#5:天使の揺り篭・前編
「えっ……。魔物娘が消滅する!?」
「ああ。さっき局長に聞いたら、エンジェルクレイドルにはあの4人の天使の他に、熾天使(セラフ)のコードが隠されていて、そのコードが発動したとき、セラフが解き放たれて『メギドラオン』で魔物娘だけを根こそぎ消し去るとな」
「ま、マジかよ……!」
恐怖した。セラフのメギドラオンで、魔物娘だけを消し飛ばすなんて……!
「……ふむ。祐樹、まずいことをしたのかもな、俺たちは」
「蒼井さん、祐樹君が固まっちゃってますよ」
「……おいおい。まあ、ともかく。愛莉、エンジェルクレイドルのマスター捕縛を最優先してくれ。
マスターが何かの拍子で、セラフのコードを解除しないようにしなければならないからな」
「了解です!」
俺の耳には二人が会話している声が聞こえていたが、動けずにいた。
◇
暫くして、家に戻ったが不安で頭がいっぱいだった。
エンジェルクレイドルのセラフ解放のコードが発動した瞬間、ジパング地方はどうなってしまうのか。
法と秩序が敷かれ、魔物娘も寄り付かなくなってしまったら。
最高神に洗脳された人間たちが、救世主(メシア)の到来を目的とした行動に移るのか。
そうなったとしたら、教団の戦力は膨れ上がり、魔界へ侵攻することも。
……その先を考えると、怖くなってきた。
「……お兄ちゃん?」
「恵玲奈か……」
「……顔色悪いけど大丈夫?」
「大丈夫じゃないよ、お兄ちゃんは……。怖いんだ……」
「……どう怖いの?」
俺は恵玲奈に事情を全て話した。
「――大丈夫だよ。そうなったとしても、消滅するその時までずっとそばにいるから」
「恵玲奈……」
「だって、私はお兄ちゃん大好きだもん。好きな人のそばにいたい、って思うのは普通のことだと思うんだ。それが魔物だったとしても。
魔物だって感情があって、考えることだって出来るんだよ? だから、ね?」
そう言って、両手を俺の頬に持っていて唇を重ねる。
「不安なら……。全部、私が受け入れて上げる――」
恵玲奈は俺をベッドに押し倒し、「大好きだよ、お兄ちゃん」と言った。
……その時は、俺は恵玲奈のなすがままに交わった。
でも、不思議と嫌な気分にはならなかった。
こんなにも愛してくれる娘がいたんだな、って思える。
何も考えたくなかった俺はその感情に身を委ねた……。
――気がついたときには、太陽が登っていた。
どうやら、あの後そのまま眠っていたらしい。
恵玲奈は黒髪の女の子の状態に戻って、すやすやと眠っていた。
俺はそのまま起き上がり、シャワーを浴びに行った。
『……今でも不安に押しつぶされそうだ』
どれだけ恵玲奈を愛しても、ぬぐいきれない不安。
もう、戦えないのかもしれない。そう思っていたが……。
「……恵玲奈……?」
無言で背中に抱きついてきた。
「どうしたんだ、急に」
「……もっと、お兄ちゃんのそばにいたい」
振り向くと、ピンと狐耳が立っていて、九本の尻尾が生えていた。
「お前……」
「もっと、お兄ちゃんとしたい……」
恵玲奈は彼女なりに気遣ってくれているのだろうか。それとも、ただヤリたいだけなのか。
誘惑に負けた俺は、恵玲奈と交わった。
……いろいろと精神にガタが来ているのかもしれない……。こんなに性欲に負けるなんて……。
ようやく、気持ちが落ち着いたときには、お昼を迎えていた。
流石の恵玲奈も、もう無理と言っている。
……大分遅くなったが、俺は管轄部へ向かった。
「……どうした祐樹」
「すいません。どうしても、不安で帰ってきてからココに来るまで、ほとんど恵玲奈とセックスしてました」
「――はぁ……。全く……。――まあ、俺も人の事はいえん。
時々、フランと出掛けるまでしてた、なんてこともあったからな」
「は、はあ……」
「不安な気持ちは分かるが、あまり恵玲奈ちゃんに迷惑かけるんじゃないんだぞ。
……それじゃ、シミュレートでもやるか?」
「シミュレート?」
「適度に魔力も放出できるから、結構気晴らしには良いぞ」
「……分かりました」
◇
――オリュンポス世界・管理局『クロス・スクランブル』
「教団からの反応はなしか」
「はい。エンジェルクレイドルを独自で探しているようですが、見つけられてないようです」
