その1
主要人物紹介
ブルート=デカラ
19歳、男。
レオナとは幼馴染であり親友。
農家の次男であり、自由気ままな性格。
赤髪に大きな体、怪力にコワモテの教会騎士団重装兵。
田舎及びこの外見でできる職業が少ないので教会騎士団を選ぶ。
親友であるレオナに強く誘われた経緯も大きい。
コワモテなので誤解され勝ちだが、本来争いは苦手で動物好き。
反魔物国家に生まれたわりに信仰心や魔物への忌避感は薄い。
魔物が出現しやすい田舎に育ったことと、教団騎士団員にありがちな狂信者を反面教師にした結果といえる。
レオナ=フォルネ
19歳、男。
ブルートとは幼馴染であり親友。
生家が数々の教団騎士団員を輩出してきた、いわゆる名家であり、育ちがよい。
黒髪にやや華奢な体。優男の教会騎士団勇者の一人。
名門らしく、自身も教会騎士団へと所属。
剣士としての才能に溢れる。若干力には欠けるが、速さ、魔力に優れる。
幼少から剣士としての英才教育に明け暮れていたため、友人は少ない。
真面目で人当たりがよいため、かなり女性からはもてる模様だが、本人はブルートと遊んでいる方が楽しい模様。
しばしば神をないがしろにする発言をするブルートをたしなめる。
---------------------------------------------
「あ〜疲れた、暑い・・・」
暑い中、厚い鎧を身に着けてハルバードを背負ったオレは思わずこぼした。
ここはとある反魔物国の国境近い森。
国境を越えると最近魔界化したレスカティエに辿り着くというなんとも危険な森だ。
魔界と化したレスカティエから魔物が侵入しないか、警邏するように教会本部からお達しがあったために、この暑い中森にいるわけだ。
「おいおい、まだ昼間なのにそんな調子で大丈夫か?」
横を歩くレオナから溜息まじりに注意がとんできた。
「重装兵の装備は暑いんですよ、レオナ様?」
「おいおい、二人の時までそんな言い方やめてくれないかな。」
やや慇懃無礼気味に答えると、不満気にレオナも返す。
「いやぁ、私はレオナ様のお屋敷の元使用人ですから。」
「今はもう同僚だろ、ブルート?」
「ははは、悪い悪い。しかしよかったのか?」
「何のことを言ってるんだい?」
「オレなんかと一緒に警邏してること。」
「ああ・・・いいんだよ別に。僕ももう大人だ。父上には言わせないさ。」
「まぁレオナがそう言うならいいんだけど・・・」
オレは農家の次男であり、貧乏人。
レオナは名家の長男であり、貴族階級。
身分に差がある上に人相風体も悪いオレとの付き合いにレオナの家族はいい顔をしない。
「あの人達は自分達に都合のいい勇者がほしかっただけさ。
ブルートみたいに僕のこと僕として見てくれちゃいないよ。
教会騎士団に入るのだって僕の意思はあってないようなものだったし。
ブルートが一緒に来てくれて感謝してるんだ。」
くりっとした目で笑いながら嬉しそうにレオナが笑った。
「まぁ兄弟が多い農家の次男なんて自由なもんだしな。
金さえ家に入れれば好きにしたらいいって言われてるよ。
それにお前があんなに強引に誘うからな。」
オレは思った通りに答えた。
「このままずっと付き合っていけたらいいなぁ。
・・・でももうすぐ配置換えで僕は中央に行かなきゃならないんだよなぁ・・・」
寂しそうに顔を伏せるレオナ。
そんな顔をするな。ここは一つ元気でも出させてやろう。
「口うるさい奴がいなくなってせいせいするな。」
「そんな事言うなら明日の定例訓練でボコボコにしちゃうよ?」
「はん、オレの強さを甘くみるなよ?返り討ちにしてやるぜ!」
「ふふ、確かにうちの支部でブルートに勝てる人、僕と団長、副団長くらいだもんね。」
「別に戦うのが好きってわけじゃないんだけどな。」
「名門出身の人達相手に凄いと思うよ。紹介した僕の鼻も高い。」
「そりゃよござんしたね。」
いつもの緩い会話。
さっきのレオナじゃないけど、こいつが遠くに行くのは寂しいもんだ。
オレだって見た目のせいか、友達少ないしな・・・
っと、会話をしてたらもう森の最深部だ。時間が過ぎるのは早いな。
森の中心部。そこにあるのはいつの時代に作られたとも知れない遺跡。
なんでも悪魔崇拝のための遺跡とかで、現在は誰も近寄らない。
こんなもんがあるから警邏なんてしなきゃならないんだよな。
って言っても、もう数回きてるのに何もないんだけど。
呪術用の変な全身ローブがあるくらいだ。
「さて、今日も異常なし。ブルート、そっちは?」
「こっちもない。腹も減ってきたし、帰るとしようか。」
遺跡を後にし、来た道を戻ろうとすると、なんだか甘い匂いがするのを感じた。甘くて芳しい・・・頭がボーッとするような香り。
「ブルート・・・これは・・・」
「ああ・・・奴らだな。」
前方に目をやると、そこには女が一人。
いや、正確には角と羽、尾を生やした女だ。
サキュバスか?
