りんご風呂
〜麗しき蝶は蜜に惹かれる〜
銭湯通いして、もう一月半。たまに噂で聞く『銭湯に行けば幸せになれる』という真偽は一体どこへ消えたのやら。既に諦め状態で噂に釣られて日課となってしまった金玉の湯へと足を運ぶ。きっと俺の幸運は限りなく0に近いんだろう。ハハハハ・・・、もう涙も出ねぇや。釣られちまった俺が馬鹿だよ。でも、女将さん美人だから良し。それに、これだけは断言出来る。あの女将さんと結婚出来るうらやまけしからん奴が居たら一発ぶん殴って祝ってやりたい。
「ふぅ、・・・な〜〜〜んで俺に幸せ来ないんだろうねー・・」
ま、なるようにしかならんか。今の所は女将さんの尻尾眺めてるだけで幸せ一杯胸一杯だし。なんてったって九尾だからな。滅多に見る事ないから嬉しさ倍増だ。
「今日も今日とて尻尾眺めて悦に浸るか」
そうと決まれば風呂の用意。黄金の稲穂が俺を呼んでいるんだ。さっさと道具集めていざ出発。
「今日はどの風呂に入ろうか。こないだは砂風呂入ったし、その前は電気風呂だし・・そうだな、今日は五右衛門風呂に浸かってみようかな。その後にサウナもいいな。最近ちょっとだけ贅肉付いてしまったから少しばかり搾っておこう」
搾ると考えるとすぐに乳搾りのイメージが出てくる。こないだおっぱいでっかいホルスさん見たからかな。でも、女将さんもでっかいけど。
「と、通り過ぎるとこだった。ちわーす」
「あら、いらっしゃ〜い。・・・あら?」
「ん、何です?」
な、何で急に熱い眼差しが・・こ、これはもしかして俺にも運が・・・。
「頬にチョコが付いてるわよ♪」
「・・・!?」
うあああっぁぁぁっぁぁぁぁっぁぁぁ!!!!すっげー恥ずかしい!!昼過ぎに食ったチョコが頬に付いてたなんて!!
「これからは慌てて食べちゃダメよ?折角のいい男なんだからね♥」
・・・・・
いい男いい男いい男いい男いい男いい男・・・・・・
もう俺いつ死んでもいい!!有頂天になってるってわかってても男として騙されたいんだ!
「もしも〜し?起きてる?」
「・・・・はぅっ!?お、起きてますよ!!」
あーやばかった・・、もうちょっとで本当に逝くとこだった。ちょっと深呼吸して・・・すー・・・はー・・・、良し大丈夫だ。たぶん。
「じゃ、200円置いときます」
「まいどあり〜♪ゆっくりしていってね」
お、脱衣所全体がいい匂いしてるぞ?誰か香水でも使ったか?いや違うな。これ林檎の匂いだ。林檎・・・もしかして今日って林檎風呂の日なのか!?今日はついてるじゃないか。
「今日はラッキーだなー。帰りにドリアードさんから林檎貰えるぞ」
あの人の林檎はすっげー美味いから好きなんだ。でも、残念ながら既婚者ってのが辛い。毎日美味い果物食える旦那が羨ましい。
「考えると寂しくなるから風呂入ろ・・・」
さて、・・・五右衛門風呂は今回無しで体洗ったら速攻で林檎風呂に決定!突撃ぃぃぃっ!!
-カララララララ・・・・-
「おぉ〜〜・・・いい匂いしてるなぁ」
おっと、匂いを堪能してる場合じゃない。さっさと体洗って林檎風呂に浸かるんだ。
「はふぅ〜・・・甘い匂い嗅いでると腹減ってくるなー」
早く洗わないと空腹感が半端無い。全力で御肌に磨きをかけてやる。
「っし!終わり!」
おっし、林檎風呂に入るぜ。うっはぁ〜〜〜・・・すげえ甘ったるい匂い。でも嫌いじゃない。どちらかと言えば好きだ。この僅かに酸味が感じられる匂い、鼻の奥にまで侵入してくる甘い香り。林檎の見た目、形、色、どれもが好きだ。あー、天国天国。
「最近汗臭かったから林檎風呂は助かる。結構な時間匂いが残るから汗の匂いあまり気にしなくていいし」
今日は長風呂しよう。しっかり体に匂いを付けないと女の子にモテナイからな。モテナイけどな。モテナイ・・けどな。
「いいんだよ・・・、噂頼りに一月半も通ってるのにモテナイんだから・・・」
あー、林檎の味がしょっぱいぞ。今日の林檎は青林檎かな。きっとそうだよ・・本当は青いんだよ。・・・上がってサウナ入ってこよう。
「あ あ あ あ あぁ〜・・・あつぅ・・」
なんで俺サウナに入ろうと思ったんだ。また汗臭くなるじゃないか。そう思ってる内に汗まみれになってきた。あんまり意味無い事をするもんじゃないな。さっさと出て水かぶってもう一回林檎風呂に浸かってこよ。
やっぱこれが落ち着く。初めからずっと林檎風呂に浸かってりゃ良かったんだ。変な事考えたから意味も無くサウナに入ってしまったんだ。
「匂いも堪能したし、そろそろ上がるか」
-カラララララララ・・・・・・-
「はー、さっぱりした・・」
早く体拭いてドリアード姉さんの林檎貰ってこよ。ドリアード姉さんの林檎すっごい美味いから気に入ってるんだよ。本当に旦那さんが凄く羨ましい。俺にはいつになったら幸せが来るんだか・・。
「滅入ってもしょうがない、美味い林檎齧ってテンション上げるか」
と、いう訳で・・・林檎くださいなー!
