連載小説
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覗き穴再び
 
〜塞がれますよ?〜

昨日は快晴、今日も快晴、きっと明日も快晴。だけど私の心は暴風波浪警報発令中。いいの、私は薄幸の女。ああ、なんて可哀想な私。もういっその事、悲劇のヒロインになりましょうか。同期が次々と結婚して妊娠する中、どうして私には恋人が居ないのかしら。

「魔王様・・・恨んじゃいますよ・・・」

恨む相手が違うのはわかってるけど言わずにはいられない・・・。やっぱり背が高いからでしょうか、それともやはり種族柄怖がられるのでしょうか。アオオニというだけで皆さんどこか一歩引いた感じですし。そりゃあ確かに社内の呑み会で酔っ払って大きな金棒をフルスイングして皆さんを驚かせた事とかありましたけど、でもそれだけじゃないようですし。どうしてなのでしょう・・。


はぁ〜・・・私よりお堅いと言われてました秘書課のアヌビスの方ですら御懐妊の噂が出てますのに。御懐妊・・・いい響き♪いつか私も味わってみたいものです。お相手が居てくだされば・・・。

「当分の間、我慢でしょうか・・皆さんが羨ましいです」

今晩も一人鍋でしょうか。たまには誰かと食べたいです。出来れば向かい合って・・・。はっ!?今何を考えていたのでしょうか!

「でも、・・・やっぱり誰かと一緒に食べたいですねぇ。一人は寂しいですから・・」

あ、あら?考え事をしてましたらもうこんな時間に・・、早くお風呂に行って帰りにスーパーに寄らないと食材が売り切れてしまいますね。どうせ一人分ですから買えますけど・・・。

「さ、悩んでないで早く金玉行きましょ」

ん、陽射しがきついですね。夕方とはいえまだ陽が高いわ、・・あ。



「にゃぁぁ〜〜〜〜ん♪今日の夕飯は何食べるニャ〜〜〜〜?」

「先にお前を食べてから考えるよ」

「食べてニャ〜♪食べてニャ〜♥」


・・・悔しいとか思いませんよ。今更見たところでもう慣れてますから私は・・・。はぁ・・・・。


「いらっしゃ〜い。あら、浮かない顔してるわね?」

「いつもの事ですよ」

「いつまでもクヨクヨしてると本当に婚期逃しちゃうわよ」

「いいんです、どうせ私は凶暴なアオオニなんですから・・・」

「はぁ・・・全く、しょうがない子ねぇ。そんな事言ってると後輩にも抜かされちゃうわよ?」

「・・・もう抜かされました」

「本当にもう・・」

女将さんが本気で呆れてるわ・・・。でもしょうがないじゃない。男の人のほとんどがサキュバスやネコマタのように明るくて付き合いやすい種族にすぐ目が行ってしまうんだから。それに比べて私は青肌で筋肉質な体で可愛げが無くて、仕事優先な性格だから誰も近づいてくれないし。あれ?これって誰かが似たような事言ってた気がする・・?誰だったかしら?まあいいわ、私には関係無いから。

「私も肌の色が皆と同じだったら・・・恋人作れたのかしら・・」

無い物強請りは辞めましょ、私は私。お風呂に浸かって嫌な事は忘れましょう、さぁ今日はどのお風呂に入ろうかしら。 


-カララララララララ……-


「あら、今日は少ないですね?」

それだけ独身が減ったという証拠なのですね。それなのに私はまだここに・・・。いいのです、私は暫く独り身で過ごす予定なのですから。早く体洗って買い物に行きましょ。きっと良い人に巡り会えると信じて金玉の湯で自慢の青肌を磨いてきましたが、無駄になってしまいましたか。こればかりは運命ですからしょうがないですよね。

「ふぅ〜・・・、このまま茹って体が赤くならないかしら」

何バカな事を考えたんでしょ。でも、アカオニ達の積極性は見習わないといけないかも、このままだと本当に私だけ売れ残り・・・。それだけは・・それだけは絶対にイヤ!!でも・・どうして誰も私に近づいてこないのかしら。私、そんなに怖いの?それとも他に何か原因でもあるのかしら?

「腑に落ちないわね・・・、そういえばどうして私だけ・・」

あの時も・・その前の時も何故か男性に避けられていたわ。もしかして私・・飢えてると思われてたのかしら?もしそう思われてたらちょっと悲しいかも。でも、このまま御局様だけにはなりたくないわ。

「はぁ〜・・どこかにいい人居ませんか〜」

外風呂行きましょ・・・。ふぅ、やっぱり五右衛門風呂は見てるだけで気持ちいいです。故郷のお風呂を思い出します。そうそう、壁際に竹の皮で作った壁がうちにもあって・・・あって・・。

「・・・・・?」

あら?これ何かしら?ここだけ色が違うみたいだけど?

-パキッ…-

「アッ・・・、何か剥がれたようですが・・何かしら、・・穴??」

穴・・ですか。こういうのって御都合主義の恋愛小説ですと向こう側が見えたりするんですよね。こんな風に少し腰を屈めて両手を竹壁に押し付けて興味本意で覗いたりすると都合良く・・・都合良く・・・!?