「フフフ・・・神殿に来てみれば、こんなところにいい男・・・
一緒に来ない?歓迎するわ・・・」
「おい・・・ブルート・・・あいつ、かなり上級の魔物だ・・・
凄い魔力を感じる。なぜこんな場所に・・・」
「さぁな・・・でも教会騎士団員ならやることは一つだろ?」
バッと二手に別れて斬りかかる。
「フフ・・・せっかちなボウヤ達・・・?」
全力で斬りかかっているのにヒラリヒラリとかわされる。
浮き上がったまま何かを呟くと、奴の前に火球が出現しこちらへ襲いかかってきた。
紙一重でかわすオレと魔法障壁で打ち消すレオナ。
再び奴に斬りかかるもかわされる。
「くっ、こりゃダメだな・・・おい、どうするレオナ?」
しばらく一進一退の攻防を繰り返したが、暑さも手伝ってこちらは息が上がってきた。
「対魔力じゃ、ブルートの苦手分野だね。街に戻って救援を呼んできてくれないか?僕は踏ん張りながら逃げるようにするよ。」
小声で返ってきた言葉にオレは驚いた。
「おいおい、本気か?」
「僕が隙を作るから早く!このままじゃ共倒れだ!」
「・・・わかった。必ず無事で会おう。」
「ブルートより僕の方が強いから平気さ。」
ふてぶてしく笑うレオナを尻目にオレはサキュバスに突撃した。
当然ヒラリとかわしたサキュバス。オレはそのまま街の方角へと走った。
「・・・へぇ・・・自己犠牲ってわけ?強いのね、貴方。」
「お前なんて僕一人で十分さ、こいよ。」
「強がっちゃってカワイイわぁ?
増援が増える前に終わらせてア・ゲ・ル」
途中で鎧を脱ぎ捨て、ただ街へ走った。
30分も走ると街へ着いた。団長に経緯を報告すると、すぐさま20人規模の増援部隊が編成された。
「団長、オレも連れて行ってください!」
「・・・ブルート、動けるのか?」
「問題ありません!お願いします!!」
「わかった。途中でへばるようなら置いていく、いいな。」
頼む、レオナ。無事でいてくれ・・・
別れてからもう2時間もかかってしまったが、現場に到着した。
「ブルート、報告の場所に近いがまだなのか?」
「この辺りのはずなんですが・・・あっ!」
そこ残っていたのは、何本も切り倒された木々、地面に残された大穴。爆発痕。
行われた戦闘の凄まじさがわかる。
だが肝心のサキュバスとレオナがいない。
「よし、捜索だ。4人ずつに分かれて付近を捜索せよ!」
「「「はっ!!!」」」
・・・レオナ、どこに消えたんだ・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・結局、レオナの装備品とレオナのものと思しき血痕だけが遺跡の近くで発見された。
レオナは食われたのか、攫われたのか見つからなかった・・・・。
成果を得られなかった上に勇者を失った教会騎士団支部は暗い雰囲気に包まれた。
押しかけてきたレオナの父親から「なぜお前でなくレオナが・・・!」なんて言われるわ、実力ある勇者が討ち取られたことによる団員へのショックも大きいわで静かな夜になってしまった・・・
一晩明けて、オレはレオナが死んだことを実感していた。
いつも朝からオレを起こしにくるのに・・・
「おはよう。いつまで寝てるんだ、ブルート!」
朝飯を食っていても思い出す。お前は育ちがいいくせに好き嫌いが抜けなかったなぁ・・・
「これ嫌いだから食べてよ、ブルート・・・」
「はいはい、レオナ様。」
「またそんな呼び方して・・・」
昼間の定例訓練ではよくお前に負けてたっけ・・・
「ブルート、力だけじゃダメだよ?」
すまない、親友・・・
その晩はなんだか眠れずに起きていた。
レオナと相部屋だった部屋がやけに広く感じる。
あの時、レオナに先に街に戻れと言われた時、あいつを置いて行ったことは正しかったのか・・・?
