第四話「謎の竜騎士団基地 〜〜独身寮を案内せよ〜〜」
ユードラニナは、ザックの手を引いて本部棟の建物に一旦入った。
「この建物が竜騎士団本部だ。本当はドラゴニア竜騎士団作戦統合本部というのが正式名称だが、面倒なので皆、本部と呼んでいる」
建物の中は、窓から入る光のほかに、天井にうっすらと明かりがついていた。その照明に照らし出されたのは、外観に負けず劣らず華美な内装であった。
「建物自体は旧帝国時代に上民――他の国でいうところの貴族のことだ。その子弟が通う学校だったが、今は改修して竜騎士団が使っている」
廊下を歩きながらユードラニナが説明した。ザックはただの廊下なのに彫刻などで化粧の施された窓枠や柱などを見て、軽く驚嘆の声を上げた。
「旧帝国時代の建物は皇国内に数多く残っているが、その中でもこの建物はほぼ戦火に焼かれることがなかったので貴重らしい。建築物に興味ある観光客がオプショナルツアーでよく見学に来ている」
ユードラニナはそういうことに興味がないのか、あっさりとした説明であった。ザックの方は、何でも屋をしていた時に建築現場にはよく行っていたので、その細かな仕事の凄さがわかり感心した。これほどのものなら観光客が来るというのも納得した。
自分の生活水準の低さを差し引いても、竜騎士団本部の内装は、見たことはないが大国の宮殿に匹敵するのじゃないかと感じた。ザックは物珍しさに鳩のように首を動かし周りをキョロキョロと見ていた。ユードラニナに手を引っ張られていなければ、何度か柱か壁にぶち当たっていただろう。
「ところで、本部は何をするところなんだ? 大事なところというのはわかるんだが」
建築物の説明は無理だろうと諦め、基本的なことを質問した。
「作戦統合本部は、その名の通り、竜騎士団の作戦を考えて、それを元に各部隊に指令を出したりするところだ。他にも、騎士団団員の人事を決めたり、行事の段取りをする」
「行事?」
ザックは先の二つはわかったが、最後の行事のところで首をひねった。
「騎士団で花見に行ったり、温泉に行ったりすることだ。他にも竜騎士団の畑で作ったのマカイモ掘りもある。初摘みの葡萄を騎士団の独身の竜たちで踏んでお酒を造ったりするし……ああ、閲兵式もあったな」
ユードラニナは定番らしい行事を指折って挙げていった。ザックは、閲兵式がいの一番じゃないことにはツっこまないでおいた。
「それから本部は暇な団員がたむろする場所でもある。酒は禁止だが、菓子などは許可されているから、団員たちは空いている部屋でお茶会などしているな」
ザックは竜たちのお茶会を想像して、ちょっと顔を和ませた。
「あとは、竜騎士団の訓練もこの本部が拠点になる。候補生の訓練は第十教導部隊の管轄となるが、教導部隊は騎士団長直属の第零特部隊と同様、この本部が駐屯地だからな」
「そういえば、ユニはその第零特部隊だったんだよな? じゃあ、俺と同じ駐屯地なんだな」
ザックが思い出したように言うと、ユードラニナは顔を背けた。その様子に、ザックは「違ったか?」と思った。
「そ、そうだ。私の所属はザックの言うとおり零特隊だ。零特隊は、騎士団長直属の精鋭部隊と言われている」
何か少し上ずった声でユードラニナが答えると、ザックは自分の記憶が正しかったことに安心した。
「すごいんだな、ユニは」
「そ、そんなことはない。ちょっと長く生きているだけだ。自慢するようなことじゃない」
素直に感心するザックにユードラニナは慌てるように否定すると廊下を曲がり、突き当たりの扉を開けた。
建物の裏に抜けるための扉らしく、夕闇に沈もうとしている裏庭に出た。
「もう、こんなに日が傾いて来ているのか」
ついさっきまではまだ日が高いイメージがあったため、ザックはどれほど長く騎士団本部にいたのかと時間感覚が狂った。
「ドラゴニアは山岳地帯にあるから日の出は遅く、日の入りは早いんだ。その上、魔物の魔力で空はあっという間に黄昏時になる。だから、街に出ても油断しているとあっという間に夜になってしまう」
ユードラニナはザックに改めて注意した。ここは親魔物国家でなく、魔物国家である。時間の流れすら、人間の世界と異なると思っておいたほうが良いと。
「肝に銘じておくよ。しかし、随分と広い裏庭だな」
ザックはそろそろ耳にタコができそうだと話を切り替えた。
裏庭というよりも、ちょっとした広場ほどの面積があり、外周部は何人もの人間が何度も走って踏み固められた土の地面だが、中央は芝生が植えられてあり、緑の芝を赤い夕日が染め上げていた。
「ここは基礎訓練をするための練兵場だ。今日は休息日だから誰も訓練していないがな」
