読切小説
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雨のち弾ける性教徒
 
午前2時、客がほとんど居なくなった居酒屋の奥座敷で突っ伏すシスターが一人。最も酒の席には似合わないと思われる職業だが、ゲートと呼ばれるものが此の世に現れ魔物娘と呼ばれる種族が出現してからというもの、どんな職業が居たとしても誰も不思議とは思わなかった。突っ伏してるこの女性も先程の例に洩れずダークプリーストと呼ばれる魔物娘。

「ぅ〜〜・・・私もうやだぁ・・・どうして誰も信仰してくれないのよぉ」

「・・今日も入信無しだわぁ・・・」

勧誘係として街角に立って愛と堕落の教えを説いていたが、なかなか思惑通りにいかず自棄酒を呑む毎日。

「男の人はほとんど取られちゃって目の前でイチャイチャされるし・・やっと男の人を見つけていざ声を掛けようとしたら上空からブラックハーピーの方がその男性を攫って・・」

「あー・・えーえーそうですよー・・私は鈍間な亀ですよー」

自らの独り言に自ら答えるどうしようもない現状が続く事3時間ほど、店の看板は店内に下げられ店主が残っている客へと閉店のお知らせに回る。

「お客さーん、もう閉店になりますんでー・・お客さーん?」

「うぃ〜・・どうせ私は閉店時間に追い出される役立たずな性職者ですょ〜・・・」

完全にへべれけになっている彼女を他所にせっせと閉店作業に入る店長。無視された事が気に食わなかったのか、それとも他の思惑があったのか定かではないが突如絡み始める酔っ払いシスター。

「ねぇ〜〜店長〜・・・一緒にぃ〜、堕 落 し な い ♥」

「生憎だけど俺の嫁は魔女なんでサバトに属している。ま、諦めてくれ」

「ぶぅ〜〜・・ケチィー・・」

「ほらほら、信仰も大事だろうけどあんたも早く帰って旦那とゆっくり過ごしな」

「旦那が居たらこんな所で自棄酒なんてしてないわよーー!!」

勘定をテーブルに叩きつけドシドシと足音を鳴らして店を後にし、鼻息荒く外に出たものの周囲の環境に涙が溢れそうになる。右を見ても左を見てもカップルか夫婦、もしくはこれから突き合おうという人だかり。その中でポツンと此の世から隔離されたかのような表情で居酒屋の前で立ち尽くす女が一人。その表情から滲み出るのは焦り。酔いは一気に醒め、必死に辺りを見回す。

「な、なんとかして信者・・じゃなくて男の人を見つけなきゃ・・」

必死に辺りを見回すも全ての男性が売約済みもしくはお買い上げありがとうございましたの札が貼られているような気がしてならない。探す事を諦め肩を落とし項垂れながら教会へと重い足取りで歩き出す。

「ほんっっっっとうに・・・私って何してるんでしょう・・」

真っ暗闇の中、小高い丘の上に建てられた誰も居ない教会の扉の前で跪き両手を固く結び堕落神へと祈りを捧げる。

「堕落神様・・どうかお願いします。私にも・・愛をお与えくださいませ」

一心不乱に祈るも神の声が聞こえず、落胆の色を隠せないまま呆然とした顔付きで幽鬼のように立ちあがりふらりふらりと教会内に入っていく。人々を癒すべき存在であるダークプリーストは誰にも癒されず、只一人、孤独に苛まされ木製のベッドの上で自らの体を抱き締め眠りに落ちる。




「・・・もう朝なのですか、早く人々に堕落の教えを説きに行かないと・・」

昨晩の寂しさを紛らせようと自らを奮い立たせるが足が言う事を聞かず教会の外へと一向に出ようとしない。

「しょうがないですね、今日は御祈りを済ませた後は懺悔室で人々の悩みを解消しましょう」

懺悔室に入るも誰一人として教会に訪れる者は無く、時間だけが無慈悲にも過ぎ去ってゆく。溜息を一つ溢し木製の椅子に腰掛け瞼を落とし深い瞑想に落ちる。視界を遮った暗闇の中、研ぎ澄まされた耳に聞こえてくるのは時計の秒針が動く音、自身の息遣い、そして教会の外から僅かに聞こえる小鳥の鳴き声。瞑想にはうってつけの環境が揃っているが彼女自身にとってこの瞑想はただの痩せ我慢であった。魔物娘でありながら未だ独り身なのを体を震わせながらじっと耐えていたのだ。

