなに早く見つかるとは!
「こっちこっちーー!」
パタパタと翼をはためかせている。どうやら飛びながら案内してくれるらしい。
「ありがとう、今行く!!」
ガサッ
「...んー?今イク?アナタ今イクの?♥」
ん?今アモネア以外の声が近くから聞こえたような...?
「もうすぐイくのなら、イこ♥イこ♥はーやくー」
「うううわぁぁああああ!?」
な、何だ!?
草葉の陰から音がしたと思ったら、いきなり股間が何者かに揉まれてる!?
「あれぇ?♥まだイかないの?♥」
この手つき...何だ、力が抜けて、膝から崩れ落ちそうなほど気持ちいい...
発信源に目をやると兎のような格好をした女が愛おしそうにさすっている。とりあえず振りほどかなければ!
「待て待て待てとりあえず離れろ!おかしい所が多すぎて何から言えばいいのか...」
「犯す所が多すぎて何からイけば良いのか?やだー♥おっぱいも手も脇も、勿論おまんこも自信あるから何回でもイっていいよー♥」
「違ぁぁぁぁぁう!!」
「ちかぁぁぁぁん?痴漢じゃないよ痴女だよぉ♥」
こいつ、そう言いながらも今にも俺のズボンを引き下げようとしてきてる!?
ダメだ、全く問答が出来ない!
こんなのをずっと聞いてたら頭がおかしくなる!
「くそう逃げるぜ脱兎の如く!」
「組んで握るぜウサギちゃんの事くまなく?いいよー、私の体をニギニギしてー♥」
「絶対そんな風に聞こえねーしわざとだろもう!ともかくあばよーー!」
優しく股間を揉む手を振り払い耳を塞ぎながら全力で駆け抜ける!奴の足は妙なモコモコに包まれてたし多分足は遅いはず!
「キャー、追いかけっこのラブロマンスやっちゃうのー?♥いいよー待て待てー♥」
は、早ぇ!!?
ちょ待て来るなぁぁぁぁぁ!!!
ハァ...ハァ...木陰に身を隠して何とか助かった。
ふざけた事言ってても流石魔物だな...
あの手の温もり...まだ残ってるな...
くぅっ、思い出したらまた固くなっちまった。
妹はこんなおかしな国にいて大丈夫なのか...もしあんな奴等に襲われてたら...
...考えないようにしよう。
しかし弱ったな、とにかく逃げるのに夢中でアモネアも見失っちまったし相変わらずここがどこだかさっぱりわからん。
かといってここで大声出せば付近の魔物がどう襲ってくるかもわからない。
空へのみ送れる合図...そうだ、狼煙でも上げてみよう。隠れながら火を焚き、アモネアが来てくれたら合流して、別の魔物が来たらそのままそっと立ち去るを繰り返せばいずれ会える筈だ。
幸いにして火起こしに使ったレンズも木漏れ日もある。後は少し燃えにくいが枯れ枝と枯れ葉を集めるっきゃないな。
...べしゃり...
...ん?何だ?今何か固いものが砕けた音が...
...べしゃり...
...ばしゃり...
何だ...いくつもいくつも...気味が悪いな...
何かの魔物の前触れかもしれない...一旦隠れ
「「んばー♥」」
「ぎゃぁああああああ!!?」
何だ...何だ!?卵!?卵黄が...意思を持って襲ってくる!?
待て、おい、待てよ、あり得ないだろ!?何だってんだよ!来るな、来るな!!
「や...やめろ...!来るな...来るな...」
「「ぱーぱ??んー、ぱーぱー♥」」
「やめてぇぇぇぇ!!」
嫌だ!嫌だ!狂ってる!怖い!怖い!嫌だ!
「「なむー♥せーきー♥」」
あ...あぁ...こ、腰が...抜けて...嫌だ...嫌だ...来ないでくれぇ...
「「にひへー♥ぱーあー♥」」
「コラー!その人はつがい持ちかもしれないのー!
襲っちゃダメでしょー!!」
「「んぇ?まーま!...まーま?」」
「違いますー!私はまだ未婚ですー!私だって今すぐこの人とじゅぽじゅぽしたいのに他所様の卵に取らせるもんですか!すぐに戻りなさーい!」
「「むー...もーむー...」」
「あ...アモネア...?」
「急にあらぬ方向に走るんだもん、慌てて追いかけてきたよー」
窮地を脱しどっと安堵の念が湧き出る。
「助かったぁ...」
アモネアの鶴ならぬハーピーの一声が効いたのか、卵達はズルズルと自分の殻を纏い姿を隠した。端から見たら全くの新品のような見事な復元だった。
「ごめんねー、ここの娘達はみーんな男の人に興味津々♥勿論私も例外じゃないケド♥」
「...ああ」
「なーによー元気なくしちゃってー、グロッキー?」
「卵が割れたら中から粘液質の魔物だぞ?いくら可愛らしい見た目してるからってありゃ精神に来る...」
「えー?卵は命を守る場所、割れて命が動き出して、それがどうして怖いもの?」
な、何だ...そりゃ卵から生命は生まれ...いやそれは鳥類の形を成してからだし...やはりどこかが壊れてる...いや、普通...なのか?
