連載小説
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貴方が希望するおかずは?
 
今日もいつもの場所で戦争が起きる。戦争と言っても別に殺し合いをするわけでもない。だが、ある意味では戦争とも言える場所。そう・・そこは


「いらっしゃいませ〜♪」


魔物娘達が織り成す男の夢とも言える国。少々大袈裟かも知れないが、独身男性にとっては天国に最も近い店とも言われている。そう、その店とは



食堂である!!



今説明を聞いて、『ただの食堂かよ』と思ったそこのキミ。甘い、甘いぞ。リリラウネちゃんの股間から漏れた蜜で食うメロンよりも甘い考えだ。ここの食堂では真っ先に稲荷さんから御飯もしくはダークプリーストさんからパンを頂く形となっている。其処から先は各自が自由におかずを選んでいく仕組み、ようするにバイキング形式。だが、この店は一風変わっていて、魔物娘達が腕を奮って惣菜やデザートを直売しているのだ。これは始めから作られている出来合いではない。例えば、一番手前のブースを見てくれないか。あそこには火鼠さんが居るだろう。どうやら彼女の今日のお薦めメニューは肉まんのようだ。見なさい、あの出来たてホカホカの肉まんを。どうやら開店時間に合わせて今の今まで蒸していたんだろう。良い香りだ。離れている私達の元までひき肉の濃厚な香りが伝わってくるのがわかるだろう?ふむ、どうやらキミは肉まんを御所望らしい。さ、売り切れる前に早く行きなさい。


ここは男達の楽園。さぁ、御目当ての物が売りきれてしまう前に私も・・・・おや?どうやら見知った顔も居たようで・・・・さてさて、少しばかり覗いてみましょうか。








〜アキタカ氏の場合〜


後10分で昼飯だ。10分・・・10分・・・クッ、待ってる時ってどうしてこんなに時間が経つの遅いんだ。秒針止まってるんじゃないか?今日は前々から行ってみたかった店に行きたいってのに。出勤する時にいつも見かけるあの食堂。どうしても気になってしょうがなかったんだ。開店12:00〜売り切れまでの謳い文句が目に焼き付いてどうしても気になったんだ。まだか、まだ12時にならないのか。・・・・よっしゃ、12時になった!行く前に財布の中身を確認・・・よしOK。

「結構近かったはず・・・確かこの辺りに・・・・あった!」

って、なんぞこれは!?人、人、人・・・なんという行列。これ休憩時間じゃ絶対食えないあれだよね。ま、一応最後尾に居ましょう。運が良ければ食べれるかもしれないし。


「はぁ〜〜い、次のお客様〜・・・・どうぞ〜♪」


っと、わわわわ・・・一気に前に進んでいくぞ。今ので一体何人入ったんだ?え?まだ入るのか!?えええええええええっ!?嘘・・さっきまで最低でも50人待ちは確定だと思ってたのに・・もう3人待ちになった。皆どんなペースで食べてるんだ?


「は〜い、次のお客様〜・・どうぞ〜♪」


はやっ!?いくらなんでも早過ぎだ!まだ1分しか待ってないってのに・・。入ればわかるか。



「「いらっしゃいませ〜、パンと御飯・・・お好きなほうをどうぞ〜」」


おふ・・稲荷さんとダークプリーストさんが手招きしてる。そ、それじゃパンにしようかな。あれ?ちょっと待って。なんかおかしいよね?さっき50人近く入ったはずなのになんで誰も居な・・・い?まさか・・!

「・・・・・ッ!?」

やっぱり後ろに誰も居ねぇぇぇぇぇぇぇーーーー!!この店に俺一人しか居ねぇぇ!!一体どうなってんの!?ねぇ!誰か教えてプリーーズ!

「お客様〜、惣菜、デザートなどは奥のブースでお受け取りくださいね♪」

「お・・奥のブース??」

・・・?

「・・・えっ」

外で並んでた時に建物を見た感じでは、店の中は30畳ぐらいの広さだと思ってたのに・・なんで奥に自動ドアがあるの。ここに入れっていうの?

