湯上がり美・・・少女?
〜一陣の風〜
今日も気温は35℃超え。連日の猛暑で体がだるくなってきてるのがわかる。まだ夏の中盤だというのにこのままだと最後まで体が持たないかもしれない。たまには思いっきり大雨でも降ってくれないかな。自然相手に願ってもしょうがないんだけど。それでもやはり多少は涼しくなって欲しい。
「あ・・・つ・・い・・。雨・・降ってくれんかなぁ・・・」
ごろごろと床を転がりながら冷たい部分を探す。冷えた床の上で寝る事数分。自らの体温で温くなった床から逃げるようにゴロゴロ転がり、またもや冷たい床部分を探す。
「あぁ〜〜、駄目だ・・。西日が射して床一面が熱くなってきてる・・」
只今の時刻は17:50。見事に西日が部屋に射し込んできて、フローリングの床が鉄板みたいに感じてしまうこの時間帯。ここでクーラーを点けて一気に部屋を冷やしたいが電気代が馬鹿にならないので却下。暑いからと言ってクーラー点けっぱなしにしてると電気代が●万円になってしまう。先月それを嫌というほど身を持って味わってしまった。おかげで今月はどこにも遊びに行けないよ・・・。
「あづい〜〜・・・、窓に簾を掛けておくかー・・」
これだけでも充分効果があるのはわかってる。だけどやはり気温だけは変わらないので・・。
「あー・・・、あっ!?そうだ、金玉で水風呂に浸かってこよう!あそこ近いし安いしお客さん何故か美人多いし」
そうと決まれば早速準備だ。財布良し、バスタオル良し、石鹸良し、シャンプー良し、ガシガシ君良し、後は何が要るかな。・・・着替え忘れるとこだった。肝心な物を忘れてどうすんだ俺。よし、行こう。
「本当に金玉は助かるよなー、・・・経済的に。今時二百円で入れる銭湯ってなかなか見つからないぞ」
今の懐事情を考えると本当に助かる。たかが二百円、されど二百円。この安い値段設定のおかげで涼む事が出来るんだから、金玉様様です。
「ちわー」
「いらっしゃーい」
番台に二百円を置き、脱衣所に入る。天井に設置された大きな扇風機が脱衣所全てを冷やそうとくるくると回転している。
「はぁ〜〜・・涼しいなぁ〜・・」
すぐに服を脱ぎ下着も籠の中に入れて素っ裸で扇風機の真下に立つ。おおお、気持ちええ。
「涼しいなぁ〜、チンコどころか金玉まで冷え冷えで最高だ・・」
<ガタガタガタガタガタッ!!>
「うわっ!?何だ今の!?隣から凄い音がしたぞ!?」
あー、びっくりした。女湯のほうから凄い音が鳴ったな。一体何だったんだ?まぁいいや、早く水風呂に入ろう。
<カラララララ・・・・>
よし、先に目指すは水風呂のみ。今日みたいな日には水風呂だけでも充分だ、と言いたいとこだがやっぱ体は綺麗にしないと。風呂に来たんだから清潔にしてから帰りましょう。桶一杯に水を汲み一気に被る。なんとも言えない心地良い感覚が体中を満たしてくれる。これだけでゴチソウサマです。んじゃ、もうちょい被ってから湯船に浸かるか。
「はぁーー・・・、うちの水風呂じゃここまで気持ち良くならんよなー」
家の風呂に水張った所で温いのは目に見えてる。それなら二百円で満足するまで銭湯で浸かってるほうが経済的にもいい。さてと、ジャグジー風呂に入るか。
「んーーっ、これこれ。この泡の感触最高」
静かに目を閉じ、泡の感触を体全体で味わう。そう、こうして目を閉じてまったりすれば・・・。
「クチュン!!」
-ブワッ!!-
「んおっ!?びっくりしたぁー・・・、なんだ今の風・・?」
誰か露天風呂の扉開けっ放しにでもしてたんかな。・・・体洗おうかな。
「ふー、やっぱ汗まみれだったから泡立ち悪いな。もうちょい念入りに洗おう」
ガシガシ念入りに体を洗う。そうしないと風呂上りに美女に遭遇したら格好つかないだろ。何故かこの銭湯、可愛い子が結構来てるらしいし。所詮、らしい、だけどな。たぶん噂に尾鰭が付いただけだと思うが。それでも綺麗にしておかないと本当に出逢ったら・・・出逢えたらいいよな。
「ないない・・、あるわけないよな」
俺みたいな家でごろごろして休みを潰すようなやつが出逢える訳ないな。でも、風呂上りに美女に出逢えるとかどこぞのドラマみたいな事があったらいいなとは思うんだが、そんな事早々合ってたまるか。現実は情け容赦ありませんでした、と。
「あー、はいはい。妄想はこれで終わりっと」
それでもやっぱり念入りに洗う。決して期待してる訳じゃない。銭湯に来たからには綺麗にするのが当たり前だ。体洗って清潔にして湯船に浸かって体を癒す。ただそれだけだ。
「電気風呂入ってから上がるか・・・」
ふぅぅぅぅ・・・、腰と腕が気持ちいい。こんなのが家にあれば。・・・設置するのに幾らぐらい金掛かるんかな。それじゃ上がって涼しむか。