「神よ・・・私に試練をお与えください」

そう呟くと同時に屋根に取り付けられた鐘の音が教会内に突如鳴り響く。

「もうお昼ですか、…昨日のお酒もまだ体に残ってますし、今は昼食を摂りたい気分ではありませんので少しばかり御昼寝にしましょう」

今日も教会に誰も来ないと諦めつつ、自室のベッドで仰向けになり天井を見つめる日。性欲に溺れる事を是とする彼女にとって独り寝などこの上なく劣悪な環境であり、自身が愛欲に溺れていない事に不安を感じつつ左手を天井へと突き出す。

「何時になったらこの左手に愛の証が刻まれるのでしょう」

近き未来を想像しながら顔が綻ぶも、まだ目の前に現れぬ伴侶に少しばかり気を落とす。結ばれる、ただこの行為のみのはずが高き壁となって路を塞ぐ。

「運命の出逢い・・・早く私にも訪れるといいのですが」

軽く瞼を落とし愛しき伴侶との生活を妄想する。

おはようのキスから始まり二人一緒に礼拝堂の掃除、それが終われば愛する夫と楽しい食事。そして二人肩を寄せ合いどちらからともなく触れ合い、甘い雰囲気の中お互いの愛情を確かめ合う為に顔を近づけ、これから始まる情事に胸を弾ませながら桃色の吐息を絡ませ抱き締めあう。背中に回された手は肩を撫で背筋に沿って指を這わし、ゆっくりと臀部に到達し大胆な行動に出る。修道服越しに形の良い安産型の尻を揉みしだき歪ませ、時には割れ目の間へと侵入しようと蠢く。ただそれだけの妄想で彼女の心は幾度と無く震え快感に酔い痴れる。そしてその妄想の続きを行おうと自らの手で秘所をまさぐろうとするが精神がそれを押し留める。

「これ以上はダメ…、此処から先は夫となるべき方の愛の初仕事なのですから」

だがしかし、一度陰部に触れてしまった手は其処からなかなか離れようとせず、もっと甘い汁を掬おうと指先が筋に沿って這い回り何度も微弱な刺激を与え続けた。ぴったりと閉じた割れ目から微かに漏れ出したそれは肛門まで辿り着き彼女に羞恥と快感を同時に感じさせる。

「あ・・・、今お尻まで垂れて・・」

あまりの恥ずかしさに尻に力を込めてしまうが、それが逆に仇となってか尻穴が締まる度にネチャッと何度も音が鳴り肛門に愛液の糸を張り巡らせる。

「や、だめ・・・オマンコもお尻も気持ちいい」

秘所に這わせていた指が下へと降りる。狙いは先程から卑猥な音を出し続けている肛門。左手は尻肉を掴むと外側に向かって引っ張り肛門がはっきりと外部に曝け出されるように固定する。その隙に空いた右手の人差し指が菊の花のようにしっかりと花弁を伸ばした穴へと易々と侵入してしまう。

「んっ・・・んふぅ・・くっ!!あぁん・・・お、お尻なら・・いいですよね・・」

先程垂れた愛液が潤滑油となって侵入した指の動きを滑らかなものにしてしまう。流れるかのような、それでいて踊るかのような指の動きは彼女に何度も絶頂を与え続け堕落愛の渦へと誘う。

「んぁ・・こ・・これが男の人の指・・・んっ!だったら・・」

そう想像するだけで興奮が高まるものの愛撫してるのは自分の指。それをはっきり自覚してしまい少々物足りなさを感じつつ指を引き抜き、愛液と腸液で濡れた指を丹念にしゃぶるが甘酸っぱく感じた汁はすぐに喉の奥に流し込まれ余韻に浸る事すら出来ない。