いつもオレの心配をして、世話を焼いてくれたあいつ。
幼い頃から子供っぽいところが抜けなかったあいつ。
次の配置換えでオレと離れることを寂しがっていたあいつ。
・・・もういないんだなぁ・・・
深夜で皆寝静まっているであろう宿舎のベッドでそんなことを考えていると、ふと甘い匂いを感じた。
・・・この匂いは・・・!あのサキュバスの・・・!!
カッと頭が熱くなり、愛用のハルバードを掴んで跳び起きた。
奴か・・・レオナの仇、とってやる・・・!
ギィ・・・と音を立てて部屋のドアがゆっくり開いていく。
目をこらすと、そこには細身のシルエット。
頭には角、背中に羽と尾。
間違いない、サキュバスだ・・・!
他の団員を呼ぼうか迷ったが、口を閉じた。
レオナの仇のこいつは、こいつだけはオレが・・・殺す!
まさにハルバードで突こうとした瞬間、か細い声が聞こえた。
「ブルート・・・起きてるの?」
なぜあのサキュバスがオレの名を・・・?
ハルバードを突く手が止まった。
「僕だよ・・・レオナだよ・・・」
その瞬間、部屋の燭台に火が点いた。
そこには、レオナの服を着て、レオナの剣を持った黒髪のサキュバスがいた・・・
「な・・・レオナ・・・なのか?」
オレは絶句した・・・
ブルート=デカラ
19歳、男。
レオナとは幼馴染であり親友。
農家の次男であり、自由気ままな性格。
赤髪に大きな体、怪力にコワモテの教会騎士団重装兵。
田舎及びこの外見でできる職業が少ないので教会騎士団を選ぶ。
親友であるレオナに強く誘われた経緯も大きい。
コワモテなので誤解され勝ちだが、本来争いは苦手で動物好き。
反魔物国家に生まれたわりに信仰心や魔物への忌避感は薄い。
魔物が出現しやすい田舎に育ったことと、教団騎士団員にありがちな狂信者を反面教師にした結果といえる。
レオナ=フォルネ
19歳、男。
ブルートとは幼馴染であり親友。
生家が数々の教団騎士団員を輩出してきた、いわゆる名家であり、育ちがよい。
黒髪にやや華奢な体。優男の教会騎士団勇者の一人。
名門らしく、自身も教会騎士団へと所属。
剣士としての才能に溢れる。若干力には欠けるが、速さ、魔力に優れる。
幼少から剣士としての英才教育に明け暮れていたため、友人は少ない。
真面目で人当たりがよいため、かなり女性からはもてる模様だが、本人はブルートと遊んでいる方が楽しい模様。
しばしば神をないがしろにする発言をするブルートをたしなめる。
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「あ〜疲れた、暑い・・・」
暑い中、厚い鎧を身に着けてハルバードを背負ったオレは思わずこぼした。
ここはとある反魔物国の国境近い森。
国境を越えると最近魔界化したレスカティエに辿り着くというなんとも危険な森だ。
魔界と化したレスカティエから魔物が侵入しないか、警邏するように教会本部からお達しがあったために、この暑い中森にいるわけだ。
「おいおい、まだ昼間なのにそんな調子で大丈夫か?」
横を歩くレオナから溜息まじりに注意がとんできた。
「重装兵の装備は暑いんですよ、レオナ様?」
「おいおい、二人の時までそんな言い方やめてくれないかな。」
やや慇懃無礼気味に答えると、不満気にレオナも返す。
「いやぁ、私はレオナ様のお屋敷の元使用人ですから。」
「今はもう同僚だろ、ブルート?」
「ははは、悪い悪い。しかしよかったのか?」
「何のことを言ってるんだい?」
「オレなんかと一緒に警邏してること。」
「ああ・・・いいんだよ別に。僕ももう大人だ。父上には言わせないさ。」
「まぁレオナがそう言うならいいんだけど・・・」
オレは農家の次男であり、貧乏人。
レオナは名家の長男であり、貴族階級。
