ユニコーンさん俺だ! 結婚してくれ!!
これは魔王の支配があまねく広がり、魔物と人間が一つの種族へと
完全に統合された少し未来のお話です。
「……もう一杯」
「マリア、いい加減にしな。いったい何杯飲んだと思ってるんだい?」
とある繁華街の酒場に、朝も早いうちからグラスをぐいぐい傾けるユニコーンの姿があった。
彼女の名はマリア。近頃の魔物にしては珍しくいい年齢こいていまだに独身かつ処女である。
「うるへーばーろー、酒くらい好きに飲ませろってんだ!」
「男を取られて荒れるのはわかるけど、朝っぱらから押しかけてくるんじゃないよ!
あたしと旦那の飲む分が無くなっちまうだろうが!!」
身体を壊しかねない勢いで酒瓶を空ける彼女を見かねたオーガの女将は、カウンターに
ちょっとした山脈を成す空き瓶を押しのけるようにしてマリアの首根っこを引っつかむや、
ゴミでも捨てるような気軽さで表へ放り出すと、春先とはいえいまだ冷たいバケツの水を
情け容赦なくぶっ掛ける。
「魔界熱に罹ってるみたいだし丁度いいだろ? さあこれで頭冷やしたら家帰って寝な」
女将はさもめんどくさそうに言い捨てると、ジパング産まれの夫がアカオニの祖母から
暖簾分けされたという店の引き戸をぴしゃりと閉ざし、朝寝へとしゃれ込んだ。
それにしてもいくら魔物が丈夫だからとはいえひどい仕打ちである。
ずぶ濡れのマリアは泣いた。
壁越しにも聞こえてくる女将夫婦のケダモノじみた幸せ一杯な嬌声と、今の自分の境遇を
比べれば比べるほど惨めになってしまう。
────それにしても、ユニコーンにとって生きづらい時代になったものね。
死んだ魚のようにどろりと濁った瞳で、滴る水滴をぬぐおうともせずにポクポクと
その場を後にする彼女は誰に聞かせるでもなくつぶやいた。
本来ユニコーンは相手を見つけるまで処女を守り通し、童貞の男しか相手にしない魔物娘だ。
魔王の支配が完全ではなく、魔物娘から男が生まれなかった頃ならまだよかった。
ところが種族が統一され、性に奔放な魔物娘に兄弟が生まれるようになって状況は一変した。
元が近親相姦の禁忌も無く平気で父親とすら交わろうとする魔物娘だ。それが頼もしい兄や
可愛い弟を得ればどうなるか。もちろん全部とは言えないが、実の兄に恋慕の情を抱いたり、
将来の嫁のために弟を鍛えてやろうと童貞を奪い、つい勢いで本気になってしまう姉妹が続出したのだ。
隣の家には仲良しな幼馴染だって居る。もっと外へ目を向ければ近所のきれいなお姉さんや、学校の美人先生がてぐすね引いて待ち構えている。
かくしてこの世界で童貞は絶滅危惧種にも匹敵する貴重な存在になってしまったのだ。
「どちくしょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
彼女は叫んだ。やっと見つけた童貞坊やを目の前で姉に掻っ攫われた怒りと悲しみを
吐き出してしまうかのように。
彼女は走った。道行くカップルを押しのけ掻き分け、砕け散った恋を振り払うかのように。
「────おおおおおおおああああああああああああああああああああああああ!?」
────そして勢いに任せて町はずれの小山へ駆け上った後、うっかり崖から転落して
急斜面を転がり落ち、ふもとの草原へ叩きつけられた。特撮番組の怪人もかくやという
見事な落ちっぷりである。これで最後に爆発すれば完璧だ。
全身打撲と骨折擦り傷その他もろもろの負傷で半死半生の体(てい)を成すぼろぼろのマリア
は、最後の力を振り絞ってユニコーン十八番の強力無比な治癒魔法を唱えると、
無茶がたたって悪化した魔界熱の症状もあり、糸の切れた人形のようにぷっつりと意識を手放した。
□□□□
恵みの太陽が天頂へ昇り燦燦とその日差しを降り注がせる頃、清々しい風に吹かれて