ユードラニナは、訓練は基本的に五日単位で行われて、四日訓練して、一日休みというサイクルが基本となると説明した。
「もちろん、これは基礎訓練の場合で、訓練の種類によって変わることもある。だが、しばらくは基礎訓練がほとんどだろう」
ザックは練兵場に置いてある訓練を行うための器具などを見て、思わず喉の渇きを覚え唾を飲み込んだ。
「やっぱり、厳しい訓練なんだろうな」
「当たり前だ。竜騎士団をなんだと思っている? それに、厳しい訓練を騎竜と共に乗り越えてこそ、竜騎士と騎竜の間に強く固い絆が生まれるのだ」
ユードラニナの言葉にザックは「それはそうだな」と少しうなだれた。
「竜騎士になるなんて言って後悔したか?」
「いや、そんなことはないよ。ちょっと、自信がなくて不安だっただけだ」
始まる前から怖気づいている自分の情けなさでユードラニナの顔を見ることができず、視線を練兵場の方に向けた。
「ザック、不安にさせてすまない。私は意地が悪いな」
急にユードラニナが謝って、ザックは驚いて彼女の方を見た。
「だが、安心しろ。どんなに辛い訓練でも、お前のパートナーとなる騎竜が支えてくれる。それだけは保障する。だから、お前のできる範囲で頑張ればいい」
ユードラニナの自分を握る手に力が入るのを感じて、勇気をもらった気がした。
「そうだな。俺ができることを精一杯する。今までと同じじゃないか」
ザックが不安を振り払って笑顔を見せると、ユードラニナも安心したように笑顔になった。
「と、ところで、独身寮というのはまだ遠いのか?」
ユードラニナの笑顔に心臓の鼓動が跳ね上がり、顔が赤くなるのを感じて、ザックはごまかすように話を変えた。
「いや、もう着いている。この練兵場を挟むように建っている二棟が独身寮だ」
「そうなのか?」
ザックは驚きの声を上げた。
というのも、練兵場を挟むように建っている二棟は、本部棟ほど華美ではないが、白亜の美しい建物であった。二階建てで、一階、二階共に練兵場側は半屋外の廊下になっている。上の廊下を支えるための柱が等間隔で建っていて、その上をアーチで繋いでいた。
柱には飾りの縦溝が彫ってあり、アーチにはフレスコ画で文様が描かれている。それが奥行きのある練兵場の端まで続いていた。
廊下には扉が一定間隔で並んでいて、その間隔からすると一部屋の大きさはザックが住んでいた部屋の二倍――奥行きが不明なので、下手すると四倍ぐらいの広さがありそうだった。
ザックはてっきり、訓練関係の施設と思っていただけに驚きは大きかった。
「こんなに大きな寮だなんて、思わなかった」
「私たちが今いる方、左側が候補生の寮で青竜寮だ。反対側が赤竜寮で、独身の竜たちの寮だ。この二棟を合わせて、双竜寮とも呼ばれている。ついでに言うと、ここから少し離れたところにも独身の竜たちの寮がある。そちらは白竜寮と言われている」
ユードラニナの説明に、ここ以外にもまだ寮があるのかとザックは言葉を失った。
「ザックの部屋は二階の真ん中当たりだ」
呆けているザックをユードラニナは手を引いて階段を上がった。
二階も一階と同じで、違いと言えば、廊下の練兵場側に手すりの壁があることぐらいであった。
驚きも慣れてしまえば日常と変わらず、ザックもこの驚きの光景に頭が慣れてきた。少しばかり冷静になった頭にあることが引っかかった。
「ユニ?」
「何だ、ザック?」
「もう、はぐれる心配はなさそうだから、手を離してもいいと思うんだが?」
ザックの言葉にユードラニナはぴたりと動きが止まった。まるでメドゥーサにでも睨まれた男性のように硬直した。そして、油の注していないからくり人形のように錆付いた動きで首を回して、繋いでいる手を確認した。
「こ……これは!」
ユードラニナは手を離そうとしながらも離さずにいて、しばらく口をパクパクさせていた。なにやら慌てふためく彼女にザックは怪訝な顔をした。
「これは、その、なんだ。つまりはだな。要するに、お前のような好奇心旺盛な人間は案内されているということを忘れて、物珍しいものを見つけて、そちらへふらふらと寄り道することがある。そうして迷子にならぬように、こうして手を引いて引率している。これも教本に書かれている通りの行動だ。ゆえに、他意はない。わかったか?」
一気にまくし立てるように説明すると、妙に呼吸を荒くしていた。
「そうなのか。それは悪かった。何しろ、俺は何も知らないからな。これからも色々と教えてくれ、ユニ」
「あ、ああ。当然だ。竜騎士団では私が先輩だからな。後輩の指導は先輩の職務だ」
