おっぱい!
空は黒く渦巻き、生暖かい風が吹き抜ける。
濃い緑色の雑草が、腰の高さまで生えており、風になびいてざわざわと音がする。
ここは魔界。魔性の瘴気に満ち溢れ、魔物が跋扈する、性的に恐ろしい場所。
そんな所を、男がたった一人で、草を掻き分けながら歩いていた。おっぱいを求めて。
彼の名はナバリ。彼はおっぱいが好きだ。
とにかくおっぱいが大好きだ。
ふわふわ、ふかふか、ぷるぷる、むにむに。彼は大きなおっぱいが好きだ。
おっぱいの谷間に顔をうずめて、両手で思う存分もみしだくのが、彼の長年の夢であった。
だが、モテなかった。顔が特別悪いわけではなかった。
運動神経もそこそこあった。頭が悪いわけでもない。性格も悪くない。
何でもほどほどに良かった。しかし、それが災いした。
突出した特長が何もないので、彼はとにかく影が薄かったのだ。
同窓会の案内ハガキが、幹事の不手際で届かなくて参加できない。彼はそういうタイプだったのだ。
彼は考えた、とにかく大きなおっぱいを手に入れる方法を模索した。
そして、彼はついに妙案を思い付いた。
――サキュバスさんに会おう!
思い立ったら即行動。彼は村人の間で「魔界の門」と恐れられている巨石へと向かった。
村はずれの丘の上にある、柱のような細長い岩。
岩は二本並んで立っており、その間には膜のように、魔界の風景が広がっている。
彼は迷う事無く、魔界へと突っ込んで行った。
「待っててね!サキュバスのおっぱい!」
そう叫びながら。
「はいはい、帰った帰った」
ナバリは目の前にいる魔物に向かって、あっち行けのジェスチャーをした。
彼の胸に届くかというほどの身長、貧乳くびれなしの平坦なシルエット、頭には太い二本の角が生え、両手両足はふかふかの毛で覆われていた。
「なんじゃ、バフォメットであるカシーミア様が直々に来てやったというのに、何という言い草じゃ。訂正せい、謝罪せい!」
バフォメットのカシーミアは、腰に両手をあて、頬を膨らませながらぷんすかと怒った。
「いや、その、貧乳には興味ないんですけど」
ナバリはため息をついた。
――まさか、魔界で最初に出会った魔物が、よりによってこんなナイチチだなんて……
彼は心底がっかりした。
「なんじゃと……何と嘆かわしい……ロリボディの魅力が分からないとは……」
つられてカシーミアもため息をついた。
「なんつーか、もめないおっぱいって、それ最早おっぱいじゃないよね。おっぱいはもめるから正義なのであって、もめないおっぱいはぶっちゃけ存在価値ないよね。ほら、飴あげるからお子ちゃまはもうお帰り?」
哀れむような目を彼女に向け、ポケットから飴を一粒取り出し、ナバリは目の前のバフォメットに差し出した。
「ぐぬぬ……わしを愚弄しおって……せっかくわしのロリコンセンサーが反応したから来てやったというのに……」
「は?ロリコン?ここだだっ広い草原なんですけど?見渡す限り俺とお前しかいないんですけど?」
ナバリはキョロキョロと辺りを見回した。
「だから、おかしいのじゃ……今この場には、わしとおぬししかおらん。そして、わしのロリコンセンサーは百発百中じゃ……つまり、おぬしはロリコンという事になる」
彼女がビシッと彼を指差すと、しばらく奇妙な沈黙が流れた。
「……ぷぷっ……ははははは!」
それを、彼の笑い声が打ち破った。
ナバリは腹を抱え、笑い転げた。
「はっはっは!んなわけねぇじゃん!俺は生まれた時からおっぱい星人だっつぅの!ボンッキュッボンッが正義だっつぅの!」
自分の膝をバシバシ叩きながら、彼は笑い続けて言った。
「ほう……じゃあ、おぬしが本当にロリコンでないか、試してみるか?」
にやりと笑い、つつつ……と彼に近づいてきた。そして、彼の瞳を見つめると、
「ウラヤムビボウ!」
呪文を一声。それだけで、ナバリの自立的な運動神経は全て機能を失い、棒立ちのまま後ろに倒れてしまった。
「お前、何をした……!」
首をぶるぶると振り乱しながら、息も絶え絶えにナバリは叫んだ。
「なぁに、ただの金縛りの術じゃよ。上級の魔物にもなると、この程度は楽勝なのじゃよ」
ふふん、と楽しそうな声を上げながら呟く。彼女はそのまま彼のズボンに手をかけ、一気に脱がした。
「うーむ、勃っておらんの。今日の服は、特別露出の低いものなのじゃがな」
「当たり前だろ!俺はロリボディには興味ないって言ってるのに」
「ふふん、強がっていられるのも、今のうちだけじゃぞ?」
彼女は勝ち誇った笑みを崩さずに、下着を横にずらし、一気に肉壷へ萎えたままのペニスを招き入れた。
「何だ、これ。別に気持ちよくないぞ。まあ、温かいだけだな」
ナバリはため息をつきながら言った。
「ふっふっふ……はたして、わしの技を食らっても、まだそんな事を言えるかのう……」
彼女は一度舌なめずりをすると、腰を前後に一回だけ動かした。
くちゅり……
「!……!!……っ!」
前に動かした瞬間、はちきれんばかりにペニスが勃起し、
「っ……!ぅ……っ!……!!」
後ろに動かした時には、彼はもう射精していた。
「くっくっく……やっぱりわしの目に狂いはなかったぞ!わしの勝ちじゃ!」
にたぁ……と勝利の笑みを漏らし、ペニスから漏れた精液を一滴残らず幼い膣で受け止めた。
「はっ、はっ、はっ……何で、何で俺が、こんな貧乳の女に……」
戸惑いと極上の快楽で、頭をぐらぐらとさせながら呟いた。
「それは、おぬしがロリコンだからじゃ!」
騎乗位でくわえ込んだまま、彼女は両手を腰にあて、えっへんと胸を張った。
「そんな事、あるわけないだ……ろ……」
その時、彼の脳内に駆け巡る風景が……
ここは、実家の廊下?
