Present for you♪
ある日の朝、目覚めたらベッドのすぐそばに見知らぬ宝箱が置いてあった。
まず目の前にある問題について対処、または対策をせずに、先に自分の意識をはっきりと覚醒させる必要がある。冷水で顔をさっぱりさせてから、熱したフライパンでベーコンをカリカリになるまで焼いた後に卵を一つ落としてから皿に盛り、切り分けたパンとホルスタウロス印の牛乳を用意して、簡単で一人暮らしの男らしい朝食を完成させて、椅子に座った。
まず塩コショウの入った瓶を振ってベーコンエッグにちょっとした味付け。フォークで食べやすいサイズに切り分けて、一口。うむ、丁度よい半熟具合で我ながら上出来だ。……そら、独り身だったから自炊の技術は無駄に向上するし、手際も良くなる訳で。しかし毎日自分が作った料理を口にするというのも寂しいのは否めない。だからたまに外食して(特に可愛い、もしくは綺麗な魔物娘がシェフの料理店)、心の潤いを取り戻すのである。
……いかん、朝からしんみりとしてはいけない。人間と魔物娘がごった返す街でも、成人を迎えてから数年間独身で居る者は割りと多い。それは何故かと言うと、学生時代に人間の女性、もしくは魔物娘と親密になりそのまま十八歳の卒業と同時に結婚する、といったこの街ではもはやよくある光景の男側が、たまたま自分ではなかったのだ。ただ、それだけの話である。
…………あれ、このパンしょっぱいぞ。おかしいな、ごく普通の食パンを買った筈なのだが。もしかしてパン屋さんが塩の分量を間違えたかな? でも、それなら昨日食べた同じ食パンはしょっぱくなかったのだが。あっれー、おっかしいなー。
……………………。
さて。
食事を済ませて軽く泣いた後、目覚めてからずっと放置していた問題とここでようやく向き合うことにした。もう十分に意識は覚醒している。
というのも、身に覚えのない宝箱からただならぬオーラを感じるのである。なんだろうか、このオーラ。もしや、殺気……?
まずいな、余計に調べたりするのが怖くなってきたんだが。
しかしここで完全放置を決め込むと俺の身に何が起きるかわかったものではないので、まずは昨日俺が何をしてベッドに飛び込んだのかを考察してみる。
昨日……いや、昨夜だ。思い出せ、思い出せ……。
定時に仕事が終わってから、明日は休日だぜヒャッハー! とテンション高めで酒場で一人酒――いかんまた目頭が――をあおって、いい感じに酔っ払ってから風に当たろうと思って、ちょっと街の外を散歩していたら……。えっと。
先ほど身に覚えがないと言ったが、訂正する。身に覚えあった。街の外を散歩していたら宝箱がぽつーん、とあったのだ。今考えると滅茶苦茶に不自然な場所にあったものだ。普通洞窟の中やダンジョンにあるようなものだが、何故あのような場所にあったのだろうか? しかし酔っ払っていた俺はそんな事を全く疑問に持つ事無く、むしろ喜々としてそれをお持ち帰りした。お宝、ゲットだぜぇー! って感じで帰宅――やべぇ、絶対変な目で見られていたよな……――してから、中身も確認せずにベッドにダイブした。
回想完了。
何やってるんだろう俺は…………。なんというか、自分の頭をぽかぽかして無駄にキモい声で「俺のバカバカ☆」とかやる気にすらなれない。自分自身の行いに普通にドン引きである。独身で童貞をこじらせるとこんな行いまでしでかしてしまうのだろうか?
酔った勢いというのは恐ろしいものだ。俺は誰も見ていないのにうんうん、と頷いてから、ただならぬオーラをさらに感じ取り、思わず中身を確認しようと開け――――閉じた。
なんだ今のは。
本来なら宝箱に入っているはずがないモノが見えた気がする。わかりやすくいえば、人間っぽいのが入っていた。
あれか? もしかして俺は誘拐事件に巻き込まれているのか? 宝箱の中に子供を押し込んで、人身売買が行われていた……? いやしかし、なら昨日あんな道端に置いてあったのは何故だ?
だとすると、これは…………魔物娘?
俺はもう一度確認の為にほんのすこーしだけ宝箱を開けると、
「残念! ミミッ――――」
即閉じる。
すると宝箱が、がたんがたんと暴れだした。
「ちょっとぉっ! すぐ閉じたらダメでしょー! 反則だよー!」
しかも宝箱が抗議してきた。……いや、正確には宝箱に入った少女が、だ。宝箱に入った少女が暴れているこの光景。
……怖いな。あと、反則ってなんだ。
ともかく、宝箱の中身は確認した。金銀財宝、一度装備したら外れない呪いの鎧、256回戦闘しないと状態異常のオンパレードが消えない盾、ただのからっぽな宝箱じゃなくて、魔物娘のミミックが入っていたのだ。
これでもまぁ、俺も物心ついた頃には魔物娘が普通に居た人生を送ってきたので驚きはしない。なんとなーく、ミミックとか入っていそうだなぁとは思っていた。予想は的中。
「ほらぁー! もう一度開けてよぉっ!」
「断る」
ミミックだとわかっていて何故宝箱を開けなければならないのだ。
「こ、断るって」
「君の魂胆は見えているよ。開けた瞬間に宝箱の中に引きずり込むんだろう?」
「うっ、……わ、わからないよ?」
今明らかにうっ、て言っただろ。つまりそれは図星って事だろうに。
「信用出来ませんな」
「ダイジョブダイジョブ」
「何を根拠に言っているんだか」
「ミミック、ウソツカナーイ」
無駄にカタコトな時点で信用するには値しないっつの。
っていうか、傍から見れば宝箱と会話しているんだよな……。家でよかった。
「とにかく、俺はもう宝箱を開けないから」
「昨日の夜いきなり自分の家にお持ち帰りしておいて、開けないなんてひどーい!」
「ぐっ、いや、それはだな……」
それについてはつい先ほど十分に反省したので、ここは寛大な心で……。
「やだ! お兄さんに開けてもらうまでここを動かないからっ!」
「…………えー」
「お兄さん、えーって言える立場? これってボク次第で誘拐事件、それか誘拐未遂事件に出来るよね?」
「それだけは……ッ! それだけはマジ勘弁してください……ッ!」
宝箱に向かって土下座する俺。傍から見れば以下割愛。
「ねぇ、ねーぇ」
がたんごとんと宝箱を揺らしながら中に入っている少女が話しかけてくる。
「何?」
「おなかすいたー!」
「はぁ、そうですか」
がたんがたん。
「ボクにもご飯ちょうだい! さっきの美味しそうな匂いでお腹ペコペコなの」
「……嫌だと言ったら?」
がたんっ! がたんっ!
大きな音を立てて宝箱がこっちへ、ってこっちくんな!
「このままお兄さんを食べる! もちろん性的な意味で!」
「ま、待て、作るから! 作るから!」
一体どうやって動かしているのか、宝箱がこっちに向かって動くのは完璧なホラーだった。あのまま接近を許していたら、俺の身が危なかっただろう。
腹を空かした魔物娘は危険だ。どんな種族であろうと、空腹を満たすために凶暴化する。これで本能の忠実な種族だったら既に俺は美味しく頂かれていただろう。それこそ朝起きたら、女の子にめっちゃ犯されていました、みたいな。
「はやく、はやくっ」
「はいはい、急かさないの」
細かく切ったベーコンを炒めてから、卵を落として半熟に。そしてそれを食パンの上に乗せれば出来上がり。
「飲み物は牛乳でいいか?」
「うん!」
がたんっ。
元気よく宝箱が跳ねる。元気だな。それはとてもいい事だと思うが、床に傷痕が……。
「あの、床に傷がついちゃうんで……」
「あ、ごめんね!」
がたっ。
「……もういいや」
どうせ、格安で買った家だしな。この街は人口が日に日に増えていくから、小さな一軒家なら割とリーズナブルな値段で買えたりする。俺の場合は給料三か月分、一括現金払いで済んだ。小さな傷くらいなら気にしないのが大人である。
出来上がった朝食を何処に置けばいいのかわからず、とりあえず宝箱の前に――近づいた瞬間に襲われそうでびくびくしながら――置いた。
「出来たよ」
「うんっ」
…………。
「出来たよ?」
「うんっ」
………………。
「何で出てこないの?」
「開けて♪」
「その手に引っかかると思ったか。断る」
「えぇーっ!」
本当に引っかかると思ったんかい。なんか、思ったよりもミミックという魔物娘は単純なのだろうか? それとも、この子だけ?
「開けてくれればぁ、ボクの可愛い顔が見られるんだよぉ?」
「可愛いか可愛くないかの問題じゃなくてだな」
「大丈夫大丈夫♪ ちゃぁーんと、優しくしてあげるからっ♪」
「優しくするか激しくするかの問題でもなくてだな」
「むー、お兄さんわがまますぎっ」
それを君が言うかね。
と反論しそうになったが、元を糺せば俺が昨夜酔った勢いでお持ち帰りしたのが悪いのでぐっとこらえた。俺は大人だ。物事は常に冷静に判断しなければならない。
――――だって、ミミックの箱の中に連れて行かれたら、一生出られないんだろ?
ダークプリーストとか、ダークエンジェルが沢山いるパンデモニウム的な場所で一生交わりっぱなしなんだろ?
そしてそんな閉鎖空間で俺に乱暴する気だろう!? 教科書(魔物娘向け保健体育)みたいに!
仕事の事もあるし、いきなり行方不明になるのはな……。
だから俺は頑なに宝箱を開けるのを拒否しているのだ。伊達に沢山の魔物娘が生活している街で生まれた人間ではないのだ。まだまだ新種は居るが、少なくとも100種以上の魔物娘の生態は、一般常識として教育されている。
「とにかく、俺は開けないからな」
「……ぶー。いつか絶対に……ぶつぶつ」
何やらぶつぶつと言っているが、声が小さくて聞こえない。
やがて宝箱が開き――俺は条件反射でしっかり三歩分くらいはバックステップをして、身構えた。
「食事を取るだけだもん!」
と、怒ってしまったのか不機嫌そうに言ってから、ほんの少しだけ開いた宝箱から手がにょき、と出て皿ごと宝箱へ。
「もぐもぐ………………一人暮らしが長いから、料理上手だね」
「ぐは――ッ!?」
強烈な言葉の一撃を食らった俺はその場で膝をつく。
言っちゃいけねぇ。それだけは言っちゃいけねぇ……!
ほらもうまたなんか目から汗が出てくるー!