ざわめく草原に立っていた男は、前方に一人の美女が力なく横たわっているのを見て取った。
普段なら心地好く頬を撫でる春の息吹に靡ききらめくだろう真珠色の髪は、
今や紅潮した肌に浮き出る汗に張り付き、世の男たちを魅了してやまない
そのメロンのように豊満な乳房は、苦しげな呼吸とともに上下している。
その髪の色が物語るとおり日本人離れした外見の彼女は、女優やアイドルにも
そうは居ないほどのすこぶるつきの美女である。苦しげに臥せってさえ居なければ道行く男が
軒並み振り返ることだろう。
だが少し待って欲しい。確かに輝くような美貌や大きなおっぱいは大事なポイントだが、
注目すべきなのはそこではない。
彼女の短い毛に覆われた耳は馬のように長く伸びており、額からはドリルのように捩れた
一本の角がそそり立っている。おまけに下半身は御伽噺の王子様が跨っていたら
さぞ映えるだろうという毛並みのいい白馬そのものなのだ。
そう、魔物娘版ユニコーンである。
この事実を前にして男の内部でスリー、ツー、ワンとスイッチが入り、天井知らずに
昂ぶるテンションに突き動かされるままに両の拳を振り上げて高らかに叫びを上げる。
「────図鑑世界、キタアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
さて、何ゆえこんなことになったのか読者諸兄には説明しておかねばなるまい。
デブ、不細工、童貞と三拍子揃ったどこに出しても恥ずかしいキモオタであるところの
この俺阿藤ヒロシが、近年の不況のあおりを受け、生活の糧としていたバイト先を
クビになったのがそもそもの原因だ。職探しの中、暇をもてあました俺がたまたま立ち寄った
ブック○フの百円コーナーで、なんとなく手に取った魔導書ネクロノミコン。
「イグナイイ・イグナイイ・トゥフルトクングア・ヨグソトース!」
などとそこに書かれていた内容を悪ふざけで実行してみたところ、魔方陣からあぶくのように
湧き出した虹色の球体に導かれるままに俺の肉体はフローリングの床から
果てしなく広がる草原、それもこの俺が愛してやまない同人誌である
『魔物娘図鑑』の世界へと転移してしまったのだ。
ブックオ○スゲー。そしてありがとうコリン・ウィルソンとテオバルドス爺さん。
以上、回想終わり。
まあ呼びかけに応えて俺をこの世界に連れてきてくれたヨーグルトソースだか
チリソースだかいう神様にも感謝したほうがいいのかもしれないが、あの神話の神様は
大抵が人間の価値観ぶっちぎったマジモンの超越存在なんで、人間如きがお礼言っても
言わなくても気にしないだろう。たとえば画面の前のキミが道端の蟻んこ、
もしくは微生物から彼らの言語でお礼を言われても理解できんだろう? そういうことさ。
……なんてやってる場合じゃねーよ! と我に返ったヒロシは、美しく愛らしい魔物娘の
跋扈する世界へ足を踏み入れた喜びを全身で表現するのもそこそこに、
部屋で履いていたままの健康サンダルをぺたぺたと鳴らして眼前のユニコーンへ
駆け寄ると、怪我をしていないか確かめるために診察の真似事をした。
幸い一通り診てみたが、熱がある以外に彼女の身体には傷一つ無い。
「……どうやら病気か何かみたいだな」
着の身着のままでこの世界へやってきた彼には薬一つの持ち合わせも
病に効く薬草の知識も無い。だが魔物娘の罹る病気なんぞ、だいたいヤってれば
治ってしまうものだ。
同人誌で得た知識を思い出してほくそ笑むヒロシは、無防備な姿を晒す
極上の雌を前にして、穿き古しのジーパンの中で二十数年の人生を経ていまだ
純潔を保っている荒ぶる息子を解き放つのを今か今かと待ち望んでいた。
「やっべえ、傍に居るだけでムラムラしてきたw クンクンするくらいセーフだよね?