くそっ、俺の頭がおかしくなりそうだ。
「こうなったら私が掴んで連れて行くーって言いたいけど、私達の体はハーピーの頃より退化しちゃって、長時間一人を持ち上げるのは難しいのよねぇ」
「退化?年がら年中飛んでるんだろ?何でむしろ退化してるんだ?」
「やだぁ、わかってるくせにぃ♥」
くねくねしながらアモネアは自分の乳房をわかりやすく持ち上げた。こんな状態でなきゃ生唾を飲んで凝視したくなるような光景だ。
「あぁ、「荷物」が増えたわけか」
「そゆことー♥あ、このお荷物はお兄さん専用果実にもなるからいつでも食べに来てね♥」
「あいにくだけど妹と会えるまでそんな気分にはなれないよ...」
男として求められてるというのは禁欲を強いられた現実では無かった故、正直凄く興奮するが、妹の安否がわからない今はとてもじゃないがそういう行為をしようとは思えない。
「んもー、意地っ張りものー、お兄さんのメスの為に身を引いてるけど、お兄さんがオッケーならすぐにでも私...♥」
「マレチクスだ!お兄さんお兄さん言わないでくれ!ますます妹が気になってくる!」
しまった!カッとなって俺は協力者に対して何て口振りを...
「...ごめんなさい」
「...いや、こちらこそ協力してもらってる身でこんな事で声を荒げてすまなかった。また、お願いしたい」
「うーん...それはいいのだけれど、また時間が経っちゃったから道も妹さんもあちこちに?」
「そんなぁ...」
「まぁまぁ、そう落ち込まないで。また飛んで探すから、ちょっと待っててねー♥」
そう言うと彼女はまるでジパングの玩具「凧」が舞い上がるが如く再び空へと吸い込まれていった。
アモネアには悪いことしちまったな...
今度彼女が申し出てた止まり木とやらもしてみようか。
ふう、また待ちぼうけになっちまったな。
「やあ、そこの少年、見たところ彼女さんと離れて一人きりなのだろう?」
「...え?」
おかしい。
先程まで後ろには卵と木々があったというのに、声の元へ振り返ると、四角い大きなテーブルの椅子に一人の紳士が座っていた。
シルクハットを深々と被り顔はチラリとしか見えないが、紳士服を纏い優雅な仕草で見事なティーセットからお茶を注ぐ様を見れば、一目で高貴な身分である事がわかった。
「今日のお茶会は欠席者が多くて退屈な所だったんだ...よれけば君も出席してくれないかい?」
「あ、いや、俺は」(ぐぅぅぅぅぅ)
目の前のまるで宝石のような美しいケーキ。添えられたクッキーもケーキと合わせると小さなお城のような見事な造形。
丹念に磨かれたであろうティーポットとティーカップからは鼻をくすぐる甘くほろ苦い上品な香りを漂わせている。
そんなお菓子の舞踏会を前にして、俺の胃袋は催促の音をあげてしまった。
そういや肉食いそびれたしすごい腹が減ってたんだっけか。
イカれた現象が続きすぎててすっかり忘れてた。
「ははは、お腹の虫さんも食べさせてくれって言ってるみたいだし、座って座って。遠慮はいらないよ」
「あ、ありがとうございます」
この高貴な人からの進言に思わず俺も所作が固くなってしまう。
けれどアモネア以外でまともに話が出来たってのが凄く安心する。この人からも何か聞けるかもしれないな。
「その前に少しお訪ねしたい...のですが」
「コラコラ、お茶会はまず紅茶とお菓子を嗜むものだよ。お話しするのはその後さ」
「す、すみません」
作法ってやつか?そんなのは生まれてこの方一度も習う事も気にする事もなかったからわからん。今すぐ手掴みでこのケーキを平らげてやりたいが流石に失礼になりそうだ。
一先ず目の前の紳士の立ち振舞いを真似たらこの場は凌げるかな。
それにしても...優雅だ。
一挙一動が全てエレガントで思わず見惚れてしまう。
ティーカップをしずしずと傾けコクンと小さく喉を鳴らす。それだけの動作でさえ蠱惑的でついつい惹き付けられてしまう。
「どうしたんだい?折角の自慢の紅茶が冷めてしまうよ?」
「ぇ!?あ、は、はい!」
いかんいかん何を考えてるんだ俺は。相手は紳士だぞ!?男色の気はない!
えーと、見よう見まねで、こっちからグラスを左手に持って...
ん?こちら側から見て左手だから、左だと逆か。
ええいもう引き返せるか!飲めれば同じよ!んんっ...
「う、美味い!!」
「気に入ってくれたようで嬉しいよ...フフッ」
鼻に吹き抜ける香りは嗅いでいる時とは段違いの芳醇さだ。
味わいもまるで山奥の湧水のようにとても清んでいながら仄かに甘く、透き通るような味わいの中にアクセントとして潜む渋みが、より素晴らしい一口へと昇華していく。何て...何て美味いんだ...
もっと...もっともっと!
「んぐっ...んぐっ...んぐっ」
「ほらほら、口元から垂れてるよ。勢い良く飲んでくれるのは嬉しいけど、紅茶は逃げないから少し落ち着きたまえ」
「ぷはっ!ふぅ...と、とても美味しくてつい...」
「それは良かった。おかわりも沢山あるから好きに飲んでくれて構わないよ」
ありがたい!ここに来て飲まず食わずだった事に気付いてから、もう飲みたくて食べたくてしょうがない!