「どうぞ〜」

入るしか・・ないんだね。ちょっとだけ怖い。しょうがない・・イクしか!





「・・・・はわぁっ!?なにこれ!?すっげー広いんだけど!無駄に広いんですけど!しかもブースめっちゃあるんですけど!!」

ぐはぁっ!龍さんがミニコンロで海老を揚げてる!・・ん?ブースに何か書いてる・・『御飯の方、天むすはいかがでしょうか♥』・・・し、しまったぁぁぁーー!もし御飯を選んでいたら龍さんの天むすが食えたのに!龍さんが握ってくれる天むすを・・・。

「パンに牛乳はいかがですか〜。搾り立てのミルクは美味しいですよ〜♪」

「・・・・いただきます!」

パンにはやっぱり牛乳でしょ!ミルクでしょ!ホルスたんから貰うのが当然でしょ!

「ありがとうございました〜♥」

ああ、笑顔が眩しいナウ。とりあえずパンと牛乳持ってうろうろしてもしょうがないから手近なテーブルで先にこれだけ食おう。んぐ、・・パン美味い!バターもジャムも何も塗ってないのに美味い。んで、次に牛乳一気飲み。

「んぐ・・・んぐ・・・んぐ・・ぷはぁっ!美味い!!」

ふはぁ〜・・美味かった。でもまだちょっと足りない感じだなあ。他に何食おうかな。ど れ に し よ う か な 。

「イカスミパスタのプレート発見!クラーケンさんのブースか」

「あら、いらっしゃい。パスタが欲しいのね」

「イカスミパスタください」

「はい、どうぞ」

・・・茹でたパスタ・・だけ?肝心のイカスミが無いんですが。

「あのぉー・・・墨が入ってないのですが・・・」

「いいのよ〜、入ってないから食べれるのよ♪」

意味わからないぞ?なんで茹でただけのパスタで食えるんだ?って、俺のパスタにフォーク突き刺して何してんの?くるくる回して・・もしかして・・。

「はい、あーんして」

「あーん」

いや、あーんじゃないだろ・・・むぐぅ!?

「はいそのまま〜・・・んちゅ〜♥」

「・・・!?」

くぁwせdrftgyふじこlp!?

「ふむぐぐうぐ・・・ふむぅぅー!?」

「んー・・・・ぷはっ♪さ、召し上がれ♪」

んんんっ!?口の中で拡がるこの味は・・まさか!?

「口移しのイカスミはどうかしら?美味しい?」

「んむ・・んぐ・・・はぷ・・、凄く美味しい・・・・です」

「そぉ、良かったわ〜、それじゃ残りも食べさせてあげるわね♥」

ちょ、ちょっと待って・・周りの目が怖いんですが!んむぅぅぅぅぅーーーーーー!!

「んぢゅ・・・ん〜〜〜・・・・ぷはっ。駄目よ〜、今は私のパスタに集中してちょうだい、ね?」

「ふぁ・・・ふぁぃ・・・」

「いい子いい子♪」

ふむぅぅ〜〜〜〜・・・・!うんまいぞーー!もっと・・もっとくださいー!

「あら・・?もう全部食べちゃったのね・・・残念だわ」

はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・う、美味かった・・。今までに食ったパスタの中で最高だった・・。

「・・・ね、次は・・・・金曜日に・・・ね♥」

「それってもしかして・・」

「察しのいい子は好きよ♪次来る時は・・・大盛りを頼んでね、絶対よ?他の娘のとこに行っちゃダメよ?」

ひゃっふぅぅーーーー!絶対に金曜日に来るよ!忘れないよ!