……スー、ハー、スーハー。うはwwwwすっげえいい匂いwwww
これは味もしっかり見ておかねば! ペロペロ! ユニコーンさんペロペロ
ジュルジュルwwwwドュフフwwww」
脇や腰布の中で思いっきり深呼吸するだけに飽き足らず、脇に滲んだ汗を舐め取ったり
おっぱいをモニモニと揉みしだいたり、挙句の果てに舌のお口へファーストキスを
捧げてしまったりともうやりたい放題。
地球では言葉を交わすことさえ夢のまた夢という程の美女で童貞を捨てられるという期待に
自然と頬はだらしなく緩み、口内に生唾があふれ出てくる。そのご面相は、
人間の女性が見れば一目でドン引き即通報物の気色悪さだった。
そんな中これは人助けなんだからいいよね! と意を決した彼はおもむろに
ベルトを外したジーパンを下着ごとずり下ろすと、彼女の秘部を覆う腰布をめくり上げ、
潤むそこを指でおっかなびっくり弄り回しつつ未開封の皮付きウインナーを
拙い腰使いで押し付けた。
ぷつり、と何かが千切れるような感触とともにわずかに漏れ出たものが下半身の体毛を染める。夫も連れず一人で居たからもしやとは思っていたが、やはり彼女は独身のユニコーンだったのだ。
「こんなキモメンが処女奪っちゃってサーセンwフヒヒヒwwww」
処女厨というわけではないが、やはり自分が初めての相手だというのは嬉しいもので、
ついつい気色悪い笑いが漏れてしまう。
「ん……ううん……」
熱で意識が朦朧としていても、処女を破られて流石に反応したのだろう。柳眉を顰め
身じろぎした彼女に一瞬肝を冷やしたが、幸い目を覚ますことは無かったのでほっと
胸を撫で下ろしたヒロシは、調子に乗ってニタニタと悪戯心を出すとキスを敢行した。
魔物娘は男に無条件で好意を持ってくれると頭ではわかっていても、実際睡姦などに
走っていれば怒られやしないか緊張するものだ。それが非モテのブ男ならなおさらである。
「……ふう、脅かすなんてユニコーンさんはイケナイ娘だな。そんな娘にはチューしてやる」
厚ぼったく醜い肉塊と、比べるのもおこがましい可憐な唇とのドッキング。
そして鼻息荒く割り入れられた軟体動物のような舌が、彼女の並びよく揃った
白い歯をこじ開け、無意識に絡みつく桜色の舌をはじめとする口内へ汚らしい唾液を
流し込みながら蹂躙する。まるで口マンコをクンニしているようで興奮が治まらない。
次いで彼は、種付けを済ませるべくピストン運動を開始した。
「……しろ……婚しろ……結婚しろ、結婚しろ! 結婚しろ!!」
ヒロシは叫んだ。欲望に突き動かされるまま何度も、何度も腰を振って、目の前の雌を
独占する言葉を贅肉まみれの腹を叩きつけ、彼女の肉体へ刻み込むように叫んだ。
乳飲み子が糧を求めるかのように吸い付いてくる肉穴の途方も無い快感と、
ついに童貞を捨てた高揚を種火として、ヒロシは今までの人生で密かに自身を
苛んできた性的な劣等感を力に変えると、側位で繋がったままつぶれた草の汁で
衣服が汚れるのも構わずに腰を振り、またたくまに登り詰める。
「────ウッ!」
女の胎内へ、インキュバスと比べたら雀の涙ほどのささやかな子種が解き放たれた。
だがそれは普段風俗に行く勇気も無くゴミ箱を妊娠させるしか能が無かった精液が、
遂に本来の役目を果たした瞬間だった。
オナニーなどとは比べるべくも無い快楽と、子種を注ぎ込んで処女地を征服したという
雄の本懐を遂げた満足感に息を吐いた彼は、ふと目の前の彼女がこちらを見つめていることに気づき凍りついた。
「────よろこんで」
一秒が永遠にも思えるような沈黙。だが彼女はこちらを責めるでもなくにこりと微笑むと、
肯定の言葉を発した。
「……………………へ?」
遅まきながらその意味に気づいたヒロシは、鳩が豆鉄砲食らったような間抜け面から一転、
驚愕の叫びを上げる。
「ええええええええええええええええええええええええ!? マジっすか!?」
「だ、だって……あなたは私を介抱してくださった恩人ですし、
童貞だって捧げていただきました。それにあんなにも情熱的に
チンポで口説かれたら落ちない女は居ませんわ」
────この日、ブ男でキモオタで三国一の果報者の阿藤ヒロシとユニコーンのマリアは、
長年連れ添った純潔と引き換えに人生の墓場(結婚)という名の楽園へ足を踏み入れた。
□□□□
「────フヒヒヒwwwwマリア、ザーメンで子宮をパンパンにされる気分はどうかね?」
「あっ、んっ、はあぁん! 素敵です! 最高ですぅ! もっともっと中出しなさって
マリアを孕ませてぇ!」
満月の綺麗な晩、夫婦の寝室に激しく肉を打ち付ける音とじゅぶじゅぶという水音がこだまする。妻であるユニコーンは、“二人”の夫に挟まれて両方の雌穴を散々に犯されていた。
二人が一夜にして結ばれたあの日、魔界熱によって発散される大量の魔力に晒された
ヒロシはたちまちインキュバスへ変じ、それまでの劣等感を払底するに充分すぎるほどの逞しい逸物を手に入れた。
それからというもの、自信をつけた彼はマリアの後ろの処女を奪うだけに飽き足らず、
触手薬や分身薬などの魔法薬へ手当たり次第に手を伸ばし、夫婦性活の充実に血道をあげていた。いまや彼女の穴で夫のモノを味わっていない場所など存在しないほどだ。
────びゅるるるるるるるるるるるるっ!