ユードラニナの上ずった声が夕闇の廊下に響いた。もし、ザックが夜目の利く男であったなら、彼女の顔が夕焼けよりも赤くなっているのを見逃さなかっただろう。しかし、ザックには夕焼けの色が顔を染めているとしか思わなかった。
「しかし、大きい建物だな。ちなみに、ここには何人ぐらい竜騎士が住んでいるんだ? これだけ大きいと、すごい人数いそうだが」
その割には静かなことにザックは少し前から不審に感じていた。
「竜騎士はここには一人もいない。竜騎士に叙任されると、大抵は駐屯地外に巣を購入するからな」
今、二人がいる辺りはほとんどが空室であるとユードラニナが説明した。
「そうなんだ。やっぱり、寮だと規則とかあって息苦しいのか?」
ザックは寄宿舎という貴族階級の子弟が通う学校の寮、特に反魔物国家の教団設立の学校の寮は軍隊よりも厳しい規則と戒律で息をするのも苦労すると聞いていた。
厳しい訓練の上に自由がないのは少し辛い。
「いや、そういうことはない。飲酒も許されているし、これと言った規則も無い。一応、門限はあるが、騎竜と一緒であるなら、門限オーバーしても問題にされない。それどころか、仲がいいのはいいことだと褒められるぐらいだ。余程馬鹿なこと――例えば、建物を壊したりするようなことさえしなければ、ほとんどお咎めなしだ」
「人間の世界で聞いていた寮とは大違いだな」
魔物らしい寮の規則に正直ほっとした。
「ん? でも、それじゃあ、何でわざわざ寮から出るんだ? 叙任されたら基本、出て行く不文律でもあるのか?」
ザックは首をひねった。竜騎士の給金がいくらかは知らないが、家を買うとなると安くはないだろうことぐらいは想像できた。
「そういうものはないが……私たち、竜は元々は独居性の魔物だ。だから、こういう寮よりも自分の家、できれば一戸建てを欲しがるんだ。マイホームを持てば、気分的にも自分の主が一国一城の主に感じられるだろう?」
ユードラニナの説明にザックは納得した。それは人間でもある話で、多少の無理をしてでもいいところに住みたがるのは、魔物にもあるのだなと感心した。
「だから、この寮に住んでいるのは、独身の竜と竜騎士の候補生たちだけだ。三つの寮あわせて、人数はおよそ百人ほど。割合は……竜八に候補生二程度だったはずだ」
「独身の竜のほうが圧倒的に多いんだな」
ユードラニナの言った割合にザックは素直に驚いた。
「竜を屈服させ、主と認めさせないといけない竜騎士になろうという人間は、よほどの自信家か、よほどの竜好きぐらいだからな。志願者は少ないのは今に始まったことじゃない」
「言われてみればそうか」
ザックは、竜騎士になるというのは、騎士になって近衛隊に入るというぐらいのハードルの高さを感じた。
「だから、私はお前が竜騎士になるというのを反対したのだ。それをまったく、意地を張って志願するなど。これからは、よほどの天邪鬼というのも追加せねばならん」
ユードラニナは昨日の迎賓館でのやり取りを思い出し、口を尖らせた。
「何も知らずに志願したのは無鉄砲とは俺も思うが、平々凡々な俺がユニたちと出会って、関わりあったのは凄い偶然だ。だから、それを逃したくはなかったんだ。幸運のことを、龍の髭にひっかかるって言うだろ?」
半分以上は意地で志願したのだが、うだつの上がらない自分自身に嫌気もあり、思い切ったことがしたかったという気持ちもあった。
「それで故郷も捨てるか。夢があったのではないか? 親しい人もいただろう? その……恋人や、片想いの相手とか……」
最後の方は消え入りそうなほど小さく呟きに近かった。
「あの街は故郷じゃないよ。俺が生まれ育った村は飢饉と戦火でなくなった。難民であの街にたどり着いて細々暮らしていただけだ。だから、今日を生きるのが精一杯。夢なんて見る暇はなかったよ。
親しい人と言っても、親は死んでしまったし、兄弟も散り散りでどこにいるかも知らない。それ以外、知り合いと言えば、ほとんど仕事がらみだったからな。友人と言っても、酒場の知り合い程度だ」
ザックはちょっと思い出すように身の上話を彼女に聞かせた。
「そうか。辛い思いをしてきたんだな」
しんみりとユードラニナが呟くと、ザックはその頭を軽くチョップした。
「な、何をする!」
頭を押さえて吼えるようにユードラニナは睨みつけた。しかし、それよりも怒りの瞳でザックが睨んでいた。その迫力に彼女はわずかに気圧された。
「ふざけたことを言うな。いいか? このご時勢、生きてるだけで丸儲けだ。確かに、楽な生活じゃなかったが、楽しいことがなかったわけじゃない。笑ったり、喜んだり、楽じゃない分工夫したり、毎日を全力で生きてきた。それを辛い思いで一括りにするな。