「ありがとうございます!いただきます!」
まずは喉の乾きだ。これを癒さぬ事にはどうしようもない。
マナー等々は後回しだ、まずはとにかく紅茶を飲もう!
「さて、先程何か僕に聞きたいことがあった様子だったね。何でも訪ねるといいさ。
...訪ねる理性が残ってたらね」
「んぐっ、んぐっ...がっ...!?」
何だ!?
下腹部の辺りが、熱い!?
これは...毒か!?しまった!!
確かに...疑うべきだった...!何もかもがイカれてたから、まともに話せたってだけで...信用しちまった!!
「不思議な帽子屋である僕特製のブレンドティー、旅人さんには少し刺激が強すぎたかな?」
「ぐぅ...うぅ...ウゥゥ...」
熱い!俺のモノが熱くて仕方がない!
冷まさなきゃ、冷まさないと、冷まさなくては!どうやって!?どうしたら!?
「ウォン!?ウォォオア!?」
「立派な雄犬になったものだね。君のミルクポットもはち切れんばかりに膨張してるよ」
犬!?何故!?俺が...犬!?
熱い!ダメだ、何も考えられない!
熱い、熱い熱い熱い!助けて!
「ねぇ旅人さん、君はきっと今溢れんばかりの火照りを体に感じていると思う。
それを冷ます方法、教えてあげようか?」
何だ!?奴、服脱いで...女!?
女だ、女!オンナ、メス!メス!!メス!!
「フーッ!フゥゥーッ!!」
「君の持つその逞しいミルクポット、そしてその中にある熱々のミルクを、僕というティーカップに注いでくれれば、熱は交わされ二人だけのお茶会が始まるのさ」
犯す!犯す!俺ので!このメスを!犯してやる!!
「あぁ、こら、がっつかないの。お茶を飲む時といい、君は落ち着きが足りないぞ。といっても、無理な話か...フフッ」
構うものか!こいつのありとあらゆる所を犯し尽くして!!このメスは俺のものだとマーキングしてやる!!
「グゥオオオ!」
「さぁ...焦らないで?君のティーカップは...ここにあるよ...?」
(...にぃに...にぃに...)
「がぅぅ!!ダメだ!俺は...妹を...探さなくては...ならないんだ!!」
こんな、こんな事してる場合じゃない!!
くそっ静まれ、静まれ!熱を抑えろ!!
「...驚いたな、この発情する犬へと変えてしまう紅茶を飲んで、尚何もせずに正気に戻るなんて」
「妹の...俺のたった一人の家族の為...こんな事をしてられない!!」
「...やれやれ...他の女性の匂いをかすかに漂わせてるから、吹っ切れる様に君の方から来てもらおうと思ったけど、こうまで想い人に一途なんじゃその人に悪いね」
溢れんばかりの熱もやっと少し落ち着き、人の姿も取り戻してきた。
テーブルを飛び越えて組付した彼女を解放すると、埃を払いはだけた服を再び纏いながらまるで何事も無かったかの様に元の席へと戻っていった。
そして再びお茶を飲み優雅に佇んでいる。
「さっきは悪かったね、僕はまだ伴侶がいないものだから、つい強引な方法を取ってしまったよ」
「...あの紅茶のせいで俺はああなったのか?」
「そうだね。君もどうやら未経験の様だし初体験はお互い盛大に行こうとつい一服盛ってしまったよ」
「それは...どーも」
体が犬に...熱を持つ俺のモノ...いよいよ不思議体験も俺の身に直接降りかかるようになってきたな。
「安心してくれ、僕が仕込んだのは紅茶にだけだから他のお菓子に仕込みは無いよ」
「...ありがとうございます」
そうは言ってもやはり警戒はしてしまう。
腹は減っているけれどもあんな目に遭ったばかりじゃ手も進まない。ご馳走を前にして躊躇し目を伏せる他になかった。
「フフッ疑り深いねぇ...ほら、大丈夫だよ」
「モガッ!?」
う、後ろ!?そんな、いつの間に!?
「美味しいだろう?この辺りに住んでるマーチヘアお手製のアマレッティさ」
「モゴッ...もぐもぐ...美味い!」
爽やかなナッツの香りが噛む度口一杯に広がり、包み込む生地も固すぎずしっとりとしていて、素人でも高級菓子と分かる作りだった。
それと...後ろから抱きつかれてる形だから、背中越しにふにょふにょした感触が...