「……愚図だな」
局長はばっさり切り捨てるように言った。
「管轄部の方が優秀だな。
……しかし、教団の言っていたことをそのまま、蒼井に伝えたが本当なんだろうか」
「ええ。裏付けは取れました。
……一回、エンジェルクレイドルを使った者がいて、その者が一度魔界を壊滅せんと動いたようですが、魔王軍の元勇者軍が動いて、セラフ解放のコードを使っても倒しきれなかったそうです」
「ハハハ、そうか。……その時の被害状況は?」
「先遣騎士団はほぼ壊滅。多くのデュラハンなどが浄化される、もしくは塵芥となったようです」
「その時のエンジェルクレイドルに登録された天使は? 浄化されるとか塵芥となるのだから、そうそうたる面子なんだろうな」
フォロンはそれにうなづいて、書類を読み上げた。
「大天使メタトロン、アールマティ、スラオシャ、イスラフェル……。それで熾天使ミカエル……。
やはりそうそうたる面子じゃないか。魔王軍に大打撃を与えられたんじゃないのか?」
「ですが、元勇者軍の攻撃でメタトロン、スラオシャ、イスラフェルは消滅。最高神の元で再生を待つほどに。アールマティは、自身の能力とイスラフェルの援護でなんとか自力で再生したようですが……。
熾天使ミカエルは倒された後、大天使ミカエルとして一時的に復帰。その後、セラフコードととして自らを封印したようです」
「なるほど……。しかし、セラフコードはそんな簡単に破られるようには、できていないのだろう?」
「勿論です。エンジェルクレイドルに登録された天使が全て戦闘不能、もしくは消滅で開くようになっているようですが、マスターが望めば前述の条件は無視される事も有ります」
「なっ……。それでは、天使たちの壊滅は危険なのだな!?」
「そうなると思います。だからこそ、生け捕りにする必要があるのです、局長……」
「ぐぅっ……。フォロン、念のために直属魔導師の準備を。
ミカエルが出てきたら、ジパングがどうなるか分からないぞ」
「了解です」
「ああ。さっき局長に聞いたら、エンジェルクレイドルにはあの4人の天使の他に、熾天使(セラフ)のコードが隠されていて、そのコードが発動したとき、セラフが解き放たれて『メギドラオン』で魔物娘だけを根こそぎ消し去るとな」
「ま、マジかよ……!」
恐怖した。セラフのメギドラオンで、魔物娘だけを消し飛ばすなんて……!
「……ふむ。祐樹、まずいことをしたのかもな、俺たちは」
「蒼井さん、祐樹君が固まっちゃってますよ」
「……おいおい。まあ、ともかく。愛莉、エンジェルクレイドルのマスター捕縛を最優先してくれ。
マスターが何かの拍子で、セラフのコードを解除しないようにしなければならないからな」
「了解です!」
俺の耳には二人が会話している声が聞こえていたが、動けずにいた。
◇
暫くして、家に戻ったが不安で頭がいっぱいだった。
エンジェルクレイドルのセラフ解放のコードが発動した瞬間、ジパング地方はどうなってしまうのか。
法と秩序が敷かれ、魔物娘も寄り付かなくなってしまったら。
最高神に洗脳された人間たちが、救世主(メシア)の到来を目的とした行動に移るのか。
そうなったとしたら、教団の戦力は膨れ上がり、魔界へ侵攻することも。
……その先を考えると、怖くなってきた。
「……お兄ちゃん?」
「恵玲奈か……」
「……顔色悪いけど大丈夫?」
「大丈夫じゃないよ、お兄ちゃんは……。怖いんだ……」
「……どう怖いの?」
俺は恵玲奈に事情を全て話した。
「――大丈夫だよ。そうなったとしても、消滅するその時までずっとそばにいるから」
「恵玲奈……」
「だって、私はお兄ちゃん大好きだもん。好きな人のそばにいたい、って思うのは普通のことだと思うんだ。それが魔物だったとしても。
魔物だって感情があって、考えることだって出来るんだよ? だから、ね?」
そう言って、両手を俺の頬に持っていて唇を重ねる。
「不安なら……。全部、私が受け入れて上げる――」
恵玲奈は俺をベッドに押し倒し、「大好きだよ、お兄ちゃん」と言った。
……その時は、俺は恵玲奈のなすがままに交わった。
でも、不思議と嫌な気分にはならなかった。