身分に差がある上に人相風体も悪いオレとの付き合いにレオナの家族はいい顔をしない。
「あの人達は自分達に都合のいい勇者がほしかっただけさ。
ブルートみたいに僕のこと僕として見てくれちゃいないよ。
教会騎士団に入るのだって僕の意思はあってないようなものだったし。
ブルートが一緒に来てくれて感謝してるんだ。」
くりっとした目で笑いながら嬉しそうにレオナが笑った。
「まぁ兄弟が多い農家の次男なんて自由なもんだしな。
金さえ家に入れれば好きにしたらいいって言われてるよ。
それにお前があんなに強引に誘うからな。」
オレは思った通りに答えた。
「このままずっと付き合っていけたらいいなぁ。
・・・でももうすぐ配置換えで僕は中央に行かなきゃならないんだよなぁ・・・」
寂しそうに顔を伏せるレオナ。
そんな顔をするな。ここは一つ元気でも出させてやろう。
「口うるさい奴がいなくなってせいせいするな。」
「そんな事言うなら明日の定例訓練でボコボコにしちゃうよ?」
「はん、オレの強さを甘くみるなよ?返り討ちにしてやるぜ!」
「ふふ、確かにうちの支部でブルートに勝てる人、僕と団長、副団長くらいだもんね。」
「別に戦うのが好きってわけじゃないんだけどな。」
「名門出身の人達相手に凄いと思うよ。紹介した僕の鼻も高い。」
「そりゃよござんしたね。」
いつもの緩い会話。
さっきのレオナじゃないけど、こいつが遠くに行くのは寂しいもんだ。
オレだって見た目のせいか、友達少ないしな・・・
っと、会話をしてたらもう森の最深部だ。時間が過ぎるのは早いな。
森の中心部。そこにあるのはいつの時代に作られたとも知れない遺跡。
なんでも悪魔崇拝のための遺跡とかで、現在は誰も近寄らない。
こんなもんがあるから警邏なんてしなきゃならないんだよな。
って言っても、もう数回きてるのに何もないんだけど。
呪術用の変な全身ローブがあるくらいだ。
「さて、今日も異常なし。ブルート、そっちは?」
「こっちもない。腹も減ってきたし、帰るとしようか。」
遺跡を後にし、来た道を戻ろうとすると、なんだか甘い匂いがするのを感じた。甘くて芳しい・・・頭がボーッとするような香り。
「ブルート・・・これは・・・」
「ああ・・・奴らだな。」
前方に目をやると、そこには女が一人。
いや、正確には角と羽、尾を生やした女だ。
サキュバスか?
「フフフ・・・神殿に来てみれば、こんなところにいい男・・・
一緒に来ない?歓迎するわ・・・」
「おい・・・ブルート・・・あいつ、かなり上級の魔物だ・・・
凄い魔力を感じる。なぜこんな場所に・・・」
「さぁな・・・でも教会騎士団員ならやることは一つだろ?」
バッと二手に別れて斬りかかる。
「フフ・・・せっかちなボウヤ達・・・?」
全力で斬りかかっているのにヒラリヒラリとかわされる。
浮き上がったまま何かを呟くと、奴の前に火球が出現しこちらへ襲いかかってきた。
紙一重でかわすオレと魔法障壁で打ち消すレオナ。
再び奴に斬りかかるもかわされる。
「くっ、こりゃダメだな・・・おい、どうするレオナ?」
しばらく一進一退の攻防を繰り返したが、暑さも手伝ってこちらは息が上がってきた。
「対魔力じゃ、ブルートの苦手分野だね。街に戻って救援を呼んできてくれないか?僕は踏ん張りながら逃げるようにするよ。」
小声で返ってきた言葉にオレは驚いた。
「おいおい、本気か?」
「僕が隙を作るから早く!このままじゃ共倒れだ!」
「・・・わかった。必ず無事で会おう。」
「ブルートより僕の方が強いから平気さ。」
ふてぶてしく笑うレオナを尻目にオレはサキュバスに突撃した。
当然ヒラリとかわしたサキュバス。オレはそのまま街の方角へと走った。
「・・・へぇ・・・自己犠牲ってわけ?強いのね、貴方。」
「お前なんて僕一人で十分さ、こいよ。」
「強がっちゃってカワイイわぁ?
