連載小説
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流水風呂
 
〜お風呂は裸で入りましょう〜

今日もお気に入りの流水風呂に入らなきゃ体が鈍っちゃうわ。でも、その前にこれをなんとかしなきゃね。・・・、うん、これで良し・・・かな?変化させないと私のきぐるみ・・じゃなくて!!毛皮よ毛皮!毛皮じゃ上手く歩けないからね。こないだなんて誤魔化すの忘れて毛皮のままピョンピョン跳ねてたら近所のネコに尻尾咬まれそうになったし。毛皮に穴が開いたらどうするのよ。

「うん、大丈夫ね。毛皮がジーンズっぽくなったし。それじゃ行ってこよ」

此処に来る前は寒い北海の海に居たから定期的に泳がないとお腹が・・。な、何よ。何か文句あるの?しょうがないじゃない!こっちは平和だし食べ物美味しいし!最高の環境だし!でも・・・毛皮が売ってないのよね。それだけが不便なのよ。何かあったらまた狸さんに売って貰わなきゃ。・・・そういえば狸さんはどこから毛皮を調達してるのかしら?凄く謎ね。ま、今はそんな事どうでもいいわ。

「早く行かないとまたチビッコ達に占領されちゃうわ」

あ、・・あら?やっぱり人の足で歩くのって面倒ね。ジーンズに変えた毛皮脱げばいい話なんだけど脱いじゃうと・・その、なんていうか寒いし。

「あー、面倒くさいわね」

少し遅れちゃうけど、しょうがないわね。と、言ってもすぐ近所だから5分もあれば着いちゃうのよ。

「いらっしゃーい♪・・・脱いでから入浴してね♪」

「わかってるわよ」

なーんてね、私が脱ぐわけないじゃないの。そんな事したら寒くて寒くて凍え死んじゃうわ。さーてと、中に入っちゃえばこっちのもんよ。毛皮を元に戻して。うん、やっぱりいつものアザラシ毛皮じゃないと落ち着かないわ。それじゃあ流水風呂にレッツゴー♪

-カラララララ・・・・-


「あ〜〜・・・・・・、この流れのある水風呂って最高だわ〜♥」

人間って本当に面白い物を作るのね。どうして水風呂を流れるプールみたいに改造しちゃうのかしら?でも、・・・私も嬉しいんだけど♪あー、これこれ♪体伸ばしたら体全体に水の流れが伝わってきて。

「ふわぁ〜〜・・・いいわぁこれ。うちにも欲しいわー♥・・・パパに頼んで買ってもらおうかしら。ママもきっと喜ぶだろうし」

べ、別に私が欲しくて欲しくてしょうがないからってママをダシにした訳じゃないんだから。・・・でも、やっぱり欲しいなぁ♥

「それじゃ次は、・・サウナ・・・は却下。あんなとこに入ったら干乾びちゃうわ」

サウナなんかに入ったら・・ほら・・その・・、毛皮の中が蒸れちゃって・・色々と大変な事に・・・ねぇ。ここはやっぱり露天風呂でゆっくりと。


「ん〜〜〜♥やっぱり外で入る御風呂は気持ちいいわね〜」

ふんふ〜ん♪湯船の中で尻尾振り回すの楽しい♪

-カラララ・・・-

「あれ?誰も居ないと思ったのに先客が居たみたい」

「えっ?え、えーーと・・、河童の・・キュウリさん!」

「あんた、私が持ってる胡瓜見て適当に答えたでしょ!桐生よ!桐生 観月よ」

「銭湯に胡瓜持ちこむアンタが悪いんでしょ」

「水風呂で冷やしながら食べると美味しいの」

なんて事してんのよ!私のお気に入りの流水風呂で胡瓜冷やさないでよね!そういうのは家に帰ってから冷して食べなさいよ。って、何してんのよ・・・。

「おすそわけ・・・」

「い、要らないわよ!ちょ!?毛皮の中に無理矢理胡瓜入れないでよ!!」

「美味しいから」

「美味しくても不味くてもどうでもいいから毛皮の中に入れるのだけは勘弁してよー!」

「残念・・・、おもちゃとしても使えるのに・・」

胡瓜をオモチャって何考えてるのよ。そんな事は家に帰って自分の部屋でして欲しいわ!私は別に胡瓜なんて・・胡瓜・・・イボ付き・・。

「・・・顔赤いけど大丈夫?」

「な、なんでも無いわよ!」

これ以上ここに居たら胡瓜で変な事を想像しちゃうから早く出よう。べ、別に欲しいなんてこれっぽっちも思ってないんだから!今のはフリよ、フリ。興味ありそうに見せただけなのよ。


はぁ〜・・・、初めから流水風呂でのんびりしてれば良かったかもー。って、そこの火鼠!寒いなら早く出なさいよ!毛が真っ白になるまで我慢しなくてもいいでしょ!それに、そこのクノイチ!褌穿いたまま入るんじゃないわよ!何?これでも修行ですって?褌穿いたまま水風呂に入って何を修行しようってのよ!?私も脱げって?私はいいのよ!!