<カラララララ・・・>
ふぅ、さっぱりした。早く体拭いて番台前の涼しい場所で少しだけまったりしておこう。ついでに冷たいもんでも飲もうかな。
「んで、何飲もうか・・・うっ・・」
やっべー・・、扇風機の前にオーガが居座ってるよ。しかもすっげー爽やかな顔で涼んでやがるし。くそっ・・どうしたらいいんだ。
「・・・・(触らぬ鬼に崇り無し・・・と)」
しょうがない、諦めて奥の椅子にでも座って何か飲んでよう。それじゃあ・・。
「ぁ、フルーツ牛乳の瓶みっけ」
久しぶりに瓶入りのフルーツ牛乳見たな。これすごく美味いんだよ。
「これ貰っていくよー」
番台に金を置いて奥に設置してある椅子にのんびり座る。この場所もそこそこ涼しいけど、やっぱ扇風機前が一番だよなー。
「はぁ・・・、ここだとちょっとだけ暑いな・・ん?」
俺の隣に僅かに髪が濡れてる小さな少女がちょこんと座っていた。全身が薄い緑色だけど、この子ってもしや・・シルフなのかな?どうやら俺が持ってるフルーツ牛乳に興味があるみたいだけど。
「もしかして・・これ欲しいのか?」
「・・・・・うん」
「・・・いいよ、半分飲みなよ」
紙蓋を外してシルフの前にコトンと置くと小さな両手でしっかり掴んでコクコクと音を鳴らしながら飲んでいく。なんだかちょっと歳の離れた妹を相手にしてる感じだ。実際は妹なんて居ないんだけど。
「美味しかった〜♪ありがとう♥」
「いやいや、んじゃ俺も・・」
残った半分を一気に飲み干す。まだ冷たかったフルーツ牛乳は俺の喉を満足させながら胃に落ちていく。少し物足りない量だけど。
「お兄ちゃん・・まだちょっとだけ暑そうだね?」
「んぅ?あー・・風来ないしなー」
チラリと扇風機を見るといまだにオーガが御満悦の様子で真正面に陣取っている。こりゃ当分は涼しくならないな。
「それじゃこれのお礼に私が涼しくしてあげるね〜」
シルフが俺の膝の上にちょこんと座って指をくるくると回すと体中が微風に包まれている感じがした。これってもしかして俺の周りの空気を操ってるのか。
「もうちょっとだけ強くするね♪」
「おおおおお・・・・、なんだこれ・・。すっげー涼しいー!」
まだ僅かに濡れていた俺の髪とシルフの髪が周囲を漂う風によって乾かされていく。これって天然の扇風機みたいだな。暫くの間、俺はシルフを後ろから抱き締めたまま風を味わう。もし妹が居たらこんな感じなんだろうか、とシルフを抱き締めながらも不謹慎に考えてしまう。
「ね、お兄ちゃん、気持ちいい?」
「ああ、すっげー気持ちいいよ。風を操れるってすごい便利いいんだな」
「・・・風だけなの・・?」
「いや・・・」
俺はシルフを後ろから強く抱き締めて言う。
「こうやって抱き締めてると・・・なんだか歳の離れた妹を抱いてるみたいで落ち着く・・。あ、でも・・実際は俺には妹は居ないんだけどな」
「・・・・・ぅん♥」
「もう少しだけ・・こうしててもいいか?」
「・・・うん、いいよ♪」
少しだけ歳が離れたようなシルフの少女を抱き締めながら風を全身に受ける。あまりの心地良さに少女を強く抱き締めてしまう。
「ぁん♪・・・お兄ちゃんのエッチ・・・・♥」
「・・・?あっ!ご、ごめん!」
気付けば少女の胸に手を置いていた。これって痴漢行為じゃないか。急いで手を放そうとするが少女ががっちりと俺の手を掴んで離れない。
「ちょ、ちょっと・・」
「ね、お兄ちゃん・・・、これからも気持ち良くなりたい?」
言われた意味がわからない俺じゃない。きっとこの子は契約がしたいのかも。
「俺でいいんなら一緒に」
「ほんと!?本当にいいの!?」
シルフの少女をこちらに振り向かせ優しくキスをする。
「・・・・♥」
「・・・ん、それじゃ帰ろっか」
「うん!帰ろ♪」
シルフの少女に肩車して暖簾をくぐり外へ出る。帰り道、外は地面からの放射熱でまだまだ温度が高かったが、優しい風が俺達二人を包んで放射熱から守ってくれる。
「お兄ちゃん涼しい?」
「涼しくて気持ちいいぞ」
「♪」
肩車されたシルフの少女は俺の頭の上で御機嫌にも鼻唄を奏でている。なんだかこういうのもいいな。俺は一人っ子だったからこんな事に憧れを持っていたし。
「それじゃこの出逢いに感謝して・・今日の晩飯は奮発するか!」
「やったぁ♪」
頭の上ではしゃぐ少女の頭を撫でながら晩飯の献立を考える。道往く人が汗をかきながら歩いてるのを見てるだけで少しだけ優越感を感じてしまう。この少女に出逢えてよかったなぁ、と。
それにしても・・・・
嗚呼・・・・涼しいなぁ♪
14/08/17 20:17更新 / ぷいぷい
戻る
次へ