そして、目の前にあるのは、親父の部屋の扉。
目線は低く、扉へ手を伸ばす俺の手は細く小さい。
これは、小さい頃の思い出?
ドアノブへ手を伸ばす。駄目だ!その扉を開けてはいけない!そんな、気がする。
ノブを回し、そっと、細く隙間を開ける。
そこから漏れる、男の喘ぎ声。
駄目だ!見ちゃ駄目だ!何故か俺の心が警告をする。
漏れ入る光に照らし出された部屋の中の光景。
幼女の頭を鷲づかみにして、後背位で乱暴にペニスを突き入れる親父。
見開くように瞬きしない幼女の瞳。そこには絶望の闇しかなく、涙は枯れ、二筋の乾いた跡のみ。
すでに泣き叫びきった後なのであろう。彼女の喉から漏れるのは、がらがらとしゃがれた吐息のみである。
彼女が、俺を見た。瞳孔が開き切り、黒目がぶるっぶるっと揺れる。
口元が微かに動く。 た……す、け……て……?
俺は、俺は……何も出来ずに、逃げるように家から飛び出した。
俺のペニスは暴発しそうなほど怒張し、森の木の陰でそれを扱いて鎮めた。
「何だ……これ……」
ナバリは今見えた映像に心底戸惑った。
――何だ、この記憶は……今までこんなの全然覚えていなかったぞ!?
「あ、あぁ……あぁぁぁぁぁ!!!」
彼は叫び飛び起きた。
そのまま逃げるように草原を駆け抜ける。
「お、おい、待て、待つのじゃ!」
突然の出来事に、カシーミアは驚き立ちすくんでしまった。
――そんな、わしの金縛りの術を五分で解くじゃと!?
彼女は心底驚き、震え上がった。彼女の渾身の瞳術、一度かかれば半日はまともに動けないはずなのに。
そして、彼女の心はときめき、彼女の秘丘からは、じゅんと愛液が漏れ出た。
――あやつこそ、いや、あのお方こそ、わしのお兄ちゃんに相応しい……
ナバリは駆けた。闇雲に駆けた。
彼は自分の脳内で描き出された映像を、いまだ信じられないでいた。
しかし、全速力で走る彼の右手には、あの時出した、人生で初めて出した精液の粘っこい感触がした。
「お……おっぱい!おっぱい!おっぱい!おっぱい!おっぱいぃぃぃぃ!!!」
叫んだ。喉が潰れんばかりに叫んだ。
――あれは幻だ!幻覚だ!ありえるわけがない!俺が幼女を見てオナニーしただと!?しかも親父とのセックス、いや、レイプを見て!?そんなはずがない!ありえない!俺はおっぱいが!おっぱいが好きなんだ!ふかふかおっぱい!むにむにおっぱい!ぽよぽよおっぱい!ふかふか……
――ふかふか……ふか……ふか……
その時、彼の脳内に現れたのは。
――あいつの手足、ふかふかで気持ちよさそうだったな。
――それに、あの露出度の低い体……貧乳で、くびれがなくて、平坦で……じゅるり。
「待つのじゃ!」
彼の目の前に、本人がいた。
「え、あれ、お前……追いかけてくる気配はなかったのに」
「瞬間移動じゃ!なめてもらっては困るのう、上級の魔物にもなると、この程度は楽勝なのじゃよ!」
腰に手を当て、堂々と胸を張った。
先程は見ていてムカムカするポーズであったが、今のナバリには、幼い肢体が強調されて、より美味しそうに見える良いポーズに思えた。
しかし、そのロリコンに侵食されかけた思考を、首を強く振って何とか振り落とす。
「自らの性癖に嘘をついてよいのか!?」
バフォメットが恫喝する。
「幼女の裸体、痴態を見て、己が愚息を鎮めた過去を見たであろう!それがおぬしの本当の姿じゃ!」
彼女が一歩前へ踏み出す。
「おぬしがおっぱいに固執するようになったのは、自分の心の奥底の獣を認めたくなかったからではないのか!?」
更に一歩。
「認めよ!自らの性癖を認めよ!それにだけは嘘をついてはならん!」
「おぬしは魔界に来て、巨乳のサキュバスにでも会って、一緒に暮らしたかったのであろう?じゃがな、性癖に嘘をついて、無理矢理添い遂げても、それは互いの不幸を呼ぶだけに過ぎんぞ!」
はっとして、ナバリはすでに眼前にまで迫っていたカシーミアを見る。
「獣を開放せよ!獣の言葉に耳を傾けよ!人間の幼女には受け止められないほど獰猛であっても、わしなら手懐けられる!」
「じゃから……わしの、兄上になっておくれ……」
屈んでいた彼を、彼女はそっと抱き寄せた。
