その3
「ヨルムンガンド様、あの男が来ました!」
「総員奴を迎え撃て!私もすぐに向かう。」
「はっ!!」
・・・来たか・・・奴は・・・私が黒竜だと気づいただろうか。
前回はそんな節はなかった。
気づかれるわけにはいかない。
遠路遥々訪ねてきたトールには悪いが、引導を渡させてもらう。
そんなことを思いながら城門へと向かった。
「・・・何度来ても同じ事だ。」
「よう。もう終わったぜ?」
「我が部下を傷つけておいてその態度とはな・・・」
「前も言ったけど、オレからじゃあないぜ?今日はちゃんと城主殿への面会を願ったんだが。」
「貴様のような輩を安々と通すわけがなかろう?」
「そりゃ違いない。・・・また聞くんだが、黒竜はどこだ?」
「さてな・・・。聞きたければ私を倒してみよ。」
「はぁ・・・結局この展開かよ!!」
「さて、今日こそ捕らえてくれるわ!」
・・・今日もまた奴との凌ぎ合いが始まった・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「よう。また来たぜ!」
「貴様も飽きないな?」
「まぁな。愛しの黒龍のためならがんばれるもんさ。」
「いとっ・・・!貴様、ふざけているのか?」
「?何を怒ってるんだ?」
「やかましい!今日こそ捕らえてくれるわ!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「まだまだ!それじゃ倒されてやれないぜ?」
「くっ・・・!この私の剣がここまで届かないとは・・・」
「ティール!今強化魔法をかけるわ!」
「おおっと、そっちのダークエルフ・・・フレイヤだっけ?中々がんばるな!」
「あら・・・♥名前覚えてくれたのね?嬉しいわぁ♥
ついでに捕まってくれるともっと嬉しい♥」
「それは聞けないね!・・・よっと」
「よそ見をするな!貴様の相手はこちらだ!!」
「ティールもがんばるねぇ〜」
「!!!い、いきなり名前を呼ぶんじゃないっ///」
「・・・終わったら・・・夕食を用意してあります・・・」
「お、気がきくねぇ、ゾンビのウリルちゃんだっけ?」
「・・・はい・・・♥」
「「なぜウリルだけちゃん付け!?」」
「おい、トール・・・貴様、馴染みすぎだ・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「もう何度目だっけ?」
「忘れたな・・・だがそんなことはどうでもいいだろう?」
「おっと、そうだったな。んじゃあ今日こそ黒竜の情報を・・・」
「懲りぬ奴め・・・」
「あんた名前は?」
「・・・ヨルムンガンド・・・竜族だ。」
「なるほど。黒竜のお仲間ってわけだ。んじゃあ黒竜の情報知ってるのも頷けるな。
益々力入っちまうぜ!」
「フン・・・返り討ちだ!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
嘗てのような楽しい日々。
正体を隠しているのが辛くはあるが・・・
トールも楽しそうだ。
私も楽しくて仕方ない。
部下も少しずつ腕を上げている。
トールにはまだまだ及ばないが・・・
及んでしまったらこの生活が終わってしまうので
城主にあるまじき考え方ではあるが、少しだけトールの突き抜けた強さに感謝している。
トールと頻繁に会えて嬉しい。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
黒竜を探すための旅で、まさか人生2人目の好敵手に出会うことになるとは・・・
しかも同じ竜族ときた。少し運命じみたものを感じてしまう。
やっぱり考えるより行動だな!
最初は魔界に乗り込むことに抵抗はあったけど、この体のおかげか人間やめないでいられるし。
楽しい。黒竜の情報も魅力的だが、オレはこの生活が続くことを願ってしまっている。
何より・・・あの竜、ヨルムンガンドは美しい・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「しかし・・・トール殿の探している黒竜とはどこにいるのだろうな?」
「ヨルムンガンド様も教えてくださらないし・・・」
「ヨルムンガンド様が負けない限り知ることはないのだろうな・・・」
「それこそありえないでしょう?あの方が超人とは言え、神々以外に遅れをとるなんてこと・・・」
「それもそうだな!さて、次回こそトール殿を・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
トールのことを思うと体が熱くなる。
初めてトールがあの男だと気づいた時から頻繁に起こるようになった。
あいつと戦っている時。あいつが城で食事を済ませている時。
あいつと楽しく話している時。
何なのだ?これは??