くそっ、部屋の隅っこでうずくまってしくしく泣くぞ。いい歳した大人の男がみじめに泣く情けない姿見せるぞこんちくしょう。
「ふんっ、だ。仕返しだもん」
今まで一人で生きてきた苦労と、知り合いが悉く魔物娘と結婚していく孤独。それらが年齢を重ねるごとに積り、気が付けば昔よりも簡単に泣きやすく脆くなっている心。
泣くのが情けなくてさらに泣くという悪循環。
……ここまで見ればなんと悲しい男なのかと思われるが、至極簡単に言えば自ら魔物娘の恋人になろうとする努力をせずに過ごしてきた男なだけである。
そう考えると、今この場には宝箱に隠れている魔物娘が居る。居るというか、俺が連れてきた……いや、正確に言えば拉致ってきてしまった。
当の彼女はというと、本気で嫌がっているようには聞こえなかったどころか、性的な意味でお腹がすいたと要求してきた。
彼女自身がどう思っているのかはわからないし、ただ単に精が欲しいだけなのかもしれないが、俺にとってはやってきた最後……かもしれないチャンス。チャンス……なのだが。
彼女の宝箱の中へ入ってしまえば、二度とは戻れぬ魔境。現世なんて忘れて二人でずっと交わりっぱなしのヤりっぱなし二十四時間三百六十五日。
「…………はぁ」
今すぐその決断をしろだなんて、出来る訳がないだろう。
ミミックからお皿を回収して、適当に洗ってからリビングに戻る。いつもならここで読みかけの小説を消化するか、もしくは新聞を読んで暇をつぶす。趣味らしいものは残念ながら持ち合わせておらず、いつも怠惰な休日を過ごすのである。
しかし今日はいつもと違う。我が家に魔物娘が居て、朝食を食べた後もその場から一切動いていない。つまり彼女は諦めておらず、帰る気などないのだろう。
これは彼女と俺の我慢比べで、勝負はもう既に始まっているのだ。
「ねぇ、お兄さん」
「なんだ?」
「自己紹介してなかったよね。ボクはミミックのティータ。ティータちゃんって呼んでね♪ それで、お兄さんの名前、教えてほしいな」
「あぁ、俺はクロードだ」
「えへへ。じゃあ、お近づきの印にえっちを」
「しないよ」
「……ぶー」
お近づきの印にセックスって、どういう交流なんだか。
人間と魔物娘では思考の違いが大きい。教会が絡んでいる反魔物国家の住民のようなお堅い考えを持っている訳ではないが、所構わず誰とでも食事と称してセックスするというのは……、魔物娘と同じ学校へ進んだ身でもわからない。
いつでも人間は魔物娘にやられる側で、ヒエラルキーも人間より上に位置するのだろう。祝福を受けた勇者なら対抗は出来るかもしれないが、親魔物国家、というよりも明緑魔界であるこの街に主神の加護が得られるなどありえないだろう。つまり、ここで生まれた人間は常に捕食される運命にあるのだ。
肉を喰らう魔物よりも、性的に襲われて食べられる方がまだ圧倒的にマシだが。
果たして、彼女、ティータは俺を食物として見ているのか、それとも……。
「ねぇ、そろそろ開けてよぉ」
「断る」
条件反射で俺は即答する。
「おなかすいたのー!」
「さっき食べたでしょ……」
「違うもん! ボクが欲しいごはんはぁ……♪」
「…………断る」
生まれてこの方、明緑魔界から出た事のない人間だ。それがどういう意味なのかはわかる。
が、ここは断固として……だな。
「あっ、ちょっと揺れた? 揺れたよね?」
「揺れてない」
揺れていない。断じて。断じて揺れていない。うん、大丈夫だ。
「開けてくれたらイイコトしてあげるよ♪」
「断る」
「おなかすいたのぉー!」
「だからさっき食べたでしょ……」
「そうじゃな……ってこれ、無限ループだよ」
「うむ」
「わかっててやったの!?」
「うむ」
ティータのリアクションが可愛いから、ついついやってしまったが罪悪感はない。
「ひどいよー! 鬼畜だよぉー!」
「酷い言いがかりだ。それこそ」
「もう、そんな議論はいいから。早く、早くごはん♪」
「蛇口を捻ったら水が出るような代物じゃないの」
「ボクだって知ってるよ? だから、まずはその気にさせなきゃね♪」
「その宝箱に入ったままでどうするんだ」
何か特殊な魔法でも使うのだろうか? まさか、とは思うが一応俺は身構えた。
「あんっ♪ あっ♪ ああんっ♪」
……のだが、ティータが選んだ手段は喘ぎ声を聞かせてその気にさせるという作戦だったらしい。
ちょっと色っぽいかなぁとは思うが、俺の股間は、
「…………シュールすぎてぴくりともしない」
「ひどっ!?」
だって、なぁ?
自慢にもならないし、むしろ自虐っぽいのだが、俺は今まで自慰にはエロい本を読みながらしていたので、実際にこの目で見ないと反応はしない。
――――訂正すると、ほんの少し反応した気がする。しかしそれをティータに報告するつもりはない。
「…………」
「…………?」
さっきまでアピールしてきたのに、妙に大人しいな。もしかして、空腹が満たされた(食事的な意味で)から眠くなって寝ているのか?
だとしたら、このまま宝箱ごと元の位置に戻――――
「いつもこの本でひとりえっちしてるの? さっきのはこれを音読してみたんだけど」
「ちょっと待て今何してる」
席を外している間になに人の家の本棚探ってやがるんだこのミミックは……ッ!
しかも、一人暮らしで隠す必要もないのに、無駄に凝った場所に隠している本をあんな短い間に探り当てたというのか。なんなんだ、魔物娘のカンか。エロの匂いをかぎわけて見つけたのか。
…………しかし、おかしいな。本棚を見ても荒らした形跡はないし、物音もしなかったはずなのだが。
嘘かもしれない、という願望に近い予想を立てて実際に隠してある場所を探ってみると…………。
『サキュバスのお姉さんにお・ま・か・せ♪』
あるじゃん。
「そこに隠してあるんだね」
「――――ッ!?」
しまった!? これは、カマをかけられたのか……!
っていうか、閉じた宝箱からどうやって見てるんだよオイ!
「お兄さんは夜な夜な使い古したえっちな本で一人寂しく励んでるんだね……」
「おいやめろ、そんな憐みに満ちた声で言うな」
これ以上俺を精神的に追い詰めてどうする気だ。折角の休日なのに、何故俺は心が折れそうになっているのだろうか。
「でーもー♪」
「ん?」
「今夜からはもう大丈夫♪ ボクがお兄さんの鬱憤を受け止めてあ」
「右手が恋人なんで」
「ボク右手以下っ!?」
そうは言っていないのだが……。しかし、リアクションが面白いのでそのままにしておこう。
「…………もん」
「?」
「ぜ……いい……もん」
何か小声で独り言をつぶやいているのだが、聞き取りにくい。
「どうした?」
「絶対ボクの膣内(なか)の方が気持ちいいもんっ!!」
「デカい声で何を言ってるんだよ!?」
がたん、と一歩宝箱が俺の方へ近づいてくる。
流石ミミックというところか、宝箱の扱いはすごい。無駄に。
だが今は感心している状況じゃない。どうやら俺は彼女の魔物娘としてのプライドに火をつけてしまったらしい。
「もう、許さないから……」
「待て落ち着け」
がたん。
宝箱が大きな音を立てて俺の方へと近づいてくる。
「さっきのは言葉のあやだ、決して俺は君が」
「絶対気持ちいいもん……ボク抜きじゃダメな身体に調教するもん……」
「ダメだ話通じねぇ!」
ど、どどど、どうすればいいんだ!? このままだと俺は宝箱に引きずり込まれて、ティータと仲良く二人でオールナイト、もといオールタイム交わりっぱなしだ。
「大丈夫だよぉ……。最初は優しくシてあげるから……」
「待て、最初ってなんだ!? その後はどうなっちまうんだ!?」
「…………えへ、じゅるり」
「ひぃぃぃ――――ッ!?」
なんか宝箱からにょきっと! にょきっと足が生えたんだが――――ッ!?
こええ――――! 超こえええ――――ッ!!
後ずさりしようにも、壁に当たってもう逃げられない。まずい。まずいまずい。
何か、何かないのか……!?
「それじゃあ、いっただっきま――――」
「これだッ! そぉいッ!」
奇跡的に近くにあった工具箱に南京錠があったのでそれを手に取り、すぐさま外から鍵をかける!
「あれ、あれっ!? 開かない! 開かないよぉ!」
突然の事に足がひっこみ、さっき以上にどったんばったんと暴れまわる宝箱。あぁもう床が傷だらけだ。いつか修繕しないといけないな、これ……。ジャイアントアントのリフォーム屋さんにお願いしないと。
……それにしても、何故に南京錠があったんだ。
えっと……? そうだ。貴重品を入れているルーン文字のダイヤルロック式の金庫に取り付けようと思っていたんだ。この街は治安がいいが、用心しておくに越したことはないからな。
「……ふー」
とりあえず、これで一安心といったところか。ミミックの宝箱にあるとんでも空間で一生を過ごすハメになるのは回避出来た。全く、休日はまだ始まったばかりだというのにもう疲れてしまったではないか。
「…………」
暴れていたティータも落ち着いたのか、静かになった。ティータには悪いと思っているのだが、こちらにも色々と都合があるので、そこの所は勘弁してほしい。
さて、とりあえずティータの事はこれでいいだろう。今朝の朝食で食料が心もとなくなったし、買い出しにでも行こう。
買い物から帰ったらこの南京錠も外さないとな。いつまでもずっと鍵をかけていたら可哀想だ。
「ごめんな、ティータ。今だけはそこでじっとしていてくれ」
「…………」
「買い物に行くから、帰ってきたら外すから」
「…………」
「…………?」
返事がない。もしかして、それほどに落ち込んでしまったのだろうか? ううむ、まずいな。身の危険を感じたとはいえ、流石に外から南京錠で鍵をかけるのは酷かったか……?
そう思いながら、金庫のダイヤルを回して財布を取り出そうと開けると、
「いつからミミックが宝箱にしかいないと錯覚していた……?」
うん。
確かに、俺は少し大きめの金庫を買った。お金だけじゃなくて、貴重品や思い出の品も一緒に入れてしまおうと思ったからだ。子供ぐらいなら余裕で入れそうな金庫だが……。
「……どうやったの?」
「ボクたちミミックは、入られる箱なら何処にでもワープ出来るんだよ? えっへん」
身体にリボンを装飾したような恰好のティータが、胸を張ってぷるん、と小さい身体にしては大きめの胸が揺れた。
っていうか、その恰好はなんだ。服じゃないだろうそれ。
頭の大きいリボンが可愛いと思うが、それは服じゃない。全裸リボンだ。やばい、ミミックってこんな痴女だったのか。
「ねぇ、どう?」
「なにが、かな」
「ボクの顔とか、身体とかぁ……♪」
ええいやめろっ、そんないやらしい顔で胸を見せつけるように揺らすんじゃない! 見た目が子供なのにどうしてそこはそんな大人なんだよ。
「どう? 正直に『教えて』?」
「ぐっ」
なんだ……? ティータの胸から目が外せない。手でゆさゆさと揺らしているその果実がとても美味しそうに見えて、手を伸ばしたくなる。だが、それが出来……あれ? 俺の身体、動かねぇ!
「……可愛い、よ。正直言って俺のタイプだ(何やったんだ、俺の身体が動かないぞ)」
「きゃーっ♪ ボク嬉しいっ♪」
あっるぇー!? 思っている事と口にしている事が全然違うのだがー!?
そう思っても思考はなんだかぼーっとしてきて、ティータの顔を見ていると本当に心から可愛いと感じてきた。最初はすぐに宝箱を閉じてしまったが、こんな可愛い顔してたんだな……。顔を見るだけなら、あの時開けてしまえばよかった。
……じゃ、なくて!
「それに、身体がそんなに小さくて可愛いのに、胸がそれなりにあってたまらないな(何か魔法を唱えただろ!? 今すぐに解除してくれぇ!)」
「やぁん♪ クロードさんったら♪ これでもボク、二十二歳だよ?」
「そうなのか。立派な大人だな(それはいいから、早く解除してくれ!)」
くそ、口がどんどんと違う事を口走って一向に解決出来てねぇ。というかこれ、まずい。身体が動かないわティータを見ていると凄くドキドキしてくるわ、絶対に魅了の魔法と痺れの魔法を唱えただろ。
心の中で身の危険を感じている俺をよそに、ティータは金庫から身を乗り出して俺の股間に手を……って、おいどういう事だこれは!?