「はぁ〜〜い、お一つどうぞ〜♪」
「ありがとっす!!」
はぁーー・・・うめぇ!!今まで食ってきた林檎の中じゃ確実にNo,1だ。あ〜、うめぇ♪でも・・・
「根っこ引っこ抜いて移動してくるのって大変じゃないですか?」
「そこは旦那様の愛の力で〜♥」
やっぱ惚気かー。
「・・・・あら?・・・・・はい、もう1個どうぞ♪」
「は?・・ぁ、ありがとうございます・・?」
「う し ろ ♪」
後ろ?後ろに何があるん・・・あ。
「・・・・・・」
ぇ、誰あの子?なんで見知らぬエルフの子がこっち睨んでるんだ。俺、知らない内に何か悪い事でもした?全く心当たり無いんだけど。
「・・・・・」
「・・・・・」
なんで睨まれ続けられるんだ。すっごく居た堪れないんだけど。よくわからないがとりあえず謝ってみるか。
「あー・・えとー・・・俺何か知らない内に失礼な事してしまいましたか?」
「・・・・」
無言の圧力ですかい、やっぱエルフの子って気難しそうなのが多いんだな。
「・・・」
ん?視線が・・下に?もしかして林檎見てるのか?
「林檎・・食べるか?」
「初めから・・・そう言えばいいのだ・・」
今何か言ったか?小声で何か言ってたみたいだが。
「早く私に寄こせと言ってるのだ」
「あっ!?」
別にひったくらなくてもいいのに。エルフって本当に素直じゃないなー、ってそんなリスみたいな食べ方しなくても。
「なんだか可愛らしい小動物みたいだ・・」
「ッ!?」
おーおー、凄い勢いで顔が真っ赤。また睨まれたよ。本当に何がしたいんだよ。
「わ、わわ・・私に恥をかかせるとはいい度胸ではないか!」
別に恥かかせてない。
「いいい・・いい今なら・・お前の体から発している林檎の残り香を嗅がせてくれたら、ゆゆゆ許してやらんこともない!」
ナニソレ!?それって御褒美か!それとも独り身の俺に対する嫌がらせなのか!?
「・・・まぁ、別にいいけど」
とりあえず好きにさせておこう。
「よ、良し!う、動くなよ・・絶対にそこから動くんじゃないぞ!・・・スー・・・・ハァー・・・・・♪」
ウヒッ!首筋に吐息がっ!こういう焦らしプレイもいい・・じゃない!これじゃあ生殺しじゃないか。ん?ドリアードの姉さん根っこ振って何を・・
「ぇ〜ぃ」
「スー・・・ハァー・・・・キャッ!?」
「危ない!!」
はぁ〜、間一髪セーフ。上手く抱き止めれたな。おふ・・いい抱き心地。見た目通り華奢な体だけどおっぱいがなかなか・・・。って、やばっ!?めっちゃ震えてる!これマジ怒りだ!
「ききききき・・・貴様!人間の癖に私に触れるとは!今すぐせせせ・・責任を取れ!」
え、なにこれ?超展開でなんだかついてけないんだけど。
「私の体に触れていいのはみみみ未来の夫だけだ!だから今すぐ夫になれ!」
「・・え?俺が!?」
「・・・・・」
なんでそこで顔真っ赤にして無言で俯くんだよ。こっちも恥ずかしいんだからな。
「・・・わ・・私では・・・ダメなのか・・・」
ああ・・やめてくれ。顔真っ赤にして俯いたまま言わないでくれ・・。俺はそういうのに結構弱いんだよ。答え?もちろん決まってるだろ。
「俺で良ければ喜んで!!」
「!!」
あふ・・その喜び一色な顔やめて!萌えてしまうやろ。今すぐ抱き締めたくなるじゃないか。ぁ、抱き締めていいんだっけ。でも、そういやなんで・・
「なんで俺だったんだ?」
「・・・お前から、凄く甘い匂いがしたんだ・・。林檎の匂いと・・私だけの甘い匂いが・・」
「・・・・・・・」
おっと待ってくれよ鼻血さん。出るにはまだ早いぞ。血圧がボルケーノ状態だがもうちょい待ってくれ。おーけーおーけー耐えてくれたか。
「それでずっと俺を睨んで・・じゃない、見てたって訳か」
「済まない・・別に睨んでた・・・わけじゃなかったんだ・・」
何この小動物!?なんだかちっちゃくなってる気がするよ!可愛いよ!エルフってツンなイメージあったけど萌えだよ萌え!誰だよ、エルフはツンしか見せないって言ったやつは!
「そ・・それじゃ、一緒に帰ろうか」
「・・・ッ!?もも・・もちろんだろう!お前は私の夫なんだからな!」
あ、向こうでドリアード姉さんが手を振って・・・、これってもしかして・・
「・・・・・・・・・(御幸せに♪)」
「・・・・・・・・・(ありがとう!!)」
こうなるように仕組んだな。だから林檎渡してキッカケを作ってくれたのか。でも感謝感謝っす。
「ど、どこを向いているのだ!おおおお前は私の夫だぞ!見るのは私だけだ!」
「そうだな。これからは、いや・・一生お前だけを」
「・・・♥」
モジモジしながら手を繋いでくるのは卑怯だぞ。反則だぞ。大抵の男はそれされると弱いんだぞ。だけど・・・・
『噂信じ続けて良かったなぁ・・・』
15/06/21 23:21更新 / ぷいぷい
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