前後の子宮口へめり込んだ亀頭から、もう何度目になるのかもわからない精液が勢いよく放たれる。
ピストンのタイミングこそ不揃いだったが、流石は同一人物。二つの逸物から同時に注がれた
ヨーグルトのように粘っこくずっしりと重い黄ばんだ子種は、行き場無く子宮の中で渦巻き
そのサイズを臨月に迫ろうかという程に膨れ上がらせてゆく。
これだけ中出しの洗礼を受け続けていれば、もはや妊娠するのも時間の問題であろう。
「マリアたんちゅっちゅするおw」
「ではおっぱいをいただくおww」
「ケツマンコでも種付けアクメ決めさせていただくおwww」
敏感な入り口を前から後ろから小突かれて、溢れんばかりの愛にその美貌を蕩けさせるマリア。
「はい! オナホ嫁のマリアを存分にお使いくださいませぇぇぇぇ!!」
彼女は新たに現れた夫の分身たちに桜色の可憐な唇とたゆんたゆん揺れる豊満な乳房、
今までの夫婦性活ですっかり開発されきった後ろの窄まりを貪られ、幸せの絶頂へ導かれた。
おわり
完全に統合された少し未来のお話です。
「……もう一杯」
「マリア、いい加減にしな。いったい何杯飲んだと思ってるんだい?」
とある繁華街の酒場に、朝も早いうちからグラスをぐいぐい傾けるユニコーンの姿があった。
彼女の名はマリア。近頃の魔物にしては珍しくいい年齢こいていまだに独身かつ処女である。
「うるへーばーろー、酒くらい好きに飲ませろってんだ!」
「男を取られて荒れるのはわかるけど、朝っぱらから押しかけてくるんじゃないよ!
あたしと旦那の飲む分が無くなっちまうだろうが!!」
身体を壊しかねない勢いで酒瓶を空ける彼女を見かねたオーガの女将は、カウンターに
ちょっとした山脈を成す空き瓶を押しのけるようにしてマリアの首根っこを引っつかむや、
ゴミでも捨てるような気軽さで表へ放り出すと、春先とはいえいまだ冷たいバケツの水を
情け容赦なくぶっ掛ける。
「魔界熱に罹ってるみたいだし丁度いいだろ? さあこれで頭冷やしたら家帰って寝な」
女将はさもめんどくさそうに言い捨てると、ジパング産まれの夫がアカオニの祖母から
暖簾分けされたという店の引き戸をぴしゃりと閉ざし、朝寝へとしゃれ込んだ。
それにしてもいくら魔物が丈夫だからとはいえひどい仕打ちである。
ずぶ濡れのマリアは泣いた。
壁越しにも聞こえてくる女将夫婦のケダモノじみた幸せ一杯な嬌声と、今の自分の境遇を
比べれば比べるほど惨めになってしまう。
────それにしても、ユニコーンにとって生きづらい時代になったものね。
死んだ魚のようにどろりと濁った瞳で、滴る水滴をぬぐおうともせずにポクポクと
その場を後にする彼女は誰に聞かせるでもなくつぶやいた。
本来ユニコーンは相手を見つけるまで処女を守り通し、童貞の男しか相手にしない魔物娘だ。
魔王の支配が完全ではなく、魔物娘から男が生まれなかった頃ならまだよかった。
ところが種族が統一され、性に奔放な魔物娘に兄弟が生まれるようになって状況は一変した。
元が近親相姦の禁忌も無く平気で父親とすら交わろうとする魔物娘だ。それが頼もしい兄や
可愛い弟を得ればどうなるか。もちろん全部とは言えないが、実の兄に恋慕の情を抱いたり、
将来の嫁のために弟を鍛えてやろうと童貞を奪い、つい勢いで本気になってしまう姉妹が続出したのだ。
隣の家には仲良しな幼馴染だって居る。もっと外へ目を向ければ近所のきれいなお姉さんや、学校の美人先生がてぐすね引いて待ち構えている。
かくしてこの世界で童貞は絶滅危惧種にも匹敵する貴重な存在になってしまったのだ。
「どちくしょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