「クロードさん、気づいてる? もうこーんなに固いよぉ?」
「うっ、いつの間に……(いやこれ魅了の魔法のせいだろ)」
「我慢はよくないよね♪ 流石にこの体勢じゃえっちは出来ないから、ボクの手とお口で我慢して……?」
「いいのか……? もう、我慢できそうにないよ(待て待て待て待て! 勝手にコトを進めるなぁーッ!)」
俺の股間をさすっていたティータは、さっと手際よくズボンと下着を下して目を輝かせた。
っていうか、俺金庫を開けた体勢のままで股間を晒しているとかどんな罰ゲームだよおい。
しかしティータはそのまま魅了の魔法で勃起した俺のを手で優しく包み込んだ。
「凄い……♪ クロードさんのがちがち♪」
「あ、あぁ……。ティータの手だけでも気持ちいいよ(あぁぁぁやばいやばい)」
「やん、ぴくって跳ねた♪ 暴れん坊さんなんだから♪ はぁぁぁ……うっとりしちゃうくらい、いいおちんちんだね……♪」
「気に入ってくれたかい?(うわぁああっ、なんか手が冷たい! 背筋がぞくぞくするっ)」
「うんっ♪ 今日からは、もう右手なんか使わせないんだから♪ ボクが、クロードさんのおちんちんのお世話、しちゃうからね……♪」
「嬉しいよ……。ありがとう、ティータ(あ、あかんて! それ以上はもうあかんて! お、おかあさぁぁあん!)」
口を開けばどんどん本心とは違う言葉が出て、ティータを喜ばせる事ばかり。
身体が動かないし口は欲望に忠実だし、俺、現在進行形でピンチ。
「はぁぁ……♪ 美味しそうなおちんちん……♪ 硬いしおっきいね……ふーっ」
「ティータがえっちな身体を見せるから、こうなっちゃったんだよ(あぁっ、そんな息を吹きかけながらゆっくりしごかないでくれぇぇ)」
「こんなおっきいの、ボクの中に入るかなぁ……?」
「大丈夫さ。それに、ティータがやめてって言ってもいっぱい犯すからね(うわあああああ!! 俺は何を口走ってるんだよぉぉっ)」
「言わないよぉ♪ きつくっても我慢できるから♪」
「ハァ、ハァ……。ティータ、そろそろ……(そろそろ解放してくれぇ)」
そう考えたって、やっぱり俺の口から出るのは……。
「ティータの口で、してくれないか……?(ですよねー! ちくしょうっ)」
「うん♪ うん♪ もうボクもお口いっぱいにクロードさんのおちんちん、食べたい……♪ 初めてだけど、気持ちよくしてあげる♪」
魅了で欲望に忠実な言葉で気を良くしたティータは、俺の目をじっと見つめたままゆっくり、ゆっくりと俺のペニスに近づいて、口を……開け…………て。
「いただきまぁす♪ あ……むっ♪♪♪」
「うああっ、ティータの口の中……ぬるぬるだ(こんな形でフェラチオ初体験かよ……くそ、マジで気持ちいい)」
「えへへ、ひもひ、いい? ん、ちゅぷっ」
「凄く気持ちいいよ……右手なんかじゃ比べ物にならないくらいに(確かにそうなんだが、素直に受け入れられないのが悲しい)」
ティータは俺のペニスを口に含んだまま、舌で器用に裏筋をなぞったりカリの部分を一周させたり、先を舌先でくすぐってきたりと、体験した事のない舌の愛撫を繰り広げる。
そして何より、両手でそっと俺のペニスを包み込み、視線は俺の目を見たままなのだ。
俺のペニスを口に含んで、フェラチオをしているのだと見せつけるように。そして……、
「ん、ちゅ……っ、ちゅっ、じゅるるぅ……♪ ん、はぁ……♪ ぴちゃぴちゃっ♪ おいひい……♪」
わざとらしく音を立てては、俺のペニスが美味しいとしゃぶりながら甘えた声を出すのだ。
それがゾクゾクするほど、感じる。
想像してみて欲しい。美少女が頬を染めてじゅるるといやらしい音を立てて自分のペニスを美味しそうにしゃぶる姿を。
……こんなの、理性が吹き飛んでしまう。
そんな俺の心の声が聞こえたのか、もしくは無意識で呟いてしまったのか、ティータは嬉しそうにしゃぶりながら微笑んだ。そして、亀頭を可愛がるようにキスの連続。
「んふ♪ ちゅっ、ちゅっ、ちゅっちゅっ♪」
「はぁ、あぁあ……凄い、いやらしいキスだね(そこは、敏感だから腰が勝手に跳ねる……ッ)」
「とっても敏感だね……♪ こうやって……ん、ちゅぅぅっ♪ 先っぽにちゅっちゅするのとぉ……んぁ……ぴちゃっ、ぴちゃぴちゃっ、れろ、んぅ……♪ 舌でぺろぺろってするの、どっちが好きぃ?」
そんなの、童貞に聞くんじゃねぇ……っ。どっちも気持ちいいっつの。
「どっちも、気持ちよくて選べないよ……(あ、初めて思考と言葉が一致した気がする)」
「じゃあ、どっちも、してあげる♪」
「あぁっ、ティータ……っ」
「んちゅっ、ちゅっ♪ れろ、れろぉっ♪ ちゅ、ちゅぷ……っ、ぴちゃっ」
ぐぅぅ……。なんて健気にしゃぶってくれるんだ。
さっきから気持ち良すぎて口が開きっぱなしで、よだれが垂れるほどにいい。
「クロードさん……♪ 気持ちよくなってくれてる……?」
「あぁ……。こんな気持ちいいの、病み付きになりそうだ(…………悔しいが、同意する)」
「うふっ♪ 嬉しい……♪ もっともっと頑張っておしゃぶり、するね……♪」
そしてまたティータは俺のペニスを口へ含んで一際大きく、大げさに音を立ててフェラチオを開始した。
「あむ……っ♪ じゅるっ、じゅぷぷぷっ♪ んふ……っ、ぢゅるっ、ぢゅっ♪」
「ん、は……あああぁぁ……っ」
「…………♪ じゅ、じゅぷっ、じゅるるるぅっ♪ ……ん、ぷちゅ……っ、ぢゅぷっ、ぢゅっぷ♪」
「すご、い……吸引……(うああ、ちんこ抜ける、ちんこ抜けるって!)」
俺の様子を伺ってから、また深いディープスロートの連続。俺にとっては未知の快感が怒涛のように押し寄せてくる。
そんな口いっぱいに頬張って、苦しいはずなのにそんな様子も見せず、頑張って気持ちよくしてくれようとしているティータが、凄く可愛い。痺れの魔法がかかっていなかったら、思わず頭を撫でてしまいそうだ。健気にしゃぶってくれるティータの金色の髪。もしも撫でたらどんな感触だろうか?
俺にばかり気持ちよくさせてもらっていてなんだか申し訳なくなってくる。せめて、お礼の意味でも撫でたい。
…………この時の俺は、もう解放してもらおうだとかそんな事は思わずに、ティータの髪を撫でたいとひたすら思っていた。
「ティータ、ティータ……っ」
「んっ、んんぅっ♪ こく、こくん……っ、ぢゅっ、ぢゅうぅぅっ♪ ぷぁ……、れろれろ……♪」
「魔法、解いてくれ……」
「……ふぇ? どうして、ん、ちゅっ、ですか?」
「ティータの髪、どうしても撫でたくなって」
そう言うと、ティータは柔らかい笑みになり、ぼそぼそ、と何かをつぶやいた。
すると、時が止まっていたかのように動かなかった俺の身体がようやくいう事を聞いた。ずっと同じ体勢で居るというのもつらいもんだ。
やっと、身体が自由になった。
「………………♪」
強い視線を感じて見下ろしてみると、ティータが目を輝かせて待っていた。
……可愛いやつめ。
「んっ♪ クロードさんの手、気持ちいい……♪ んぅぅ……♪」
「ティータの髪はさらさらだな。いつまでも撫でていたいよ」
「うれしいー♪ ボクの髪はいつも綺麗にしてるからね♪ ……でもぉ」
ティータの舌が俺のペニスの先を一舐めした。
「クロードさんの精液になら、汚されてもいいな……♪」
「く……、全くえっちな女の子だな」
「えへー♪」
子供のような無邪気な笑顔なのに、口の周りはしゃぶった時に漏れた唾液でべとべとなのが、なんとも言えない背徳感。向こうから始めた事なのに、俺がいけない事をしているような気分になる。
「じゃあ、続けるよ……?」
「あぁ。もうそろそろ我慢出来そうにないよ」
「うんっ♪ だってクロードさんのおちんちんから、しょっぱいのが沢山漏れてたもん♪」
「うっ、そう言われると恥ずかしいな」
「いいの♪ 美味しかったから……♪ でも、次はもっと濃いのが欲しいな♪」
「わかった。その口にいっぱい出すから、しっかり受け止めてくれよ……」
「はぁい♪ …………あ、む♪」
ちなみに、痺れの魔法は解除されているが、魅了の魔法は未だに続いている。……はずなのだが、本当に効果が続いているのか俺の本心なのかはもうわからない。
今はもうティータの口の中で射精したい欲求が強くなりすぎて、それしか考えられない。
「ちゅ、ちゅぅぅ……♪ ん、れろ、れろぉ……っ、んふ、いふよ……?」
「たの、む……」
「……♪ んっ、ぢゅるるるっ♪ じゅっ、じゅるるっ、じゅぷっ、んぅ、ぢゅぽっ、ぢゅぽっ♪」
これがティータの本気のフェラチオなのか、俺のペニスも奥に溜まっている精液も何もかも吸いだしてしまいそうなほどの吸引で、腰が快感で暴れてしまう。
「んぅぅっ♪ っぷぁ、いいよ、一緒に腰を振っても……♪」
「……苦しかったら、すぐに言うんだぞ?」
「うん♪ あむ……♪ じゅるっ、じゅぽ……っ」
「あぁぁっ、ティータの口の中、凄いっ」
「んぅぅっ! っ♪ ぢゅるっ、ぢゅぷっ、ん、んぶっ♪ ぐぷぷぷっ♪ はぁん……♪ いいよぉ……♪ ふぁああんっ♪」
見ると、ティータの右手がティータの股間の方へと伸びていた。
俺のペニスをしゃぶりながら、彼女はオナニーしていたのだ。
それに気づいた時、俺はもう理性が完全に消え去った。
「んッ!? んんぅぅぅっ♪♪♪」
そして、俺は快感を得る為だけに、ティータの口と咽喉を犯すように突いた。
撫でていたティータの頭を掴んで、乱暴にしてしまう。
当然ティータは苦しそうにしていて、止めなくてはと思うのだが、俺の腰のペースと同時にティータのオナニーも、激しい音になっているのだ。それに、咽喉の奥を突かれながらも懸命に舌がペニスの裏筋を刺激してくる。
つまり、このまま続けてしまっていいんだと、俺は瞬時に判断した。
「う、うおっ、ティータ、このまま、このまま……っ!」
「んんぅぅぅっ♪ んぅぅぅっ♪ ぢゅるるっ♪ ぢゅるっ、じゅぷっ♪ ひて、ほのまま……いっひょに……いっひょにぃぃっ♪」
「はぁっ、はぁ、はぁ、はぁ……っ」
「ぢゅぅぅっ、ぢゅるるっ、じゅぽっ、じゅぷぷっ♪ んんぅうっ♪ いく、いっひゃうぅぅっ♪♪♪」
ティータの口から洩れる音と、激しいオナニーの音。それらが混ざり合って、俺とティータは二人同時に絶頂まで上り詰めた。
「うあ、あぁぁああぁっ!」
「ひ、ぅっ♪ ん、んんぅぅぅぅうううううぅぅぅっ♪♪♪♪♪」
生まれて初めての自分の手以外での射精は、思っていたよりも大量に発射されたらしく、絶頂感も右手の比ではない。なにしろ、絶頂した時にこんな大声なんて出ないからな……。
ようやく射精が収まり、俺は大きく息を吐く。ティータも同じく絶頂に達したと思うのだが、俺のペニスを口から離す事無く受け入れて、あまつさえ……。
「んっ、こく……こく、ん……っ♪ ん、ふ……っ♪ ごくっ。…………んふっ♪」
絶頂の余韻に浸りながら俺の精液を全て飲み干してしまったのだ。その合図に俺の目をじっと見て微笑んだ。
「あぁ……ティー、タ」
「まだ、抜かないで……? 今、きれいに、するから……♪」
そう言ってティータはゆっくり、丁寧に吸いながら俺のペニスをしごく。
俺の手をしごいているその手は、さっきまでティータの一番敏感な場所を乱暴にしていた手で、愛液に濡れてびしょびしょだった。
「ちゅ……っ、ちゅっ、ちゅぅ……っ」
「は、ああぁぁ……」
射精したばかりのペニスに強い刺激を与えないように優しく吸ってくれているのが、たまらなく心地いい。
尿道に残った精液も丁寧に吸い出して、口の中で俺のペニスを掃除。先ほどの絶頂に導こうとするフェラチオもいいが、こんなフェラチオもいい……。ここまで俺の為にしてくれる事に感動する。
お礼に、と乱れたティータの髪を手で整えてあげると、未だにペニスを咥えたままのティータが微笑んだ。