「お姉さんとの や く そ く♥忘れちゃ嫌よ?」

絶対忘れません!忘れられません!ん??・・・・あああっ!もうこんな時間!早く会社に戻らないと。

「んふふふ♪いってらっしゃい、午後も頑張ってね♪」

やる気みなぎってきた。午後も頑張りまッス!っと、出口どこに・・あった。出口で会計するのか。・・・・あんな事して・・いくらになってんだろ・・・、お金足りる・・かな。


「180円になりま〜す♪」

やすっ!?こんなに安かったら毎日でも・・あ、次は金曜日って約束したんだ・・ここは我慢我慢。金曜になったら大盛り頼んで・・うひ。


          「金曜日が待ち遠しいな」












〜毛屋氏の場合〜


腹・・減ったー。今日の仕事無駄に時間延ばし過ぎだっつうの。おかげで12時過ぎてしまっただろ。ほら見ろよ、そこらじゅうの店がほとんど満員になったし。今から並んでも休憩時間の間に食えるわけない。めんどくさいけど、少しだけ歩いて穴場探すしかないな。無理だったらコンビニで済ませばいい。でもなるべくコンビニだけは避けたい。意外と金食うし好きなものが無かったりするし。余りもんとかポツンと棚に残ってたりするのって買う気無いし。どっかいいとこないかなー。ぶらぶらしても時間もったいねー・・・うぉぅ!?

「な・・何だ、あの行列は・・、店全体囲んでるし。あれ絶対食えないわ。並んでる人ご苦労さn・・・んん!?ちょ!?一回で40人ぐらい入っていったぞ!?待ち人数すっげー減った!!・・・・・・俺も並ぼう・・」

別に騙されたってわけじゃないからな!少しだけ期待してるだけだぞ!・・・はぁ、何分待ちかな・・・、ってもう動くんか。これならすぐに食えるな。おふ・・もう店の入り口が見える。ん?嘘だろ・・携帯見たら2分しか経ってない・・。マジかよ・・・。


「次のお客様〜、どうぞー」


おおおおおおぅぅぅ・・・、皆早過ぎ!

「「いらっしゃいませー、御飯とパン、お好きなほうをどうぞ〜♪」」

・・ぶひぃっ!?稲荷様が御櫃持って手招きしてくれてるぅぅーー!日本人なら米だろ、米!!これは行くしかないだろ!

「はい、若いのですから沢山食べて元気一杯に仕事頑張ってくださいね♪」

「は・・はい!!」

稲荷様の大盛りごはんゲットだぜ!!これだけでも元気100倍だ!

「では、あちらの部屋でおかずを選んでくださいね」

「あちら?お?あー、なるほど・・・・バイキングみたいになってるのか」

ちょっと名残惜しいけどおかず選びに行くか。・・・そういや今気付いたけど、なんで俺一人しか居ないんだ・・。もしかしてこれって、魔法かなんかで分けられてるのか?ま、いっか。早くおかず選ぼう。


「・・・凄く・・・・・・天国です」


なにこのパラダイス。入って早々にドラゴンが得意のブレスで鮪の兜焼き作ってるんだが・・。芳ばしい匂いが漂ってきて涎が出てくる。うわ・・ドヤ顔してるよ。う〜ん・・兜焼きか・・・、確かに旨そうなんだけど食ってる時間がなぁ・・。もう少し早く来てたら食ってたかも。

「出来れば手短に食えてそこそこ満足出来るのって無いかな」

なかなか無いな・・お、あそこのサラマンダーがトンカツ揚げてるじゃないか。美味そうだ・・・でも

「隣のブースがオークさんってのが地味に堪える」

まぁお互いあんまり意識してないみたいだから平気なんだろうけど。んじゃ、次。んー・・・ないなぁ。時間も無いし御飯持ってうろうろすんのも馬鹿みたいだし、そろそろ決めないと。

「ん、あそこのワームは何してんだ?ブースに何も置いてないけど・・?ちょっとだけ覗いてみるか」

「いらっしゃー、おかず?おかず?あるよー」

ブースに何も置いてないんだけどなー。っていうか何売ってんだ?