「み・・見えてる。本当に男湯が見え・・」


-カラララララ・・・・-

はっ!?誰か外風呂に来たようですね。一体どんな方が・・・い、いけません!このままだと犯罪です!昔は男性が女性の湯船を覗くと罰せられてたようですが今はその逆もあるのですから。・・で、でも少しだけなら・・・幸い此処には誰も居ませんし・・。


「ん〜〜〜っ・・・久しぶりに休み取れて銭湯来れたなあー」


え・・嘘、一課の鈴鳴さんがどうして此処に・・。そ、それに腰に巻いたタオルの一部分が少しだけ膨らんで凄くセクシーだわ・・・♪ああ、そのままモデル立ちで時が止まってくれたら。

「い、いけません。このままだと誰かが来て覗いていた事がばれて捕まってしまいます。早くこの場から離れないと・・離れて・・・はぁ・・ハァハァ・・」

鈴鳴さんいい体してますわ。普段はスーツ姿が似合っててか細いイメージを持ってましたが、その下にはこんなにも美しい肉体が・・・キャッ!?


「・・・ん?何の音だ?」


どどどどうしましょう!鈴鳴さんがこっちに!このままですと覗いていた事がばれてしまって・・・・そうだわ!こうやって体を壁にくっつけておけば何も見えないはず・・・あっ!


「穴・・・?こういう時って都合良く向こうが見えたりとかするんだよな。こんな風に覗いたら・・・うん?真っ暗か・・やっぱり都合良くないか。でも・・ちょっと奥深い穴だな?小指ぐらいなら通るか?」


えっ!?だ、ダメです!今その穴に指を通されたら・・・んんっ!


「なんか柔らかい物が詰まってるみたいだな?ちょっとだけ弾力があってそれでいて・・なんだ・・今少しだけ引っ込んだ?もしかして詰め物が抜け出るのか?」


ん〜〜〜っ!?そんなに何度も押し込まないでえええーー!んふうぅぅぅーー・・・。


「んー??本当にこれ何だろ?押したら引っ込むのにまた元に戻るって・・。でも、この感触すごくいいな。何度も突きたくなる柔らかさってこれの事かな?」


はふっ・・ひっ!お、お願いだから・・・もうやめ・・ヒッ!?そんなにぐりぐり弄らないでぇ・・。それ以上されたら立てなく・・・あぁ、膝に力が・・・。


「んー、やっぱり抜けないかー。そんなに上手くいくわけないと思ってたし・・でも良い感触だったなあ・・・」


はぁ・・はぁ・・やっと諦めてくれましたか・・・。これで離れてくれま・・・・


「もう一回だけあの感触を・・・とっ!」


「・・・・・・!!!(ふひいぃぃぃーーーー!!)」


「すっきりした」


あうう・・・先っちょがジンジン痺れて痛いです。でも、これでなんとか鈴鳴さんは離れてくれました。今の内に上がってしまいましょう。


痺れるほど痛かったけど・・・・凄く気持ち良かった♥


はぁ〜〜、最高の御風呂でした。あんなに激しく男の人に突かれるなんて初めて・・、でも鈴鳴さんは同じ一課の鴫野さんと仲が良いですし。少しだけ残念ですね。鈴鳴さん好みでしたが・・。

「あ、蒼絵さんじゃないですか?蒼絵さんも銭湯上がりですか?」

「・・・ッ!?な、鈴鳴さん・・」

「蒼絵さんも此処に来てたんですね。此処って安くて便利良くて最高ですよね」

「え・・ええ、そうね」

「ところで蒼絵さん。翔子見ませんでしたか?」

「え?いえ、見てませんが?」

翔子さん・・・ああ、鈴鳴さんと仲が良い鴫野さんの下の名前・・・。羨ましいです・・下の名前を呼ばれる関係って憧れてましたのに、いざ目の前で言われると軽い嫉妬しか出てきません。

「おかしいなぁ?先に出たのか・・・って、居た居た。しょうこー」

「・・・・」

目の前で呼び合ってるからって嫉妬なんてしませんよ。悔しくなんか・・・。やっぱり悔しい!

「もー・・遅いよー。あ、蒼絵さんこんばんはー」

「こんばんは・・・」

今から御二人は楽しい食事に出掛けるんですかねー。そして食事が終われば朝まで体と体で愛を語り合って・・・、これ以上ここに居ても御邪魔のようですし、買い物に行ってきますか。

「それでは、私は失礼させていただきま・・キャッ!?」

「危ない!」

気が散漫になってたせいか足元に置いてあった容器に気付かなかったなんて。でも、男の人に後ろから抱き締められて助けられるって気分いいです・・・ね??

「あ・・・蒼絵さん」

「あ、あの・・そこは」

鈴鳴さんの手が私の胸に。さきほどまで突かれていたせいか・・ほんの少しだけ膨らんで・・、まさかばれてませんよね?