「まだ男の人を知らない私が人々に愛を教えを説く事が出来るのでしょうか・・」

不安と切なさに挟まれたまま彼女は瞳を閉じ深い眠りに落ちた。





時刻は深夜。突如降り出した雨音に気付き目を覚ました彼女は何かの物音を察知し聖堂内へと足を運ぶ。水が滴る音。そしてその音に続くように誰かの荒い息遣いが聞こえる。初めは泥棒と勘違いしそうになった彼女だったが、扉の隙間から聖堂内を窺うとずぶ濡れになった男性が上着を脱ぎ、椅子の背に濡れたシャツを掛け悪態を吐いていたのが見えた。隙間から見ていた彼女の鼻腔に男の匂いが届く。まだ誰とも繋がっていない純粋な男の匂い。胸の鼓動が、体内の血液の流れが激しくなっていくのが感じ取れる。彼女はそっと静かに扉を開け、至って冷静に男に話し掛けた。

「こんな夜分に一体どうなされましたか?」

男は声がした方向に振り向き音も無く突然現れた彼女に警戒しながらも答える。

「あー・・いきなり雨が降ってきてな。どこかで雨宿りしたかったんだが・・その・・まぁーこの時間だと邪魔するようで悪い気がしてな・・それで偶々ここを見つけて勝手に入らせて貰ったんだが・・人が居るとは思わず起こしてしまったようですいません」

「気にしなくてもいいのですよ。此処は見ての通り教会、お困りの方を無碍に扱うような事はありません。例え深夜であろうとも私はいつでも迎え入れるだけですから」

その言葉に安心したのだろうか、警戒を緩め手近な椅子に腰を掛ける。先程までの静かな聖堂に響く荒い息遣いは徐々に治まり、男はじっと彼女を見詰める。まだ警戒されているのだろうかと内心不安な彼女だったが、険しかった男の目付きが緩やかに曲がるのを確認し静かに歩み寄る。

「濡れたままではお体に障ります。奥の部屋に浴室がありますので体を温めてはどうでしょう?」

そこまでの親切を受けるわけにはいかない、と一旦は拒否した男だったが懸命な説得によって浴室へと案内される。静まり返った廊下に木霊する二人の足音が彼女の心に激しく揺さぶりを掛ける。外は大雨。誰も来ない教会。例え大声を上げたとしても激しい雨音に掻き消され外に知れ渡る事は無い。最高の条件が揃ってる事に気付いた彼女は舌なめずりしゆっくりと尾を左右に揺らし感情を表わす。

「こちらが浴室です、お着替えは後ほど御持ち致しますのでゆっくりと体を温めなおしてくださいね」

男が浴室に入った事を確認し、急ぎ部屋に戻り着替えを物色し始める彼女。幸いにも備品などの管理はしっかりしていた御蔭か来客用の着替えが数点見つかり安堵の溜息を漏らした。

「恵みの雨に感謝します、あの方を私の下へと導いてくださいまして・・」

胸の前で軽く十字を切り、神に感謝すると同時にこれからの進展を期待してしまう。

「ふふふ・・・やっと私にも巡ってきた幸運。絶対に逃がしませんわ」

軽い足取りで浴室まで着替えを持って行き、脱いだばかりの衣服と交換した後、彼女はそれを抱き抱えてくるくると踊るように洗濯場へと持ち運ぶ。

「すぅぅぅ〜〜〜・・・・んはぁ、なんて香しい匂いなのでしょう・・・、ずぶ濡れで無ければこのまま香りを堪能したいのですが・・」

一頻り匂いを堪能した後、名残惜しく感じながらもズボンの裾に跳ねたであろう泥などを綺麗に洗い落としていく。その姿はまるで結婚したての若妻かと思われるほど優しく丁寧に。

「うふふ、綺麗に落とせましたわ。それでは、あの人が浴室から出るまでに乾かして・・・」

そこまで口に出して気付く。もし乾いた事がわかればそのまま服を受け取って雨具を借りて出ていってしまうのではないだろうか。それとも誰かに連絡を取って迎えに来てもらうのかも知れないと。嫌な悪寒が彼女を襲う。

「まさかね・・そこまで悪い事は起きないとおも・・ハッ!?」

洗濯場の小窓から外の様子を見て息を呑む。先程までの大雨が止もうとしていたのだ。このままだと何もしなくても男は帰ってしまうだろう。

「お願いだから止まないで・・・今ここで止んでしまったらあの人はきっと帰ってしまう・・」

彼女の必死な願いが天に通じたのか止みかけていた雨が再度激しく降り出す。

「もぅ・・意地悪な天気なんですから」

鼻歌混じりに洗ったばかりの下着などを室内に干し、すぐさま浴室へと向かう。あわよくば、背中を流そうなどと考えを張り巡らせていた彼女だったが運悪く風呂から上がったばかりの男と鉢合わせてしまった。