「さかなー、食べるのー?」

「・・・どこに魚があるんだ?まさか他のブースから取ってくるんじゃないんだろうな?」

「ここー!ここー!ここにあるのー!」

あ、足元にクーラーボックス。こんな事言うのも失礼だけど、体大きいから見えなかったんだよ・・。

「んで、何作ってくれるの?」

「すしー!おすしつくるのー!」

「・・・はぁ?すしって・・あの寿司の事か?」

「つくるのー。すしつくるのー」

いや無理だろ、あのでかい手でどうやって寿司作る気?それになんだか不器用そうだし・・。

「ん〜〜〜〜・・これー!これでつくるー」

「おおっ!?鯛か!って、まさかの鯛の握り!?」

「ごはんちょーだい」

一応渡してみるか。なんだか自身満々みたいだし大丈夫だと思う・・思いたいんだが。

「あのー・・・それは何してんのかなー・・?」

「にぎりー。にぎってるのー」

「・・・・」

茶碗大盛りの御飯で握り・・すげえでっかいんだけど。そんなん食えるわけないだろ。なんで期待したんだ俺。

「つぎこれー、これ切るー。こうやってー・・・こうするー」

「ぬあああああああっ!??爪で器用に鱗剥いで・・三枚に下ろして・・・そういやワームの爪って鋼鉄も簡単に引き裂くんだったな。すげぇ・・すげぇな・・、おおお・・爪を軽く横にスライドさせるだけで身が・・」

「うんしょ・・うんしょ・・・ごはんにのせてー・・・切るー」

なんて斬新な作り方なんだ・・、あのでっかい握りに鯛の半身乗せて爪で一口サイズに切って・・・。ワームさんは不器用と思ってた奴は誰だ!俺だ!さっきまでの俺を殴りたい。

「できたー!たべるー?たべるー?」

「ありがたくいただきます」

「じゃーここ乗るー」

え?なんで俺を摘み上げるの?俺をブースの上で仰向けにしてどうすんの!?なになに!?なんで覆い被さるの!おっぱいが顔面に当ってるんですけどーー!

「おすしできたー♥」

「ふむ・・・むぐぅ・・・・もひかひて・・ぷはっ・・これって人間寿司・・・」

「おすしー、いっしょー♪たべよー・・・・はむ、んー♥」

口移しで食べろというのか!?そんな恥ずかしい食べ方・・・・



するに決まってるじゃないか!!よろしくおながいしまッス!!


「ん〜〜〜♥」

「あー・・・ん、むぐ・・うまぁっ!!鯛の握りうまぁっ!!」

「つぎー。あー・・・んむ・・」

「あ〜〜ん・・・もぐ・・・う・・うめぇ」

人間寿司になりながら食べる握りは旨い!!しかもこのワームさんすっげー巨乳だから更に美味い。何が美味いかは俺だけの秘密だ。一粒で二度美味しいってのはこの事だな。んむ・・・うんまいうんまい・・。

「さいごー」

もう最後の1個か・・、う〜ん・・これで終わるのもなんだかなー。そうだ!

「ふぁい・・・んー♪」

「てやっ!」

最後の1個はワームさんの口に押し込む!

「うむぅっ!?・・・んぐ!?」

「ほら、御飯粒が唇の端に付いてるぞ・・・ん、ぺろ・・」

「んひゅぅっ!?」

これは・・キスにはならんよな?唇の端を舐めただけだしノーカンだよな。ぐっ!?うぐぅぅぅーーー!いきなり抱き締めるなあああああ!傍から見ればこれじゃ本当に俺がシャリでワームさんがネタじゃないか!ギブギブゥ!ぐるじぃ・・・。