「僕は何時でも受け入れOKだから、妹さんが見つかったらまた訪ねてくるといい。その時はとびっきりの紅茶とお菓子を用意して待ってるよ」
「耳元で囁かないで...下さい...」
ぽそぽそと呟きながら股間を優しく撫でてきた。そんな手の感触が心地良くなりかけた時にフッと解放してくる。
この人には敵いそうにない...延々と掌の上で踊らされ続けてる気分だ。
「...ぁー!いたー!やっと見つけたー!んもー、私を飛ばしておいて自分はのんびりお茶会なんてー!」
「わ、悪かった、ごめん」
「私も混ぜてよー♥ねぇ帽子屋さん、この人にどんなお菓子を食べさせたのー?♥」
「あぁ、僕特製のブレンドティーを飲ませてあげたよ。残念ながら何もなかったけどね。僕の未熟さを痛感したよ」
「えーっ!?あのサカリ犬100%の紅茶でダメだったのー!?あれでエッチ出来ないとなるとまさかこの人男が好きだったりするんじゃない!?」
何やら物騒な会話で盛り上がってる...勝手に人を男色家にしないでほしい。
「えーと、盛り上がってる中悪いんだけど、妹の行方は...?」
「え、あ、あぁごめん!大丈夫、な、何とか見つけたよー!そう、見つけたには見つけた!」
「本当か!?ありがとう!」
若干歯切れが悪かったのが気になるけど、見つかったのならありがたい!!すぐにまた向かわなくては!!
「おっと、それじゃ一人だけになっちゃったお茶会は御開きだね。僕はこのまま帰るとしよう」
「折角だから帽子屋さんもついてかない?妹さんが見つかったらそのまま皆で一緒に、ネ♥」
「それも面白そうだけど、彼に飛びっきりのお菓子を振る舞うって約束しちゃったからね。材料を調達しないと」
「そっかぁ...残念だなぁ」
「フフッ、会いたくなったら何時でも会えるさ。ここは何処にでもある何時ものお茶会だから、ね」
やはりこの人は飄々として掴み所がないけど、何処か魅力的で惹かれてしまう。
「また、是非会いましょう。とっておきのお茶もお菓子も、楽しみにしてます」
これは本心からの願いだ。その想いを握手を求める形で現す。
「あぁ、その時はまたサプライズを用意しておくから、それもまた楽しみにしておいてくれ」
「ははっ...あまり過激なのは御勘弁を...」
「さっ、そろそろいこいこー♥」
固い握手を交わした後、軽い挨拶を交え俺達は別の方向へと歩き出した。
本当に美味かったなぁあのお茶は...
あの犬になるというのも、妹を見つけ終えたらもう何も心配はない。またあの芳醇な香りを飲み干して、それから...
えっ...待て、今俺は何を...欲望の矛先を妹に...
待て、何を考えてるんだ俺は。
俺は正常だ、正常な筈なんだ。
頭ではわかってるんだ。妹は、大切な家族で、たった一人の肉親、かけがえのない存在であると。
だが、今の俺は妹の顔を思い浮かべると...勃ってしまう。隠せないほど隆々と。
「もー私が飛ぶとおにい...マレチクスさん何時もハプニングに巻き込まれるんだもん、方角はある程度わかるから私も歩く!」
「ああ、すまない...一緒に行こう」
「むー?どうしたのまた暗くなっちゃって?」
「アモネア...俺は...正常か?」
正しさなんて誰の基準かによって変わる不確かなもの。それを他人に委ねるなんて馬鹿げてるのに。
それでも、この慟哭する心を誰かに尋ね歪みなど無いことを証明してくれなければ、不安に押し潰されそうだった。
「質問の意味がちょっとわからないかなー?そうだねぇ、不思議の国においてはエッチしない人は異常かも?」
そうか...この国の「正常」に塗り替えられたのかもしれないな
「...妹に対して性的に体が反応しちまう俺は、もう、あいつに会わす顔がない...この国に染まっちまった一匹の魔物に成り果て、このままじゃ妹を襲っちまう...」
「あー...えーとね、それは、多分大丈夫だと...思うな。うん、きっと大丈夫」
「...どういう事だ?」
「妹さんもまた、襲われるのを受け入れてくれるかもって事♥」
「そんな筈はっ...!」
ダメだ、想像しただけで更に強く隆起してしまう。
そそり立つ俺のモノを受け入れてくれる可愛い妹の顔、表情、仕草、汗、体、乳房臀部女性器腹部ヘソ太股脹ら脛肩二の腕肘掌指爪耳髪眉睫毛口舌歯茎頬
...妹の全てが愛おしい。妹のものなら何を思ってもイチモツを痛いほど固くさせる。
このままじゃあいつを、エイミアをぐちゃぐちゃに犯してしまう...でも俺は正常?そうだ正常だ!ここでは普通だ何もおかしくはないのだそうだ現実に戻れないならいやむしろこここそ今の現実であり戻るなんて未来はないなら順応してでも妹が大切でも妹がこの国の為の妹が慣れる為に妹が妹が妹が妹が妹が妹を妹を妹を妹を妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹
「...マレチクスさん?おーい?どしたのコワイ顔して」
「俺は...大丈夫、さぁ、妹の所まで、案内してくれ...」
「大丈夫かなぁ...とりあえずこっちだよー」
妹を...妹を...
この国から、守るんだ
そう言って彼女は翼をはためかせ風の如く舞い上がっていった。
あの後お互いを知るために軽い自己紹介と、ここの詳しい説明を鳥の翼を持つ彼女、アモネアに求めた。
彼女はジャブジャブと呼ばれる種族らしい、本人曰く「飛んでるジャブジャブはみんな男ぼしゅーちゅー♥」らしいから気を付けないといけないとの事。
俺がどういった境遇の中妹と生き抜いてきたか話している最中は表情をコロコロ変えて聞いてくれた。しかし妹の話題になると何やらニヤついた様子だった。
んでもって不思議の国と言われた此処は本当に狂った世界であるというのか聞いてくうちによーーーーーーくわかった。
こんな世界に妹が取り残されてるとわかって焦燥感ばかり募っていく。くそっ、何も出来ないわからない状況下に酷くイライラする。
とにかくアモネアが戻ってくるまではこちらとしても動きようがない。ただただ色彩も造形もサイケデリックなこの風景を見続ける他にないのだ。
「...ぉーぃ、見つけたよー、少し遠い所にいたよーー!」
「何!?本当か!?」
何という吉報、こんなに早く見つかるとは!