「あ、あら?少し御早いようですが・・体は温まりましたでしょうか?」

「充分過ぎるほど温まりました。こんな夜分に押し掛けた形になってしまったのに・・ここまで親切にして頂き本当に感謝します」

言葉よりも体で示して欲しいと心の中で叫びながらも笑顔は絶やさない。今ここで欲に塗れてしまっては愛ある堕落とは言えないから、と必死に色欲の衝動を抑える。

「さ、体も温まったようですから・・それではすぐに体の芯から温まるシチューを御持ちしますね。昨日の残り物で申し訳ありませんが・・」

「何もそこまでしなくても・・・ッ!?」

「ふふっ・・・、お腹は正直ですわ。さ、御遠慮なさらずこちらに」

事がトントン拍子に運ぶ。これまでの彼女の不運を吹き飛ばそうかと思えるほどに全てが上手く働きかける。この波に乗らない彼女では無かったが敢えてその幸運を見送った。今はまだ早過ぎると直感めいたものがあったのだろう。

「すぐに温めなおしてきますので、ここで少々お待ち頂けますでしょうか」

「ぁ・・はい、何から何まで本当にありがとうございます」

「困った時はお互い様ですから御気になさらず」

そう言って彼女はすぐさま厨房へと向かい昨日の残り物であるシチューに火を通す。コトコトと煮込む事10分少々ほどで鍋全体に熱が伝わりシチューの香りが厨房全てに拡がっていく。

「・・・んっ、後数分もすれば大丈夫ですね」

お玉で軽く掻き混ぜ味見を少し、口の中に広がる甘味に舌鼓を打つ。

「後は余熱で大丈夫ですから・・そうですわ、シチューだけでは足りないですしパンとサラダの御用意もしなくては」

人生初の男性の来客に心も体も弾ませながら皿を用意し、手早くサラダの盛り付けを終わらせ、温め終わったシチューを装い、隣にパンを添える。

「ではシチューとサラダを・・あら?パンが持てませんわ・・こうしましょうか」

パンが乗った皿を尻尾の上に乗せ器用にバランスを取りながら食堂まで運び込む彼女。

「さ、温かい内に召し上がってくださいね」

「本当に貴女は女神のようです・・」

「もぅ・・そんなに煽てても何も出ませんからね」

よほど腹を空かせていたのか男は凄まじい勢いでシチューをパンをサラダを次々と胃に収めてゆく。そんな様子を彼女はまるで母が子の成長を見届けるかのような慈愛に満ちた目で優しく見つめる。時折、口の端から零れたシチューをナプキンで拭き取る姿はまさしく母を思わせる。拭いてもらった恥ずかしさからか男は顔を赤くしながらも、それと同時に僅かばかり嬉しさも晒し出す。

「ごちそうさまでした、ありがとうございます」

男は彼女に感謝の言葉を送った後、ほんの少しだけ目線を窓へと向ける。外はまだ大雨。例え雨具などを借りたとしても、家に戻るまでにもう一度ずぶ濡れになるだろう。軽く溜息を漏らしこれからどうしようかと悩む男に彼女は問いかける。

「今少しばかり外を眺めていらしたようですが・・もしかしてこの大雨の中を御戻りになるつもりで?」

「ええ、ほんの少し考えていましたがかなり辛いでしょうね」

その一言に彼女の心は焦った。もしこのまま本当に帰る事になってしまえば折角掴んだチャンスが手からするりと抜け落ちてしまう。だが運命の女神は彼女に微笑んだ。

「申し訳ないのですが・・聖堂の端の方でも構いませんので雨が小降りになるまで休憩させて頂けないでしょうか・・」

「な、何を言ってるのです!先程まで貴方はずぶ濡れだったのですよ。そのような寒い所で休ませる訳にはいきません。幸いにも隣の部屋は元々孤児達が使っていた部屋ですのでそちらでお休みください。暖炉もありますし、簡易ベッドと毛布もありますのでお体を冷やさぬようしっかり暖まってください」

そう一気に捲くし立て隣の部屋へと誘導し暖炉に火を灯した。小さな部屋ながらもしっかりとした作りで隙間風なども入ってこない。ベッドがあり掛け毛布もある。それだけでも十分すぎる部屋に暖炉からの熱が部屋全体に行き渡り男の体を冷やさぬよう役割を果たす。