こんなにも愛してくれる娘がいたんだな、って思える。
何も考えたくなかった俺はその感情に身を委ねた……。
――気がついたときには、太陽が登っていた。
どうやら、あの後そのまま眠っていたらしい。
恵玲奈は黒髪の女の子の状態に戻って、すやすやと眠っていた。
俺はそのまま起き上がり、シャワーを浴びに行った。
『……今でも不安に押しつぶされそうだ』
どれだけ恵玲奈を愛しても、ぬぐいきれない不安。
もう、戦えないのかもしれない。そう思っていたが……。
「……恵玲奈……?」
無言で背中に抱きついてきた。
「どうしたんだ、急に」
「……もっと、お兄ちゃんのそばにいたい」
振り向くと、ピンと狐耳が立っていて、九本の尻尾が生えていた。
「お前……」
「もっと、お兄ちゃんとしたい……」
恵玲奈は彼女なりに気遣ってくれているのだろうか。それとも、ただヤリたいだけなのか。
誘惑に負けた俺は、恵玲奈と交わった。
……いろいろと精神にガタが来ているのかもしれない……。こんなに性欲に負けるなんて……。
ようやく、気持ちが落ち着いたときには、お昼を迎えていた。
流石の恵玲奈も、もう無理と言っている。
……大分遅くなったが、俺は管轄部へ向かった。
「……どうした祐樹」
「すいません。どうしても、不安で帰ってきてからココに来るまで、ほとんど恵玲奈とセックスしてました」
「――はぁ……。全く……。――まあ、俺も人の事はいえん。
時々、フランと出掛けるまでしてた、なんてこともあったからな」
「は、はあ……」
「不安な気持ちは分かるが、あまり恵玲奈ちゃんに迷惑かけるんじゃないんだぞ。
……それじゃ、シミュレートでもやるか?」
「シミュレート?」
「適度に魔力も放出できるから、結構気晴らしには良いぞ」
「……分かりました」
◇
――オリュンポス世界・管理局『クロス・スクランブル』
「教団からの反応はなしか」
「はい。エンジェルクレイドルを独自で探しているようですが、見つけられてないようです」
「……愚図だな」
局長はばっさり切り捨てるように言った。
「管轄部の方が優秀だな。
……しかし、教団の言っていたことをそのまま、蒼井に伝えたが本当なんだろうか」
「ええ。裏付けは取れました。
……一回、エンジェルクレイドルを使った者がいて、その者が一度魔界を壊滅せんと動いたようですが、魔王軍の元勇者軍が動いて、セラフ解放のコードを使っても倒しきれなかったそうです」
「ハハハ、そうか。……その時の被害状況は?」
「先遣騎士団はほぼ壊滅。多くのデュラハンなどが浄化される、もしくは塵芥となったようです」
「その時のエンジェルクレイドルに登録された天使は? 浄化されるとか塵芥となるのだから、そうそうたる面子なんだろうな」
フォロンはそれにうなづいて、書類を読み上げた。
「大天使メタトロン、アールマティ、スラオシャ、イスラフェル……。それで熾天使ミカエル……。
やはりそうそうたる面子じゃないか。魔王軍に大打撃を与えられたんじゃないのか?」
「ですが、元勇者軍の攻撃でメタトロン、スラオシャ、イスラフェルは消滅。最高神の元で再生を待つほどに。アールマティは、自身の能力とイスラフェルの援護でなんとか自力で再生したようですが……。
熾天使ミカエルは倒された後、大天使ミカエルとして一時的に復帰。その後、セラフコードととして自らを封印したようです」
「なるほど……。しかし、セラフコードはそんな簡単に破られるようには、できていないのだろう?」
「勿論です。エンジェルクレイドルに登録された天使が全て戦闘不能、もしくは消滅で開くようになっているようですが、マスターが望めば前述の条件は無視される事も有ります」
「なっ……。それでは、天使たちの壊滅は危険なのだな!?」
「そうなると思います。だからこそ、生け捕りにする必要があるのです、局長……」
「ぐぅっ……。フォロン、念のために直属魔導師の準備を。
ミカエルが出てきたら、ジパングがどうなるか分からないぞ」
「了解です」
10/01/12 23:43更新 / ヘイズル
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