「ちゅるるる…………っ、ぷぁっ♪」
満足そうに口からペニスを離して、ティータは頬を抑えてくねくねしだした。
「クロードさんの精、美味しかったぁ〜♪ 人生で一番美味しかったよっ」
「それは……どうも……」
対する俺はやっと魅惑の魔法の効果がやっと切れたらしく、まともな思考に戻っていた。と、同時に軽い罪悪感に苛まされていた。
初めてのフェラチオをされて、最後には俺からティータの頭を掴んで口や咽喉を乱暴に犯してしまったのだ。いくらティータ自身も自分の性器を触っていたとはいえ、それがイラマチオをしていい免罪符にはならない。
しかし今更後悔したって遅い。吐いた唾は飲めないし、口内射精した精液は戻ってこないのだ。精液を一番のご馳走だとしている魔物娘に、だ。つまりそれは……。
「この味、覚えちゃったらもう忘れられないよぉ……」
「うぐっ」
本格的に魔物娘にロックオンされるという意味なわけで。
「これからは、クロードさんの精液はボクにしか射精しちゃダメだからねっ。ボクがおちんちんの管理、するんだから♪ きゃっ、言っちゃったぁ♪」
「…………あははは……」
頬を赤く染めながら恋する乙女の表情で、ティータは俺の射精管理を宣言したのだ。
それはつまり、ほぼ魔物娘に気に入られたというわけで。
さっきの言葉は魔物娘的に言えば限りなく告白に近いわけで。
「ボクを誘拐した責任、取ってもらうんだから……♪」
俺の年齢=彼女いない歴は今この瞬間に強制ストップしたのである。
さて、昨夜酔っぱらった勢いで道端にあった宝箱を家に持って帰り、今朝になってそれがミミックであった事が発覚。以降、俺の手では開けないという必死の抵抗も空しく、一瞬の隙を突かれて魅了と痺れの魔法を食らいミミックのティータの口へ精を放ってしまった。
そして俺はティータに強制的に射精管理をさせられる事になった。
生きてきた中で恋人が出来なかった俺にはむしろ嬉しいアクシデントだったかもしれない。何せ、リボンで胸や局部を隠しているというのがまたそそるし、まるで俺へティータをプレゼントしてくれているようで独占欲を刺激される。さらに童顔なのにしっかりと育っている場所は育っていて俺好みだ。
性格も明るくて素直で純粋。今もこうしてソファに座っている俺の隣にぴったりとくっついて腕に頬ずりしているのだ。
「わぁい、ボクの恋人♪」
「…………」
マジ、可愛すぎるだろうよ。
魔物娘は人間とは違って、一発交わったり口などで搾り取ってから相手を恋人にするのが最もポピュラーである。
出会って数秒で身ぐるみ剥がしてセックス、のちに結婚。極端に言えばそんな感じだ。
俺も例に漏れず、ミミックのティータが隣にいる。
ちなみに、ティータが入っていた宝箱はすぐそばに置いてある。
「〜〜〜♪ 〜〜♪」
「…………」
よっぽど嬉しいのか、ティータは鼻歌を歌いながら『今幸せです』オーラをこれでもかというくらいに出している。
正直俺も嬉しい。これからこんな可愛い女の子がすぐそばに居てくれるなんて、俺も幸せだ。
…………だが。
一つだけ、不安に思っている事があるのだ。
それは、ティータが入っていた宝箱の中。ミミックが入っている宝箱が普通の宝箱なはずがなく、親魔物国家や魔界で一般的に流通している、とある流浪学者が執筆した魔物娘図鑑で書かれている通り、ミミックの宝箱の中には異次元が広がっているという。
それがとても不安なのだ。
何が不安なのかと問われれば、俺は仕事をしているしこの街で生きていくのが好きだった。それを簡単に捨ててティータと異次元の中で生き続けるという決心はなかなかつかない。
何の説明もなしにティータと異次元の中へ消えれば、職場の人たちに迷惑がかかる。それに友人にも会えなくなるというのは寂しいものだ。
ならばティータに相談して、俺と一緒にこの街で生活していこう、と言えばいい。
……これ、どう考えてもプロポーズだよな。まぁ魔物娘たちにとっては恋人=旦那という公式が出来上がっているので、恋人同士というよりも夫婦に近い。それでも、彼女たちにとって結婚とは憧れの象徴らしく、より二人の仲を深める為のものであるという。
以上、魔物学の教科書から引用。
「〜〜♪ 〜♪ …………?」
「…………」
「クロード、さん?」
「…………」
もし、もしもだ。俺がティータに宝箱の中ではなく外で一緒に過ごそうと言ったら、どう返事するだろうか?
魔物娘図鑑に掲載されているミミックの生態は、いわゆる『大体ミミックはこのような感じ』というだけで、個人差は当然あるだろう。そして例に漏れずティータが俺を宝箱の中に入れてそこで一生過ごしたいと思っているとしたら。
それは、俺のわがままを押し付けているだけに過ぎないのではないか?
「クロードさーん、聞いてますかぁ?」
「…………」
「いいですもん。そっちがその気なら……」
どうすればいい? やはり俺は今までの生活を捨てて、ティータと二人きりの生活を始めるべきなのか?
俺は……どうすれば――――。
「あむっ、ちゅ、じゅるるっ」
「うおっ!?」
考え事をずっとしていたら、いつの間にかティータが俺のペニスを口に咥えていた。突拍子もなくしてきたから腰が跳ねて大声が出た。幸い勃起はしていなかったから、咽喉の奥を突く事にはならなかったが……。
「どうした!? いきなりそんな、その……」
「らって、ん、ちゅっ、ボクのこと、ほおっておいて……ちろちろっ、ぼーっとして……じゅるっ、声かけても……んっ、じゅぽっ」
喋りながらティータは器用に俺のペニスを吸い上げて、むっ、とした表情で俺を見る。縮んでいたはずの俺のペニスがまた血液を貯め始めて、フェラチオの快感が緩やかに、じーんと沁みるように広がっていく。
「わあぁあっ、それはだな……っ、くっ」
「こんなかわいい……ボクが、ん、ちゅぱ、れろれろ……、隣に、居る、のにっ」
裏筋を舌で上下に舐めて、それから横笛のように唇をつけて音を立てながらしゃぶる。気が付けば、もう俺のペニスはティータのよだれまみれになっていた。
「それは謝る……はぁ、あ……」
「ちゅ、ぷぁ……っ、なにを考えてたの? 正直にボクに言って……?」
手でしごきながら、ティータは俺にまっすぐな視線を向けてくる。にちゃ、にちゃといういやらしい音が段々と強くなってくる。このまま言わないと、すぐにもイかされそうだ。
「言う、言うから……っ」
「言って? 早く、早くぅ」
さらにしごく手が早くなる。腰がびくびくと跳ねて、いよいよ限界が見えそうだ。その前に、早くティータに言わなければ……っ!
「ティータと俺の、今後の事を考えていたんだっ」
「っ! 〜〜〜〜〜っっ♪♪♪」
ぱぁぁぁっ、ときらきらした光がティータの顔を覆っていたように見えるくらいに嬉しそうになったかと思うと、俺のペニスを奥まで咥えた。
最初からこうするつもりだったのか、俺はティータの思惑通りにそのまま咽喉の奥へと勢いよく精液を発射してしまった。
「あ、あ……っ、はぁあ……っ」
「んっ♪ んっ、んぅぅっ♪」
ティータが俺の射精に合わせて、ちゅ、ちゅ、と優しく吸い上げてくれるおかげで、反射的に腰が跳ねた。
やがて射精が収まると、ティータは残さずそれを飲み込んで、口から離す時に先端を優しくちゅ、と吸ってくれた。射精後は敏感になっているので、それにもまた腰が反応すると、ティータは唇を舌で舐めていやらしく微笑んだ。
「それならそうと、はっきり言ってください……♪」
「あぁ……うん……」
射精後の脱力で、天井を見上げながら俺は力なく答えた。
考え事をしていた俺に無視されてご機嫌斜めになったかと思いきや、考えていた事が自分に関する事だと知ったら急に上機嫌になる。
…………ティータは、可愛いなぁ。
後始末をしてから、改めて俺とティータはソファに座って、先ほど考えていた事を包み隠さず話す。
すると、ティータは突然俺の胸に飛び込んできて、頬ずりしてきた。
「ボク、凄く嬉しい……♪」
「え、嬉しい?」
「真剣にボクの事を考えてくれるなんて、それで喜ばない魔物娘なんて居ませんからっ♪」
「あぁ……そう、なの……」
嫌だ、と否定されると思ったのだが、ティータにとってはそんな事は些末な問題に過ぎなかったようだ。
しかも、宝箱の中にあるという異次元は実際に存在するが、パンデモニウムのように永遠にそこで生活していくという訳ではないという。しかもパンデモニウム自体、脱出不可能という訳でもなく、連れて行った魔物娘次第では戻れるらしい。
つまりは、俺が文章の解釈を間違えていたという事になる。
「あ、でも、クロードさんがお望みなら……♪」
と指をくわえて見つめてきた時は慌てて首を振ったが。
ともかく、不安要素はこれでなくなった。
「ふぁ……っ、ふにゃー♪」
頭を撫でてあげると、ティータは目を細めて気持ちよさそうな声を出して、うっとりとしている。
可愛いなぁ、もう。
いったいいつになったら魅了の魔法は解けるんだ? 全く、効果が続いたままだとティータなしじゃ生きていけなくなりそうだ。
だが、それでも一向に構わない。
「ティータ」
「はぁい? …………っ!!」
こんなに可愛くて、ぷるぷるな唇にいつでもキス出来るなんて、最高じゃないか。
「はははっ」
「もぅ、不意打ちは反則ですっ」
「そっちだって不意打ちで痺れの魔法使っただろ?」
「うっ、それはそうですけどぉー」
「…………まぁ、正直こっちもすげぇドキドキしてるんだけどな」
何だか色々と俺の初めてをティータに奪われてしまったので、ファーストキスぐらいは……とさりげなくしてみたのだが。
つか……うっわ、よくもまぁ童貞の癖にあんなキザな真似出来たもんだ。改めて自分がやった事に軽く寒気が……。
「えへへ。でも、クロードさんの唇、ボク好きですっ」
そう言ってティータは俺の唇を指でなぞる。ティータに比べれば瑞々しさとか柔らかさとかが圧倒的に違うと思うのだが……。
「気に入っちゃいましたっ。これから、いっぱいいっぱいキスして、いいですか?」
「…………改めて聞かないでくれ。すげぇ恥ずかしいから」
「答えてくださいよぅ」
「こ、断る」
「えーっ、いじわるーっ」
全く、年上をもてあそんでからに……。おかげでなんか知らんが顔が熱いぞ。
「はいはい、いいからっ。それよりも今日はこれから買い物に行くからな。さっきの朝食ですっからかんだ」
「ぶー」
不満そうにティータは頬を膨らませているが、そこはスルーだ。ちょっと今はティータの顔を見ていたら恥ずかしいからな。
そそくさと財布を取って玄関へ。
「もう、待ってくださいーっ」
「はいはい、早くしような」
「いじわるですー!」
「はいはい」
ん? そう言えば、ティータの今の格好ってかなり際どいよな。だって服じゃなくってリボンを装飾してるだけだし、肌の露出が激しすぎて隣で歩いている俺がすげぇ変態に見られるんじゃ……。
…………………………。
う、うん。大丈夫だろ。サキュバスとかもっと凄まじいし、目のやり場に困るし。
だだ、大丈夫だ。きっと。もしかしたら。…………多分。
やはりというか、当然と言うべきか。
リボンで胸と局部を隠しただけのほぼ裸の格好は目立った。凄く目立った。
おかげで、道行く人たちが俺とティータの進行方向を開けてくれる(避けたとも言う)し、ティータを見たサキュバスさんが「リボンプレイ! そういうのもあるのねっ!」と勝手に盛り上がって何処かへ飛んで行ったし、ティータはティータで普段宝箱に入っているから、人の目に慣れておらず、しかも注目されてしまったおかげでもじもじするし。
