二律背反そのあと
「それにしても、だ……」
「どうしたんだ、恭二?」
「インキュバスになったのはいいけど……。あまり変わっていない気がするんだけど」
俺は全裸のメイルに向かってそう言った。
「それはそうだろう。コーラルとクォーツが『最大の譲渡』って言っていたんだからな。
恭二を人間だった時の姿にする、っていうことが」
「そっか……。あの二人が……」
「ただし、私のせいで女を惹きつけるような魅力が全開になってしまったがな」
「ハハハ、ワロスワロス」
軽口を叩いた。
「だったらクラス中の女、全部食してやるか」
「――冗談で言ってるのか?」
メイルに股間のモノをきつくつかまれた。
「痛いってばッ!」
「なら――、そんな軽口を叩くな。不愉快だ」
「すまない。……でも、それは俺の夢だからな……。
――メイルがダメだって言うならやめるけど、流れ的にそうなってしまったら?」
「諦める。ただし追求だけはさせてもらうし、朝までエッチの地獄コースへご招待だ」
「うへぇ」
「……まあ、したいならすればいい。その場にいることに出来ないであろう私には止める権利などないしな」
それに俺はうなずき、メイルを抱きしめた。
「それじゃ……、続きするか?」
「恭二……。お前も好きだな」
「ハハハ。……なんかメイルとそうしたい気分なんだよ」
◇
「おはよう」
「おう。……どうしたんだ、恭二」
「あン?」
「なんか……、催淫効果のある香水でもつけたのか? クラス中の女の子がこっちを見てるけど」
知樹に言われ、振り返ると女の子の視線がこっちに集中していた。
「催淫効果のある香水はつけてませんがね……。まあ、インキュバスに変化したことは確かだ」
「インキュバスって……」
「そのとおり。人間っていう枠組みを突破してしまいました」
「……確か、魔物なんだろ、それ。……それにしても、この前と同じ姿だな」
「まあな。ただし、人間じゃないからな。魔物に近い人間として扱われるだろうね、俺は」
「魔物に近い人間……か。面白そうな存在だな。……俺もサキュバスと寝てみるか」
「それなら手伝うが?」
「すまないな……」
何でも内容に会話している間にも、女の子の視線が鋭く刺さっていることは感じていた。
――その夜。
「……って、お前の家かよ」
「ああ。その方が早いだろ? インキュバス化するには」
「うーむ。まあ、そう、なんだが……。俺はサキュバスとセックスしたかったわけなんだが。
その上でインキュバスになりたいんだが……」
「わがままな奴だなあ……」
そう言っていると、コーラルがその姿を表した。
「きょーじ、その人だれ?」
「ああ、俺の友人、式堂知樹」
「ともき……?」
「そ。……んでだ、コーラルどうだ?」
「どう、って……。――知樹とセックスするってこと?」
「……ああ、嫌なら嫌でいいんだが……」
「――別に構わないわよ? 知樹は童貞でインキュバスになりたいんでしょ?
それなら問題ないわ、恭二」
人格が変貌したような口調だな。……裏の顔?
「それじゃ、知樹、おいで」
「あ……、はい」
……即行でこうなっちまったか……。
「いいのか?」
「ああ。あいつがそうして欲しいって言っていたからいいんだよ。
コーラルもノリノリだったしな」
「無責任だな……」
「仕方ないだろ……。そればっかりは俺ではどうしようもないんだから」
「ところで、恭二……」
……なんとなく分かった。
メイルの顔がほんのり赤みを帯びてる。吐息がどこか甘い印象。
そして、首元に噛み付いてくる。
「メイル……」
「セックスしたいけど、精液じゃなくてもいいって分かったんだ。
要するに恭二の血が欲しいんだ、私は……」
ちゅーちゅー。
俺の血を吸っているからなのか、メイルの喉がゴクゴクと鳴ってる。
「はふぅ……」
「全く……」
「勿論、その後の展開はわかってるよな……?」
「やれやれ。……インキュバスじゃなかったら死んでるな……」
◇
――その後、クォーツが様子を見に行ったら、むせ返るような匂いがしていたそうだ。
「そんなにひどかったのか?」
「ハイ。とりあえず、コーラルさんと知樹さんには私の独断でお風呂に入れました。
ですが、なかなか上がらないので見てみたら……」
「人の風呂場でいちゃついていたのか。あのバカども」
クォーツはそれにうなずいた。
「はぁ……。仕方のない連中だ。……で、今でも?」
「そのようです。もう止めようにも止められなかったので……」
「やれやれ。メイル、割り込むか」
「そうするしか……ないんだろう?」
「ああ。このままの状態もまずいだろう」
メイルの身体は精液でべとついているだろうし、俺は俺で愛液やらなんやらで汚れている。
「……確かに」
「それじゃ、行こう」
俺も知樹もインキュバスになったことで巻き起こった出来事はまた別の話だ。