ティール達に相談してみたところ、しばらく青い顔をした後、ヒソヒソと内緒話をしていたと思ったら、
「それはトールに対して腹が立っているから」
などと言っていた。
確かに無礼者ではあるが・・・怒りとは異なってなぜか心地良い感覚なのだ・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
今日もヨルムンガンドの城へ行った。
相も変わらず奴の部下は弱い。
最初に比べれば格段に強くなったもののまだまだオレには遠く及ばない。
最近、黒竜のことを考える時間が少しずつ減っている。
いかん。これはいかん。
黒竜と最後に戦った時にも、次の戦いを約束した。
突然訪ねても、再戦となったらきっと喜んでくれるはずだ。
ヨルムンガンドと戦うのは楽しい・・・だが、これ以上黒竜を待たせるわけにもいかない。
オレは・・・どうしたらいいんだ・・・?
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
最近、トールの様子がおかしい。
妙に思いつめた表情をしている。
戦い方も以前とは違い、攻撃重視になっている。
話も弾まない。奴は・・・私との戦いに飽きてしまったのだろうか・・・
私は・・・こんなにトールのことを・・・
お願いだ・・・私を・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
そろそろこの生活をやめなくてはならない。
黒竜もオレを待っているだろう。
ヨルムンガンドは今の穏やかな生活が気に入っていると言っていた。
・・・あまり邪魔をするのも無粋だ。
あと一度・・・あと一度だけ・・・
次で最後にしよう。この思いは・・・伝えずにおこう。
ヨルムンガンドは誇り高き竜族。オレのような地位も身分もない人間では釣り合わない。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「・・・よう。」
「最近元気がないようだな?さてはようやく私の力に畏怖を覚えたか?」
「さてね・・・。さあ、そろそろ始めようか?」
「・・・くっ・・・今日も・・・勝てなかった・・・この剣士ティールがこうも不覚を取るとは・・・」
「だらしなわね・・・私達。これじゃヨルムンガンド様にトールを取られちゃう・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「最近トールめが来ないな・・・」
「最後の引き分けの時に元気ないように見えたわ・・・」
「奴がねぐらにしている街へ様子を見にいってまいりましょうか?」
「ひょっとしたら調子を崩しているやもしれぬ。
私が直々に見てこよう。」
「「「ええ!!!」」」
「別に奴が心配なわけではなく・・・奴と会えないからつまら・・・でもなく
・・・そう!弱っていた場合に止めを刺そうと思っているのだ!」
「領主様直々に行かれなくても・・・」
「これは命令だ!では行ってくる!」
「・・・これは・・・」
「やっぱり男に興味がないってわけじゃなくて、トールを夫と認識しちゃってるっぽいわね・・・」
「・・・ヨルムンガンド様相手では・・・勝ち目が・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
トールが逗留していた宿屋に飛び込んだ私は宿屋の主人を問いただした。
「何!?街を立った?」
「はい、数日前に・・・」
「何か言い残していかなかったか?」
「はい。ここに訪ねてくる方がいたらこう伝えてほしいと。
突然消えて悪いが、オレはそろそろ黒竜に会わねばならない。
皆と過ごした日々は楽しかった。黒竜と戦って命があったらまた会おう。と」
「それだけか!?」
「?はい。」
急ぎ城に戻る。頭が混乱している。こんなことは・・・我が生涯で初めてだ。
なんということだ・・・私がトールに言い渋っていたばかりに・・・
今直ぐ・・・追わなくては・・・言おう・・・私が黒竜だと・・・
それだけか・・・私はこれほどお前を思っているのに・・・楽しかっただけの関係だったのか?