「なめた!口なめた!だいすきっ♪」

「だ・・だだ・・だいすきでもなんでもいいから・・・離して・・」

「やだー!」

「あばばばばばばば・・・・肋骨がおっぱいに潰されて・・・軋む・・」

「・・・ぁぅ!イタイ?イタカッタ・・?ごめんなさい・・」

は・・・はふ・・、やっと解放してくれた・・か、強烈なおっぱいハグだった。おっぱいで肋骨が軋んだのって生まれて初めてだわ。でも、・・乳首の感触が・・・うへ。

「あー・・大丈夫大丈夫、痛くないから泣かない泣かない」

「ほんと?」

「ほんとほんと!それと・・・鯛の握り美味かったぞ・・」

こういう時は頭なでなでしておこう。これでなんとか大人しくなってくれるはず。

「エヘヘヘ〜♥」

なんだか大型犬の頭撫でてるみたいな気分。・・・とかなんとか思ってる場合じゃねぇ!もうすぐ休憩終わっちまう。

「もう時間無いから戻るわ」

「・・・ひようびにまた来てー」

「・・・ひようび?ひ・・ひ・・?火曜日の事か?」

「うん!かようびー!」

「おう、わかった!また来るからなー」

急いで会計しなきゃ時間やばいぞ。レジはあそこか。



「190円になりま〜す♪」

「・・・・はい」

本当に190円でいいのか・・。魔物娘が経営する店って本当にどこから食材を調達してるのやら・・。ま、安いし満足出来るからいいか。


          「次は約束通り火曜日に来るか」











〜鍔広帽氏の場合〜


ぐー・・・きゅるるるぅ〜〜

なんで今日に限って朝飯食えないかなー。寝坊した自分が悪いだけなんだけど。それでもせめて珈琲か紅茶でもいいから胃に入れたかったなー。もう腹の虫が限界なんです。何でもいいので食べ物ください。この際カロリーメイトでも何でもいいです。胃が膨れたらオッケーです。

「うひぃ〜・・・もう無理〜」

ぁ・・・お茶みっけ・・。これでも飲んで気を紛らわせておこう。一服一福・・・うん、無理でした。余計に腹減っただけです。胃のタプタプ感以外に何も満足しない。でも別にいいよ、昨日給料入ったから昼飯は豪勢に一品多く注文させてもらうから、キリッ!馬鹿な事したら余計に腹減ってきた。あー腹へったー。飯ー飯ー、飯よこせー。いいんですよー、もー。このまま餓死してやるんだからー。


-リリリリリリィィィィーン-

「おりょ!?もう12時だったの?・・・・飯!

めっし飯〜、今日も楽しくコンビニ弁当〜。コンビニ・・弁当。あれー?目からしょっぱい水が出てきましたよー。これってなんですかねー?ぅぅぅ・・コンビニいこ。

「今日もコンビニでツナマヨおにぎり買うかー・・ん、なんだか炊きたての米の匂いが・・・あそこか」

ぶふぅっ!?どんだけ並んでんだよ!あんなの絶対入れないだろ。・・・でも、いい匂いしてるなー。もし食べれたら・・食べれたら・・・

「はっ!?なんでいつのまにか並んでるの!?ああああ・・・後ろに20人以上並んじゃったよ・・・。今更抜ける訳には・・・無理だよなぁ」

しょうがない、10分経っても動かなかったら諦めて抜けよう。んで、いつも通りにコンビニ弁当食って


「次のお客様〜、どうぞ〜」


「おおっととと・・・結構入っていくな。お?お?まだ入るのか?」

「は〜い、ここまでですー」

おお、ラッキー♪ぎりぎりで滑りこんだよ。って、誰も居ない・・。さっきまでの客はどこいった?・・・まぁ、いいか。

「お客様〜、こちらでお好きな方をどうぞー」

んなっ!?稲荷さんとダークプリーストさんが・・、さっきのいい匂いは稲荷さんの炊きたて米だったのか。うーむ、米・・だな。

「はい♪一杯食べてくださいね」

ダメだ・・、割烹着姿の稲荷さんに山盛りお茶碗手渡されるだけで顔がにやける。堪えろ堪えろ。

「あらあら・・凄い汗ですね?外は暑かったでしょう?はい、冷たいおしぼりどうぞ♪」

も、もうダメっすーーっ!これ以上ここに居たら憤死する!