「わしは、兄上のどんな所も、愛してあげるから……」
ナバリのおっぱいへの執着心は、この瞬間、崩壊した。
ぶるぶると躊躇いの震えを見せつつも、彼はゆっくりと、彼女の体を抱きしめた。
ここにまた一人、完全なるロリコンが誕生したのである。
魔界の一角にある、巨大な城。
その中央にある、野球のドームほどもある大きな大きなホールには、何百人もの人間で溢れていた。
全裸の男と、幼女しかいない。幼女は魔女と呼ばれる魔物の一種である。
彼らの視線の先、ホールの一番奥は一段高くなっており、その更に奥には、巨大な扉が聳え立っていた。
その扉が、ゆっくりと開いていく。
「うおー!バフォメット様だ!」
「きゃー!お姉さまー!」
「バフォ様万歳!バフォ様万歳!」
壇上に上がったカシーミアを見て、ホールに集まった者達が歓声を上げて彼女を讃えた。
彼女の後ろからそろそろと着いてきたナバリは、彼らの歓声のあまりの迫力に圧倒された。
――このロリっ娘、こんなナリして人望あるのな……
そして、素直に感心した。
「皆の者よ、今日は突然の召集に応えてくれて、ご苦労じゃ!ありがたいぞ」
わーわー。
「今日、わざわざ皆を集めたのは他でもない……苦節ウン百年、ついに、わしは理想の兄を手に入れたのじゃ!」
きゃーきゃー。
「というわけで、今日はめでたいぞ!無礼講じゃ!皆ハメよ咥えよ!」
両手を挙げ、散れー!とカシーミアが叫ぶと、魔女とその夫達は、一斉にイチャラブし始めた。
ある魔女は夫のペニスを喉奥まで咥え込み、ある男は妻と対面座位でだいしゅきホールド。
ある夫婦はスワッピングをして、他人のペニスをバックで突かれながら、前方にいる夫とディープキス。
まさに酒池肉林であった。
そんな肉の宴を、ナバリは高い壇上からぼけっと眺めていた。
あれだけカシーミアの体を見て興奮していたのに、魔女達の乱交パーティを見ても、彼のペニスはぴくりともしない。
「うむ、兄上はわしの可愛い部下達の裸を見ても、勃たないんじゃな。嘆かわしいのう」
彼の真横に、カシーミアがやって来た。
「兄上って呼び方、恥ずかしいんだけど、止めて欲しいんですけど」
「駄目じゃ。兄上は兄上じゃ!もうわしの兄上じゃ!わしの魔法を打ち破った時に決めたのじゃ!」
そう言って、彼女はナバリの胸に飛び込んだ。その勢いで、彼は背中から床に倒れてしまった。
「い、痛い……」
「ナバリはわしの兄上じゃ!じゃから、いっぱい、いっぱい、甘えさせてほしいのじゃ……」
彼の胸板に顔を乗せ、体を両腕できゅっと抱きしめる。
彼女の太ももに、熱い感触が当たった。
「何じゃ……もうぱんぱんではないか……やっぱり兄上はロリコンなのじゃな……」
にっこりと彼女は微笑んだ。
「ちげーよ。ロリコンじゃねーよ。お前以外じゃ興奮しねーからな」
ナバリはぷいっと彼女から顔を逸らして呟いた。しばらく彼女はぼけっと彼の顔を見つめていたが、意味が分かると顔を真っ赤にさせた。
「その……今日はたっぷり、兄上に甘えてよいか?」
てれてれとしながら、胸板に顎を乗せ、上目遣いでナバリを見つめた。
「う、あ……うん……」
不覚にも、その愛らしい顔に彼はときめいてしまった。思わずうなずく。
「兄上……」
彼への愛しさで表情を蕩けさせ、カシーミアは彼の唇に自らの唇を重ねた。
抱きつく腕の力が強くなる。
「んん……ちゅぅ……あにうえぇ……しゅきぃ」
夢中になってキスを交わす。舌を蛇のように絡ませ、互いに目を閉じて、体温と粘り気と甘い味香り、愛を感じる。
先に唇を離したのはカシーミアであった。
しっとりとした唇は、離れまいとくっついて少し伸びる。
混ざった唾液が糸を引き、吐息が混ざってぷつりと切れる。
「もう、我慢ができぬ……兄上ぇ、上の口だけでなく、下の口でも甘えてよいか?」
うるうると瞳を濡らし、上目遣いの懇願。これにはナバリもたまらずうなずく。
「では、挿入れるぞ……前みたいに、一回でイっちゃ駄目じゃぞ?」
ふふっと彼女が微笑み、すでに濡れきっている幼い割れ目に、彼の勃起したペニスを挿入した。
くちゅ……くちゅり……
ゆっくりと腰を前後させると、ナバリは腰をがっちりと掴んで呻いた。