会いたい・・・謝らなければ・・・
目の前が滲む。なんだこれは?
「ヨルムンガンド様!!」
「・・・ティールか・・・なんだ?」
「!ヨルムンガンド様・・・涙を・・・」
涙・・・そうか、これが悲しい時に出る涙というものか・・・
「いい・・・先程急いでいたようだが・・・?」
「はい、それが・・・魔王様からの勅命状が届きました。何でも急ぎとか・・・」
「よこせ!・・・何!?ミスガルズ砦が陥落の危険だと!!?」
「・・・行かれるのですか?」
「あぁ・・・彼の地は嘗て私が守護していた地・・・」
「え・・・!でもあの場所はトール殿が探していた黒竜が守護していたと・・・まさか!」
「私は私の責を果たしに行く。留守を頼んだぞ!」
「あっ!ヨルムンガンド様!!」
トールのことは後ろ髪を引かれるが・・・
それでも、あの思い出の地を教団なぞに蹂躙されるわけにはいかない。
守ってみせる。トールと初めて出会って、トールとしのぎを削ったあの地を・・・!
「・・・そう、やっぱりね・・・」
「!フレイヤは気づいていたのか?」
「ええ。そんなことではないかと思っていたわ。でもヨルムンガンド様が言わないのにはきっと理由がある。
問い詰めることも、誰かに漏らすこともしてはいけないと思ったの・・・」
「そうか・・・」
「ティール様!フレイヤ様!」
「ん?ウリルか。どうした?」
「トール様が!」
「・・・よぉ。皆、久しぶり。」
「!トール殿!黒竜を探しに行ったのでは!?」
「ハハハ・・・せっかくカッコつけて出ていったんだけどさ・・・この城に忘れもんしちまって・・・///
そう言えばヨルムンガンドは?あいつにも挨拶なしで出ていっちまったから謝らないとな///」
「それが・・・フレイヤ、ウリル、どうしよう?」
「いいのではなくて?」
「・・・トール様にお伝えしましょう・・・」
「???何だ一体???」
「総員奴を迎え撃て!私もすぐに向かう。」
「はっ!!」
・・・来たか・・・奴は・・・私が黒竜だと気づいただろうか。
前回はそんな節はなかった。
気づかれるわけにはいかない。
遠路遥々訪ねてきたトールには悪いが、引導を渡させてもらう。
そんなことを思いながら城門へと向かった。
「・・・何度来ても同じ事だ。」
「よう。もう終わったぜ?」
「我が部下を傷つけておいてその態度とはな・・・」
「前も言ったけど、オレからじゃあないぜ?今日はちゃんと城主殿への面会を願ったんだが。」
「貴様のような輩を安々と通すわけがなかろう?」
「そりゃ違いない。・・・また聞くんだが、黒竜はどこだ?」
「さてな・・・。聞きたければ私を倒してみよ。」
「はぁ・・・結局この展開かよ!!」
「さて、今日こそ捕らえてくれるわ!」
・・・今日もまた奴との凌ぎ合いが始まった・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「よう。また来たぜ!」
「貴様も飽きないな?」
「まぁな。愛しの黒龍のためならがんばれるもんさ。」
「いとっ・・・!貴様、ふざけているのか?」
「?何を怒ってるんだ?」
「やかましい!今日こそ捕らえてくれるわ!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「まだまだ!それじゃ倒されてやれないぜ?」
「くっ・・・!この私の剣がここまで届かないとは・・・」
「ティール!今強化魔法をかけるわ!」
「おおっと、そっちのダークエルフ・・・フレイヤだっけ?中々がんばるな!」
「あら・・・♥名前覚えてくれたのね?嬉しいわぁ♥
ついでに捕まってくれるともっと嬉しい♥」
「それは聞けないね!・・・よっと」
「よそ見をするな!貴様の相手はこちらだ!!」
「ティールもがんばるねぇ〜」