人間というのは、魔物より弱いかもしれないが、そっちが思うよりも強かで図太い幸せに敏感な生き物なんだよ」
「すまない。私が浅はかだった」
頭を下げようとするユードラニナをザックが止めた。
「わかってくれればいいよ。俺の方が竜騎士団では大分と後輩だけど、これから一緒に仕事をする仲間だろ? 仕事の上下はあるかもしれないけど、対等に付き合っていこう。俺だって竜だからって恐がらないし、ユニも人間だからって哀れまない。そういうことにしてくれると嬉しい」
そういって、手をつながれていない手を差し出した。
ユードラニナは一瞬迷ったが、繋いでいた手を離して、差し出された手を握ってザックと向き合った。
「ザック……その……よろしく」
「ああ、よろしく、ユニ」
どっちが先輩で後輩かわからないが、人と竜の固い握手を交わした。
ザックは握手を交わしているだけだが、なんともむず痒い、奥歯で蜂蜜レモンを噛み潰すような感覚になってきた。
「そ、そうだ。一つ訊きたいんだが?」
ザックは上ずった声で話を切り替えた。
「な、なんだ? 私が答えられる事ならなんでも教えるぞ」
ユードラニナも少しばかり挙動不審というか、高い声でザックの質問に応じた。
「竜騎士の騎竜というのは、どうやって決まるんだ? というか、騎竜というのは候補生に選ぶ権利があるのか?」
ザックの質問にユードラニナが盛大にこけた。
「そこからか!」
「悪かったな。竜騎士についてほとんど知らないんだ」
ザックはちょっとバツ悪そうに口を尖らせた。
「そうだったな。わかった……まず、騎竜というのは、竜騎士が乗る竜のことだ。人と竜、セットで本当の意味で竜騎士とも言える。だから、竜騎士のペアは生涯変わらない。これは絶対だ」
ユードラニナは気を取り直してザックに説明を始めた。
「明日、団長から説明があると思うが、竜騎士に志願した候補生は、まず最初に自分のパートナーである竜を選ぶ。期間は十日以内だったはずだ」
「生涯の相手を見つけるには随分と短いんだな」
ザックは意外だと口を挟んだ。
「それだけあれば十分だろう? 自分の好きな――自分の相棒を直感で選ぶこともできん人間が竜騎士になれるわけがないだろう?」
その意外そうな口ぶりに逆にユードラニナが意外とばかりに返した。
「そう言われると確かにな」
「ほとんどないが、もし選びきれずに十日を過ぎれば、『誰でもいい』といったことになるから、今度は竜たちが選ぶことになる」
ザックはその様子を想像して軽く顔を引きつらせた。伴侶に飢えた竜たちの巣に放り込まれるのだから、その竜騎士候補は相当な目にあうだろう。
「候補生は選んだ竜と共に訓練をして、お互いの絆を強めていく。そうして、竜が候補生を自分の背に乗せるにたる人間と認めたとき、真の竜騎士になるというわけだ。わかったか?」
「わかった。そこで一つ疑問なんだが、ペアを組んでは見たものの相性が悪い場合は、ペア解消などもあるのか?」
ザックの質問にユードラニナは露骨に嫌な顔をした。
「ないことはない。ただ、竜騎士団の長い歴史の中でそういうケースは数例ほどだ。それに相性が悪いといわれ、竜騎士となるのに十年の月日を費やしたペアがいたが、その竜騎士ペアはその後、伝説と言われるほどの活躍をした。絆というものは色々あるということだ」
ザックはしょっちゅう喧嘩をしている割にはいっこうに離婚しない夫婦など思い出し、妙に納得した。
「あと、もう一つ聞いてもいいか? 騎竜を選ぶのは、独身の竜なら誰でもいいのか? 例えば、アルトイーリス団長でも?」
ザックの質問にユードラニナはこめかみに青筋を立てた。
「ああ、構わんよ。相手に自分を認めさせることができると思うなら、竜騎士団に所属している独身の竜なら、誰を指名しようと構わない。それが騎士団団長であっても、副官であっても、新人の若い竜であってな」
吼えるようにザックの質問に答えた。
「そうか。それを聞いて安心した。ユ――」
「ザックの部屋はここだ。明日の朝に迎えに来る。それまでにちゃんと寝て、旅の疲れを取っておけ。初訓練で居眠りなどしてみろ、ただではおかないからな!」
何かを言いかけたザックの言葉を遮るようにユードラニナは部屋の鍵を投げ渡して、扉の一つを指差した。
「わ、わかった。じゃあ、早いけど、おやすみ。また、明日」
ザックはユードラニナの剣幕に圧されて鍵を受け取って素直に部屋へと入って行った。
ユードラニナは怒りが静まらないと廊下に足音を響かせて夕闇の中へと消えて行った。