「う……うぅ……気持ちよすぎ……る」
「我慢せずもっと喘いで良いのじゃぞ?もっと、兄上の、声……聞かせておくれ……」
彼のお腹に両手を当てて、ペニスを慈しむように腰をやんわりと動かす。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
彼女の言葉に心を動かされ、彼の喘ぎは次第に正直になっていく。
その代わりに、カシーミアの言葉が増えていく。ひたすらに愛を囁く。
「そうじゃ……もっと自分の心に正直に……獣を恐れずに、喘いでおくれ?」
「残りの生涯、ずっと、ずっと、死ぬまでわしは兄上を愛すぞ」
「兄上は、こんなエッチな妹は、嫌いか?馬乗りになって、兄上のちんぽをくわえ込んで……愛しくて……嬉しくて、ひっく……泣いてしまう妹を、愛してくれるか……?」
お腹の上の両手をきゅっと結び、胸の上に涙をぽとぽとと落として、でも腰の動きは止まらなくて。
ナバリは答えなかった。その代わりに、彼女の体を両手で抱き寄せ、ぎゅっと抱きしめた。
「……!……っ!!うぅ……!」
それだけで、カシーミアは感極まって絶頂を迎えてしまった。
彼女が男より先に果てるのは、生まれて初めての経験である。
そして、絶頂時の強烈な膣肉の締め付けで、ナバリも絶頂に達した。
互いに相手を抱きしめ合い、愛の証は一滴も残さず肉壷に注がれた。
「一つ、疑問があるんだけどさ」
絶頂の余韻が消えてきた頃、ナバリは彼女に問いかけた。
彼らの周りでは、いまだ魔女達の淫靡な宴が終わる事無く繰り広げられている。
「なんじゃ?」
「お前が俺を追いかけた時さ。瞬間移動してきた時。あの時、何で俺の記憶の事知ってたんだ」
「え?」
カシーミアはとぼけて首を傾げる。
「いや、何でお前、俺が幼女の裸体見てオナニーしたとか、そういうの知ってたんだよ。あの時話してなかっただろ」
「え、あ、あれは……その……兄上、こんな事言っても、怒らんか?」
冷や汗をたらたら流しながら、彼女は呟いた。
「ものによる。聞いてから出ないと分からんな」
「う……うん、じゃあ、言うぞ」
ぽつりぽつりと彼女は言い始めた。
「兄上のあの記憶はのう……実は、わしが魔法で植え付けた偽の記憶なのじゃ……」
ナバリはぽかんと口を開けた。
「上級の魔物にもなると……この程度は楽勝なのじゃよ……まさか、ここまで効くとは思わなかったがのう……ははは……」
冷や汗の量が増える。彼の体がぷるぷると震える。
「ふ、ふ、ふ……ふざけんっ」
彼は腕を振り上げたが、上げた所で止まると、諦めたかのように再び下ろした。
叩かれると思って目をつぶったカシーミア。しかし、予想していた衝撃が中々訪れず、恐る恐る目を開ける。
そこには、ふっと微笑み、彼女をそっと抱きしめるナバリの姿があった。
「まあいいや。今はもうお前の体じゃないと駄目だし」
「兄上……」
きゅっとカシーミアは抱きしめ返す。
「お前の貧乳も、くびれのない腰も、肉付きの少ないお尻も、可愛くて幼い顔にも、もうメロメロだ。ビバロリボディだな」
そう言って、二人は微笑み合った。
濃い緑色の雑草が、腰の高さまで生えており、風になびいてざわざわと音がする。
ここは魔界。魔性の瘴気に満ち溢れ、魔物が跋扈する、性的に恐ろしい場所。
そんな所を、男がたった一人で、草を掻き分けながら歩いていた。おっぱいを求めて。
彼の名はナバリ。彼はおっぱいが好きだ。
とにかくおっぱいが大好きだ。
ふわふわ、ふかふか、ぷるぷる、むにむに。彼は大きなおっぱいが好きだ。
おっぱいの谷間に顔をうずめて、両手で思う存分もみしだくのが、彼の長年の夢であった。
だが、モテなかった。顔が特別悪いわけではなかった。
運動神経もそこそこあった。頭が悪いわけでもない。性格も悪くない。
何でもほどほどに良かった。しかし、それが災いした。
突出した特長が何もないので、彼はとにかく影が薄かったのだ。
同窓会の案内ハガキが、幹事の不手際で届かなくて参加できない。彼はそういうタイプだったのだ。
彼は考えた、とにかく大きなおっぱいを手に入れる方法を模索した。
そして、彼はついに妙案を思い付いた。
――サキュバスさんに会おう!