「奥の部屋でおかずを御自由に御取りくださいね」

すぐにここを離れないとマジ憤死しちゃうの♪じゃない、早く奥の部屋に入ろう。



「・・・・はぁ〜・・、これってどう表現すればいいのかねー?」

右を見ても左を見てもブースだらけ。しかもすぐ傍でシー・ビショップさんがこっちをチラチラ見ながらせっせと雲丹を剥いてる。『美味しい雲丹丼食べてみませんか?』って上目使いでチラ見しないで!空腹だから簡単に堕ちちゃう人なんですよ!雲丹丼・・・雲丹丼・・・。ああああああああ・・・・強烈に凄い誘惑だぁぁぁーー。でもここは我慢して他のブースも見て・・、嗚呼シー・ビショップさんそんな悲しい顔しないで。罪悪感が半端ないっす!はぁ・・、米に合うおかずブースに近づくだけで心が揺らぐよ。これだと何を選んで良いのか。

「ぁ、おにぎりブースがあるのか。もしかして握ってくれるんかな?」

そういやツナマヨ食いたかったから少しだけ覗くか。

やばい・・凄く公開じゃない後悔した。そうだよな、おにぎりだもんなー。和食だもんねー。大百足さんにゆきおんなさん、ぬれおなごさん、提灯おばけちゃんと綺麗に攻めてくるなー。これ完全に堕ちてくださいって言ってるようなもんじゃん。うーん・・全てが魅力的すぎてどれを食べればいいのやら。

「お、お兄ちゃん・・おにぎり食べませんか?」

「!?」

な、何故ここに幼女が!?しかも手に持ってるボウルの中身はツナ!誰だ!こんな姑息(最高)で卑怯(天国)で禍々しい(ありがとうございます神様)罠を仕掛けた奴は!俺が直々にぶったおしてやる(これから毎日天に祈ります!ありがとうッス!!)って、ファミリアちゃんだったか。ファミリアちゃんのツナか・・・・、


「よし、食べよう!」

「お兄ちゃんありがとうー♥」

「ハッハッハ、俺は良い子の味方だからね」

「それじゃおにぎり作るから御飯ちょーだい♪」

いいなぁ、ちっちゃな子が頑張っておにぎり作るの見てるだけで荒んだ心が和むわ〜。どうよ、この姿。頑張ってお団子作ってるファミリアちゃんの雄姿。素晴らしいじゃ・・ない・・、お団子・・???

「お兄ちゃん出来たよ!!見て見て!すっごく美味しそうでしょ♥」

「あー・・うん、凄く美味しそうだね、えらいえらい」

・・・ボール状になった米粒から哀愁が漂う。まぁ大丈夫だろう・・・・きちんとツナ入れてるの見たし。それじゃあ

「いっただっきまーす・・・あむ・・・・・んん?」

・・・確かにツナはあった。だが、それを遥かに凌駕する甘い何かが。これ何の味だ?

「お兄ちゃん美味しい?美味しい?頑張ってお水ペタペタしたよ?」

「・・・水?あー・・薄い塩水か」

ん?塩水でこんなに甘くなるわけないよな?どちらかというとまろやかな感じになるはず。どれどれちょっと一舐め・・・・げぶぅ!?

「ね♪すっごく甘くて美味しいでしょ!これ大好きなんだ〜♥」

あ、・・あかん、これ絶対にあかんやつや。3日連続して食ったら間違い無く病院行くアレや。これは今の内に修正しないと後々にやばい事になる。この俺が!

「ぅ、うん・・凄く美味しいよね。でも・・お兄ちゃんがもっと美味しいおにぎり作ってあげるよ」

「ほんとっ!?」

「もちろん本当だから。だから・・ちょっとだけその水が入ってるボール借りてくね」

「うん!楽しみだなぁ〜♪」

急いでこの危険な水を捨てて入り口に居た稲荷さんに水と少しの塩を分けてもらおう!



「はーい、ただいま」

「お兄ちゃんおっそーい!」

「ごめんごめん、それじゃ美味しいおにぎり作ろうか」

手を塩水に浸して・・・まずは左手を軽くくの字にして、適量の米を乗せてっと・・・、もう片方の手も同じようにくの字にして・・軽く押さえる。よっし、ほどよい硬さになったらツナを混ぜる。そして米を上乗せ上乗せ〜♪角度を付けて転がすように手の中でクルクルっと。

「はい、三角おにぎり出来上がり〜。どうぞ召し上がれ」

「うわぁ〜〜・・・お兄ちゃん上手ー。・・・むぐむぐ・・・!?すっごく美味しいの!」

ふふん、伊達に一人暮らしじゃないさ。最低限の事は出来て当然なのさ!