「さ、これで大丈夫です。雨が上がるまで暫くお休みください」

至れり尽くせりな状況に男は呆然とするが、口の中で小さく神に感謝への言葉を紡ぎベッドに横たわる。

「それでは、おやすみなさい」

パタンと扉を閉め彼女は真っ直ぐに自室に向かう。極めて冷静な顔付きで部屋に入ると同時にベッドへとダイブした。

「ああああああ、たまりませんわーーー!なんて私好みの方なのかしら!堕落神様!貴方様に仕えてから今日という日を感謝せずにはいられません!甘美でそれでいて脳の奥まで犯してくれそうな匂いも最高でした!」

自身の体を抱き締めながらベッドの上で転げ回る姿は聖職者とは程遠い姿。それでも彼女は一人悶々と妄想を捗らせベッドの上でのた打ち回る。

「あの腕で抱き締められながら抱かれる想像するだけで子宮が震えてきますわ〜」

雨音で外に声が漏れない事を良い事に色々と溜まった鬱憤を晴らすかのように妄想を拡大してゆく。対面座位で抱き締めあったままの中出し、そのまま騎乗位、そして方足を持ち上げられ松葉崩しへと順に抱かれてしまうのだろうかと悶々と妄想を続けていく。

「出来れば測位で浅く優しく突いてくれると嬉しい・・」

淫らな妄想が彼女の心を徐々に支配していく。今の今まで男に見せていた慈愛に満ちた顔は一瞬にして欲望に塗れた顔となり、雄の性器だけを受け入れる雌の体になった彼女はただ只管に腰をくねらせ何度も喘ぐ。男はまだかと子宮は彼女の脳に訴える。すぐ近くの部屋に居るのだから早く男を犯せと膣肉が蠢く。女性器から漏れだす汁がいつでも挿入しなさいと部屋中に甘い匂いを漂わせ淫靡な雰囲気を醸し出す。

「まだダメ・・あの人がぐっすり寝てから誘わないと意味が無いの」

壁に掛けられた時計に目を移すが、あれからまだ1時間と経っていない。ほんの少しだけもどかしさを感じながら聖堂内の巡回をする。誰も来ない寂れた教会は静かで厳かで。

「あの人はそろそろお休みになられたでしょうか・・・?」

足音を立てずに慎重に廊下を歩き、男が居る部屋の前で一度足を止める。ゆっくりとした動作でドアノブに手を掛け軽く捻りそっとドアを開ける。

「・・・もうお休みのようですわね、それではほんの少しだけ寝顔を・・」

彼女は男が寝ているベッドに近づこうとするが、突如大きく目を見開き駆け寄った。

「・・・・ぅ、・・・ぅぅ、さむい・・・ぅっ・・ぅぐ・・」

彼女は急ぎ毛布を剥ぎ取り男の容態を確認する。

「なんて酷い熱・・・体中が熱に侵されてますわ・・。このままですと命に係わるかもしれません。早く応急措置をしなくては!」

部屋に置かれていた薬箱を開けてみるも自身が魔物娘である事に気付き肩を落とす。元々、病気や怪我に殆ど縁の無い魔物娘がそこまで完備する事に意味が無かったのだ。

「・・・・はぁ・・は・・うっ・・・」

「ど、どうすれば・・・そうですわ!汗を掻けばなんとかなるはずです。こ、これは治療です・・そう、愛ある治療ですから」

男の服を脱がし全裸にすると彼女もまた同じように全裸となる。後頭部へと緩やかに生えた角、そして美しく整った彼女の裸体は見る者全てに母性を思わせる雰囲気を纏い付かせていた。程好く膨らんだ胸を両腕で隠しながら男の膝の上に跨る。まだ萎えているそれに唾液を垂らし手淫で興奮を誘う。熱のせいか反応が鈍いそれを優しく扱き、カリ首に指を這わせ、裏筋を何度も爪の先で軽く弾くと熱に侵された体とは裏腹にそれだけが元気を取り戻す。