「この建物が竜騎士団本部だ。本当はドラゴニア竜騎士団作戦統合本部というのが正式名称だが、面倒なので皆、本部と呼んでいる」
建物の中は、窓から入る光のほかに、天井にうっすらと明かりがついていた。その照明に照らし出されたのは、外観に負けず劣らず華美な内装であった。
「建物自体は旧帝国時代に上民――他の国でいうところの貴族のことだ。その子弟が通う学校だったが、今は改修して竜騎士団が使っている」
廊下を歩きながらユードラニナが説明した。ザックはただの廊下なのに彫刻などで化粧の施された窓枠や柱などを見て、軽く驚嘆の声を上げた。
「旧帝国時代の建物は皇国内に数多く残っているが、その中でもこの建物はほぼ戦火に焼かれることがなかったので貴重らしい。建築物に興味ある観光客がオプショナルツアーでよく見学に来ている」
ユードラニナはそういうことに興味がないのか、あっさりとした説明であった。ザックの方は、何でも屋をしていた時に建築現場にはよく行っていたので、その細かな仕事の凄さがわかり感心した。これほどのものなら観光客が来るというのも納得した。
自分の生活水準の低さを差し引いても、竜騎士団本部の内装は、見たことはないが大国の宮殿に匹敵するのじゃないかと感じた。ザックは物珍しさに鳩のように首を動かし周りをキョロキョロと見ていた。ユードラニナに手を引っ張られていなければ、何度か柱か壁にぶち当たっていただろう。
「ところで、本部は何をするところなんだ? 大事なところというのはわかるんだが」
建築物の説明は無理だろうと諦め、基本的なことを質問した。
「作戦統合本部は、その名の通り、竜騎士団の作戦を考えて、それを元に各部隊に指令を出したりするところだ。他にも、騎士団団員の人事を決めたり、行事の段取りをする」
「行事?」
ザックは先の二つはわかったが、最後の行事のところで首をひねった。
「騎士団で花見に行ったり、温泉に行ったりすることだ。他にも竜騎士団の畑で作ったのマカイモ掘りもある。初摘みの葡萄を騎士団の独身の竜たちで踏んでお酒を造ったりするし……ああ、閲兵式もあったな」
ユードラニナは定番らしい行事を指折って挙げていった。ザックは、閲兵式がいの一番じゃないことにはツっこまないでおいた。
「それから本部は暇な団員がたむろする場所でもある。酒は禁止だが、菓子などは許可されているから、団員たちは空いている部屋でお茶会などしているな」
ザックは竜たちのお茶会を想像して、ちょっと顔を和ませた。
「あとは、竜騎士団の訓練もこの本部が拠点になる。候補生の訓練は第十教導部隊の管轄となるが、教導部隊は騎士団長直属の第零特部隊と同様、この本部が駐屯地だからな」
「そういえば、ユニはその第零特部隊だったんだよな? じゃあ、俺と同じ駐屯地なんだな」
ザックが思い出したように言うと、ユードラニナは顔を背けた。その様子に、ザックは「違ったか?」と思った。
「そ、そうだ。私の所属はザックの言うとおり零特隊だ。零特隊は、騎士団長直属の精鋭部隊と言われている」
何か少し上ずった声でユードラニナが答えると、ザックは自分の記憶が正しかったことに安心した。
「すごいんだな、ユニは」
「そ、そんなことはない。ちょっと長く生きているだけだ。自慢するようなことじゃない」
素直に感心するザックにユードラニナは慌てるように否定すると廊下を曲がり、突き当たりの扉を開けた。
建物の裏に抜けるための扉らしく、夕闇に沈もうとしている裏庭に出た。
「もう、こんなに日が傾いて来ているのか」
ついさっきまではまだ日が高いイメージがあったため、ザックはどれほど長く騎士団本部にいたのかと時間感覚が狂った。
「ドラゴニアは山岳地帯にあるから日の出は遅く、日の入りは早いんだ。その上、魔物の魔力で空はあっという間に黄昏時になる。だから、街に出ても油断しているとあっという間に夜になってしまう」
ユードラニナはザックに改めて注意した。ここは親魔物国家でなく、魔物国家である。時間の流れすら、人間の世界と異なると思っておいたほうが良いと。
「肝に銘じておくよ。しかし、随分と広い裏庭だな」
ザックはそろそろ耳にタコができそうだと話を切り替えた。
裏庭というよりも、ちょっとした広場ほどの面積があり、外周部は何人もの人間が何度も走って踏み固められた土の地面だが、中央は芝生が植えられてあり、緑の芝を赤い夕日が染め上げていた。
「ここは基礎訓練をするための練兵場だ。今日は休息日だから誰も訓練していないがな」
ユードラニナは、訓練は基本的に五日単位で行われて、四日訓練して、一日休みというサイクルが基本となると説明した。