「!!!い、いきなり名前を呼ぶんじゃないっ///」
「・・・終わったら・・・夕食を用意してあります・・・」
「お、気がきくねぇ、ゾンビのウリルちゃんだっけ?」
「・・・はい・・・♥」
「「なぜウリルだけちゃん付け!?」」
「おい、トール・・・貴様、馴染みすぎだ・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「もう何度目だっけ?」
「忘れたな・・・だがそんなことはどうでもいいだろう?」
「おっと、そうだったな。んじゃあ今日こそ黒竜の情報を・・・」
「懲りぬ奴め・・・」
「あんた名前は?」
「・・・ヨルムンガンド・・・竜族だ。」
「なるほど。黒竜のお仲間ってわけだ。んじゃあ黒竜の情報知ってるのも頷けるな。
益々力入っちまうぜ!」
「フン・・・返り討ちだ!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
嘗てのような楽しい日々。
正体を隠しているのが辛くはあるが・・・
トールも楽しそうだ。
私も楽しくて仕方ない。
部下も少しずつ腕を上げている。
トールにはまだまだ及ばないが・・・
及んでしまったらこの生活が終わってしまうので
城主にあるまじき考え方ではあるが、少しだけトールの突き抜けた強さに感謝している。
トールと頻繁に会えて嬉しい。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
黒竜を探すための旅で、まさか人生2人目の好敵手に出会うことになるとは・・・
しかも同じ竜族ときた。少し運命じみたものを感じてしまう。
やっぱり考えるより行動だな!
最初は魔界に乗り込むことに抵抗はあったけど、この体のおかげか人間やめないでいられるし。
楽しい。黒竜の情報も魅力的だが、オレはこの生活が続くことを願ってしまっている。
何より・・・あの竜、ヨルムンガンドは美しい・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「しかし・・・トール殿の探している黒竜とはどこにいるのだろうな?」
「ヨルムンガンド様も教えてくださらないし・・・」
「ヨルムンガンド様が負けない限り知ることはないのだろうな・・・」
「それこそありえないでしょう?あの方が超人とは言え、神々以外に遅れをとるなんてこと・・・」
「それもそうだな!さて、次回こそトール殿を・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
トールのことを思うと体が熱くなる。
初めてトールがあの男だと気づいた時から頻繁に起こるようになった。
あいつと戦っている時。あいつが城で食事を済ませている時。
あいつと楽しく話している時。
何なのだ?これは??
ティール達に相談してみたところ、しばらく青い顔をした後、ヒソヒソと内緒話をしていたと思ったら、
「それはトールに対して腹が立っているから」
などと言っていた。
確かに無礼者ではあるが・・・怒りとは異なってなぜか心地良い感覚なのだ・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
今日もヨルムンガンドの城へ行った。
相も変わらず奴の部下は弱い。
最初に比べれば格段に強くなったもののまだまだオレには遠く及ばない。
最近、黒竜のことを考える時間が少しずつ減っている。
いかん。これはいかん。
黒竜と最後に戦った時にも、次の戦いを約束した。
突然訪ねても、再戦となったらきっと喜んでくれるはずだ。
ヨルムンガンドと戦うのは楽しい・・・だが、これ以上黒竜を待たせるわけにもいかない。
オレは・・・どうしたらいいんだ・・・?