「大丈夫そうですわね・・それでは入れますね」

見事に反り立ったそれに彼女は跨り手で挿入位置を定めゆっくりと膣内へと呑み込んで行く。

「んっ・・亀頭が・・あぁ、このまま奥まで入れるとどうなるのでしょうか」

「さ、寒い・・ぐっ!」

魘される男の言葉に意識が戻る。自身の性欲を満たすよりも先に目の前で苦しんでいる人を助けるのが聖職者としての努め。彼女は意を決して一気にそれを膣奥まで咥え込む。

「んんんっ!!・・はぁ・・す、凄くいい・・腰が痺れて気持ちいい」

処女膜喪失の痛みは無く、快感だけが彼女の脳を襲う。痺れる腰を持ち上げると膣から僅かに漏れる破瓜の血が見えた。

「嗚呼・・とうとう私も処女では無くなったのですね・・」

男に負担を与えぬよう体を前に倒し御互いに密着する形で彼女は何度も腹筋に力を込め腰を前に持ち上げては落とし、持ち上げては落としと男の欲望を高めていき、ついには膣内で射精させる。

「んんぅ!?熱いのが子宮に・・あぁ、まだ出てます・・」

生まれて初めて受け止めた精液の熱に体中が喜び打ち震え、彼女の子宮は一滴も溢すまいと膣内で何度も脈打つそれに吸い付き奥へ奥へと嚥下していく。彼女は更に男に汗を出させようと腰を上げたが突如何かの力によって押さえ付けられる。

「どうして・・こんな事をし・・・・ぅぅっ・・」

「貴方は酷い熱に侵されているのです。動かずにじっとしててください・・・私に任せて、あっ・・ん・・」

一度射精したそれは彼女の中で再度快感に奔流される。

「ふふ・・・また元気になりましたね。それではもう一度・・えっ?」

男は彼女の尻肉を掴み動かさぬようしっかりと固定し耳元で囁く。

「俺は貴女の事を以前から・・貴女を・・街角で一目見た時から好きだった・・。いつも笑顔で・・そして、どこか少しだけ無理をした顔で・・でもまさかこんな形で・・んっ!?」

触れるだけのキスで男の言葉を遮ると天使のような微笑みで男を見つめ言い返した。

「・・・んん、・・はい、そこまでですよ。それにしても・・私も鈍感でしたのね・・、いつも見られていたなんて正直わからなかった・・です、んっ!」

尻を小刻みに揺らし、咥え込んだそれを膣襞に何度も擦りつけ陰道全体に刺激を与えながら軽い絶頂に堕ちる。

「ふふ・・中で元気になってるのがわかります。まだ出し足りないのでしょう?いいのですよ、私の中を貴方の白でもっと濁らせて欲しいのですから」

密着してた肌と肌を離し、彼女は騎乗位の体勢になると男の欲望を誘うかのように結合部分を見せ付けるように股を開いた。繋がった部分からは先端だけ顔を覗かせたクリトリスがことさらに女を主張し始め、男の陰嚢には穴の奥に誘うかの如く彼女の愛液が絡み付く。

「私の大切な所を染めたくて仕方ないって顔をしていますね。でも今は・・私に任せてくださいね・・・あ・・また奥にコツンと・・」

体を仰け反らせ腰を上下に振り、男のそれによって女陰から引き摺り出される桃色の柔肉が暗がりの中でもはっきりとわかる。それに絡み付く肉は貪欲に何度もそれをしゃぶり舐り味わい尽くす。

「うっ・・そんなに吸い込まないでくれ・・もう出そう・・・ウッ!?」

「はぁ・・はぁ・・後少しで、私もイキそうですから・・それまで我慢して・・」

射精寸前のそれに彼女の尻尾が巻き付き根元をがっちりと縛る。数回の空射精を味わった後、それは突然解放される。

「うぐぁぁ・・・で・・出るっ!!」

「んんーーー・・・!!熱いのぉ・・凄く熱いのがお腹に沢山入ってきてる!」

尻尾の拘束から解放されたそれは彼女の膣を何度も穢し白く淡く濁らせていき、溜まりに溜まった男の欲は彼女を孕ませようと最奥まで手を伸ばし自らの所有物であるかのように子宮を染め上げていった。