「もちろん、これは基礎訓練の場合で、訓練の種類によって変わることもある。だが、しばらくは基礎訓練がほとんどだろう」
ザックは練兵場に置いてある訓練を行うための器具などを見て、思わず喉の渇きを覚え唾を飲み込んだ。
「やっぱり、厳しい訓練なんだろうな」
「当たり前だ。竜騎士団をなんだと思っている? それに、厳しい訓練を騎竜と共に乗り越えてこそ、竜騎士と騎竜の間に強く固い絆が生まれるのだ」
ユードラニナの言葉にザックは「それはそうだな」と少しうなだれた。
「竜騎士になるなんて言って後悔したか?」
「いや、そんなことはないよ。ちょっと、自信がなくて不安だっただけだ」
始まる前から怖気づいている自分の情けなさでユードラニナの顔を見ることができず、視線を練兵場の方に向けた。
「ザック、不安にさせてすまない。私は意地が悪いな」
急にユードラニナが謝って、ザックは驚いて彼女の方を見た。
「だが、安心しろ。どんなに辛い訓練でも、お前のパートナーとなる騎竜が支えてくれる。それだけは保障する。だから、お前のできる範囲で頑張ればいい」
ユードラニナの自分を握る手に力が入るのを感じて、勇気をもらった気がした。
「そうだな。俺ができることを精一杯する。今までと同じじゃないか」
ザックが不安を振り払って笑顔を見せると、ユードラニナも安心したように笑顔になった。
「と、ところで、独身寮というのはまだ遠いのか?」
ユードラニナの笑顔に心臓の鼓動が跳ね上がり、顔が赤くなるのを感じて、ザックはごまかすように話を変えた。
「いや、もう着いている。この練兵場を挟むように建っている二棟が独身寮だ」
「そうなのか?」
ザックは驚きの声を上げた。
というのも、練兵場を挟むように建っている二棟は、本部棟ほど華美ではないが、白亜の美しい建物であった。二階建てで、一階、二階共に練兵場側は半屋外の廊下になっている。上の廊下を支えるための柱が等間隔で建っていて、その上をアーチで繋いでいた。
柱には飾りの縦溝が彫ってあり、アーチにはフレスコ画で文様が描かれている。それが奥行きのある練兵場の端まで続いていた。
廊下には扉が一定間隔で並んでいて、その間隔からすると一部屋の大きさはザックが住んでいた部屋の二倍――奥行きが不明なので、下手すると四倍ぐらいの広さがありそうだった。
ザックはてっきり、訓練関係の施設と思っていただけに驚きは大きかった。
「こんなに大きな寮だなんて、思わなかった」
「私たちが今いる方、左側が候補生の寮で青竜寮だ。反対側が赤竜寮で、独身の竜たちの寮だ。この二棟を合わせて、双竜寮とも呼ばれている。ついでに言うと、ここから少し離れたところにも独身の竜たちの寮がある。そちらは白竜寮と言われている」
ユードラニナの説明に、ここ以外にもまだ寮があるのかとザックは言葉を失った。
「ザックの部屋は二階の真ん中当たりだ」
呆けているザックをユードラニナは手を引いて階段を上がった。
二階も一階と同じで、違いと言えば、廊下の練兵場側に手すりの壁があることぐらいであった。
驚きも慣れてしまえば日常と変わらず、ザックもこの驚きの光景に頭が慣れてきた。少しばかり冷静になった頭にあることが引っかかった。
「ユニ?」
「何だ、ザック?」
「もう、はぐれる心配はなさそうだから、手を離してもいいと思うんだが?」
ザックの言葉にユードラニナはぴたりと動きが止まった。まるでメドゥーサにでも睨まれた男性のように硬直した。そして、油の注していないからくり人形のように錆付いた動きで首を回して、繋いでいる手を確認した。
「こ……これは!」
ユードラニナは手を離そうとしながらも離さずにいて、しばらく口をパクパクさせていた。なにやら慌てふためく彼女にザックは怪訝な顔をした。
「これは、その、なんだ。つまりはだな。要するに、お前のような好奇心旺盛な人間は案内されているということを忘れて、物珍しいものを見つけて、そちらへふらふらと寄り道することがある。そうして迷子にならぬように、こうして手を引いて引率している。これも教本に書かれている通りの行動だ。ゆえに、他意はない。わかったか?」
一気にまくし立てるように説明すると、妙に呼吸を荒くしていた。
「そうなのか。それは悪かった。何しろ、俺は何も知らないからな。これからも色々と教えてくれ、ユニ」
「あ、ああ。当然だ。竜騎士団では私が先輩だからな。後輩の指導は先輩の職務だ」
ユードラニナの上ずった声が夕闇の廊下に響いた。もし、ザックが夜目の利く男であったなら、彼女の顔が夕焼けよりも赤くなっているのを見逃さなかっただろう。しかし、ザックには夕焼けの色が顔を染めているとしか思わなかった。