「どうしたんだ、恭二?」
「インキュバスになったのはいいけど……。あまり変わっていない気がするんだけど」
俺は全裸のメイルに向かってそう言った。
「それはそうだろう。コーラルとクォーツが『最大の譲渡』って言っていたんだからな。
恭二を人間だった時の姿にする、っていうことが」
「そっか……。あの二人が……」
「ただし、私のせいで女を惹きつけるような魅力が全開になってしまったがな」
「ハハハ、ワロスワロス」
軽口を叩いた。
「だったらクラス中の女、全部食してやるか」
「――冗談で言ってるのか?」
メイルに股間のモノをきつくつかまれた。
「痛いってばッ!」
「なら――、そんな軽口を叩くな。不愉快だ」
「すまない。……でも、それは俺の夢だからな……。
――メイルがダメだって言うならやめるけど、流れ的にそうなってしまったら?」
「諦める。ただし追求だけはさせてもらうし、朝までエッチの地獄コースへご招待だ」
「うへぇ」
「……まあ、したいならすればいい。その場にいることに出来ないであろう私には止める権利などないしな」
それに俺はうなずき、メイルを抱きしめた。
「それじゃ……、続きするか?」
「恭二……。お前も好きだな」
「ハハハ。……なんかメイルとそうしたい気分なんだよ」
◇
「おはよう」
「おう。……どうしたんだ、恭二」
「あン?」
「なんか……、催淫効果のある香水でもつけたのか? クラス中の女の子がこっちを見てるけど」
知樹に言われ、振り返ると女の子の視線がこっちに集中していた。
「催淫効果のある香水はつけてませんがね……。まあ、インキュバスに変化したことは確かだ」
「インキュバスって……」
「そのとおり。人間っていう枠組みを突破してしまいました」
「……確か、魔物なんだろ、それ。……それにしても、この前と同じ姿だな」
「まあな。ただし、人間じゃないからな。魔物に近い人間として扱われるだろうね、俺は」
「魔物に近い人間……か。面白そうな存在だな。……俺もサキュバスと寝てみるか」
「それなら手伝うが?」
「すまないな……」
何でも内容に会話している間にも、女の子の視線が鋭く刺さっていることは感じていた。
――その夜。
「……って、お前の家かよ」
「ああ。その方が早いだろ? インキュバス化するには」
「うーむ。まあ、そう、なんだが……。俺はサキュバスとセックスしたかったわけなんだが。
その上でインキュバスになりたいんだが……」
「わがままな奴だなあ……」
そう言っていると、コーラルがその姿を表した。
「きょーじ、その人だれ?」
「ああ、俺の友人、式堂知樹」
「ともき……?」
「そ。……んでだ、コーラルどうだ?」
「どう、って……。――知樹とセックスするってこと?」
「……ああ、嫌なら嫌でいいんだが……」
「――別に構わないわよ? 知樹は童貞でインキュバスになりたいんでしょ?
それなら問題ないわ、恭二」
人格が変貌したような口調だな。……裏の顔?
「それじゃ、知樹、おいで」
「あ……、はい」
……即行でこうなっちまったか……。
「いいのか?」
「ああ。あいつがそうして欲しいって言っていたからいいんだよ。
コーラルもノリノリだったしな」
「無責任だな……」
「仕方ないだろ……。そればっかりは俺ではどうしようもないんだから」
「ところで、恭二……」
……なんとなく分かった。
メイルの顔がほんのり赤みを帯びてる。吐息がどこか甘い印象。
そして、首元に噛み付いてくる。
「メイル……」
「セックスしたいけど、精液じゃなくてもいいって分かったんだ。
要するに恭二の血が欲しいんだ、私は……」
ちゅーちゅー。
俺の血を吸っているからなのか、メイルの喉がゴクゴクと鳴ってる。
「はふぅ……」
「全く……」
「勿論、その後の展開はわかってるよな……?」
「やれやれ。……インキュバスじゃなかったら死んでるな……」
◇
――その後、クォーツが様子を見に行ったら、むせ返るような匂いがしていたそうだ。
「そんなにひどかったのか?」
「ハイ。とりあえず、コーラルさんと知樹さんには私の独断でお風呂に入れました。
ですが、なかなか上がらないので見てみたら……」
「人の風呂場でいちゃついていたのか。あのバカども」
クォーツはそれにうなずいた。
「はぁ……。仕方のない連中だ。……で、今でも?」
「そのようです。もう止めようにも止められなかったので……」
「やれやれ。メイル、割り込むか」
「そうするしか……ないんだろう?」
「ああ。このままの状態もまずいだろう」
メイルの身体は精液でべとついているだろうし、俺は俺で愛液やらなんやらで汚れている。
「……確かに」
「それじゃ、行こう」
俺も知樹もインキュバスになったことで巻き起こった出来事はまた別の話だ。
10/08/14 20:00更新 / ヘイズル