「こっちこっちーー!」
パタパタと翼をはためかせている。どうやら飛びながら案内してくれるらしい。
「ありがとう、今行く!!」
ガサッ
「...んー?今イク?アナタ今イクの?♥」
ん?今アモネア以外の声が近くから聞こえたような...?
「もうすぐイくのなら、イこ♥イこ♥はーやくー」
「うううわぁぁああああ!?」
な、何だ!?
草葉の陰から音がしたと思ったら、いきなり股間が何者かに揉まれてる!?
「あれぇ?♥まだイかないの?♥」
この手つき...何だ、力が抜けて、膝から崩れ落ちそうなほど気持ちいい...
発信源に目をやると兎のような格好をした女が愛おしそうにさすっている。とりあえず振りほどかなければ!
「待て待て待てとりあえず離れろ!おかしい所が多すぎて何から言えばいいのか...」
「犯す所が多すぎて何からイけば良いのか?やだー♥おっぱいも手も脇も、勿論おまんこも自信あるから何回でもイっていいよー♥」
「違ぁぁぁぁぁう!!」
「ちかぁぁぁぁん?痴漢じゃないよ痴女だよぉ♥」
こいつ、そう言いながらも今にも俺のズボンを引き下げようとしてきてる!?
ダメだ、全く問答が出来ない!
こんなのをずっと聞いてたら頭がおかしくなる!
「くそう逃げるぜ脱兎の如く!」
「組んで握るぜウサギちゃんの事くまなく?いいよー、私の体をニギニギしてー♥」
「絶対そんな風に聞こえねーしわざとだろもう!ともかくあばよーー!」
優しく股間を揉む手を振り払い耳を塞ぎながら全力で駆け抜ける!奴の足は妙なモコモコに包まれてたし多分足は遅いはず!
「キャー、追いかけっこのラブロマンスやっちゃうのー?♥いいよー待て待てー♥」
は、早ぇ!!?
ちょ待て来るなぁぁぁぁぁ!!!
ハァ...ハァ...木陰に身を隠して何とか助かった。
ふざけた事言ってても流石魔物だな...
あの手の温もり...まだ残ってるな...
くぅっ、思い出したらまた固くなっちまった。
妹はこんなおかしな国にいて大丈夫なのか...もしあんな奴等に襲われてたら...
...考えないようにしよう。
しかし弱ったな、とにかく逃げるのに夢中でアモネアも見失っちまったし相変わらずここがどこだかさっぱりわからん。
かといってここで大声出せば付近の魔物がどう襲ってくるかもわからない。
空へのみ送れる合図...そうだ、狼煙でも上げてみよう。隠れながら火を焚き、アモネアが来てくれたら合流して、別の魔物が来たらそのままそっと立ち去るを繰り返せばいずれ会える筈だ。
幸いにして火起こしに使ったレンズも木漏れ日もある。後は少し燃えにくいが枯れ枝と枯れ葉を集めるっきゃないな。
...べしゃり...
...ん?何だ?今何か固いものが砕けた音が...
...べしゃり...
...ばしゃり...
何だ...いくつもいくつも...気味が悪いな...
何かの魔物の前触れかもしれない...一旦隠れ
「「んばー♥」」
「ぎゃぁああああああ!!?」
何だ...何だ!?卵!?卵黄が...意思を持って襲ってくる!?
待て、おい、待てよ、あり得ないだろ!?何だってんだよ!来るな、来るな!!
「や...やめろ...!来るな...来るな...」
「「ぱーぱ??んー、ぱーぱー♥」」
「やめてぇぇぇぇ!!」
嫌だ!嫌だ!狂ってる!怖い!怖い!嫌だ!
「「なむー♥せーきー♥」」
あ...あぁ...こ、腰が...抜けて...嫌だ...嫌だ...来ないでくれぇ...
「「にひへー♥ぱーあー♥」」
「コラー!その人はつがい持ちかもしれないのー!
襲っちゃダメでしょー!!」
「「んぇ?まーま!...まーま?」」
「違いますー!私はまだ未婚ですー!私だって今すぐこの人とじゅぽじゅぽしたいのに他所様の卵に取らせるもんですか!すぐに戻りなさーい!」
「「むー...もーむー...」」
「あ...アモネア...?」
「急にあらぬ方向に走るんだもん、慌てて追いかけてきたよー」
窮地を脱しどっと安堵の念が湧き出る。
「助かったぁ...」
アモネアの鶴ならぬハーピーの一声が効いたのか、卵達はズルズルと自分の殻を纏い姿を隠した。端から見たら全くの新品のような見事な復元だった。
「ごめんねー、ここの娘達はみーんな男の人に興味津々♥勿論私も例外じゃないケド♥」
「...ああ」
「なーによー元気なくしちゃってー、グロッキー?」
「卵が割れたら中から粘液質の魔物だぞ?いくら可愛らしい見た目してるからってありゃ精神に来る...」
「えー?卵は命を守る場所、割れて命が動き出して、それがどうして怖いもの?」
な、何だ...そりゃ卵から生命は生まれ...いやそれは鳥類の形を成してからだし...やはりどこかが壊れてる...いや、普通...なのか?