「しかし、大きい建物だな。ちなみに、ここには何人ぐらい竜騎士が住んでいるんだ? これだけ大きいと、すごい人数いそうだが」
その割には静かなことにザックは少し前から不審に感じていた。
「竜騎士はここには一人もいない。竜騎士に叙任されると、大抵は駐屯地外に巣を購入するからな」
今、二人がいる辺りはほとんどが空室であるとユードラニナが説明した。
「そうなんだ。やっぱり、寮だと規則とかあって息苦しいのか?」
ザックは寄宿舎という貴族階級の子弟が通う学校の寮、特に反魔物国家の教団設立の学校の寮は軍隊よりも厳しい規則と戒律で息をするのも苦労すると聞いていた。
厳しい訓練の上に自由がないのは少し辛い。
「いや、そういうことはない。飲酒も許されているし、これと言った規則も無い。一応、門限はあるが、騎竜と一緒であるなら、門限オーバーしても問題にされない。それどころか、仲がいいのはいいことだと褒められるぐらいだ。余程馬鹿なこと――例えば、建物を壊したりするようなことさえしなければ、ほとんどお咎めなしだ」
「人間の世界で聞いていた寮とは大違いだな」
魔物らしい寮の規則に正直ほっとした。
「ん? でも、それじゃあ、何でわざわざ寮から出るんだ? 叙任されたら基本、出て行く不文律でもあるのか?」
ザックは首をひねった。竜騎士の給金がいくらかは知らないが、家を買うとなると安くはないだろうことぐらいは想像できた。
「そういうものはないが……私たち、竜は元々は独居性の魔物だ。だから、こういう寮よりも自分の家、できれば一戸建てを欲しがるんだ。マイホームを持てば、気分的にも自分の主が一国一城の主に感じられるだろう?」
ユードラニナの説明にザックは納得した。それは人間でもある話で、多少の無理をしてでもいいところに住みたがるのは、魔物にもあるのだなと感心した。
「だから、この寮に住んでいるのは、独身の竜と竜騎士の候補生たちだけだ。三つの寮あわせて、人数はおよそ百人ほど。割合は……竜八に候補生二程度だったはずだ」
「独身の竜のほうが圧倒的に多いんだな」
ユードラニナの言った割合にザックは素直に驚いた。
「竜を屈服させ、主と認めさせないといけない竜騎士になろうという人間は、よほどの自信家か、よほどの竜好きぐらいだからな。志願者は少ないのは今に始まったことじゃない」
「言われてみればそうか」
ザックは、竜騎士になるというのは、騎士になって近衛隊に入るというぐらいのハードルの高さを感じた。
「だから、私はお前が竜騎士になるというのを反対したのだ。それをまったく、意地を張って志願するなど。これからは、よほどの天邪鬼というのも追加せねばならん」
ユードラニナは昨日の迎賓館でのやり取りを思い出し、口を尖らせた。
「何も知らずに志願したのは無鉄砲とは俺も思うが、平々凡々な俺がユニたちと出会って、関わりあったのは凄い偶然だ。だから、それを逃したくはなかったんだ。幸運のことを、龍の髭にひっかかるって言うだろ?」
半分以上は意地で志願したのだが、うだつの上がらない自分自身に嫌気もあり、思い切ったことがしたかったという気持ちもあった。
「それで故郷も捨てるか。夢があったのではないか? 親しい人もいただろう? その……恋人や、片想いの相手とか……」
最後の方は消え入りそうなほど小さく呟きに近かった。
「あの街は故郷じゃないよ。俺が生まれ育った村は飢饉と戦火でなくなった。難民であの街にたどり着いて細々暮らしていただけだ。だから、今日を生きるのが精一杯。夢なんて見る暇はなかったよ。
親しい人と言っても、親は死んでしまったし、兄弟も散り散りでどこにいるかも知らない。それ以外、知り合いと言えば、ほとんど仕事がらみだったからな。友人と言っても、酒場の知り合い程度だ」
ザックはちょっと思い出すように身の上話を彼女に聞かせた。
「そうか。辛い思いをしてきたんだな」
しんみりとユードラニナが呟くと、ザックはその頭を軽くチョップした。
「な、何をする!」
頭を押さえて吼えるようにユードラニナは睨みつけた。しかし、それよりも怒りの瞳でザックが睨んでいた。その迫力に彼女はわずかに気圧された。
「ふざけたことを言うな。いいか? このご時勢、生きてるだけで丸儲けだ。確かに、楽な生活じゃなかったが、楽しいことがなかったわけじゃない。笑ったり、喜んだり、楽じゃない分工夫したり、毎日を全力で生きてきた。それを辛い思いで一括りにするな。
人間というのは、魔物より弱いかもしれないが、そっちが思うよりも強かで図太い幸せに敏感な生き物なんだよ」