思い立ったら即行動。彼は村人の間で「魔界の門」と恐れられている巨石へと向かった。
村はずれの丘の上にある、柱のような細長い岩。
岩は二本並んで立っており、その間には膜のように、魔界の風景が広がっている。
彼は迷う事無く、魔界へと突っ込んで行った。
「待っててね!サキュバスのおっぱい!」
そう叫びながら。
「はいはい、帰った帰った」
ナバリは目の前にいる魔物に向かって、あっち行けのジェスチャーをした。
彼の胸に届くかというほどの身長、貧乳くびれなしの平坦なシルエット、頭には太い二本の角が生え、両手両足はふかふかの毛で覆われていた。
「なんじゃ、バフォメットであるカシーミア様が直々に来てやったというのに、何という言い草じゃ。訂正せい、謝罪せい!」
バフォメットのカシーミアは、腰に両手をあて、頬を膨らませながらぷんすかと怒った。
「いや、その、貧乳には興味ないんですけど」
ナバリはため息をついた。
――まさか、魔界で最初に出会った魔物が、よりによってこんなナイチチだなんて……
彼は心底がっかりした。
「なんじゃと……何と嘆かわしい……ロリボディの魅力が分からないとは……」
つられてカシーミアもため息をついた。
「なんつーか、もめないおっぱいって、それ最早おっぱいじゃないよね。おっぱいはもめるから正義なのであって、もめないおっぱいはぶっちゃけ存在価値ないよね。ほら、飴あげるからお子ちゃまはもうお帰り?」
哀れむような目を彼女に向け、ポケットから飴を一粒取り出し、ナバリは目の前のバフォメットに差し出した。
「ぐぬぬ……わしを愚弄しおって……せっかくわしのロリコンセンサーが反応したから来てやったというのに……」
「は?ロリコン?ここだだっ広い草原なんですけど?見渡す限り俺とお前しかいないんですけど?」
ナバリはキョロキョロと辺りを見回した。
「だから、おかしいのじゃ……今この場には、わしとおぬししかおらん。そして、わしのロリコンセンサーは百発百中じゃ……つまり、おぬしはロリコンという事になる」
彼女がビシッと彼を指差すと、しばらく奇妙な沈黙が流れた。
「……ぷぷっ……ははははは!」
それを、彼の笑い声が打ち破った。
ナバリは腹を抱え、笑い転げた。
「はっはっは!んなわけねぇじゃん!俺は生まれた時からおっぱい星人だっつぅの!ボンッキュッボンッが正義だっつぅの!」
自分の膝をバシバシ叩きながら、彼は笑い続けて言った。
「ほう……じゃあ、おぬしが本当にロリコンでないか、試してみるか?」
にやりと笑い、つつつ……と彼に近づいてきた。そして、彼の瞳を見つめると、
「ウラヤムビボウ!」
呪文を一声。それだけで、ナバリの自立的な運動神経は全て機能を失い、棒立ちのまま後ろに倒れてしまった。
「お前、何をした……!」
首をぶるぶると振り乱しながら、息も絶え絶えにナバリは叫んだ。
「なぁに、ただの金縛りの術じゃよ。上級の魔物にもなると、この程度は楽勝なのじゃよ」
ふふん、と楽しそうな声を上げながら呟く。彼女はそのまま彼のズボンに手をかけ、一気に脱がした。
「うーむ、勃っておらんの。今日の服は、特別露出の低いものなのじゃがな」
「当たり前だろ!俺はロリボディには興味ないって言ってるのに」
「ふふん、強がっていられるのも、今のうちだけじゃぞ?」
彼女は勝ち誇った笑みを崩さずに、下着を横にずらし、一気に肉壷へ萎えたままのペニスを招き入れた。
「何だ、これ。別に気持ちよくないぞ。まあ、温かいだけだな」
ナバリはため息をつきながら言った。
「ふっふっふ……はたして、わしの技を食らっても、まだそんな事を言えるかのう……」
彼女は一度舌なめずりをすると、腰を前後に一回だけ動かした。
くちゅり……
「!……!!……っ!」
前に動かした瞬間、はちきれんばかりにペニスが勃起し、
「っ……!ぅ……っ!……!!」
後ろに動かした時には、彼はもう射精していた。
「くっくっく……やっぱりわしの目に狂いはなかったぞ!わしの勝ちじゃ!」
にたぁ……と勝利の笑みを漏らし、ペニスから漏れた精液を一滴残らず幼い膣で受け止めた。
「はっ、はっ、はっ……何で、何で俺が、こんな貧乳の女に……」
戸惑いと極上の快楽で、頭をぐらぐらとさせながら呟いた。
「それは、おぬしがロリコンだからじゃ!」
騎乗位でくわえ込んだまま、彼女は両手を腰にあて、えっへんと胸を張った。
「そんな事、あるわけないだ……ろ……」
その時、彼の脳内に駆け巡る風景が……
ここは、実家の廊下?