くそっ、俺の頭がおかしくなりそうだ。
「こうなったら私が掴んで連れて行くーって言いたいけど、私達の体はハーピーの頃より退化しちゃって、長時間一人を持ち上げるのは難しいのよねぇ」
「退化?年がら年中飛んでるんだろ?何でむしろ退化してるんだ?」
「やだぁ、わかってるくせにぃ♥」
くねくねしながらアモネアは自分の乳房をわかりやすく持ち上げた。こんな状態でなきゃ生唾を飲んで凝視したくなるような光景だ。
「あぁ、「荷物」が増えたわけか」
「そゆことー♥あ、このお荷物はお兄さん専用果実にもなるからいつでも食べに来てね♥」
「あいにくだけど妹と会えるまでそんな気分にはなれないよ...」
男として求められてるというのは禁欲を強いられた現実では無かった故、正直凄く興奮するが、妹の安否がわからない今はとてもじゃないがそういう行為をしようとは思えない。
「んもー、意地っ張りものー、お兄さんのメスの為に身を引いてるけど、お兄さんがオッケーならすぐにでも私...♥」
「マレチクスだ!お兄さんお兄さん言わないでくれ!ますます妹が気になってくる!」
しまった!カッとなって俺は協力者に対して何て口振りを...
「...ごめんなさい」
「...いや、こちらこそ協力してもらってる身でこんな事で声を荒げてすまなかった。また、お願いしたい」
「うーん...それはいいのだけれど、また時間が経っちゃったから道も妹さんもあちこちに?」
「そんなぁ...」
「まぁまぁ、そう落ち込まないで。また飛んで探すから、ちょっと待っててねー♥」
そう言うと彼女はまるでジパングの玩具「凧」が舞い上がるが如く再び空へと吸い込まれていった。
アモネアには悪いことしちまったな...
今度彼女が申し出てた止まり木とやらもしてみようか。
ふう、また待ちぼうけになっちまったな。
「やあ、そこの少年、見たところ彼女さんと離れて一人きりなのだろう?」
「...え?」
おかしい。
先程まで後ろには卵と木々があったというのに、声の元へ振り返ると、四角い大きなテーブルの椅子に一人の紳士が座っていた。
シルクハットを深々と被り顔はチラリとしか見えないが、紳士服を纏い優雅な仕草で見事なティーセットからお茶を注ぐ様を見れば、一目で高貴な身分である事がわかった。
「今日のお茶会は欠席者が多くて退屈な所だったんだ...よれけば君も出席してくれないかい?」
「あ、いや、俺は」(ぐぅぅぅぅぅ)
目の前のまるで宝石のような美しいケーキ。添えられたクッキーもケーキと合わせると小さなお城のような見事な造形。
丹念に磨かれたであろうティーポットとティーカップからは鼻をくすぐる甘くほろ苦い上品な香りを漂わせている。
そんなお菓子の舞踏会を前にして、俺の胃袋は催促の音をあげてしまった。
そういや肉食いそびれたしすごい腹が減ってたんだっけか。
イカれた現象が続きすぎててすっかり忘れてた。
「ははは、お腹の虫さんも食べさせてくれって言ってるみたいだし、座って座って。遠慮はいらないよ」
「あ、ありがとうございます」
この高貴な人からの進言に思わず俺も所作が固くなってしまう。
けれどアモネア以外でまともに話が出来たってのが凄く安心する。この人からも何か聞けるかもしれないな。
「その前に少しお訪ねしたい...のですが」
「コラコラ、お茶会はまず紅茶とお菓子を嗜むものだよ。お話しするのはその後さ」
「す、すみません」
作法ってやつか?そんなのは生まれてこの方一度も習う事も気にする事もなかったからわからん。今すぐ手掴みでこのケーキを平らげてやりたいが流石に失礼になりそうだ。
一先ず目の前の紳士の立ち振舞いを真似たらこの場は凌げるかな。
それにしても...優雅だ。
一挙一動が全てエレガントで思わず見惚れてしまう。
ティーカップをしずしずと傾けコクンと小さく喉を鳴らす。それだけの動作でさえ蠱惑的でついつい惹き付けられてしまう。
「どうしたんだい?折角の自慢の紅茶が冷めてしまうよ?」
「ぇ!?あ、は、はい!」
いかんいかん何を考えてるんだ俺は。相手は紳士だぞ!?男色の気はない!
えーと、見よう見まねで、こっちからグラスを左手に持って...
ん?こちら側から見て左手だから、左だと逆か。
ええいもう引き返せるか!飲めれば同じよ!んんっ...
「う、美味い!!」
「気に入ってくれたようで嬉しいよ...フフッ」
鼻に吹き抜ける香りは嗅いでいる時とは段違いの芳醇さだ。
味わいもまるで山奥の湧水のようにとても清んでいながら仄かに甘く、透き通るような味わいの中にアクセントとして潜む渋みが、より素晴らしい一口へと昇華していく。何て...何て美味いんだ...