「すまない。私が浅はかだった」
頭を下げようとするユードラニナをザックが止めた。
「わかってくれればいいよ。俺の方が竜騎士団では大分と後輩だけど、これから一緒に仕事をする仲間だろ? 仕事の上下はあるかもしれないけど、対等に付き合っていこう。俺だって竜だからって恐がらないし、ユニも人間だからって哀れまない。そういうことにしてくれると嬉しい」
そういって、手をつながれていない手を差し出した。
ユードラニナは一瞬迷ったが、繋いでいた手を離して、差し出された手を握ってザックと向き合った。
「ザック……その……よろしく」
「ああ、よろしく、ユニ」
どっちが先輩で後輩かわからないが、人と竜の固い握手を交わした。
ザックは握手を交わしているだけだが、なんともむず痒い、奥歯で蜂蜜レモンを噛み潰すような感覚になってきた。
「そ、そうだ。一つ訊きたいんだが?」
ザックは上ずった声で話を切り替えた。
「な、なんだ? 私が答えられる事ならなんでも教えるぞ」
ユードラニナも少しばかり挙動不審というか、高い声でザックの質問に応じた。
「竜騎士の騎竜というのは、どうやって決まるんだ? というか、騎竜というのは候補生に選ぶ権利があるのか?」
ザックの質問にユードラニナが盛大にこけた。
「そこからか!」
「悪かったな。竜騎士についてほとんど知らないんだ」
ザックはちょっとバツ悪そうに口を尖らせた。
「そうだったな。わかった……まず、騎竜というのは、竜騎士が乗る竜のことだ。人と竜、セットで本当の意味で竜騎士とも言える。だから、竜騎士のペアは生涯変わらない。これは絶対だ」
ユードラニナは気を取り直してザックに説明を始めた。
「明日、団長から説明があると思うが、竜騎士に志願した候補生は、まず最初に自分のパートナーである竜を選ぶ。期間は十日以内だったはずだ」
「生涯の相手を見つけるには随分と短いんだな」
ザックは意外だと口を挟んだ。
「それだけあれば十分だろう? 自分の好きな――自分の相棒を直感で選ぶこともできん人間が竜騎士になれるわけがないだろう?」
その意外そうな口ぶりに逆にユードラニナが意外とばかりに返した。
「そう言われると確かにな」
「ほとんどないが、もし選びきれずに十日を過ぎれば、『誰でもいい』といったことになるから、今度は竜たちが選ぶことになる」
ザックはその様子を想像して軽く顔を引きつらせた。伴侶に飢えた竜たちの巣に放り込まれるのだから、その竜騎士候補は相当な目にあうだろう。
「候補生は選んだ竜と共に訓練をして、お互いの絆を強めていく。そうして、竜が候補生を自分の背に乗せるにたる人間と認めたとき、真の竜騎士になるというわけだ。わかったか?」
「わかった。そこで一つ疑問なんだが、ペアを組んでは見たものの相性が悪い場合は、ペア解消などもあるのか?」
ザックの質問にユードラニナは露骨に嫌な顔をした。
「ないことはない。ただ、竜騎士団の長い歴史の中でそういうケースは数例ほどだ。それに相性が悪いといわれ、竜騎士となるのに十年の月日を費やしたペアがいたが、その竜騎士ペアはその後、伝説と言われるほどの活躍をした。絆というものは色々あるということだ」
ザックはしょっちゅう喧嘩をしている割にはいっこうに離婚しない夫婦など思い出し、妙に納得した。
「あと、もう一つ聞いてもいいか? 騎竜を選ぶのは、独身の竜なら誰でもいいのか? 例えば、アルトイーリス団長でも?」
ザックの質問にユードラニナはこめかみに青筋を立てた。
「ああ、構わんよ。相手に自分を認めさせることができると思うなら、竜騎士団に所属している独身の竜なら、誰を指名しようと構わない。それが騎士団団長であっても、副官であっても、新人の若い竜であってな」
吼えるようにザックの質問に答えた。
「そうか。それを聞いて安心した。ユ――」
「ザックの部屋はここだ。明日の朝に迎えに来る。それまでにちゃんと寝て、旅の疲れを取っておけ。初訓練で居眠りなどしてみろ、ただではおかないからな!」
何かを言いかけたザックの言葉を遮るようにユードラニナは部屋の鍵を投げ渡して、扉の一つを指差した。
「わ、わかった。じゃあ、早いけど、おやすみ。また、明日」
ザックはユードラニナの剣幕に圧されて鍵を受け取って素直に部屋へと入って行った。
ユードラニナは怒りが静まらないと廊下に足音を響かせて夕闇の中へと消えて行った。
17/01/26 22:31更新 / 南文堂
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