そして、目の前にあるのは、親父の部屋の扉。
目線は低く、扉へ手を伸ばす俺の手は細く小さい。
これは、小さい頃の思い出?
ドアノブへ手を伸ばす。駄目だ!その扉を開けてはいけない!そんな、気がする。
ノブを回し、そっと、細く隙間を開ける。
そこから漏れる、男の喘ぎ声。
駄目だ!見ちゃ駄目だ!何故か俺の心が警告をする。
漏れ入る光に照らし出された部屋の中の光景。
幼女の頭を鷲づかみにして、後背位で乱暴にペニスを突き入れる親父。
見開くように瞬きしない幼女の瞳。そこには絶望の闇しかなく、涙は枯れ、二筋の乾いた跡のみ。
すでに泣き叫びきった後なのであろう。彼女の喉から漏れるのは、がらがらとしゃがれた吐息のみである。
彼女が、俺を見た。瞳孔が開き切り、黒目がぶるっぶるっと揺れる。
口元が微かに動く。 た……す、け……て……?
俺は、俺は……何も出来ずに、逃げるように家から飛び出した。
俺のペニスは暴発しそうなほど怒張し、森の木の陰でそれを扱いて鎮めた。
「何だ……これ……」
ナバリは今見えた映像に心底戸惑った。
――何だ、この記憶は……今までこんなの全然覚えていなかったぞ!?
「あ、あぁ……あぁぁぁぁぁ!!!」
彼は叫び飛び起きた。
そのまま逃げるように草原を駆け抜ける。
「お、おい、待て、待つのじゃ!」
突然の出来事に、カシーミアは驚き立ちすくんでしまった。
――そんな、わしの金縛りの術を五分で解くじゃと!?
彼女は心底驚き、震え上がった。彼女の渾身の瞳術、一度かかれば半日はまともに動けないはずなのに。
そして、彼女の心はときめき、彼女の秘丘からは、じゅんと愛液が漏れ出た。
――あやつこそ、いや、あのお方こそ、わしのお兄ちゃんに相応しい……
ナバリは駆けた。闇雲に駆けた。
彼は自分の脳内で描き出された映像を、いまだ信じられないでいた。
しかし、全速力で走る彼の右手には、あの時出した、人生で初めて出した精液の粘っこい感触がした。
「お……おっぱい!おっぱい!おっぱい!おっぱい!おっぱいぃぃぃぃ!!!」
叫んだ。喉が潰れんばかりに叫んだ。
――あれは幻だ!幻覚だ!ありえるわけがない!俺が幼女を見てオナニーしただと!?しかも親父とのセックス、いや、レイプを見て!?そんなはずがない!ありえない!俺はおっぱいが!おっぱいが好きなんだ!ふかふかおっぱい!むにむにおっぱい!ぽよぽよおっぱい!ふかふか……
――ふかふか……ふか……ふか……
その時、彼の脳内に現れたのは。
――あいつの手足、ふかふかで気持ちよさそうだったな。
――それに、あの露出度の低い体……貧乳で、くびれがなくて、平坦で……じゅるり。
「待つのじゃ!」
彼の目の前に、本人がいた。
「え、あれ、お前……追いかけてくる気配はなかったのに」
「瞬間移動じゃ!なめてもらっては困るのう、上級の魔物にもなると、この程度は楽勝なのじゃよ!」
腰に手を当て、堂々と胸を張った。
先程は見ていてムカムカするポーズであったが、今のナバリには、幼い肢体が強調されて、より美味しそうに見える良いポーズに思えた。
しかし、そのロリコンに侵食されかけた思考を、首を強く振って何とか振り落とす。
「自らの性癖に嘘をついてよいのか!?」
バフォメットが恫喝する。
「幼女の裸体、痴態を見て、己が愚息を鎮めた過去を見たであろう!それがおぬしの本当の姿じゃ!」
彼女が一歩前へ踏み出す。
「おぬしがおっぱいに固執するようになったのは、自分の心の奥底の獣を認めたくなかったからではないのか!?」
更に一歩。
「認めよ!自らの性癖を認めよ!それにだけは嘘をついてはならん!」
「おぬしは魔界に来て、巨乳のサキュバスにでも会って、一緒に暮らしたかったのであろう?じゃがな、性癖に嘘をついて、無理矢理添い遂げても、それは互いの不幸を呼ぶだけに過ぎんぞ!」