もっと...もっともっと!
「んぐっ...んぐっ...んぐっ」
「ほらほら、口元から垂れてるよ。勢い良く飲んでくれるのは嬉しいけど、紅茶は逃げないから少し落ち着きたまえ」
「ぷはっ!ふぅ...と、とても美味しくてつい...」
「それは良かった。おかわりも沢山あるから好きに飲んでくれて構わないよ」
ありがたい!ここに来て飲まず食わずだった事に気付いてから、もう飲みたくて食べたくてしょうがない!
「ありがとうございます!いただきます!」
まずは喉の乾きだ。これを癒さぬ事にはどうしようもない。
マナー等々は後回しだ、まずはとにかく紅茶を飲もう!
「さて、先程何か僕に聞きたいことがあった様子だったね。何でも訪ねるといいさ。
...訪ねる理性が残ってたらね」
「んぐっ、んぐっ...がっ...!?」
何だ!?
下腹部の辺りが、熱い!?
これは...毒か!?しまった!!
確かに...疑うべきだった...!何もかもがイカれてたから、まともに話せたってだけで...信用しちまった!!
「不思議な帽子屋である僕特製のブレンドティー、旅人さんには少し刺激が強すぎたかな?」
「ぐぅ...うぅ...ウゥゥ...」
熱い!俺のモノが熱くて仕方がない!
冷まさなきゃ、冷まさないと、冷まさなくては!どうやって!?どうしたら!?
「ウォン!?ウォォオア!?」
「立派な雄犬になったものだね。君のミルクポットもはち切れんばかりに膨張してるよ」
犬!?何故!?俺が...犬!?
熱い!ダメだ、何も考えられない!
熱い、熱い熱い熱い!助けて!
「ねぇ旅人さん、君はきっと今溢れんばかりの火照りを体に感じていると思う。
それを冷ます方法、教えてあげようか?」
何だ!?奴、服脱いで...女!?
女だ、女!オンナ、メス!メス!!メス!!
「フーッ!フゥゥーッ!!」
「君の持つその逞しいミルクポット、そしてその中にある熱々のミルクを、僕というティーカップに注いでくれれば、熱は交わされ二人だけのお茶会が始まるのさ」
犯す!犯す!俺ので!このメスを!犯してやる!!
「あぁ、こら、がっつかないの。お茶を飲む時といい、君は落ち着きが足りないぞ。といっても、無理な話か...フフッ」
構うものか!こいつのありとあらゆる所を犯し尽くして!!このメスは俺のものだとマーキングしてやる!!
「グゥオオオ!」
「さぁ...焦らないで?君のティーカップは...ここにあるよ...?」
(...にぃに...にぃに...)
「がぅぅ!!ダメだ!俺は...妹を...探さなくては...ならないんだ!!」
こんな、こんな事してる場合じゃない!!
くそっ静まれ、静まれ!熱を抑えろ!!
「...驚いたな、この発情する犬へと変えてしまう紅茶を飲んで、尚何もせずに正気に戻るなんて」
「妹の...俺のたった一人の家族の為...こんな事をしてられない!!」
「...やれやれ...他の女性の匂いをかすかに漂わせてるから、吹っ切れる様に君の方から来てもらおうと思ったけど、こうまで想い人に一途なんじゃその人に悪いね」
溢れんばかりの熱もやっと少し落ち着き、人の姿も取り戻してきた。
テーブルを飛び越えて組付した彼女を解放すると、埃を払いはだけた服を再び纏いながらまるで何事も無かったかの様に元の席へと戻っていった。
そして再びお茶を飲み優雅に佇んでいる。
「さっきは悪かったね、僕はまだ伴侶がいないものだから、つい強引な方法を取ってしまったよ」
「...あの紅茶のせいで俺はああなったのか?」
「そうだね。君もどうやら未経験の様だし初体験はお互い盛大に行こうとつい一服盛ってしまったよ」
「それは...どーも」
体が犬に...熱を持つ俺のモノ...いよいよ不思議体験も俺の身に直接降りかかるようになってきたな。
「安心してくれ、僕が仕込んだのは紅茶にだけだから他のお菓子に仕込みは無いよ」
「...ありがとうございます」
そうは言ってもやはり警戒はしてしまう。
腹は減っているけれどもあんな目に遭ったばかりじゃ手も進まない。ご馳走を前にして躊躇し目を伏せる他になかった。
「フフッ疑り深いねぇ...ほら、大丈夫だよ」
「モガッ!?」
う、後ろ!?そんな、いつの間に!?
「美味しいだろう?この辺りに住んでるマーチヘアお手製のアマレッティさ」
「モゴッ...もぐもぐ...美味い!」
爽やかなナッツの香りが噛む度口一杯に広がり、包み込む生地も固すぎずしっとりとしていて、素人でも高級菓子と分かる作りだった。
それと...後ろから抱きつかれてる形だから、背中越しにふにょふにょした感触が...