「・・・・・んん?あれ?この感じってまさか・・」

「!?」

もしかしてばれてる・・・、このままでは覗いていた事も知れ渡ってしまうかも。

「お兄ちゃんサイッテー・・・、蒼絵さん彼女でも無いのにしつこく揉み過ぎ」

え?今なんて言いましたか?おにい・・・ちゃ・・ん?だって、彼女の名前は鴫野で・・。

「うっせー、俺より先に結婚したからって余裕こいた言い方するな」

先に結婚・・・ああ!鴫野って名字はもしかして!?

「あ、あのー、もしかして鴫野さんって・・」

「うん、旦那の名字だよー。元は鈴鳴〜。そこで蒼絵さんの胸掴んだまま離さない変態兄ちゃんの妹・・・って、いつまで蒼絵さんの胸触ってるのよ!いい加減に離れなさいよ!」

「ぁ・・ああ、ごめん」

離れてくれたのは嬉しい・・いえ、少しだけ寂しいのですけど、どうして御自身の手をずっと見詰め続けてるのかしら。

「穴の奥に詰まってたのと同じ・・感触だった・・・まさか!」

まさか・・あの時の感触を覚えて!?そそそそんな訳あるはず・・でも、覚えててくれたら凄く嬉しいかも。

「あの・・蒼絵さん」

「ひゃ!ひゃいっ!何ですか!?」

「間違ってたらすいませんが・・・もしかして外風呂の壁に開いてた穴に・・・」

ばれてる!?あの穴にすっぽりと私の乳首が嵌ってしまった事に気付いてる!?それを指で何度も突いて捏ね回したりとかしたのも・・。このままで不味いのです。ここは冷静に黙殺しなくては!出来れば二人っきりで・・。

「鈴鳴さん、ちょっとお話がありますのでこちらに・・」

「え、ちょっと?どうしたんですか蒼絵さん!?」



「おにいちゃーん・・・蒼絵さんとどこ行くのー?・・・・行っちゃった、まぁいいか。私も帰ろ」





「鈴鳴さん!!!」


「は、はいっ!?」

「お願いします!外風呂の穴の事は誰にも言わないで!なんでもしますから!」

「・・・何の事?外風呂の・・・・穴・・あっ!?やっぱり穴に詰まってたのは・・」

ああ、見られてます・・・。私の体をまじまじと見つめてます。

「そっかー、小指に何度も当ってたのはそれだったんだ。まさかあんな穴に詰まってるなんて誰も思わないよなあ」

もうそれ以上言わないで!アオオニなのに顔だけアカオニみたいに真っ赤になってしまいます。鈴鳴さん意地悪です。

「どうしよっかなー、何でもしますって言われたし。何してもいいのかなー?」

「うぅぅ・・・出来ればお手柔らかにお願い・・します」

ハッ!?私に何をしてもいいという事は・・これは私にとって好機!も、もしかしてあんな事やこんな事を要求されるのでしょうか・・、もしくはこのままどこかに連れていかれて・・・嗚呼、凄く楽しみです♥

「それじゃー・・・今日の事はお互い無かった事で」

「・・・ぇ?」

「いや、なんかさ・・女性の弱み握って関係を迫るとかクソ最低だろ?そんな事するぐらいならストレートに手を出したほうが早いしな」

あれあれ〜?なんだか予想とは逆方向に走ってますが?もしかしてこの雰囲気ですと帰っちゃう?帰っちゃいますの?って、こちらに背中向けて・・まさか、

「んじゃ、また明日なー」

しょ・・・しょんなぁ〜〜・・、ここまで期待させておいて帰っちゃうなんて酷い人です。そんな事・・世間が許しても私は許しません!

「待ってください!私だけ大事な所を突かれて何も無いなんて不公平です!」

「ふぇ?」

「だだだ・・・だから・・私も鈴鳴さんの大事な・・・」

「ん、・・まぁ尻を指で突付いたのは悪かったと思ってるけど・・大事な所??」

だから私の乳首を何度も・・・!・・・お尻!?」

「乳首!?」

え、やだ・・これってお互い勘違いして・・・。いやあああああ・・・穴があったら入りたいいいーーー!

「あーまぁ、そのー・・なんだ。ごめん・・・」

「うぅ〜・・悪いと思ったなら責任取ってくださいよ〜・・」

え?いきなり肘を突き出して何ですか?これって腕を絡ませろって事でいいんですか?ふふっ・・真っ赤な顔して我慢しちゃって。

「しょうがないですからこれで我慢してあげます。後は出来れば〜・・このまま夕食なんかも一緒だと嬉しいんですけどね〜」

もう・・そっぽ向いて誤魔化して。でも、腕を絡めたのは失敗でしたね。これでも私は鬼なんですから嫌だと言っても引き摺って行きますからね♪





            『今日のところはこれで許してあげます♥』



15/08/30 21:47更新 / ぷいぷい
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■作者メッセージ
生きてます。たぶん生きてます

今回のテーマ『アオオニ』『覗き穴』『勘違い♪』でした。

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