はっとして、ナバリはすでに眼前にまで迫っていたカシーミアを見る。
「獣を開放せよ!獣の言葉に耳を傾けよ!人間の幼女には受け止められないほど獰猛であっても、わしなら手懐けられる!」
「じゃから……わしの、兄上になっておくれ……」
屈んでいた彼を、彼女はそっと抱き寄せた。
「わしは、兄上のどんな所も、愛してあげるから……」
ナバリのおっぱいへの執着心は、この瞬間、崩壊した。
ぶるぶると躊躇いの震えを見せつつも、彼はゆっくりと、彼女の体を抱きしめた。
ここにまた一人、完全なるロリコンが誕生したのである。
魔界の一角にある、巨大な城。
その中央にある、野球のドームほどもある大きな大きなホールには、何百人もの人間で溢れていた。
全裸の男と、幼女しかいない。幼女は魔女と呼ばれる魔物の一種である。
彼らの視線の先、ホールの一番奥は一段高くなっており、その更に奥には、巨大な扉が聳え立っていた。
その扉が、ゆっくりと開いていく。
「うおー!バフォメット様だ!」
「きゃー!お姉さまー!」
「バフォ様万歳!バフォ様万歳!」
壇上に上がったカシーミアを見て、ホールに集まった者達が歓声を上げて彼女を讃えた。
彼女の後ろからそろそろと着いてきたナバリは、彼らの歓声のあまりの迫力に圧倒された。
――このロリっ娘、こんなナリして人望あるのな……
そして、素直に感心した。
「皆の者よ、今日は突然の召集に応えてくれて、ご苦労じゃ!ありがたいぞ」
わーわー。
「今日、わざわざ皆を集めたのは他でもない……苦節ウン百年、ついに、わしは理想の兄を手に入れたのじゃ!」
きゃーきゃー。
「というわけで、今日はめでたいぞ!無礼講じゃ!皆ハメよ咥えよ!」
両手を挙げ、散れー!とカシーミアが叫ぶと、魔女とその夫達は、一斉にイチャラブし始めた。
ある魔女は夫のペニスを喉奥まで咥え込み、ある男は妻と対面座位でだいしゅきホールド。
ある夫婦はスワッピングをして、他人のペニスをバックで突かれながら、前方にいる夫とディープキス。
まさに酒池肉林であった。
そんな肉の宴を、ナバリは高い壇上からぼけっと眺めていた。
あれだけカシーミアの体を見て興奮していたのに、魔女達の乱交パーティを見ても、彼のペニスはぴくりともしない。
「うむ、兄上はわしの可愛い部下達の裸を見ても、勃たないんじゃな。嘆かわしいのう」
彼の真横に、カシーミアがやって来た。
「兄上って呼び方、恥ずかしいんだけど、止めて欲しいんですけど」
「駄目じゃ。兄上は兄上じゃ!もうわしの兄上じゃ!わしの魔法を打ち破った時に決めたのじゃ!」
そう言って、彼女はナバリの胸に飛び込んだ。その勢いで、彼は背中から床に倒れてしまった。
「い、痛い……」
「ナバリはわしの兄上じゃ!じゃから、いっぱい、いっぱい、甘えさせてほしいのじゃ……」
彼の胸板に顔を乗せ、体を両腕できゅっと抱きしめる。
彼女の太ももに、熱い感触が当たった。
「何じゃ……もうぱんぱんではないか……やっぱり兄上はロリコンなのじゃな……」
にっこりと彼女は微笑んだ。
「ちげーよ。ロリコンじゃねーよ。お前以外じゃ興奮しねーからな」
ナバリはぷいっと彼女から顔を逸らして呟いた。しばらく彼女はぼけっと彼の顔を見つめていたが、意味が分かると顔を真っ赤にさせた。
「その……今日はたっぷり、兄上に甘えてよいか?」
てれてれとしながら、胸板に顎を乗せ、上目遣いでナバリを見つめた。
「う、あ……うん……」
不覚にも、その愛らしい顔に彼はときめいてしまった。思わずうなずく。
「兄上……」
彼への愛しさで表情を蕩けさせ、カシーミアは彼の唇に自らの唇を重ねた。
抱きつく腕の力が強くなる。
「んん……ちゅぅ……あにうえぇ……しゅきぃ」
夢中になってキスを交わす。舌を蛇のように絡ませ、互いに目を閉じて、体温と粘り気と甘い味香り、愛を感じる。