そりゃ、隣にいた俺も凄く恥ずかしかった訳で。いつもならのんびりとした買い物なのだが、急ピッチで終わらせた。しかも、急いでいる最中に袖を引っ張られて、もじもじしているティータに「どうしよ、ボクのリボンがシミで……」と言われて、思わず下の方を見たら、彼女の大事な部分を隠している場所に言葉通りシミが出来ていた。しかも「はぁ、はぁ……ボク、ちょっと興奮してきたかも……」とか言ってくれやがって、何を興奮しているのかと。野外で発情されても困るっつの。
と、また軽く血が集まってきた我が愚息を叱りながらようやく買い物を終えた。
「ハァッ、ハァ……ッ」
「はぁ、はぁ……ん、はぁ……っ♪」
重い荷物を一人で抱えて、早歩き(というか小走り)で戻ってきた俺はすっかり息切れだ。
そしてティータも呼吸が乱れているが、これは疲れじゃなくてどう見ても発情している。頬はすっかり赤く染まっているし、目がギラギラしている。
「クロード、さぁん……ボク、もう……」
「お、おい」
「ちょっと、お手洗い、行くね……♪」
そう言ってティータはふらふらとした足取りでトイレへ向かい…………。
「んあっ、ああぁんッ♪ もう、ボクのここ、ぐしょぐしょだよぉっ♪」
それはもう、どう聞いてもオナニーをしているとしか思えなかった。
俺は気まずくなり、無駄に辞書を読むしか出来ず、もちろん文字なんて頭に入ってこなかった。
そしてティータの喘ぎ声を聞かされ続けて、完全に勃起してしまった我が愚息から「YOU、もうトイレに突入して一発ヤっちゃいなよ」と言われたような気がしたが、そもそも何故発情したのにオナニーで済ませているのかがわからず、何か考えがあるのかと思い、じっとこらえた。
まさに生殺し状態だったのだが。
「あっ、あっあっあっあっ♪ もう、もうイクぅっ♪ クロードさぁんっ、ボクイッちゃうぅうっ♪」
と、いよいよクライマックスへと突入したティータは俺の名前を叫びながら高みへ。
「あ、あっあぁッ♪ イ…………ッ、くぅっ…………。あっ、あぁあ―――――んっ♪♪♪」
それからしばらく、沈黙の時が流れて……。
「ふぅ……♪」
満足げに流れる汗を拭いながらティータがトイレから出てきた。
とりあえず、色々と言いたい事がある。
「わざとか? なぁ、わざとだろ?」
「なにが?」
「生殺し状態にさせておいて……」
「やだぁ。ボクのオナニー声、そんなに大きかった?」
きゃっ、とわざとらしく照れるティータに俺は軽くでこぴんをお見舞いする。
「あぅ」
「それと、何故に……その……、俺を襲わなかった?」
その問いにティータはもじもじしながら、
「だって、せっかくの初めてだもん……。初めての時はロマンチックに静かな夜にしたいから……♪」
「ついさっきまで大声でオナニーしていた女が何を言う」
「もうっ、女心がわからないんだからっ」
わかるかいな。
「それに、もしも俺が乱入してたらどうするつもりだったんだ?」
「それはそれで……♪」
どっちやねん。
「あ、それか、痺れの魔法で見せつけオナニーもよかったかも?」
「………………」
危ねぇ……、我慢してよかったかもしれない。声だけでも生殺しだというのに、実際に見せつけられながら痺れの魔法とか、拷問の領域だ。
絶対俺は情けない声で解除してくれと懇願する。挿入させてくれと叫ぶ。その姿はとても惨めで、後になって凄く落ち込んでしまいそうだ。
そんな俺の考えをよそに、ティータは悪気もなく言う。
「大丈夫ですよ? クロードさんがどんな姿を見せても、ボクは大好きですから♪ それに、それだけ求められるなんてこれ以上の幸せはないです♪」
「さいですか……」
そう言われても男のプライドというものがあってだな……。一度そんな情けない姿を見せてしまえば、これからの生活に支障をきたしそうなのだ。正直、立ち直れないかもしれない。
男の心は繊細なのだ。
そうこうしていたら、既に日は落ちて夜になった。今頃酒場やレストランが建ち並ぶエリアが盛んになっているだろう。一日の仕事の頑張りを讃えて酒を飲んだり、美味しい食事を食べたり。人間たちもそうだが、魔物娘たちにとっても待ち焦がれた時間と言っていい。やはり魔物娘は夜が好きなのか、独り身はこれからの伴侶を探しに出歩くし、夫婦ならばディナーの後に宿をとって朝まで……など。
忘れてはならないのは、この街の住人ではない魔物娘もやってくるというのがある。これも独り身の魔物娘が多く、サキュバスやハーピーなどがやってきてはここで夫を見つけて暮らしていく。
もちろん、外へ出かける人ばかりではない。俺のように家で料理を作って、明日の為に英気を養う。
今までは独りだったから、気分が乗れば酒場やレストランへ行くのだが、俺の傍にはミミックのティータが居る。本当ならフェリーチェの夜の姿というのも見せたかったのだが、彼女はまだ人目に慣れていない。服の問題は昼の買い物で軽く済ませたが、あくまで応急処置のようなもので、後日ちゃんとした服を買いに行った方がいいだろう。
「じゃ、晩飯作るぞ。ちょっとごめんな」
「待ってください」
俺の膝枕でごろごろしていたティータを撫でて、立ち上がろうとしたらティータがそれを止めた。
「どした?」
「今晩は記念すべきボクらの初めての夜じゃないですか。それに朝も昼も作ってもらいました。だから、ボクがお礼に腕を振るってご馳走を作ってあげます!」
そう言ってティータは器用に自分の宝箱を足で開けて飛び込んだ。するとティータの身体が足から消えて、居なくなる。というか大切な宝箱なんだから大事に扱えよ……。
「クロードさん! そこからでいいので、食材を箱に入れてくださーい」
と、開いたままの宝箱からティータの声。どうなってるんだこれ。
「は? 箱に入れるのか?」
「はいー! 遠慮なくぽいぽいっとしちゃってください」
「まさか、その中で料理を作るのか?」
俺の目には底のない宝箱にしか見えないので、そこで料理するというのがどうにも理解出来ない。
しかしティータはそんな疑問に気づく事無く元気に答えた。
「もちろんですー! ですから、食材を入れてくださーい」
「えー……」
よくわからないが、この中に調理道具が揃っているのだろうか?
とりあえず俺は今日買ってきた肉や野菜を手に取り、恐る恐る宝箱に落とした。
「おお……」
すると先ほどのティータのように消えていく。なんか凄いぞこれ。どんな技術だ。
俺は面白くなってどんどん食材を宝箱に入れていく。
肉、野菜、卵などをぽいぽい、と入れていたら、
「これぐらいで十分ですー! じゃあ、そこで待っててくださいねー! ボクが愛情たっぷりのご馳走を作って差し上げますから♪」
何故わざわざ宝箱の中で作るのかわからないが、とりあえず一言伝えなければ。
「媚薬とか入れるなよー」
「うぐっ」
ほらな。
開け放たれた宝箱から聞こえる調理音を聞きながら、俺は読みかけの小説を消化していた。それはこの街にあるとてもとても大きな図書館、別名知識の図書館から貸出したものだ。話の内容は至ってシンプルで、一人の男と一人の魔物娘が出会い、そして時を重ねて互いの仲を深め、結婚するラブストーリーだ。この街ではこういったラブストーリーものがとても人気で、幅広い年齢層に親しまれている。
なお、独身男性がこれを好んで読んでいるという点については気にしないでいただきたい。俺だってこういうのを読むっつの。ほっとけ。
二人が段々と仲良くなっていく描写はフィクションだとしても微笑ましいものだ。気が付けばニヤニヤしながらページをめくっている俺が居る。大変気持ち悪いのは自覚しているので指摘しなくてもいい。こうやって自虐的なのも独身生活が長かったからなのだと言い訳させてもらいたい。
「クロードさーん」
「んー?」
「聞いていなかったんですけど、嫌いなものとかありますかー?」
「あまりないが、そもそも嫌いなものは買っていないから大丈夫だぞ」
「ちなみにー?」
「そうだな。強いて言うならウリかな」
「生で食べたら美味しいですよー?」
「それがなんかだめなんだよ」
味がダメ、というわけではない。何故だかは自分でも知らないが、あの食感だけはどうしても受け付けられないのだ。……そういえば、ジパングではキュウリというのがあるらしいな。しかも河童という魔物娘が好んでいるという。間違っても嫌いだ、なんて目の前では言えないな。
「まぁでも、ボクよりも全然大丈夫ですね! ボクの方が多いですし……」
「例えば?」
「魚は大体苦手ですー……」
「うん、俺よりひどいな」
「いいんですっ、それを食べなくたって今まで生きてこれましたからっ!」
俺もウリがダメだという事実がある以上、偉そうな事は言えないのだが、魚全般が苦手って結構不便だな。焼いたり煮たりすれば美味いのに。
「今日のお買いもので魚を買おうとしてたら、さりげなく避けるようにしようと思ってました」
「今晩はなんか魚って気分じゃなかったからな」
「これからも魚って気分にならなくていいですよ!」
「……へいへい」
と、ここで何かを焼く音が聞こえた。それから、宝箱から感じる匂いは肉だろうか? ああ、いい匂いがする。そこまで腹は減っていなかったと感じていたのだが、この匂いを嗅いでしまうと急に空腹感が増してしまう。
「何を作ってるんだ?」
「まだ内緒でーす」
なるほど、と俺はティータの考えを読んだ。出来上がりを見せるまで内緒にして驚かせようとしているのだろう。可愛い奴め。
「じゃあ、楽しみにしてる」
「そうしてくださーい♪」
俺ももう子供じゃないし、多少の空腹感ぐらい我慢できる。
「出来ましたよー!」
「ぅおっ!?」
小説を読んでいたら、いつの間にかうとうとしていたらしい。ティータの声に驚いて、宝箱からにょきっと出ているティータにまた驚いた。
「? どうかしました?」
「いや……、なんでも」
「ご飯の用意が出来ましたよ。早く入ってください♪」
「えっ?」
「えっ?」
入る? 今入ると言ったのか、ティータは。
「何処に?」
「何処って、ここですよ?」
当然のようにティータは宝箱の中を指差した。
なんとなくそうだろうな、とは思っていたが、実際に言われてよしわかったと飛び込む度胸はないし、中の構図がどうなっているのか全く想像できない。
「……マジで?」
「マジです」
「そっちから料理を持ってくるとかは……」
「だめです♪」
ですよねー。
とは言うものの、これはちょっと怖いぞ。大げさに表現すると、底が見えない崖から飛び込むようなものだ。
「本当に入らないと、だめか?」
「しくしく……クロードさんが冷たいです……」
「ああ、いや……」
両手で顔を覆ってわざとらしい泣き真似をされると、どうすればいいのか困ってしまう。突っ込みを入れたらいいのか、それとも泣き真似だろと看破すればいいのか。
「しくしく……」
「あのな、ティータ」
「隙ありっ!」
「!?」
泣き真似だとしても、慰めるのが男の仕事だろうと思い近づくと、ティータに両腕を掴まれた。
「捕まえましたよぉ……」
「待て、何をする気だ」
「………………」
「笑顔のまま黙らないでくれ怖えぇっ」
「では、ボクの空間へごあんなーい♪」
「待て待て待て、心の準備があぁぁぁあああ――――…………」
腕を掴まれたまま宝箱へと引きずり込まれて、思わず目を閉じて身構える。
しかし落下の衝撃はなく、目を開けると、視界に飛び込んできたのは色とりどりのリボンやレースなどで装飾された、とてもメルヘンチックな部屋だった。
呆気にとられている俺の胸にティータが飛び込んできて、きらきらとした瞳で見上げた。
「ボクのお部屋へようこそ♪」
「……えっ、ん? ……へ?」
想像していたミミックの宝箱の異空間とあまりにもかけ離れていて、変な声が出てしまう。
俺の思い描いていたのは、空気が重々しくて真っ暗で、何もない場所だと思っていた。
だが、よく考えれば可愛い女の子が一人真っ暗な空間で過ごすだろうか?