「ふふ、こんなに濃いの沢山出されたら・・・、赤ちゃん出来るかも知れませんね」

そう宣告した彼女は腰を上げ、それを引き抜くと男の足元で四つん這いになり、女陰から白い欲が垂れるのを見せつけ男を誘う。手を内股に通し、陰部を指で拡げては垂れ落ちる欲を掬い、上の口でもじっくり吟味する。喉の奥に落ちた男の欲は彼女の心を更に興奮させた。襞が蠢き女陰が涙を流す。早く此処にそれを挿入しなさいと口を開かせる。桃色の肉壁が僅かに見え隠れし無防備である事を男に示すと、その華に誘われるかのように男は彼女に覆い被さり一気に挿入した。

「んーーーっ!・・・もう、せっかちさんなんで・・す・・んんっ・・から」

男は彼女の首筋や肩口や背中を舐めながら腰を何度も振り続け、彼女自身を味わう。そして彼女もまた、男の体から滴り落ちる汗を背中や腰で受け止め快感に酔い痴れる。男の汗が彼女の体全体に染み渡る。男の手が双球を揉みしだく。体が小刻みに震える。もっと男を体全体で感じる為に尻尾が男の腹に絡み逃がさぬよう離さぬようしっかりと固定する。男が腰を強く打ちつける度に彼女の柔らかい尻肉が幾度と無く波打ち、寄せては返す波のように男のそれへと戻る。

「んっ・・あ・・・、あぁ〜・・あーっ・・奥!奥が何度も突かれてぇ〜・・ぁ・・」

突如男の動きが緩やかなものに変わった。先程までの獣のような荒々しさは静まり亀頭まで引き抜いては一気に最奥まで挿し込む。

「んんっ!・・はっ!うぅん・・くっ!?」

数回の前後運動の後、彼女の腰を掴みぴったり密着した形で彼女の中に大量の欲を解き放つ。

「っ・・はぁー・・はぁー・・、少しだけ・・休みたい・・」

尻尾の拘束から逃れベッドに横たわる男に彼女は寄り添いなんとなく訊ねた。

「ねぇ・・いつから私を見ていたのかしら・・」

「はぁ〜・・はぁ〜・・と、十日ほど前・・貴女が街角で・・ふう・・・堕落の教えを・・はぁ、説いている所を偶然・・」

「そんなに前から・・私も勘が鈍ったのかしら。あら?・・それじゃあもしかして今日の事は・・」

「は、はい・・。貴女の事が気になって跡を・・でもまさか大雨に降られるとは思いませんでした・・」

聞けば男は彼女の跡を着いて来ていて、彼女が教会に入った所で自らも戻ろうとしたが突然の雨で戻れなくなりこっそりと教会に入ったとの事。雨が止めば気付かれないよう出て行こうとしていたらしい。

「そんなに前から私の事を・・嬉しいです・・」


二人は余韻に浸りながら唇を重ね合わせ、抱き締めあいながら快楽の終わりを告げる微睡みの中へと堕ちてゆく。






「おはようございます、あなた」

「お・・おはよう」

彼女の顔は昨日までの女性の顔ではなく、妻として女としての顔になっていた。体には昨晩の行為の痕跡が残っていたが、彼女はそれを軽く指で撫でると感謝の言葉を呟く。

「私が魔物娘で良かったです・・、おかげで貴方の熱も一晩で治まりました」

腹に手を置き昨晩の興奮を思い返しまたもや女陰を濡らすものの今日こそはと立ち上がりいつもの修道服に袖を通す。

「いけませんわ。昨晩の余韻に浸るのも堕落神様の教えですが、愛を知った今こそ教徒を増やさなければ」

「俺では・・ダメなのか」

「いいえ貴方は」

そこまで口に出してから彼女は微笑む。

「貴方は世界で一番大事な私の夫なんですから。それでは今日も頑張って信者を増やしてきますね」

教会の扉を開け、朝の清清しい空気を胸一杯に吸い込んだ彼女は小高い丘を下りてゆく。後ろを振り返れば愛する夫が扉の前に立ち両手を振ってエールを送っていた。そして道すがら彼女は天に向かって叫ぶ。



「今日こそは信者を獲得して堕落の教えをもっともっと布教させてみせますわ!!」




16/03/30 00:33更新 / ぷいぷい

■作者メッセージ
ぼー、としてる毎日。日々、妄想だけは捗るが手が全く動こうとしませぬ。次はもっと早く投稿出来るといいなあ

イラストはアキタカ氏より使用許可を頂きました。ありがとうございます

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