彼女は叫んだ。やっと見つけた童貞坊やを目の前で姉に掻っ攫われた怒りと悲しみを
吐き出してしまうかのように。
彼女は走った。道行くカップルを押しのけ掻き分け、砕け散った恋を振り払うかのように。
「────おおおおおおおああああああああああああああああああああああああ!?」
────そして勢いに任せて町はずれの小山へ駆け上った後、うっかり崖から転落して
急斜面を転がり落ち、ふもとの草原へ叩きつけられた。特撮番組の怪人もかくやという
見事な落ちっぷりである。これで最後に爆発すれば完璧だ。
全身打撲と骨折擦り傷その他もろもろの負傷で半死半生の体(てい)を成すぼろぼろのマリア
は、最後の力を振り絞ってユニコーン十八番の強力無比な治癒魔法を唱えると、
無茶がたたって悪化した魔界熱の症状もあり、糸の切れた人形のようにぷっつりと意識を手放した。
□□□□
恵みの太陽が天頂へ昇り燦燦とその日差しを降り注がせる頃、清々しい風に吹かれて
ざわめく草原に立っていた男は、前方に一人の美女が力なく横たわっているのを見て取った。
普段なら心地好く頬を撫でる春の息吹に靡ききらめくだろう真珠色の髪は、
今や紅潮した肌に浮き出る汗に張り付き、世の男たちを魅了してやまない
そのメロンのように豊満な乳房は、苦しげな呼吸とともに上下している。
その髪の色が物語るとおり日本人離れした外見の彼女は、女優やアイドルにも
そうは居ないほどのすこぶるつきの美女である。苦しげに臥せってさえ居なければ道行く男が
軒並み振り返ることだろう。
だが少し待って欲しい。確かに輝くような美貌や大きなおっぱいは大事なポイントだが、
注目すべきなのはそこではない。
彼女の短い毛に覆われた耳は馬のように長く伸びており、額からはドリルのように捩れた
一本の角がそそり立っている。おまけに下半身は御伽噺の王子様が跨っていたら
さぞ映えるだろうという毛並みのいい白馬そのものなのだ。
そう、魔物娘版ユニコーンである。
この事実を前にして男の内部でスリー、ツー、ワンとスイッチが入り、天井知らずに
昂ぶるテンションに突き動かされるままに両の拳を振り上げて高らかに叫びを上げる。
「────図鑑世界、キタアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
さて、何ゆえこんなことになったのか読者諸兄には説明しておかねばなるまい。
デブ、不細工、童貞と三拍子揃ったどこに出しても恥ずかしいキモオタであるところの
この俺阿藤ヒロシが、近年の不況のあおりを受け、生活の糧としていたバイト先を
クビになったのがそもそもの原因だ。職探しの中、暇をもてあました俺がたまたま立ち寄った
ブック○フの百円コーナーで、なんとなく手に取った魔導書ネクロノミコン。
「イグナイイ・イグナイイ・トゥフルトクングア・ヨグソトース!」
などとそこに書かれていた内容を悪ふざけで実行してみたところ、魔方陣からあぶくのように
湧き出した虹色の球体に導かれるままに俺の肉体はフローリングの床から
果てしなく広がる草原、それもこの俺が愛してやまない同人誌である
『魔物娘図鑑』の世界へと転移してしまったのだ。
ブックオ○スゲー。そしてありがとうコリン・ウィルソンとテオバルドス爺さん。
以上、回想終わり。
まあ呼びかけに応えて俺をこの世界に連れてきてくれたヨーグルトソースだか
チリソースだかいう神様にも感謝したほうがいいのかもしれないが、あの神話の神様は
大抵が人間の価値観ぶっちぎったマジモンの超越存在なんで、人間如きがお礼言っても
言わなくても気にしないだろう。たとえば画面の前のキミが道端の蟻んこ、
もしくは微生物から彼らの言語でお礼を言われても理解できんだろう? そういうことさ。