あんなにエッチで、でも乙女な魔物娘たちが、だ。冷静に考えればわかる事であるのは間違いない。つまり、俺はまた勘違いをやらかした。
「どうですか? お部屋の飾り、いっぱい頑張ったんですよ♪」
「お、おう……」
俺の家具と本棚がある程度の殺風景な部屋とは大違いだ。至る所にリボンとレースの装飾が施されていて、どう見ても女の子が住んでいる部屋だと認識できる。しかし多すぎやしないだろうか? 何処から持ってきたのかはわからないが、これがティータの趣味なのだろう。
「昨日の夜は驚きました。大地震が来たのかと思うくらい揺れたんですから。せっかくの飾りがぐちゃぐちゃになったんですよぉ?」
「それは、悪い事をしたな……」
いや、まさか運んだ宝箱がミミックの住処だなんて思いもしないだろうに。
「でも、いいですっ♪ こうしてクロードさんをボクのお部屋へ招待出来たんですからっ」
「そうだな」
「それで、どうですか?」
「どう、とは?」
「ボクのお部屋です。どう思いますか?」
ティータに言われて改めてメルヘンの全てを詰め込んだような部屋を見渡す。そこで気づいたのは薄いピンク色のリボンが多い事だった。その他には……別の部屋へと通じる扉がある事ぐらいだろうか?
ちら、とティータの方を見ると、わくわくした顔で俺の方を見ているので、期待されている通りの答えを出した。
「可愛い部屋だな。ここまで徹底的に装飾するのは大変だったろう。それに、結構広い」
「ですよねっ、ですよねっ♪」
「それで、料理は……」
「それはこっちですよっ」
ティータに腕を引っ張られて、先ほど発見した扉の前まで連れられる。
俺が開けていいらしい。
「……おお」
「ふふんっ」
俺のリアクションにティータは誇らしげな顔だ。
扉の先にあったのは、立派なキッチンだった。しかも俺の家のよりも設備が充実していた。オーブンまである。
そしてテーブルに並んでいたのは、バスケットに入った切り分けられたパンと、半透明のソースがかけられているローストビーフ。赤い色した芋と野菜が具だくさんのスープ。そしてサラダには……これ、まといの野菜だろうか? まといの野菜とレタスやトマトを使用したサラダにまた半透明のドレッシング……。あ、これってとろけの野菜か? ローストビーフのも同じのを使っているだろう。
人間と魔物娘が共存する親魔物国家、もしくは明緑魔界では魔界で採れる作物が割と頻繁に見られるので、ある程度のものはわかる。しかしここまで魔界の作物を使用した料理は初めてだ。それもそのはずで、今まで俺は独身だったのだ。魔界の作物は総じて夫婦生活が円満になるような効能ばかりだから。
つまり、見た事はあっても味までは知らないのである。
「凄いな……。とても豪華だ」
「初めての夜ですから、張り切っちゃいました♪」
「うんうん、見ただけでも美味しそうだよ」
「えへへ」
そろそろ俺も空腹の限界だ。これだけの豪華な料理を食べられるとわかると、今すぐにでもがっつきたくなる。
「それじゃあ、冷めないうちに食べましょっ」
「そうだな」
「えへ♪」
「いただきます」
「いただきまーす」
まずはとろけの野菜のソースがかかったローストビーフを口に運ぶ。
「…………っ!!」
「如何ですか?」
なんだ、これ。結構安めの肉を使っているはずなのに、とろとろのソースが肉の味を引き立てていて、ジューシーで滅茶苦茶に美味い。ソースが違うだけでこんなにも違うのか。
しっかり噛んでから飲み込んで、感想を待っていたティータに素直な感想を言う。
「すっっっげぇ美味い」
「やったー♪」
「もっと食べたいな」
「いっぱいありますから安心してください♪ それに、このパンにも合いますよ?」
「おお……っ、これは…………ごくん、パンが進むなぁ」
折角ティータが作ってくれた手料理だから、味わって食べたいのだが手が止まらない。身体がもっと食べさせろと言ってうるさいのだ。
次は同じくとろけの野菜を使用したドレッシングがかかったまといの野菜が主のサラダを食べてみる。
「これもまた、美味いなぁ。シャキシャキしてて、噛めば噛むほど甘い。ドレッシングも美味しさを引き立ててるなぁ……。とろけの野菜って凄いんだな」
「むぅ。その言い方はなんか嬉しくないです」
俺の感想にティータは頬を膨らませる。そういう意味で言ったつもりじゃなかったのだが……。
女の子の心ってよくわからないものだ。
「いやそうじゃないよ。野菜単体でも美味しいけど、作ったのはティータだろう? このドレッシング、とろけの野菜だけじゃなくて細かく切った野菜もあって風味がいいよ」
「えへへ、そうですか?」
「あぁ。どれ、このスープは…………うんうん、しっかり煮込んでるからまかいもが口の中で簡単に噛めるほど柔らかい」
「ばっちりでしょ?」
「あぁ、全部美味いな。ばっちりだ」
「やったぁー♪」
またローストビーフを食べてはサラダに手を付けて、スープの野菜を食べてはパンを食べて、気が付けばティータの手料理に夢中になっている俺が居た。
それに気が付いたのは、ティータが微笑みながら俺を見ていたからだ。
「……ん?」
「こんなに美味しそうに食べるクロードさんを見て、ボク、凄く嬉しいです♪」
「あ、あぁ……。すまん、がっつきすぎたか」
言われて気が付くというのも恥ずかしい話だ。いい大人が子供のようにがっついて……。もうちょっとゆっくり味わって食べよう。
ティータは首を振ってから、
「いえ、それだけ美味しいと思ってくれるんだから、大丈夫ですよっ」
そう答えた。確かにそれは事実だ。
魔界の作物を食べるのが初めてというのもあるが、加えて女の子の手料理も初めてだ。そりゃ嬉しくなってついつい手が止まらなくなる訳だ。なんと単純な俺……。
「うん、本当に美味しいよ」
「えへへ」
まぁ、あれこれ考えてもしょうがない。折角ティータが料理に腕を振るってくれたのだ。しっかり全部食べようじゃないか。
……にしても、流石に急いで食べてしまったのか、身体が熱い。袖をまくって食事を再開しても、やはり身体が熱い。
「なんか、暑くないか?」
「そうですね……。ちょっぴり暑いかも、しれませんね……♪」
「…………?」
ティータが何か含みのある言い方をした気がしたが、それよりも暑さが勝ってしまう。段々汗がにじんできて、腕で拭ってもまた汗がにじむ。
「ここ、暖房設備あるのか?」
「いえ、ここは宝箱の中にある異空間ですから。例え外が極寒の地であろうと、ここの温度は適温で過ごしやすいですよ?」
「そうか……じゃあ、なんでだ……?」
首をかしげてもわからないので、とりあえずまといの野菜を口に運び…………、そこで気が付いた。
そういえば、まといの野菜は食べると何か効果があった気がした。あった気がしたのだが、そんな事よりも頭がぼーっとしてそれ以上考えられない。
熱い。その言葉だけが脳内で反芻して、つい勢いで上半身裸になってしまった。
「きゃっ♪」
「あっつ……」
ティータの前で、しかも食事中に上半身裸になるなんてマナーがなっていないとはわかっていたが、どうしても暑くて服を脱ぎたかった。だがしかし、上半身だけじゃ暑さがまだ収まらない。
流石に俺の異常が気になったのか、ティータが席を立って俺に近づく。
「大丈夫、ですかぁ……?」
「あぁ……と言いたいんだが、正直身体が熱くてな」
「はぁ……♪ すごい、クロードさんの身体、とっても熱ぅい……♪」
ティータの手のひらが俺の胸筋に触れる。さらに、ティータの手も熱くなっていた。見たら、ティータの顔が紅く上気していた。さらに、呼吸も荒い。
何故だ? 俺だけならともかくティータまで……。
「ティータの手も、熱いぞ……?」
「えへ……、まといの野菜って凄いですね……♪」
「…………あぁ」
その言葉でやっと思い出した。こんな単純な事にどうして気づかなかったのだろうか? まといの野菜を食べた場合に起こる効果、それは肌が活性化し熱くなり、思わず服を脱いでしまいたくなる効果だ。そこにとろけの野菜のドレッシングが合わさると……、その効果はさらに上昇する。学校でも初期の頃に習う内容だ。
「お料理、まだ残ってるけど……もう、ボク我慢できないです……♪」
「俺ももう、限界だ」
ティータの腕を掴んで強引に引き寄せると、身体がびくびくと痙攣して悲鳴に近い喘ぎ声をあげた。
「ひぁああぁぁ……っ♪」
「こんな風にした、ティータが悪いんだからな……」
「はい……♪」
そのまま彼女をお姫様抱っこして、先ほどのティータの部屋へと戻り、そのままベッドへと寝かせた。俺は身に着けている衣類を全て脱ぎ捨てると、ズボンの中で硬くなり、早く出してくれと暴れていた俺のペニスが、天井を向いて反り返った。
ティータは潤んだ瞳でそれを凝視し、手を伸ばそうとして――その手を封じた。
「ひゃ、どうした……んですか?」
「おあずけだ」
「そんなぁ……、ボク、クロードさんのおちんちん触りたいですぅ」
俺だってティータに触ってほしい。手でしごいて、口でしゃぶって、最終的には繋がりたい。
しかし、その欲求を抑え込んででも、俺はティータにしなければならない事がある。
「ダメだ。俺をこんなにさせた悪いティータにはお仕置きが必要だ」
されるがまま、流されるまま快楽に溺れるのもまたいいかもしれない。しかし、本当にそれだけでいいのか? そう俺の中に潜む本能が告げる。
このまま彼女の意のままにされて、それでいいのか? 今こそ、男の力というものを見せるべきではないのか?