「お兄ちゃんどうして泣いてるのー?」

「泣いてなんか無いよ?気のせいだよ?」

おっと、いけない。こんな幼い子の前で涙は禁物。しっかりとお兄さんをしなくては。

「ねーねー、お兄ちゃん。お兄ちゃんが使ったお水ちょうだい♪」

「いやこれは・・・」

「・・・いっただきー♪・・・・うぇぇぇ、なにこれ〜・・・・・しょっぱぁ〜〜い・・・」

あ〜ぁ・・中身は塩水なのにボールに直接口付けて飲もうとするなんて・・。

「あぅぅぅ〜〜・・・お兄ちゃんが意地悪するー・・」

「これはね、魔法の水だからそのまんまで舐めちゃうと美味しくないんだよ?」

「・・・魔法のお水?」

「試しに同じようにおにぎり作ってごらん?」

「うん・・・・うんしょ・・うんしょ・・・・できたー!」

「それじゃ食べてみて。きっと美味しいはずだから」

「ぅ、うん・・いただきまーす・・、はぅっ!・・・美味しい♪」

うんうん、やっぱり子供は笑顔が一番。そんじゃ自分のおにぎりも作るか。ぺったんぺったんく〜るくる、と。ほい、出来あがり・・・うん美味い!・・・んぅ?なんで俺がおにぎり作ってるんだ?まぁいいか、すぐ目の前に幼女の笑顔があれば・・・・フヒッ。んじゃ、米が無くなるまでおにぎり作りまくるぞ。


「・・・山盛りとはいえ・・お茶碗一杯では5個が限界だったか」

「ねーねーお兄ちゃん。もっとたべたーい」

「あー・・・ごめんねー。もうお米無いんだよー」

明らかに立場逆転してるけどこの際どうでもいい。幼女の笑顔が見れたんだから俺は大満足!とりあえず2個食ったからなんとか夕方まで・・無理かなぁ。って・・おっ?

「・・・けぷっ!」

なんで急に腹が膨れたんだ!?2個しか食ってないはずなのに?よくわからんけど今はさっさと戻ろう。もうすぐ休憩時間も終わるだろうし。

「じゃ、お兄ちゃんは帰るからなー」

「・・・帰っちゃうの・・?」

ああ、やめて!そんな純粋な眼差しをこっちに向けないで!お兄さん困っちゃうお!

「そ、それじゃあ明日も来るから・・ね?」

「・・・・明日居ないもん・・・。明日は・・魔女ちゃんの日だもん・・」

・・・んー?当番制度みたいなのがあるんかな?それじゃー・・

「それならファミリアちゃんが居る時に食いに来るよ。それでいいかな?」

「・・・・・・うん!私いつも金曜日に居るから!絶対待ってるから♪」

金曜日か・・脳内にインプット完了!今日から金曜日はファミリアちゃんの日と制定した!何?そんな日は無い?今俺が決めたんだ!文句は認める!

「それじゃ金曜日にまた来るから・・・いい子にして待ってるんだぞ?」

「わかったー。次は私が美味しいおにぎり作るからね♥」

次来る時はファミリアちゃんの手作りおにぎりが待ってるのか。フヒヒ・・・同志には悪いけどこればかりは俺だけの秘密にさせてもらおう。んじゃ会計済ませるか。



「110円でーす♪」

幼女と遊べて・・・新婚ごっこ気分も味わえて110円だと・・!?これは毎週来るしか無いじゃないか!


          「毎週金曜は朝飯抜きで出勤しよう」









   (続)
15/07/27 23:19更新 / ぷいぷい
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■作者メッセージ
身内SSです。ツイッターとチャットの遣り取りの中でなんとなく書きたくなったSSです。とりあえず・・・結構な文字数になりそうなので分割する事に決めました

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