……なんてやってる場合じゃねーよ! と我に返ったヒロシは、美しく愛らしい魔物娘の
跋扈する世界へ足を踏み入れた喜びを全身で表現するのもそこそこに、
部屋で履いていたままの健康サンダルをぺたぺたと鳴らして眼前のユニコーンへ
駆け寄ると、怪我をしていないか確かめるために診察の真似事をした。
幸い一通り診てみたが、熱がある以外に彼女の身体には傷一つ無い。
「……どうやら病気か何かみたいだな」
着の身着のままでこの世界へやってきた彼には薬一つの持ち合わせも
病に効く薬草の知識も無い。だが魔物娘の罹る病気なんぞ、だいたいヤってれば
治ってしまうものだ。
同人誌で得た知識を思い出してほくそ笑むヒロシは、無防備な姿を晒す
極上の雌を前にして、穿き古しのジーパンの中で二十数年の人生を経ていまだ
純潔を保っている荒ぶる息子を解き放つのを今か今かと待ち望んでいた。
「やっべえ、傍に居るだけでムラムラしてきたw クンクンするくらいセーフだよね?
……スー、ハー、スーハー。うはwwwwすっげえいい匂いwwww
これは味もしっかり見ておかねば! ペロペロ! ユニコーンさんペロペロ
ジュルジュルwwwwドュフフwwww」
脇や腰布の中で思いっきり深呼吸するだけに飽き足らず、脇に滲んだ汗を舐め取ったり
おっぱいをモニモニと揉みしだいたり、挙句の果てに舌のお口へファーストキスを
捧げてしまったりともうやりたい放題。
地球では言葉を交わすことさえ夢のまた夢という程の美女で童貞を捨てられるという期待に
自然と頬はだらしなく緩み、口内に生唾があふれ出てくる。そのご面相は、
人間の女性が見れば一目でドン引き即通報物の気色悪さだった。
そんな中これは人助けなんだからいいよね! と意を決した彼はおもむろに
ベルトを外したジーパンを下着ごとずり下ろすと、彼女の秘部を覆う腰布をめくり上げ、
潤むそこを指でおっかなびっくり弄り回しつつ未開封の皮付きウインナーを
拙い腰使いで押し付けた。
ぷつり、と何かが千切れるような感触とともにわずかに漏れ出たものが下半身の体毛を染める。夫も連れず一人で居たからもしやとは思っていたが、やはり彼女は独身のユニコーンだったのだ。
「こんなキモメンが処女奪っちゃってサーセンwフヒヒヒwwww」
処女厨というわけではないが、やはり自分が初めての相手だというのは嬉しいもので、
ついつい気色悪い笑いが漏れてしまう。
「ん……ううん……」
熱で意識が朦朧としていても、処女を破られて流石に反応したのだろう。柳眉を顰め
身じろぎした彼女に一瞬肝を冷やしたが、幸い目を覚ますことは無かったのでほっと
胸を撫で下ろしたヒロシは、調子に乗ってニタニタと悪戯心を出すとキスを敢行した。
魔物娘は男に無条件で好意を持ってくれると頭ではわかっていても、実際睡姦などに
走っていれば怒られやしないか緊張するものだ。それが非モテのブ男ならなおさらである。
「……ふう、脅かすなんてユニコーンさんはイケナイ娘だな。そんな娘にはチューしてやる」
厚ぼったく醜い肉塊と、比べるのもおこがましい可憐な唇とのドッキング。
そして鼻息荒く割り入れられた軟体動物のような舌が、彼女の並びよく揃った
白い歯をこじ開け、無意識に絡みつく桜色の舌をはじめとする口内へ汚らしい唾液を
流し込みながら蹂躙する。まるで口マンコをクンニしているようで興奮が治まらない。
次いで彼は、種付けを済ませるべくピストン運動を開始した。
「……しろ……婚しろ……結婚しろ、結婚しろ! 結婚しろ!!」
ヒロシは叫んだ。欲望に突き動かされるまま何度も、何度も腰を振って、目の前の雌を
独占する言葉を贅肉まみれの腹を叩きつけ、彼女の肉体へ刻み込むように叫んだ。