それに、今日一日だけで俺はティータにやられっぱなしだった。その借りを返さなければならない。
故に、ティータの身体に快楽責めのお仕置きをしなければならないのだ。
「おし、おき……♪」
俺の言葉を反芻したティータの表情は、俺の中にある嗜虐欲を膨れ上がらせるのに十分だった。それを彼女も理解したのか、発汗で既に全身が濡れていて、汗と愛液が沁みこんだリボンをずらして、胸と秘部を晒した。
「ボク、ううん……ティータは、クロードさんがえっちな気持ちになって犯してもらえるように、わざと魔界の料理を作りましたぁ……♪ 料理を作ってるあいだも……、おまんこ濡らしちゃって、その、途中で、触ってないのに……一回だけ、イッちゃい、ましたぁ……♪」
とろけきっただらしのない顔で告白したティータは、また少し痙攣した。
「もしかして、また勝手にイッたのか?」
「ひぅ……♪ だって、だって、ティータの恥ずかしい場所、じっと見られたらぁ……♪」
「悪い子だ」
「ふぁああぁあっ♪」
ひくひくと物欲しそうにしているティータの秘部を指でそっ、となぞった。
「そんなに気持ちよさそうな顔をして、これ以上の事をしたらどうなるんだ?」
「これ以上ぉ……♪ んっ、は……ぁ、あぁん……♪」
驚いたことに、ティータは想像しただけで感じているらしい。もし放置プレイをしたら、彼女は一体どうなってしまうのだろうか。
それはそれで一度見てみたいので、いずれやってみる事にしよう。
だが今は。
「こら、勝手に気持ちよくなるな」
「きゃぁああんっ♪」
愛液が溢れてくる秘部を指でもう一度なぞってから、開いている左手で彼女のふっくらとした胸を揉む。
「一人で想像して気持ちよくなるより、こうやって触られた方がいいだろう?」
「んぁっ、はあぁあっ♪ はぃ、はぃぃ……♪ クロードさんの手、気持ちいい、ですぅっ♪」
「じゃあ、おねだり、上手に出来るよな?」
そう言うとティータは頷き、両手で濡れた秘部を見せつけるように開く。すると、十分以上に濡れているからか、にちゃ、といやらしい音を立てた。
「ティータの、えっちでいやらしくて、恥ずかしいおまんこにお仕置き、してください……♪ もうこれ以上、一人で気持ち良くなるのは切ない、です……♪」
「ティータっ」
「ひゃぁああぁぁ――――んっ♪♪♪」
愛液が湧き水のように溢れる秘部を見せつけて、いやらしくおねだりされたらもう我慢できなかった。俺はすぐにティータの秘部にむしゃぶりついて、強く吸った。
「また、イッたのか」
「ごめんなさいっ♪ もうティータは、簡単にイッちゃうはしたない子になっちゃいましたぁ♪」
「まったく、とんでもないえっちな子を拾ったもんだな……じゅずずずずっ」
「きゃぁぁああっ♪ そんなに、強く、ふぁああっ! クリトリス、吸っちゃぁあっ♪ また、またぁ……っ♪」
腰をがくがくと震わせて、またティータは絶頂に達した。どうやら本当にティータの身体が敏感になったらしく、舌で上下にひだを舐めれば、また腰が暴れるように痙攣した。俺は両足を固定させるように腕を回し、クンニを続行した。
「ちゅ、ちゅるるっ、ん、ティータの愛液、美味いぞ……」
「あっ、ああぁっ、はぁあぁあっ♪ 嬉しいっ♪」
「綺麗なピンク色で、じゅるっ、どんどん溢れて、じゅぅぅっ」
「はぁあぁぁぁあんっ♪ ティータのおまんこっ♪ クロードさんのためだけにあるからぁ♪ あっ、あぁあっ♪ 今日まで、大切にしてきたのぉっ♪」
偶然俺がティータの宝箱を拾った事は、彼女にとっては運命なのだと思っているようだ。
例えそれが俺を盛り上がらせる為の言葉であろうと、嬉しい。
「俺だけの……じゅるるっ、俺だけの場所だ……っ」
「はい……っ♪ ティータのおまんこは、クロードさん専用のおまんこなのっ♪ クロードさんだけが犯していいのぉっ♪」
「ん、じゅずずずずずずぅぅぅっ!」
「ひゃああっぁぁああああっ♪♪♪ らめ、らめええぇっ♪ そんなに激しく吸ったら、もう、もうっ♪」
その先の言葉がなんなのか、言わせるまでもなく俺は口や舌でティータの秘部を舐め、すする。
クンニしながらティータの顔を見ると、汗と涙とよだれで完全に快楽に支配された表情になっていて、たぷたぷと揺れる胸がとても扇情的だった。しかも、乳首をティータ自身がくりくりといじっていて、より快感を得ようとしていた。
「じゅるるるっ、んっ、じゅぅぅぅうううっ!」
「もう、もう、もうっ、きちゃうっ、きちゃぁ……っ♪ ティータ、ティータもう、らめぇぇえっ♪」
「んぷっ、じゅるるるるるるるるっ!!」
「あぁあっ、あぁあああっ♪♪ ティータ、イッちゃ……っ!!」
舌を伸ばしてティータの秘部の中へと差し込むと、舌を離さないと言わんばかりに締め付けてから……。
「イッくぅぅうううぅぅうぅぅんっ♪♪♪♪♪」
「んんっ!?」
我慢が出来なかったのか、ぷしゅ、ぷしゅ、といわゆる潮吹きをしながらティータは大きな絶頂に達した。クンニをしていた俺は当然それを顔にもろに受けたが、嫌だと感じる事はなく、むしろ強い絶頂まで達せられたという達成感が勝った。
「あ……、あぁ……クロード、さぁん……」
「ん……、ティータ……」
腰をびく、びく、とさせながらも俺に腕を伸ばしてきたので、優しくティータの身体を抱きしめた。
息も絶え絶えになったティータの髪を撫でながら、
「気持ち、よかったか?」
そう聞くと、こくんとティータが頷いた。
「はぁ、はぁ、はぁっ♪ こんなに気持ちよかったの……、はじめて、です……、はぁ、はぁ♪」
「よかった」
ティータが絶頂を迎えた事で先ほどまであった嗜虐欲が収まり、残ったのは単純な欲望だけ。
今こうして抱きしめている女の子と一つになりたい、と。
「ごめんなさい……、ボク、クロードさんのお顔に……あぅぅ、恥ずかしい……」
「いいさ。それだけ感じてくれたんだから」
「でも、クロードさん……」
遠慮がちにティータは俺の勃起しきったペニスを触る。魔界の野菜を食べた効果なのか、それだけで腰がびくん、と跳ねた。
「こんなに……♪ がちがちになったままじゃ、辛いですよね……♪」
「ん、く」
「ボクの方はもう、準備が出来てますから……♪ だから、このまま……♪」
密着した状態でティータは足を開いて、両足を腰に絡めてから、俺のペニスを自身の秘部に誘導させた。ペニスの先から伝わる熱さに、繋がりたい欲求がぐっと増した。
このまま腰を前へと進めれば、俺とティータは隙間なく一つになれるだろう。
しかし、その前に俺はティータに伝えなければならない。
「ティータ……好きだ」
「えっ、あ、あぁぁぁあああぁぁあぁぁあんっ♪♪♪」
想いを伝えてから、腰を前へ突き出せば、十分すぎるほどに濡れたティータの秘部は俺のペニスを難なく受け入れて、そのまま一気に奥へ到達した。
ティータは驚いた顔をしたかと思うと、突然の挿入にたまらず、俺の身体を必死に抱きしめて受け入れてくれた。
「も、もう……っ、好きって言ってからおちんちん入れるなんて、反則ですっ」
「すまん、でも……くっ、どうしても言いたくて……痛くなかったか?」
「えへ、大丈夫です。いっぱい濡れちゃったから、クロードさんのおちんちん、初めてだけど気持ちいいんです……♪ それに、さっき……、また、イッちゃいました、から……♪」
ひょんな事から俺とティータは知り合って、こうして肌を重ねている。過ごした時間はまだ一日も経っていないのだが、今日だけでもティータの可愛いところや、欲望に忠実でえっちなところも。俺の目にはティータが魅力的に見えてしょうがなかった。
「ううん、いいんです……♪ クロードさんの気持ち、ボク、凄く嬉しいから……♪」
「そっか、嬉しい、か」
「はい……♪ だって、ボクの初めてをあげられたんだから……」
「俺も、初めてだ」
「えへ、一緒に初めてを迎えられて、幸せです……♪」
「そうだな……」
身体と身体をより密着させる為に、ティータはより抱きしめる力を強くした。同時に俺のペニスを締め付ける力も増して、手やティータの口とは全く違う快感に背筋からゾクゾクが駆け上がっていく。
俺とティータは一番深いところでつながったまま、お互いを抱きしめあって温かさを共有する。
「ね、クロードさん」
「ん?」
「ボクのこのリボン、ボクの手首とクロードさんの手首で結びませんか?」
そのリボンはまるで自分をプレゼントだというような装飾で、ティータの可愛らしさを引き立たせている。
身体だけじゃなくて、リボンでも繋がりたいというティータの可愛いお願いに、俺は頷いた。
左手首に結ばれたリボンをほどき、手のひらを重ねてから結ぶ。しかし片手だけでは上手くいかず、簡単にほどけてしまった。
「ボクもお手伝い、しますね」
「そうだな。その方が上手くいきそうだ」
「はい……♪ 初めての共同作業ですね……♪」
そう言われるとなんだかむず痒いものがあるが、既にそれ以上の行為を現在進行形でしている訳で。
二人でリボンをきゅ、と結んでから、指も一緒に絡める。それだけで、心の部分もティータと繋がったような気がして、小さくて柔らかい唇を奪った。
「んっ、ちゅ……っ♪ クロード、さぁん……」
「そろそろ、いいか……?」
俺のペニスを包み込むようで、しっかりと離さないように締め付けるティータの中は、昨日まで童貞だった人間には理性を削岩機で一気に削られるようなものだ。ここまでは大人の余裕という名のやせ我慢をしていたが、もう、残された理性は少ない。
これ以上俺には余裕がない。今でも必死で暴発しそうなのを我慢しているのだから。
「はい♪ ボクのおまんこで、いっぱい気持ちよくなって、いっぱい、中に出してください……♪」
「くぁっ」
俺の腰に絡めた両足でぎゅ、としがみついて、さらに中でも締め付ける。そしてティータはわざとらしいくらいに甘えた声で、
「クロードさんの好きにして、いいんですよ……? 『ボクをめちゃくちゃに、シて♪』」
「――――っ!! うおおぁああっ!!」
「あッ、あぁぁッ! ふぁああぁンッ♪」
また、またティータは使ったのか。俺の目を見つめて、魅了の魔法をこんな至近距離で……。
もうティータの事しか見えない。ティータの膣内をペニスで蹂躙する事しか考えられない。押さえつけるようにティータにのしかかり、盛りのついた繁殖期の獣のように、目の前にいる女に種付けして孕ませる。
生きる者としての本能を魔法で増大させて、理性という制御をいともたやすくぶち壊す。初めてのセックスなのだから優しくしてやりたいのが男としての優しさなのだが、ティータはそれよりも、乱暴で野蛮な、生殖衝動に身を任せたセックスを選んだのだ。
「あっ、あ、あぁぁあッ! あんっ、きもち、いいぃっ♪ こんな激しくっ、され、てぇ♪ ボク、ボク感じすぎてっ、はぁあぁあっ♪ おかしく、なっちゃうっ♪」
「ああぁっ、はぁぁあっ、うぁあああっ!!」
「んぁぁあ――――っ♪♪♪ またボクのおまんこの、中でぇっ♪ おっきく、おちんちん、おっき、おっきくぅっ♪ ボクのおまんこが、クロードさんのおちんちんの形、覚えちゃぅ……っ♪」