「僕は何時でも受け入れOKだから、妹さんが見つかったらまた訪ねてくるといい。その時はとびっきりの紅茶とお菓子を用意して待ってるよ」
「耳元で囁かないで...下さい...」
ぽそぽそと呟きながら股間を優しく撫でてきた。そんな手の感触が心地良くなりかけた時にフッと解放してくる。
この人には敵いそうにない...延々と掌の上で踊らされ続けてる気分だ。
「...ぁー!いたー!やっと見つけたー!んもー、私を飛ばしておいて自分はのんびりお茶会なんてー!」
「わ、悪かった、ごめん」
「私も混ぜてよー♥ねぇ帽子屋さん、この人にどんなお菓子を食べさせたのー?♥」
「あぁ、僕特製のブレンドティーを飲ませてあげたよ。残念ながら何もなかったけどね。僕の未熟さを痛感したよ」
「えーっ!?あのサカリ犬100%の紅茶でダメだったのー!?あれでエッチ出来ないとなるとまさかこの人男が好きだったりするんじゃない!?」
何やら物騒な会話で盛り上がってる...勝手に人を男色家にしないでほしい。
「えーと、盛り上がってる中悪いんだけど、妹の行方は...?」
「え、あ、あぁごめん!大丈夫、な、何とか見つけたよー!そう、見つけたには見つけた!」
「本当か!?ありがとう!」
若干歯切れが悪かったのが気になるけど、見つかったのならありがたい!!すぐにまた向かわなくては!!
「おっと、それじゃ一人だけになっちゃったお茶会は御開きだね。僕はこのまま帰るとしよう」
「折角だから帽子屋さんもついてかない?妹さんが見つかったらそのまま皆で一緒に、ネ♥」
「それも面白そうだけど、彼に飛びっきりのお菓子を振る舞うって約束しちゃったからね。材料を調達しないと」
「そっかぁ...残念だなぁ」
「フフッ、会いたくなったら何時でも会えるさ。ここは何処にでもある何時ものお茶会だから、ね」
やはりこの人は飄々として掴み所がないけど、何処か魅力的で惹かれてしまう。
「また、是非会いましょう。とっておきのお茶もお菓子も、楽しみにしてます」
これは本心からの願いだ。その想いを握手を求める形で現す。
「あぁ、その時はまたサプライズを用意しておくから、それもまた楽しみにしておいてくれ」
「ははっ...あまり過激なのは御勘弁を...」
「さっ、そろそろいこいこー♥」
固い握手を交わした後、軽い挨拶を交え俺達は別の方向へと歩き出した。
本当に美味かったなぁあのお茶は...
あの犬になるというのも、妹を見つけ終えたらもう何も心配はない。またあの芳醇な香りを飲み干して、それから...
えっ...待て、今俺は何を...欲望の矛先を妹に...
待て、何を考えてるんだ俺は。
俺は正常だ、正常な筈なんだ。
頭ではわかってるんだ。妹は、大切な家族で、たった一人の肉親、かけがえのない存在であると。
だが、今の俺は妹の顔を思い浮かべると...勃ってしまう。隠せないほど隆々と。
「もー私が飛ぶとおにい...マレチクスさん何時もハプニングに巻き込まれるんだもん、方角はある程度わかるから私も歩く!」
「ああ、すまない...一緒に行こう」
「むー?どうしたのまた暗くなっちゃって?」
「アモネア...俺は...正常か?」
正しさなんて誰の基準かによって変わる不確かなもの。それを他人に委ねるなんて馬鹿げてるのに。
それでも、この慟哭する心を誰かに尋ね歪みなど無いことを証明してくれなければ、不安に押し潰されそうだった。
「質問の意味がちょっとわからないかなー?そうだねぇ、不思議の国においてはエッチしない人は異常かも?」
そうか...この国の「正常」に塗り替えられたのかもしれないな
「...妹に対して性的に体が反応しちまう俺は、もう、あいつに会わす顔がない...この国に染まっちまった一匹の魔物に成り果て、このままじゃ妹を襲っちまう...」
「あー...えーとね、それは、多分大丈夫だと...思うな。うん、きっと大丈夫」
「...どういう事だ?」
「妹さんもまた、襲われるのを受け入れてくれるかもって事♥」
「そんな筈はっ...!」
ダメだ、想像しただけで更に強く隆起してしまう。
そそり立つ俺のモノを受け入れてくれる可愛い妹の顔、表情、仕草、汗、体、乳房臀部女性器腹部ヘソ太股脹ら脛肩二の腕肘掌指爪耳髪眉睫毛口舌歯茎頬
...妹の全てが愛おしい。妹のものなら何を思ってもイチモツを痛いほど固くさせる。
このままじゃあいつを、エイミアをぐちゃぐちゃに犯してしまう...でも俺は正常?そうだ正常だ!ここでは普通だ何もおかしくはないのだそうだ現実に戻れないならいやむしろこここそ今の現実であり戻るなんて未来はないなら順応してでも妹が大切でも妹がこの国の為の妹が慣れる為に妹が妹が妹が妹が妹が妹を妹を妹を妹を妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹
「...マレチクスさん?おーい?どしたのコワイ顔して」
「俺は...大丈夫、さぁ、妹の所まで、案内してくれ...」
「大丈夫かなぁ...とりあえずこっちだよー」
妹を...妹を...
この国から、守るんだ
18/06/28 04:46更新 / もにもとに
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