先に唇を離したのはカシーミアであった。
しっとりとした唇は、離れまいとくっついて少し伸びる。
混ざった唾液が糸を引き、吐息が混ざってぷつりと切れる。
「もう、我慢ができぬ……兄上ぇ、上の口だけでなく、下の口でも甘えてよいか?」
うるうると瞳を濡らし、上目遣いの懇願。これにはナバリもたまらずうなずく。
「では、挿入れるぞ……前みたいに、一回でイっちゃ駄目じゃぞ?」
ふふっと彼女が微笑み、すでに濡れきっている幼い割れ目に、彼の勃起したペニスを挿入した。
くちゅ……くちゅり……
ゆっくりと腰を前後させると、ナバリは腰をがっちりと掴んで呻いた。
「う……うぅ……気持ちよすぎ……る」
「我慢せずもっと喘いで良いのじゃぞ?もっと、兄上の、声……聞かせておくれ……」
彼のお腹に両手を当てて、ペニスを慈しむように腰をやんわりと動かす。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
彼女の言葉に心を動かされ、彼の喘ぎは次第に正直になっていく。
その代わりに、カシーミアの言葉が増えていく。ひたすらに愛を囁く。
「そうじゃ……もっと自分の心に正直に……獣を恐れずに、喘いでおくれ?」
「残りの生涯、ずっと、ずっと、死ぬまでわしは兄上を愛すぞ」
「兄上は、こんなエッチな妹は、嫌いか?馬乗りになって、兄上のちんぽをくわえ込んで……愛しくて……嬉しくて、ひっく……泣いてしまう妹を、愛してくれるか……?」
お腹の上の両手をきゅっと結び、胸の上に涙をぽとぽとと落として、でも腰の動きは止まらなくて。
ナバリは答えなかった。その代わりに、彼女の体を両手で抱き寄せ、ぎゅっと抱きしめた。
「……!……っ!!うぅ……!」
それだけで、カシーミアは感極まって絶頂を迎えてしまった。
彼女が男より先に果てるのは、生まれて初めての経験である。
そして、絶頂時の強烈な膣肉の締め付けで、ナバリも絶頂に達した。
互いに相手を抱きしめ合い、愛の証は一滴も残さず肉壷に注がれた。
「一つ、疑問があるんだけどさ」
絶頂の余韻が消えてきた頃、ナバリは彼女に問いかけた。
彼らの周りでは、いまだ魔女達の淫靡な宴が終わる事無く繰り広げられている。
「なんじゃ?」
「お前が俺を追いかけた時さ。瞬間移動してきた時。あの時、何で俺の記憶の事知ってたんだ」
「え?」
カシーミアはとぼけて首を傾げる。
「いや、何でお前、俺が幼女の裸体見てオナニーしたとか、そういうの知ってたんだよ。あの時話してなかっただろ」
「え、あ、あれは……その……兄上、こんな事言っても、怒らんか?」
冷や汗をたらたら流しながら、彼女は呟いた。
「ものによる。聞いてから出ないと分からんな」
「う……うん、じゃあ、言うぞ」
ぽつりぽつりと彼女は言い始めた。
「兄上のあの記憶はのう……実は、わしが魔法で植え付けた偽の記憶なのじゃ……」
ナバリはぽかんと口を開けた。
「上級の魔物にもなると……この程度は楽勝なのじゃよ……まさか、ここまで効くとは思わなかったがのう……ははは……」
冷や汗の量が増える。彼の体がぷるぷると震える。
「ふ、ふ、ふ……ふざけんっ」
彼は腕を振り上げたが、上げた所で止まると、諦めたかのように再び下ろした。
叩かれると思って目をつぶったカシーミア。しかし、予想していた衝撃が中々訪れず、恐る恐る目を開ける。
そこには、ふっと微笑み、彼女をそっと抱きしめるナバリの姿があった。
「まあいいや。今はもうお前の体じゃないと駄目だし」
「兄上……」
きゅっとカシーミアは抱きしめ返す。
「お前の貧乳も、くびれのない腰も、肉付きの少ないお尻も、可愛くて幼い顔にも、もうメロメロだ。ビバロリボディだな」
そう言って、二人は微笑み合った。
10/07/12 04:23更新 / 川村人志