乳飲み子が糧を求めるかのように吸い付いてくる肉穴の途方も無い快感と、
ついに童貞を捨てた高揚を種火として、ヒロシは今までの人生で密かに自身を
苛んできた性的な劣等感を力に変えると、側位で繋がったままつぶれた草の汁で
衣服が汚れるのも構わずに腰を振り、またたくまに登り詰める。
「────ウッ!」
女の胎内へ、インキュバスと比べたら雀の涙ほどのささやかな子種が解き放たれた。
だがそれは普段風俗に行く勇気も無くゴミ箱を妊娠させるしか能が無かった精液が、
遂に本来の役目を果たした瞬間だった。
オナニーなどとは比べるべくも無い快楽と、子種を注ぎ込んで処女地を征服したという
雄の本懐を遂げた満足感に息を吐いた彼は、ふと目の前の彼女がこちらを見つめていることに気づき凍りついた。
「────よろこんで」
一秒が永遠にも思えるような沈黙。だが彼女はこちらを責めるでもなくにこりと微笑むと、
肯定の言葉を発した。
「……………………へ?」
遅まきながらその意味に気づいたヒロシは、鳩が豆鉄砲食らったような間抜け面から一転、
驚愕の叫びを上げる。
「ええええええええええええええええええええええええ!? マジっすか!?」
「だ、だって……あなたは私を介抱してくださった恩人ですし、
童貞だって捧げていただきました。それにあんなにも情熱的に
チンポで口説かれたら落ちない女は居ませんわ」
────この日、ブ男でキモオタで三国一の果報者の阿藤ヒロシとユニコーンのマリアは、
長年連れ添った純潔と引き換えに人生の墓場(結婚)という名の楽園へ足を踏み入れた。
□□□□
「────フヒヒヒwwwwマリア、ザーメンで子宮をパンパンにされる気分はどうかね?」
「あっ、んっ、はあぁん! 素敵です! 最高ですぅ! もっともっと中出しなさって
マリアを孕ませてぇ!」
満月の綺麗な晩、夫婦の寝室に激しく肉を打ち付ける音とじゅぶじゅぶという水音がこだまする。妻であるユニコーンは、“二人”の夫に挟まれて両方の雌穴を散々に犯されていた。
二人が一夜にして結ばれたあの日、魔界熱によって発散される大量の魔力に晒された
ヒロシはたちまちインキュバスへ変じ、それまでの劣等感を払底するに充分すぎるほどの逞しい逸物を手に入れた。
それからというもの、自信をつけた彼はマリアの後ろの処女を奪うだけに飽き足らず、
触手薬や分身薬などの魔法薬へ手当たり次第に手を伸ばし、夫婦性活の充実に血道をあげていた。いまや彼女の穴で夫のモノを味わっていない場所など存在しないほどだ。
────びゅるるるるるるるるるるるるっ!
前後の子宮口へめり込んだ亀頭から、もう何度目になるのかもわからない精液が勢いよく放たれる。
ピストンのタイミングこそ不揃いだったが、流石は同一人物。二つの逸物から同時に注がれた
ヨーグルトのように粘っこくずっしりと重い黄ばんだ子種は、行き場無く子宮の中で渦巻き
そのサイズを臨月に迫ろうかという程に膨れ上がらせてゆく。
これだけ中出しの洗礼を受け続けていれば、もはや妊娠するのも時間の問題であろう。
「マリアたんちゅっちゅするおw」
「ではおっぱいをいただくおww」
「ケツマンコでも種付けアクメ決めさせていただくおwww」
敏感な入り口を前から後ろから小突かれて、溢れんばかりの愛にその美貌を蕩けさせるマリア。
「はい! オナホ嫁のマリアを存分にお使いくださいませぇぇぇぇ!!」
彼女は新たに現れた夫の分身たちに桜色の可憐な唇とたゆんたゆん揺れる豊満な乳房、
今までの夫婦性活ですっかり開発されきった後ろの窄まりを貪られ、幸せの絶頂へ導かれた。
おわり
11/12/24 21:12更新 / elder(エルダー)