「あ〜〜・・・やっと騒がしいのが出てくれたわー・・・。でも、すっごい疲れた気分」

これでやっと落ち着いて水風呂を堪能出来るわ。ああ〜〜♥こうやって体伸ばして〜♥

「・・・ん〜?なんだか体が重いわね?一体何かしら??」

・・・・ああっ!妙に重いと思ったら毛皮の中に水が入り込んでるじゃないの!や、やだ!下半身おデブちゃんみたいにぶくぶく膨らんじゃってる!早く水を抜かないと!!

「んんんんんっ!!!・・・・チャ・・チャックが下りない。毛皮が膨らみすぎて・・チャックが動かない・・・」

ど、どうしよう!?そ、そうだわ!あの狐の番台に・・・、ってダメだわ!毛皮は脱ぎなさいって言われた手前、どうやって顔出せってのよ!で、でも・・さっきから水が少しずつ毛皮の中に入ってきて・・・。それにチャックが下りないし・・どんどん毛皮が膨らんでいくし・・。



「あああーーーっ!もうっ!頼むしか方法が無いじゃないのよーー!」





-番台前-


「あはははははははははははっ!!け、毛皮が水風船みたいに膨らんでるじゃないの!あははははは・・・・ひっ!・・ひぃ・・・笑いすぎて・・息が・・・」

クッ・・・、笑われるのは覚悟してたけど、ここまで言われるなんて・・・悔しい!!

「・・・ヒッ・・ひぃ・・・ふぅ・・・・、はぁ〜・・久しぶりに大笑いしたわ。しかし、まぁ・・・よくもここまで膨らんだものよね〜・・?ま、大方・・頼み込むのを堪えて我慢してたらこんなにまで膨らんじゃって自分じゃどうしようも無くなったって感じね」

当ってるだけに言い返せないわ・・・。

「・・・もう散々笑ったんだから・・早くなんとかしてよ・・」

「はいはい・・、これに懲りて毛皮穿いたまま入浴しちゃダメよ?」

「・・わかったわよ・・」

「・・・って、あら?チャ・・チャックが凄く固いわ・・。びくともしないわね・・」

「たぶん・・・水で膨張しちゃって動かなくなったんだと思う・・」

「ふ〜〜ん・・?なるほどねぇ・・、それじゃ妖力で外してあげるわ。・・・んんっ!!」

「ま、待って!!今ここで外されたら・・・キャアアアアアアア!!」

水でパンパンに膨張してたから私まで毛皮から一気に押し出されて・・・。

「あ、あ、あ、あ、あ、・・・・さ・・・寒い・・・寒いわ・・」

「あ・・・あら?」

さ・・さささ・・・寒いわ・・私の毛皮・・・どこに・・。あああああ・・毛皮のチャックが・・壊れて・・・、こここっここ・・・これじゃ・・・穿けないじゃないの・・・ううっ・・。

「大丈夫なの!?すっごい震えてるわよ!?」

「だ・・だめ・・、この寒さだけは・・耐えれない・・」

ど、どうしたら・・・。

「ちょりーす、・・・あんたら何やってんの??」

ああ、・・・あ、あ、・・・男・・男の体温が・・・欲しい。

「・・んぁー?あんた確かお隣さんの・・えっと、テーナさんだっけ?」

「ティティティティ・・・・ティーナよっよよよよ・・。おおおおおおお覚えてなさいよよよ・・!」

「あー・・そうだったそうだった。んで、なんで下半身裸で番台前に居んの?」

「ぁ〜・・それがねぇ〜」




「・・・ふんふん、なるほどね〜」

なるほどじゃないわよ!こっちはもう凍え死ぬ一歩手前なのよ!下半身タオル一枚じゃ寒いのよ!早く温めなさいよ!この際あんたでもいいから!

「どうすっかなぁ・・・、俺そんなに好かれてる訳じゃないから気軽に抱き締めるなんて出来ないしなあ・・。ティーナさんだって、好きでもないやつに嫌々温められたくないだろ?」

え・・・?待って・・お願いだから離れないで!ここで見捨てられたら私・・本当に凍え死んじゃうわ・・・。

「・・な〜んてな。いくらなんでも困ってる女見捨てるほど性格悪くねぇよ」

「ぁ・・・」

・・・ぁ、温かい。パパに抱き締められた時よりあったかい♥

「・・・んじゃま、うちのお隣さんだし送ってきますわ」

「お手数かけるわねー」

あ、・・ありがとう・・、って言いたいけど寒さで上手く口に出せない。



「・・・・ぁ、俺・・銭湯に入るんだった。ま、送った後でもいいや」

い、いや・・行かないで、・・・離れちゃイヤ・・。

「うちで・・・」

「何か言った?」

「私んちのお風呂に入っていけばいいのよ・・」

「・・・?声が小さくて聞こえなかったんだが?」

聞こえなくていいのよ!あんたは私をずっと温めてくれればいいの!










             『はぁ…、あったかぁい♥』

15/01/22 22:03更新 / ぷいぷい
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■作者メッセージ
名無し様からのリクエスト『セルキー』『水風呂』『ロッカーの鍵が壊れる』でした・・・が!!ロッカーの鍵をセルキーさんのチャックに突如変更!!なんだか面白そうな予感がしたから!(根拠無い自信)

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