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
最近、トールの様子がおかしい。
妙に思いつめた表情をしている。
戦い方も以前とは違い、攻撃重視になっている。
話も弾まない。奴は・・・私との戦いに飽きてしまったのだろうか・・・
私は・・・こんなにトールのことを・・・
お願いだ・・・私を・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
そろそろこの生活をやめなくてはならない。
黒竜もオレを待っているだろう。
ヨルムンガンドは今の穏やかな生活が気に入っていると言っていた。
・・・あまり邪魔をするのも無粋だ。
あと一度・・・あと一度だけ・・・
次で最後にしよう。この思いは・・・伝えずにおこう。
ヨルムンガンドは誇り高き竜族。オレのような地位も身分もない人間では釣り合わない。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「・・・よう。」
「最近元気がないようだな?さてはようやく私の力に畏怖を覚えたか?」
「さてね・・・。さあ、そろそろ始めようか?」
「・・・くっ・・・今日も・・・勝てなかった・・・この剣士ティールがこうも不覚を取るとは・・・」
「だらしなわね・・・私達。これじゃヨルムンガンド様にトールを取られちゃう・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「最近トールめが来ないな・・・」
「最後の引き分けの時に元気ないように見えたわ・・・」
「奴がねぐらにしている街へ様子を見にいってまいりましょうか?」
「ひょっとしたら調子を崩しているやもしれぬ。
私が直々に見てこよう。」
「「「ええ!!!」」」
「別に奴が心配なわけではなく・・・奴と会えないからつまら・・・でもなく
・・・そう!弱っていた場合に止めを刺そうと思っているのだ!」
「領主様直々に行かれなくても・・・」
「これは命令だ!では行ってくる!」
「・・・これは・・・」
「やっぱり男に興味がないってわけじゃなくて、トールを夫と認識しちゃってるっぽいわね・・・」
「・・・ヨルムンガンド様相手では・・・勝ち目が・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
トールが逗留していた宿屋に飛び込んだ私は宿屋の主人を問いただした。
「何!?街を立った?」
「はい、数日前に・・・」
「何か言い残していかなかったか?」
「はい。ここに訪ねてくる方がいたらこう伝えてほしいと。
突然消えて悪いが、オレはそろそろ黒竜に会わねばならない。
皆と過ごした日々は楽しかった。黒竜と戦って命があったらまた会おう。と」
「それだけか!?」
「?はい。」
急ぎ城に戻る。頭が混乱している。こんなことは・・・我が生涯で初めてだ。
なんということだ・・・私がトールに言い渋っていたばかりに・・・
今直ぐ・・・追わなくては・・・言おう・・・私が黒竜だと・・・
それだけか・・・私はこれほどお前を思っているのに・・・楽しかっただけの関係だったのか?
会いたい・・・謝らなければ・・・
目の前が滲む。なんだこれは?
「ヨルムンガンド様!!」
「・・・ティールか・・・なんだ?」
「!ヨルムンガンド様・・・涙を・・・」
涙・・・そうか、これが悲しい時に出る涙というものか・・・
「いい・・・先程急いでいたようだが・・・?」
「はい、それが・・・魔王様からの勅命状が届きました。何でも急ぎとか・・・」
「よこせ!・・・何!?ミスガルズ砦が陥落の危険だと!!?」
「・・・行かれるのですか?」
「あぁ・・・彼の地は嘗て私が守護していた地・・・」
「え・・・!でもあの場所はトール殿が探していた黒竜が守護していたと・・・まさか!」
「私は私の責を果たしに行く。留守を頼んだぞ!」
「あっ!ヨルムンガンド様!!」
トールのことは後ろ髪を引かれるが・・・
それでも、あの思い出の地を教団なぞに蹂躙されるわけにはいかない。
守ってみせる。トールと初めて出会って、トールとしのぎを削ったあの地を・・・!
「・・・そう、やっぱりね・・・」
「!フレイヤは気づいていたのか?」
「ええ。そんなことではないかと思っていたわ。でもヨルムンガンド様が言わないのにはきっと理由がある。
問い詰めることも、誰かに漏らすこともしてはいけないと思ったの・・・」
「そうか・・・」
「ティール様!フレイヤ様!」
「ん?ウリルか。どうした?」
「トール様が!」
「・・・よぉ。皆、久しぶり。」
「!トール殿!黒竜を探しに行ったのでは!?」
「ハハハ・・・せっかくカッコつけて出ていったんだけどさ・・・この城に忘れもんしちまって・・・///
そう言えばヨルムンガンドは?あいつにも挨拶なしで出ていっちまったから謝らないとな///」
「それが・・・フレイヤ、ウリル、どうしよう?」
「いいのではなくて?」
「・・・トール様にお伝えしましょう・・・」
「???何だ一体???」
12/05/04 05:31更新 / もょもと
戻る
次へ