部屋に響くのは俺の欲望と本能を受け止めるティータの喘ぎ声と、呼吸を荒くして、逃げるはずもないのに、逃げないようティータを抱きしめながら腰を振る俺。そして繋がった場所からはずちゅ、ずっちゅ、と言う音と肉同士がぶつかり合う音。
誰にも邪魔されない、俺とティータだけに許された空間。二人だけの秘密の場所。
「ティー……タ、ティー、タ……ッ」
「クロード、さんっ♪ あんっ、あんっ、あぁ、あ、あっ、ボク、ボクイクのっ! もうイッちゃうのっ、クロードさんのおちんちんでイかされちゃうのぉぉっ♪♪♪」
魔界の野菜の効果と先ほどの愛撫で、ティータの身体がとても敏感になってしまっているらしい。ピストンを始めたばかりなのに、もうイッてしまいそうだと言う。その証明に俺のペニスから精液を搾り取ろうとするかのようにぴったりと締まり、俺も同時に絶頂へと達してしまいそうだ。
「ティータッ、ティー、タッ」
「ぅんっ♪ うんっ♪ いいよ、ボクのおまんこ、クロードさんの為にあるんだもんっ、だから、だからっ、いっぱいボクの中に出してぇっ♪♪♪」
「あ、アアァアッ!! ティータッ!」
「ふあぁぁああっ、あぁああんっ♪ きて、きて、あぁンッ! ボク、おまんこ、なか、だしっ♪ たくさん、たくさんっ♪ いっしょに、いっしょにイクのぉ♪」
ティータ。生殖。射精。膣内。妊娠。
脳内でその言葉たちがよぎっていき、そして意識はティータの膣内にあるペニスに集中していく。
乱暴で犯すように振っていた腰を一気に奥へと突き出し、ティータを力強く抱きしめる。
「〜〜〜〜〜っ♪♪♪♪♪ イッ、ちゃ……っ!!」
「イ、クっ!!」
「――――っ、ぁああぁぁぁああああ―――――――んっ♪♪♪♪♪♪」
射精すると同時にティータと絶頂を迎える。精液を発射する度にがくがく、と腰が暴れる。ティータもだらしなく口を開けて、俺の精液を受け入れている。
最後に突き出した時に、ティータの子宮まで侵入してしまったらしい。ペニスの先の部分が子宮口の硬い場所を強引にこじ開けている感覚がある。つまりは、直接出している、という事になる。
どく、どく、どくん。大きく分けて三回ほど精液を発射した。その動きに合わせてティータの膣内も、吸い上げるように蠢く。
「あ……、あはぁ……♪ ボクの、子宮に……っ、熱い精液、出てるぅ……っ♪」
「ア……アア……ッ」
一体どれだけ強力な魔法を使ったのか、何かを言いたくてもまともに喋られない。
――――故に。
「あぁンッ!?」
「出す……ッ、もっと……ッ、ティータ、孕ませる……ッ!」
「やぁあんっ!」
俺のペニスは萎えたりせず、硬さをそのままにしてまた暴れるようなピストンを始める。精液を出したからか、より水音が大きく響く。
「あっ、あんっ、あんっ、ああぁあンッ!! 待って、ボク、まだイッて、イッてるのっ♪」
「孕ませる……ティータ……ッ、妊娠……ッ!」
「やぁんっ♪ 野菜の効果と魔法の効果でクロードさんがケダモノになっちゃったぁぁっ♪♪」
「犯す、犯す、ティータ、犯す、孕めッ」
制御なんて出来ない。全ては本能の赴くままに。目の前の雌を妊娠させるのだ。
「ボク、犯されてるっ♪ クロードさんの子供を孕まされるのぉっ♪」
「アァ、アァァッ!!」
「ふぁぁぁああっ♪♪♪ こんなに感じさせられたらっ、こんなに、凄かったら、ボク、癖になっちゃうよぉっ♪ 乱暴にされたくなるよぉっ♪♪」
孕ませる。妊娠させる。子を産ませる。
孕め。妊娠しろ。俺の……ッ、
「俺の子供をッ、産めッ!!」
「はいっ♪ ボク、ティータはっ♪ クロードさんの子供を産みますっ♪ だから、だからぁっ、何度も、何度もティータに種付けセックス、してくださいっ♪♪♪」
「する、妊娠ッ、させるッ」
「あぁああっ♪♪ イクの、イッてるのにまたイクのぉぉっ♪ あ、あ、あ、あっ、あぁぁあああ――ッ♪♪♪」
「う、おおおっ!」
射精する。
ピストンをやめない。
まだ出せる。
だから、続ける。
「ふぁああっ♪♪♪ 中出ししながらピストンいいよぉっ♪♪ ティータ、もう、イきっぱなしだよぉっ♪ あンッ、あんっ、あぁぁんっ♪ イかされまくっちゃうぅぅんっ♪♪」
「があ、ああぁぁっ!!」
ティータの事しか考えられない。
ティータを妊娠させる。
ティータに中出し。
「はぁ、はぁ、はぁ……ッ」
「んぁああっ♪♪ ああぁ、ぁあっ、あああっ♪ また、またイクぅぅっ♪」
「ティータ、ティータぁぁっ!!」
「んぅぅっ♪ ん、ちゅっ、ちゅ、ちゅぱっ♪」
唇にむしゃぶりつきながら、何度も何度も何度も腰を打ちつける。愛液と二度出した精液でティータの膣内はもうどろどろだ。
「ちゅっ、じゅるっ」
「んっ♪ ちゅっ、ちゅぱ、ん、ちゅぅぅぅっ♪」
そしてまた、射精前のゾクゾクした快感が生じる。これで俺はもう出ないだろう。体力的にももう限界が近い。射精する前に気絶してしまいそうだ。
「ティータッ、また、出す、出る……ッ」
「ちゅぱっ♪ はぃ……♪ また、だして、出してぇっ♪」
「ティータ、ティータ、ティータッ!」
「ふぁあっ、あぁあっ、あんっ、あ、ああ、あ、あ、あ、っ♪」
これで、最後だ。
「うあ、あああぁぁぁっ!!」
「きたぁっ♪ また、ティータのおまんこに精液きたぁんっ♪」
ティータの身体を抱きしめながら、最後の射精をする。悔いのないように、最後の一滴まで注ぐ。
とろけた表情でティータは俺の精液を受け入れる。その顔を見つめていると、目を閉じた。俺はさっきのむしゃぶりつくようなキスではなく、優しく、唇を合わせる。
するとティータはにへら、と笑って、
「凄く、格好良かったです……♪」
そう言ってくれた。さっきまでの衝動は三回射精する事で収まっていた俺は、真正面からそんな事を言われたので顔が熱くなる。
冷静になればなるほど、俺の性衝動が獣そのものすぎて罪悪感が湧く。
……が。それはティータが俺にかけた魅了の魔法によって増大させられた。つまりは…………。
「また魔法を使っただろぉ……」
「あぁぅぅぅぅ……」
こめかみをぐりぐりの刑に処すことにした。まぁ、力は全然入れていないが。
「全く……そんなもん使わなくたって…………」
「使わなくたって?」
「なんでもないよっ」
気恥ずかしくなって、俺はティータの横に転がった。もう、全身がくたくただ。そりゃそうだ、抜かずの三連発だったのだから。童貞卒業にしちゃちょっとハードすぎる。
と、ティータが結んだままの方の左手に指を絡めた。
「ねぇねぇ、さっき何を言おうとしてたんですかぁ?」
「だからなんでもないって」
「言ってくださいよぉー」
今度はティータが馬乗りになり、問い詰めてきた。と、ティータの股から俺が出した精液が垂れていた。うわ、あんなに出したのかよ……。
「ねーねー」
「あぁもう、わかったって」
「ふふん♪」
「だから……、魔法なんか使わなくても」
「うん、うん」
ったく、なんてキラキラとした瞳で俺を見るんだ。余計に言いづらいわ。
「俺は……、ティータに惚れてるんだから、使わなくていいだろって……言いかけたんだ」
「〜〜〜〜〜っ♪♪ クロードさん大好きですっ♪」
そう言ってティータは俺に抱きつく。すげぇ恥ずかしい。
「えへへ、ボク、今日の事絶対に忘れませんから♪」
「俺だって、忘れられそうにないよ」
酔った勢いで宝箱を拾ってから始まったこの関係。まさか宝箱がミミックだなんて思いもしないだろう。
「こうして、恋人を手に入れたんですから♪」
「あー、まぁ……そうだな」
「ボクたちミミックがリボンの飾りをつけているのはそう言う事なんですよ♪」
「ん? つまり?」
「宝箱にはお宝が入っているものですよね? だから、ミミックは自分自身をプレゼントしちゃうんです」
なるほどねぇ……。だがその実、開けた男を宝箱の中へと引き込んで襲うんだから、どっちがプレゼントなんだか。今も俺は宝箱の中に居るわけだし。やれやれ、一日にして劇的な変化が起こった休日だな。
「……で、今日はもうこのままか?」
「はい♪ ボクのお部屋でこのまま朝まで……♪」
「いや、それはいいんだが、明日からまた仕事がある」
そう、今日は日曜日だから明日は月曜日。明日からまた仕事があるのだ。筋肉痛で全身が痛くなっても、出勤しなければならない。仕事とはそういうものである。
「……ぶー」
「膨れない」
「ここで寝るのはいいんだが、明日の朝には出ないといけないんだ」
「……ボクが許可しないと出られないですよ」
…………今、なんと言った?
「な、なんて言った今」
「ボクが許可しないと、ここから出る事は出来ません。だって、ボクの空間ですし」
「よし今出よう今すぐ」
「や、です」
そう言ってティータはまた俺の身体にしがみつく。
まずい、まずいぞー。これじゃ明日どころかこれからもずっとこの空間で過ごすハメになりそうだぞー。
なんとか、なんとか交渉せねば。
「わかった、今じゃなくていい。今じゃなくていいから、明日には出ような? な?」
「…………」
何故そこで黙るんですかちょっとぉぉぉーっ!
「明日仕事から帰ったら、ティータの為に何でもするから! な? な?」
「……じゃあ、明日もいっぱいえっちしてくださいね?」
いっぱい、と来たか……。まぁそういうのが大好きな魔物娘だからわかってはいたが。
しかしここでまた変な事を言ったらマジで出られないだろう。
「わかった。明日帰ったらすぐにしよう」
「うん……わかりました」
ふー。これで一安心か。後はもう風呂に入ってさっぱりして、寝るだけだ。
流石にもう、風呂場ではしないよな。俺のペニスももう無理って言ってるし。
それにしても、ミミックの空間ってすごいな。風呂もあるし台所があるから当然火が出る。こんな場所でも精霊の力を借りられるんだから。
そんな事を考えながら風呂に入り(三度の射精で満足したのか、ティータは誘惑してこなかった)、体重が軽いティータが上になって俺たちは眠った。
俺の家にあるベッドよりもふかふかで、いい匂いがするベッドで目覚めるのは気持ちがいいものだ。それに、すぐそばにはティータがいて今も幸せそうな顔で眠っていて思わず笑みがこぼれる。
さて、そうも言ってられないな。今日からまた仕事だ。独身の時はただ金が貯まっていくだけだったが、ティータという存在が出来てからは仕事をする理由の一つになった。これからも頑張って働かないとな!
ところで、今何時だ? そう思って俺は部屋に時計がないか探す。すると壁に掛けられていた時計を発見し、短針がちょうど一番上を指していて――――。
「わぁぁぁぁあああああ!!!」
「ふえぇえっ!?」
思わず思い切り叫んだ。おかげでティータも飛び起きる。
「ち、ち、ち」
「やだぁ、起きたばかりなのにボクのおっぱいを揉みたいなんてぇ」
「遅刻ってレベルじゃねぇ――――ッ!!」
その後、超急いで出勤して、事情を説明したら上司に「魔物娘ならしょうがないな」と言われてお咎めなしになった。
明緑魔界ではよくある話である。
12/11/09 04:16更新 / みやび