増援が増える前に終わらせてア・ゲ・ル」
途中で鎧を脱ぎ捨て、ただ街へ走った。
30分も走ると街へ着いた。団長に経緯を報告すると、すぐさま20人規模の増援部隊が編成された。
「団長、オレも連れて行ってください!」
「・・・ブルート、動けるのか?」
「問題ありません!お願いします!!」
「わかった。途中でへばるようなら置いていく、いいな。」
頼む、レオナ。無事でいてくれ・・・
別れてからもう2時間もかかってしまったが、現場に到着した。
「ブルート、報告の場所に近いがまだなのか?」
「この辺りのはずなんですが・・・あっ!」
そこ残っていたのは、何本も切り倒された木々、地面に残された大穴。爆発痕。
行われた戦闘の凄まじさがわかる。
だが肝心のサキュバスとレオナがいない。
「よし、捜索だ。4人ずつに分かれて付近を捜索せよ!」
「「「はっ!!!」」」
・・・レオナ、どこに消えたんだ・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・結局、レオナの装備品とレオナのものと思しき血痕だけが遺跡の近くで発見された。
レオナは食われたのか、攫われたのか見つからなかった・・・・。
成果を得られなかった上に勇者を失った教会騎士団支部は暗い雰囲気に包まれた。
押しかけてきたレオナの父親から「なぜお前でなくレオナが・・・!」なんて言われるわ、実力ある勇者が討ち取られたことによる団員へのショックも大きいわで静かな夜になってしまった・・・
一晩明けて、オレはレオナが死んだことを実感していた。
いつも朝からオレを起こしにくるのに・・・
「おはよう。いつまで寝てるんだ、ブルート!」
朝飯を食っていても思い出す。お前は育ちがいいくせに好き嫌いが抜けなかったなぁ・・・
「これ嫌いだから食べてよ、ブルート・・・」
「はいはい、レオナ様。」
「またそんな呼び方して・・・」
昼間の定例訓練ではよくお前に負けてたっけ・・・
「ブルート、力だけじゃダメだよ?」
すまない、親友・・・
その晩はなんだか眠れずに起きていた。
レオナと相部屋だった部屋がやけに広く感じる。
あの時、レオナに先に街に戻れと言われた時、あいつを置いて行ったことは正しかったのか・・・?
いつもオレの心配をして、世話を焼いてくれたあいつ。
幼い頃から子供っぽいところが抜けなかったあいつ。
次の配置換えでオレと離れることを寂しがっていたあいつ。
・・・もういないんだなぁ・・・
深夜で皆寝静まっているであろう宿舎のベッドでそんなことを考えていると、ふと甘い匂いを感じた。
・・・この匂いは・・・!あのサキュバスの・・・!!
カッと頭が熱くなり、愛用のハルバードを掴んで跳び起きた。
奴か・・・レオナの仇、とってやる・・・!
ギィ・・・と音を立てて部屋のドアがゆっくり開いていく。
目をこらすと、そこには細身のシルエット。
頭には角、背中に羽と尾。
間違いない、サキュバスだ・・・!
他の団員を呼ぼうか迷ったが、口を閉じた。
レオナの仇のこいつは、こいつだけはオレが・・・殺す!
まさにハルバードで突こうとした瞬間、か細い声が聞こえた。
「ブルート・・・起きてるの?」
なぜあのサキュバスがオレの名を・・・?
ハルバードを突く手が止まった。
「僕だよ・・・レオナだよ・・・」
その瞬間、部屋の燭台に火が点いた。
そこには、レオナの服を着て、レオナの剣を持った黒髪のサキュバスがいた・・・
「な・・・レオナ・・・なのか?」
オレは絶句した・・・
12/04/26 00:38更新 / もょもと
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